(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523512
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20190527BHJP
B43K 7/00 20060101ALI20190527BHJP
B43K 8/00 20060101ALI20190527BHJP
B43K 1/08 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
B43K3/00 C
B43K7/00
B43K8/00
B43K1/08 130
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-72707(P2018-72707)
(22)【出願日】2018年4月4日
(62)【分割の表示】特願2014-80725(P2014-80725)の分割
【原出願日】2014年4月10日
(65)【公開番号】特開2018-103634(P2018-103634A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 剛生
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
(72)【発明者】
【氏名】古川 和彦
【審査官】
谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−252655(JP,A)
【文献】
特開2003−220784(JP,A)
【文献】
特開平7−329484(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0201940(US,A1)
【文献】
特開2007−30375(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0247224(US,A1)
【文献】
特開2000−272287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00−8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記先端と、
前記筆記先端にインクを供給するインク供給部と、
前記筆記先端及び前記インク供給部を連結させる継手と、
前記筆記先端、前記インク供給部及び前記継手を内部に収納する軸筒とを有する筆記具において、
前記継手は、
少なくとも筆記先端と接続する中心部材と、
前記中心部材から離間した周辺部材と、
前記中心部材と前記周辺部材とを接続して成形された介在部材とからなり、
前記介在部材が前記中心部材及び前記周辺部材に対し、一体成形されるとともに、前記継手の中心部材は略筒状に形成され、前記継手の周辺部材は前記中心部材の外周に形成されるとともに略筒状に形成され、前記中心部材と前記周辺部材との間に形成された環状の空間には前記インク供給部の先端が嵌合されることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記継手は、中心部材の後端から約1/4から約1/3あたりまでに成形された略筒状の周辺部材と、周辺部材の先端から中心部材の先端から約1/3の位置までを覆うように形成された介在部材とからなり、インク供給部の前方は継手の後端から継手の約1/2の位置まで挿入されていることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項3】
前記周辺部材の内周には、周辺部材の後端に位置し、僅かに拡径している、周辺部材拡径部と、周辺部材の後端から約1/2に位置し、リング状に形成された周辺部材内方突起とが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記先端の傾動を可能とする筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記先端の傾動を可能とさせ、筆記感を向上させた筆記具に関する技術としては、特許文献1に示すように、軸筒本体と口先部材との間に弾性材を介在させ、筆記の際の力によって弾性体を撓ませて、筆記先端を傾動させるようにしたものが知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−331789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された発明は筆記先端の撓み量が軸筒本体と口先部材との間隙によって制限されることや、ゴム・エラストマー等の弾性体の変質により、がたつきや質感の変化が生じるとういう問題があった。また、軸筒本体外周に弾性体を装着するため、筆記者が触れて、弾性体の劣化が進むという問題もあった。
