(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドレンの開口に、排水可能に蓋をするキャップ本体と、前記ドレンの開口に挿入され、前記キャップ本体を前記ドレンの開口に固定する固定具と、を備えたドレンキャップであって、
前記キャップ本体と前記固定具を連結する連結部材を有し、
前記連結部材は、前記キャップ本体に取り付けられる部分となるキャップ取付部材と、前記固定具を支持する固定具支持部材と、前記キャップ取付部材と前記固定具支持部材を連結するアーム部材と、を備え、
前記アーム部材は、前記キャップ取付部材を、その一端側に上下方向に揺動可能に連結する第一の連結可動部と、前記固定具支持部材を、その他端側に上下方向に揺動可能に連結する第二の連結可動部と、を有し、
前記キャップ取付部材は、前記キャップ本体に形成された高さ方向に延びるガイド溝に対し移動可能に取り付けられていることを特徴とするドレンキャップ。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンション等の建築物の屋上や各階のベランダには、雨水を排水するドレンが設けられ、一般的に床面を貫通して下方向きに雨水を排水する縦引きドレンが設置され、そして、落ち葉、小枝、紙、又は、ビニール等(以下、落ち葉等と称する)が流れ込まないように、開口にドレンキャップが設置される。
【0003】
しかし、床面の真下に部屋があるような場合は、縦引きドレンを設置することが困難である。このため、このような場合は、壁と床のなす隅部に横引きドレンが設置される。
【0004】
この横引きドレンは、例えば、断面形状がL字形の山形の本体部と、この山形の本体部の隅部における中央部を連通し山側(外方)へ向かって筒状に延びる排水部と、を備えている。この排水部は、排水管が接続され、壁を貫通して横向きに雨水を排水するようになっている。また、この横引きドレンの開口には、ドレンキャップが設置され、落ち葉やゴミ等が排水部、そして、排水管に流れ込むのを防止している。
【0005】
ドレンキャップは、横引きドレンの開口を排水可能に塞ぐキャップ本体と、このキャップ本体を横引きドレンに固定する板ばねと、を備えており、この板ばねは、その長手方向の中央部がキャップ本体の裏面側にビス留めされている。
【0006】
そして、このドレンキャップは、設置者が板ばねの両端部を互いに近づかせて、両端部の間隔を横引きドレンの開口よりも小さくさせて排水部に挿入し、その後、この板ばねが自身の復元力によって撓まされた両端部の間隔が広がって、排水部の内周面に圧接する。以上によって、ドレンキャップは、板ばねの復元力を用いて横引きドレンに固定される。
【0007】
ここで、横引きドレンは、設置される場所の面積や想定される降雨量などに基づいてその設置数量と開口の口径が決定されたり、設置される場所によって排水部が傾斜したものが選択されたりする。
【0008】
以下、
図10、
図11、
図12を参照しながら、開口の径が異なったり筒状の排水部の傾斜角度が異なったりする横引きドレンについて、同一のドレンキャップを適用した場合を説明する。
【0009】
図10(A)は、排水部101aが水平方向に延びる横引きドレン101を、斜め上方から視た斜視図である。
図10(B)は、(A)の横引きドレン101よりも管径の小さい配水部102aを有した横引きドレン102を、斜め上方から視た斜視図である。
図10(C)は、(A)の横引きドレン101の正面図である。
図10(D)は、(B)の横引きドレン102の正面図である。
【0010】
以下、便宜上、
図10(A)、(C)に示される横引きドレン101を、大径の横引きドレン101と称し、
図10(B)、(D)に示される横引きドレン102を、小径の横引きドレン102と称する。
【0011】
図11(A)は、大径の横引きドレン101に対して、これに適合するドレンキャップ(以下、大径用のドレンキャップ101と称する)を設置した様子を示す断面図である。
