特許第6523500号(P6523500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6523500ステントを送達及び解放するための捕捉管機構
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523500
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】ステントを送達及び解放するための捕捉管機構
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/962 20130101AFI20190527BHJP
【FI】
   A61F2/962
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-12368(P2018-12368)
(22)【出願日】2018年1月29日
(62)【分割の表示】特願2014-48582(P2014-48582)の分割
【原出願日】2014年3月12日
(65)【公開番号】特開2018-61890(P2018-61890A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2018年1月29日
(31)【優先権主張番号】13/801,728
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・スラザス
(72)【発明者】
【氏名】ファン・エイ・ロレンツォ
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−541786(JP,A)
【文献】 特表2013−500792(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009056448(DE,A1)
【文献】 特開平08−173548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/962
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルを通じて患者の脈管構造内の治療部位に自己拡張型ステントを送達して解放するための装置であって、
コアワイアであって、近位部分、遠位部分、前記コアワイアの前記近位部分と前記遠位部分との間に位置する中間部分、及び前記近位部分と前記中間部分との間に配置された第1の係止部材を有する、コアワイアと、
近位端、近位部分、及び内腔を有する自己拡張型ステントと、
前記自己拡張型ステントを解放可能に捕捉するための管状捕捉スリーブであって、管腔、近位部分、遠位端、及び前記管状捕捉スリーブの前記近位部分と前記遠位端との間に位置する遠位部分を有する、管状捕捉スリーブと、を備え、
前記管状捕捉スリーブが前記自己拡張型ステントを捕捉しているときに、前記管状捕捉スリーブは、
記自己拡張型ステントの前記近位部分が、前記コアワイアの前記第1の係止部材の遠位側の前記コアワイアの前記中間部分の周りに配置された状態で前記コアワイアの前記遠位部分が前記自己拡張型ステントの前記内腔の少なくとも一部を通じて延び、
前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記コアワイアの前記第1の係止部材及び前記自己拡張型ステントの前記近位部分の周りに配置され、前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記自己拡張型ステントの前記近位部分を前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記中間部分上に取り外し可能に保持するように構成され、
前記管状捕捉スリーブが、前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が前記コアワイアの前記第1の係止部材の近位方向に引かれる際に、前記自己拡張型ステントの前記近位端を前記管状捕捉スリーブ及び前記コアワイアの前記中間部分から解放するように構成されており、
前記管状捕捉スリーブが、前記管状捕捉スリーブの前記近位部分で前記コアワイアに直接接触しており、前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分および前記遠位端が、自由端である、装置。
【請求項2】
前記第1の係止部材が、前記コアワイア上のこぶを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記管状捕捉スリーブが、収縮可能なスリーブを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記管状捕捉スリーブが、弾性スリーブを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記中間部分上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分を締め付けるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記中間部分上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分上に圧縮されるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