(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523086
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】移動式手摺ユニットの設置方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20190520BHJP
E04D 15/00 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
E04G21/32 C
E04D15/00 V
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-144678(P2015-144678)
(22)【出願日】2015年7月22日
(65)【公開番号】特開2017-25565(P2017-25565A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】猪原 英明
(72)【発明者】
【氏名】武井 昇
【審査官】
兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−106174(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0168282(US,A1)
【文献】
実開平03−087743(JP,U)
【文献】
特開2011−196036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
E04D 13/15,15/00
E04G 5/14
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨による外装下地に嵌着する長尺チャンネル材を複数並ぶ手摺支柱の下端に設け、該長尺チャンネル材の内方にかんざし状に回転コロを配設し、また、長尺チャンネル材側部に外装下地側方に先端が押圧する止螺子を設け、回転コロを外装下地の上面に沿って移動させ、長尺チャンネル材は移動後は止螺子で外装下地に固定することを特徴とする手摺ユニットの設置方法。
【請求項2】
回転コロは端部を螺子切り部分としたボルトを使用し、端部を長尺チャンネル材の外側に突出し、この突出部にワッシャー付のナットを取付けて抜け出し防止とした請求項1記載の手摺ユニットの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部無足場工法での建物の屋根葺工事を行う際などに使用される横移動可能な
手摺ユニットの設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、外部無足場工法で建物の屋根を葺く場合には、作業の安全のために手摺が仮設として設けられる。
【0003】
その一例として屋根工事が折版で屋根葺をする場合を
図3を例に示すと、図中1は折版2で屋根葺をするときに使用する建物の梁であり、H型鋼が使用され、フランジ面が上下面となるようにして設置される。
【0004】
図示は省略するが、梁1の上面には、帯状板を山形および谷形が連続する波型に折曲して形成したタイトフレームを梁1の上面の幅方向中央部において溶接等の手段により固定して取り付け、前記屋根葺用の折版2は、タイトフレーム上においてカシメ結合して設置される。
【0005】
そして、梁1には折版2の設置に先行して梁1間に安全ネット3が張設され、また屋根葺用の折版2を設置した既設の部分には手摺4と親綱5による手摺ユニットが設置されて、安全性を確保している。
【0006】
手摺4は手摺支柱4aと横架材である手摺材4bで格子状に枠組まれたものであり、親綱5は折版2の上に設置したスタンド6で途中を支承して張られる。
【0007】
通常手摺支柱4aは下端を1本ずつクランプ等で固定されるが、下記特許文献1は、手摺支柱等の支持部材の取付位置を簡単に調整できるものとして提案されたものである。
【特許文献1】実公平3−23463号公報
【0008】
特許文献1を
図4に示すと、ベランダ等を構成するコンクリート製の基礎部7に周縁部に立設される腰壁8に当接して被冠する長尺部材からなるアンカーレール9と、このアンカーレール9上に係合保持する支持部材10とから構成されるものである。
【0009】
支持材11は手摺支柱を外嵌装着するもので、支持部材10に係合保持され、支持部材10を移動することで、支持材11の固定位置も調整できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記屋根工事に使用される手摺として、工事の進捗に伴い、横方向に複数の手摺支柱がそのまま移動でき、盛り替えの手間を省く簡易構造の手摺ユニットは今まで存在しなかった。
【0011】
手摺ユニットを横移動させるように盛り変えるには、手摺支柱を個々に1本ずつ移動させねばならず、手間と時間がかかるものであった。
【0012】
前記特許文献1は手摺支柱等の支持部材の取付位置を簡単に調整できるものの、複数並ぶ手摺支柱をそのまま横移動できるものではない。
【0013】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、工事の進捗に伴い、横方向に複数の手摺支柱がそのまま移動できるので盛り替えの手間を省くことができる
