特許第6523166号(P6523166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523166
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】プロピレン系樹脂組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20190520BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20190520BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20190520BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20190520BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20190520BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20190520BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20190520BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   C08L23/10
   C08L23/16
   C08L23/26
   C08L53/00
   C08K3/00
   C08K3/04
   C08K3/34
   C08K5/20
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-526336(P2015-526336)
(86)(22)【出願日】2014年7月8日
(86)【国際出願番号】JP2014068110
(87)【国際公開番号】WO2015005303
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2017年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-142699(P2013-142699)
(32)【優先日】2013年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】平野 一之介
(72)【発明者】
【氏名】楠本 竜也
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−537039(JP,A)
【文献】 特開2012−107078(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0181246(US,A1)
【文献】 特開2012−241055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/10
C08L 23/16
C08L 23/26
C08L 53/00
C08K 3/00
C08K 3/04
C08K 3/34
C08K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メルトフローレート(ISO 1133、230℃、2.16kg荷重下)が20〜300g/10分であるプロピレン系重合体:50〜75重量%、
(B−1)メルトフローレート(ISO 1133、230℃、2.16kg荷重下)が0.4g/10分未満である、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体:5〜15重量%、
(B−2)メルトフローレート(ISO 1133、230℃、2.16kg荷重下)が0.5g/10分以上、10g/10分未満であるエチレン・α−オレフィン共重合体:5〜15重量%、および、
(C)無機充填剤:15〜30重量%(ただし、成分(A)、(B−1)、(B−2)および(C)の合計量は100重量%)からなる(G)樹脂組成物100重量部、
(D)変性ポリプロピレン0.1〜5.0重量部、
(E)表面改質剤0.1〜1.0重量部、および、
(F)顔料1.0〜6.0重量部、
を配合してなり、
前記(F)顔料が、(F−1)カーボンブラック0.5重量部以上3.0重量部以下と、(F−2)無機・有機顔料0.5重量部以上3.0重量部以下との混合物であるプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記(F−1)カーボンブラックの配合量と、前記(F−2)無機・有機顔料の配合量との割合((F−1)/(F−2))が1.0以上3.0以下である、請求項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記(F−1)カーボンブラックの平均一次粒子径が10nm以上45nm未満であり、表面積が40m2/g以上550m2/g以下である、請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
(A)プロピレン系重合体が、プロピレン・エチレンブロック共重合体である、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記プロピレン・エチレンブロック共重合体の23℃におけるn−デカン可溶分量が5〜15重量%である請求項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
(B−1)成分の23℃におけるn−デカン可溶分の極限粘度[η]が2.0〜2.4dl/gであり、(B−2)成分の23℃におけるn−デカン可溶分の極限粘度[η]が1.0〜2.0dl/gである、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項7】
