【文献】
橋本 典征 他,Suppressed-Tail DFT-Spread UF-OFDMの提案と評価,電子情報通信学会総合大会講演論文集 2016年 通信(1),2016年 3月 1日,p.429
【文献】
Gilberto Berardinelli et al.,Zero-tail DFT-spread-OFDM signals,Globecom Workshops (GC Wkshps),2013,IEEE,2013年12月13日,pp.229-234
【文献】
Steffen Trautmann et al.,Perfect Equalization for DMT Systems Without Guard Interval,IEEE Journal on Selected Areas in Communications,IEEE,2002年 8月 7日,第20巻,第5号,pp.987-996
【文献】
Panayiotis D.Papadimitriou et al.,Zero-padded OFDM with Improved Performance over Multipath Channels,Consumer Communications and Networking Conference, 2004. CCNC 2004. First IEEE,IEEE,2004年 1月 8日,pp.31-34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通信装置によって無線送信される信号に係るシンボルの時間的な重なりの大きさに基づいて、前記入力シンボル系列に含める前記第1シンボルの数を決定する決定部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
前記生成部によって生成された入力シンボル系列はシンボルを要素とするベクトルで表現され、該ベクトルにおいて要素は時間軸に沿って並んでおり、前記第1シンボルの少なくともひとつは、前記第2シンボルの時間に比して後の時間に対応する要素として前記ベクトルに含められることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信装置。
前記第1シンボルの別の少なくともひとつは、前記第2シンボルの時間に比して前の時間に対応する要素として前記ベクトルに含められることを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0012】
上述の通り、非特許文献1には、DFTS−OFDMにおいて、送信系のDFTへの入力系列に含まれるシンボルの始めと終わりのいくつかを「0」で置換することで、出力信号のテールの強度の低減を目指す技術が開示されている。
【0013】
しかしながら、本発明者は、上記のような「0」置換を行ってもテールが希望通りに小さくならない場合があり、その原因として以下の2点があることを見出した。
(1)入力系列に含まれるデータシンボルのテールへの影響。
(2)非特許文献1の技術ではIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)後の処理(フィルタリング等)を考慮していないこと。
本実施の形態では、入力シンボル系列に含まれるデータシンボルがテールに与える影響と、同じく入力シンボル系列に含まれるオーバーヘッド(OH)シンボルがテールに与える影響とが打ち消し合うように、OHシンボルを決定する。その結果、OHシンボルの値は「0」のような固定値ではなく、データシンボルにより変化する値(例えば、複素数)となる。また、IDFT後の処理も考慮される。これらにより、データシンボルによらずにテールの強度を低減でき、サイクリックプレフィックスを用いずとも、シンボル間干渉およびサブキャリア間干渉を十分に低く抑えることができる。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムは、例えば、それぞれが無線通信装置として動作する基地局装置101と端末102とを含む。なお、例示的に1つの基地局装置101と1つの端末102とが含まれるシステムを示しているが、これらの通信装置は複数存在し得る。また、本無線通信システムは、例えばロングタームエボリューション(LTE)等のセルラ通信システムであるが、その後の世代のセルラ通信システムや、無線LANなどの無線通信システムであってもよい。すなわち、以下の技術は、2つの通信装置間において、OFDMを用いる場合に適用できるものであり、その対象は、必ずしもセルラ通信システム等の特定のシステムに限定されない。