図11(B)は、小径の横引きドレン102に対して、大径用のドレンキャップ106を設置した様子を示す断面図である。
図11(C)は、
図11(A)のXIC矢視図である。
図11(D)は、
図11(B)のXID矢視図である。
【0012】
図11(A)、(C)に示すように、大径の横引きドレン101に、これに適合する大径用のドレンキャップ106が設置されると、ドレンキャップ106は、その板ばね107の両端部の間隔が排水部101aの内径dと同じ間隔となり、且つ、
図11(A)に示すように、板ばね107の両端部分(排水部101aの内周面に対する接触部分)の延びる方向が排水部101aの芯Cに対して平行となっている。この状態は、板ばね107がキャップ本体108を横引きドレン101に対して最も強固に固定する状態であり、以後、この状態を、板ばね107の理想固定状態と称する。
【0013】
次に、
図11(B)、(D)に示すように、小径の横引きドレン102に大径用のドレンキャップ106を適用した場合を説明する。
図10(C)、(D)に示すように、管径が異なると、排水部102aの芯Cの高さ位置が相違する。図によれば、芯Cの高さ位置は、hのズレが生じている。
【0014】
小径の横引きドレン102に、大径用のドレンキャップ106を用いると、
図11(B)で示すとおり、板ばね107の両端の延びる方向が排水部102aの芯Cに対して平行となっているものの、
図11(D)で示すとおり、板ばね107の両端部の間隔が排水部102aの内径d'よりも小さい間隔となる。板ばね107がこのような状態をとると、板ばね107は、排水部102aの内周面から下向きの力を受ける。その結果、小径の横引きドレン102に対する大径用のドレンキャップ106の固定は、不安定なものとなる。
【0015】
続いて、
図12に示すように、大径の排水部103aが傾斜している横引きドレン103に大径用のドレンキャップ106を適用した場合を説明する。
図12は、大径の排水部103aが傾斜する横引きドレン103に対して、大径用のドレンキャップ106を設置した様子を示した断面図である。
【0016】
図12に示すように、板ばね107は、その先端側へ向かえば向かうほど、排水部103aの芯Cから外れていく。そして、その結果、板ばね107は、その先端側へ向かえば向かうほど大きくなる下向きの力を、排水部103aの内周面から受け、横引きドレン103に対する大径用のドレンキャップ106の固定が不安定なものとなる。
【0017】
これらの問題を解決するためのドレンキャップ111が特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載のドレンキャップ111(以下、従来のドレンキャップ111と称する)を、
図13を参照しながら説明する。
図13(A)は、従来のドレンキャップ111の正面図である。
図13(B)は、従来のドレンキャップ111を、横引きドレン103に対して取り付けた様子を示す断面図である。
【0018】
従来のドレンキャップ111は、キャップ本体112を備え、このキャップ本体112にはガイド溝112aが形成されている。そして、キャップ本体112は、ガイド溝112aの表面側から雄ねじ113の軸が通されるとともに、この雄ねじ113が裏面側に配された移動金具114にねじ込まれることによって、移動金具114がキャップ本体112の裏面側に対して固定されている。そして、この移動金具114は、雄ねじ113を緩めるとガイド溝112aに沿って移動可能となっている。そして、この移動金具114は、板ばね115を揺動可能に支持している。
【0019】
図13(B)に示すように、この従来のドレンキャップ111は、所定の箇所に配置される際に、雄ねじ113を緩めて移動金具114を点線から実線部分まで移動させて、移動金具114に支持される板ばね115を排水部103aの芯Cの高さ位置に固定できる。
【0020】
