(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523670
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】多目的エルゴメータ
(51)【国際特許分類】
A63B 22/06 20060101AFI20190527BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
A63B22/06 H
A61H1/02 Q
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-247744(P2014-247744)
(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公開番号】特開2016-106872(P2016-106872A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101662
【氏名又は名称】アルインコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】川畑 喜由
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−044153(JP,U)
【文献】
特開昭50−065333(JP,A)
【文献】
特開平11−169484(JP,A)
【文献】
特開2002−263212(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0160669(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3122076(JP,U)
【文献】
特開平10−203467(JP,A)
【文献】
米国特許第04934692(US,A)
【文献】
登録実用新案第3091037(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 22/06
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの足踏み運動をペダル(10)に与えることにより負荷ホイール(11)を回転させる負荷運動と、電動モータ(27)で負荷ホイール(11)を回転させることによりユーザの足踏み運動をペダル(10)に追従させるリハビリ運動を選択可能とする多目的エルゴメータであり、
前記負荷運動に関して、前記負荷ホイール(11)に対して抵抗による負荷を与える負荷手段(17)と、強位置(H)から弱位置(L)に向けて移動することにより前記負荷手段による抵抗を次第に低下させると共に前記弱位置(L)を超える切換位置(S)まで移動可能とされた負荷調節手段(18)と、前記負荷調節手段を前記強位置(H)と切換位置(S)の間で移動させるアクチュエータ(19)と、該アクチュエータにより選択された負荷調節手段の位置を表示する表示手段(22b,26)が設けられ、
前記リハビリ運動に関して、前記負荷ホイール(11)を駆動回転する電動モータ(27)と、前記電動モータに電力を供給するメインスイッチ(32)を備えた電力供給回路(30)と、該電力供給回路(30)を開閉するモータ用スイッチ(31)が設けられており、
前記モータ用スイッチ(31)は、前記負荷調節手段(18)が前記切換位置(S)に移動させられたときにのみ電力供給回路(30)をONにすることによりリハビリ運動を可能にする一方において、負荷調節手段(18)が強弱位置(H,L)に位置させられた負荷運動中は電力供給回路(30)をOFFにすることによりメインスイッチ(31)がONにされていても電動モータ(27)に電力が供給されないように構成して成ることを特徴とする多目的エルゴメータ。
【請求項2】
前記電動モータ(27)と負荷ホイール(11)の間にクラッチ手段(36)を設けており、該クラッチ手段は、電動モータ(27)の回転を負荷ホイール(11)に伝達するが負荷ホイール(11)の回転を電動モータ(27)に伝達しないワンウエイクラッチを構成して成ることを特徴とする請求項1に記載の多目的エルゴメータ。
【請求項3】
前記電動モータ(27)の回転数を制御するモータ制御手段(25b)を設け、該モータ制御手段と電動モータの間に構成された電力供給回路(30)に前記モータ用スイッチ(31)と共にリレー(35)を設けており、
前記リレー(35)は、前記モータ用スイッチがONのときに該リレーをONにするが、前記モータ用スイッチがOFFのときは該リレーをOFFにするように構成されて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の多目的エルゴメータ。