(B−1)成分と(B−2)成分との合計量が、樹脂組成物(G)100重量%に対して10〜30重量%である、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項8】
(B−1)成分と(B−2)成分との合計量に対する(B−1)成分の割合が、25〜75重量%である、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項9】
(C)無機充填剤が、平均粒径が1〜15μmのタルクである、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項10】
(D)変性ポリプロピレンが、無水脂肪酸変性ポリプロピレンである、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項11】
(E)表面改質剤が、脂肪酸アミドである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項12】
前記(F−2)無機・有機顔料が、酸化チタン、Ti−Cr−Sb複合酸化物系顔料、および銅フタロシアニン系顔料よりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を含む成形品。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を含む自動車内外装品。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を含む家電製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的特性に優れ、かつ、耐傷付き性にも優れた成形品を製造しうるプロピレン系樹脂組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品分野、特に内装材料の分野においては、ポリプロピレン成形品は、通常、耐傷付き性、低光沢性(成形品に高級感を持たせ、安全性を考慮して窓ガラスへの移り込みを抑えることを目的とする)、フローマーク等の外観不良を隠すために、塗装や表皮貼り合わせといった後工程を施した後に使用されることが多い。そのため、生産において経済性が充分に享受されていないという問題を有していた。
【0003】
特許文献1には、経済性を向上させる目的でとして、機械的物性に優れ、耐傷付き性、低光沢性、フローマーク外観が良好なプロピレン系樹脂組成物が記載されている。しかし、前記効果については十分な改善がなされていない。また、さらにカーボンブラックや無機・有機顔料を配合することによる耐傷付き性の向上効果についても記載がなく、その機構も明らかにされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−79117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、機械的物性に優れ、耐傷付性に優れた成形品を製造しうるプロピレン系樹脂組成物、および該プロピレン系樹脂組成物を含み、機械的物性に優れ、耐傷付性に優れた成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記のプロピレン系樹脂組成物が、機械的特性に優れ、かつ耐傷付性に優れた成形品、特に自動車内装部品を製造するのに好適であることを見出し、発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、
(A)メルトフローレート(ISO 1133、230℃、2.16kg荷重下)が20〜300g/10分であるプロピレン系重合体:50〜75重量%、
(B−1)メルトフローレート(ISO 1133、230℃、2.16kg荷重下)が0.4g/10分未満である、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体:5〜15重量%、
(B−2)メルトフローレート(ISO 1133、230℃、2.16kg荷重下)が0.5g/10分以上、10g/10分未満であるエチレン・α−オレフィン共重合体:5〜15重量%、および、
(C)無機充填剤:15〜30重量%(ただし、成分(A)、(B−1)、(B−2)および(C)の合計量は100重量%)からなる(G)樹脂組成物100重量部、
(D)変性ポリプロピレン0.1〜5.0重量部、
(E)表面改質剤0.1〜1.0重量部、および、
(F)顔料1.0〜6.0重量部、
を配合してなることを特徴としている。
【0008】
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、前記(F)顔料は、(F−1)カーボンブラック0.5重量部以上3.0重量部以下と、(F−2)無機・有機顔料0.5重量部以上3.0重量部以下との混合物であることが好ましい。また、前記(F−1)カーボンブラックの配合量と、前記(F−2)無機・有機顔料の配合量との割合((F−1)/(F−2))は1.0以上3.0以下であることが好ましい。
【0009】
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、前記(F−1)カーボンブラックの平均一次粒子径は10nm以上45nm未満であり、表面積が40m2/g以上550m2/g以下であることが好ましい。
【0010】
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、(A)プロピレン系重合体は、プロピレン・エチレンブロック共重合体であることが好ましい。また、前記プロピレン・エチレンブロック共重合体の23℃におけるn−デカン可溶分量が5〜15重量%であることがより好ましい。
【0011】
