【文献】
Reumatol. Clin.,2012年,Vol.8,pp.263-269
【文献】
Curr. Rheumatol. Rep.,2012年,Vol.14,pp.295-302
【文献】
J. Immunol.,2008年,Vol.180,pp.5222-5234
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)式A−L1−P−L2−Pを有するアミノ酸配列を含むポリペプチド(式中、Aは、IgG抗体の免疫グロブリン重鎖であり、L1は、存在しないかまたは3〜40アミノ酸長の第1のリンカーであり、Pは、10〜40アミノ酸長のBAFF結合ペプチドであり、L2は、存在しないかまたは5〜50アミノ酸長のペプチドリンカーである)と、
(b)免疫グロブリン軽鎖と、を含む二重特異性タンパク質であって、(a)の前記免疫グロブリン重鎖及び(b)の前記免疫グロブリン軽鎖は、B7RP1に結合することができる、(a)の前記ポリペプチドの2つの分子及び(b)の前記軽鎖の2つの分子を含むIgG抗体を形成し、
前記タンパク質はBAFF媒介性のヒトB細胞の増殖を阻害することができ、
前記タンパク質はB7RP1媒介性のヒトT細胞の増殖を阻害することができる、
二重特異性タンパク質。
配列番号8(RASQGISNWLA)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号9(AASSLQS)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、配列番号10(QQYDSYPRT)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、配列番号11(SYWMS)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号12(YIKQDGNEKYYVDSVKG)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号13(EGILWFGDLPTF)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の前記二重特異性タンパク質。
【発明を実施するための形態】
【0016】
【表A-1】
【表A-2】
【表A-3】
【表A-4】
【0017】
B細胞活性化因子(BAFF;BLYS、TALL1、THANK、またはTNFSF13Bとしても知られる)及びB7関連タンパク質1(B7RP1;ICOSリガンド、ICOSL、LICOS、B7相同体2、B7H2、及びGL50としても知られる)の両方に結合して阻害する二重特異性タンパク質、それらの二重特異性タンパク質をコードする核酸、ならびにそれらのタンパク質を作製及び使用する方法が、本明細書に提供される。二重特異性タンパク質は、BAFF媒介性のB細胞の増殖及びB7RP1媒介性のT細胞増殖の両方を阻害することができる。別の態様において、二重特異性タンパク質は、B7RP1のT細胞への結合を阻害することができる。そのような二重特異性タンパク質は、2つの異なる免疫グロブリン重鎖及び2つの異なる免疫グロブリン軽鎖を含むIgG抗体であってもよく、一方の重鎖/軽鎖対がBAFFに結合し、他方がB7RP1に結合する。代替として、二重特異性タンパク質のB7RP1結合タンパク質は、2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖を含むIgG抗体を含むことができ、二重特異性タンパク質のBAFF結合タンパク質は、任意選択的に、免疫グロブリン重鎖もしくは軽鎖のN末端、免疫グロブリン重鎖のカルボキシ末端、ならびに/または免疫グロブリン重鎖のCH2及び/もしくはCH3領域を介して、抗B7RP1抗体に融合していてもよい1つ以上のBAFF結合ペプチドを含むことができる。
【0018】
定義
本明細書で意味する「抗体」は、重鎖及び/または軽鎖免疫グロブリン可変領域を含むタンパク質である。
【0019】
本明細書で意味する「二重特異性」タンパク質は、いくつかの実施形態においてタンパク質である2つの異なる分子に特異的に結合することができるタンパク質である。例えば、いくつかの実施形態において、二重特異性タンパク質は、BAFF及びB7RP1の両方に結合することができる。
【0020】
患者が、同じ一般的な時間枠の間に、任意選択的に全く同時に、2つ以上の治療薬を投与される場合、患者は、2つ以上の治療薬を用いた「同時」治療を受けている。例えば、患者が、1つの治療薬を継続的に毎日投与され、同様に、別の治療薬を継続的に1ヶ月に1回投与される場合、その患者は、これらの2つの薬物を同時に投与されていることになる。同様に、各々、2週間毎に投与されるが、同じ日には投与されない2つの異なる治療薬を投与される患者も、2つの治療薬を用いた同時治療を受けていることになる。さらに、1つの治療薬を継続的に1週間に1回、そして別の治療薬を1日1回3日間のみ投与される患者は、これら2つの治療薬を用いて短期間の治療を受けていることになる。
【0021】
本明細書で意味する「Fc領域」は、1つ以上のジスルフィド結合によって結合された2つのポリペプチド鎖からなる二量体であり、各鎖がヒンジ領域の一部または全部と、CH2及びCH3ドメインとを含む。ポリペプチド鎖の各々は、「Fcポリペプチド鎖」と称される。より具体的には、本発明とともに使用されることが企図されるFc領域はIgG Fc領域であり、哺乳動物、例えば、ヒトのIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域であってもよい。ヒトIgG1 Fc領域の中で、少なくとも2つの対立遺伝子型が知られている。Fcポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、哺乳動物のFcポリペプチドのアミノ酸配列と比較して、20、15、12、10、8、5、または3個以下の単一アミノ酸の置換、挿入、または欠失だけ哺乳動物のFcポリペプチドのアミノ酸配列と異なり得る。代替としてまたは加えて、Fcポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、既知のまたは天然に存在するFcポリペプチド鎖の配列とは、配列のアミノ酸100個当たり10個以下の単一アミノ酸の10挿入、欠失、または置換だけ異なり得る。いくつかの実施形態において、そのような変異体は、ホモ二量体よりも多くのヘテロ二量体の形成を促進する「ヘテロ二量体を形成する変化」であり得る。Fcポリペプチド鎖内の特定の位置に言及する際、下の表1のヒトIgG Fcポリペプチド鎖のアライメントに示されるように、EU番号付けシステム(Edelman et al.(1969),Proc.Natl.Acad.Sci.63:78−85)が使用される。
【表1】
【0022】
いくつかの位置に、天然に存在する多型が生じ得る。例えば、上に示すIgG2配列の282位のメチオニンは、より典型的には、天然に存在するIgG2配列においてバリンである。同様に、IgG3配列の296位のチロシンもフェニルアラニンであってもよい。
【0023】
「ヘテロ二量体を形成する変化」は、一般的に、ヘテロ二量体性の重鎖二量体、すなわち、同一のアミノ酸配列を有しない二量体化された重鎖の形成を促進する、CH3領域内の2つの異なるIgG重鎖における変化を指す。ヘテロ二量体を形成する変化は非対称であってもよく、すなわち、特定の変化を有する1つの重鎖が、異なる変化を有する別の重鎖と対を形成することができる。これらの変化は、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成に不利である。そのような対になったヘテロ二量体を形成する変化の一例は、いわゆる「ノブ・アンド・ホール」置換である。例えば、米国特許第7,695,936号及び米国特許出願公開第2003/0078385号を参照されたく、そのような突然変異について記載するその一部が、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で意味する、一対のノブ・アンド・ホール置換を含有する重鎖−重鎖対は、一方の重鎖に1つの置換、そして他方の重鎖に別の置換を含有する。例えば、以下のノブ・アンド・ホール置換は、未修飾の重鎖に見られるものと比較してヘテロ二量体形成を増加させることが分かった:1)一方の鎖にY407T、他方の鎖にT366Y;2)一方の鎖にY407A、他方の鎖にT366W;3)一方の鎖にF405A、他方の鎖にT394W;4)一方の鎖にF405W、他方の鎖にT394S;5)一方の鎖にY407T、他方の鎖にT366Y;6)一方の鎖にT366Y及びF405A、他方の鎖にT394W及びY407T;7)一方の鎖にT366W及びF405W、他方の鎖にT394S及びY407A;8)一方の鎖にF405W及びY407A、他方の鎖にT366W及びT394S;ならびに9)Fcの一方のポリペプチドにT366W、他方のポリペプチドにT366S、L368A、及びY407V。本明細書で意味する、Fcポリペプチドの突然変異は、次のように表示される。EU番号付けシステム(Edelman et al.(1969),Proc.Natl.Acad.Sci.63:78−85に提示される)を用いて、通常、CH3領域内の所与の位置に存在するアミノ酸(1文字コードを使用)は、その後にEU位置番号が記載され、続いて、その位置に存在する代替のアミノ酸が記載される。例えば、Y407Tは、通常はEU位置407に存在するチロシンが、スレオニンに置換されることを意味する。明確にするために、EUの番号付けシステムを下の表1に示す。代替として、またはそのような変化に加えて、新しいジスルフィド架橋を形成する置換がヘテロ二量体の形成を促進することができる。例えば、米国特許出願公開第2003/0078385号を参照されたく、そのような突然変異について記載するその一部が、参照により本明細書に組み込まれる。IgG1Fc領域内のそのような変化は、例えば、以下の置換を含む:一方のFc−ポリペプチド鎖にY349C、他方のポリペプチド鎖にS354C;一方のFc−ポリペプチド鎖にY349C、他方のポリペプチド鎖にE356C;一方のFc−ポリペプチド鎖にY349C、他方のポリペプチド鎖にE357C;一方のFc−ポリペプチド鎖にL351C、他方のポリペプチド鎖にS354C;一方のFc−ポリペプチド鎖にT394C、他方のポリペプチド鎖にE397C;または一方のFc−ポリペプチド鎖にD399C、他方のポリペプチド鎖にK392C。