【請求項4】
前記アクチュエータ(19)は、前記負荷調節手段(18)を移動させるケーブル(23)と、該ケーブルを軸線方向に手動で駆動する操作手段(22)により構成されて成ることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の多目的エルゴメータ。
【請求項5】
前記アクチュエータ(19)は、前記負荷調節手段(18)を移動させる電動駆動手段(19b)と、該電動駆動手段をプログラムに基づいて制御する負荷制御手段(25a)により構成されて成ることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の多目的エルゴメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定式運動用自転車として知られているエルゴメータに関し、特に、健常者が運動用として使用することができるだけでなく、障害者や高齢者等がリハビリ用としても使用することができる多目的エルゴメータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザがペダルを足踏み回転することにより負荷ホイールを回転させ、その際、負荷ホイールに抵抗による負荷を与え、これにより、脚力等を鍛錬すると共に有酸素運動を行わせる「負荷運動用のエルゴメータ」が提供されている(特許文献1)。
【0003】
その一方において、障害者や高齢者等のリハビリ等の目的で、電動モータにより回転するペダルにユーザの足踏み運動を追従させ、脚等の運動機能を回復させる「リハビリ運動用のエルゴメータ」が提供されている(特許文献2)。
【0004】
因みに、エルゴメータに関し、リカンベントバイクや、固定式自転車等の別名が存在するが、本発明におけるエルゴメータの語は、これらを総称する意味であり、ペダルの足踏み回転により運動を行わせる運動機器を広く包含する意味であることを諒解されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−140153号公報
【特許文献2】特開2003−144502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
負荷運動用のエルゴメータは、リハビリ用に適していない。また、リハビリ運動用のエルゴメータは、運動用に適していない。
【0007】
そこで、負荷運動用のエルゴメータとリハビリ運動用のエルゴメータを兼用することが可能な多目的エルゴメータを提供することが望ましい。
【0008】
このような多目的エルゴメータは、負荷運動用のエルゴメータに電動モータを付け加え、リハビリ運動用としても使用可能となるように構成することにより、実現可能である。
【0009】
しかしながら、その場合、エルゴメータを負荷運動のために使用している最中に、万一、電動モータが誤動作等により駆動されることがあると、危険であり、ユーザの足を痛めるおそれがある。従って、この点に関して解決すべき課題がある。
【0010】
更に、ユーザが負荷運動用のエルゴメータとして使用する際の足踏み回転による駆動系と、ユーザがリハビリ運動用のエルゴメータとして使用する際の電動モータによる駆動系をどのように構成すべきか等々、種々の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決した多目的エルゴメータを提供するものであり、その手段として構成したところは、
ユーザの足踏み運動をペダルに与えることにより負荷ホイールを回転させる負荷運動と、電動モータで負荷ホイールを回転させることによりユーザの足踏み運動をペダルに追従させるリハビリ運動を選択可能とする多目的エルゴメータであり、前記負荷運動に関して、前記負荷ホイールに対して抵抗による負荷を与える負荷手段と、強位置から弱位置に向けて移動することにより前記負荷手段による抵抗を次第に低下させると共に前記弱位置を超える切換位置まで移動可能とされた負荷調節手段と、前記負荷調節手段を前記強位置と切換位置の間で移動させるアクチュエータ
と、該アクチュエータにより選択された負荷調節手段の位置を表示する表示手段が設けられ、前記リハビリ運動に関して、前記負荷ホイールを駆動回転する電動モータと、
前記電動モータに電力を供給するメインスイッチを備えた電力供給回路と、該電力供給回路を開閉するモータ用スイッチが設けられており、前記モータ用スイッチは、前記負荷調節手段が前記切換位置に移動させられた
ときにのみ電力供給回路をONにすることにより
リハビリ運動を可能にする一方において、負荷調節手段が強弱位置に位置させられた負荷運動中は電力供給回路をOFFにすることによりメインスイッチがONにされていても電動モータに電力が供給されないように構成して成ること点にある。