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、(B−1)成分の23℃におけるn−デカン可溶分の極限粘度[η]は2.0〜2.4dl/gであり、(B−2)成分の23℃におけるn−デカン可溶分の極限粘度[η]は1.0〜2.0dl/gであることが好ましい。また、(B−1)成分と(B−2)成分との合計量は、樹脂組成物(G)100重量%に対して10〜30重量%であることが好ましい。さらに、(B−1)成分と(B−2)成分との合計量に対する(B−1)成分の割合は、25〜75重量%であることが好ましい。
【0012】
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、(C)無機充填剤は、平均粒径が1〜15μmのタルクであることが好ましい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、(D)変性ポリプロピレンは、無水脂肪酸変性ポリプロピレンであることが好ましい。
【0013】
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、(E)表面改質剤は、脂肪酸アミドであることが好ましい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、(F)顔料は、酸化チタン、Ti−Cr−Sb複合酸化物系顔料、および銅フタロシアニン系顔料よりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0014】
本発明の成形品、自動車内外装品および家電製品は、上記本発明のプロピレン系樹脂組成物を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、射出成形に好適で、機械的特性に優れ、しかも、耐傷付き性に優れた成形品を製造でき、また、高い意匠性の要求される自動車内装部品などの用途にも好適に用いられるプロピレン系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、下記成分(A)、(B−1)、(B−2)および(C)からなる(G)樹脂組成物、(D)変性ポリプロピレン、(E)表面改質剤、および(F)顔料を配合してなる。
【0017】
以下、それぞれの構成成分および任意で含んでいてもよい成分について詳説する。
<(A)プロピレン系重合体>
本発明に用いる(A)プロピレン系重合体は、メルトフローレートが20〜300g/10分、好ましくは50〜250g/10分である。
【0018】
前記(A)プロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体でも、プロピレンと他の共重合性単量体との共重合体であってもよいが、中でもプロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましく、その際の23℃におけるn−デカン可溶分量は好ましくは5〜15重量%、より好ましくは7〜13重量%である。また、23℃におけるn−デカン可溶分エチレン量は好ましくは25〜50mol%、より好ましくは30〜45mol%である。
【0019】
前記(A)プロピレン系重合体は、公知のチタン触媒を用いて製造することができる。チタン触媒の好ましい例としては、チタン、マグネシウムおよびハロゲンの各原子を含む固体状チタン触媒成分とアルミニウム化合物とを主たる成分とする重合用固体触媒が挙げられる。
【0020】
本発明で用いる(A)プロピレン系重合体がプロピレン・エチレンブロック共重合体(すなわち、プロピレン系ブロック共重合体)である場合、当該共重合体を製造する方法としては、たとえば、特開平11−107975号公報や特開2004−262993号公報に記載されている方法に準じて、高立体規則性ポリプロピレン製造用触媒の存在下に、多段重合により製造する方法が挙げられる。すなわち、プロピレン系ブロック共重合体は、(i)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有する固体状チタン触媒成分と、(ii)有機金属化合物触媒成分と、(iii)ドナー成分とから形成される高立体規則性ポリプロピレン製造用の重合用触媒の存在下に、第1段で実質的に水素の存在下もしくは非存在下でプロピレンを重合させるプロピレン単独重合体部を、最終的に得られるプロピレン系ブロック共重合体全体の75〜95重量%製造する段と、エチレンおよびプロピレンを共重合させてエチレン・プロピレンランダム共重合体部を、最終的に得られるプロピレン系ブロック共重合体全体の5〜25重量%製造する段とを含む2段以上の多段重合により製造することができる。後述するプロピレン系ブロック共重合体(A−1)および(A−2)のMFRおよび極限粘度[η]は、重合条件などを調節することで適宜調整することができ、その方法としては特に制限されないが、中でも分子量調整剤として水素を使用する方法が好ましい。
【0021】
各段の重合は、連続的に行うこともできるし、バッチ式あるいは半連続式に行うこともできるが、連続的に行うのが好ましい。また、重合は、気相重合法、あるいは溶液重合、スラリー重合、バルク重合などの液相重合法など、公知の方法で行うことができる。第2段目以降の重合は、前段の重合に引き続いて、連続的に行うのが好ましい。バッチ式で行う場合、1器の重合器を用いて多段重合することもできる。
【0022】
重合媒体として、不活性炭化水素類を用いてもよく、また液状のプロピレンを重合媒体としてもよい。また、各段の重合条件は、重合温度が約−50〜+200℃、好ましくは約20〜100℃の範囲内で、また、重合圧力は、常圧〜9.8MPa(ゲージ圧)、好ましくは約0.2〜4.9MPa(ゲージ圧)の範囲内で適宜選択される。
【0023】
また、本発明で用いる(A)プロピレン系重合体が、プロピレンの単独重合体、または、プロピレンと他の共重合性単量体との共重合体の場合、これらの製造方法は、上記のプロピレン・エチレンブロック共重合体を製造する方法に準じて、プロピレンの単独重合体の場合にはプロピレンのみを重合させて単段または2段以上の多段で製造、プロピレンと他の共重合性単量体との共重合体の場合にはプロピレンと他の共重合性単量体を重合させて単段または2段以上の多段で製造することができる。