記中間部分上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分を捕捉するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記管状捕捉スリーブの前記近位部分が前記コアワイアの前記近位部分に機械的に連結され、前記管状捕捉スリーブが、前記コアワイアが遠位方向に押される間に近位方向に引かれるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記管状捕捉スリーブの前記近位部分が、細長い連結部材によって前記コアワイアの前記近位部分に機械的に連結される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記コアワイアの前記中間部分上に配置された第2の係止部材を更に備え、前記管状捕捉スリーブが、前記自己拡張型ステントの前記近位部分を前記管状捕捉スリーブの前記管腔内において前記第2の係止部材上に取り外し可能に保持し、更に、前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が前記コアワイアの前記第1及び第2の係止部材の近位方向に引かれる際に前記自己拡張型ステントの前記近位端を前記管状捕捉スリーブ及び前記第2の係止部材から解放するように、構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第2の係止部材が、前記コアワイア上のこぶを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記第2の係止部材上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分を締め付けるように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記第2の係止部材上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分上に圧縮されるように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記第2の係止部材上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分を捕捉するように構成されている、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、脈管構造内の欠損の介入的治療処置又は欠損を治療するための血管手術用の装置に関し、より詳細には、動脈瘤の治療を行うためなどに、患者の脈管構造内の治療部位にカテーテルを通じて自己拡張型ステントを送達するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己拡張型ステントを患者の脈管構造内に送達する基本的な手法では、通常、患者の脈管構造内の所望の位置においてステントがスリーブ又はマイクロカテーテルの遠位端から露出するまでスリーブ又はマイクロカテーテルを通じてステントを遠位方向に押すことにより、スリーブ又はマイクロカテーテルを通じてステントを前進させる。この時点で、自己拡張型ステントは拘束されておらず、理想的には自己拡張型ステントは、患者の脈管構造内の所望の位置において展開する。しかしながら、この基本的手法は、ステントの自己拡張性のために、ステントがいったん展開されるとステントの位置を前方にも後方にも操作できないことから、通常は「プッシュ・オンリー」システムであり、自己拡張型ステントがいったん展開されてしまうと、ステントの後退は通常は不可能である。
【0003】
送達システムの1つの方式では、自己拡張型ステントは、一方がステントの近位側、他方が遠位側に位置する2つの押圧面の間で径方向に圧縮されることにより、自己拡張型ステントの全体がスリーブ又はマイクロカテーテル内部に留まっているかぎりは、自己拡張型ステントを前進及び後退させることが可能となっている。しかしながら、ステントの遠位端の任意の部分がマイクロカテーテルの外部に露出している場合、自己拡張型ステントを後退させることはできなくなり、その時点でこの送達システムは「プッシュ・オンリー」システムと本質的に同じ動作を行うことになる。近位部分を捕捉するために自己拡張型ステント上の物理的構造を利用する、別の方式の送達システムが知られている。このような近位捕捉式の送達システムは、ステントの遠位部分がスリーブ又はマイクロカテーテルから出た後であっても前進及び後退を可能とするものである。しかしながら、この方式の送達システムは、ステントの設計に特定の構造を組み込む必要があり、必ずしも現実的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自己拡張型ステントを送達するためのシステムは、ステントの前進及び後退の制御を可能とするものであることが望ましい。これは、送達システム上にステントの全体若しくは一部の捕捉、又はステント上の特定のインターフェース構造の捕捉を可能とする構成を設けることなどにより、送達システムが、何らかの方式のステントとの捕捉インターフェースを有することを必要とする。このような捕捉インターフェースは、ステントの近位端に設けることが望ましく、これにより、送達システムからステント全体が解放されるのに先立って、ステントの遠位部分が露出し、部分的又は完全に拡張した直径に展開することを可能とすることで、ステント全体が送達システムから解放される前に自己拡張型ステントを後退させ、再配置することが可能となる。