【実施例】
【0029】
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0030】
[実施例1:酵母培養物1の調製と評価]
ヒアルロン酸を含有する培地を用いて酵母を培養し、酵母培養物1を得た。具体的には、重量平均分子量150万のヒアルロン酸0.1w/v%、グルコース1w/v%の混合液200mlを121℃で滅菌後、酵母Dipodascus magnusiiを植菌して、26℃で培養した。12時間ごとにサンプリングを行い、72時間まで培養した。培養後の培養液を無菌フィルターで濾過することにより、滅菌済の酵母培養物を得た。得られた酵母培養物は、凍結乾燥した。
【0031】
〔物性等の評価〕
1.ヒアルロン酸の重量平均分子量
実施例1の条件で培養を行い、サンプリングした酵母培養物1に含まれるヒアルロン酸の分子量を測定した。分子量の測定は、高速液体クロマトグラフィーにより行った。ポリビニルアルコールを充填したカラムを用い、移動相に0.1M 酢酸バッファー、検出器にはRI検出器を用いゲル濾過クロマトグラフィーを行った。
【0032】
【表1】
【0033】
2.臭い
所定の時間ごとにサンプリングした発酵液の臭いを専門パネルが10人で評価した。
○:酵母臭が感じられない
△:酵母臭が感じられる
×:酵母臭が強く感じられる
【0034】
【表2】
【0035】
培養時間が36時間以上では、酵母臭が感じられる場合があることが分かった。
【0036】
[実施例2〜5:酵母培養物2の調製と評価]
ヒアルロン酸を含有する培地を用いて酵母を培養し、酵母培養物2を得た。具体的には、重量平均分子量180万の0.1w/v%ヒアルロン酸、1w/v%グルコースの混合液5Lを121℃で滅菌後、酵母Dipodascus magnusiiを植菌して、28℃、24時間培養した。その後も分子量測定用に培養液の一部は培養を続けた。培養後の培養液を無菌フィルターで濾過することにより、滅菌済の酵母培養物を得た。得られた酵母培養物は、凍結乾燥した。
【0037】
〔物性の評価〕
1.粘度
酵母培養物2の粘度を測定した。測定は、サンプルを水に溶解し、単一円筒型回転粘度計ビスメトロンVS−A1(芝浦システム社製)を用い、25℃、2号ローター、6rpmで行った。
【0038】
【表3】
【0039】
なお、上表の固形分は、ヒアルロン酸としての固形分を指す。ヒアルロン酸の0.5%液は、ヒアルロン酸量として酵母培養物2(凍結乾燥物)の5%に相当する。酵母培養物2は酵母臭もなく、低粘度でべたつきのないものであった。
【0040】
1.ヒアルロン酸の重量平均分子量
実施例2の条件で培養を継続し、所定の時間ごとに発酵液をサンプリングし、酵母培養物2に含まれるヒアルロン酸の分子量を測定した。分子量の測定は、高速液体クロマトグラフィーにより行った。カラムにはポリビニルアルコールを充填したゲル濾過クロマトグラフィーを、移動相に0.1M 酢酸バッファーを、検出器にはRI検出器を用いた。
【0041】
【表4】
【0042】
〔保湿効果〕
24時間培養した酵母培養物2の保湿効果を評価した。具体的には、精製水、発酵前のヒアルロン酸、グルコース、実施例2で調製した酵母培養物2、グリセリンを表5の比率で混合し、実施例3、4および比較例1〜4のサンプルを製造した。被験者10名の両方の前腕内側部を洗浄し、2×2cmの範囲をマーキングした。前腕内側のマーキングした位置の初期水分量を測定した。次いで、2×2cmのティッシュに、製造したサンプル100μL添加し、マーキングした位置に貼付した。5分間後、ティッシュを剥がし、残った液を指でなじませるように塗布した。塗布30分後肌の水分量を測定した。塗布後の値から初期水分量で引き、水分変化量を算出した。なお、水分量の測定には、皮表角層水分量測定装置SKICON−200EX(アイ・ビイ・エス株式会社)を用いた。
【0043】
【表5】
【0044】
ヒアルロン酸を含有する培地で酵母Dipodascus magnusiiを培養して得られた酵母培養物には発酵前のヒアルロン酸とグルコースの混合液より倍以上の高い保湿効果があることが分かった。これは一般に保湿効果が高いとされるグリセリン水溶液と同程度であった。さらに、酵母培養物は多価アルコールと組み合わせることにより、保湿性が相乗的に向上することが分かった。
【0045】
〔酵母培養物の保湿効果2〕
下記に示すような化粧水を作成した。
被験者10名の両方の前腕内側部を洗浄し、2×2cmの範囲をマーキングした。前腕内側のマーキングした位置の初期水分量を測定した。次いで、2×2cmのティッシュに、下方の表に従って処方製造したサンプル100μL添加し、マーキングした位置に貼付した。5分間後、ティッシュを剥がし、残った液を指でなじませるように塗布した。塗布30分後および60分後の肌の水分量を測定した。塗布後の各値を各初期水分量で引き、水分変化量を算出した。なお、水分量の測定には、皮表角層水分量測定装置SKICON−200EX(アイ・ビイ・エス株式会社)を用いた。