そして、この従来のドレンキャップ111は、板ばね115が揺動可能に支持されており、これを揺動させることによって、板ばね115の両端の延びる方向を排水部103aの芯Cに対して平行にすることができる。従来のドレンキャップ111は、以上によって、排水部103aの管径の違いと傾斜角度の違いを許容することができるようになっている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態の例(以下、実施例と称する)を、
図1〜
図9を参照しながら説明する。
【0036】
<平面型のドレンキャップ>
平面型のドレンキャップ1の実施例を、
図1〜
図4を参照しながら説明する。
図1は、平面型のドレンキャップ1を背面側から視た斜視図である。
図2は、連結部材3とこれにビス留めされる板ばね4を分解して示した斜視図である。
図1に示すように、平面型のドレンキャップ1は、キャップ本体2と、連結部材3と、板ばね4(固定具)と、を備えている。
【0037】
キャップ本体2は、例えば、全体形状が山形をなすように中央部で折り曲げられた板状のもので断面形状が略L字形である。このキャップ本体2は、例えば、アルミニウムで成形される。そして、このキャップ本体2は、横引きドレン102の開口に、平面的に蓋をする部分である。
【0038】
このキャップ本体2には、表面側に複数のリブ2aが所定の間隔を空けて形成されている。所定の間隔とは、雨水は通すが落ち葉等は通さない大きさである。また、キャップ本体2には、連結部材3の一端側を高さ方向にガイドするガイド溝2bが形成されている。なお、キャップ本体2は、この構成に限定されず、キャップ本体2を二つの部材で構成するとともに、互いに揺動可能にして設置場所の角度に調整可能なものを採用しても良い。
【0039】
連結部材3は、キャップ本体2と板ばね4を連結する部材であり、一端がキャップ本体2の裏面に固定され、他端に板ばね4が固定される。そして、この連結部材3は、キャップ本体2に取り付けられる部分から板ばね4の間に、屈曲するための可動部(揺動部3a,3b)を二以上有した部材である。
【0040】
図2を参照しながらこの連結部材3を詳細に説明する。
図2は、連結部材3とビス5によって留められる板ばね4を分解して示した斜視図である。
図2に示すように、連結部材3は、キャップ取付部材6と、アーム部材7と、板ばね支持部材8(固定具支持部材)と、を備えている。
【0041】
キャップ取付部材6は、基端側に固定部6aを有し、先端側に接続部6bを有している。基端側の固定部6aは、キャップ本体2のガイド溝2bの裏面に、固定される部分となる。そして、先端側の接続部6bは、ピン穴6cを有し、ピン10によって、アーム部材7と揺動可能に接続される部分となる。
【0042】
板ばね支持部材8は、基端側に固定溝8aを有し、先端側に接続部8bを有している。先端側の接続部8bは、ピン穴8cを有し、ピン10によって、アーム部材7と揺動可能に接続される部分となる。基端側の固定溝8aは、板ばね4の長手方向における中央部が配される部分である。板ばね4を固定溝8aに固定する際は、例えば、ビス5によって留められる。
【0043】
アーム部材7は、一端部7a及び他端部7bにそれぞれピン穴7c,7dが形成されたアームである。このアーム部材7は、一端部7aにキャップ取付部材6が揺動可能に取り付けられ、他端部7bに板ばね支持部材8が揺動可能に取り付けられる。
【0044】
キャップ取付部材6と板ばね支持部材8がアーム部材7に接続されると、二つの揺動部3a,3bを有した連結部材3となる。以下、キャップ取付部材6側の揺動部を、キャップ側の揺動部3a(第一の連結可動部)と称し、板ばね支持部材側の揺動部を、板ばね側の揺動部3b(第二の連結可動部)と称する。この連結部材3は、キャップ側の揺動部3aを揺動させると板ばね側の揺動部3bが上下方向に揺動し、且つ、キャップ側の揺動部3bを揺動させると板ばね4が上下方向に揺動する。
【0045】