【0012】
この際、前記電動モータと負荷ホイールの間にクラッチ手段を設け、該クラッチ手段は、電動モータの回転を負荷ホイールに伝達するが負荷ホイールの回転を電動モータに伝達しないワンウエイクラッチを構成することが好ましい。
【0013】
本発明の好ましい実施形態は、前記電動モータの回転数を制御するモータ制御手段を設け、該モータ制御手段と電動モータの間に構成された電力供給回路に前記モータ用スイッチと共にリレーを設けており、前記リレーは、前記モータ用スイッチがONのときに該リレーをONにするが、前記モータ用スイッチがOFFのときは該リレーをOFFにするように構成されている。
【0014】
前記アクチュエータは、前記負荷調節手段を移動させるケーブルと、該ケーブルを軸線方向に手動で駆動する操作手段により構成することができる。
【0015】
或いは、前記アクチュエータは、前記負荷調節手段を移動させる電動駆動手段と、該電動駆動手段をプログラムに基づいて制御する負荷制御手段により構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、負荷調節手段18を強位置Hと弱位置Lの間に位置させた状態で、ユーザの足によりペダル10を足踏み回転することにより、負荷がかけられた負荷ホイール11を回転させながら、負荷運動用のエルゴメータとして使用することができる。そして、
メインスイッチ32がONにされている状態で、負荷調節手段18を切換位置Sに移動すると、モータ用スイッチ31がONとされ、電動モータ27が駆動し、負荷ホイール11と共にペダル10を駆動回転するので、ユーザの足を回転するペダル10に追従して足踏み運動を追従させることにより、リハビリ運動用のエルゴメータとして使用することができる。従って、1台のエルゴメータにより、負荷運動用のエルゴメータとリハビリ運動用のエルゴメータを兼用可能とした多目的エルゴメータを提供することができる。
そして、ユーザは、アクチュエータ19により強位置Hと弱位置Lと切換位置Sのうち選択した位置を表示手段(表示円盤22b)を視認することにより確認しながら負荷運動又はリハビリ運動を行うことができる。
【0017】
この際、負荷運動用エルゴメータとして負荷運動を行っているとき、つまり、ペダル10を足踏み回転することにより、負荷がかけられた負荷ホイール11を回転しているときは、負荷調節手段18が強位置Hと弱位置Lの間に位置しているので、モータ用スイッチ31がONにされることはない。従って、負荷運動中に、
メインスイッチ32がONにされている状態でも、不慮に電動モータ27が駆動してユーザの足を痛めるような危険はなく、安全に負荷運動を行うことができる。
【0018】
そして、電動モータ27と負荷ホイール11の間にワンウエイクラッチを構成するクラッチ手段36を設けた構成とすれば、負荷運動中に負荷ホイール11の回転が電動モータ27に伝達させられることはないので、該電動モータ27を損傷するおそれはない。
【0019】
更に、モータ制御手段25bと電動モータ27の間における電力供給回路30にモータ用スイッチ31と共にリレー35を設けた構成とすれば、電動モータ27を停止した状態から、ユーザがペダル10を逆転方向に足踏み回転することにより、電動モータ27を逆転させた場合でも、逆転する電動モータ27の起電力が前記モータ制御手段25bに印加されることはないので、該モータ制御手段25bの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の1実施形態に係る多目的エルゴメータを示す斜視図である。
【
図2】多目的エルゴメータの要部を示す側面図である。
【
図3】多目的エルゴメータの負荷ホイールに対する電動モータによる駆動系を示すと共に、手動式アクチュエータを設けた実施形態を示す斜視図である。
【
図4】多目的エルゴメータの負荷ホイールに対する電動モータによる駆動系を示すと共に、電動式アクチュエータを設けた実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、多目的エルゴメータ1は、床面に接地される一対の脚座2、2に架設されたベースフレーム3と、該ベースフレーム3から立設されたサドルポスト4と、該サドルポスト4の前方に位置して立設されたハンドルポスト5と、前記サドルポスト4とハンドルポスト5に架設された横架フレーム6を備え、該横架フレーム6と前記サドルポスト4を斜交フレーム7で連結すると共に、該斜交フレーム7と前記サドルポスト4の間に搭載された軸受8を介して、駆動ホイール9を回転自在に軸支し、該駆動ホイール9を足踏み回転させるためのクランク軸を備えたペダル10を設けている。
【0023】
