特許第6523636号(P6523636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523636
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】走行体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20190527BHJP
   A47L 9/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   G05D1/02 H
   G05D1/02 R
   A47L9/00 102Z
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-176426(P2014-176426)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-51342(P2016-51342A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村田 博光
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
(72)【発明者】
【氏名】町田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】市川 洋光
【審査官】 大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−166968(JP,A)
【文献】 特開2009−066391(JP,A)
【文献】 特開平05−100742(JP,A)
【文献】 特開平09−251318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00− 1/12
A47L 5/00− 5/38
9/00− 9/32
11/24−11/30
B25J 1/00−21/02
B62D 9/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
この本体ケースの走行面に対向する下部に位置し、この本体ケースを走行面上で走行可能とする駆動輪と、モータと、このモータの駆動力を前記駆動輪に伝達してこの駆動輪を回動させる伝達手段と、押圧部とを備え、前記本体ケースの下部に対して前記駆動輪の突出量が増減する上下方向に沿って回動可能に設けられた駆動輪ユニットと
スイッチ本体と、このスイッチ本体に回動可能に設けられた検出アームとを備え、この検出アームの回動により前記スイッチ本体のオンとオフとが切り換わることで前記本体ケースの下部に対する前記駆動輪の突出状態を検出する検出スイッチと、
回動可能に設けられ、回動により前記検出アームを回動させるレバーと、前記検出アームを前記スイッチ本体に接近させる方向へと前記レバーを回動方向に付勢することで前記検出アームを、前記スイッチ本体をオンとオフとのいずれかとする位置に保持する保持付勢手段とを備えたレバー部とを具備し、
前記レバー部は、下方向に回動して所定の回動位置となった前記駆動輪ユニットの前記押圧部によって押圧されて前記レバーが前記保持付勢手段の付勢に抗して回動されることにより、前記検出アームを前記スイッチ本体から離れる方向に回動させて前記検出スイッチの前記スイッチ本体のオンとオフとを切り換える
ことを特徴とした走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、本体ケースの下部に対して駆動輪の突出量が増減する上下方向に沿って回動可能に設けられた駆動輪ユニットを備えた走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばセンサなどを用いて障害物などを検出しつつ、被掃除面としての床面上を自律走行しながら床面を掃除する、いわゆる自律走行型の電気掃除機(掃除ロボット)が知られている。このような電気掃除機は、自律走行用の駆動輪がケース体の下部に配置されている。これら駆動輪は、モータの動力が伝達手段としてのギヤボックスを介して伝達されて回転駆動される。そして、これら駆動輪は、床面とのグリップ性を向上するために、ギヤボックスを介して本体ケースに対して上下方向に回動可能に軸支されているとともに、床面に向けてばね(サスペンション)によって付勢されており、床面の凹凸などに応じて駆動輪を介してばねが伸縮することで、床面上での安定した走行を可能としている。