【0015】
以下では、主として
図1のセルラ通信システムにおける端末102の構成等について説明する。なお、
図1のセルラ通信システムにおける端末102のみならず、DFTS−OFDMを用いて信号を送信する通信装置であれば、当然に以下の議論を適用することができる。
【0016】
図2は、端末102のハードウェア構成例を示す図である。端末102は、一例において、
図2に示すようなハードウェア構成を有し、例えば、CPU201、ROM202、RAM203、外部記憶装置204、及び通信装置205を有する。端末102では、例えばROM202、RAM203及び外部記憶装置204のいずれかに記録された、端末102の各機能を実現するためのプログラムがCPU201により実行される。そして、端末102は、例えばCPU201により通信装置205を制御して、基地局装置101と端末102との間の通信を行う。
【0017】
なお、
図2では、端末102は、1つの通信装置205を有するとしているが、例えば、端末102は、例えば、複数の周波数帯域のそれぞれに対応する複数の通信装置を有していてもよい。なお、端末102は、端末間の直接通信のために、例えば、上りリンクの信号を受信するための通信装置を有していてもよいし、下りリンクの信号を送信するための通信装置を有していてもよい。
【0018】
なお、端末102は、各機能を実行する専用のハードウェアを備えてもよいし、一部をハードウェアで実行し、プログラムを動作させるコンピュータでその他の部分を実行してもよい。また、端末102は、その全機能をコンピュータとプログラムにより実行させてもよい。
【0019】
図3は、
図2の通信装置205の機能および構成を示すブロック図である。通信装置205は、ベースバンド信号処理部302と、送受信部304と、増幅部306と、アンテナ308と、を含む。
【0020】
通信装置205の送信機能を説明する。ベースバンド信号処理部302は送信対象のユーザデータである送信データを取得する。ベースバンド信号処理部302では、取得された送信データに対して、実施の形態に係るプリコーディング処理や離散フーリエ変換(DFT)処理、IDFT処理などが行われ、送受信部304にベースバンド信号として転送される。送受信部304は、ベースバンド信号処理部302から出力されたベースバンド信号を所望の無線周波数帯に変換する。その後、増幅部306は、周波数変換された無線周波数信号を増幅してアンテナ308により送信する。
【0021】
通信装置205の受信機能を説明する。アンテナ308で受信された無線周波数信号が増幅部306で増幅され、送受信部304で周波数変換されてベースバンド信号に変換される。このベースバンド信号には、ベースバンド信号処理部302でDFT処理や、誤り訂正復号などがなされる。
【0022】
図4は、
図3のベースバンド信号処理部302の送信に係る機能および構成を示すブロック図である。ベースバンド信号処理部302は、第1端子402と、入力系列生成部404と、OHパラメータ決定部408と、OHパラメータ保持部410と、DFT部412と、周波数領域処理部414と、IDFT部416と、時間領域後処理部418と、第2端子420と、を有する。
【0023】
入力系列生成部404は第1端子402から、送信データを表すシンボルである送信データシンボルを受信する。入力系列生成部404は、OHパラメータ保持部410からOHパラメータを取得する。入力系列生成部404は、取得されたOHパラメータと受信した送信データシンボルとに基づき、前置OHシンボルと後置OHシンボルとを含むOHシンボルを決定する。入力系列生成部404は、受信した送信データシンボルに決定されたOHシンボルを付加することで入力シンボル系列を生成する。入力シンボル系列は時間領域の系列であり、特にM個(Mは自然数)のシンボルの時系列である。入力シンボル系列はシンボルを要素とするベクトルで表現される。このベクトルを入力シンボルベクトルSと表記する。入力シンボルベクトルSにおいてM個の要素は時間軸に沿って並んでいる。
【0024】