このような捕捉インターフェースは、自己拡張型ステントを送達するための「積極的捕捉型」送達システムとして設けることが望ましく、このような送達システムでは、自己拡張型ステントが送達スリーブ又はマイクロカテーテルの内部に位置しているか、又はその全体が外部に位置しているかに関わらず、自己拡張型ステントが送達システムによって近位方向において保持されることにより、ステントを解放することなくステント全体をマイクロカテーテルの遠位端から前進させることができ、その後、送達スリーブ又はマイクロカテーテル内に再び完全に後退させることができる。このような「積極的捕捉型」送達システムによれば、最大の汎用性を有する送達システムを提供するためには、自己拡張型ステントを解放させるために別の展開動作が必要とされることも望ましい。本発明はこれら及び他の要求に応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡単かつ一般的な言い方をすると、本発明は、ステントの近位部分が管状捕捉スリーブの遠位部分によってコアワイア上に取り外し可能に保持された、自己拡張型ステントを送達して解放するための捕捉管機構を提供するものである。この捕捉管機構は、最終的な解放に先立ってステントの前進及び後退を可能とし、捕捉管機構によって捕捉されたステントのわずかな部分を除くステントの大部分を送達スリーブ又はマイクロカテーテルの外側で拡張させる一方でなお、ステントの後退及び再配置を可能とするものであり、ステントの設計にいっさいの特定の捕捉構造を含める必要がない。
【0006】
したがって、第1の実施形態において、本発明は、カテーテルを通じて患者の脈管構造内の治療部位に自己拡張型ステントを送達して解放するための装置であって、自己拡張型ステントの近位部分上に配置された管状捕捉スリーブと、自己拡張型ステントの内腔の少なくとも一部を通じて延びる遠位部分を有するコアワイアとを有し、自己拡張型ステントの近位部分がコアワイアの中間部分上に配置されている、装置を提供する。本発明の好ましい一態様では、管状捕捉スリーブの遠位部分は、自己拡張型ステントの近位部分を管状捕捉スリーブの管腔内でかつコアワイアの中間部分上に取り外し可能に保持するように構成される。本発明の別の好ましい態様では、管状捕捉スリーブは、好ましくは自己拡張型ステントの近位端と整列した位置において管状捕捉スリーブの遠位部分を通じて延びる1つ又は2つ以上の開口部を有する。1つ又は2つ以上の細長い部材が、管状捕捉スリーブの1つ又は2つ以上の開口部を通り、更に管状捕捉スリーブの管腔を通り、更に管状捕捉スリーブの遠位端から外に延びており、1つ又は2つ以上の細長い部材の第1及び第2の端部が管状捕捉スリーブから近位端方向に延びることにより、1つ又は2つ以上の細長い部材は、1つ又は2つ以上の細長い部材の第1及び第2の端部が近位方向に引かれる際に管状捕捉スリーブを分離することで、自己拡張型ステントの近位端を、管状捕捉スリーブ及びコアワイアの中間部分から解放するように構成されている。
【0007】
本発明の別の好ましい態様では、コアワイアの中間部分は、例えば1つ又は2つ以上のペグ、複数の歯、又は非平滑加工された高摩擦表面などの保持構造を有する外表面を必要に応じて有してもよい。本発明の別の好ましい態様では、管状捕捉スリーブの遠位部分は、管状捕捉スリーブの管腔内でかつコアワイアの中間部分上で、自己拡張型ステントの近位部分を締め付けるか、近位部分の上に圧縮されるか、又は他の何らかの方法により近位部分を捕捉するように構成される。本発明の別の好ましい態様では、管状捕捉スリーブは、例えば収縮可能なスリーブ又は弾性スリーブを含む。
【0008】
本発明の別の好ましい態様では、1つ又は2つ以上の細長い部材は、例えば管状捕捉スリーブの周囲に径方向に配置された1本又は2本以上のポリマー繊維又はワイアにより形成することができる。本発明の別の好ましい態様では、管状捕捉スリーブは、1つ又は2つ以上の開口部と管状捕捉スリーブの遠位端との間の経路に沿って1つ又は2つ以上のミシン目、又は1つ又は2つ以上の開口部と管状捕捉スリーブの遠位端との間の経路に沿って1つ又は2つ以上の薄肉部を有する。
【0009】
第2の実施形態では、本発明は、カテーテルを通じて患者の脈管構造内の治療部位に自己拡張型ステントを送達して解放するための装置であって、コアワイアの近位部分と中間部分との間に配置された、コアワイアのこぶ又は拡大部分などの係止部材を有するコアワイアを有し、コアワイアの遠位部分が自己拡張型ステントの内腔の少なくとも一部を通じて延び、自己拡張型ステントの近位部分がコアワイアの係止部材の遠位方向でコアワイアの中間部分上に配置されている、装置を提供する。管状捕捉スリーブの遠位部分は、コアワイアの係止部材及び自己拡張型ステントの近位部分上に配置され、管状捕捉スリーブの遠位部分は、自己拡張型ステントの近位部分を管状捕捉スリーブの管腔内でかつコアワイアの中間部分上に取り外し可能に保持するように構成される。本発明の好ましい一態様では、管状捕捉スリーブは、管状捕捉スリーブの遠位部分がコアワイアの係止部材の近位方向に引かれる際に、自己拡張型ステントの近位端を管状捕捉スリーブ及びコアワイアの中間部分から解放するように構成される。
【0010】
