(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向とこれに直交する横方向とを有すると共に、該股間部に配される股下部並びに該股下部より縦方向前方に配される前方部及び縦方向後方に配される後方部を有し、該前方部から該後方部にわたって延在する液保持性の吸収性コアを備えた吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、標準吸収部と、前記股下部に配され、該標準吸収部に比して厚みが大きい突出部とを有し、
前記突出部は、前記吸収性コアの横方向における長さが最大であり、且つ
縦方向に所定長さに延びる一対の側縁辺、及び、該一対の側縁辺それぞれの縦方向前後端部から横方向内方に延びる縦縁辺を有する最大幅部と、
該最大幅部を挟んで縦方向の前後に位置する前方側凸部及び後方側凸部とを有し、
前記前方側凸部及び後方側凸部はそれぞれ、前記最大幅部の前記縦縁辺の内側端部から縦方向外方に延びる、一対の凸部側縁辺を含んで構成されており、
さらに、前記吸収性コアの非肌対向面側に配される非肌側シートを具備し、前記突出部は、前記標準吸収部の非肌対向面位置から該非肌側シート側に突出している吸収性物品。
前記標準吸収部と前記突出部とが一体成形されていると共に、両者の境界位置に境界溝が形成されており、該境界溝の形成部位は、該境界溝の周辺部に比して坪量が低い請求項1又は2に記載の吸収性物品。
前記一対の凸部側縁辺の縦方向外方への仮想延長線上に、前記標準吸収部溝どうしの交点が位置し、該交点の平面視における差し渡し長さが、該交点に連なる該標準吸収部溝の幅に比して長い請求項5に記載の吸収性物品。
前記吸収性物品の非肌対向面に、該吸収性物品を着衣に固定するズレ止め部が、前記一対の凸部側縁辺又はその仮想延長線と平面視において重なるように配されている請求項1〜8の何れか1項に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の吸収性物品をその好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。
図1及び
図2は、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1が示されている。ナプキン1は、
図1に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有すると共に、前方部A、股下部B及び後方部Cを縦方向Xに有している。股下部Bは、ナプキン1の着用時に着用者の排泄部(膣口等)に対向配置される排泄部対向部を有し、該排泄部対向部は通常、股下部Bの横方向Yの中央部に位置する。前方部Aは、股下部Bよりも着用者の腹側即ち前側に配される部分であり、後方部Cは、股下部Bよりも着用者の背側即ち後側に配される部分である。
【0013】
ナプキン1は、
図1に示すように、縦方向Xに長い形状の吸収性本体5と、吸収性本体5における股下部Bの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部5W,5Wとを有している。ウイング部5Wの非肌対向面には、該ウイング部5Wをショーツ等の着衣に固定するウイング部粘着部(図示せず)が形成されている。ウイング部5Wは、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられる。前記ウイング部粘着部は、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。
【0014】
本発明の吸収性物品における股下部Bは、ナプキン1のように吸収性物品がウイング部を有する場合には、該吸収性物品の縦方向(長手方向、図中のX方向)においてウイング部の縦方向Xにおける前方側の付け根と後方側の付け根とで区分される領域であり、ナプキン1を例にとれば、一対のウイング部5W,5Wそれぞれの縦方向Xにおける前方側の付け根どうしを結んで横方向Yに延びる仮想直線が股下部Bの前端、後方側の付け根どうしを結んで横方向Yに延びる仮想直線が股下部Bの後端である。また、ウイング部を有しない吸収性物品における股下部は、吸収性物品が個装形態に折り畳まれた際に生じる、該吸収性物品を横方向(幅方向、図中のY方向)に横断する2本の折り畳み線について、該吸収性物品の縦方向の前端から数えて第1折り畳み線と第2折り畳み線とに囲まれた領域を意味する。
【0015】
吸収性本体5は、肌対向面側に配された液透過性の肌側シート2と、非肌対向面側に配された液不透過性の非肌側シート3と、両シート2,3間に介在配置された液保持性の吸収性コア4とを具備する。吸収性本体5は、縦方向Xに長い縦長の形状を有し、その長手方向が縦方向Xに一致し、幅方向が横方向Yに一致している。肌側シート2及び非肌側シート3と吸収性コア4(吸収性コア4が図示しないコアラップシートで被覆されている場合は該コアラップシート)との間は、ドット、スパイラル、ストライプ等のパターン塗工された接着剤により接合されていても良い。
【0016】