【0003】
例えば、本体ケースの下部が障害物などに乗り上げた場合には、ばねの付勢により駆動輪が本体ケースから床面に向けて付勢されて大きく突出することで、駆動輪が床面との接触を保とうとする。しかしながら、駆動輪が床面側へと進出するに従ってばねの付勢力は弱まり、また、掃除機本体が障害物により下側から支持されて駆動輪に対して各部の荷重が加わりにくいことで、駆動輪が床面に接触しているにも拘らず床面からの反力が充分に得られず、グリップ力が不足して駆動輪が空転する、すなわちトラクションを失うことがある。そこで、検出スイッチ(マイクロスイッチ)を設け、駆動輪とともに回動するギヤボックスによりこの検出スイッチの検出アームを押圧するように構成して、本体ケースの下部からの駆動輪の突出量が大きくなったときに検出スイッチのオンとオフとが切り換わることで、空転を検出することが可能となっている。
【0004】
駆動輪が通常位置にある場合と本体ケースの下部からの突出量が大きくなったときとで単に検出スイッチのオンとオフとを切り換えるだけの場合、凹凸がある床面を走行しただけで検出アームのオンとオフとが切り換わってしまうことが想定され、精度のよい検出ができない。また、一般的に、検出スイッチとして用いるマイクロスイッチの検出アームは薄板状に形成されているため、押圧されたときに撓みなどが発生するなどの不安定要素があることから、検出スイッチによる検出精度を向上することが求められる。さらに、検出アームに対して押圧により過剰な力が加わらないようにすることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−166968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、検出スイッチによる駆動輪の突出状態の検出精度を向上しつつ、検出アームへの負荷を抑制できる走行体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の走行体は、本体ケースと、駆動輪ユニットと検出スイッチと、レバー部とを有する。駆動輪ユニットは、駆動輪と、モータと、伝達手段と、押圧部とを備える。駆動輪は、本体ケースの走行面に対向する下部に位置し、この本体ケースを走行面上で走行可能とする。伝達手段は、モータの駆動力を駆動輪に伝達してこの駆動輪を回動させる。そして、駆動輪ユニットは、本体ケースの下部に対して駆動輪の突出量が増減する上下方向に沿って回動可能に設けられる検出スイッチは、スイッチ本体と、このスイッチ本体に回動可能に設けられた検出アームとを備える。そして、検出スイッチは、検出アームの回動によりスイッチ本体のオンとオフとが切り換わることで本体ケースの下部に対する駆動輪の突出状態を検出する。レバー部は、レバーと、保持付勢手段とを備える。レバーは、回動可能に設けられ、回動により検出アームを回動させる。保持付勢手段は、検出アームをスイッチ本体に接近させる方向へとレバーを回動方向に付勢することで検出アームを、スイッチ本体をオンとオフとのいずれかとする位置に保持する。そして、レバー部は、下方向に回動して所定の回動位置となった駆動輪ユニットの押圧部によって押圧されてレバーが保持付勢手段の付勢に抗して回動されることにより、検出アームをスイッチ本体から離れる方向に回動させて検出スイッチのスイッチ本体のオンとオフとを切り換える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の走行体の一部を示す縦断面図であり、(a)は通常状態の縦断面図、(b)は駆動輪が本体ケースの下部から突出した状態の縦断面図である。
図2】同上走行体の一部を示す斜視図である。
図3】同上走行体の内部構造を示すブロック図である。
図4】同上走行体を下方から示す平面図である。