そこで、本願発明は、筆記の際の力の入れ具合によって、ペン先の撓み量を変化させることができ、弾性体の劣化を抑え、がたつきを生じにくくさせ、安定した筆記感を得ることが可能な筆記具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(第1の発明)
上記の課題を解決するために、本願における第1の発明は、
筆記先端40と、
前記筆記先端40にインクを供給するインク供給部30と、
前記筆記先端40及び前記インク供給部30を連結させる継手60と、
前記筆記先端40、前記インク供給部30及び前記継手60を内部に収納する軸筒10とを有する筆記具1において、
前記継手60は、
少なくとも筆記先端40を接続する中心部材61と、
前記中心部材61から離間した周辺部材62と、
前記中心部材61と前記周辺部材62とを接続して成形された介在部材63とからなり、
前記介在部材63は前記中心部材61と前記周辺部材62とは異なる材質からなることを特徴とする。
【0006】
筆記具1は、インクの種類によって筆記先端40をボールペンチップやマーカーペン用の繊維束体にすることで、ボールペンやマーカーペンとすることができる。軸筒10は、内部にインクを直接収容することが可能であってもよいし、インクが充填されたリフィルを内部に収容する構造であってもよい。また、インク供給部30は、コレクター等の中間部材によって軸筒10に収容されたインクを筆記先端40に供給するものであってもよいし、リフィル等の軸筒10とは別体のインク収容管に収容されたインクを筆記先端40に供給するものであってもよい。
【0007】
本発明によれば、筆記の際の力の入れ具合によって、継手60が撓むため、万年筆のようなやわらかい筆記感を得ることができる。
(第2の発明)
本願のうち第2の発明は、第1の発明における特徴に加え、前記継手60は二色成形によって成形され、一次成形で前記中心部材61と前記周辺部材62が成形され、二次成形で前記介在部材63が、前記中心部材61及び前記周辺部材62に対し一体成形されることを特徴とする。
【0008】
ここで述べる二色成形とは2種類以上の樹脂を2回以上に分けて1つの成形品を成形するものであるが、同種の樹脂による成形も含める。
本発明によれば、第1の発明と同様に、筆記の際の力の入れ具合によって、継手60が撓むため、万年筆のようなやわらかい筆記感を得ることができる。また、一体成形をするため、介在部材63によって、中心部材61と周辺部材62をしっかりと係合させることができる。
(第3の発明)
本願のうち第3の発明は、第1の発明または第2の発明に加え、前記介在部材63が、前記中心部材61と前記周辺部材62よりも軟質な物質によって成形されることを特徴とする。
【0009】
ここで、軟質な物質とは、前記中心部材61と前記周辺部材62よりも軟質であれば、制限はないが、成型工程において、金型を用いて高温下で行うため熱可塑性のエラストマーが望ましい。
本発明によれば、第1の発明と同様に、筆記の際の力の入れ具合によって、継手60が撓むが、介在部材63に軟質な物質を使用しているため、より撓むことで、よりやわらかな筆記感となる。
(第4の発明)
本願のうち第4の発明は、第1、第2又は第3の発明に加え、前記継手60の中心部材61は略筒状に形成され、前記継手60の周辺部材62は前記中心部材61の外周に形成されるとともに略筒状に形成され、前記中心部材61と前記周辺部材62との間に形成された環状の空間に前記インク供給部30の先端が挿入されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、上述のように構成されているので、筆記の際の力の入れ具合によって、継手を撓ませる事ができ、この撓みに伴って、筆記先端を撓らせ、万年筆のような柔らかい筆記感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ボールペンの正面図(A)と縦断面図(B)。
【
図2】
図1(B)における軸筒の嵌合領域(X)の拡大図。
【
図4】先軸にインク供給部、継手及びボールペンチップを挿入させた状態の縦断面図。
【
図7】継手の斜視図(A)、正面図(B)及び縦断面図(C)。
【
図8】一次成形体の斜視図(A)、正面図(B)及び縦断面図(C)。
【
図9】二次成形体の斜視図(A)、正面図(B)及び縦断面図(C)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を筆記具1として内部にコレクターを有するボールペン1を例に説明する。なお、本発明において、筆記具1及びその構成部品についての「前方」とは筆記先端40を筆記具1の先端とした場合の先端側を表し、「後方」とはその反対側を表すものとする。
(全体構造)
ボールペン1は、
図1(A)及び(B)に示すように、先端に筆記ボール50を抱持したボールペンチップ40と、ボールペンチップ40にインクを供給するインク供給部30と、ボールペンチップ40及びインク供給部30を繋ぐ継手60と、ボールペンチップ40、継手60及びインク供給部30を内部に収納する軸筒10と、軸筒10先端に装着され、ボールペンチップ40の外周を覆うアウター20とを備えている。