ナプキン1においては、吸収性本体5の肌対向面即ち肌側シート2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部に、吸収性コア4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシート6,6が吸収性本体5の縦方向Xの略全長にわたって配されている。サイドシート6の縦方向Xに延びる両側縁のうち、相対的に吸収性本体2に近い内側縁部は吸収性コア4と重なり、該内側縁部とは反対側の外側縁部は、吸収性コア4の横方向Yの外方に位置している。ナプキン1において着用者の肌から最も近い位置に配される部材は、ナプキン1の横方向Yの中央部においては肌側シート2、その両側部においてはサイドシート6であり、両シート2,6は着用者の肌に接触し得る。肌側シート2、非肌側シート3及びサイドシート6は、それぞれ、吸収性コア4の周縁から延出し、それらの延出部の少なくとも2枚のシートにおける端部にて、接着剤、ヒートシール等の公知の接合手段により互いに接合されてエンドシール部7が形成されている。
【0017】
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収性コア4)における、吸収性物品の着用時に着用者の排泄部に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に排泄部とは反対側(着衣側)に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌から遠い側である。尚、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、即ち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味し、吸収性物品が該着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
【0018】
肌側シート2としては、この種の吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく用いることができ、経血などの体液を透過し得る液透過性シートであることを前提として、合成繊維又は天然繊維からなる織布や不織布、多孔性シート等を用いることができる。肌側シート2の一例として、コットン等の天然繊維を材料とする不織布や、各種合成繊維に親水化処理を施したものを材料とする不織布を用いることができる。例えば、芯成分にポリプロピレンやポリエステル、鞘成分にポリエチレンを用いた、芯鞘構造型(サイドバイサイド型も含む)複合繊維をカーディングによりウエブ化した後、エアスルー法によって不織布(この後所定箇所に開孔処理を施しても良い)としたものが挙げられる。また、透液性の高さの点(ドライ感)から、低密度ポリエチレン等のポリオレフィンからなる開孔シートも好ましく用いることができる。
【0019】
非肌側シート3としては、この種の吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく用いることができ、液不透過性(撥水性を含む)で、且つ透湿性のものが好ましく用いられる。具体的に十分な水蒸気透過性を得るために、炭酸カルシウム等のフィラーからなる微粉を分散させたポリエチレン等の合成樹脂製のフィルムを延伸し、微細な孔を設けた多孔質フィルムは、非肌側シート3として好適に使用できる。サイドシート6としては、非肌側シート3として使用可能なものを用いることができるほか、非肌側シート3よりも液透過性の低い不織布等を用いることもできる。
【0020】
図3には、吸収性コア4の非肌対向面側が示されている。
図1及び
図3に示すように、吸収性コア4は縦方向Xに長い縦長の形状を有し、その長手方向が縦方向Xに一致し、幅方向が横方向Yに一致している。吸収性コア4は、前方部Aから股下部Bを介して後方部Cにわたって延在している。吸収性コア4は、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体を含んでなる。繊維材料としては、従来、生理用ナプキンやパンティライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収体に用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。該繊維材料は、全体又は一部がパルプ繊維であることが好ましく、全体がパルプ繊維であることがより好ましい。
また、吸収性コア4には吸水性ポリマーが含有されていてもよい。吸水性ポリマーが含有されることで、より安定的に大量の血液などの排泄液を素早く吸収し、保持することができる。
吸収性コア4の肌対向面及び非肌対向面の両面が、紙、不織布などからなる液透過性のコアラップシート(図示せず)で被覆されている。
また、吸収性コア4には、消臭剤や抗菌剤等を必要に応じて配合しても良い。
【0021】
吸収性コア4は、標準吸収部40と、股下部Bに配され、標準吸収部40に比して厚みが大きい突出部41とを有する。本実施形態においては、標準吸収部40は、吸収性コア4において相対的に厚み及び坪量の双方が小さい領域、突出部41は、吸収性コア4において相対的に厚み及び坪量の双方が大きい領域であり、吸収性コア4の縦方向Xの前方側及び後方側がそれぞれ標準吸収部40、その前後一対の標準吸収部40,40に挟まれた縦方向Xの中央部が突出部41である。突出部41は、少なくとも前記排泄部対向部が存する股下部Bに配され、本実施形態においては
図1及び
図3に示すように、股下部Bの縦方向Xの全長にわたり、さらに前方部A及び後方部Cに延在している。標準吸収部40は前方部A及び後方部Cに配されている。本実施形態においては、突出部41は、
図1及び
図2に示すように、標準吸収部40の非肌対向面40bより非肌側シート3側に突出している。
【0022】
突出部41は、