図5】同上走行体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態の構成を図1ないし図5を参照して説明する。
【0010】
図1ないし図5において、11は走行体としての自律走行体である電気掃除機を示し、この電気掃除機11は、本実施形態では、この電気掃除機11として、走行面(被掃除面)としての床面F上を自律走行(自走)しつつ床面Fを掃除する、いわゆる自走式のロボットクリーナを例に挙げて以下説明する。
【0011】
そして、この電気掃除機11は、中空状の本体ケース12と、床面Fを掃除する掃除部13と、自律走行用のセンサ部14と、例えば複数(一対)の駆動輪ユニット15と、旋回用の旋回輪16と、各駆動輪ユニット15をそれぞれ付勢する付勢手段としてのばね17と、各駆動輪ユニット15のそれぞれに対応して配置された検出スイッチ18と、この検出スイッチ18を動作させるレバー部19と、回路基板などにより構成された制御手段20と、電源部を構成する電池である二次電池21とを備えている。なお、以下、電気掃除機11(本体ケース12)の走行方向に沿った方向を前後方向(図4などに示す矢印FR,RR方向)とし、この前後方向に対して交差(直交)する左右方向(両側方向)を幅方向として説明する。
【0012】
本体ケース12は、例えば合成樹脂などにより扁平な円柱状(円盤状)などに形成されており、床面Fに対向する下部である円形状の下面12aに、集塵口としての吸込口23と、駆動輪ユニット15をそれぞれ突出可能とする開口部24とが開口形成されている。また、本体ケース12の上部には、各種情報を表示する表示部25が配置されている。
【0013】
吸込口23は、例えば幅方向に長手状、すなわち横長の四角形状に形成されており、本体ケース12の下面12aの中央部近傍に配置されている。
【0014】
各開口部24は、本体ケース12の下面12aの吸込口23の幅方向(左右両側)外方の位置にそれぞれ前後方向に長手状に形成されている。すなわち、開口部24,24は、本体ケース12の下面12aの前後方向の中心付近の位置にて、幅方向に互いに離間されて配置されている。
【0015】
表示部25は、時刻や時間、あるいは電気掃除機11に関する各種情報などを表示するものである。なお、この表示部25は、例えば使用者が各種設定を直接入力可能である入力操作手段の機能を兼ね備えるタッチパネルなどとしてもよい。
【0016】
掃除部13は、例えば本体ケース12内に位置して塵埃を吸込口23から吸い込む電動送風機27と、吸込口23に回転可能に取り付けられて塵埃を掻き上げる回転清掃体としての回転ブラシ28およびこの回転ブラシ28を回転駆動させるブラシモータ29と、本体ケース12の前側などの両側に回転可能に取り付けられて塵埃を掻き集める旋回清掃部としての補助掃除手段であるサイドブラシ30およびこのサイドブラシ30を駆動させるサイドブラシモータ31と、吸込口23と連通して塵埃を溜める集塵部32となどを備えている。なお、電動送風機27と、回転ブラシ28およびブラシモータ29と、サイドブラシ30およびサイドブラシモータ31とは、少なくともいずれかを備えていればよい。
【0017】
センサ部14は、所定距離以内の壁や家具などの物理的な物体(障害物)の存否を検出する障害物検出手段である物体検出手段34と、床面Fの段差などを検出する段差検出手段35とを備えている。なお、このセンサ部14には、例えば床面の塵埃量を検出する塵埃量検出手段などを備えていてもよい。
【0018】
物体検出手段34は、例えば超音波センサ、あるいは赤外線センサなどであり、ケース体12の外周面の複数箇所に配置されている。
【0019】
段差検出手段35は、例えば赤外線センサなどであり、ケース体12の下面12aの前側および後側のそれぞれの斜め両側などに配置されている。
【0020】