DFT部412は、入力系列生成部404によって生成された入力シンボル系列を直列/並列変換し、DFT処理することで時間領域の系列を周波数領域の周波数データに変換し、周波数領域処理部414に出力する。当該DFTのサイズ(この場合、M)は無線送信する信号の帯域幅に相当する。
【0025】
周波数領域処理部414は、DFT部412における変換の結果得られる周波数データに対して周波数領域における所定の処理を施す。例えば、周波数領域処理部414は、DFT処理後の周波数データを所望の周波数帯域または割り当てられている周波数帯域にマッピングし、それ以外の周波数帯域に無信号(0信号)をマッピングした周波数領域の系列を生成して、IDFT部416に出力する。
【0026】
IDFT部416は、周波数領域処理部414が出力した系列に対してIDFT処理を行い、時間領域の信号を生成して、時間領域後処理部418に出力する。当該IDFTのサイズ(この場合、Mよりも大きな自然数F)は、基地局装置101の全受信信号帯域幅に相当する。特にFは基地局装置101で利用可能なサブキャリアの数であってもよい。
【0027】
時間領域後処理部418は、IDFT部416が出力した信号に対して時間領域における所定の処理を施す。例えば、時間領域後処理部418は、IDFT部416が出力した信号にフィルタ処理を適用する。時間領域後処理部418は、フィルタ処理された信号を第2端子420に出力する。第2端子420は送受信部304と接続されている。
【0028】
DFT部412と周波数領域処理部414とIDFT部416と時間領域後処理部418とは信号処理部406を構成する。信号処理部406は、入力系列生成部404によって生成された入力シンボル系列を周波数領域の周波数データに変換する。信号処理部406は、その変換により得られた周波数データを所望の周波数帯域を有する時間領域の信号に変換し、第2端子420に出力する。
【0029】
ベースバンド信号処理部302の受信に係る機能および構成は、基本的に
図4に示される処理を逆にすることで得られる。例えば、逆フィルタ処理、DFT処理、逆マッピング処理、IDFT処理、が実装されてもよい。
【0030】
図5は、
図4の入力系列生成部404の機能および構成を示すブロック図である。入力系列生成部404は、データシンボル取得部502と、入出力特性保持部504と、OHシンボル演算部506と、合成部508と、を有する。
【0031】
入力系列生成部404から出力されるサイズMの入力シンボルベクトルSは、
S=(h
NhT、d
M−Nh−NtT、t
NtT)
T
と表される。ここで、h
NhはNh(Nhは0以上の整数)個の前置OHシンボルを要素とする前置OHベクトルであり、t
NtはNt(Ntは自然数)個の後置OHシンボルを要素とする後置OHベクトルである。d
M−Nh−NtはM−Nh−Nt個の送信データシンボルからなる送信データベクトルである。なお、NhおよびNtはM>Nh+Ntを満たす。このように本実施の形態では、送信データシンボルにそれとは異なるシンボルを付加することで入力シンボル系列を生成するプリコーディングが行われる。
【0032】
入力シンボルベクトルSにおいて、送信データシンボルは前置OHシンボルと後置OHシンボルとに挟まれるように配置される。後置OHシンボルは、送信データシンボルの時間に比して後の時間に対応する要素として入力シンボルベクトルSに含められる。前置OHシンボルは、送信データシンボルの時間に比して前の時間に対応する要素として入力シンボルベクトルSに含められる。
【0033】
入力系列生成部404において、Nh個の前置OHシンボルおよびNt個の後置OHシンボルは、入力シンボルベクトルSに対応して信号処理部406から出力される時間領域の信号の後端部すなわちテールに送信データベクトルd
M−Nh−Ntが与える影響と、当該テールに前置OHベクトルh
Nhおよび後置OHベクトルt
Ntが与える影響と、が打ち消し合うように決定される。
【0034】
入力シンボルベクトルSに対応して信号処理部406から出力される時間領域の信号のK個の時間サンプルを要素とするベクトルを出力ベクトルXと表記する。出力ベクトルXの要素のうちテールに対応する要素、すなわち後ろから数えてP(PはKより小さい自然数)番目の要素から最後の要素までの要素からなるベクトルを出力テールベクトルX
Pと表記する。出力テールベクトルX
Pは出力ベクトルXの一部である。より具体的には、
X=(x
1、x
2、…、x
K−1、x
K)
T
と表記するとき、
