(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523275
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】発泡性ポリアミド組成物およびそれから得られる発泡体
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20190520BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20190520BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20190520BHJP
C08J 9/08 20060101ALI20190520BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20190520BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20190520BHJP
C08L 25/08 20060101ALI20190520BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20190520BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L21/00
C08K5/29
C08J9/08CFG
C08L53/00
C08L23/16
C08L25/08
C08K3/00
C08J3/22
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-526325(P2016-526325)
(86)(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公表番号】特表2016-540843(P2016-540843A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】EP2014072194
(87)【国際公開番号】WO2015062868
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年9月15日
(31)【優先権主張番号】13190717.2
(32)【優先日】2013年10月29日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508183151
【氏名又は名称】ロデイア・オペラシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジョンフン
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ヨンチュル
【審査官】
三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−266966(JP,A)
【文献】
特開平05−209035(JP,A)
【文献】
特開平04−013764(JP,A)
【文献】
特開平03−199258(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102627851(CN,A)
【文献】
特開平02−252719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00−77/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)b)少なくとも1種の熱可塑性ゴムとc)少なくとも1個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物との混合物を含むマスターバッチを調製する工程と;
ii)a)少なくとも1個のカルボン酸基を含む少なくとも1種のポリアミド、および任意選択でd)少なくとも1種の充填剤をポリアミドの融点以上の温度で加熱して、溶融ポリアミドマトリックスを得る工程と;
iii)マスターバッチの少なくとも一部を溶融ポリアミドマトリックスに添加する工程と
を含む、組成物を製造するための方法であって、
組成物が、
a)21.0〜99.6重量%の、少なくとも1個のカルボン酸基を含む少なくとも1種のポリアミド;
b)0.3〜9.0重量%の少なくとも1種の熱可塑性ゴム;
c)0.1〜3.0重量%の、少なくとも1個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物;
d)0〜65.0重量%の少なくとも1種の充填剤;
e)0〜2.0重量%の少なくとも1種の添加剤
を含み、
a)〜e)の重量%の合計が100重量%になり、熱可塑性ゴムが、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)、スチレン−エチレン/エチレン/プロピレン−スチレン(SEEPS)、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、スチレン系熱可塑性エラストマー(STPE)を含み、少なくとも1種の熱可塑性ゴムと少なくとも1個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物との比が2:1〜4:1であり、少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物が、オリゴマー性ポリイソシアネートである、組成物を製造するための方法。
【請求項2】
i)b)少なくとも1種の熱可塑性ゴムとc)少なくとも1個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物との混合物を含むマスターバッチを調製する工程と;