本発明の別の好ましい一態様では、コアワイアの中間部分は、例えば高摩擦表面のような保持構造を有する外表面を必要に応じて有してもよい。本発明の別の好ましい態様では、管状捕捉スリーブは、例えば収縮可能なスリーブ又は弾性スリーブを含む。本発明の別の好ましい態様では、管状捕捉スリーブの遠位部分は、管状捕捉スリーブの管腔内でかつコアワイアの中間部分上で、自己拡張型ステントの近位部分を締め付けるか、近位部分の上に圧縮されるか、又は他の何らかの方法により近位部分を捕捉するように構成される。本発明の別の好ましい態様では、管状捕捉スリーブの近位部分は、細長い連結部材などによってコアワイアの近位部分に機械的に連結され、管状捕捉スリーブは、コアワイアが遠位方向に押される間に細長い連結部材を介して近位方向に引かれるように構成される。
【0011】
別の変形例では、コアワイアの中間部分上に必要に応じて第2の係止部材を設けることが可能であり、管状捕捉スリーブは、自己拡張型ステントの近位部分を管状捕捉スリーブの管腔内において第2の係止部材上に取り外し可能に保持するように構成されており、更に、管状捕捉スリーブは、コアワイアが遠位方向に押される間に管状捕捉スリーブの遠位部分がコアワイアの第1及び第2の係止部材の近位方向に引かれる際に自己拡張型ステントの近位端を管状捕捉スリーブ及び第2の係止部材から解放するように構成されている。本発明の別の好ましい態様では、第2の係止部材は、コアワイアのこぶ又は拡大部分として形成することができる。本発明の別の好ましい態様では、管状捕捉スリーブの遠位部分は、管状捕捉スリーブの管腔内でかつコアワイアの第2の係止部材上で、自己拡張型ステントの近位部分を締め付けるか、近位部分の上に圧縮されるか、又は他の何らかの方法により近位部分を捕捉するように構成される。
【0012】
本発明のこれらの特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明を、本発明の動作を例として説明する添付の図面と併せ読むことによってより一層明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明に基づく、管状捕捉スリーブによって捕捉された自己拡張型ステントを示す、自己拡張型ステントを送達して解放するための捕捉管機構の第1の実施形態の概略断面図である。
図1B図1Aに示される実施形態の一変形例の概略断面図である。
図1C図1Aに示される実施形態の別の変形例の概略断面図である。
図2A】管状捕捉スリーブによって解放された自己拡張型ステントを示す、図1Aと同様の概略断面図である。
図2B】管状捕捉スリーブによって解放された自己拡張型ステントを示す、図1Bと同様の概略断面図である。
図2C】管状捕捉スリーブによって解放された自己拡張型ステントを示す、図1Cと同様の概略断面図である。
図3A】本発明に基づく、管状捕捉スリーブによって捕捉された自己拡張型ステントを示す、自己拡張型ステントを送達して解放するための捕捉管機構の第2の実施形態の概略断面図である。
図3B】管状捕捉スリーブによって解放された自己拡張型ステントを示す、図3Aと同様の概略断面図である。
図3C】コアワイアの中間部分上に第2の係止部材を含む一変形例を示す、図3Aと同様の概略断面図である。
図3D】管状捕捉スリーブによって解放された自己拡張型ステントを示す、図3Cと同様の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
例として与えられる、限定的なものではない図面を参照すると、第1の実施形態において、本発明は、自己拡張型ステント12を、カテーテル、スリーブ、又はマイクロカテーテル14を通じて患者の脈管構造内の治療部位(図に示されていない)に送達して解放するための装置又は送達システム10を提供する。図1A〜2Cに示されるように、送達システムは、コアワイア16、管状捕捉スリーブ18、及び、下記に更に説明するように、管状捕捉スリーブを分離させて自己拡張型ステントを解放するように構成された1つ又は2つ以上の細長い部材20を備えている。コアワイアは、近位部分22、遠位部分24、及びコアワイアの近位部分と遠位部分との間に位置する中間部分26を有している。本発明の好ましい一態様では、コアワイアの中間部分は、例えば非平滑加工された金属又は低デュロメーター硬さのポリマー表面のような、1つ又は2つ以上のペグ、歯、又は高摩擦表面のような保持構造を有する外表面を場合により有してもよい。
【0015】
自己拡張型ステントは、近位端28、近位部分30、及び内腔32を有し、コアワイアの遠位部分が自己拡張型ステントの内腔の少なくとも一部を通じて延びており、自己拡張型ステントの近位部分がコアワイアの中間部分上に配置されている。
【0016】
管状捕捉スリーブは、管腔34、近位部分36、遠位部分38、及び遠位端40を有しており、捕捉スリーブの遠位部分が、自己拡張型ステントの近位部分上に配置されていることにより、捕捉スリーブの遠位部分は、捕捉スリーブの遠位部分を自己拡張型ステントの近位部分上でかつコアワイアの中間部分上で締め付ける若しくは圧縮するか、又は他の何らかの方法で自己拡張型ステントの近位部分の少なくとも一部を捕捉することなどによって、自己拡張型ステントの近位部分を管状捕捉スリーブの管腔内でかつコアワイアの中間部分上に取り外し可能に保持するように構成されている。管状捕捉スリーブは、例えば収縮可能な又は弾性スリーブであってよく、好ましくは図1Aに示されるように、自己拡張型ステントの近位端とほぼ整列した位置において管状捕捉スリーブの遠位部分を通じて径方向に延びる1つ又は2つ以上の開口部42を有する。