手摺ユニットの設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、鉄骨による外装下地に嵌着する長尺チャンネル材を複数並ぶ手摺支柱の下端に設け、該長尺チャンネル材の内方にかんざし状に回転コロを配設
し、また、長尺チャンネル材側部に外装下地側方に先端が押圧する止螺子を設け、
回転コロを外装下地の上面に沿って移動させ、長尺チャンネル材は移動後は止螺子で外装下地に固定することを要旨とするものである。
【0015】
請求項1記載の本発明によれば、鉄骨による外装下地に嵌着する長尺チャンネル材を用いることで複数並ぶ手摺支柱をこの長尺チャンネル材で同時に支承でき、また、長尺チャンネル材にかんざし状に回転コロを配設してこれを外装下地上面に沿って移動させることで、工事の進捗に伴い、摩擦抵抗なく手摺支柱を含む手摺全体を鉄骨による外装下地に沿って移動させることができる。
【0016】
また、移動させた後では止螺子を用いて簡単に長尺チャンネル材を外装下地に固定し、この固定では長尺チャンネル材は外装下地に一定の長さをもって係合しているので、複数並ぶ手摺支柱を安定して支持することが可能である。
【0017】
請求項2記載の本発明は、
回転コロは端部を螺子切り部分としたボルトを使用し、端部を長尺チャンネル材の外側に突出し、この突出部にワッシャー付のナットを取付けて抜け出し防止としたことを要旨とするものである。
【0018】
請求項2記載の本発明によれば、回転コロの抜け出し防止を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように本発明の
手摺ユニットの設置方法は、長尺チャンネル材により複数の手摺支柱がそのまま横方向に移動できるようにしたので、工事の進捗に伴い、手摺を盛り替える手間を大幅に軽減することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の
手摺ユニットの設置方法の1実施形態を示す縦断側面図で、折版で屋根葺をする屋根工事で使用する場合である。
【0021】
すなわち、
図1において図中1は鉄骨による梁であり、折版2は梁1に設けたタイトフレーム12上においてカシメ結合して設置される。
【0022】
また、図中13は面戸であり、これに対応するように、外側には鉄骨による外装下地14が組まれる。
【0023】
本発明は
図2における手摺4のように手摺支柱4aと横架材である手摺材4bで格子状に枠組まれたものを外装下地14に立てて設けるのに、前記外装下地14に嵌着する3メートル程度の長尺チャンネル材15をスライド部材として使用し、この長尺チャンネル材15を複数並ぶ手摺支柱4aの下端に設けるようにしたもので、手摺支柱4aは間隔を存して長尺チャンネル材15に立設される。
【0024】
なお、手摺支柱4aを長尺チャンネル材15に直接立設する場合の他に
図3に示すように支持材を立設し、これに手摺支柱を嵌着するようにしてもよい。
【0025】
前記長尺チャンネル材15は上床板16と左右側板17とからなる下面解放のものであり、回転コロ19を内方に配設してこれを外装下地14の上面に沿って移動させるようにした。
【0026】
前記回転コロ19は長尺チャンネル材15を幅方向に横切るものであり、上床板16の内側から少し離してかんざし状に配設してこれを外装下地14の上面に沿って移動させる。
【0027】
図2に示すように、回転コロ19には中央部を螺子なしとした六角ボルトを使用し、螺子切り部分である端部を長尺チャンネル材15の外側に突出し、この突出部にワッシャー19b付のナット19aを溶接で取付けて抜け出し防止とした。
【0028】
回転コロ19は鉄骨による外装下地14と長尺チャンネル材15との間に滑動に要する隙間を確保するもので、完全に回転しないでも、多少回動するか、もしくは、回動しないで外装下地14上面との接合を少なくして摩擦抵抗を減らすだけにしたようなものでもよい。
【0029】
また、長尺チャンネル材15の側部である左右側板17に外装下地14の側方に先端が押圧する止螺子20を設けた。該止螺子20は左右側板17に形成した孔に合わせてナットを溶接しておき、ここに螺子を差し込むようにしたものであり、長尺チャンネル材15が面戸13と干渉するのを防止する。
【0030】
このようにして外装下地14の上には、長尺チャンネル材15を介して手摺支柱4aが間隔を存して立設され、手摺支柱4aにより手摺が組まれる。
【0031】
設置した手摺よりも先の部分に屋根が完成し(
図2参照)、手摺を先に移動するように盛り替えるには、止螺子20を緩め、長尺チャンネル材15を外装下地14に沿って移動させればよい。
【0032】
この長尺チャンネル材15の移動は回転コロ19のみが主として外装下地14の上面に接して行われるもので、摩擦抵抗なく行うことができる。
【0033】
長尺チャンネル材15は移動後は再度、止螺子20で外装下地14に固定する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の
手摺ユニットの設置方法の1実施形態を示す縦断側面図である。
【
図3】折版で屋根葺をする屋根工事の様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1…梁 2…折版
3…安全ネット 4…手摺
4a…手摺支柱 4b…手摺材
5…親綱 6…スタンド
7…基礎部 8…腰壁
9…アンカーレール 10…支持部材
11…支持材 12…タイトフレーム
13…面戸 14…外装下地
15…長尺チャンネル材
15a…上床板 15b…左右側板
19…回転コロ 19a…ナット
19b…ワッシャー 20…止螺子