同様に、例えば、CH3−CH3界面において、1つ以上の残基の電荷を変化させる置換は、WO2009/089004に説明されるようなヘテロ二量体の形成を強化することができ、そのような置換について記載するその一部が、参照により本明細書に組み込まれる。そのような置換は、本明細書において「電荷対置換」と称され、1対の電荷対置換を含有するFc領域は、一方の重鎖に1つの置換、そして他方の重鎖に異なる置換を含有する。電荷対置換の一般的な例として以下が挙げられる:1)一方の鎖にR409D、R409E、K409D、またはK409E、他方の鎖にD399KまたはD399R;2)一方の鎖にN392D、N392E、K392D、またはK392E、他方の鎖にD399KまたはD399R;3)一方の鎖にK439DまたはK439E、他方の鎖にE356K、E356R、D356K、またはD356R;及び4)一方の鎖にK370DまたはK370E、他方の鎖にE357KまたはE357R。さらに、両方の鎖における置換Q355D、Q355E、R355D、R355E、K360D、またはK360Rは、他のヘテロ二量体を形成する変化とともに使用される場合、ヘテロ二量体を安定させることができる。特定の電荷対置換は、単独でまたは他の電荷対置換とともに使用することができる。単一対の電荷対置換及びそれらの組み合わせの特定の例として以下が挙げられる:1)一方の鎖にK409E、他方の鎖にD399K;2)一方の鎖にK409E、他方の鎖にD399R;3)一方の鎖にK409D、他方の鎖にD399K;4)一方の鎖にK409D、他方の鎖にD399R;5)一方の鎖にK392E、他方の鎖にD399R;6)一方の鎖にK392E、他方の鎖にD399K;7)一方の鎖にK392D、他方の鎖にD399R;8)一方の鎖にK392D、他方の鎖にD399K;9)一方の鎖にK409D及びK360D、他方の鎖にD399K及びE356K;10)一方の鎖にK409D及びK370D、他方の鎖にD399K及びE357K;11)一方の鎖にK409D及びK392D、他方の鎖にD399K、E356K、及びE357K;12)一方の鎖にK409D及びK392D、他方の鎖にD399K;13)一方の鎖にK409D及びK392D、他方の鎖にD399K及びE356K;14)一方の鎖にK409D及びK392D、他方の鎖にD399K及びD357K;15)一方の鎖にK409D及びK370D、他方の鎖にD399K及びD357K;16)一方の鎖にD399K、他方の鎖にK409D及びK360D、ならびに17)一方の鎖にK409D及びK439D、他方の鎖にD399K及びE356K。これらのヘテロ二量体を形成する変化のいずれも、本明細書に記載の免疫グロブリンIgG重鎖の一部であり得る。
【0024】
本明細書で意味する「ヒト」抗体またはタンパク質は、ヒト起源の核酸配列によってコードされる抗体またはタンパク質である。ヒト抗体もしくはタンパク質は、培養した非ヒト細胞中で作製することができるか、またはヒト抗体もしくはタンパク質をコードする核酸分子が導入されたトランスジェニック生物においてin vivoで作製することができる。代替として、ヒト抗体もしくはタンパク質は、培養したヒト細胞中で作製することができるか、またはヒトにおいてin vivoで作製することができる。
【0025】
本明細書で意味する「IgG抗体」は、大抵の天然に存在するIgG抗体に存在する免疫グロブリンドメイン、すなわち、重鎖可変(VH)領域、第1の重鎖定常(CH1)領域、ヒンジ領域、第2の重鎖定常(CH2)領域、及び第3の重鎖定常(CH3)領域を含む免疫グロブリン重鎖と、軽鎖可変(VL)領域及び軽鎖定常(CL)領域を含む軽鎖とから本質的になる抗体である。そのような免疫グロブリンドメインの多数の配列は、科学文献を通して、例えば、Sequences of Immunological Interest,Public Health Service,N.I.H.,Bethesda,MD,1991に報告されている。本明細書で意味するIgG抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖から本質的になる四量体である。ラクダ及びサメに見られるもの等の免疫グロブリン重鎖を2つのみ含み、免疫グロブリン軽鎖は含まない天然に存在する抗体(例えば、Muyldermans et al.,2001,J.Biotechnol.74:277−302;Desmyter et al.,2001,J.Biol.Chem.276:26285−90;Streltsov et al.(2005),Protein Science 14:2901−2909)は、本明細書で意味する「IgG抗体」ではない。IgG抗体は、ヒト抗体であってもよいか、または別の種に由来してもよい。さらに、IgG抗体は、天然に存在するIgG抗体の重鎖または軽鎖のアミノ酸配列と比較して、40、35、30、25、20、15、10、または5個以下の単一アミノ酸の置換、挿入、及び/または欠失を含有することができる。
【0026】
「免疫グロブリン重鎖」は、天然起源の核酸配列によってコードされる免疫グロブリン重鎖と比較して、40、30、25、20、15、10、または5個以下の単一アミノ酸の挿入、欠失、または置換を含有するIgG、IgA、IgM、IgE、もしくはIgD抗体またはその変異体の重鎖を指す。「免疫グロブリンIgG重鎖」は、天然起源の核酸配列によってコードされるIgG重鎖のアミノ酸配列と比較して、40、30、25、20、15、10、または5個以下の単一アミノ酸の挿入、欠失、または置換を含有するIgG抗体またはその変異体からの重鎖に限定される。免疫グロブリン重鎖は、VH領域、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域を含む多数の異なる領域またはドメインから本質的になる。いくつかの他のアイソタイプ、すなわち、IgM及びIgAにおいて、CH3領域から下流にさらなる領域が含まれる。その中に含まれる免疫グロブリン重鎖及び領域は、例えば、Carayannopoulos and Capra,Immunoglobulins:Structure and Function,pp.283−314 in Fundamental Immunology,3
rd Ed,Paul,ed.,Raven Press,New York,1993(参照により本明細書に組み込まれる)に概説される。さらに、免疫グロブリン重鎖の小領域の多数の配列が当該技術分野で既知である。例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,MD,1991を参照されたい。いくつかの場合において、免疫グロブリン重鎖及びいくつかの非免疫グロブリン配列を含むポリペプチド鎖が、本明細書において「重鎖」と称される。
【0027】
本明細書で意味する「免疫グロブリン軽鎖」は、ヒト抗体または別の種由来の抗体のκまたはλ鎖である。同様に、本明細書で意味する免疫グロブリン軽鎖の中に含まれるのは、天然起源の核酸配列によってコードされる免疫グロブリン軽鎖と比較して、20、15、10、または5個以下の単一アミノ酸の挿入、欠失、及び/または置換を有するタンパク質である。免疫グロブリン軽鎖は、例えば、Carayannopoulos and Capra,Immunoglobulins:Structure and Function,pp.283−314 in Fundamental Immunology,3
rd Ed,Paul,ed.,Raven Press,New York,1993(参照により本明細書に組み込まれる)に概説される。免疫グロブリン軽鎖は、VL領域及びCL領域を含有する。これらの領域の多数の配列が当該技術分野で既知である。例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,MD,1991を参照されたい。いくつかの場合において、免疫グロブリン軽鎖及びいくつかの非免疫グロブリン配列を含むポリペプチド鎖が、本明細書において「軽鎖」と称される。
【0028】
本明細書で意味する「免疫グロブリン可変領域」は、ヒト起源であってもよいか、または別の種に由来してもよいVHまたはVL領域である。免疫グロブリン可変領域は、例えば、Carayannopoulos and Capra,Immunoglobulins:Structure and Function,pp.283−314 in Fundamental Immunology,3
rd Ed,Paul,ed.,Raven Press,New York,1993(参照により本明細書に組み込まれる)に概説される。同様に、本明細書で意味する免疫グロブリン可変領域の中に含まれるのは、天然起源の核酸配列によってコードされる免疫グロブリン可変領域と比較して、20、15、10、または5個以下の単一アミノ酸の挿入、欠失、及び/または置換を有するタンパク質である。免疫グロブリン可変領域は、相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、及び相補性決定領域3(CDR3)として知られる3つの超可変領域を含有する。これらの領域は、抗体の抗原結合部位を形成する。CDRは、可変性のより低いフレームワーク領域(FR1−FR4)内に埋め込まれている。可変領域内におけるこれらの小領域の順序は次の通りである:FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4。免疫グロブリン可変領域の多数の配列が当該技術分野で既知である。例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,MD,1991を参照されたい。
【0029】
CDRは、次のようにVH領域配列内に位置してもよい。CDR1は、成熟なVH領域のおよそ残基31で始まり、通常、約5〜7アミノ酸長であり、ほぼ必ずCys−Xxx−Xxx−Xxx−Xxx−Xxx−Xxx−Xxx−Xxx(配列番号20)に先行される(「Xxx」は任意のアミノ酸である)。重鎖CDR1に続く残基は、ほぼ必ずトリプトファンであり、しばしば、Trp−Val、Trp−Ile、またはTrp−Alaである。14個のアミノ酸が、ほぼ必ずCDR1の最後の残基とCDR2の最初の残基との間に存在し、CDR2は、典型的には16〜19個のアミノ酸を含有する。CDR2は、Leu−Glu−Trp−Ile−Gly(配列番号21)によって直前に先行されてもよく、Lys/Arg−Leu/Ile/Val/Phe/Thr/Ala−Thr/Ser/Ile/Alaがその直後に続いてもよい。他のアミノ酸は、CDR2に先行してもまたは続いてもよい。32個のアミノ酸が、ほぼ必ずCDR2の最後の残基とCDR3の最初の残基との間に存在し、CDR3は、約3〜25残基長であってもよい。Cys−Xxx−Xxxは、ほぼ必ずCDR3の直前に先行し、Trp−Gly−Xxx−Gly(配列番号22)がほぼ必ずCDR3の後に続く。