図3に示すように吸収性コア4を平面視して、吸収性コア4の横方向Yにおける長さが最大である最大幅部42と、該最大幅部42を挟んで縦方向Xの前後に位置する前方側凸部43及び後方側凸部44とを有する。最大幅部42の横方向Yの長さは、吸収性コア4の横方向Yの長さと同じであることが好ましい。前方側凸部43は最大幅部42から縦方向Xの前方に膨出し、後方側凸部44は最大幅部42から縦方向Xの後方に膨出している。本実施形態においては、最大幅部42、前方側凸部43及び後方側凸部44からなる、突出部41は、坪量及び厚みが何れも均一である。最大幅部42及び両凸部43,44は、何れも標準吸収部40の非肌対向面40bより非肌側シート3側に突出しているところ、これら各部42,43,44の突出高さH(
図2参照)は、少なくとも設計上は互いに同じであり、実際の製品においてもほぼ同じである。
【0023】
突出部41(最大幅部42、前方側凸部43及び後方側凸部44)の突出高さH(
図2参照)は、好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上、そして、好ましくは8.0mm以下、さらに好ましくは6.0mm以下である。突出部41の突出高さHは、高すぎても低すぎても、却ってフィット性、漏れ防止性に悪影響を及ぼすおそれがある。突出部41の高さHは、標準吸収部40における突出部41の形成面(本実施形態では非肌対向面40b)と突出部41の頂部との差であり、吸収性コア4を無荷重の状態で定盤に静置し、ハイトゲージを用いて常法に従って測定される。尚、斯かる測定において、測定対象のナプキン1に、個装形態に折り畳まれた際に生じる、ナプキン1を横方向Yに横断する折り畳み線が存在する場合は、該折り畳み線の存在しない部分において測定を行う。
【0024】
最大幅部42は、
図3に示すように、縦方向Xに所定長さに延びる一対の側縁辺420,420と、該一対の側縁辺420,420それぞれの縦方向Xの前後端部から横方向Yの内方(横方向Yの中央)に延びる縦縁辺421,422とを有する。本実施形態においては、最大幅部42は、
図3に示す如き平面視において四角形形状(長方形形状)をなし、縦方向Xに延びる左右一対の側縁辺420,420と、該両側縁辺420,420に連接された前後一対の縦縁辺421,422とを有する。最大幅部42の両側縁辺420,420は、股下部Bにおいて吸収性コア4における最大幅部42が存する部位の両側縁を形成している。また、最大幅部42の前側縦縁辺421は、前方部Aと股下部Bとの境界、即ち一対のウイング部5W,5Wそれぞれの縦方向Xにおける前方側の付け根どうしを結んで横方向Yに延びる仮想直線とほぼ同位置にあり、後側縦縁辺422は、股下部Bと後方部Cとの境界、即ち一対のウイング部5W,5Wそれぞれの縦方向Xにおける後方側の付け根どうしを結んで横方向Yに延びる仮想直線とほぼ同位置にある。つまり、股下部Bに位置する吸収性コア4は、そのほぼ全域が突出部41の一部である最大幅部42である。従ってナプキン1においては、少なくともナプキン1の着用時において、吸収性本体5の肌対向面における股下部Bに位置する部位のほぼ全体に、着用者の肌側に向かって突出する隆起部10が形成される。
【0025】
このように、フィット性、漏れ防止性などの諸特性の発現に重要な役割を担う隆起部10が、股下部Bにおいて吸収性コア4(吸収性本体5)の横方向Yの全長にわたって存在することで、例えば、着用者の動きによってナプキン1の着用位置が適正な位置から横方向Yに多少ずれた場合でも、隆起部10は依然として着用者の股間部に当接し得るようになる。従ってナプキン1は、着用者の動きに対する追従性、フィット性、漏れ防止性に優れる。
【0026】
図1及び
図3に示すように、前方側凸部43は前方部Aに、後方側凸部44は後方部Cに配されている。両凸部43,44と最大幅部42とは一体成形されている。本明細書において「一体成形されている」とは、複数の部位、例えば前方側凸部43と最大幅部42とが、接着剤や熱融着等の接合手段を介さずに互いに分離不可能に一体化されており、同一の材料から一体的に形成されていることを意味する。吸収性コア4の複数の部位が一体成形されていると、経血等の排泄液がスムーズに移動し得る連続性を有するようになる。
【0027】
両凸部43,44は、何れも最大幅部42よりも横方向Yの長さ即ち幅が小さく、吸収性コア4の横方向Yの中央部に位置している。
図3に示すように、前方側凸部43は、最大幅部42の前側縦縁辺421の内側端部に連接された一対の凸部側縁辺430,430を有し、後方側凸部44は、最大幅部42の後側縦縁辺422の内側端部に連接された一対の凸部側縁辺440,440を有する。最大幅部42の縦縁辺421,422は、それぞれ、横方向Yの外方に位置する外側端部と、内方に位置する前記内側端部とを有し、該外側端部は、側縁辺420の縦方向Xの前後端部に一致している。本実施形態においては、吸収性コア4は、該吸収性コア4を縦方向Xに二分して横方向Yに延びる仮想的な縦中心線CLxを基準として前後対称に形成されている。
【0028】
本実施形態のナプキン1の主たる特徴の1つとして、
図3に示す如き吸収性コア4の平面視において、最大幅部42の前側縦縁辺421に連接された前方側凸部43の一対の凸部側縁辺430,430、及び最大幅部42の後側縦縁辺422に連接された後方側凸部44の一対の凸部側縁辺440,440が、それぞれ、縦方向Xに延びている点が挙げられる。本実施形態においては、
図3に示すように、最大幅部42の縦縁辺421,422は、平面視において横方向Yに平行な直線状をなし、また、前方側凸部43の凸部側縁辺430及び後方側凸部44の凸部側縁辺440は、平面視において縦方向Xに平行な直線状をなしている。
【0029】