各駆動輪ユニット15は、電気掃除機11(本体ケース12)を床面F上で走行(自律走行)させる、すなわち走行用の駆動輪41と、この駆動輪41を駆動させる駆動力を発生するモータ42と、このモータ42の駆動力を駆動輪41に伝達して駆動輪41を駆動させる伝達手段としてのギヤボックス43とをユニット状に一体に備え、本体ケース12の各開口部24の位置に取り付けられてこの本体ケース12の一部をなすケース体(ユニットケース)44に対して上下方向、すなわち駆動輪41が本体ケース12の下面12a(開口部24)からの下方への突出量が増減する上下方向に沿って回動可能に軸支されている。したがって、これら駆動輪ユニット15は、本体ケース12の下面12aの前後方向の中心付近の位置にて、幅方向に互いに離間されて配置されており、幅方向に対称な配置となっている。なお、駆動輪ユニット15,15は、互いに左右幅方向に対称となっているため、説明をより明確にするために、図1および図2においては一方のみを図示し、他方については図示を省略する。
【0021】
各駆動輪41は、左右幅方向に沿って回動軸41aを有する円盤状に形成されており、この回動軸41aに、ギヤボックス43のギヤが接続されている。また、駆動輪41の外周には、例えば軟質でかつ弾性を有するグリップ部材41bが配置されており、このグリップ部材41bの表面には接地面積を向上させる凹凸が形成されている。そして、このグリップ部材41bが床面Fに対して接触することで電気掃除機11の重量を支持し、この電気掃除機11の重量による床面Fからの反力、ばね17による付勢力、グリップ部材41bの凹凸形状および弾性などにより、床面Fに対する駆動輪41のグリップ力が設定される。
【0022】
各モータ42は、例えば駆動輪41のそれぞれに対応して配置されており、左右幅方向に沿って軸方向を有するように配置され、ギヤボックス43のギヤと機械的に接続され、ギヤを介して各駆動輪41を独立して駆動させることが可能となっている。また、これらモータ42には、それぞれ駆動を制御するための回路を備えた基板46が取り付けられている。この基板46には、コネクタ46aが配置されており、このコネクタ46aを介して基板46の回路と外部の回路や二次電池21などが電気的に接続される。
【0023】
各ギヤボックス43は、複数、あるいは単数のギヤを備えており、各モータ42を減速することで各駆動輪41の駆動用のトルクを得る減速機である。これらギヤボックス43の前側の下部には、駆動輪ユニット15をケース体44に軸支するための軸支部47が突設されている。さらに、これらギヤボックス43の前側の上部、すなわち軸支部47の上方には、ばね17の一端部である前端部を係止保持する保持部48が突設されている。そして、これらギヤボックス43の後側の上部、すなわち軸支部47に対してモータ42の中心軸と反対側の位置、換言すれば軸支部47よりも後方上側の位置には、レバー部19を動作させるための押圧部49が突設されている。この押圧部49は、軸支部47を中心とした仮想的な円弧の周方向に沿って長手状のリブ状に形成されている。
【0024】
各ケース体44は、各駆動輪ユニット15の一部の上側を覆うものであり、例えば合成樹脂により一体成形され、駆動輪41の上側を覆う駆動輪覆い部51と、ギヤボックス43の上側を覆う伝達手段覆い部としてのギヤボックス覆い部52とを前後に備えているとともに、駆動輪覆い部51のギヤボックス覆い部52と反対側である後端部に、ばね17の他端部(後端部)を固定する固定部53が設けられている。
【0025】
駆動輪覆い部51は、左右幅方向に沿って軸方向を有する扁平な半円柱状で、かつ、下側が開口して開口部24と連通している。また、この駆動輪覆い部51の側面部の上側寄りの位置には、検出スイッチ18が取り付けられている。さらに、この駆動輪覆い部51の側面部には、検出スイッチ18の下方の位置に、レバー部19が配置されている。
【0026】
ギヤボックス覆い部52の内部には、前側下部寄りの位置に、軸支部47が軸支されている。
【0027】
固定部53は、上下方向に沿って設けられており、上端部の位置に後方に向けて屈曲した引っ掛け部53aが形成され、この引っ掛け部53aにばね17の他端部が係止保持されている。
【0028】
旋回輪16は、本体ケース12の下面12aの幅方向の略中央部で、かつ、前部に位置しており、床面Fに沿って旋回可能な従動輪である。
【0029】