【0030】
軽鎖CDRは、次のようにVL領域内に位置してもよい。CDR1は、成熟な抗体のおよそ残基24で始まり、通常、約10〜17残基長である。ほぼ必ずCysが先行する。CDR1の最後の残基とCDR2の最初の残基との間には、ほぼ必ず15個のアミノ酸があり、CDR2は、ほぼ必ず7残基長である。CDR2は、典型的には、Ile−Tyr、Val−Tyr、Ile−Lys、またはIle−Pheに先行される。CDR2とCDR3との間には、ほぼ必ず32個の残基があり、CDR3は、通常、約7〜10アミノ酸長である。CDR3は、ほぼ必ずCysに先行され、通常、Phe−Gly−Xxx−Gly(配列番号23)が続く。
【0031】
本明細書で意味する「リンカー」は、2つのポリペプチドを連結するペプチドである。リンカーは、1〜80アミノ酸長であってもよい。いくつかの実施形態において、リンカーは、2〜40、3〜30、または3〜20アミノ酸長であってもよい。いくつかの実施形態において、リンカーは、14、13、12、11、10、9、8、7、6、または5アミノ酸長以下のペプチドであってもよい。他の実施形態において、リンカーは、5〜25、5〜15、10〜20、または20〜30アミノ酸長であってもよい。他の実施形態において、リンカーは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長であってもよい。多くの場合、リンカーは、遊離システイン残基を欠いており(すなわち及びしたがってジスルフィド結合には関与していない)、またN−グリコシル化部位を含有しない(すなわち、Asn−Xxx−Ser/Thr:Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸であり得る)。
【0032】
本明細書で意味する「ペプチボディ」は、Fc領域に融合した1つ以上の生物学的に活性なペプチドである。Shimamoto et al.(2012),mAbs 4(5):586−591(ペプチボディの構造及びその作製方法について説明するその一部が、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0033】
本明細書で意味する「ペプチド」は、グリコシル化されていてもいなくてもよく、かつ/または修飾されたアミノ酸を含有してもしなくてもよい短いアミノ酸配列からなるポリペプチドである。ペプチドは、2〜75アミノ酸長であってもよい。いくつかの実施形態において、ペプチドは、3〜60、3〜50、3〜40、3〜30、または3〜20アミノ酸長である。他の実施形態において、ペプチドは、5〜25、5〜15、10〜20、または20〜30アミノ酸長であってもよい。他の実施形態において、ペプチドは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長であってもよい。
【0034】
疾患を治療するために使用される薬物の「治療有効量」は、疾患の重症度を軽減するか、疾患もしくはその治療に関連する1つ以上の症状の重症度を軽減するか、または治療された状態の後に特定の頻度で起こり得るより深刻な症状もしくはより深刻な疾患の発症を遅延させることができる量である。
【0035】
本明細書に記載の任意の疾患の「治療」は、疾患の少なくとも1つの症状の緩和、疾患の重症度の軽減、またはいくつかの場合において、疾患を伴い得るか、もしくは少なくとも1つの他の疾患を引き起こし得るより深刻な症状への疾患進行の遅延もしくは予防を包含する。治療は、疾患が完全に治癒したことを意味する必要はない。有用な治療剤は、疾患の重症度を軽減するか、疾患もしくはその治療に関連する1つ以上の症状の重症度を軽減するか、または治療された状態の後に特定の頻度で起こり得るより深刻な症状もしくはより深刻な疾患の発症を遅延させるだけでよい。例えば、疾患が炎症性腸疾患である場合、治療として使用される治療剤は、腸内の個別の炎症部位の数を減少させることができるか、または罹患した腸の全体的な程度を低減することができる。それは、疼痛及び/もしくは腫脹を軽減するか、下痢、便秘、もしくは嘔吐等の症状を軽減するか、かつ/または腸の穿孔を予防することができる。患者の状態は、バリウム注腸もしくは注腸後に行われるX線、内視鏡検査、大腸内視鏡検査、及び/または生検等の標準的技術によって評価することができる。適切な手技は、患者の状態及び症状に従って異なる。同様に、治療される疾患が全身性エリテマトーデス(SLE)である場合、後に説明するように、スコアリングのためのSLEDAI指数を使用して疾患活動性を評価することができる。
【0036】
BAFF及びB7RP1に結合する二重特異性タンパク質
B7RP1及びBAFFに結合し、かつ/またはin vitroでB7RP1媒介性T細胞増殖及びBAFF媒介性B細胞増殖を阻害することができる二重特異性タンパク質が本明細書に開示される。本明細書に記載の二重特異性タンパク質が結合するBAFF及びB7RP1タンパク質は、ヒトタンパク質であってもよく、かつ/または、特に、カニクイザル、アカゲザル、チンパンジー、マウス、及び/もしくはウサギ等の別の種由来のタンパク質であってもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の二重特異性タンパク質は、例えば、ヒト(ホモ・サピエンス)及びカニクイザル(マカク・ファシキュラリス)の両方のB7RP1及びBAFFタンパク質に結合することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、これらの二重特異性タンパク質は、B7RP1結合部分及びBAFF結合部分が、各々、免疫グロブリンIgG重鎖及び免疫グロブリン軽鎖から本質的になる二重特異性IgG抗体であってもよい。そのため、そのような二重特異性抗体は、2つの異なる免疫グロブリン重鎖及び2つの異なる免疫グロブリン軽鎖を含有する。これら2対の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖は、一緒になって、完全な二重特異性IgG抗体を形成する。二重特異性IgG抗体は、当該技術分野で既知であり、また、二重特異性抗体の多くの他の形態も既知である。例えば、Kontermann,Bispecific Antibodies:Developments and Current Perspectives,pp.1−28 in Bispecific Antibodies,Kontermann,ed.,Springer−Verlag,Berlin,Heidelburg,2011(これらの抗体について記載するその一部が、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。形態に関係なく、BAFF及びB7RP1に結合することができる抗体は、本明細書において企図される。二重特異性IgG抗体は、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体であってもよく、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプの抗体であってもよい。いくつかの実施形態において、二重特異性IgG抗体は他の部分に接合されてもよい。抗BAFF及び抗B7RP1抗体のアミノ酸配列は、当該技術分野で既知である。例えば、米国特許第7,737,111号及び米国特許出願公開第2011/0117093号を参照されたい。そのような抗体について記載するこれらの文書の一部が、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、そのような二重特異性抗体は、ヘテロ四量体の二重特異性IgG抗体の形成を促進する電荷対置換を含む、上に定義したような「ヘテロ二量体を形成する変化」を含むことができる。
【0038】
他の実施形態において、本明細書に記載の二重特異性タンパク質は、免疫グロブリンIgG重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含むB7RP1に結合する抗体と、BAFFに結合するペプチドとを含む融合タンパク質であってもよい。BAFF結合ペプチドは、1個、または2、3、4、5、6、7、8個、もしくは最大16個のコピー等の複数のコピーとして存在することができる。BAFF結合ペプチドは、他の多くの可能な種の中でも特に、マウス、カニクイザル、及び/またはヒト等の種に由来するBAFFタンパク質に結合してもよい。抗体は、抗B7RP1 IgG抗体であってもよく、任意選択的に、ヒト及び/またはカニクイザルのB7RP1に結合するヒトまたはヒト化抗体であってもよい。いくつかの実施形態において、リンカーは、抗B7RP1 IgG抗体の重鎖のC末端に付着してもよく、第1のBAFF結合ペプチド、別のリンカー、及び第2のBAFF結合ペプチドがその後に続いてもよい。任意選択的にリンカーが散在した状態で、第3、第4、第5、第6、第7、第8、または最大第16までのBAFF結合ペプチドが、これら2つの後に続くことができる。代替としてまたは加えて、1、2、3、4、5、6、7、または8個のBAFF結合ペプチドを、抗B7RP1抗体のいずれかの場所、例えば、免疫グロブリン重鎖もしくは免疫グロブリン軽鎖のN末端、またはCH2もしくはCH3領域内のループ領域内に挿入することができる。IgG抗体は、ヒトまたはマウス抗体等の哺乳動物の抗体であってもよい。抗B7RP1抗体は、ヒトまたはヒト化IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体であってもよい。抗B7RP1 IgG抗体を含むそのような二重特異性融合タンパク質において、二重特異性タンパク質は、配列番号17または配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号19のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖とを含むことができる。配列番号17または18と比較して、30、25、20、15、10、5、または3個以下の単一アミノ酸の挿入、欠失、または置換を含有するアミノ酸配列を有する重鎖を含む変異体が企図される。同様に、配列番号19と比較して、20、15、10、8、7、5、または3個以下の単一アミノ酸の挿入、欠失、または置換を含有するアミノ酸配列を有する免疫グロブリン軽鎖を含む変異体も企図される。そのような二重特異性タンパク質は、配列番号17または18のアミノ酸配列またはその変異体を含む2つのポリペプチドと、配列番号19のアミノ酸配列またはその変異体を含む2つの軽鎖とを含む四量体であってもよい。