ii)a)少なくとも1個のカルボン酸基を含む少なくとも1種のポリアミド、および任意選択でd)少なくとも1種の充填剤をポリアミドの融点以上の温度で加熱して、溶融ポリアミドマトリックスを得る工程と;
iii)マスターバッチの少なくとも一部を溶融ポリアミドマトリックスに添加する工程と
を含む、組成物を製造する方法であって、
組成物が、
a)21.0〜99.6重量%の、少なくとも1個のカルボン酸基を含む少なくとも1種のポリアミド;
b)0.3〜9.0重量%の少なくとも1種の熱可塑性ゴム;
c)0.1〜3.0重量%の、少なくとも1個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物;
d)0〜65.0重量%の少なくとも1種の充填剤;
e)0〜2.0重量%の少なくとも1種の添加剤
を含み、
a)〜e)の重量%の合計が100重量%になり、熱可塑性ゴムが、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、またはそれらの任意の組合せを含み、少なくとも1種の熱可塑性ゴムと少なくとも1個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物との比が2:1〜4:1であり、少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物が、オリゴマー性ポリイソシアネートである、組成物を製造するための方法。
【請求項3】
少なくとも1個のカルボン酸基を含むポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ならびにそれらの混合物およびコポリアミドからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
オリゴマー性ポリイソシアネートが、ジイソシアネートまたはトリイソシアネートである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(HDT)またはイソホロンジイソシアネート三量体(IPDT)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
充填剤が、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、タルク、カオリン、マイカ、カーボンブラック、黒鉛、木粉、ならびに他の天然産物の粉末および繊維、ならびに合成繊維からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の添加剤が、酸化防止剤、細孔形成剤、界面活性剤、造核剤、可塑剤、艶消し剤、顔料、着色剤、熱安定剤、光安定剤、生物活性剤、防汚剤、帯電防止剤、難燃剤、およびカルボン酸官能基とイソシアネート官能基との反応による脱炭酸化を促進する触媒からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
発泡性である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物から得られる発泡体を製造するための方法。
【請求項10】
航空もしくは自動車、包装または遮音用途における軽量材料としての、請求項9に記載の発泡体の使用。
【請求項11】
請求項9に記載の発泡体を備える自動車を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年10月29日に出願された欧州出願欧州特許第13190717.2号に対する優先権を主張し、本出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0002】
本発明は、発泡性ポリアミド組成物、それを生成する方法、およびそれを含む発泡体に関する。本発明によるポリアミド組成物を含む発泡体は、有利には自動車用途における軽量材料として使用することができる。
【背景技術】
【0003】
ポリアミドは、非常に広範な用途のためのエンジニアリングプラスチックとして頻繁に使用されるポリマーの1つである。
【0004】
発泡性ポリアミド組成物は、かなり商業的に興味のあるものであり、航空または自動車、包装または遮音用途などにおける軽量材料として使用され得る。
【0005】
発泡性ポリアミド組成物は、化学的方法によって調製されてもよい。例えば、米国特許出願公開第2006/0167124号明細書には、少なくとも1個のイソシアネート官能基、ポリアミド、および少なくとも1個のカルボン酸官能基を含む化合物を含む、発泡性ポリアミド組成物、ならびにそれから得られるポリアミド発泡体が開示されている。
【0006】
特定の用途、例えば、自動車用途の場合、従来のポリアミド発泡体よりも高い発泡比を有する一方で、依然として優れた機械的特性を示すポリアミド発泡体を与えることができる発泡性ポリアミド組成物が必要とされる。しばしば、ポリアミドマトリックスに対するイソシアネート化合物の比較的高い量の添加は、ポリアミド発泡体において比較的高い発泡比をもたらし得るが、このようなイソシアネート化合物の比較的高い量の使用は、ある特定の用途に必ず必要とされるポリアミド発泡体の機械的特性、例えば、曲げ強さ、曲げモジュラスおよび衝撃強さを低下させる場合がある。
【0007】
したがって、イソシアネート化合物のより少ない添加で高い発泡度を達成し得る発泡性ポリアミド組成物が、この技術分野で必要とされる。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、イソシアネート化合物の限定的使用によってさえも、高い発泡比を有する発泡体を得る一方で、他の有利な機械的パラメータ、例えば、曲げ強さ、曲げモジュラスおよび衝撃強さを維持することを可能にする発泡性組成物を提供することである。