X
P=(x
K−P+1、x
K−P+2、…、x
K)
T
である。
【0035】
信号処理部406は線形システムであるから、出力テールベクトルX
Pの各要素は入力シンボルベクトルSの要素の線形結合として表される。すなわち、
X
P=A・d
M−Nh−Nt+B・(h
NhT、t
NtT)
T …(式1)
が成立する。ここで「・」は行列積を表す。Aは、送信データベクトルd
M−Nh−Ntを入力とし出力テールベクトルX
Pを出力とする信号処理部406の入出力特性を表す行列、すなわち信号処理部406への送信データベクトルd
M−Nh−Ntの入力が出力テールベクトルX
Pにどのような影響を与えるかを規定する行列である。Bは、前置OHベクトルh
Nhおよび後置OHベクトルt
Ntを入力とし出力テールベクトルX
Pを出力とする信号処理部406の入出力特性を表す行列、すなわち信号処理部406への前置OHベクトルh
Nhおよび後置OHベクトルt
Ntの入力が出力テールベクトルX
Pにどのような影響を与えるかを規定する行列である。出力ベクトルXのテールにおける信号エネルギを極小化または最小化するために、
X
P=0
を課す。これは式1の右辺第1項と第2項とが打ち消し合う条件と同値である。すると、
(h
NhT、t
NtT)
T=(B
H・B)
−1・B
H・(−A)・d
M−Nh−Nt …(式2)
が得られる。ここでB
HはBの随伴行列を表す。
【0036】
式2は、送信データシンボルを表す送信データベクトルd
M−Nh−Ntと、信号処理部406の入出力特性を表す行列A、Bと、に基づいて前置OHベクトルh
Nhおよび後置OHベクトルt
Ntを決定することができることを示している。ベースバンド信号処理部302は、予めP、Nh、Ntの組に対応するA、Bを求めておき、送信データベクトルd
M−Nh−Ntを取得したらそれにA、Bを作用させて前置OHベクトルh
Nhおよび後置OHベクトルt
Ntを取得し、入力シンボルベクトルSを構成する。
【0037】
データシンボル取得部502は、第1端子402から送信データシンボルを受信する。データシンボル取得部502は、OHパラメータ保持部410を参照し、使用すべきNhおよびNtを特定する。NhおよびNtはいずれもOHパラメータである。データシンボル取得部502は、受信した送信データシンボルをM−Nh−Nt個ずつまとめて送信データベクトルd
M−Nh−Ntを生成する。データシンボル取得部502は、生成された送信データベクトルd
M−Nh−Ntを合成部508およびOHシンボル演算部506に出力する。
【0038】
OHシンボル演算部506は、データシンボル取得部502から出力された送信データベクトルd
M−Nh−Ntと、(P、Nh、Nt)の組に対応する行列A、Bと、に基づいて、前置OHベクトルh
Nhおよび後置OHベクトルt
Ntを決定する。OHシンボル演算部506は、データシンボル取得部502から送信データベクトルd
M−Nh−Ntを受ける。OHシンボル演算部506は、OHパラメータ保持部410を参照し、使用すべき(P、Nh、Nt)の組を特定する。
【0039】
OHシンボル演算部506は、入出力特性保持部504を参照し、特定された(P、Nh、Nt)の組に対応する行列A、Bを取得する。
図6は、入出力特性保持部504の一例を示すデータ構造図である。行列A、BはいずれもP、Nh、Ntに依存する。特に行列AはP行(M−Nh−Nt)列の行列であり、行列BはP行(Nh+Nt)列の行列である。入出力特性保持部504は、(P、Nh、Nt)の組と行列Aと行列Bとを対応付けて保持する。入出力特性保持部504に登録されるデータは、信号処理部406に対する出荷前のテストやシミュレーション結果等に基づき出荷時に登録されてもよい。行列A、行列B自体は、無線チャネルの状況によらない装置固有の値を要素とする行列である。なお、行列A、Bは保持部に保持される代わりに、演算により直接求められてもよい。
【0040】
図5に戻り、OHシンボル演算部506は、取得された行列A、Bと受信した送信データベクトルd
M−Nh−Ntとを使用して式2を演算することにより、前置OHベクトルh
Nhおよび後置OHベクトルt
Ntを決定する。OHシンボル演算部506は、決定された前置OHベクトルh
Nhおよび後置OHベクトルt
Ntを合成部508に出力する。
【0041】
合成部508は、データシンボル取得部502から受けた送信データベクトルd