【0039】
前述のような二重特異性融合タンパク質のBAFF結合ペプチド部分は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列を含むことができる。そのようなBAFF結合ペプチドは、米国特許第7,737,111号に記載されており、その関連する部分が、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、二重特異性タンパク質に存在するそのようなBAFF結合ペプチドのコピーが1、2、3、4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15、または16個存在してもよい。BAFF結合ペプチドは、抗B7RP1抗体のカルボキシ末端に、例えば、リンカーを介して付着してもよい。例えば、抗B7RP1 IgG抗体のカルボキシ末端の後に、例えば、Gly−Gly−Gly−Glyのアミノ酸配列(配列番号4)を有するリンカーが続いてもよい。他の適切なリンカーの例として、他の多くのリンカーの中でも特に、Gly−Gly、Gly−Gly−Gly、Gly−Gly−Gly−Ser(配列番号37)、Gly−Gly−Gly−Pro(配列番号38)、Gly−Gly−Gly−Gln(配列番号39)、及びGly−Gly−Gly−Gly−Gly(配列番号40)が挙げられる。このリンカーの後にBAFF結合ペプチドが続いてもよい。BAFF結合ペプチドの後に、例えば、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号24のアミノ酸配列を含む別のリンカーが続いてもよい。他のリンカーを用いることもできる。このリンカーの後に、例えば、配列番号1のアミノ酸配列を含む別のBAFF結合ペプチドが続いてもよい。
【0040】
すぐ上に記載した二重特異性融合タンパク質において、または前述の二重特異性ヘテロ四量体のIgG抗体において、VL領域は、それぞれ、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3を含有することができる。VH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13のアミノ酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態において、IgG抗体のVL領域は、配列番号14のアミノ酸配列またはその変異体を含むことができ、VH領域は、配列番号15のアミノ酸配列またはその変異体を含むことができる。そのような変異体配列は、参照配列と比較してアミノ酸100個当たり10個以下の単一アミノ酸の欠失、挿入、または置換を含むことができる。
【0041】
リンカーを含むタンパク質
それらを含有するタンパク質に好ましい物理的特性を付与する、配列番号5、6、または7のアミノ酸配列を有するリンカーが本明細書に提供される。後述する実施例1に示されるように、2つの特定のリンカー、すなわち、配列番号6及び配列番号7のアミノ酸配列を有するリンカーの使用が、二重特異性分子の発現、安定性、及び粘性等の特性に好ましい影響を与えた。したがって、これらのリンカーを含有する様々なタンパク質は、他のリンカーを含有する同様のタンパク質と比較して、そのような好ましい特性を有する可能性がある。
【0042】
二重特異性タンパク質の治療的使用
本明細書に記載のBAFF及びB7RP1に結合する二重特異性タンパク質は、様々な適応症、特に、自己抗体によって駆動される状態ならびに/またはT細胞及びB細胞の両方によって媒介される状態の治療薬として使用することができる。そのような状態は、例えば、SLE、ループス、腎炎、ANCA陽性血管炎、関節リウマチ(RA)、皮膚筋炎、多発性筋炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、及びセリアック病等の消化管疾患、天疱瘡、類天疱瘡、及び亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)等の皮膚の状態、多発性硬化症及び慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)等の神経系の疾患、重症筋無力症等の神経筋疾患、グッドパスチャー症候群及び糸球体腎炎等の腎臓に関与する疾患、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、及び自己免疫性好中球減少症等の血液学的状態、慢性活動性肝炎及び原発性胆汁性肝硬変等の肝臓の状態、シェーグレン症候群、全身性硬化症、ならびに橋本甲状腺炎、グレーブス病、アジソン病、及び複数の内分泌性自己免疫不全(一般的に、糖尿病、甲状腺機能低下症、アジソン病、及び性腺機能不全)を含む内分泌状態を含む。本明細書に記載の二重特異性タンパク質の治療有効量は、これらの状態のいずれかを治療するために該状態に罹患する患者に投与することができる。
【0043】
一実施形態において、BAFF媒介性B細胞増殖及びB7RP1媒介性T細胞増殖を阻害することができる二重特異性タンパク質は、SLEに罹患する患者を治療するために使用することができる。SLEは、核自己抗原に対する自己反応性を特徴とする未知の原因の自己免疫疾患である。その臨床症状は非常に多様であるため、それが本当に単一の疾患であるのか、または一群の関連疾患であるのかが疑わしい。Kotzin(1996)Systemic lupus erythematosus.Cell 85:303−306;Rahman and Isenberg(2008),Systemic lupus erythematosus.N.Engl.J.Med.358:929−939。症状は以下を含み得る:倦怠感、疲労、発熱、食欲不振、及び体重減少等の全身症状;成人の急性、一過性の顔面皮疹、水疱症、及び、頭頸部の慢性かつ外観を損なう皮疹を含む多様な皮膚症状;関節炎;筋肉痛及び/または筋力低下;僧帽弁肥厚、疣贅、逆流、狭窄、心膜炎、及び虚血性心疾患を含む循環器症状(これらのうちのいくつかは、脳卒中、側線性疾患、心不全、感染性心内膜炎、または弁不全に至る可能性がある);SLEにおける罹患率の主要原因である腎炎;認知障害、うつ病、精神病、昏睡、発作性疾患、偏頭痛、及び他の頭痛症状を含む神経症状、無菌性髄膜炎、舞踏病、脳卒中、及び脳神経障害;白血球減少症、血小板減少症、漿膜炎、貧血、凝固異常、脾腫、及びリンパ節腫脹を含む血液学的症状;ならびに種々の消化管異常。Id;Vratsanos et al.,“Systemic Lupus Erythematosus,”Chapter39 in Samter’s Immunological Diseases,6
th Edition,Austen et al.,eds.,Lippincott Williams & Wilkins,Phiiladelphia,PA,2001。症状の重症度及び疾患の経過は、大きく異なる。SLEは、致命的であり得る。
【0044】
SLE患者は、既存のSLEの治療薬を用いた治療の前、後、またはそれと同時に、BAFF及びB7RP1を阻害する二重特異性タンパク質を用いて治療することができる。そのような既存のSLEの治療薬は、プレドニゾン、プレドニゾロン、及びメチルプレドニゾロン等の副腎皮質ステロイド、ヒドロキシクロロキン、キナクリン、及びクロロキン等の抗マラリア薬、レチノイン酸、アスピリン、及び他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、シクロホスファミド、デヒドロエピアンドロステロン、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、クロラムブシル、メトトレキサート、タクロリムス、ダプソン、サリドマイド、レフルノミド、シクロスポリン、ベリムマブ、リツキシマブ等の抗CD20抗体、ならびにアバタセプト等の融合タンパク質を含む。
【0045】
SLE患者の疾患活動性は、全身性エリテマトーデス疾患活動性指数(SLEDAI)等の手段を用いて評価することができ、これは、重症度に従って重み付けされる以下の症状を考慮に入れて疾患活動性のスコアを提供する:発作、精神病、器質性脳症候群、視覚障害、脳神経障害、ループス頭痛、血管炎、関節炎、筋炎、尿円柱、血尿、蛋白尿、膿尿、新たな皮疹、脱毛症、粘膜潰瘍、胸膜炎、心膜炎、低補体、DNA結合の増加、発熱、血小板減少症、及び白血球減少症。Bombardier et al.(1992),Arthr.& Rheum.35(6):630−640(その関連する部分が、参照により本明細書に組み込まれる)。本明細書に記載の治療は、SLEDAIによって測定されるようなSLEの症状を軽減または排除する上で有用であり得る。本明細書に記載の治療の方法は、本明細書に記載の二重特異性タンパク質を用いた治療を開始する前の同じ患者のベースライン値と比較して患者のSLEDAIスコアを改善することができる。
【0046】
SLEにおける疾患活動性を評価するための別の方法は、イギリス諸島ループス評価群(BILAG)指数であり、これは、医師の治療意図の原理に基づくSLE患者の疾患活動性評価システムである。Stoll et al.(1996),Ann.Rheum Dis.55:756−760;Hay et al.(1993),Q.J.Med.86:447−458。BILAGについて記載するこれらの参考文献の一部が、参照により本明細書に組み込まれる。BILAGスコアは、全身(発熱及び疲労等)、皮膚粘膜(他の多くの症状の中でも特に皮疹及び脱毛症)、神経(他の多くの症状の中でも特に発作、偏頭痛、及び精神症状)、筋骨格(関節炎等)、心肺(心不全及び肺機能低下等)、血管炎及び血栓症、腎臓(腎炎等)、ならびに血液の8つの器官に基づく系の各々において、別個の数値及びアルファベットの疾患活動性スコアを与えることによって割り当てられる。同上。本明細書に記載の治療は、BILAG指標によって測定されるようなSLEの症状を軽減もしくは排除する上で、または本明細書に記載の二重特異性タンパク質を用いた治療を開始する前のベースライン値と比較して患者のBILAGスコアを高める上で有用であり得る。
【0047】