板ばね4は、例えば、ステンレス鋼で短冊状に形成されている。この板ばね4は、その長手方向の中央部が連結部材3の他端である板ばね支持部材8の固定溝8aに嵌め込まれてビス5によって留められ、その両端が自由な状態で支持される。この板ばね4の両先端部は、必要に応じて滑り止めの樹脂やゴムが被覆される。
【0046】
図3を参照しながら、平面型のドレンキャップ1を横引きドレン102に設置する様子を説明する。
図3(A)は、平面型のドレンキャップ1を横引きドレン102の開口から離して載置した様子を示す断面図である。
図3(B)は、板ばね4が筒状の排水部102aの芯Cに沿うように、連結部材3の二つの揺動部3a,3bを調整した様子を示す断面図である。
【0047】
図3(A)に示すとおり、平面型のドレンキャップ1を横引きドレン102に設置する際は、先ず、平面型のドレンキャップ1を横引きドレン102の開口から離して置く。次に、横引きドレン102における排水部102aの芯Cの高さ位置を把握するとともに、平面型のドレンキャップ1のキャップ側の揺動部3aの高さ位置が排水部102aの芯Cの高さ位置に対して一致しているか否かを判断する。
図3(A)で示す場合は、排水部102aの芯Cの高さ位置と平面型のドレンキャップ1のキャップ側の揺動部3aの高さ位置が不一致である。
【0048】
この場合、連結部材3のキャップ側の揺動部3aを揺動させて、板ばね側の揺動部3bの位置が排水部102aの芯Cの高さ位置にほぼ一致するように調整し、そして、板ばね4の両端を撓ませて互いに平行にさせ、その両端の延びる方向が排水部102aの芯Cに対してほぼ平行となるように板ばね側の揺動部3bを揺動させる。そうすると、
図3(B)で示す状態となる。
【0049】
その後、その状態を保ったまま板ばね4を横引きドレン102の開口に挿入させていく。そして、板ばね4の両端がある程度挿入されたら、板ばね4から手を離して平面型のドレンキャップ1を設置位置まで移動させる。
【0050】
ここで、板ばね4の両端部の間隔が排水部102aの内径よりも多少小さかったり板ばね4の両端の延びる方向が排水部102aの芯Cに対して平行な状態から多少のズレがあったりしたとする。
【0051】
この場合、板ばね4は、排水部102aの内周面から応力を受けることにより、連結部材3の二つの揺動部3a,3bが揺動して、板ばね4の両端部の間隔が排水部102aの内径に一致する間隔となるとともに、両端部分の延びる方向(排水部102aの内周面の接触部分)が排水部102aの芯Cに対して平行な状態をとる。
【0052】
すなわち、本発明の平面型のドレンキャップ1の板ばね4は、排水部102aの内周面によって、平面型のドレンキャップ1を横引きドレン102に対して最も強固に固定する理想固定状態に矯正される。
【0053】
なお、本発明の平面型のドレンキャップ1は、上述した設置方法に限定されない。本発明の平面型のドレンキャップ1は、例えば、上述した様に排水部102aの芯Cに対して位置合わせをせずに、板ばね4の両端を撓めて横引きドレン102の開口に挿入し、押し込んでいく設置方法でも良い。そのように挿入しても、板ばね4が排水部102aの内周面から応力を受けることにより、連結部材3の二つの揺動部3a,3bが揺動して、板ばね4が理想固定状態に矯正される。
【0054】
続いて、
図4を参照しながら横引きドレン103の筒状の排水部103aが傾斜している場合を説明する。
図4は、排水部103aが傾斜する横引きドレン103に、平面型のドレンキャップ1が設置された様子を示す断面図である。
【0055】
図4に示すように、横引きドレン103の排水部103aが傾斜していても、前述したとおり、板ばね4の両端を撓めて横引きドレン103の開口に挿入しさえすれば、板ばね4が排水部103aの内周面から応力を受けることにより、連結部材3のキャップ側の揺動部3aと板ばね側の揺動部3bが揺動して、板ばね4が最も固定力が高まる理想固定状態に矯正される。