【0017】
図1Bを参照すると、1つの変形例では、管状捕捉スリーブは、1つ又は2つ以上の開口部と管状捕捉スリーブの遠位端との間の経路に沿って1つ又は2つ以上の薄肉直径部分すなわち薄肉部44を有してもよく、管状捕捉スリーブの遠位部分を通じて径方向に部分的に延びる内壁45が残されている。
【0018】
1つ又は2つ以上の細長い部材は、第1の端部46、第2の端部48、及び、細長い部材の第1の端部と第2の端部との間の中間部分すなわちループ50を有し、1つ又は2つ以上の細長い部材の中間部分は、好ましくは、管状捕捉スリーブの対応する1つ又は2つ以上の開口部うちの最も近位の1つを通り、管状捕捉スリーブの管腔を通り、管状捕捉スリーブの遠位端から延出する。1つ又は2つ以上の細長い部材の第1及び第2の端部は、管状捕捉スリーブから近位方向に延びており、1つ又は2つ以上の細長い部材は、1つ又は2つ以上の細長い部材の第1及び第2の端部が近位方向に引かれる際に、51で示される位置で管状捕捉スリーブを分離することで、自己拡張型ステントの近位端を、管状捕捉スリーブ及びコアワイアの中間部分から解放するように構成されている。本発明の好ましい一態様では、1つ又は2つ以上の細長い部材は、例えば、1本又は2本以上のリップコード式のポリマー繊維又は金属ワイアであってよく、別の変形例では、図1Cに示されるように、管状捕捉スリーブの周囲に径方向に配置された複数のリップコード式のポリマー繊維又は金属ワイアとして与えることができる。
【0019】
図3A及び3Bを参照すると、第2の実施形態において、本発明は、自己拡張型ステント62を、カテーテル、スリーブ、又はマイクロカテーテル64を通じて患者の脈管構造内の治療部位(図に示されていない)に送達して解放するための装置又は送達システム60を提供する。送達システムは、コアワイア66及び管状捕捉スリーブ68を備えており、コアワイアが遠位方向に押される間に管状捕捉スリーブを近位方向に引くことによって、下記に更に説明するように、自己拡張型ステントを解放することができる。コアワイアは、近位部分72、遠位部分74、コアワイアの近位部分と遠位部分との間に位置する中間部分76、及び近位部分と中間部分との間に配置された係止部材77を有している。係止部材は、コアワイア上に均一かつ対称的に形成されるか、又はコアワイア上に不均一かつ非対称的に形成され、隣接する近位部分及び中間部分よりも大きな直径又は厚さを有するコアワイアのこぶ又は拡大部分として形成することができる。本発明の好ましい一態様では、コアワイアの中間部分は、例えば非平滑加工された金属又は低デュロメーター硬さのポリマー表面のような、1つ又は2つ以上のペグ、歯、又は高摩擦表面のような保持構造を有する外表面を場合により有してもよい。
【0020】
自己拡張型ステントは、近位端78、近位部分80、及び内腔82を有し、内腔82の少なくとも一部を通じてコアワイアの遠位部分が延びており、自己拡張型ステントの近位部分が、コアワイアの係止部材の遠位方向でコアワイアの中間部分上に配置されている。
【0021】
管状捕捉スリーブは、管腔84、近位部分86、遠位部分88及び遠位端90を有しており、捕捉スリーブの遠位部分は、コアワイアの係止部材及び自己拡張型ステントの近位部分上に配置されている。本発明の好ましい一態様では、捕捉スリーブの遠位部分は、捕捉スリーブの遠位部分を自己拡張型ステントの近位部分上でかつコアワイアの中間部分上で締め付ける若しくは圧縮するか、又は他の何らかの方法で自己拡張型ステントの近位部分の少なくとも一部を捕捉することなどによって、自己拡張型ステントの近位部分を管状捕捉スリーブの管腔内でかつコアワイアの中間部分上に取り外し可能に保持するように構成されており、管状捕捉スリーブは、管状捕捉スリーブの遠位部分がコアワイアの係止部材の近位方向に引かれる際に自己拡張型ステントの近位端を管状捕捉スリーブ及びコアワイアの中間部分から解放するように構成されている。管状捕捉スリーブは、例えば収縮可能又は弾性スリーブであってよい。本発明の別の好ましい態様では、管状捕捉スリーブの近位部分は、コアワイアの近位部分に対して動かせるように、例えば細長い連結部材92又は管状捕捉スリーブの近位部分の更なる延長部などによって機械的に連結することにより、前記コアワイアが遠位方向に押される間に管状捕捉スリーブを近位方向に引くことで自己拡張型ステントを解放することができる。
【0022】
図3C及び3Dを参照すると、別の変形例では、必要に応じて第2の係止部材94をコアワイアの中間部分上に設けることができる。管状捕捉スリーブは、好ましくは、自己拡張型ステントの近位部分を管状捕捉スリーブの管腔内において第2の係止部材上に取り外し可能に保持し、更にコアワイアが遠位方向に押される間に管状捕捉スリーブの遠位部分をコアワイアの第1及び第2の係止部材の近位方向に引く際に自己拡張型ステントの近位端を管状捕捉スリーブ及び第2の係止部材から解放するように構成されている。この第2の係止部材は、自己拡張型ステントを捕捉スリーブ内に更に保持するためのストッパー又はコルクのような機能を有する。分離させることが望ましい場合、コアワイアを管状捕捉スリーブに対して遠位方向に動かすことによっても、自己拡張型ステントが第2の係止部材から解放され、第1の係止部材77が自己拡張型ステントを管状捕捉スリーブの外に押し出す。本発明の別の好ましい態様では、第2の係止部材は、コアワイアのこぶ又は拡大部分として形成することができる。本発明の別の好ましい態様では、管状捕捉スリーブの遠位部分は、管状捕捉スリーブの管腔内でかつコアワイアの第2の係止部材上で、自己拡張型ステントの近位部分を締め付けるか、近位部分上に圧縮されるか、又は他の何らかの方法により近位部分を捕捉するように構成される。