BAFF媒介性のB細胞の増殖及びB7RP1媒介性のT細胞の増殖を阻害する本明細書に記載の二重特異性タンパク質は、関節リウマチ(RA)を治療するためにも使用することができる。RAは、全身症状を伴う疾患であると同時に、特に関節に関連する症状を伴う慢性疾患である。症状は一般的に滑膜炎を含み、有痛性の間接腫脹、ならびに正常レベルより高いリウマトイド因子、抗シトルリン化タンパク質(抗CCP)抗体、及びC反応性タンパク質(CRP)等の種々の検査所見の異常、そして赤血球沈降速度(ESR)の亢進をもたらす。あまり一般的ではない症状は、例えば、腱、靭帯、血管、心臓、及び肺に関与する種々の関節外症状を含む。疾患活動性は、しばしば、様々な指標を用いて測定することができる。例えば、Anderson et al.(2012),Arthritis care & Res.64(5):640−647(そのような指標について記載する部分が、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。そのようなスコアリング指標に含まれる要素は、圧痛のある関節の数、腫脹関節の数、機能性評価、及びCRP、ESR等の種々の臨床所見を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、RAに罹患する患者は、RAに現在使用されている薬物を用いた治療の前、後、またはそれと同時に、BAFF媒介性B細胞増殖及びB7RP1媒介性T細胞増殖を阻害する二重特異性タンパク質を用いて治療することができる。関節リウマチ(RA)に現在使用されている治療薬は、特に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(アスピリン及びシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤等)、疾患修飾性抗炎症薬(DMARD)(メトトレキサート、レフルノミド及びスルファサラジン等)、抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキン等)、シクロホスファミド、D−ペニシラミン、アザチオプリン、金塩、腫瘍壊死因子阻害剤(エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、及びセルトリズマブペゴール等)、リツキシマブ等のCD20阻害剤、アナキンラ等のIL−1アンタゴニスト、トシリズマブ等のIL−6阻害剤、ヤヌスキナーゼ(JAK(トファシチニブ等))の阻害剤、アバタセプト、ならびに副腎皮質ステロイドを含む。
【0049】
BAFF媒介性のB細胞の増殖及びB7RP1媒介性のT細胞の増殖を阻害する、治療有効量の本明細書に記載の二重特異性タンパク質は、クローン病または潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患を治療するためにも使用することができる。クローン病は、口腔から肛門までの消化管のあらゆる部分の異常な炎症を伴うが、ほとんどの患者において、異常な炎症は、回結腸、小腸、及び結腸−肛門直腸領域に限定される。典型的には、炎症は非連続性である。一般的な症状は、腹痛、食欲不振、体重減少、発熱、下痢、膨満感及び/または右下腹部の圧痛、便秘、嘔吐、ならびに肛門周囲の不快感及び分泌を含む。他の起こり得る症状は、特に、末梢関節炎、発達遅滞、上強膜炎、アフタ性口内炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、腎結石、尿希釈及びアルカリ化障害、吸収障害、ならびに胆石を含む。例えば、Strober et al.,Medical Immunology,10
th Edition,Section III,Ch.35(2001);Merck Manual of Diagnosis and Therapy,17
th Edition,Section 3,Ch.31(1999)を参照されたい。クローン病に罹患する患者から単離したマクロファージは、増大量のIL−12、IFNγ、TNFα、及び他の炎症性サイトカインを産生する。
【0050】
潰瘍性大腸炎は、時にクローン病と区別することが困難であるが、いくつかの点においてクローン病と異なる。第1に、潰瘍性大腸炎は一般的に結腸に限定されるが、クローン病は消化管のあらゆる場所に起こり得る。第2に、炎症が腸の壁または消化管の他の場所を完全に貫通し得るクローン病とは異なり、潰瘍性大腸炎は、主として腸の表層のみの炎症を伴う。最後に、潰瘍性大腸炎は、クローン病に典型的である不連続な炎症部位ではなく、典型的に連続した炎症領域を伴う。クローン病と同様に、潰瘍性大腸炎は主として都市部に見られる。また、家族性集積の症例が存在することから、潰瘍性大腸炎には遺伝的要因が関与している可能性が高い。自己抗体は、クローン病患者よりも潰瘍性大腸炎患者においてより多く観察される。自己抗体は、しばしば結腸上皮細胞の成分を標的とする。中でも最も一般的なのは、カタラーゼ、α−エノラーゼ、及びラクトフェリンに特異性を示す抗好中球細胞質抗体である。いくつかの場合において、そのような抗体は、結腸微生物と交差反応する。
【0051】
臨床試験において、クローン病の活動性は、クローン病活動性指標(CDAI)を用いてスコア化されることが多い。CDAIは、(1)1日当たりの水様便または軟便の回数、(2)1日当たりの腹痛の程度の患者による評価、(3)一般状態の患者による評価(4)関節炎、紅彩炎、ブドウ膜炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、アフタ性口内炎、裂肛、痔瘻もしくは膿瘍、他の瘻孔、または発熱を含む他の症状の患者による報告、(5)ロモティルまたは他の下痢用のアヘン剤服用についての患者による報告、(6)腹部腫瘤、(7)ヘマトクリット値、及び(8)体重を含む8つの因子に基づいて疾患活動性スコアを提供する。例えば、Best et al.(1976),Gastroenterol.70:439−444,(その関連する部分が、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0052】
潰瘍性大腸炎の症状は変動的である。それらは、下痢、しぶり腹、腹部疝痛、便中の血液及び粘液、発熱、ならびに直腸出血を含み得る。潜在的に生命を脅かす状態である中毒性巨大結腸症(結腸が、約6センチメートルを超えて拡張し、その筋緊張を喪失し得るかつ/または穿孔し得る)も起こり得る。潰瘍性大腸炎に付随し得る他の症状は、末梢関節炎、強直性脊椎炎、仙腸関節炎、前部ブドウ膜炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、上強膜炎、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎、硬変、ならびに小児における成長及び発達遅延を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、クローン病または潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患(IBD)に罹患する患者は、既存のIBDの治療薬を用いた治療の前、後、またはそれと同時に、BAFF及びB7RP1に結合する二重特異性タンパク質を用いて治療することができる。IBDの既存の治療薬は、例えば、スルファサラジン、5−アミノサリチル酸及びその誘導体(オルサラジン、バルサラジド、及びメサラミン等)、抗TNF抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、及びセルトリズマブペゴールを含む)、経口または非経口投与用副腎皮質ステロイド(プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、またはヒドロコルチゾンを含む)、副腎皮質刺激ホルモン、抗生物質(メトロニダゾール、シプロフロキサシン、またはリファキシミンを含む)、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムス、ならびにサリドマイドを含む。
【0054】
二重特異性タンパク質をコードする核酸
B7RP1媒介性T細胞増殖及びBAFF媒介性B細胞増殖を阻害することができる二重特異性タンパク質をコードする核酸が本明細書に提供される。例えば、配列番号52は、配列番号14のアミノ酸配列を有するVL領域をコードし、配列番号53は、配列番号15のアミノ酸配列を有するVH領域をコードする。同様に、配列番号55及び56は、2つのBAFF結合ペプチドに融合された抗B7RP1抗体の重鎖を含むポリペプチドである配列番号17及び18のアミノ酸配列をそれぞれコードする。配列番号57は、前述のヘテロ四量体の二重特異性IgG抗体または二重特異性融合タンパク質の一部であり得る抗B7RP1抗体の軽鎖をコードする。本明細書に記載の任意のアミノ酸配列をコードする任意の核酸配列が企図される。同様に、本明細書に開示される配列に対するサイレント変異を含むか、または前述のアミノ酸配列変異体をコードするヌクレオチド配列変異体も、本発明の範囲内に含まれる。より具体的には、アミノ酸100個当たり10個以下の単一アミノ酸の挿入、欠失、または置換だけ本明細書に開示されるアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が企図される。
【0055】
本明細書に記載の二重特異性タンパク質をコードする核酸配列は、本明細書に提供されるアミノ酸配列及び当該技術分野の知識に基づいて当業者によって決定され得る。特定のアミノ酸配列をコードするクローン化されたDNAセグメントを生成する従来の方法の他に、特に、DNA 2.0(Menlo Park,CA,USA)及びBlueHeron(Bothell,WA,USA)等の企業が、現在、任意の所望の配列の化学合成された遺伝子サイズのDNAを注文に応じて日常的に生産しており、そのようなDNAを生成するプロセスの合理化を行っている。コドン使用頻度は、選択した系における発現を最適化するように調整することができる。
【0056】
BAFF及びB7RP1に結合する二重特異性タンパク質の作製方法
本明細書に記載の二重特異性タンパク質をコードする核酸は、核酸を発現させる宿主細胞に適切なベクターに挿入することができる。これらの核酸は、当該技術分野で周知のいずれの方法によって宿主細胞に導入されてもよい。使用することができる宿主細胞は、他の多くの細胞の中でも特に、大腸菌を含む細菌、出芽酵母またはピキア・パストリスを含む酵母、ヨトウガ細胞を含む昆虫細胞、植物細胞、ならびにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎細胞、HeLa細胞、ヒト肝細胞癌細胞、及び293細胞を含む哺乳動物細胞を含む。これらの宿主細胞は、導入した核酸が発現するような、かつ培養上清もしくは細胞集団から二重特異性タンパク質を回収できるような条件下で培養することができる。
【0057】