各ばね17は、例えば引っ張りばねなどのコイルばねである。これらばね17は、一端部である前端部がギヤボックス43の保持部48に係止保持され、他端部である後端部がケース体44の固定部53の引っ掛け部53aに係止保持されて、前後方向に沿って配置されている。したがって、これらばね17は、ケース体44の固定部53が位置する後側に対して駆動輪ユニット15の保持部48を接近させる方向(後方)に引っ張ることで、駆動輪ユニット15を、軸支部47を中心として下方へと回動させて駆動輪41が本体ケース12の下面12a(開口部24)から突出する下方向に付勢している。
【0030】
各検出スイッチ18は、例えば直方体状のスイッチ本体55と、このスイッチ本体55から回動可能に突出する検出アーム56とを備えるマイクロスイッチである。
【0031】
スイッチ本体55は、内部に常開、あるいは常閉の接点部を備え、本体ケース12(ケース体44(駆動輪覆い部51の側面部))に固定されている。この状態で、検出アーム56がスイッチ本体55の下部に位置してレバー部19に臨んで位置している。さらに、このスイッチ本体55(検出スイッチ18)は、駆動輪41の回動軸41aよりも上方に位置している。また、このスイッチ本体55の上部には、接点部と電気的に接続された例えば3つの端子部55aが前後方向に並んで複数設けられている。さらに、このスイッチ本体55の下部、すなわち検出アーム56に対向する位置には、検出アーム56がスイッチ本体55側に回動することで押圧されて接点部の接離を切り換える図示しないスイッチ体が検出アーム56側に向けて弱い力で付勢された状態で突設されている。そして、端子部55aのうち隣接する一対が図示しないリード線などを介して他の回路と電気的に接続され、制御手段20に対して内部の接点部の接離を出力するようになっている。
【0032】
検出アーム56は、例えば金属の薄板により長尺状に形成されており、前後方向に沿って配置され、スイッチ本体55の前部から後方に向けて傾斜状に突出している。この検出アーム56は、基端部がスイッチ本体55に回動可能に軸支されており、先端側へとスイッチ本体55に対して徐々に離間されるように傾斜している。そして、この検出アーム56は、スイッチ本体55に接近する方向、すなわち上方へと回動することで、スイッチ本体55のスイッチ体を付勢に抗して押し込んで接点部(スイッチ本体55)のオンとオフとを切り換えるようになっている。
【0033】
各レバー部19は、各駆動輪ユニット15の回動に伴って各検出スイッチ18を動作させるためのもので、回動可能なレバー61と、このレバー61を回動方向に付勢する保持付勢手段としてのばね62とを備えている。
【0034】
レバー61は、例えば剛性を有する合成樹脂などにより成形されており、検出スイッチ18の下方の位置にて本体ケース12(ケース体44(駆動輪覆い部51の側面部))に配置されている。このレバー61は、本体ケース12(ケース体44(駆動輪覆い部51の側面部))に回動可能に軸支される円筒状のレバー軸支部61aと、このレバー軸支部61aから径方向に延びる長尺状のレバー本体部61bとを備えている。
【0035】
レバー軸支部61aは、検出スイッチ18に対して軸支部47(ギヤボックス43)と反対側である後部寄りの位置にて、左右幅方向に沿って軸方向を有するように本体ケース12(ケース体44(駆動輪覆い部51の側面部))に軸支されている。したがって、レバー61は、駆動輪ユニット15に回動方向と同様の上下方向に回動可能となっている。
【0036】
レバー本体部61bは、検出スイッチ18の検出アーム56の下部に対向して位置している。このレバー本体部61bは、レバー軸支部61aを中心とするレバー61の回動により、先端側ほど上下方向に大きく回動するようになっている。さらに、このレバー本体部61bの先端部である前端部は、駆動輪41の軸方向から見て、駆動輪ユニット15の軸支部47よりも上方で、かつ、押圧部49よりも下方に位置している。換言すれば、このレバー本体部61b(レバー61)の先端部は、上下方向に軸支部47と押圧部49との間に位置している。そして、このレバー本体部61bの前端部は、駆動輪ユニット15の回動時のギヤボックス43の押圧部49の回動軌跡よりも軸支部47側である前側まで延びている。したがって、駆動輪ユニット15が軸支部47を中心として下方、すなわち本体ケース12の下部(下面12a)からの駆動輪41の突出量が大きくなる方向に回動した際に、所定の回動位置で押圧部49によって下方に押圧されるようになっている。