前記横架フレーム6の先端下方には、負荷ホイール11が配置されている。負荷ホイール11は、ベースフレーム3から立設されたブラケット12に回転自在に軸支されており、該ブラケット12から延びるステイ13により横架フレーム6を支持している。
【0024】
前記サドルポスト4は、伸縮自在かつ固定自在な延長ポスト4aを備えており、該延長ポスト4aの上端にサドル14を搭載している。前記ハンドルポスト5の上端には、ハンドルグリップ15が設けられている。従って、ユーザは、サドル14に搭乗すると共にハンドルグリップ15を握持した姿勢で、両足を駆動ホイール9の両側のペダル10、10に載せ、ペダル10を足踏み回転することにより、駆動ホイール9を回転させるように構成されている。
【0025】
(ペダルの回転を駆動源とする駆動系)
前記駆動ホイール9と負荷ホイール11は、エンドレスベルト等の連動手段16により連動連結されている。従って、ペダル10の足踏み回転を駆動源として、駆動ホイール9を介して負荷ホイール11を駆動回転する駆動系が構成されている。
【0026】
(負荷機構)
負荷運動用のエルゴメータを構成するため、
図3に示すように、前記負荷ホイール11に対して抵抗による負荷を与える負荷手段17と、強位置Hから弱位置Lに向けて移動することにより前記負荷手段17による抵抗を次第に低下させる負荷調節手段18が設けられており、該負荷調節手段18を移動させるアクチュエータ19が設けられている。
【0027】
図示実施形態の場合、前記負荷手段17は、磁性金属により形成された負荷ホイール11に磁着力による引力を作用させる永久磁石により構成されている。前記負荷調節手段18は、前記永久磁石を内側に固着した円弧状アーム18aにより構成されており、負荷ホイール11の外周面一部に沿わせた状態で該円弧状アーム18aの上端部を枢軸手段20により前記横架フレーム6に揺動自在に軸支している。そこで、アクチュエータ19により円弧状アーム18aを強位置Hに移動したとき、永久磁石が負荷ホイール11に接近することにより最大の抵抗を与え、反対に円弧状アーム18aを弱位置Lに移動したとき、永久磁石が負荷ホイール11から離反することにより抵抗を微弱又はゼロとする。
【0028】
図示のように、円弧状アーム18aから成る負荷調節手段18は、前記アクチュエータ19により、前記強位置Hと弱位置Lの間を移動させられると共に、更に、弱位置Lを超える切換位置Sまで移動可能となるように構成されている。
【0029】
尚、負荷手段17は、図例のような磁石式による構成の他、摩擦式の構成としても良く、要するに、負荷ホイール11に対して抵抗による負荷を与えるものであれば良い。
【0030】
図示実施形態の場合、負荷調節手段18を構成する円弧状アーム18aは、該円弧状アーム18aの下端に設けられた舌片18bとベースフレーム3から立設された支持片20の間に介装された圧縮スプリングから成る付勢手段21により、常時は強位置Hに向けて弾発付勢されており、アクチュエータ19を作動することにより、前記弱位置L及び切換位置Sに向けて移動される。
【0031】
前記アクチュエータ19は、
図3に示す実施形態の場合、手動式アクチュエータ19aにより構成されており、前記負荷調節手段18の舌片18bとハンドルポスト5に設けられた操作手段22を相互に連結するケーブル23により構成されている。ケーブル23は、例えば、走行式自転車のブレーキ用ケーブルと同様のアウターケーブル23aとインナーケーブル23bを備えており、操作手段22の近傍に固定された支持片24と前記支持片20の間にアウターケーブル23aの両端を接支させると共に、インナーケーブル23bの両端を前記舌片18bと操作手段22の駆動体22aに連結している。図例の場合、操作手段22は、表示円盤22bの外周に環状の駆動体22aを回転自在に外嵌している。従って、
図3に示すように、駆動体22aを強位置Hに回動したとき、インナーケーブル23bが弛むことにより、負荷調節手段18が付勢手段21を介して強位置Hに移動される。この位置から駆動体22aを弱位置Lに向けて回動すると、インナーケーブル23bが牽引されることにより、負荷調節手段18が付勢手段21に抗して弱位置Lに向けて移動される。尚、表示円盤22b
は、図示のような目盛付きの表示を備えており、駆動体22aが回動された位置(つまり、負荷調節手段18の位置)を表示する表示手段を構成しており、図示した「電動」の位置まで駆動体22aを回動すると、負荷調節手段18は切換位置Sに移動させられる。
【0032】
アクチュエータ19は、
図3に示すような手動式アクチュエータ19aにより構成する他、