M−Nh−Ntと、OHシンボル演算部506から受けた前置OHベクトルh
Nhおよび後置OHベクトルt
Ntと、から、入力シンボルベクトルSを合成する。合成部508は、生成された入力シンボルベクトルSを信号処理部406に出力する。
【0042】
図4に戻り、OHパラメータ決定部408は、通信装置205によって無線送信される信号に係るシンボルの時間的な重なりの大きさに基づいて使用されるべきOHパラメータを決定し、決定されたOHパラメータをOHパラメータ保持部410に登録する。OHパラメータはPとNhとNtとを含む。OHパラメータ決定部408は、タイミングオフセットやマルチパスによる遅延の想定値または統計値もしくはその両方に基づいてPの値を決定する。OHパラメータ決定部408は、決定されたPの値に基づいて、NhおよびNtの値を決定する。
【0043】
一例では、OHパラメータ決定部408は、基地局装置の通信可能範囲に基づいてPの初期値を設定してもよい。通信可能範囲の最大半径をR
maxと表記し、光速をcと表記すると、該通信可能範囲内における最大遅延D
maxは
D
max=R
max/c
で与えられる。サンプリング間隔をT
sと表記すると、Pの初期値P
iは、
P
iT
s>D
max
を満たす最小の整数として与えられる。すなわち、[]をガウスの記号とするとき、
P
i=[R
max/cT
s]+1
により初期値P
iが与えられる。
【0044】
OHパラメータ決定部408は、タイミングオフセットやマルチパスによる遅延の実測値に対して統計処理を施し、その処理の結果に基づきPの値を調整してもよい。例えば最大遅延D
maxを超える遅延が多数観測された場合は、OHパラメータ決定部408はPを初期値P
iから増やしてもよい。遅延の実測値は、例えば、基地局装置と端末との間の閉ループ型同期(Closed Loop Synchronization、CLS)プロセスにおいて得られる。閉ループ型同期プロセスが繰り返されることで、遅延の実測値が蓄積される。
【0045】
OHパラメータ決定部408は、決定されたPの値が大きいほど(Nh+Nt)も大きくなるよう、かつNh<NtとなるようNhおよびNtを決定してもよい。Nh<Ntは、入力シンボルベクトルSにおいて後ろに配置された要素ほど出力テールベクトルX
Pへの影響が強いという本発明者の知見に基づく。また、信号処理部406におけるIDFT処理の周期性のため、入力シンボルベクトルSの先頭に配置された要素も出力テールベクトルX
Pに影響する場合がある。したがって、Nhの値は1以上に設定されてもよい。一例ではOHパラメータ決定部408は、Pの値と、予め定められたNhおよびNtの値の組とを対応付けて保持するテーブルを有し、決定されたPの値に対応するNh、Ntの組を該テーブルから特定することにより、Nh、Ntを決定してもよい。該テーブルに登録されたデータは、予め経験的にまたは理論的に得られたものであってもよい。
【0046】
あるはまた、OHパラメータ決定部408は、BCCH(Broadcast Control CHannel)やPDCCH(Physical Downlink Control CHannel)やPUCCH(Physical Uplink Control CHannel)などの制御チャネルを介して受けた制御信号からOHパラメータを抽出することにより該OHパラメータを決定してもよい。
【0047】
以上の構成による無線通信システムの動作を説明する。
図7は、無線通信システムにおける一連の処理の流れを示すチャートである。基地局装置101は使用すべきP、Nh、Ntを決定する(S702)。基地局装置101は、BCCHやPDCCHなどの下りリンク制御チャネルを介して、決定されたP、Nh、Ntを端末102に通知する(S704)。端末102において、ユーザ操作等により送信すべき送信データが発生する(S706)。端末102は、送信データに基づいてOHシンボルを決定する(S708)。端末102は、送信データシンボルに決定されたOHシンボルを付加することで入力シンボル系列を合成する(S710)。端末102は、合成された入力シンボル系列を入力とする信号生成処理を行う(S712)。基地局装置101は、生成された無線周波数信号を端末102から受信する(S714)。なお、端末102において遅延が測定され、測定された遅延に基づく新たなNh、Ntの値が使用された場合は、端末102はその新たなNh、Ntを上りリンク制御チャネルを介して基地局装置101に通知する(S716)。この場合、ステップS704において通知されたNh、Ntと、ステップS716において通知されたNh、Ntとは異なる。基地局装置101は、受信した無線周波数信号をベースバンド信号に変換する信号受信処理を行う(S718)。基地局装置101は、NhおよびNtの値を使用して、受信したデータ系列から送信データを抽出する(S720)。