【0013】
(軸筒の構造)
図1(B)に示すように、軸筒10は、後端が閉鎖している筒形状のインクタンク13と、筒形状で先端は先細り形状をしており、後端の内周にインクタンク13の先端が嵌入している先軸11と、後端が閉鎖している筒形状で、先端の内周に先軸11の後端が嵌入している後軸12とからなる。
図1(B)に示すように、インクタンク13の外径は、先軸11後端の内径と略同径である。
図2に示すように、インクタンク13の外周には、インクタンク13の先端から約1/3ほどの位置に、外方へ突出したインクタンク外方突起13aが設けられている。また、インクタンク13には図示しないインクが充填されている。
【0014】
図1(B)に示すように、先軸11は略筒状で、先端は先細り形状をしている。先軸11の外周には、先軸11の後端から約1/3の位置に、外径が後軸12の外径と略同径で、後軸12の先端が当接する先軸鍔部15が設けられている。先軸11は先軸鍔部15を境に、後方の略円筒状をした先軸後部14と、前方の先細り形状をした先軸前部16とからなる。
図2に示すように、先軸後部14の内周には、インクタンク13が先軸11に嵌入した際のインクタンク外方突起13aの直後に、内方へ突出した先軸内方突起11aが設けられている。先軸後部14の外周には、先軸内方突起11aよりも前方に、複数の外方へ突出した先軸外方突起11bが設けられている。
図3(B)に示すように、先軸前部16の内周には、先細りし始める位置にインク供給部30と係合するリング状に形成された先軸前部内方突起16aと、継手60に当接するように内周の一部分が肉厚になっている肉厚部16bとが形成されている。また、先軸前部16の前方には、継手60の先端が挿入できるように縮径された先軸前部縮径孔16cと、先軸前部縮径孔16cの前方に連設しているアウター20が挿入されるアウター挿入孔16dとが設けられている。先軸前部16の先端近傍の外周には、他部材が装着できるような溝が設けられて
おり、この溝には滑り止めとなるようなグリップ部材16eが装着されている。
【0015】
図1(B)に示すように、後軸12の内径は、先軸後部14の外径と略同径である。
図2に示すように、後軸12の内周には、先軸11が後軸12に嵌入した際に先軸11の後端を被覆する位置に、僅かに径が縮小するように形成された後軸テーパー部12aと、内方へ突出した後軸内方突起12bとが設けられている。ここで、後軸内方突起12bは、先軸外方突起11bと同数設けられており、先軸外方突起11bと対となるように、各先軸外方突起11bの直前に設けられている。
前述のインクタンク外方突起13a及び先軸内方突起11aは係合している。また、先軸外方突起11b及び後軸内方突起12bも係合している。これらの係合によって、インクタンク外方突起13a、先軸内方突起11a、先軸外方突起11b及び後軸内方突起12bが抜け止めとして作用しているため、インクタンク13、先軸11及び後軸12はそれぞれ外れにくくなっている。また、インクタンク外方突起13a及び先軸内方突起11aはそれぞれリング状に形成された突条である。また、先軸外方突起11b及び後軸内方突起12bも同様に、それぞれリング状に形成された突条である。なお、インクタンク外方突起13a及び先軸内方突起11aは何れか一方のみが周に沿ってリング状に形成された突条であってもよい。また、先軸外方突起11b及び後軸内方突起12bも同様に、何れか一方のみが周に沿ってリング状に形成された突条であってもよい。
【0016】
(インク供給部)
図4及び
図5に示すように、インク供給部30は、略筒状で複数のフィン33が外周に櫛歯状に形成されたコレクター31と、棒状のポリエステルファイバーから成り、コレクター31を軸方向に貫通しており、かつ先端が継手60の後端に嵌入しているコレクター芯32とからなる。
図5に示すように、コレクター31の先端には、内径が拡径している先端保持部34が設けられている。
図4及び
図5に示すように、先端保持部34の外周には、先軸前部16の内周に形成された先軸前部内方突起16aに係合し、先軸前部内方突起16aの直前に設けられたリング状のコレクター鍔部34aと、コレクター鍔部34aの前方に連設し、コレクター鍔部34aよりも径が小さいコレクター段部34bと、コレクター段部34bの前方に連設し、コレクター段部34bよりも径が小さいコレクター当接部34cとが設けられている。
【0017】
コレクター31の後端はインクタンク13と接している。また、コレクター芯32の後方はインクタンク13内に突出しており、前方は継手60の後端から継手60の約1/2の位置まで挿入されている。
(ボールペンチップ)