図4に示すような電動式アクチュエータ19bにより構成しても良い。例えば、ステップモータ等により駆動されるラック及びピニオンや、その他の構成とした電動式駆動手段を設け、これにより負荷調節手段18を移動させるように構成することができる。この際、電動式アクチュエータ19bをプログラムに基づいて制御する負荷制御手段25aを備えた回路基板25を設けることが好ましく、該回路基板25のプログラムを起動させる指令手段や起動状態等を表示するディスプレイを備えた操作盤26を前記ハンドルポスト5に設けることが好ましい。
【0033】
(負荷運動用エルゴメータとしての使用)
上記構成に基づく多目的エルゴメータ1によれば、ユーザは、サドル14に搭乗した状態で、ペダル10を足踏み回転することにより、負荷がかけられた負荷ホイール11を回転させながら、脚力の鍛錬や、有酸素運動等の負荷運動を行うことができる。
【0034】
図3に基づいて説明した手動式アクチュエータ19aを設けた実施形態の場合、ユーザは、操作手段22を手動で操作し、負荷調節手段18を強位置Hと弱位置Hの間で選択した位置に移動させ、これにより体力等に応じた所望の負荷を与えた状態で、負荷ホイール11を回転させながら負荷運動を行うことができる。
【0035】
図4に基づいて説明した電動式アクチュエータ19bを設けた実施形態の場合、ユーザは、操作盤26から所望のプログラムモードを選択し、所要時間内で自動的に変化する負荷に対応した状態で、負荷ホイール11を回転させながら負荷運動を行うことができる。
【0036】
(電動モータを駆動源とする駆動系)
リハビリ運動用のエルゴメータを構成するため、ベースフレーム3の先端近傍部には電動モータ27が設けられており、該電動モータ27により駆動回転されるプーリ等の回転体28と前記負荷ホイール11をエンドレスベルト等の連動手段29で連動連結することにより、電動モータ27を駆動源として負荷ホイール11を駆動回転する駆動系が構成されている。
【0037】
前記電動モータ27は、前記回路基板25から電力供給回路30を介して電力供給を受けるように構成され、該電力供給回路30にモータ用スイッチ31を設けている。尚、回路基板25は、メインスイッチ32をON/OFFすることにより、家庭電源から電力供給を受けるように構成されている。
【0038】
前記回路基板25は、電動モータ27の回転数を制御するモータ制御手段25bを設けており、
図3に例示するように、操作盤26の操作ボタンを操作することにより、電動モータ27の回転数を増減させるように構成することが好ましい。或いは、モータ制御手段25bは、プログラムに基づいて電動モータ27の回転数を変化させるように構成しても良い。
【0039】
前記モータ用スイッチ31は、前記ベースフレーム3に設置されており、これに対して、前記負荷調節手段18を構成する円弧状アーム18aの舌片18bには、モータ用スイッチ31に対向するプッシュロッド33が設けられている。図例の場合、前記プッシュロッド33は、頭付のボルトにより構成されており、突出長さを調節可能とするようにナット等の調節固定手段34を介して前記舌片18bに固定されると共に、前記支持片20に挿通状態で案内されている。従って、プッシュロッド33は、前記負荷調節手段18が強位置Hから弱位置Lに向けて移動させられたとき、該プッシュロッド33の頭部33aを前記モータ用スイッチ31に向けて前進させるように構成されている。
【0040】
尚、圧縮スプリングから成る付勢手段21により負荷調節手段18を負荷ホイール11に向けて弾発付勢した
図3に示す実施形態の場合、前記プッシュロッド33の頭部33aが支持片20に当接し、負荷調節手段18を前記強位置Hで停止させるストッパーとして機能している。
【0041】
前記モータ用スイッチ31は、前記プッシュロッド33に対向する作動ボタン31aを備えており、該作動ボタン31aは、常時はスプリング等により突出状態を保持し、この状態で該スイッチ31をOFFとし、前記電力供給回路30を開路する。
【0042】
前記負荷調節手段18が前記切換位置Sに移動させられたとき、前記プッシュロッド33の頭部33aによりモータ用スイッチ31の作動ボタン31aが押動され、これにより該スイッチ31がONとされ、電力供給回路30を閉路する。
【0043】
従って、前記モータ用スイッチ31は、前記負荷調節手段18が前記強位置Hと弱位置Lの間を移動しているときは、OFFの状態を保持しており、前記負荷調節手段18が前記切換位置Sに移動させられ、プッシュロッド33の頭部33aにより作動ボタン31aが押動されたときにだけ、ONになるように構成されている。
【0044】
図示実施形態の場合、前記電力供給回路30にリレー35が設けられている。該リレー35は、前記モータ用スイッチ31がONとされたとき、コイル35aを励磁することにより接点35bをONとして電力供給回路30を閉路するが、前記モータ用スイッチ31がOFFとされている限り、接点35bをOFFとして電力供給回路30を開路する。