【0046】
【表6】
【0047】
〔酵母培養物2の美白効果〕
マウス由来のB16メラノーマ培養細胞を使用し、実施例2で得られた酵母培養物2の美白効果を評価した。具体的には、下記の通りに行った。6穴プレートの各ウェルに10%FBS含有MEM培地を適量とりB16メラノーマ細胞を播種し、37℃、二酸化炭素濃度5%中にて静置した。翌日、ヒアルロン酸、実施例2で調製した酵母培養物2の各サンプルを水に溶解したものを、最終固形分濃度が3000〜5000μg/mLになるように細胞を培養しているウェルへ添加し、混和した。培養5日目に培地を交換し、再度各サンプル水溶液を同様に添加した。翌日、培地を除き、各ウェルの細胞をリン酸緩衝液で洗浄した後、細胞数をカウントした。今回の濃度範囲ではいずれのサンプルも細胞毒性がなく、安全性が高いものであった。
【0048】
その後各々のウェルから細胞を回収し、肉眼で白色度の判定を行った。
判定基準
◎:強い白色化の傾向
○:明らかに白色化の傾向
△:わずかに白色化の傾向あり
×:ブランクと同程度の黒さ
【0049】
美白効果評価結果を表7に示した。酵母培養物2は、濃度依存的に美白効果が見られた。酵母培養物2は、美白効果が高いことが認められた。
【0050】
【表7】
【0051】
[実施例6:化粧水1]
(製法)
A.下記成分(1)〜(8)を混合溶解する。
B.下記成分(9)〜(15)を混合溶解する。
C.BにAを加え混合し、化粧水を得る。
(成分)(質量%)
(1)メドウホーム油 0.1
(2)ホホバ油 0.05
(3)香料 適量
(4)フェノキシエタノール 0.1
(5)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.5
(6)イソステアリン酸ポリオキシエチレン(50E.O.)硬化ヒマシ油 1.0
(7)エタノール 8.0
(8)トコフェロール 0.05
(9)グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
(10)グリセリン 5.0
(11)1,3−ブチレングリコール 5.0
(12)ポリエチレングリコール1500 0.1
(13)酵母培養物1(*1) 0.001
(14)加水分解コラーゲン 0.001
(15)精製水 残量
(*1)実施例1により調製されたもの
【0052】
[実施例7:化粧水2]
(製法)
A.下記成分(1)〜(8)を混合溶解する。
B.下記成分(9)〜(12)を混合溶解する。
C.AにBを加え混合し、化粧水を得た。
(成分)(質量%)
(1)クエン酸 0.05
(2)クエン酸ナトリウム 0.2
(3)ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50%)水溶液 0.5
(4)アスコルビン酸グルコシド 0.3
(5)酵母培養物2(*2) 0.0001
(6)グリセリン 3.0
(7)1,3−ブチレングリコール 8.0
(8)精製水 残量
(9)エタノール 10.0
(10)カテキン 0.0001
(11)香料適量
(12)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.5
(*2)実施例2により調製されたもの
【0053】
[実施例8:乳液]
(製法)
A.下記成分(11)の一部を加熱し、70℃に保つ。
B.下記成分(1)〜(10)を加熱混合し、70℃に保つ。
C.BにAを加えて混合し、均一に乳化する。
D.Cを冷却後、下記成分(12)〜(16)と(11)の残部を混合してから加え、均一に混合して乳液を得た。
(成分)(質量%)
(1)ポリオキシエチレン(10E.O.)ソルビタンモノステアレート 1.0
(2)ポリオキシエチレン(60E.O.)ソルビタントリオレエート 0.5
(3)グリセリルモノステアレート 1.0
(4)ステアリン酸 0.5
(5)ベヘニルアルコール 0.5
(6)スクワラン 8.0
(7)プロピレングリコール 5.0
(8)パルミチン酸レチノール 0.1
(9)グリチルレチン酸ステアリル 0.1
(10)フェノキシエタノール 0.1
(11)精製水 残量
(12)カルボキシビニルポリマー 0.2
(13)水酸化ナトリウム 0.1
(14)ヒアルロン酸 0.1
(15)酵母培養物1(*3) 0.003
(16)香料適量
(*3)実施例1により調製されたもの
【0054】
[実施例9:リキッドファンデーション(水中油型クリーム状)]
(製造方法)
A:成分(6)〜(11)を分散する。
B:Aに成分(12)〜(17)を加え70℃で均一に混合する。
C:成分(1)〜(5)を70℃で均一に混合する。
D:CにBを加え乳化し、室温まで冷却する。