【0056】
<立体型のドレンキャップ>
立体型のドレンキャップ21の実施例を、
図5〜
図7を参照しながら説明する。
図5(A)は、立体型のドレンキャップ21を斜め上方から視た斜視図である。
図5(B)は、立体型のドレンキャップ21の一部を切断して背面側から視た斜視図である。
図5に示すように、立体型のドレンキャップ21は、キャップ本体22と、連結部材3と、板ばね4と、を備えている。
【0057】
なお、立体型のドレンキャップ21は、キャップ本体22を除き、その他の構成が上述した平面型のドレンキャップ1と同一であるため、上述した平面型のドレンキャップ1の実施例と同様の構成には同一の符号を付し、上述した平面型のドレンキャップ1の実施例の説明と重複することになる説明を省略する。
【0058】
キャップ本体22は、長辺と短辺を有した略矩形状の主排水面22aを有する。ここで、長辺とは、キャップ本体22の幅方向に延びる辺のことをいい、短辺とは、キャップ本体22の奥行方向に延びる辺のことをいう。そして、この長辺と短辺からは、支持脚22f,22gが複数形成されている。
【0059】
長辺に沿う方向(幅方向)に複数形成される支持脚22fは、長さが同じ長さに形成され、外方へ向けて傾斜して延びている。また、短辺に沿って複数形成される支持脚22gは、短辺に沿う方向(奥行方向)の中央部に位置する支持脚22gが一番長く、端へ向かえば向かうほど、漸次短くなるように形成され、且つ、主排水面22aに対して直交する方向に延びるように形成されている。
【0060】
また、短辺に沿って複数形成される支持脚22gのうち最も短い長さの支持脚22gは、長辺方向から延びる支持脚22fよりも長くなるように形成されている。そして、この短辺及び長辺に沿って複数形成される支持脚22f,22gは、側部排水面22b,22cを構成し、支持脚22f,22gの形成間隔から雨水を排水する側部排水面22b,22cを構成する。
【0061】
主排水面22aは、長辺方向の中央部から短辺方向に沿ってガイド溝22dが二つ形成されている。また、このキャップ本体22の主排水面22aには、ガイド溝22dを挟んで二つ、計四つの開口が形成されている。
【0062】
そして、この四つの開口のそれぞれには、斜めに延びる複数のリブ22eが形成されている。ここで、主排水面22aは、リブ22eが形成される側を表面側と称し、反対側を裏面側と称する。
【0063】
この複数のリブ22eは、雨水は通すが落ち葉等は通さない間隔に形成されるとともに、隣り合うリブ22eの高さが交互に高いものと低いものとで形成されている。これによって、キャップ本体22は、雨水に随伴される落ち葉等によって、主排水面22aが覆われたとしても水が流れる隙間が確保され、閉塞し難くなっている。
【0064】
この複数のリブ22eは、図中、左上と右下の開口に形成されるリブ22eが、左側が上、右側が下となるように傾斜するように形成され、右上と左下に形成されるものが、左側が下、右側が上となるように傾斜するように形成される。これによって、主排水面22aを視る者に対して、杉葉模様の美観を与える。
【0065】
側部排水面22b,22cは、長辺方向に沿うように形成された矩形状のものと、短辺方向に沿うように形成された逆三角形状のものを有する。側部排水面22b,22cを構成するいずれの支持脚も、支持脚22f,22gの間隔は、雨水は通すが落ち葉等は通さない間隔に形成されている。
【0066】
以上に説明した主排水面22aと、側部排水面22b,22cと、を備えたキャップ本体22は、例えば、アルミニウムで成形され、横引きドレン51の開口に、立体的に排水可能に蓋をする部分である。以下、主排水面22aの裏面と、略逆三角形状の側部排水面22b,22cと、で囲まれる空間を、キャップ本体22の内部空間と称する。
【0067】
このキャップ本体22が横引きドレン51の開口に蓋をする際は、主排水面22aが横引きドレン51の開口から間隔を持って、開口に対して傾斜するように配置され、側部排水面22b,22cが横引きドレン51の開口を側方から囲むように位置する。