また、このレバー本体部61bの上部、すなわち検出アーム56の下部に対向する位置には、この検出アーム56を押圧するためのアーム押圧部61cが突設されている。このアーム押圧部61cは、レバー本体部61bの基端寄りの位置、すなわちレバー軸支部61aの前方近傍に位置しており、検出アーム56の先端側の下部に接触している。さらに、このレバー本体部61bの下部、すなわち検出スイッチ18(検出アーム56)と反対側には、ばね62の一端部である上端部を保持する(一方の)付勢手段保持部としてのばね保持部61dが先端側寄りの位置にて円柱状に突設されている。
【0037】
ばね62は、例えば圧縮ばねなどのコイルばねであり、レバー61を上方に向けて回動させる方向、すなわち検出スイッチ18(検出アーム56)側へと接近させる方向に付勢している。このばね62は、レバー本体部61bの下部、すなわちアーム押圧部61cの反対側に位置するばね保持部61dに一端部である上端部が保持されており、他端部である下端部が、本体ケース12(ケース体44(駆動輪覆い部51の側面部))に突設された(他方の)付勢手段保持部としてのばね保持部64に保持されている。
【0038】
制御手段20は、例えばタイマなどの計時手段、メモリなどの記憶手段およびマイコンなどの制御部を備えており、各モータ42、掃除部13(電動送風機27、ブラシモータ29およびサイドブラシモータ31,31)、センサ部14(物体検出手段34および段差検出手段35)、表示部25、および、各検出スイッチ18などと電気的に接続され、センサ部14による検出結果に基づいて、掃除部13および各モータ42などの駆動を制御可能である。また、この制御手段20は、各駆動輪41の本体ケース12からの突出量を、検出スイッチ18を介して検出する突出量検出手段の機能を有している。本実施形態では、制御手段20は、各駆動輪41の突出に伴う検出スイッチ18の接点部の接離、すなわち検出スイッチ18のスイッチ本体55のオンとオフとの切り換わりによって、各駆動輪41の本体ケース12の下部(下面12a)からの突出量が所定以下であるか(各駆動輪41が本体ケース12の下部(下面12a)から所定量以上突出しているか)を検出するようになっている。
【0039】
二次電池21は、制御手段20、掃除部13(電動送風機27、ブラシモータ29およびサイドブラシモータ31,31)、センサ部14(物体検出手段34および段差検出手段35)、表示部25、および、各モータ42などに給電するものである。そして、この二次電池21は、例えば本体ケース12の下面12aの後部両側などに位置する充電端子67,67と電気的に接続されており、室内(部屋)の所定位置などに設置された所定の図示しない充電台に対して充電端子67,67が接続されることによって充電可能となっている。
【0040】
次に、上記一実施形態の動作を説明する。
【0041】
電気掃除機11は、各ばね17により固定部53の引っ掛け部53aの位置で各駆動輪ユニット15を引っ張ることで、各駆動輪ユニット15が、各駆動輪41が本体ケース12の下面12a(開口部24)から下方へと突出するように軸支部47を中心として下方に向けて付勢される。したがって、電気掃除機11を床面Fから上方に離間させた状態では、各駆動輪ユニット15が、本体ケース12に対して駆動輪41が最大に突出した状態となっており、この電気掃除機11を床面F上に載置すると、各駆動輪41が床面Fに接触して電気掃除機11の重量を支持することにより、各ばね17の付勢に抗して各駆動輪ユニット15は、駆動輪41が本体ケース12内へと、旋回輪16が床面Fに接触する位置まで沈み込む。すなわち、この電気掃除機11は、床面F上に載置した通常状態で、各駆動輪41の回動軸41aよりも下側の部分が本体ケース12の下面12aよりも下方に突出する。
【0042】