E:Dに成分(18)、(19)を添加し均一に混合して水中油型クリーム状リキッドファンデーションを得た。
(成分)(質量%)
(1)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合(注1) 0.5
(2)トリエタノールアミン 1.5
(3)精製水 残量
(4)グリセリン 5
(5)パラオキシ安息香酸エチル 0.1
(6)1,3-ブチレングリコール 5
(7)水素添加大豆リン脂質 0.5
(8)酸化チタン 5
(9)ベンガラ 0.1
(10)黄酸化鉄 1
(11)黒酸化鉄 0.05
(12)ステアリン酸 0.9
(13)モノステアリン酸グリセリン 0.3
(14)セトステアリルアルコール 0.4
(15)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
(16)トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
(17)パラメトキシケイ皮酸2―エチルヘキシル 5
(18)酵母培養物2(*4) 0.1
(19)香料 0.02
(*4)実施例2により調製されたもの
(注1)ペミュレンTR−2(NOVEON社製)
【0055】
[実施例10:日焼け止め化粧料(油中水型クリーム状)]
(製造方法)
A:成分(1)〜(7)を均一に分散する。
B:成分(8)〜(12)を均一に分散する。
C:Bを攪拌しながら徐々にAを加えて乳化し、油中水型クリーム状日焼け止め化粧料を得た。
(成分)(質量%)
(1)モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
(2)POE(60)硬化ヒマシ油 0.1
(3)精製水 残量
(4)ジプロピレングリコール 10
(5)硫酸マグネシウム 0.5
(6) 酵母培養物2(*5) 0.005
(7)アスコルビルリン酸マグネシウム 3
(8)PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注2) 3
(9)デカメチルシクロペンタシロキサン 20
(10)イソノナン酸イソトリデシル 5
(11)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 8
(12)ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト 1.2
(*5)実施例2により調製されたもの
(注2)KF−6028(信越化学工業社製)
【0056】
[実施例11:軟膏剤]
(製造方法)
A.成分(5)、(6)および(9)の一部を加熱混合し、75℃に保つ。
B.成分(1)〜(4)を加熱混合し、75℃に保つ。
C.AにBを徐々に加え、これを冷却しながら成分(9)の残部で溶解した(7)(8)を加え、軟膏剤を得た。
(成分)(質量%)
(1)ステアリン酸 18.0
(2)セタノール 4.0
(3)酢酸dl−α―トコフェロール 0.2
(4)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(5)トリエタノールアミン 2.0
(6)グリセリン 5.0
(7)グリチルリチン酸ジカリウム 0.5
(8)酵母培養物2(*6)0. 01
(9)精製水 残量
(*6)実施例2により調製されたもの
【0057】
[実施例12:ローション剤]
(製造方法)
A.成分(4)〜(7)を混合溶解する。
B.成分(1)〜(3)を混合溶解する。
C.AとBを混合して均一にし、ローション剤を得た。
(成分)(質量%)
(1)グリセリン 5.0
(2)1,3−ブチレングリコール 6.5
(3)精製水 残量
(4)ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタンモノラウリン酸エステル 1.2
(5)エチルアルコール 8.0
(6)酵母培養物2(*7) 0.00005
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.2
(*7)実施例2により調製されたもの
【0058】
[実施例13:養毛剤]
(製造方法)
A.成分(1)〜(5)を混合溶解する。
B.成分(6)〜(10)を混合溶解する。
C.AとBを混合して均一にし、養毛剤を得た。
(成分)(質量%)
(1)エチルアルコール 50.0
(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(80E.O) 0.5
(3)メントール 0.05
(4)カンファ 0.01
(5)フェノキシエタノール 0.05
(6)精製水 残量
(7)酵母培養物2(*8) 1
(8)オタネニンジン抽出物 0.5
(9)パントテニルアルコール 0.1
(10)グリセリン 5.0
(*8)実施例2により調製されたもの