一般的に、宿主細胞に核酸を導入するために用いられる手順は、核酸が導入される宿主細胞に依存し得る。細菌に核酸を導入する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、電気穿孔または塩化カルシウムによる形質転換が一般的に使用される。酵母に核酸を導入する方法も当該技術分野で周知であり、例えば、酢酸リチウム及びポリエチレングリコールを使用した形質転換法を含む。哺乳動物細胞に異種ポリヌクレオチドを導入する方法は当該技術分野で周知であり、限定されないが、デキストラン媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、ポリブレン媒介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔、ポリヌクレオチド(複数可)のリポソームへの封入、及び核内へのDNAの直接マイクロインジェクションを含む。
【0058】
いずれの宿主細胞に使用される発現ベクターも、DNA複製、ベクターを含有する宿主細胞の選択、及び外来性ヌクレオチド配列の発現に必要な配列を含有することができる。そのような配列は、典型的に、以下のヌクレオチド配列のうちの1つ以上を含むことができる:プロモーター、1つ以上のエンハンサー配列、複製起点、複製終結配列、ドナー及びアクセプタースプライシング部位を含有する完全なイントロン配列、ポリペプチド分泌のリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現させるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択可能マーカー要素。種々の宿主細胞における発現に適した多数の発現ベクターが当該技術分野で既知であり、市販されている。
【0059】
薬学的組成物、投薬、及び投与方法
本明細書に記載の二重特異性タンパク質を含む薬学的組成物が提供される。そのような組成物は、生理学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤等の1つ以上のさらなる構成成分とともに、治療有効量の二重特異性タンパク質を含むことができる。そのようなさらなる構成成分は、多くの可能性の中でも特に、緩衝剤、炭水化物、ポリオール、アミノ酸、キレート剤、安定剤、及び/または防腐剤を含むことができる。多くのそのようなさらなる構成成分は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18
th Edition,(A.R.Gennaro,ed.),1990,Mack Publishing Company(その関連する部分が、参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0060】
本明細書に記載の二重特異性タンパク質の投薬は、所望の効果を達成するように調整することができる。多くの場合、治療される疾患の慢性性質のために反復投与が必要とされる。例えば、本明細書に記載の二重特異性タンパク質は、週に2回、週に1回、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10週毎に1回、または2、3、4、5、もしくは6ヶ月毎に1回投与することができる。各投与日に投与される二重特異性タンパク質の量は、約0.0036mg〜約700mgであってもよい。代替として、用量は、推定される患者の皮膚表面に従って較正されてもよく、各用量は、約0.002μg/m
2〜約350mg/m
2であってもよい。別の代替例において、用量は、患者の体重に従って較正されてもよく、各用量は、約0.000051mg/kg〜約10.0mg/kgであってもよい。
【0061】
二重特異性タンパク質、またはそれらの分子を含有する薬学的組成物は、いずれの実行可能な方法によって投与されてもよい。経口投与では、ある特殊な配合または状況が存在しない場合、胃の酸性環境においてタンパク質の加水分解が生じるため、タンパク質を含む治療薬は、通常、非経口経路によって、例えば注射によって投与される。皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、病巣内、及び腹膜内のボーラス注射が可能な投与経路である。また二重特異性タンパク質は、注入、例えば、静脈内または皮下注入によっても投与することができる。特に、皮膚に関与する疾患の場合、局所投与も可能である。代替として、二重特異性タンパク質は、粘膜との接触によって、例えば、鼻腔内、舌下、膣内もしくは直腸投与、または吸入剤としての投与によって投与することができる。代替として、二重特異性タンパク質を含む特定の適切な薬学的組成物は、経口投与することができる。
【0062】
本発明を一般論として上述してきたが、以下の実施例を限定ではなく例示の目的で提供する。
【実施例】
【0063】
実施例1:ヒトの治療用途のためのBAFF/B7RP1二重特異性分子の設計及び試験
この一連の実験の目的は、(1)BAFF媒介性B細胞増殖及びB7RP1媒介性T細胞増殖を阻害し、(2)生物学的アッセイにおいて高度に活性であり、(3)好ましい生物物理学的特性を有する二重特異性分子を発見することであった。ヒトBAFFを抗ヒトB7RP1 IgG抗体(抗huB7RP1)に結合させるペプチドの融合のための多数の概略的設計を
図1に示す。BAFF結合ペプチドの配列は、配列番号1に提供され、抗huB7RP1の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の配列は、それぞれ、配列番号25及び配列番号19に提供される。
【0064】
どの設計が、生物学的活性を保持しながら最良の生物物理学的特性を有するかを決定するために、
図1に図示する二重特異性分子を作製し、試験を行った。ある構築物において、リンカー(配列番号24のアミノ酸配列を有する「1Kリンカー」)が介在するBAFF結合ペプチドの2つのタンデムコピーを、抗huB7RP1の免疫グロブリン重鎖(P71617)または免疫グロブリン軽鎖(P71618)のいずれかのN末端に融合した。
図1を参照されたい。P71617重鎖のアミノ酸配列は配列番号26に提供され、P71617の軽鎖のアミノ酸配列は、抗huB7RP1の免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列と同じである(配列番号19)。P71618軽鎖のアミノ酸配列は配列番号27に提供され、P71618の重鎖のアミノ酸配列は、抗huB7RP1の免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列と同じである(配列番号25)。2つのBAFF結合ペプチドの間に上記1Kリンカー(配列番号24のアミノ酸配列を有する:P71619)または5X(G4S)リンカー(配列番号71)を用いて、BAFF結合ペプチドの2つのタンデムコピーを、抗huB7RP1の免疫グロブリン重鎖(配列番号25のアミノ酸配列を有する)のC末端にも融合した(P71620)。これら2つの融合構築物の重鎖のアミノ酸配列は、配列番号16(P71619)及び配列番号28(P71620)に提供される。構築物P71621において、抗体のCH3ドメインの配列番号25のアミノ酸配列(抗huB7RP1抗体の免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列)の残基358と359の間に、1Kリンカーが介在するBAFF結合ペプチドの2つのタンデムコピーを挿入した。P71621構築物の重鎖の配列は、配列番号29に提供される。構築物P71622において、BAFF結合ペプチドを抗huB7RP1の免疫グロブリン重鎖のCH3ドメイン(配列番号25の残基358と359の間に挿入し、BAFF結合ペプチドの第2のコピーを重鎖のC末端に融合した。P71622の重鎖のアミノ酸配列は、配列番号30に提供される。構築物P71623において、1つのBAFF結合ペプチドをCH2領域(配列番号25の残基268と269の間)に挿入し、第2のBAFF結合ペプチドをCH3領域(配列番号25の残基358と359の間)に挿入した。配列番号31は、P71623の重鎖のアミノ酸配列である。構築物P71619〜P71623は全て、抗huB7RP1の免疫グロブリン軽鎖を有する(配列番号19)。
【0065】
構築物P74293及びP74294において、構築物P71619のBAFF結合ペプチドの2つのタンデムコピー間のリンカーを修飾した。P74293及びP74294の重鎖のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号17及び配列番号18に提供される。これらの構築物の免疫グロブリン軽鎖もまた、配列番号19のアミノ酸配列を有する。
【0066】
前述の構築物をコードする核酸を次のように作製した。BAFF結合ペプチドの2つのコピー及び免疫グロブリン重鎖または軽鎖可変領域を含む、N末端BAFFペプチド融合物(P71617及びP71618)のN末端部分をコードする核酸を合成的に作製した。これらを、都合のよい制限エンドヌクレアーゼ部位を介して、適切なベクター内の免疫グロブリン重鎖または軽鎖定常領域をコードする核酸に連結した。重鎖定常領域C末端融合物(P71619及びP71620)をコードする核酸、Fcループ挿入物(P71621及びP71623)、及びFcループ挿入/C末端融合物(P71622)は、全て合成的に作製し、都合のよい制限エンドヌクレアーゼ部位を介して重鎖可変領域を含有するベクター内に連結した。
【0067】
前述の種々の二重特異性構築物を、一過性にトランスフェクトした293細胞及び安定にトランスフェクトしたCHO細胞の両方で発現させた。融合タンパク質を精製し、生物学的活性について試験した。これら2つの異なる種類の宿主細胞で産生されたタンパク質において違いは観察されなかった。
【0068】
BAFF媒介性のヒト一次B細胞増殖アッセイにおいて、二重特異性分子のBAFF阻害活性について試験した。端的に述べると、Miltenyi Biotec(Auburn,CA)からのヒトB細胞キットIIを使用して、負の選択を用いて末梢血単核球(PBMC)からヒトB細胞を精製した。50ng/mlヒトBAFFタンパク質、2μg/mlヤギF(ab’)2抗ヒトIgM(Jackson ImmunoResearch)、及び様々な濃度の前述の二重特異性タンパク質のうちの1つの存在下、Minimal Essential Media(MEM)及び熱失活させた10%ウシ胎仔血清(FBS)中、96ウェルのマイクロタイタープレートにて、約10
5精製したB細胞を5%CO