このとき、各駆動輪ユニット15は、各駆動輪41の上側が各駆動輪覆い部51内へと収納されるとともに、各ギヤボックス43が各ギヤボックス覆い部52内の上部へと収納される。したがって、押圧部49が相対的に上方に位置してレバー61(レバー本体部61b)から離間され、ばね62の付勢によってレバー61が、レバー本体部61bが上方へと回動するように押し込まれる。この結果、レバー本体部61bに突設されたアーム押圧部61cが検出スイッチ18の検出アーム56を上方へと押し込み、この押し込まれるように回動した検出アーム56がスイッチ体を押し込むことで、検出スイッチ18のスイッチ本体55がオンまたはオフの状態となる(図1(a))。制御手段20は、この検出スイッチ18がオンまたはオフの状態となることで、本体ケース12に対する駆動輪41の突出量が所定以下であることを検出する。
【0043】
そして、この電気掃除機11は、例えば制御手段20に予め設定された所定時刻などとなると、電動送風機27を駆動させ、例えば充電台から掃除を開始する。なお、掃除の開始位置は、電気掃除機11の走行開始位置、あるいは部屋の出入り口など、任意の場所に設定可能である。
【0044】
この電気掃除機11(本体ケース12)は、制御手段20がモータ42,42を回転駆動させて駆動輪41,41により床面F上を自律走行する。このとき、制御手段20は、センサ部14の物体検出手段34および段差検出手段35を介して、電気掃除機11(本体ケース12)の周囲に位置する壁部や障害物あるいは段差などを検出することで電気掃除機11(本体ケース12)の位置や走行状態を監視し、これらの検出に対応して、障害物などを回避しながら床面F上を自律走行する。そして、この電気掃除機11は、制御手段20が掃除部13を駆動させて床面F上の塵埃を掃除し、集塵部32に溜める。
【0045】
掃除領域の掃除が終了したと判断した場合には、制御手段20は、電気掃除機11を充電台の位置まで自律走行させ、電動送風機27などを停止させるとともに、充電台に充電端子67,67を(物理的および電気的に)接続させてモータ42,42(駆動輪41,41)を停止させ、運転を終了して二次電池21を充電する。
【0046】
ここで、電気掃除機11は、上記の掃除中、あるいは自律走行中において、例えば物体検出手段34などによって検出できない高さ、あるいは検出されても乗り越え可能と判断される高さで床面F上に位置する、すなわち床面Fからの突出量が比較的小さい障害物(例えば電気カーペットのコントローラ部など)に対して本体ケース12の下面12aが誤って乗り上げたときなどに、ばね17の付勢によって各駆動輪ユニット15が、本体ケース12の下面12a(開口部24)から各駆動輪41が床面Fに向けて下方へと突出するように軸支部47を中心として回動することで、各駆動輪41が床面Fに対する接触を維持する。
【0047】
このとき、各駆動輪ユニット15の押圧部49がレバー61のレバー本体部61bよりも上方の範囲に位置する間はレバー61が動かず、ばね62の付勢によってレバー61(アーム押圧部61c)が検出アーム56を押し込んだ状態、すなわち検出スイッチ18(スイッチ本体55)のオンまたはオフを維持した位置を保持して検出アーム56の位置(押圧位置)が変化しないとともに、アーム押圧部61cによる検出アーム56の押圧力も一定であるため、検出アーム56が必要以上に撓むことなく安定してスイッチ体を押し込んだ状態を維持する。
【0048】
そして、例えば本体ケース12の下面12aが乗り上げた障害物が比較的高い場合、あるいは障害物に乗り上げた本体ケース12が左右方向のいずれかに傾いた場合などには、少なくともいずれかのばね17の付勢力によって駆動輪ユニット15が、本体ケース12の下面12aから駆動輪41が大きく突出するように軸支部47を中心として回動することとなる。本体ケース12に対する駆動輪41の突出量が所定より大きくなった駆動輪ユニット15の所定の回動位置、すなわちばね17による付勢力が相対的に低下して駆動輪41を床面Fに対して充分に圧接できない状態となった場合には、押圧部49がレバー61(レバー本体部61bの先端部)に上方から当接して、このレバー61(レバー本体部61b)を下方に押し込んでばね62の付勢に抗して下方へと回動させるので、このレバー61のアーム押圧部61cによる検出アーム56の押圧が解除され、スイッチ体が復帰して検出アーム56がスイッチ本体55に対して離間されるように回動し、検出スイッチ18(接点部)のオンオフが切り換わる(図1(b))。