【0045】
前記電動モータ27と負荷ホイール11の間にはクラッチ手段36が設けられており、該クラッチ手段36は、電動モータ27の回転を負荷ホイール11に伝達するが、負荷ホイール11の回転は電動モータ27に伝達しないワンウエイクラッチを構成している。
【0046】
図示実施形態の場合、前記ワンウエイクラッチを構成するクラッチ手段36は、電動モータ27と前記プーリ等の回転体28の間に介装されている。そこで、前記電動モータ27を駆動してリハビリ運動を行うときは、該クラッチ手段36が回転体28を回転させることにより、連動手段29及び連動手段16を介して負荷ホイール11及び駆動ホイール9を回転する。しかしながら、反対に、電動モータ27を停止し、ペダル10を足踏み回転することにより負荷運動を行うときは、駆動ホイール9の回転により、連動手段16及び連動手段29を介して負荷ホイール11及び回転体28が回転するが、クラッチ手段36により回転体28の回転が電動モータ27に伝達されることはなく、該電動モータ27を回転させないように構成している。
【0047】
(リハビリ運動用エルゴメータとしての使用)
上記構成の多目的エルゴメータ1によれば、ユーザは、サドル14に搭乗し
メインスイッチ32をONにした状態で、アクチュエータ19により負荷調節手段18を切換位置Sまで移動させると、前記モータ用スイッチ31及びリレー35がONとされ、電力供給回路30が閉路されることにより、電動モータ27が駆動する。これにより、負荷ホイール11と共に駆動ホイール9が回転するので、回転するペダル10にユーザの足踏み運動を追従させることによりリハビリ運動を行うことができる。
【0048】
この際、上述のように、操作盤26を操作することによりモータ制御手段25bを介して電動モータ27の回転数を増減することができるように構成しておけば、ユーザの運動能力に応じた回転数によるリハビリ運動が可能となる。
【0049】
上述のように、健常者等のユーザが負荷運動を行っているとき、つまり、ペダル10を足踏み回転することにより、負荷がかけられた負荷ホイール11を回転する負荷運動を行っているときは、負荷調節手段18が強位置Hと弱位置Lの間に位置しており、モータ用スイッチ31をONにすることはないので、
メインスイッチ32がONにされている状態でも、不慮に電動モータ27が駆動してユーザの足を痛めるような危険はなく、安全に負荷運動を行うことができる。
【0050】
しかも、図示実施形態の場合、負荷運動中、負荷ホイール11の回転を受けてプーリ等の回転体28も回転するが、前記クラッチ手段36により、電動モータ27が回転させられることはないので、該電動モータ27が損傷するおそれはない。
【0051】
ところで、負荷運動に際して、負荷調節手段18を弱位置Lに近づけると、負荷ホイール11の負荷が低下するので、ユーザは、ペダル10を逆転方向に足踏み回転させることが可能になる。このような逆転は、本来の運動方法ではないが、可能性として否定することができない。
【0052】
これにより駆動ホイール9及び負荷ホイール11が逆転すると、プーリ等の回転体28を逆転させることになる。この際、逆転方向には、クラッチ手段36のワンウエイ機能が働かず、電動モータ27を逆転方向に回転させるおそれがある。そして、電動モータ27の逆転により起電力が発生し、電流が回路基板25に印加され、該回路基板25を損傷するおそれがある。この点に関して、上記実施形態によれば、リレー35を設けており、負荷運動時にはモータ用スイッチ31がOFFに保持され、リレー35の接点35bをOFF状態としているので、前記起電力が回路基板25に印加されることはなく、該回路基板25の損傷が防止される。
【符号の説明】
【0053】
1 エルゴメータ
2 脚座
3 ベースフレーム
4 サドルポスト
4a 延長ポスト
5 ハンドルポスト
6 横架フレーム
7 斜交フレーム
8 軸受
9 駆動ホイール
10 ペダル
11 負荷ホイール
12 ブラケット
13 ステイ
14 サドル
15 ハンドルグリップ
16 連動手段
17 負荷手段
18 負荷調節手段
18b 舌片
19 アクチュエータ
19a 手動式アクチュエータ
19b 電動式アクチュエータ
20 支持片
21 付勢手段
22 操作手段
22a 駆動体
22b 表示円盤
23 ケーブル
23a アウターケーブル
23b インナーケーブル
24 支持片
25 回路基板
25a 負荷制御手段
25b モータ制御手段
26 操作盤
27 電動モータ
28 回転体
29 連動手段
30 電力供給回路
31 モータ用スイッチ
32 メインスイッチ
33 プッシュロッド
33a 頭部
34 調節固定手段
35 リレー
35a コイル
35b 接点
36 クラッチ手段