最大幅部42の縦縁辺421,422及び両凸部43,44の凸部側縁辺430,440は、何れも相対的に厚み及び坪量が大きく高剛性の突出部41と、相対的に厚み及び坪量が小さく低剛性の標準吸収部40との境界であり、ナプキン1をこれらの境界で折れ曲がりやすくする可撓軸として機能し得る。吸収性コア4においては、最大幅部42、前方側凸部43及び後方側凸部44からなる、突出部41が、最も剛性が高い高剛性領域、突出部41が存在せず標準吸収部40のみからなる部分が最も剛性が低い低剛性領域、そして、標準吸収部40における、両凸部43,44と縦方向Xにおいて同位置に存する部分、即ち両凸部43,44それぞれの横方向Yの両外方に位置する部分が、両領域の中間の剛性を有する中剛性領域となっている。
【0030】
そしてナプキン1は、この突出部41の特徴的な構成によりその着用状態において、着用者の股間部の形状に沿うように変形し、着用者の肌にフィット性良く密着する。具体的には
図4に示すように、前方部A及び後方部Cが、最大幅部42の横方向Yに延びる縦縁辺421,422を折曲線として肌対向面側に折れ曲がって起立することで、吸収性コア4延いてはナプキン1全体が、着用者の身体に沿いやすい舟型形状に変形する。また、股下部Bにおいては、前方側凸部43の一対の凸部側縁辺430,430と後方側凸部44の一対の凸部側縁辺440,440とを結ぶ、縦方向Xに延びる一対の仮想延長線450を折曲線として、一対の仮想延長線450,450よりも横方向Yの外方に位置する部位(股下部Bの横方向Yの両側部)が非肌対向面側に折れ曲がることで、股下部B全体が、一対の仮想延長線450,450に挟まれた領域即ち横方向Yの中央部を頂部とする、鞍型に変形する。この鞍型の股下部Bの頂部は、縦方向Xに延びる2本の可撓軸として機能する一対の仮想延長線450,450によって画成されているため、湾曲などの変形を起こし難く、平面形状を維持しやすい。そのためナプキン1の着用時には、鞍型の股下部Bの頂部が、着用者の肌に対して、一定の面積を有する「面」で接することができ、それによってフィット性、着用者の動きに対する追従性、防漏性などの向上が期待できる。また、最大幅部42の横方向Yに延びる縦縁辺421,422は、ナプキン1を縦方向Xに三つ折りするなどして個装形態とする場合の折り起点としても機能し、ナプキン1を縦縁辺421,422にて容易に折り曲げることができるため、ナプキン1は、着用時の性能のみならず、加工性にも優れる。
【0031】
これに対し、例えば特許文献2記載の生理用ナプキンにおいては、股下部に吸収性コアの突出部の最大幅部が位置し、その最大幅部の縦方向の前後に、横方向長さ即ち幅が縦方向外方に向かうに従って漸次減少する、平面視等脚台形状部分の突出部が位置している。つまり、股下部が変形する際の可撓軸として機能し得る、この平面視等脚台形状部分の突出部の両側縁は、それそれ、最大幅部の縦方向に沿う側縁の一端から縦方向外方且つ横方向内方に向かって斜めに延びており、本実施形態のナプキン1における両凸部43,44の凸部側縁辺430,440が縦方向に延びているのとは対照的である。斯かる構成の特許文献2記載の生理用ナプキンの着用時において、股下部の横方向への変形の起点となるのは、主として、股下部Bの横方向中央を通って縦方向に延びる1本の可撓軸のみであるため、該股下部は、その横方向中央を頂点とする山型形状もしくは、谷型形状に変形しやすく、その山型もしくは谷型の股下部の頂部は、着用者の肌に対して「線」で接する。それに対し、本実施形態のナプキン1は、
図4に示すような平面形状を維持し易く、着用者の肌に対して「面」で接する。従ってナプキン1は、フィット性、着用者の動きに対する追従性、防漏性などの点で優れる。
【0032】
尚、最大幅部42の縦縁辺421,422及び両凸部43,44の凸部側縁辺430,440の平面視形状は、それぞれ、
図3に示す如き直線状に限定されず、例えば波線状、ジグザグ状など、湾曲部や屈曲部を有する線状も許容され得る(
図8参照)。
また、最大幅部42の縦縁辺421,422に関して、「横方向Yに延びる」(側縁辺420の前後端部から横方向Yの内方に延びる)とは、
図3に示す如き、縦縁辺421,422が、側縁辺420の一端部を基点として、横方向Yに対して平行に延びる形態(横方向Yに対する角度が0度の形態)に限定されず、縦縁辺421,422の横方向Yに対する角度が好ましくは45度以下、さらに好ましくは30度以下の形態、即ち縦縁辺421,422が実質的に横方向Yの中央部に向かって延びる形態も許容され得る(
図8参照)。
また、両凸部43,44の凸部側縁辺430,440に関して、「縦方向Xに延びる」(縦縁辺421,422の内側端部から縦方向Xの外方に延びる)とは、
図3に示す如き、凸部側縁辺430,440が縦方向Xに対して平行に延びる形態(縦方向Xに対する角度が0度の形態)に限定されず、凸部側縁辺430,440の縦方向Xに対する角度が好ましくは±45度以下、さらに好ましくは±30度以下の形態、即ち凸部側縁辺430,440が実質的に縦方向Xに延びる形態も許容され得る(
図8参照)。
しかし、前述した作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点からは、
図3に示すように、最大幅部42の縦縁辺421,422は、平面視において横方向Yに平行な直線状をなし、また、前方側凸部43の凸部側縁辺430及び後方側凸部44の凸部側縁辺440は、平面視において縦方向Xに平行な直線状をなしていることが好ましい。
【0033】