したがって、制御手段20は、この検出スイッチ18がオフまたはオンの状態となることで、本体ケース12の下部(下面12a)に対する駆動輪41の突出量が所定より大きい、すなわち駆動輪41が所定の突出状態となったことを検出する。本体ケース12に対する駆動輪41の突出量が所定よりも大きくなった場合には、ばね17による付勢が不充分で駆動輪41が床面Fに対して必要なグリップ力を得ることができず、駆動輪41がいわば空転することとなり、電気掃除機11(本体ケース12)が床面Fを走行できなくなるので、制御手段20は、例えば電気掃除機11(掃除部13やモータ42など)を停止させたり、表示部25への表示や音声の発生などによって走行停止を報知したりするなど、必要な制御を行う。
【0049】
このように、検出スイッチ18の検出アーム56は、小さい力でも容易に回動して検出できるようにしてあるため、回動方向に強く押し込むと撓み変形を生じることがある。そこで、以上説明した一実施形態では、回動により検出アーム56を回動させるレバー61と、このレバー61を回動方向に付勢することで検出アーム56を、スイッチ本体55をオンとオフとのいずれかとする位置に保持するばね62とを備えたレバー部19を設けた。このため、駆動輪ユニット15がサスペンション動作により駆動輪41が床面Fに沿って上下するように回動しても、検出スイッチ18の検出アーム56は、ばね62によって付勢されたレバー61(アーム押圧部61c)によって駆動輪41が本体ケース12の下部(下面12a)から所定の突出状態(最大突出状態)となるまでの間、安定して同じ位置を維持できる。そして、レバー部19は、本体ケース12の下部(下面12a)に対する駆動輪41の突出量が大きくなる下方向に回動して所定の回動位置となった駆動輪ユニット15によって検出アーム56を回動させるレバー61がばね62の付勢に抗して回動されることにより、検出スイッチ18のスイッチ本体55のオンとオフとを切り換えるので、駆動輪41が所定の突出状態となったときには、検出スイッチ18によって確実に検出できる。
【0050】
したがって、検出アーム56の押圧状態は、駆動輪ユニット15(駆動輪41)の回動に応じて連続的に変動することがなく、駆動輪41が本体ケース12の下部(下面12a)から所定の突出状態になる直前と、突出状態になった直後とで切り換わるのみであるから、検出アーム56の撓みなどによるスイッチ体の押し込み位置や押し込みのタイミングの変化が生じず、検出スイッチ18による検出精度を向上できるとともに、検出アーム56を過剰に押圧することがなく、検出アーム56への負荷を抑制できる。
【0051】
この結果、検出スイッチ18を確実にスイッチング動作させて駆動輪41の突出状態を確実に検出しつつ、検出アーム56への負荷を抑制できる。そして、このように駆動輪41の突出状態を確実に検出できるので、駆動輪41が過剰に突出して電気掃除機11(本体ケース12)が走行不能状態となった場合などを確実に検出でき、電気掃除機11(本体ケース12)の適切な走行制御が可能になる。
【0052】
なお、上記一実施形態において、駆動輪ユニット15(駆動輪41)は、例えば1つでもよいし、3つ以上の複数でもよい。この場合、検出スイッチ18、レバー部19および押圧部49などを、駆動輪ユニット15(駆動輪41)の数に対応させて設けることで、上記一実施形態と同様に対応できる。
【0053】
また、電気掃除機11に走行体(自律走行体)の機能を持たせたが、走行体としては、掃除をするものに限定されない。さらに、走行体は、自律走行するものに限定されず、例えばリモコンなどの遠隔操作手段を用いて走行させるなどの走行体でもよい。
【0054】
本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
11 走行体としての電気掃除機
12 本体ケース
15 駆動輪ユニッ
18 検出スイッチ
19 レバー部
41 駆動輪
42 モータ
43 伝達手段としてのギヤボックス
49 押圧部
55 スイッチ本体
56 検出アーム
61 レバー
62 保持付勢手段としてのばね
F 走行面としての床面
図1
図2
図3
図4
図5