【0009】
本発明は、
a)21.0〜99.6重量%の、少なくとも1個のカルボン酸基を含む少なくとも1種のポリアミド;
b)0.3〜9.0重量%の少なくとも1種の熱可塑性ゴム;
c)0.1〜3.0重量%の、少なくとも1個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物;
d)0〜65.0重量%の少なくとも1種の充填剤;および
e)0〜2.0重量%の少なくとも1種の添加剤
を含む組成物であって、
a)〜e)の重量%の合計が100重量%になる、組成物に関する。
【0010】
事実、驚くべきことに、ポリアミドマトリックスに添加される、少なくとも1個のイソシアネート基を有する限定的量の化合物によってさえも、本発明による組成物によって、優れた発泡比を得ることができることが、本発明者らによって見出された。
【0011】
本発明の本質的な特徴の1つは、少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物とともに、熱可塑性ゴムをポリアミドマトリックスに添加することにある。予想外にも、優れた発泡比と満足な機械的特性との両方を、発泡性ポリアミド組成物中の2種の成分の組み合わせた使用によって達成し得ることも見出された。
【0012】
本発明において、用語「ポリアミド」は、特に、式(I)または式(II):
式(I):−NH−R
1−CO−
式(II):−NH−R
2−NH−CO−R
3−CO−
(式中:
− R
1は、出現するごとに互いに等しいかまたは異なり、1〜17個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり;
− R
2は、出現するごとに互いに等しいかまたは異なり、1〜18個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり;および
− R
3は、出現するごとに互いに等しいかまたは異なり、1〜16個の炭素原子を有する二価炭化水素基である)
のいずれかに従う繰り返し単位[繰り返し単位(R
PA)]を含むポリアミドを意味することが意図される。
【0013】
本発明組成物のポリアミドは、好ましくは脂肪族ポリアミドであり、すなわち、R
1、R
2およびR
3は脂肪族基である。
【0014】
ポリアミドの繰り返し単位(R
PA)は、特に、(1)β−ラクタム、5−アミノ−ペンタン酸、ε−カプロラクタム、9−アミノノナン酸、10−アミノデカン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸の1種の重縮合反応、および/または(2)シュウ酸(HOOC−COOH)、マロン酸(HOOC−CH
2−COOH)、コハク酸[HOOC−(CH
2)
2−COOH]、グルタル酸[HOOC−(CH
2)
3−COOH]、アジピン酸[HOOC−(CH
2)
4−COOH]、2,4,4−トリメチル−アジピン酸[HOOC−CH(CH
3)−CH
2−C(CH
3)
2−CH
2-COOH]、ピメリン酸[HOOC−(CH
2)
5−COOH]、スベリン酸[HOOC−(CH
2)
6−COOH]、アゼライン酸[HOOC−(CH
2)
7−COOH]、セバシン酸[HOOC−(CH
2)
8−COOH]、ウンデカン二酸[HOOC−(CH
2)
9−COOH]、ドデカン二酸[HOOC−(CH
2)
10−COOH]、テトラデカン二酸[HOOC−(CH
2)
12−COOH]、オクタデカン二酸[HOOC−(CH
2)
16−COOH]の少なくとも1種と、ジアミン、例えば、1,4−ジアミノ−1,1−ジメチルブタン、1,4−ジアミノ−1−エチルブタン、1,4−ジアミノ−1,2−ジメチルブタン、1,4−ジアミノ−1,3−ジメチルブタン、1,4−ジアミノ−1,4−ジメチルブタン、1,4−ジアミノ−2,3−ジメチルブタン、1,2−ジアミノ−1−ブチルエタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノ−オクタン、1,6−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン、1,6−ジアミノ−2,4−ジメチルヘキサン、1,6−ジアミノ−3,3−ジメチルヘキサン、1,6−ジアミノ−2,2−ジメチルヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,6−ジアミノ−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ジアミノ−2,4,4−トリメチルヘキサン、1,7−ジアミノ−2,3−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−2,4−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−2,5−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−2,2−ジメチルヘプタン、1,10−ジアミノデカン、1.8−ジアミノ−1,3−ジメチルオクタン、1,8−ジアミノ−1,4−ジメチルオクタン、1.8−ジアミノ−2,4−ジメチルオクタン、1,8−ジアミノ−3,4−ジメチルオクタン、1,8−ジアミノ−4.5−ジメチルオクタン、1.8−ジアミノ−2,2−ジメチルオクタン、1.8−ジアミノ−3,3−ジメチルオクタン、1,8−ジアミノ−4,4−ジメチルオクタン、1,6−ジアミノ−2,4−ジエチルヘキサン、1,9−ジアミノ−5−メチルノナン、1,11−ジアミノウンデカン、および1,12−ジアミノドデカンの少なくとも1種との重縮合反応によって得ることができる。