前述した作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、突出部41(最大幅部42、前方側凸部43及び後方側凸部44)の各部の寸法等は次のように設定することが好ましい。
突出部41の坪量は、好ましくは100g/m
2以上、さらに好ましくは200g/m
2以上、そして、好ましくは1500g/m
2以下、さらに好ましくは1200g/m
2以下である。
最大幅部42の縦方向Xの長さ(側縁辺420の長さ)L1(
図3参照)は、吸収性コア4の縦方向Xの全長に対して、好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上、そして、好ましくは90%以下、さらに好ましくは75%以下である。
前記長さL1は、好ましくは25mm以上、さらに好ましくは30mm以上、そして、好ましく360mm以下、さらに好ましくは300mm以下である。
【0034】
前方側凸部43及び後方側凸部44の縦方向Xの長さ(凸部側縁辺430,440の長さ)L2(
図3参照)は、それぞれ、吸収性コア4の縦方向Xの全長に対して、好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、そして、好ましくは75%以下、さらに好ましくは60%以下である。
前記長さL2は、好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上、そして、好ましくは290mm以下、さらに好ましくは240mm以下である。
両凸部43,44の横方向Yの長さ即ち幅L3(
図3参照)は、それぞれ、吸収性コア4の横方向Yの全長に対して、好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、そして、好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下である。
前記幅L3は、好ましくは10mm以上、さらに好ましくは15mm以上、そして、好ましくは65mm以下、さらに好ましくは55mm以下である。
【0035】
本実施形態のナプキン1においては、
図3に示すように、最大幅部42の前側縦縁辺421とこれに連接する前方側凸部43の一対の凸部側縁辺430,430とが直交しており、また、最大幅部42の後側縦縁辺422とこれに連接する後方側凸部44の一対の凸部側縁辺440,440とが直交している。斯かる構成により、前述した、縦縁辺421,422を折り起点とする吸収性コア4の縦方向Xへの変形及び個装折りが、より一層安定的になされるようになる。また、両凸部43,44の凸部側縁辺430,440及びそれらの延長線450に一致する、縦方向Xに延びる2本の可撓軸が、より一層安定的に形成されるようになるため、股下部Bが
図4に示すように鞍型に変形したときに、その鞍型の股下部Bの頂部が平面形状をより一層維持しやすくなる。
【0036】
また本実施形態においては、標準吸収部40と最大幅部42、前方側凸部43及び後方側凸部44から構成される突出部41とが一体成形されていると共に、
図3に示すように、その標準吸収部40と突出部41との境界位置に境界溝45が形成されている。即ちこの境界溝45は、最大幅部42の縦縁辺421,422、両凸部43,44の凸部側縁辺430,440及び縦縁辺431,441に沿って形成されており、突出部41を挟んで縦方向Xの前後に一対配されている。境界溝45は、
図2に示すように、標準吸収部40の非肌対向面40bに開口を有し、標準吸収部40の肌対向面40a側が境界溝45の底部を形成している。
【0037】
そして本実施形態においては、境界溝45の底部を形成する部位は、その周辺部に比して坪量が低い。斯かる構成により、吸収性コア4は境界溝45にてより一層折れ曲がりやすくなるところ、前述した吸収性コア4の折り変形の起点となる、最大幅部42の縦縁辺421,422及び両凸部43,44の凸部側縁辺430,440は境界溝45と一致しているので、吸収性コア4の
図4に示す如き好ましい変形がより一層確実になされるようになる。
【0038】
境界溝45は、積繊装置を用いた公知の吸収性コアの製造方法において、吸収性材料を含むコア形成材料の積繊量を周辺部に比して意図的に低減させることで形成された凹部であり、いわゆるエンボス溝、即ち、坪量が均一で表面に凹凸のない扁平板状の吸収性コアに対しエンボス加工(押圧処理)を施すことによって形成された凹部ではない。従って、通常のエンボス溝は、エンボス加工によりコア形成材料が圧密化されているため周辺部に比して高密度であるが、境界溝45は、その形成過程で圧密化されておらず、且つ境界溝45及びその周辺部に対して一体的にエンボス加工を施した場合に該周辺部が優先的に圧密化されるため、該周辺部(非溝形成部)に比して低密度となる。また、通常のエンボス溝は、その周辺部との比較において坪量に実質的な差はないが、境界溝45はその周辺部よりも低坪量である。
【0039】
境界溝45の形成に利用し得る公知の吸収性コアの製造方法は、例えば、空気流に乗せて供給したコア形成材料を、積繊装置(回転ドラム等)の外面に形成された集積用凹部の底部に吸引堆積させる工程を有するところ、斯かる工程において、底部の開孔率が部分的に異なる集積用凹部を使用する、具体的には、境界溝45の形成予定部位に対応する底部の開孔率が相対的に低く調整されている集積用凹部を使用することにより、境界溝45が形成された肉薄且つ低坪量の部位と、溝(凹部)が形成されていない肉厚且つ高坪量の部位とを有する、吸収性コア4を形成することができる。
【0040】