【0024】
<(B−1)エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体>
本発明に用いる(B−1)成分であるエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体は、メルトフローレートが0.4g/10分未満、好ましくは0.05〜0.35g/10分である。
【0025】
また、(B−1)成分のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2.0×105〜5.0×105、より好ましくは2.3×105〜3.0×105である。(B−1)成分の重量平均分子量が2.0×105よりも低いと、得られる成形体の表面光沢が高くなる場合があり、また、重量平均分子量が5.0×105を超えると、成形体の耐衝撃性が低下する場合がある。
【0026】
(B−1)成分として用いられるエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、炭素数3〜10のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、たとえば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0027】
また、(B−1)成分として用いられるエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体を構成するジエンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロピリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの環状非共役ジエン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,7−オクタジエン、7−メチル−1,6オクタジエンなどの鎖状の共役ジエンなどが挙げられる。これらの中では、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。
【0028】
また、(B−1)成分の23℃におけるn−デカン可溶分の極限粘度〔η〕は、好ましくは2.0〜2.4dl/gである。
<(B−2)エチレン・α−オレフィン共重合体>
本発明に用いる(B−2)成分であるエチレン・α−オレフィン共重合体は、メルトフローレートが0.5g/10分以上、10g/10分未満、好ましくは1.5〜8g/10分である。
【0029】
(B−2)成分として用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレンと、炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体が挙げられ、α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが好ましい。
【0030】
また、(B−2)成分のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は、0.5×105〜2.0×105、好ましくは1.0×105〜1.8×105である。重量平均分子量がこの範囲であると、得られる組成物の機械物性バランスがよいため好ましい。
【0031】
さらに、(B−2)成分の23℃におけるn−デカン可溶分の極限粘度〔η〕は、好ましくは1.0〜2.0dl/gである。
<(C)無機充填剤>
本発明に用いる(C)無機充填剤としては、特に限定されることなく公知の無機充填剤を用いることができるが、たとえば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、石膏、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、さらには亜鉛、銅、鉄、アルミニウム等の金属粉末、あるいは金属繊維等が挙げられ、これらは1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。中でもタルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等が好ましく、特にタルクがより好ましい。タルクとしては、平均粒径が1〜15μm、好ましくは1〜6μmのものが好適に使用できる。
【0032】
<(G)樹脂組成物>
本発明で用いる(G)樹脂組成物は、上記(A)成分、(B−1)成分、(B−2)成分および(C)成分からなる。各成分の配合割合は、成分(A)、(B−1)、(B−2)および(C)の合計量を100重量%とした場合に、(A):50〜75重量%、好ましくは50〜69重量%、(B−1):5〜15重量%、(B−2):5〜15重量%、(C):15〜30重量%である。
【0033】
ここで、(B−1)成分と(B−2)成分との合計である(B)成分は、(G)樹脂組成物100重量%中において、10〜30重量%の割合で含まれる。
また、(G)樹脂組成物中における、(B−1)成分と(B−2)成分との合計量(100重量%)に対する(B−1)成分の割合が、通常25〜75重量%の範囲であるのが望ましい。
【0034】
<(D)変性ポリプロピレン>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上述の(G)樹脂組成物100重量部に対して、(D)変性ポリプロピレンを0.1〜5.0重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部配合する。本発明のプロピレン系樹脂組成物中において、(D)変性ポリプロピレンは、耐傷付性改良剤として作用する。
【0035】