【0015】
ポリアミドの例示的繰り返し単位(R
PA)は、特に、
(i)−NH−(CH
2)
5−CO−、すなわち、特にε−カプロラクタムの重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;
(ii)−NH−(CH
2)
8−CO−、すなわち、特に9−アミノノナン酸の重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;
(iii)−NH−(CH
2)
9−CO−、すなわち、特に10−アミノデカン酸の重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;
(iv)−NH−(CH
2)
10−CO−、すなわち、特に11−アミノウンデカン酸の重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;
(v)−NH−(CH
2)
11−CO−、すなわち、特にラウロラクタムの重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;
(vi)−NH−(CH
2)
6−NH−CO−(CH
2)
4−CO−、すなわち、特にヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;
(vii)−NH−(CH
2)
6−NH−CO−(CH
2)
8−CO−、すなわち、特にヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;
(viii)−NH−(CH
2)
6−NH−CO−(CH
2)
10−CO−、すなわち、特にヘキサメチレンジアミンとドデカン酸との重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;
(ix)−NH−(CH
2)
10−NH−CO−(CH
2)
10−CO−、すなわち、特にデカメチレンジアミンとドデカン酸との重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;
(x)−NH−(CH
2)
6−NH−CO−(CH
2)
7−CO−、すなわち、ヘキサメチレンジアミンとアゼライン酸(別にノナン二酸として知られる)との重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;
(xi)−NH−(CH
2)
12−NH−CO−(CH
2)
10−CO−、すなわち、特にドデカメチレンジアミンとドデカン酸との重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;
(xii)−NH−(CH
2)
10−NH−CO−(CH
2)
8−CO−、すなわち、特にデカメチレンジアミンとデカン酸との重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;
(k)−NH−(CH
2)
4−NH−CO−(CH
2)
4−CO−、すなわち、特に1,4−ブタンジアミンとアジピン酸との重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位;および
(kk)−NH−(CH
2)
4−NH−CO−(CH
2)
8−CO−、すなわち、特に1,4−ブタンジアミンとセバシン酸との重縮合反応によって得ることができる繰り返し単位
である。
【0016】
好ましくは、ポリアミドは、その特性に影響を与えることなく、末端鎖、欠陥および他の不規則性がポリアミド鎖中に存在し得ると理解されている、上に詳述されたとおりの繰り返し単位(R
PA)から本質的になる。
【0017】
ポリアミドの繰り返し単位(R
PA)は、すべて同じタイプのものであり得るか、または2つ以上のタイプのものであり得、すなわち、ポリアミド(PA)は、ホモポリアミドまたはコポリアミドであり得る。
【0018】
本明細書によって提供される組成物中で有利に使用され得るポリアミドの具体例は、特に:
− ポリアミド6;ポリアミド6,6ならびにそれらの混合物およびコポリアミド
である。
【0019】
本発明の組成物中で使用されるべき特に好ましいポリアミドは、ポリアミド6,6である。
【0020】
本発明において、少なくとも1種のポリアミドの量は、組成物の全重量に対して21.0重量%〜99.6重量%である。好ましくは、少なくとも1種のポリアミドの量は、組成物の全重量に対して30.0重量%〜99.1重量%、より好ましくは40.0重量%〜98.7重量%である。
【0021】
本発明のポリアミドa)は、カルボン酸基を含み;これらの基は、ポリアミドの末端基に存在していても、および/またはポリアミド鎖に沿って分布していてもよい。これらのカルボン酸基は、以下の反応:
に従って化合物c)のイソシアネート基と反応することができる。
【0022】
一般的に、本発明の発泡性組成物は、ガス、特にCO
2の所望の放出、したがって、発泡性組成物から得られる発泡体の密度に適合される、カルボン酸基およびイソシアネート基のそれぞれの量を含む。
【0023】
本発明において、用語「熱可塑性ゴム」は、特に、本発明のポリアミドa)に柔軟性を付与する化合物を意味することが意図される。
【0024】
本発明における熱可塑性ゴムの例は、限定されないが、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー、塩化ポリビニル(PVC)、非可塑化塩化ポリビニル(UPVC)、アクリルポリマーなどを含む。
【0025】
本発明の一実施形態において、熱可塑性ゴムは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)などを含む。