本実施形態における吸収性コア4は、このように、コア形成材料の積繊量を部分的に異ならせることで形成されており、コア形成材料の積繊量が相対的に少ない部位が標準吸収部40、コア形成材料の積繊量が相対的に多い部位が突出部41(最大幅部42、前方側凸部43及び後方側凸部44)である。突出部41は標準吸収部40に比して、厚みだけでなく、坪量も大きい。尚、吸収性コア4が繊維材料の他に吸水性ポリマーを含有する場合は、その吸収性コア4における吸水性ポリマーの坪量についても、突出部41は標準吸収部40に比して大きい。
【0041】
本実施形態においては、
図2及び
図3に示すように、標準吸収部40に、該標準吸収部40の周縁から所定方向に延びる標準吸収部溝46が複数形成されている。標準吸収部溝46は境界溝45と同様に形成されており、従って標準吸収部溝46の形成部位は、周辺部に比して厚み及び坪量が小さく、低剛性である。つまり標準吸収部40は、標準吸収部溝46にて折れ曲がりやすくなされている。このように、突出部41の周囲に位置する標準吸収部40に折り変形の起点となり得る標準吸収部溝46が複数形成されていることで、標準吸収部40の変形剛性が低下し、突出部41に対する相対的な剛性差が増大するため、前述した、最大幅部42の縦縁辺421,422を折り起点とする吸収性コア4の縦方向Xへの変形及び個装折りが、より一層安定的になされるようになると共に、その吸収性コア4の変形時に股下部Bが
図4に示す如く鞍型に変形しやすくなり、且つその鞍型の頂部の平面形状がより一層維持されやすくなり、結果として、ナプキン1全体で吸収性コア4の変形によるフィット性がより一層向上し得る。
【0042】
吸収性コア4においては、標準吸収部溝46は、
図2に示すように、境界溝45と同様に、標準吸収部40の非肌対向面40bに開口を有し、標準吸収部40の肌対向面40a側が標準吸収部溝46の底部を形成している。
【0043】
また吸収性コア4においては、
図3に示すように、複数の直線状の標準吸収部溝46が縦方向Xに延びていると共に、複数の直線状の標準吸収部溝46が横方向Yにも延びており、このように互いに直交する複数本の直線状の標準吸収部溝46及び境界溝45によって、標準吸収部40は複数の小領域47に区画化されている。標準吸収部40において、小領域47は相対的に坪量の大きい高坪量部、溝45,46の形成部位は相対的に坪量の小さい低坪量部である。複数の小領域47の形状は互いに略同じであり、何れも平面視して矩形形状をなし、縦方向Xの長さが横方向Yの長さに比して長い。一方、標準吸収部溝46は、縦方向X及び横方向Yの両方向に延びて互いに連結し、さらに境界溝45とも連結し、前方部A及び後方部Cそれぞれにおいて、格子状の連続溝を形成している。
【0044】
このように標準吸収部40は、高坪量部たる小領域47と、該小領域47を包囲する線状の低坪量部たる標準吸収部溝46の形成部位とからなるブロック領域を多数有する、ブロック構造を有しており、各ブロック領域は個々に独立している。このようなブロック構造の標準吸収部40の存在により、吸収性コア4は、縦方向X及び横方向Yの双方に柔軟なものとなり、そのことに起因して吸収性コア4は着用者の身体の形状に沿いやすいものとなる。さらに、経血等の排泄物が、相対的に厚みの薄い標準吸収部溝46の形成部位に案内されてこれを流れ得るため、吸収性コア4は縦方向X及び横方向Yの液拡散性に優れる。
【0045】
前述した境界溝45及び標準吸収部溝46による作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、両溝45,46の幅(溝の延びる方向と直交する方向の長さ)は、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは5.0mm以下、さらに好ましくは3.0mm以下である。
同様の観点から、両溝45,46の形成部位における吸収性コア4の厚みは、好ましくは0.08mm以上、さらに好ましくは0.15mm以上、そして、好ましくは7.0mm以下、さらに好ましくは3.5mm以下である。溝45,46の形成部位における吸収性コア4の厚みが薄くなるほど、また、溝45,46の形成部位における吸収性コア4の坪量が低下するほど、剛性が低くなる。
【0046】
標準吸収部40の小領域47(溝45,46の非形成部位)即ち高坪量部の坪量は、好ましくは50g/m
2以上、さらに好ましくは100g/m
2以上、そして、好ましくは1000g/m
2以下、さらに好ましくは900g/m
2以下である。
標準吸収部40の溝45,46の形成部位即ち低坪量部の坪量は、好ましくは10g/m
2以上、さらに好ましくは20g/m
2以上、そして、好ましくは350g/m
2以下、さらに好ましくは250g/m
2以下である。
標準吸収部40の各部の坪量は下記方法により測定される。
【0047】
<坪量の測定方法>
標準吸収部40における溝45,46の形成部位(低坪量部)と小領域47(高坪量部)との境界線に沿ってフェザー社製の片刃剃刀を用いて切断する。切断して得られた高坪量部の小片10個をそれぞれ電子天秤(A&D社製電子天秤GR−300、精度:小数点以下4桁)を用いて測定し、高坪量部の小片1個の平均重量を求める。求めた平均重量を高坪量部の小片1個当りの平均面積で除して高坪量部の坪量を算出する。
次いで、低坪量部と高坪量部との境界線のうちナプキン1の縦方向Xに延びた境界線に沿って、長さ100mm、幅は低坪量部の幅の設計寸法に合わせて、フェザー社製の片刃剃刀を用いて、細いストライプ状の低坪量部の縦方向Xの小片5個を切り出す。得られた小片5個をそれぞれ電子天秤(A&D社製電子天秤GR−300、精度:小数点以下4桁)を用いて測定し、平均して低坪量部の小片1個の平均重量を求める。求めた平均重量を低坪量部の縦方向Xの小片1個当たりの平均面積で除して低坪量部の縦方向Xの坪量を算出する。低坪量部の横方向Yについても、低坪量部の縦方向Xと同様にして坪量を算出する。