図6に示すように、ボールペンチップ40は、円筒形状のホルダー42と、ホルダー42に挿入され、ホルダー42の後端から突出する棒状の中芯41と、ホルダー42に保持される筆記ボール50とからなる。ホルダー42の先端には、小口を内方に押圧して縮径変形されたカシメ部42aが形成されている。そして、筆記ボール50の先端は、カシメ部42aの先端縁から露出するようになっている。中芯41はコレクター芯32と同様にポリエステルファイバーにより形成され、中芯41の後端はコレクター芯32の先端に嵌め込まれるとともに、中芯41の先端は筆記ボール50の直後に達しており、コレクター芯32に浸透したインクを吸収して筆記ボール50にインクを供給する。さらに、ボールペンチップ40は、後端から約2/3程度が継手60に保持される。
【0018】
なお、コレクター芯32及び中芯41は、使用するインクの粘度等の性状に応じて、適切なポリエステルファイバーの気孔率や表面形状を選択して形成される。
(継手)
図4及び
図7に示すように、継手60は、略筒状の中心部材61と、中心部材61後方の外周にコレクター31の先端保持部34の厚さ分の空隙部64を有するように、中心部材61の後端から約1/4から約1/3あたりまでに成形された略筒状の周辺部材62と、周辺部材62の先端から中心部材61の先端から約1/3の位置までを覆うように形成された介在部材63とからなる。中心部材61の内部には、後方からコレクター芯32が挿入され、前方からボールペンチップ40が挿入される。また、中心部材61と周辺部材62との間に形成された空隙部64に先端保持部34が嵌合される。
【0019】
図8(C)に示すように、中心部材61の内周には、後端にコレクター芯32と略同径の後方挿入孔61aと、中芯41の後端付近からホルダー42の後端までに位置し、中芯41と略同径の中央挿入孔61bと、ホルダー42の後端から中心部材61の先端までに位置し、ホルダー42と略同径の先方挿入孔61cとが設けられている。中心部材61の外周には、中心部材61の後方挿入孔61aの先端から1/3より後方で、周辺部材62の先端よりも前方に位置し、先端保持部34の外径よりも径が小さい、リング状の中心部材鍔部61eが形成されている。また、中心部材61の外周は、後端から中心部材鍔部61eまでに位置する後方円柱部後部61dと、中心部材鍔部61eから後方挿入孔61aの先端よりも後方に位置する後方円柱部前部61fと、後方円柱部前部61fの先端から中央挿入孔61bの後端のやや前方までに位置する中央円柱部61gと、中央円柱部61gの先端から中心部材61の先端までに位置する前方円柱部61hとからなる。ここで、後方円柱部後部61d及び後方円柱部前部61fの外径は先端保持部34の内径と略同径で、中央円柱部61gの外径は先軸前部縮径孔16cの径と略同径で、前方円柱部61hの外径はアウター20の後方に設けられた後部挿入孔24の径と略同径である。
【0020】
図8(C)に示すように、周辺部材62の内径はコレクター31の先端保持部34の外径と略同径である。周辺部材62の内周には、周辺部材62の後端に位置し、僅かに拡径している、周辺部材拡径部62aと、周辺部材62の後端から約1/2に位置し、リング状に形成された周辺部材内方突起62bとが設けられている。ここで、周辺部材拡径部62aの径はコレクター当接部34cの径よりも小さく、先端保持部34を挿入しやすくするために設けられている。また、周辺部材内方突起62bは、インク供給部30の先端保持部34を周辺部材62と中心部材61で挟持するために設けられている。周辺部材62の外周は、周辺部材62の後端から周辺部材内方突起62bまでに位置する周辺部材後方外周部62cと、周辺部材後方外周部62cに連設している周辺部材中央外周部62dと、周辺部材中央外周部62dに連設し、周辺部材62の先端までに位置する周辺部材前方外周部62eとからなる。周辺部材後方外周部62cの径はコレクター段部34bの径と略同じで、周辺部材中央外周部62dの径は周辺部材後方外周部62cの径よりもやや小さく、周辺部材前方外周部62eの径は周辺部材中央外周部62dの径よりもやや小さい。周辺部材前方外周部62eの先端から約1/2の位置には、リング状の周辺部材外方突部62fが設けられている。前記周辺部材外方突部62fには円周方向に少なくとも一カ所以上の欠部62gが設けられている。ここで、前記欠部62gの外径は、周辺部材前方外周部62eの外径と同一である。
【0021】
図7及び
図9(C)に示すように、介在部材63は、周辺部材62を覆い、外径が周辺部材外方突部62fの径と略同じ、略円筒状の介在部材後方円柱部63aと、介在部材後方円柱部63aに連設し、中心部材鍔部61eまでを覆い、略円錐形状をしている連結部63bと、連結部63bに連設し、中央円柱部61gの中央付近までを覆い、なだらかな円錐形状をした介在部前方円錐部63cとからなる。介在部材後方円柱部63aは周辺部材前方外周部62eの後端から周辺部材62の欠部62gを介して、周辺部材前方外周部62eの先端まで覆っており、結果として、周辺部材外方突部62fと係合している。介在部材63の内周は中心部材61及び周辺部材62の外周に沿うように形成されており、連結部63bの後端に位置する内径は、周辺部材62の内径と同じであり、連結部63bの前方に位置する内径は、介在部材63の内径から、中心部材鍔部61eの外径となるように、除々に縮径していくようなテーパーを有している。