【0026】
本発明の用語「スチレン系熱可塑性エラストマー(STPE)」は、特に、スチレンベースの熱可塑性エラストマーを意味することが意図され、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)、スチレン−エチレン/エチレン/プロピレン−スチレン(SEEPS)、およびそれらの任意の組合せが挙げられてもよい。
【0027】
本発明において、少なくとも1種の熱可塑性ゴムの量は、組成物の全重量に対して0.3重量%〜9.0重量%である。好ましくは、少なくとも1種の熱可塑性ゴムの量は、組成物の全重量に対して0.7重量%〜6.0重量%、より好ましくは1.0重量%〜4.5重量%である。
【0028】
本発明において、少なくとも1個のイシシアネート基を有する化合物は、好ましくはポリイソシアネート、すなわち、少なくとも2個のイソシアネート基を含む化合物である。
【0029】
本発明のポリイソシアネートは、好ましくは以下の式(I):
Y−(−N=C=O)
n (I)
(式中、Yは、ヘテロ原子を任意選択で含む置換または非置換の芳香族、脂肪族、脂環式またはヘテロ環式多価基であり、nは、少なくとも2に等しい)
のポリイソシアネートである。好適であり得るポリイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート、1,3−および1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、α,α’−ジイソシアナトジプロピルエーテル、1,3−シクロブタンジイソシアネート、2,2−および2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン、2,5−および3,5−ビス(イソシアナトメチル)−8−メチル−1,4−メタノデカヒドロナフタレン、1,5−、2,5−、1,6−および2,6−ビス(イソシアナトメチル)−4,7−メタノヘキサヒドロインダン、1,5−、2,5−および2,6−ビス(イソシアナト)−4,7−メタノヘキサヒドロインダン、2,4’−および4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、2,4−および2,6−ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、パーヒドロ−2,4’−および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、α,α’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジクロロビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジフェニルビフェニル、2,4’−および4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート、N,N’−(4,4’−ジメチル−3,3’−ジイソシアナトジフェニル)ウレトジオン、m−キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,4’−トリイソシアナトジフェニルエーテル、4,4’,4’−トリイソシアナトトリフェニルメタン、ならびにそれらの類似物および混合物であってもよい。
【0030】
本発明において、ポリイソシアネート、例えば、ジイソシアネート、すなわち、2個のイソシアネート基を含むポリイソシアネート、またはトリイソシアネート、すなわち、3個のイソシアネート基を含むポリイソシアネートが、特に有利である。
【0031】
第1の実施形態によれば、ポリイソシアネートは、上に列挙されたとおりの単量体ポリイソシアネートであり得る。
【0032】
第2の実施形態によれば、ポリイソシアネートは、オリゴマー性ポリイソシアネートであり得る。挙げられてもよいこのようなオリゴマー性ポリイソシアネートの例には、トロネートHDT(登録商標)などのヘキサメチレンジイソシアネート三量体(HDI三量体またはHDT)、およびトロネートHDB(登録商標)などのビウレットが含まれる。オリゴマー性ポリイソシアネートの他の例は、脂肪族オリゴマー性イソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート二量体または三量体、ならびにまた高官能性および低粘度のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体、ならびにノルボルネンジイソシアネート二量体および三量体である。挙げられてもよいポリイソシアネート混合物の例には、HDTおよびイソホロンジイソシアネート三量体(IPDT)などのイソシアネート三量体が含まれる。トリレンジイソシアネート(TDI)またはメタンジフェニルイソシアネート(MDI)誘導体のポリイソシアネートも、使用されてもよい。
【0033】
本発明において、少なくとも1個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物の量は、組成物の全重量に対して0.1重量%〜3.0重量%である。好ましくは、少なくとも1個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物の量は、組成物の全重量に対して0.2重量%〜2.0重量%、より好ましくは0.3重量%〜1.5重量%である。
【0034】
本発明において、少なくとも1種の熱可塑性ゴムと少なくとも1個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物との比は、2:1〜4:1、好ましくはほぼ約3:1である。
【0035】
本発明による組成物は、d)少なくとも1種の充填剤を任意選択で含んでもよい。