【0048】
また、標準吸収部40における小領域47(溝45,46の非形成部位)の厚みは、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上、そして、好ましくは7.0mm以下、さらに好ましくは3.5mm以下である。標準吸収部40の厚みを斯かる範囲とすることで、高い吸収性能と着用者の動きへの追従性をより一層高めることが可能となる。
一方、突出部41(最大幅部42、前方側凸部43及び後方側凸部44)の厚みは、好ましくは2.0mm以上、さらに好ましくは3.0mm以上、そして、好ましくは10.0mm以下、さらに好ましくは7.0mm以下である。突出部41の厚みを斯かる範囲とすることで、突出部41が形成されている股下部Bにおける良好な装着感と高い吸収性能を両立することが容易となる。また、ナプキン1のように吸収性物品がウイング部を備えている場合には、装着時に股下部Bでの吸収性コア4のヨレを抑制しやすくなる。
吸収性コア4の厚みは下記方法により測定される。
【0049】
<厚みの測定方法>
測定対象の吸収性コアを水平な場所にシワや折れ曲がりがないように静置し、5cN/cm
2の荷重下での厚みを測定する。本発明における厚みの測定には、厚み計 PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いた。このとき、厚み計の先端部と測定対象における測定部分との間に、平面視円形状又は正方形状のプレート(厚さ5mm程度のアクリル板)を配置して、荷重が5cN/cm
2となるようにプレートの大きさを調整する。
【0050】
本実施形態においては、
図3に示すように、前方側凸部43の一対の凸部側縁辺430,430及び後方側凸部44の一対の凸部側縁辺440,440それぞれの、縦方向Xの外方への仮想延長線(図示せず)上に、符号46Sで示す標準吸収部溝が形成されている。この標準吸収部溝46Sの存在により、ナプキン1(吸収性コア4)における股下部Bに位置する部位が
図4に示す如く鞍型に変形した際に、その鞍型の頂部の平面形状がより一層維持されやすくなる。
【0051】
図5には、ナプキン1の非肌対向面側即ち非肌側シート3側が示されている。ナプキン1の非肌対向面には、
図5に示すように、ナプキン1を着衣に固定するズレ止め部8が、前方側凸部43の一対の凸部側縁辺430,430及び後方側凸部44の一対の凸部側縁辺440,440又はその仮想延長線と平面視において重なるように配されている。より具体的には、ナプキン1の非肌対向面には縦方向Xに延びる平面視直線状の一対のズレ止め部8,8がナプキン1の縦方向Xの全長にわたって配されているところ、この一対のズレ止め部8,8をナプキン1の厚み方向に投影したときに、両凸部43,44の凸部側縁辺430,440及びその仮想延長線と重なるようになされている。斯かる構成により、ナプキン1の着用中にナプキン1を
図4に示すように変形させ得る変形圧力が、その変形の起点となる可撓軸として機能する、両凸部43,44の凸部側縁辺430,440及びその仮想延長線に確実に伝わるようになり、斯かる変形がより一層確実になされるようなる。ズレ止め部8は公知の方法によって形成することができる。
【0052】
以下、本発明の他の実施形態について
図6〜
図8を参照して説明する。後述する他の実施形態については、前記実施形態のナプキン1(吸収性コア4)と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前記実施形態のナプキン1(吸収性コア4)についての説明が適宜適用される。
【0053】
図6に示す吸収性コア4Aにおいては、最大幅部42の肌対向面における、前方側凸部43の一対の凸部側縁辺430,430及び後方側凸部44の一対の凸部側縁辺440,440それぞれの縦方向Xの内方への仮想延長線上に、一対の最大幅部溝48,48が形成されている。最大幅部溝48は、前方側凸部43の凸部側縁辺430と後方側凸部44の凸部側縁辺440との間において連続している。最大幅部溝48は境界溝45と同様に形成されており、従って最大幅部溝48の形成部位は、最大幅部42の周辺部に比して厚み及び坪量が小さく、低剛性である。このように、股下部Bの横方向への変形の起点となる両凸部43,44の凸部側縁辺430,440の延長線上に最大幅部溝48が形成されていることにより、吸収性コア4Aにおける股下部Bに位置する部位が
図4に示す如く鞍型に変形した際に、その鞍型の頂部の平面形状がより一層維持されやすくなる。尚、吸収性コア4Aにおける最大幅部溝48は、溝45,46とは逆に、吸収性コア4の肌対向面に開口を有し、吸収性コア4の非肌対向面側が最大幅部溝48の底部を形成しているが、これとは逆に、非肌対向面に開口を有していても良い。
【0054】
また、
図6に示す吸収性コア4Aにおいては、前方側凸部43の一対の凸部側縁辺430,430及び後方側凸部44の一対の凸部側縁辺440,440それぞれの縦方向Xの外方への仮想延長線上に、標準吸収部溝46どうしの交点49が位置している。吸収性コア4Aにおいては、交点49は複数、より具体的には、前方部A及び後方部Cそれぞれにおいて一対形成されている。交点49の平面視形状は特に制限されないが、
図6に示す如き円形状が好ましい。
【0055】