【0023】
以上、本発明の具体的な形態を図示及び説明したが、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく様々な改変を行うことが可能である点は上記の内容より明らかであろう。したがって、添付の「特許請求の範囲」による以外は、本発明を限定することは意図するところではない。
【0024】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルを通じて患者の脈管構造内の治療部位に自己拡張型ステントを送達して解放するための装置であって、
コアワイアであって、近位部分、遠位部分、及び前記コアワイアの前記近位部分と前記遠位部分との間に位置する中間部分を有する、コアワイアと、
近位端、近位部分、及び内腔を有する自己拡張型ステントであって、前記コアワイアの前記遠位部分が前記自己拡張型ステントの前記内腔の少なくとも一部を通じて延び、前記自己拡張型ステントの前記近位部分が前記コアワイアの前記中間部分上に配置された、自己拡張型ステントと、
管腔、近位部分、遠位部分及び遠位端を有する管状捕捉スリーブであって、前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が前記自己拡張型ステントの前記近位部分上に配置され、前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記自己拡張型ステントの前記近位部分を前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記中間部分上に取り外し可能に保持するように構成され、前記管状捕捉スリーブが、前記自己拡張型ステントの前記近位端と整列した位置において前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分を通じて延びる少なくとも1つの開口部を有する、管状捕捉スリーブと、
少なくとも1つの細長い部材であって、第1及び第2の端部、並びに前記細長い部材の前記第1の端部と前記第2の端部との間の中間部分を有し、前記少なくとも1つの細長い部材の前記中間部分が、前記管状捕捉スリーブの前記少なくとも1つの開口部を通り、更に前記管状捕捉スリーブの前記管腔を通り、更に前記管状捕捉スリーブの前記遠位端から外に延び、前記少なくとも1つの細長い部材の前記第1及び第2の端部が前記管状捕捉スリーブから近位方向に延び、前記少なくとも1つの細長い部材が、前記少なくとも1つの細長い部材の前記第1及び第2の端部が近位方向に引かれる際に前記管状捕捉スリーブを分離することで、前記自己拡張型ステントの前記近位端を、前記管状捕捉スリーブ及び前記コアワイアの前記中間部分から解放するように構成されている、少なくとも1つの細長い部材と、を備える、装置。
(2) 前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記中間部分上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分を締め付けるように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記中間部分上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分上に圧縮されるように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記中間部分上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分を捕捉するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記管状捕捉スリーブが、収縮可能なスリーブを含む、実施態様1に記載の装置。
【0025】
(6) 前記管状捕捉スリーブが、弾性スリーブを含む、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記少なくとも1つの細長い部材が、前記管状捕捉スリーブの周囲に径方向に配置された複数のポリマー繊維を含む、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記少なくとも1つの細長い部材が、前記管状捕捉スリーブの周囲に径方向に配置された複数のワイアを含む、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記管状捕捉スリーブが、前記少なくとも1つの開口部と前記管状捕捉スリーブの前記遠位端との間の経路に沿って少なくとも1つのミシン目を有する、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記管状捕捉スリーブが、前記少なくとも1つの開口部と前記管状捕捉スリーブの前記遠位端との間の経路に沿って少なくとも1つの薄肉部(skive)を有する、実施態様1に記載の装置。
【0026】
(11) カテーテルを通じて患者の脈管構造内の治療部位に自己拡張型ステントを送達して解放するための装置であって、