(D)変性ポリプロピレンとしては、無水脂肪酸変性ポリプロピレンが好ましく、特に無水マレイン酸変性ポリプロピレンがより好ましい。(D)変性ポリプロピレンとして無水マレイン酸変性ポリプロピレンを使用する場合、無水マレイン酸変性ポリプロピレン100重量%に対して、マレイン酸変性基含有量(M値)が、通常0.5重量%〜5.0重量%、好ましくは0.8重量%〜2.5重量%である。この範囲より低くなると耐傷付性改良効果が認められず、高くなると機械物性における衝撃強度が低下する場合がある。
【0036】
上記無水マレイン酸変性ポリプロピレンとしては、具体的に、三井化学アドマー、三洋化成ユーメックス、デュポン社製MZシリーズ、Exxon社製Exxelor等の市販品を使用することができる。
【0037】
<(E)表面改質剤>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上述の(G)樹脂組成物100重量部に対して、(E)表面改質剤を0.1〜1.5重量部、好ましくは0.2〜1.3重量部、さらに好ましくは0.3〜1.0重量部配合する。
【0038】
(E)表面改質剤としては、帯電防止剤として知られているものが好適に用いられ、その代表的なものとしては、脂肪酸アミド、モノグリセリド等が挙げられ、中でも脂肪酸アミドが好ましい。前記脂肪酸アミドとしては、具体的に、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、パルミチン酸アミド、ミリスチン酸アミド、ラウリン酸アミド、カプリル酸アミド、カプロン酸アミド、n−オレイルパルミトアミド、n−オレイルエルカアミド、およびそれらの2量体などが挙げられ、中でも、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミドおよびエルカ酸アミドの2量体が好ましく、エルカ酸アミドがより好ましい。これらは1種単独もしくは2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
<(F)顔料>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上述の(G)樹脂組成物100重量部に対して、(F)顔料を1.0〜6.0重量部、好ましくは1.4〜4.0重量部、さらに好ましくは1.5〜3.0重量部配合する。
【0040】
(F)顔料としては、(F−1)カーボンブラックと、(F−2)無機・有機顔料との混合物が挙げられる。
[(F−1)カーボンブラック]
(F−1)カーボンブラックの平均一次粒子径は、10nm以上45nm未満、好ましくは15nm以上40nm未満、さらに好ましくは20nm以上30nm未満である。
【0041】
また、(F−1)カーボンブラックの表面積は、40m2/g以上550m2/g以下、好ましくは50m2/g以上300m2/g以下、さらに好ましくは80m2/g以上250m2/g以下である。
【0042】
(F−1)カーボンブラックの平均一次粒子径が10nm以下、表面積が550m2/gを超えると、顔料の凝集が促進してしまい十分な着色力及び隠蔽性が得られず、耐傷付き性効果が低下する。また、成形体の外観不良(表面のブツ発生)や耐衝撃性が低下する場合がある。平均一次粒子径が45nm以上、表面積40m2/g未満になると顔料の着色力及び隠蔽性が得られず耐傷付き性効果が低下する。
【0043】
なお、(F−1)カーボンブラックの平均一次粒子径は、粒子を電子顕微鏡により測定し、そこから算出した平均直径を粒子径とする方法により測定される。また、表面積は、JIS K 6127−2 窒素吸着法に準拠する方法により測定される。
【0044】
[(F−2)無機・有機顔料]
(F−2)無機・有機顔料としては、公知の顔料を特に制限なく用いることができる。具体的には、無機顔料(カーボンブラックを除く)としては、酸化チタン、複合酸化物(たとえばTi−Cr−Sb複合酸化物)、群青、酸化鉄、酸化クロム系顔料が挙げられ、有機顔料としては、溶性アゾ、不溶性アゾ、縮合型アゾ、フタロシアニン(たとえば銅フタロシアニン)、縮合多環系顔料が挙げられる。
これらのうち、(F−1)カーボンブラックの色調との兼ね合いを考え、耐傷付き性(白化傷防止)の観点から、酸化チタン系顔料、Ti−Cr−Sb複合酸化物系顔料、銅フタロシアニン系顔料が好ましい。
【0045】
(F−2)無機・有機顔料の平均一次粒子径は0.05μm以上5μm未満、好ましくは0.1μm以上3μm未満、さらに好ましくは0.1μm以上1μm未満である。(F−2)無機・有機顔料の平均一次粒子径が0.05μm未満になると、顔料の凝集が促進してしまい十分な着色力及び隠蔽性が得られず、耐傷付き性効果が低下する。また成形体の外観不良(表面のブツ発生)や耐衝撃性が低下する場合がある。平均一次粒子径が5μm以上になると、顔料の十分な着色力及び隠蔽性が得られず耐傷付き性効果が低下する。
【0046】
なお、(F−2)無機・有機顔料の平均一次粒子径は、粒子をレーザー回折・散乱式の粒子径・粒度分布測定装置により測定し、測定値より算出した平均直径を粒子径とする方法により測定される。
【0047】
[(F−1)と(F−2)との含量]
(F−1)カーボンブラックの配合量は、上述の(G)樹脂組成物100重量部に対して、0.5重量部以上3.0重量部以下、好ましくは0.8重量部以上2.5重量部以下、さらに好ましくは0.8重量部以上2.0重量部以下である。
【0048】
(F−1)カーボンブラックの配合量が3.0重量部を超えると、顔料の凝集が促進してしまい十分な着色力及び隠蔽性が得られず、耐傷付き性効果が低下する。また、成形体の外観不良(表面のブツ発生)や耐衝撃性が低下する場合がある。配合量が0.5重量部未満になると顔料の十分な着色力及び隠蔽性が得られず耐傷付き性効果が低下する。
【0049】