2中37℃で48時間培養した。抗BAFFペプチボディを陽性対照として用いた(「αBAFF」は、2つのポリペプチド鎖を含有するホモ二量体であり、各々がFcポリペプチドに融合された2つのBAFF結合ペプチドを含む)。αBAFF分子は、米国特許第7,259,137号に詳しく記載されており、このホモ二量体の1つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は配列番号32に提供される。αBAFFについて記載する米国特許第7,259,137号の一部が、参照により本明細書に組み込まれる。増殖は、インキュベーションの最後の18時間の間の放射性
3H−チミジンの取り込みよって測定した。結果を
図2A及び2Bに示す。
【0069】
図2Aのデータは、2つのC末端融合構築物(P71619及びP71620)が、BAFF媒介性B細胞増殖の阻害において互いに同等であり、この実験で試験した他の全ての融合構築物よりも強力であることを示している。P71620は、凝集する傾向にあり、それは治療用タンパク質において非常に望ましくない特性であるため、それ以上探究しなかった。
図2Bのデータは、P71619が、BAFF媒介性B細胞増殖の阻害において、前述のこの構築物の若干修飾された2つの形態(P74293及びP74294)及び陽性対照(αBAFF)に匹敵することを示す。したがって、試験した二重特異性構築物の中でも特に、P71619、P71620、P74293、及びP74294は、このBAFF媒介性B細胞増殖アッセイにおいて相当な活性を有し、試験した全ての他の構築物よりも良好な活性を有していた。
【0070】
P71619、P74293、及びP74294のB7RP1阻害活性を、ヒトB7RP1−Fc媒介性T細胞増殖アッセイを用いてアッセイした。Miltenyi Biotec(Auburn,CA)からのPan T細胞単離キットを使用して健常なヒトドナー由来のPBMCから一次ヒトT細胞を精製し、様々な濃度の前述の二重特異性タンパク質またはIgG2抗ヒトB7RP1抗体(本明細書において「αB7RP1」と称される)の存在下で、プレート結合抗CD3(1μg/mL)抗体及びB7RP1−Fc融合タンパク質(3μg/mL)で刺激した。48時間後に
3H−チミジンを細胞に加え、24時間後に
3Hチミジンの取り込みを測定した。試験した全ての二重特異性抗体が同様のIC
50を有しており、これはαB7RP1のものと同様であった(
図3)。したがって、これらのデータは、BAFF結合ペプチドの抗huB7RP1抗体への接合が、抗体がB7RP1活性を阻害する能力にほとんど影響を及ぼさなかったことを示唆している。
【0071】
ヘテロ二量体性の二重特異性抗体P74293及びP74294のBAFF及びB7RP1への結合親和性を、Kinetic Exclusion Assay(KinExA(登録商標);Sapidyne Instruments,Boise,Idaho)によって測定した。両方の抗体が、ヒトBAFF(約30pMのK
dを有する)及びヒトB7RP1(約40pMのK
dを有する)に対して高い結合親和性を有する。下の表2を参照されたい。さらに、これらの二重特異性はどちらも、ヒトBAFFと比較してカニクイザルBAFFに対して同様の結合親和性を有し、ヒトB7RP1と比較してカニクイザルB7RP1に対して同様の結合親和性を有する。表2。
【表2】
【0072】
ヒト細胞を用いたin vitro系においてP74293の活性をさらに評価するために、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)によって活性化したヒト扁桃細胞のサイトカイン産生を種々の試験分子の存在下で評価した。端的に述べると、ヒト扁桃細胞を組織から単離し、以下の分子のうちの1つの存在下においてSEB(1μg/mL)で刺激した:(1)αB7RP1、(2)P74293、(3)CTLA4−Ig(陽性対照)、または(4)ヒトIgG(陰性対照)。72時間の培養後、細胞上清を回収し、Meso Scale Discoveryからのキットを製造者の指示に従って使用してサイトカインレベルをアッセイした。結果を
図4に示す。
【0073】
図4の全パネルにおいてそれぞれバー1、2、及び3であるαB7RP1、P74293、及びCTLA4−Igの3つ全てが、IL−17、IL−10、IL−4、及びIFNγの放出を阻害した。IL−2の放出は、CTLA4−Igによってのみ阻害された。したがって、αB7RP1及び抗BAFF/B7RP1二重特異性P74293は、SEBで活性化したヒト扁桃細胞によるサイトカイン分泌に対して同等かつ特異的な効果を及ぼした。
【0074】
3つのヘテロ二量体性の二重特異性タンパク質、すなわち、P71619、P74293、及びP74294を、さらなる特性について調査した。これらのタンパク質を産生する宿主細胞の培養物からのタンパク質力価は、P71619が産生されるレベルの約2倍のレベルでP74293及びP74294が産生されたことを示唆していた。またP74293及びP74294は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって評価したところ、40℃で2週間保存した後にP71619よりも安定であった。P74293が、保存開始時及び4週間の保存後に透明な溶液を形成したのに対し、P74394を含有する溶液は全ての時点で濁っていた。P74293及びP74294の溶液は、P71619の溶液よりも粘性が低かった。したがって、P74293及びP74294は、P71619よりも高いレベルで発現し、また、試験した濃度範囲においてP71619よりも安定であり、粘性がより低かった。これらの分子間の最も顕著な違いは、2つのBAFF結合ペプチド間のリンカーにある。これらのデータは、P74293及びP74294(配列番号6及び7)のリンカーが、これらの分子に改善された特性を付与できることを示唆している。
【0075】
記載される二重特異性分子の薬物動態特性をマウスにおいて評価した。オスCD−1マウスに単回静脈内(IV)用量(5mg/kg)の二重特異性融合タンパク質P71617、P71619、P71621、P71622、P74293、またはP74294を投与した。投薬前、及び投薬後0.5、2、8、24、48、72、96、168、240、336、408、504時間に血清試料を採取した。血清中の二重特異性分子の濃度を2つのELISA法によって決定した:一方はFc部分の存在を検知し、一方は、Fc部分及びBAFF結合ペプチド部分の両方の存在を検知した。Fc部分の測定のために、ビオチン化した抗Fc抗体を捕捉試薬として使用し、ALEXA FLUOR(登録商標)647で標識した抗Fc抗体を決定試薬として使用した。二重特異性のBAFF結合部分及びFc部分を検出するために、ビオチン化したBAFFタンパク質を捕捉試薬として使用し、ALEXA FLUOR(登録商標)647で標識した抗Fc抗体を決定試薬として使用した。重鎖のN末端(P71617)、C末端(P71619、P74293、及びP74294)、またはCH3ドメイン(P71621)に融合したBAFF結合ペプチドの2つのタンデムコピーを有する二重特異性タンパク質は、マウスにおいて非常に類似したPKプロファイルを有する。
図5。BAFF結合ペプチドの一方のコピーがCH3ドメインに挿入され、別のコピーが重鎖のC末端に融合された二重特異性タンパク質(P71622)は、他の二重特異性タンパク質と比較してより低い曝露量を有していた。
図5。さらに、2つの異なるELISAアッセイが同様の二重特異性タンパク質の血清中濃度をもたらしたことから、in vivoでは二重特異性タンパク質の顕著な切断は起こらなかったことが示唆される。
【0076】
P74293及びP74294ヘテロ二量体二重特異性抗体の薬物動態パラメータ及び薬力学的パラメータも、カニクイザルにおける単回投与試験によって評価した。未処理のオスカニクイザル(n=4)に、P74293(10mg/kg)の単回ボーラス静脈内投与もしくは皮下投与、またはP74294(10mg/kg)の単回皮下投与を行った。どちらの二重特異性分子も、IgG抗体と同様のPKプロファイルを有する。P74293及びP74294、ならびに抗huB7RP1について観察された薬物動態パラメータを下の表3に報告する。
【表3】
【0077】
表3のデータは、P74293及びP75294の薬物動態パラメータが互いに同等であり、また抗huB7RP1抗体のパラメータに匹敵することを示している。
【0078】
実施例2:マウス二重特異性代理分子の設計及び試験
マウスにおける前臨床試験を実施するために、マウスB7RP1及びマウスBAFFに結合することができるマウス代替物二重特異性分子(これ以降、「マウス代替物」)を構築した。実施例1に記載した二重特異性構築物を構築するために使用した抗huB7RP1抗体はマウスB7RP1に結合しないが、これらの構築物に使用したBAFF結合ペプチドは、ヒト及びマウス両方のBAFFに結合する。データは示さず。マウス代替物は、マウス免疫グロブリン定常領域及びラット抗マウスB7RP1免疫グロブリン可変領域のキメラである、拮抗性IgG抗マウスB7RP1抗体(本明細書において「抗mB7RP1」と称される)を含む。抗mB7RP1の使用は、Hu et al.(2009),J.Immunol.182:1421(1B7−V2と表記される)に記載されている。マウス代替物は、短いリンカー(5アミノ酸長)を介して抗mB7RP1の免疫グロブリン重鎖のC末端に融合されたBAFF結合ペプチド(配列番号1)の2つのコピーを有する。BAFF結合ペプチドの2つのコピーは、23アミノ酸長の別のリンカーによって分離される。重複PCRを用いてマウス代替物の重鎖をコードする核酸を作製し、αBAFFのBAFF結合部位をコードする核酸を、1B7−V2、すなわち、抗mB7RP1の重鎖をコードする核酸の下流末端に結合した。
【0079】
BAFF媒介性B細胞増殖アッセイにおいて、マウス代替物によるBAFF阻害を評価した。製造者(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)の指示に従ってMACS CD43(ly−48)Microbeadsを用いて、負の選択によりC57BL/6脾臓から、またはB細胞単離キット(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)を使用してPBMCから、マウスBリンパ球を単離した。精製したB細胞を様々な濃度のマウス代替物またはαBAFFの存在下で0.1μg/ml抗IgM及び200ng/ml BAFFで刺激した。4日目の
3H−チミジンの取り込みによってB細胞増殖を測定した。マウス代替物及びαBAFFのIC
50は、それぞれ0.59nM及び0.73nMであった。
図6Aを参照されたい。このように、マウス代替物は、αBAFFの能力に匹敵する能力でBAFFを効果的に阻害した。