【0048】
図7では上りリンクにおけるデータ伝送に本実施の形態に係るプリコーディングを適用する場合が説明される。下りリンクにおけるデータ伝送に本実施の形態に係るプリコーディングを適用する場合は
図7と同様な処理の流れとなるので、図示による説明を省略する。
【0049】
なお、マルチパスによる遅延を測定し、測定された遅延に基づき本実施の形態に係るプリコーディングを実施するか否かを決定してもよい。この場合、
図7においてステップS702の前に、(1)基地局装置101が上りリンクにおけるマルチパス遅延を測定し、(2)測定されたマルチパス遅延に基づき基地局装置101が上りリンクにおいて本実施の形態に係るプリコーディングを行うか否かを決定する。下りリンクに関しては、まず(1)基地局装置101から端末102に下りリンクにおけるマルチパス遅延を測定する指示が送信され、(2)該指示に応答して測定されたマルチパス遅延が端末102から基地局装置101に送信され、(3)受信したマルチパス遅延の測定値に基づき基地局装置101が本実施の形態に係るプリコーディングを行うか否かを決定する。ここで上りリンクにおけるNh、Ntと下りリンクにおけるNh、Ntとは異なっていてもよい。
【0050】
本実施の形態に係る無線通信システムによると、入力シンボル系列に対する出力信号のテールの信号強度を抑制できるので、端末間のタイミングのずれによる端末間のISIやマルチパス遅延によるISIを低減できる。その結果、サイクリックプレフィックスを使用しなくてもよくなるので、大きなセルにも小さなセルにも共通のフレーム構成を適用したより効率的な通信システムの構築が可能となる。
【0051】
図8(a)、(b)は、端末間のISI低減効果を説明する説明図である。
図8(a)には、基地局装置101と、それぞれが端末102と同様の構成を有する第1、第2ユーザ端末UE1、UE2と、を含む無線通信システムが示される。第1ユーザ端末UE1は開ループ型同期(Open−Loop Synchronization、OLS)を使用し、したがって基地局装置101への送信(上りリンク)に関して伝搬遅延の補償は行わない。第2ユーザ端末UE2はCLSを使用し、タイミングアドバンス等を使用して伝搬遅延の補償を行う。
【0052】
図8(b)は、基地局装置101における上りリンクの信号の受信状況を示す図である。第1ユーザ端末UE1から送信された信号S
UE1は伝搬遅延のため基地局装置101に遅れて届く。これは
図8(b)において「UE1」で示される矩形領域が受信機窓RWからはみ出すことで表現されている。第2ユーザ端末UE2から次の受信機窓に届くよう送信された信号S
UE2(「UE2」で示される矩形領域)は、伝搬遅延の補償があるので次の受信機窓に嵌まる。その結果、第1ユーザ端末UE1から送信された信号のテールと第2ユーザ端末UE2から送信された信号の先頭とが、第1ユーザ端末UE1の伝搬遅延に応じた長さの期間IUDにおいて重なり合う。しかしながら、本実施の形態では第1ユーザ端末UE1から送信された信号S
UE1のテールの強度は小さいので、期間IUDにおけるISIは小さくなる。また、第1ユーザ端末UE1から送信された信号S
UE1のうち強度の比較的大きい重要な部分は受信機窓RWに入り、その受信機窓RWから外れたテール部分の強度は小さいので、基地局装置101は第1ユーザ端末UE1から送信された信号S
UE1をより正確に復号できる。
【0053】
マルチパス遅延によるISIの場合、基地局装置101において、端末102からの信号の後端部と次の信号の先端部とがマルチパスの影響で重なり合うことによりISIが生じる。本実施の形態に係る無線通信システムでは信号のテールの強度が抑えられるので、そのようなISIが低減される。
【0054】