また、(F−2)無機・有機顔料の配合量は、上述の(G)樹脂組成物100重量部に対して、0.5重量部以上3.0重量部以下、好ましくは0.5重量部以上2.5重量部以下、さらに好ましくは0.5重量部以上2.0重量部以下である。(F−2)無機・有機顔料の配合量が3.0重量部を超えると、顔料の凝集が促進してしまい十分な着色力及び隠蔽性が得られず、耐傷付き性効果が低下する。また、成形体の外観不良(表面のブツ発生)や耐衝撃性が低下する場合がある。配合量が0.5重量部未満になると、顔料の十分な着色力及び隠蔽性が得られず耐傷付き性効果が低下する。
【0050】
さらに、(F−1)カーボンブラックの配合量と、(F−2)無機・有機顔料の配合量との割合((F−1)/(F−2))は、1.0以上3.0以下、好ましくは1.0以上2.5以下、さらに好ましくは1.0以上2.0以下である。(F−1)カーボンブラックの配合量と、(F−2)無機・有機顔料の配合量との割合((F−1)/(F−2))が3.0を超えると成形体の色調は漆黒性が極めて強くなるため、白化傷が目立ち易くなり耐傷付き性効果が低下する。
【0051】
<その他の添加剤>
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、充填剤、着色剤、滑剤、顔料などの他の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。配合する添加剤などの混合順序は任意であり、同時に混合してもよいし、一部成分を混合した後に他の成分を混合するというような多段階の混合方法を採用することもできる。
【0052】
<プロピレン系樹脂組成物>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上述した成分(A)、(B−1)、(B−2)および(C)からなる樹脂組成物(G)と、成分(D)、(E)および(F)と、必要に応じてその他の添加剤とを配合することにより製造することができる。これらの各成分は、任意の順序で配合することができる。
【0053】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、前記成分(A)、(B−1)、(B−2)、(C)、(D)、(E)および(F)の各成分と、必要に応じて配合するその他の添加剤とを、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置により混合または溶融混練することにより得ることができる。
【0054】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、特に射出成形に好適に用いられる。本発明のプロピレン系樹脂組成物を射出成形して得られる成形品は、優れた機械物性を有するとともに、フローマークやウェルドマークが目立ち難い等の優れた外観を有し、更には低光沢性、耐傷付性にも優れている。
【0055】
このような本発明のプロピレン系樹脂組成物は、自動車内外装部品、家電部品などの種々の分野に好適に用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明において、各物性の測定および評価は、以下の方法により行った。
【0057】
[n−デカン可溶成分]
(A)プロピレン系共重合体として用いたプロピレン−エチレンブロック共重合体の25℃におけるn−デカン可溶成分量は、次のようにして求めた。
【0058】
まず、試料を5±0.05g精秤した1,000ミリリットルのナス型フラスコに入れ、さらにBHT(ジブチルヒドロキシトルエン、フェノール系酸化防止剤)1±0.05gを添加した後、回転子及びn−デカン700±10ミリリットルを投入した。次いで、ナス型フラスコに冷却器を取り付け、回転子を作動させながら、135±5℃のオイルバスでフラスコを120±30分間加熱して、試料をn−デカンに溶解させた。次に、1000ミリリットルのビーカーにフラスコの内容物を注いだ後、ビーカー内の溶液をスターラーで攪拌しながら、室温(25℃)になるまで放冷(8時間以上)した後、析出物を金網でろ取した。ろ液を、さらに、ろ紙でろ過した後、3,000ミリリットルのビーカーに収容されたメタノール2,000±100ミリリットル中に注ぎ、この液を、室温(25℃)下、スターラーで攪拌しながら、2時間以上放置した。次に、得られた析出物を金網でろ取した後、5時間以上風乾後、真空乾燥機で100±5℃で240〜270分間乾燥し、25℃におけるn−デカン可溶成分を回収した。
【0059】
25℃におけるn−デカン可溶成分の含有量(x)は、試料重量をAg、回収したn−デカン可溶成分の重量をCgとすれば、x(質量%)=100×C/Aで表される。
[マレイン酸変性基含有量(M値)]
(D)変性ポリプロピレンとして用いた酸変性樹脂(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)2gを採取し、500mlの沸騰p−キシレンに完全に加熱溶解した。冷却後、1200mlのアセトンに投入し、析出物を濾過、乾燥してポリマー精製物を得た。熱プレスにより厚さ20μmのフィルムを作製した。この作製したフィルムの赤外吸収スペクトルを測定し、変性に用いた酸の特有の吸収から、変性に用いた酸の含有量を測定した。尚、変性に用いた酸の特有の吸収は、無水マレイン酸であれば、1780cm-1付近、メタクリル酸エステルであれば1730cm-1である。
【0060】
[メルトフローレートの測定]
ISO 1133に準拠し、測定を実施した(測定温度:230℃, 荷重:2.16kg)。
【0061】
[常温シャルピー衝撃強度(kJ/m2)]
ISO 179に準拠し、ノッチ付、ハンマー容量4Jの条件で測定を実施した。
[引張弾性率の測定]
ISO 527に準拠し、引張速度1mm/minの条件で測定を実施した。
[フローマーク測定方法]
成形温度210℃,金型温度40℃,射出速度25mm/s,切替位置9mm,保圧30MPa,保圧時間10secで350mm×100mm×厚さ2mmtの成形品を作製し、ゲートからフローマークが目視で観察できる距離を記載する。
【0062】
[鏡面グロス]