【0022】
(二色成形)
継手60は二色成形により成形された部品であり、中心部材61及び周辺部材62を一次成形で成形し、これら中心部材61及び周辺部材62に対し介在部材63を二次成形により一体成形している。介在部材63は連結部63bにおいて、撓りをもたせるため、弾性樹脂材料によって形成される。前記弾性材料としては、成型工程において、金型を用いて、高温下で行うため熱可塑性のエラストマーが望ましい。一次成形体である中心部材61及び周辺部材62の材質はポリアセタール樹脂等の硬質樹脂が望ましい。
【0023】
(アウター)
図6に示すように、アウター20は円筒状のアウター固定部21と、このアウター固定部21に連設する略円錐形状のアウターテーパー部22とからなる。アウターテーパー部22の先端には面取りされたアウター先端部23が設けられている。また、アウター20には、後端から先端に向けて孔が形成されており、アウター固定部21の内面には、後部挿入孔24が設けられ、アウターテーパー部22の先端付近の内面には、後部挿入孔24よりも小径の前部挿入孔25が設けられている。アウター固定部21はアウター挿入孔16dに装着されることで、先軸11に固定される。そして、アウター20はボールペンチップ40を被覆する。この際、後部挿入孔24に継手60の前方円柱部61hが挿入され、前部挿入孔25には、継手60から突出しているボールペンチップ40が挿入される。
図6に示すように、アウター先端部23から、筆記ボール50と、筆記ボール50を覆うカシメ部42aとが露出している。
【0024】
(ボールペンの特性)
このボールペン1は、継手60が3部材からなり、周辺部材62と中心部材61とが、同一の一次成形体でありながら、互いに一次成形体としては連続していないため、介在部材63の連結部63b付近が変形し、継手60が撓りやすい構造となっている。
【0025】
(ボールペンの組立)
ボールペン1は次のように組み立てる。まず、コレクター31の先端保持部34を継手60の空隙部64に嵌入させ、コレクター31の後端からコレクター芯32を、継手60の先端から筆記ボール50を抱持させたボールペンチップ40をそれぞれ挿入し、コレクター芯32にボールペンチップ40の中芯41を嵌入させる。組み合わせたコレクター31、コレクター芯32、継手60及びボールペンチップ40を先軸11の後端から挿入する。その後ボールペンチップ40を覆うようにしてアウター20を先軸11の内周に装着する。若しくはアウター20を先軸11の内周に装着した後、組み合わせたコレクター31、コレクター芯32、継手60及びボールペンチップ40を先軸11の後端から挿入して組み立ててもよい。
【0026】
次に、インクの充填されているインクタンク13の外周に先軸11の後端をインクタンク13の先端がコレクター31の後端に当接するまで外挿させる。
最後に、インクタンク13を覆うようにして後軸12の先端の内周に先軸11の後端を挿入する。先軸11を後軸12に挿入する際は、後軸12の先端が先軸鍔部15に当接するまで挿入させる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明は、ボールペンやマーカーペンなどの筆記具に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 筆記具又はボールペン 10 軸筒
11 先軸 11a 先軸内方突起
11b 先軸外方突起 12 後軸
12a 後軸テーパー部 12b 後軸内方突起
13 インクタンク 13a インクタンク外方突起
14 先軸後部 15 先軸鍔部
16 先軸前部 16a 先軸前部内方突起
16b 肉厚部 16c先軸前部縮径孔
16d アウター挿入孔 16e グリップ部材
20 アウター
21 アウター固定部 22 アウターテーパー部
23 アウター先端部 24 後部挿入孔
25 前部挿入孔 30 インク供給部
31 コレクター 32 コレクター芯
33 フィン 34 先端保持部
34a コレクター鍔部 34b コレクター段部
34c コレクター当接部 40 筆記先端又はボールペンチップ
41 中芯 42 ホルダー
42a カシメ部 50 筆記ボール
60 継手 61 中心部材
61a 後方挿入孔 61b 中央挿入孔
61c 前方挿入孔 61d 後方円柱部後部
61e 中心部材鍔部 61f 後方円柱部前部
61g 中央円柱部 61h 前方円柱部
62 周辺部材 62a 周辺部材拡径部
62b 周辺部材内方突起 62c 周辺部材後方外周部
62d 周辺部材中央外周部 62e 周辺部材前方外周部
62f 周辺部材外方突部 62g 欠部
63 介在部材 63a介在部材後方円柱部
63b 連結部 63c介在部前方円錐部
64 空隙部