コアワイアであって、近位部分、遠位部分、前記コアワイアの前記近位部分と前記遠位部分との間に位置する中間部分、及び前記近位部分と前記中間部分との間に配置された第1の係止部材を有する、コアワイアと、
近位端、近位部分、及び内腔を有する自己拡張型ステントであって、前記コアワイアの前記遠位部分が前記自己拡張型ステントの前記内腔の少なくとも一部を通じて延び、前記自己拡張型ステントの前記近位部分が、前記コアワイアの前記第1の係止部材の遠位方向で前記コアワイアの前記中間部分上に配置された、自己拡張型ステントと、
管腔、近位部分、遠位部分及び遠位端を有する管状捕捉スリーブであって、前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記コアワイアの前記第1の係止部材及び前記自己拡張型ステントの前記近位部分上に配置され、前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記自己拡張型ステントの前記近位部分を前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記中間部分上に取り外し可能に保持するように構成され、前記管状捕捉スリーブが、前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が前記コアワイアの前記第1の係止部材の近位方向に引かれる際に、前記自己拡張型ステントの前記近位端を前記管状捕捉スリーブ及び前記コアワイアの前記中間部分から解放するように構成されている、管状捕捉スリーブと、を備える、装置。
(12) 前記第1の係止部材が、前記コアワイア上のこぶを含む、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記管状捕捉スリーブが、収縮可能なスリーブを含む、実施態様11に記載の装置。
(14) 前記管状捕捉スリーブが、弾性スリーブを含む、実施態様11に記載の装置。
(15) 前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記中間部分上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分を締め付けるように構成されている、実施態様11に記載の装置。
【0027】
(16) 前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記中間部分上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分上に圧縮されるように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(17) 前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記中間部分上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分を捕捉するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(18) 前記管状捕捉スリーブの前記近位部分が前記コアワイアの前記近位部分に機械的に連結され、前記管状捕捉スリーブが、前記コアワイアが遠位方向に押される間に近位方向に引かれるように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(19) 前記管状捕捉スリーブの前記近位部分が、細長い連結部材によって前記コアワイアの前記近位部分に機械的に連結される、実施態様18に記載の装置。
(20) 前記コアワイアの前記中間部分上に配置された第2の係止部材を更に備え、前記管状捕捉スリーブが、前記自己拡張型ステントの前記近位部分を前記管状捕捉スリーブの前記管腔内において前記第2の係止部材上に取り外し可能に保持し、更に、前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が前記コアワイアの前記第1及び第2の係止部材の近位方向に引かれる際に前記自己拡張型ステントの前記近位端を前記管状捕捉スリーブ及び前記第2の係止部材から解放するように、構成されている、実施態様11に記載の装置。
【0028】
(21) 前記第2の係止部材が、前記コアワイア上のこぶを含む、実施態様20に記載の装置。
(22) 前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記第2の係止部材上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分を締め付けるように構成されている、実施態様20に記載の装置。
(23) 前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記第2の係止部材上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分上に圧縮されるように構成されている、実施態様20に記載の装置。
(24) 前記管状捕捉スリーブの前記遠位部分が、前記管状捕捉スリーブの前記管腔内でかつ前記コアワイアの前記第2の係止部材上で前記自己拡張型ステントの前記近位部分を捕捉するように構成されている、実施態様20に記載の装置。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D