本実施の形態に係るプリコーディングはOLSを使用する端末に適用可能である。IOT(Internet Of Things)などのマシン型通信(Machine−type Communication)では、マシン側の通信装置のコストを低減しかつ電力消費を抑えて電池を長持ちさせるため、データ送信の前の同期処理を省略するOLSが多く採用される。このような場合に本実施の形態に係るプリコーディングを適用すると、通信品質を良好に維持できる。
【0055】
また、本実施の形態に係る無線通信システムでは、OHシンボルは送信データシンボルが信号処理部406の出力信号のテールに与える影響を該OHシンボルが該テールに与える影響で相殺するように決定される。したがって、例えばOHシンボルの代わりに単なる数値「0」を使用する場合と比較して、テールの強度をより低減できる。
【0056】
医療、安全、緊急等の高信頼性が求められる通信アプリケーションにおいて、端末が自己のサービング基地局以外の基地局にもデータの受信を求めるような場合にも、本実施の形態に係るプリコーディングを適用できる。この場合、端末はサービング基地局とCLSにより同期しているが、他の基地局とは同期していない。このような他の基地局と端末との間の通信に、本実施の形態に係るプリコーディングを適用することで、ISIを低減してより良好な通信品質を実現できる。
【0057】
また、本実施の形態に係る無線通信システムでは、信号処理部406はIDFT部416の後段に時間領域後処理部418を含む。したがって、OHシンボル演算部506により決定されるOHシンボルは時間領域後処理部418における処理も考慮したものとなるので、信号処理部406から出力される信号のテールへの時間領域後処理部418における処理の影響を低減または除去できる。
【0058】
以上、実施の形態に係る無線通信システムの構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解される。
【0059】
実施の形態では、信号処理部406から出力される時間領域の信号の後端部に対する送信データシンボルの影響が該後端部に対するOHシンボルの影響と相殺される場合について説明したが、これに限られない。信号処理部406から出力される時間領域の信号の端部の信号強度が抑制されればよく、例えば先端部に対する影響が相殺されるようにOHシンボルが決定されてもよい。
【0060】
実施の形態では、入力シンボルベクトルSにおいてOHシンボルを送信データシンボルの前後に配置する場合について説明したが、これに限られない。より一般的にはOHシンボルの数、位置および値は以下のように決定されてもよい。
【0061】
信号処理部406の入出力特性を表すK行M列の行列Vについて、
X=V・S
が成立する。Xは出力ベクトルである。入力シンボルベクトルSの要素のインデクス(入力シンボルベクトルSにおいて要素を特定する識別子、i番目の要素の「i」のこと)の集合(1、2、…、M)をT、N
OH(=Nh+Nt)個のOHシンボルのインデクスの集合をJ、それ以外すなわちM−N
OH個の送信データシンボルのインデクスの集合をD、とそれぞれ表記する。J、DはそれぞれTの部分集合であり、DはTを全体集合とするときのJの補集合である。
【0062】
mがTの元であるとき、入力シンボルベクトルSのm番目の要素からの出力テールベクトルX
Pへの寄与w
mを以下のように定義する。
【数1】
ここでp(n)はISIエネルギの分布を表し、経験的にまたは実測値の統計処理により得られる。特にp(n)はタイミングオフセットおよびマルチパス遅延の確率分布により決定される。概略的には、p(n)が大きい場合、それは出力テールベクトルX
Pにおけるn番目の要素が統計的に大きくなる傾向にあることを示す。V(K−n+1:K、m)は、Vの第m列のなかの第(K−n+1)行目から第K行目までの要素からなるベクトルを表す。なお、同様にX
P=X(K−P+1:K)と表される。
【0063】
w
1、w
2、…、w
Mを計算し、それらの中で大きいものから順にN
OH個選び、選ばれたもののインデクスの集合をJとする。これにより、入力シンボルベクトルSのなかから出力テールベクトルX
Pへの影響が大きいN
OH個のインデクス(=要素の位置)の集合をJとして選んだこととなる。
【0064】
DおよびJについて以下の行列を定義する。
【数2】
OHシンボルからなるベクトルS(J)と送信データシンボルからなるベクトルS(D)とについて、X
P=0を課すので、
【数3】
これをS(J)について解くと、
【数4】
となる。