成形温度210℃、金型温度40℃で成形した長さ130mm,幅120mm、厚み3mmtで成形品表面が鏡面仕上げした成形角板を用い、グロスメーター(日本電色工業(株)製 NDH−300)により光源照射角度60°で鏡面グロスを測定した。
【0063】
[耐傷付き性]
成形温度210℃,金型温度40℃で成形した長さ130mm,幅120mm,厚み2mmtで角板の表面をGrainCのシボ加工した成形品を用いて以下の評価を実施した。
【0064】
(i)Ford 5−Finger Test 試験実施後、目視にて白化が認められない最大荷重(N)を評価した。
(ii)荷重100g,200gクロスカット試験実施後、分光測色計にて各試験片の試験前後の色差を測定した。
【0065】
以下の実施例および比較例において、使用した各成分および物性は、次のとおりである。
(A)プロピレン系重合体
(A−1)プロピレンブロック共重合体
(1)固体状チタン触媒成分の調製
直径12mmの鋼球9kgの入った内容積4Lの粉砕用ポットを4個装備した振動ミルを用意した。各ポットに窒素雰囲気中で塩化マグネシウム300g、フタル酸ジイソブチル115mL、四塩化チタン60mLを加え40時間粉砕した。
【0066】
上記共粉砕物75gを5Lのフラスコに入れトルエン1.5Lを加え114℃で30分間攪拌処理し、次いで静置して上澄み液を除去した。次いで、n−ヘプタン1.5Lにより20℃で3回、固形分を洗浄し、さらに1.5Lのn−ヘプタンに分散して遷移金属触媒成分スラリーとした。得られた遷移金属触媒成分は、チタンを2重量%、フタル酸ジイソブチルを18重量%の量で含有していた。
(2)前重合触媒の製造
得られた遷移金属触媒成分115g、トリエチルアルミニウム65.6mL、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン22.1mL、ヘプタン115Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温5℃に保ちプロピレンを1150g挿入し、60分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、四塩化チタン15.8mLを装入し、前重合触媒(触媒スラリー)とした。
(3)本重合
内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレンを159kg/時間、触媒スラリーを遷移金属触媒成分として1.4g/時間、トリエチルアルミニウム21.9mL/時間、ジシクロペンチルジメトキシシラン2.8mL/時間を連続的に供給し、水素を気相部の水素濃度が13.4mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力3.6MPa/Gで重合を行った。
【0067】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを37kg/時間、水素を気相部の水素濃度が11.5mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力3.4MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを19kg/時間、水素を気相部の水素濃度が8.0mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力3.4MPa/Gで重合を行った。
【0068】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.27mol%、重合温度65℃、圧力3.2MPa/Gとなるようにエチレンを装入した。ジエチレングリコールエチルアセテートを遷移金属触媒成分中のTi成分あたり26倍モルの割合で添加した。
【0069】
得られたスラリーは失活、気化後、気固分離を行った。得られたプロピレン系ブロック共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1)の物性は以下に示した。
【0070】
MFR=53g/10分
23℃ n−デカン可溶分重量=12重量%
23℃ n−デカン可溶分エチレン量=37mol%
23℃ n−デカン可溶分[η]=6dl/g
(A−2)プロピレンブロック共重合体
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム952g、デカン4420mlおよび2−エチルヘキシルアルコール3906gを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行って無水フタル酸を溶解させた。
【0071】
このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却した後、この均一溶液の750mlを、−20℃に保持された四塩化チタン2000ml中に1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間攪拌しながら同温度に保持した。次いで熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を2750mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。
【0072】
加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。
上記のように調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分は、チタンを2重量%、塩素を57重量%、マグネシウムを21重量%およびDIBPを20重量%の量で含有していた。
(2)前重合触媒の製造