【0036】
本発明において、用語「充填剤」は、特に、ポリマー組成物に、その特性を改善するおよび/またはコストを低減するために添加される材料を意味することが意図される。このような材料は、固体、液体または気体の形態であり得る。これらの材料を適当に選択することによって、経済性だけでなく、加工および機械的挙動などの他の性質も改善され得る。これらの充填剤は、それらの固有の特性を保持するが、非常に有意な差が、分子量、配合技術、および処方中の他の添加剤の存在に依存してしばしば見られる。したがって、基本的な性質要件が一旦確立されると、コストと性能との間の均衡のための充填剤の最適種類および負荷レベルが決定されなければならない。
【0037】
本発明において、充填剤は、好ましくはガラス繊維、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、タルク、カオリン、マイカ、カーボンブラック、黒鉛、木粉、ならびに他の天然産物の粉末および繊維、ならびに合成繊維からなる群から選択される。ガラス繊維が、本発明の組成物中で最も有利に使用される。
【0038】
本発明において、少なくとも1種の充填剤の量は、組成物の全重量に対して0〜65.0重量%、好ましくは0重量%〜50.0重量%、より好ましくは0重量%〜45.0重量%であってもよい。充填剤が組成物中に存在する場合、その量は、組成物の全重量に対して一般的には5.0〜65.0重量%、好ましくは10.0〜50.0重量%、より好ましくは15.0〜45.0重量%に含まれる。
【0039】
さらに、本発明による組成物は、d)少なくとも1種の添加剤を任意選択で含んでもよい。有利に使用されてもよい添加剤の例には、酸化防止剤、細孔形成剤、界面活性剤、造核剤、可塑剤、艶消し剤、顔料、着色剤、熱安定剤、光安定剤、生物活性剤、防汚剤、帯電防止剤、難燃剤、およびカルボン酸官能基とイソシアネート官能基との反応による脱炭酸化を促進する触媒が含まれる。触媒の例は、限定されないが、第三級アミン、例えば、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、トリエチルアミン(TEA)などを含む。
【0040】
本発明において、少なくとも1種の添加剤の量は、組成物の全重量に対して0〜2.0重量%、好ましくは0〜1.5重量%、より好ましくは0〜1.0重量%であってもよい。本発明の組成物中に含有される場合、添加剤の重量による濃度の範囲は、組成物の全重量に対して0.1〜2.0重量%、好ましくは0.5〜1.0重量%であってもよい。
【0041】
本発明の別の態様は、本発明による組成物を生成する方法を提供することである。
【0042】
この方法は、i)b)少なくとも1種の熱可塑性ゴムとc)少なくとも1個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物との混合物を含むマスターバッチを調製する工程と;ii)a)少なくとも1個のカルボン酸基を含む少なくとも1種のポリアミド、ならびに任意選択でd)少なくとも1種の充填剤およびe)少なくとも1種の添加剤をポリアミドの融点以上の温度で加熱して、溶融ポリアミドマトリックスを得る工程と;iii)マスターバッチの少なくとも一部を溶融ポリアミドマトリックスに添加する工程とを含む。このように得られた生成物は、さらに安定化させることができる。安定化は、物理的に(例えば、ポリアミドの融点未満の温度に冷却することによって)、および/または化学的に(例えば、ポリアミドを架橋することによって)行うことができる。冷却は、一般的には温度の急速な低下をもたらすクエンチングを行うことによって得られる。ポリアミドの架橋は、当業者に公知の架橋剤の添加によって行うことができる。一般的に、これらは、ポリアミドの酸および/またはアミン官能基と反応する少なくとも2個の官能基を含む化合物である。架橋剤の例として、カルボニルビスラクタム、例えば、カルボニルビスカプロラクタム、ビスオキサジン、ビスオキサゾリンなどが挙げられてもよい。安定化は、有利には物理的に、冷却によって行われる。
【0043】
この点で、溶融ポリアミドに少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物を導入することは困難であり、その理由は、溶融ポリアミドマトリックス中に導入される場合、前記化合物はしばしば劣化し、したがって、化合物中のイソシアネート基の一部の部分だけが溶融ポリアミド中に導入され、これは予想されるよりもCO
2のより少ない発生をもたらすからである。
【0044】
前記欠点を克服するために、b)少なくとも1種の熱可塑性ゴムとc)少なくとも1個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物との混合物を含むマスターバッチは、したがって、本発明の方法の加熱工程ii)によって溶融状態にある、a)少なくとも1個のカルボン酸基を含む少なくとも1種のポリアミドに添加される前に調製される。
【0045】
本発明の方法は、熱可塑性ゴムと少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物との前調製混合物を溶融ポリアミドに添加する工程を含み、このようにして、化合物c)イソシアネート基の相対的に大きな部分、好ましくは完全な量をポリアミドマトリックス中に導入することを可能にする。
【0046】
加熱工程ii)の間に達成される温度は、組成物のポリアミドの融点以上である。有利には、この温度は、T(℃)+10以上、好ましくはT(℃)+15以上であり、T(℃)は、組成物のポリアミドの融点である。
【0047】
上に詳述されたとおりの充填剤d)および上に列挙されたとおりの添加剤e)は、加熱工程ii)の間、またはその後に行われる任意の工程で導入することができる。