【0080】
マウス代替物によるB7RP1のその受容体への結合の阻害を測定するために、最初に、抗CD3(5μg/ml)抗体で被覆したマイクロタイターウェルでマウス脾細胞を24時間インキュベートすることによりマウス脾細胞を活性化し、それらのB7RP1受容体の発現を増強した。活性化した脾細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、次いで、種々の濃度のマウス代替物の存在下で5μg/mlのビオチン化muB7RP1:Fcとともに4℃で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、次いで、アロフィコシアニン(APC)接合抗マウスCD3抗体及びストレプトアビジン−フィコエリトリン(ストレプトアビジン−PE)でさらに20分間染色した。フローサイトメトリーによりB7RP1−FcのT細胞への結合を分析した。マウス代替物及び抗mB7RP1のIC
50は、それぞれ4.01pM及び2.8pMであった。
図6Bを参照されたい。したがって、このアッセイにおいて、マウス代替物の活性は抗mB7RP1の活性と同様であった。このように、マウス代替物はBAFF及びB7RP1の両方を阻害する。
【0081】
ヒツジ赤血球(SRBC)で免疫化したマウスにおいて、マウス代替物のin vivoでの薬力学的効果を評価した。端的に述べると、0日目に、BALB/cマウス(8週齢)に一次免疫を施し、28日目に、0.2mlのPBS中2×10
8SRBCを用いて腹腔内注射により追加免疫を投与した。0日目から33日目まで、5mg/kgの次の分子の1つでマウス(各分子につきn=5)を週に2回処理した:マウス代替物;αBAFF;抗mB7RP1;またはマウスIgG1。SBRCを用いた処理は行ったが他の処理は施さなかったマウスが、陽性対照としての役割を果たした。34日目にマウスを屠殺し、血清及び脾臓を回収した。
【0082】
脾臓内のB細胞及びメモリーT細胞の割合を測定するために、セルストレーナーを通して脾臓組織を粉砕することにより脾細胞を回収した。脾細胞を非標識抗CD16/32でプレインキュベートして、抗体のFCγ受容体(FcγR)への非特異的結合をブロックした。PE標識抗B220(B細胞に発現される)で染色することによりB細胞の割合を決定した。FITC接合抗CD44、PE接合抗CD62L、APC接合抗CD4、及びPerCP接合抗CD3で染色することにより、メモリーT細胞(CD44
hiCD62L
loCD4 T細胞)の割合を決定した。全ての染色抗体は、BD Bioscience(San Diego,CA)から購入した。B細胞及びT細胞の両方の決定のために、FACSCALIBUR(商標)(BD Bioscience,San Jose,CA)フローサイトメーターを用いてフローサイトメトリーを行い、フローサイトメトリーデータ分析用のFLOWJO(登録商標)(TreeStar Inc.,Ashland,OR)ソフトウェアを使用してデータを分析した。結果を
図7に示す。
【0083】
血清中の抗SBRC抗体のレベルを測定するために、10μg/mlのSRBC可溶性抗原で被覆したマイクロタイタープレートを、処理マウスからの希釈した血清とともに室温で2時間インキュベートした。HRP接合ポリクローナルヤギ抗マウスIgG及びIgM抗体(Southern Biotech、Birmingham,AL)を用いて、結合した血清由来のSRBC特異的Igを検出した。SUREBLUE(商標)TMBマイクロウェル用ペルオキシダーゼ基質(KPL,Gaithersburg,MD)を製造者の指示に従って使用して基質反応を行い、Spectrum Maxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して光学濃度を読み取った。陽性対照として、いずれの処理も行っていないSRBC免疫化マウスからの血清混合物の段階希釈物を各プレートに加え、これらのウェルの読み取り値から標準曲線を構築した。他の試料の抗SBRC抗体のレベルを、この陽性対照のパーセンテージとして
図7に報告する。
【0084】
B細胞である脾細胞のパーセンテージは、マウスIgG1で処理したマウスにおいて観察されたパーセンテージと比較して、マウス代替物で処理したマウスにおいて少なかった。
図7(上のパネル)。同様の反応がαBAFFまたはαBAFF及び抗mB7RP1で処理したマウスにおいて観察されたが、抗mB7RP1単独で処理したマウスには観察されなかった。
図7(上のパネル)。メモリーT細胞に関して、マウス代替物、抗mB7RP1、または抗mB7RP1及びαBAFFで処理したマウスは、muIgG1で処理したマウスに観察された割合と比較してメモリーT細胞の割合が少なかった。
図7(中央パネル)。対照的に、αBAFFを用いた処理は、muIgG処理で観察されたものと比較して脾臓内のメモリーT細胞集団を変化させなかった。
図7(中央パネル)。マウス代替物はまた、血清中の抗SRBC抗体レベルの強力な減少も示したが、これは、SRBCを注射しなかったマウスにおいて、抗mB7RP1または抗mB7RP1及びαBAFFで処理した場合に観察されたものと同様であった。
図7(下のパネル)。αBAFF単独で処理したマウスにおいて、mIgG1処理で観察されたレベルと比較して抗SRBC抗体レベルの中程度の阻害が観察された。
図7(下のパネル)。これらのデータは、マウス代替物が、in vivoでマウスのB細胞及びT細胞区画において二重の阻害効果を有することを示している。
【0085】
試験した分子の各々について2つの異なる用量を用いて、マウス代替物が疾患に与える影響をNZB/W F
1ループスモデルにおいて評価した。以下の投与計画の各々を用いて、メスNZB/W F
1マウス(4.5月齢、n=20)を、18週間、腹腔内注射により週2回処理した:5もしくは15mg/kgマウス代替物
【化1】
;4.68もしくは14mg/kg抗mB7RP1
【化2】
;1.88もしくは5.6mg/kgαBAFF
【化3】
;αBAFF(1.88もしくは5.6mg/kg)及び抗mB7RP1(4.68もしくは14mg/kg)の組み合わせ;マウスIgG1(15mg/kg;アイソトープ対照);またはリン酸緩衝食塩水(PBS)(陰性対照)。ALBUSTIX(登録商標)(Bayer,Elkhart,IN)を使用して、5月齢から開始して2週間毎に尿中の蛋白尿を測定した。蛋白尿出現率は、2回の連続した測定において少なくとも300mg/dlの濃度の尿蛋白を有するマウスのパーセンテージとして表した。ELISAにより血清抗dsDNA IgGレベルを測定した。8つの異なる種類の病変、すなわち、糸球体毛細血管増殖、メサンギウム細胞過形成、メサンギウム基質の増生、糸球体係蹄接着、部分的な上皮過形成、間質性腎炎、尿細管拡張/蛋白円柱、及び尿細管萎縮/間質性線維症の腎組織試料の調査により、全てのマウスの腎疾患に関するスコアリングを行った。各種類の病変に、可能な最大スコア32で0〜5の重症度スコアを与えた。各群のマウスのスコアを平均化した。生存を監視した。
【0086】
12月齢の時点で、いずれかの用量レベルのマウス代替物で処理したマウスは、蛋白尿を発症しなかった。対照的に、試験した両方の用量レベルのマウスIgG1またはPBSで処理したマウスの100%が蛋白尿を呈した。
図8A及び9B。より低い用量レベルの抗mB7RP1及びαBAFFで処理したマウスのそれぞれ約60%及び35%、より高い用量レベルの抗mB7RP1及びαBAFFで処理したマウスのそれぞれ約50%及び25%が、蛋白尿を発症した。
図8A及び9B。さらに、両方の用量レベルのマウス代替物による処理が、muIgG1で処理した陰性対照と比較して抗dsDNA IgGの血清レベルに有意な減少をもたらした。
図8A及び9B。二重特異性処理はまた、mIgG及びPBS対照群と比較して生存率を著しく改善した。データは示さず。しかしながら、実験終了時には、二重特異性処理と単剤処理との間で生存率に明らかな違いは観察されなかった。
【0087】
腎疾患の重症度に関する組織学的スコアリングのために、試験が終了する前に死亡したマウスを含む全ての処理マウスからの腎臓を回収した。αBAFF、αBAFF及び抗mB7RP1の組み合わせ、またはマウス代替物で処理したマウスの群は、mIgG1で処理した対照群と比較して有意により低い腎疾患に関するスコアを有していた。
図10。代理二重特異性または組み合わせで処理した群もまた、単剤処理群と比較して腎臓病理の軽減傾向を示した:これは、前述の蛋白尿の結果と十分に相関する結果であった。
図10を
図8A及び9Bと比較されたい。要約すると、マウス代替物による、またはαBAFF及び抗mB7RP1を用いた併用処理によるBAFF及びB7RP1の二重阻害は、NZB/W F
1ループスモデルにおいて疾患の発症及び進行を予防する上で、BAFF(αBAFF)のみまたはB7RP1(抗mB7RP1)のみの阻害よりも効果的であった。
【0088】
BAFF及びB7RP1の両方の阻害がマウスのコラーゲン誘導性関節炎の症状を効果的に阻害することができるかどうかを判定するために、次の実験を行った。オスDBAマウスを、0日目に2xフロイント完全アジュバント(CFA)中に乳化した100μgのウシII型コラーゲンで免疫化し、21日目にフロイント不完全アジュバント(IFA)中のウシII型コラーゲンで追加免疫した。0日目から開始して41週の試験過程の間、マウスを試験物質のうちの1つで週2回処理した。関節炎の症状を示す各群のマウスのパーセンテージ、及び各群の平均関節炎スコアを各時点で評価した。各四肢を検査し、各四肢に0〜3のスコアを割り当てることにより関節炎スコアを決定した(より腫脹した及び/またはより炎症性の高い四肢はより高いスコア)。そのため、最大関節炎スコアの合計は12である。マウスは、いずれかの四肢に少なくとも1の関節炎スコアを有する場合に関節炎を有するとカウントした。
【0089】
結果を
図11に示す。これらのデータは、αBAFF及び抗mB7RP1の組み合わせ(実線で接続された黒丸)が、αBAFF(実線で接続された白抜きの丸)または抗mB7RP1(破線で接続された黒丸)いずれか単独よりも、関節炎の症状を抑制する上ではるかに効果的であったことを示している。mIgG(実線で接続された黒い四角)またはPBS(破線で接続された黒い四角)で処理した陰性対照群は、最も高い割合の関節炎の発生頻度及び最も高い関節炎スコアを有していた。これらの結果は、BAFF及びB7RP1の両方を阻害することが、これらの経路のうちの一方のみを阻害することとは対照的に、関節リウマチ等の自己免疫性及び/または炎症性の関節炎状態の効果的な治療であり得ることを示唆している。