固体触媒成分87.5g、トリエチルアルミニウム99.8mL、ジエチルアミノトリエトキシシラン28.4ml、ヘプタン12.5Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちプロピレンを875g挿入し、100分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で0.7g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。
(3)本重合
内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレンを131kg/時間、触媒スラリーを遷移金属触媒成分として0.67g/時間、トリエチルアルミニウム19.7mL/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン4.4mL/時間を連続的に供給し、水素を気相部の水素濃度が5.9mol%になるように供給した。重合温度75℃、圧力3.5MPa/Gで重合を行った。
【0073】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを30kg/時間、水素を気相部の水素濃度が4.6mol%になるように供給した。重合温度74.5℃、圧力3.5MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを20kg/時間、水素を気相部の水素濃度が4.0mol%になるように供給した。重合温度73℃、圧力3.4MPa/Gで重合を行った。
【0074】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.17mol%、重合温度67℃、圧力3.3MPa/Gとなるようにエチレンを装入した。ジエチレングリコールエチルアセテートを遷移金属触媒成分中のTi成分あたり46倍モルの割合で添加した。
【0075】
得られたスラリーは失活、気化後、気固分離を行った。得られたプロピレン系ブロック共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A−2)の物性は以下に示した。
【0076】
MFR=90g/10分
23℃ n−デカン可溶分重量=9重量%
23℃ n−デカン可溶分エチレン量=37mol%
23℃ n−デカン可溶分[η]=7dl/g
(B−1)エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体
(B−1−1)エチレン−プロピレン−ジエンランダム共重合体(三井化学社製、製品名3092PM)
MFR=0.2g/10分
[η]=2.1dl/g
(B−1−2)エチレン−プロピレン−ジエンランダム共重合体(ダウエラストマー日本社製、製品名IP4760P)
MFR=0.2g/10分
[η]=2.1dl/g
(B−2)エチレン・α−オレフィン共重合体
(B−2−1)エチレン−オクテンランダム共重合体(三井化学社製、製品名H1030S)
MFR=7g/10分
[η]=1.2dl/g
(B−2−2)エチレン−オクテンランダム共重合体(ダウエラストマー日本社製、製品名EG8100)
MFR=2g/10分
[η]=1.5dl/g
(B−2−3)エチレン−オクテンランダム共重合体(ダウエラストマー日本社製、製品名EG8200)
MFR=10.6g/10分
[η]=1.2dl/g
(C)無機充填剤
(C−1)タルク(浅田製粉社製、製品名JM−209)
平均粒径4μm
(D)変性ポリプロピレン
(D−1)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学社製、製品名QX−100):M値=3.0重量%
(E)表面改質剤
(E−1)エルカ酸アミド(日本精化社製、製品名ニュートロンS)
(F)顔料
(F−1−1)カーボンブラック(CABOT社製、製品名BLACK PEARLS 4840)、平均一次粒子径20nm、表面積204m2/g
(F−1−2)カーボンブラック(CABOT社製、製品名BLACK PEARLS 430)、平均一次粒子径27nm、表面積80m2/g
(F−2−1)酸化チタン(石原産業社製、製品名Tipaque CR−63)、平均一次粒子径0.2μm
(F−2−2)Ti−Cr−Sb複合酸化物系顔料(BASF社製、製品名Sicotan Yellow K 2001)、平均一次粒子径0.7μm
(F−2−3)銅フタロシアニン系顔料(大日精化工業社製、製品名GB−09)、平均一次粒子径0.2μm
[実施例1〜8及び比較例1〜9]
表1,2に示すように、各所定量の各成分と、
酸化防止剤(BASF社製、製品名IRGANOX1010):0.1重量部、
酸化防止剤(BASF社製、製品名IRGAFOS168):0.1重量部、
耐光安定剤(ADEKA社製、製品名LA−52):0.2重量部、
滑剤(日本油脂社製、製品名ステアリン酸カルシウム):0.1重量部
とを配合して高速ミキサーでドライブレンドし、二軸押出機(日本製鋼所社製、製品名:TEX30α)により、シリンダー温度180℃、スクリュー回転数1100rpm、吐出量110kg/hの条件で混練し、樹脂組成物ペレットを得た。
【0077】
得られたペレットを、射出成形にて上述した評価項目用試料に成形加工し、評価した。
結果を表1,2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
実施例1〜8、比較例1〜2より、本発明のプロピレン系樹脂組成物から得られた成形体では、(F)顔料成分を適正量配合することにより、成形体の耐傷付き性効果が向上していることがわかった。
【0081】
実施例6〜8、比較例3〜5より、本発明のプロピレン系樹脂組成物から得られた成形体では、(B−2)エチレン・α−オレフィン共重合体成分を適正量配合することにより、鏡面グロスが最適化していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、インパネ、コンソールボックスなどの自動車内外装部品、家電部品等、種々の分野の成形品材料として好適に用いることができる。