そして、吸収性コア4Aにおいては、交点49の平面視における差し渡し長さが、交点49に連なる標準吸収部溝46の幅に比して長い。吸収性コア4Aにおいては、交点49は、平面視円形状をなしており、該交点49の差し渡し長さは、その直径となる。また、ここでいう、交点49に連なる標準吸収部溝46の幅とは、溝46の延びる方向と直交する方向の長さである。交点49は、平面視円形状の凹部であり、吸収性コア4Aにおいては、標準吸収部溝46と同様に、標準吸収部40の非肌対向面40bに開口を有し、標準吸収部40の肌対向面40a側が該凹部の底部を形成している。このように、股下部Bの横方向への変形の起点となる両凸部43,44の凸部側縁辺430,440の延長線上に、標準吸収部溝46の幅よりも差し渡し長さの長い凹部状の交点49が形成されていることにより、吸収性コア4Aにおける股下部Bに位置する部位が
図4に示す如く鞍型に変形した際に、その鞍型の頂部の平面形状が一層維持されやすくなる。その交点49が、平面視円形形状をなしていることで、より身体形状にフィットした鞍型に変形しやすく、その鞍型の頂部の平面形状が、より一層維持されやすくなる。交点49は、前記積繊装置を用いて吸収性コア4Aを製造する際に、コア形成材料が積繊される前記集積用凹部の底部における交点49に対応する部位に、該集積用凹部の上部開口に向かって起立する凸部を設けるなどして、コア形成材料の積繊量を周辺部よりも少なくすることで形成することができる。
【0056】
図7に示す吸収性コア4Bにおいては、複数の直線状の標準吸収部溝46が縦方向X及び横方向Yの双方に交差する第1交差方向に延びていると共に、複数の直線状の標準吸収部溝46が該第1交差方向に交差する第2交差方向にも延びており、このように互いに直交する複数本の直線状の標準吸収部溝46及び境界溝45によって、標準吸収部40は、平面視菱形形状の複数の小領域47に区画化されている。吸収性コア4Bによっても、吸収性コア4(
図3参照)と同様の効果が奏される。
【0057】
図8(a)〜
図8(d)には、本発明に係る吸収性コアにおける突出部(前方側凸部、後方側凸部)の変形例が示されている。これらの変形例は、前方側凸部43及び後方側凸部44の平面視形状が互いに異なる。
図8(a)に示す吸収性コア4Cにおいては、両凸部43,44の縦方向Xに延びる凸部側縁辺430,440が、横方向Xの外方に向かって凸に湾曲している。
図8(b)に示す吸収性コア4Dにおいては、両凸部43,44の縦方向Xの端部が平面視三角形形状をなしており、両凸部43,44の凸部側縁辺430,440が、最大幅部42の縦縁辺421,422に連接され縦方向Xに平行に延びる部分と、該部分に連接され縦方向Xの外方且つ横方向Yの内方に延びる部分とを有している。
図8(c)に示す吸収性コア4E及び
図8(d)に示す吸収性コア4Fにおいては、それぞれ、平面視において両凸部43,44の横方向Yの長さ即ち幅が、縦方向Xの外方に向かうに従って漸次減少する。
【0058】
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態においては、最大幅部42、前方側凸部43及び後方側凸部44からなる、突出部41は「坪量」が均一であったが、例えば、横方向Yの中央から横方向Yの両外方に向かうに従って「坪量」が漸次減少する形態でも良い。より具体的には例えば、
図3を参照して、両凸部43,44及び一対の仮想延長線450,450に挟まれた領域、即ち突出部41の横方向Yの中央部は、吸収性コア4において坪量が最大且つ均一の肉厚部であり、突出部41の横方向Yの両側部は、横方向Yの外方に向かうに従って坪量が漸次減少する肉薄部であっても良い。このような、坪量が横方向において不均一な突出部においては、肉厚な横方向中央部と肉薄の横方向両側部と間の剛性差が大きいため、吸収性コアにおける股下部に位置する部位が
図4に示す如く鞍型に変形した際に、その鞍型の頂部の平面形状がより一層維持されやすくなる。
【0059】
また、前記実施形態においては、最大幅部42、前方側凸部43及び後方側凸部44からなる、突出部41は「厚み」が均一であったが、例えば、横方向Yの中央から横方向Yの両外方に向かうに従って「厚み」が漸次減少する形態でも良い。より具体的には例えば、
図3を参照して、両凸部43,44及び一対の仮想延長線450,450に挟まれた領域、即ち突出部41の横方向Yの中央部は、吸収性コア4において厚みが最大且つ均一の肉厚部であり、突出部41の横方向Yの両側部は、横方向Yの外方に向かうに従って厚みが漸次減少する肉薄部であっても良い。このような、厚みが横方向において不均一な突出部においては、肉厚な横方向中央部と肉薄の横方向両側部と間の剛性差が大きいため、吸収性コアにおける股下部に位置する部位が
図4に示す如く鞍型に変形した際に、その鞍型の頂部の平面形状がより一層維持されやすくなる。
【0060】
また前記実施形態においては、突出部41が標準吸収部40の非肌対向面40bから非肌側シート3側に突出していたが、これとは逆に、標準吸収部40の肌対向面40aから肌側シート2側に突出していても良い。
また前記実施形態においては、溝45,46は、吸収性コア4の非肌対向面に開口を有していたが、これとは逆に、肌対向面に開口を有していても良い。
また、吸収性や防漏性等の向上の観点から、肌側シート2と吸収性コア4(吸収性コア4の肌対向面を被覆する前記コアラップシート)との間に、各種不織布からなる液透過性シートが介在配置されていても良い。同様の観点から、ナプキン1の肌対向面に、肌側シート2及び吸収性コア4が一体的に凹陥してなるいわゆる防漏溝が形成されていても良い。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。