【0048】
本発明の発泡性ポリアミド組成物の調製およびそれからのポリアミド発泡体の調製は、別個または同時のいずれかで行うことができる。それらが同時に行われる場合、両方のプロセスは、同一装置、例えば、押出し装置で行うことができる。装置からの押出し物は、その後に、それがダイを通って引かれるときに冷却および固化され、これはポリアミド発泡体の所望の形状をもたらす。
【0049】
本発明による組成物は、発泡性である。したがって、本発明はまた、本発明の組成物から得られる発泡体に関する。
【0050】
本発明の組成物から所望の形状の発泡体を得るために、成形装置、射出成形装置、熱形成または圧縮装置(例えば、シートモールディングコンパウンド(SMC)タイプの)、射出/ブロー成形装置、押出し装置、押出し/ブロー成形装置などが、要件に応じて用いられてもよい。
【0051】
本発明のさらなる態様は、航空または自動車、包装または遮音用途、好ましくは自動車用途、例えば、バンパー、座席、ダッシュボード、燃料システム、車体(パネル、ボンネット下コンポーネント、内装トリム、電気コンポーネント、外装トリム、照明、室内装飾品、液体貯蔵器などを含む)における軽量材料としての発泡体の使用、および本発明による発泡体を備える自動車に関する。自動車の重量は、軽量材料として発泡体を自動車に組み込むことにより低減されてもよく、したがって、これは、エネルギー消費の低減およびまた環境への二酸化炭素排出の潜在的低減をもたらす。
【0052】
本発明の他の詳細または利点は、以下に示される実施例によってより明確に明らかになる。本発明は、以下の実施例によって明らかにされ、これらは、本発明を実証するが、限定しないことが意図される。
【実施例】
【0053】
使用される組成物は、以下のとおりである:
実施例1および実施例2(比較例のための):ポリアミド6,6、HDB(ヘキサメチレンジイソシアネートビウレット)、ガラス繊維および酸化防止剤の混合物。
実施例3および実施例4:ポリアミド6,6、HDB、SEBS(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン)、ガラス繊維および酸化防止剤の混合物。
【0054】
実施例で使用される化学試薬は、以下のとおりに指定される:
− HDB:VencoreXからのトロネートHDB(登録商標)、
− SEBS:Third Sector Research Centre(TSRC)からのTaipol(登録商標)6150、
− ガラス繊維:Nippon Electric Glass(NEG)からの289H、
− ポリアミド:SolvayからのTechnyl(登録商標)27B10、
− 酸化防止剤:BASFからのIrganox(登録商標)B1171。
【0055】
調製した組成物を以下の表1に詳述する。比率は、組成物中の重量パーセントで示す。
【0056】
【0057】
比較例1および比較例2(以後、実施例1比較および実施例2比較)
ポリアミド6,6の加熱をその融点以上で行って、溶融ポリアミド6,6を製造した。前記溶融ポリアミド6,6、HDB、ガラス繊維、および酸化防止剤を、スクリュー長さ/直径比40のJSW(Japan Steel Works)CorporationからのTES−30二軸共押出し型押出機で一緒に混合することによって、実施例1比較および実施例2比較を得、一方でガラス繊維は、サイドフィーダによって導入した。押出し温度は、ノズルからホッパーまで250−250−250−250−260−260−230−210−150℃であり、スループットおよびRPMは、それぞれ、30kg/時間および300であった。
【0058】
次いで、押出し物を水中において室温で冷却した。発泡比は、実施例1比較の全体積および実施例2比較の全体積に対して、それぞれ、2.8%および4.2%と決定した。
【0059】
さらに、曲げ強さおよび曲げモジュラスを、ASTM D790に従ってUniversal Test Machine(UTM)を使用して測定した。加えて、ノッチ付きアイゾットをASTM D256に従って測定した。
【0060】
実施例3および実施例4(以後、実施例3および実施例4)
実施例3および実施例4のためのマスターバッチを、最初にSEBSおよびHDBを一緒に混合することによって調製した。ポリアミド6,6、ガラス繊維および酸化防止剤を、ポリアミド6,6の融点以上の温度で一緒に加熱することによって、溶融ポリアミド6,6マトリックスを同様に製造した。その後に、前記マスターバッチを溶融ポリアミド6,6マトリックス中にサイドフィーダを介して導入して、それぞれ、実施例3および実施例4を得た。
【0061】
実施例3および実施例4を同じ押出機に入れた。押出し条件は、実施例1比較および実施例2比較についてのものと同じであった。
【0062】
押出し物を、水中において室温で同様に冷却した。発泡比は、実施例3の全体積および実施例4の全体積に対して、それぞれ11.6%および14.8%と決定した。
【0063】
曲げ強さ、曲げモジュラス、およびノッチ付きアイゾットも測定した。測定は、上に詳述したとおりに、同じ条件および同じ機器を使用して行った。
【0064】
それぞれ、実施例1比較および実施例2比較ならびに実施例3および実施例4に相当する、実施例1から実施例4までで得た発泡体の発泡比および上記機械的パラメータを、以下の表2に要約する。
【0065】
【0066】
表2中の実験データから確認されるように、実施例3および実施例4の発泡比は、実施例1比較および実施例2比較のものと比較して著しく増加した。また、曲げ強さ、曲げモジュラスおよびノッチ付きアイゾットを含む、実施例3および実施例4の機械的性質も依然として、例えば、エンジンカバー、ロケットボックスなどの自動車用途において軽量材料として使用される満足なレベルにあった。