【0068】
そして、
図5(B)に示すとおり、このキャップ本体22の内部空間には、連結部材3が配される。すなわち、連結部材3は、一端側が主排水面22aの表面側から雄ねじ13によってガイド溝22dに対して移動可能に固定され、他端側に板ばね4が固定される。この際、連結部材3は、内部空間内に収まる大きさである。すなわち、連結部材3のキャップ側の揺動部3aと板ばね側の揺動部3bが内部空間内に位置する。
【0069】
なお、この実施例において、キャップ本体22がガイド溝22dを有し、連結部材3の一端側が移動できる構成で説明したが、この構成は必須の構成ではなく、連結部材3は、キャップ本体22の裏面側に移動不能に固定される構成でも良い。
【0070】
以下、
図6、
図7を参照しながらこの立体型のドレンキャップ21を横引きドレン51に設置する様子を、連結部材3を有しない立体型のドレンキャップ61と比較しながら説明する。
図6は、立体型のドレンキャップ21を横引きドレン51に設置した様子を示す断面図である。横引きドレン51の筒状の排水部51aには、排水管52が接続されている。
【0071】
立体型のドレンキャップ21は、板ばね4の両端を撓ませて、その間隔を横引きドレン51の開口よりも小さくさせて開口に挿入させていく。そうすると、
図6に示すように、板ばね4は、排水部103aの内周面から応力を受けることにより、連結部材3のキャップ側の揺動部3aと板ばね側の揺動部3bが揺動し、板ばねが理想固定状態をとって、キャップ本体22を横引きドレン51の開口に固定させる。
【0072】
続いて、
図7を参照しながら、連結部材3を有しない立体型のドレンキャップ61を、同じ横引きドレン51に設置する様子を説明する。
図7は、連結部材3を有しない立体型のドレンキャップ61を横引きドレン51に設置しようとした様子を示す断面図である。
【0073】
図7に示すドレンキャップ61は、ガイド溝22dで高さ方向を調整し、キャップ取付部材6で板ばね4の両端の延びる向きを調整する型である。なお、他の構成は、全て同じものとする。
【0074】
先ず、キャップ取付部材6を固定する雄ねじ13(不図示)を、ドライバを用いて緩めてキャップ取付部材6を移動可能とし、キャップ取付部材6における揺動部3aの高さ位置が、排水部51aの芯Cの高さ位置に一致する位置に合わせて固定させる。次に、板ばね4の両端の延びる方向が排水部51aの芯Cに沿うように、揺動部3aを調整する。
【0075】
ここで、本実施例の立体型のドレンキャップ21やドレンキャップ61のように、キャップ本体22の主排水面22aが横引きドレン51の開口に対して傾斜するように配置される場合、これに形成されたガイド溝22dは、下方へ向かえば向かうほど、横引きドレン51の開口から離れる。すなわち、ガイド溝22dに案内されるキャップ取付部材6も下方へ向かえば向かうほど、横引きドレンの開口から離れることとなる。
【0076】
このため、
図7に示すように、ガイド溝22dで高さ方向を調整し、揺動部3aで板ばね4の両端の延びる向きを調整する型のドレンキャップ61は、取り付け状況によって、板ばね4が横引きドレン51の開口に十分に届かないおそれがあった。
【0077】
しかしながら、本発明の立体型のドレンキャップ21によれば、
図6に示すように、連結部材3がキャップ側の揺動部3aと板ばね側の揺動部3bを有するとともにアーム部材7を有していることによって、板ばね支持部材8を主排水面22aに対して移動させなくとも、板ばね4を横引きドレン51の排水部51aの芯Cをとらえることができる。これによって、本発明の立体型のドレンキャップ21は、連結部材3を有さない立体型のドレンキャップ61のように取り付け状況によって板ばね4が届かない事態が生じるおそれがない。
【0078】
<立体・角度自在型のドレンキャップ>
立体・角度自在型のドレンキャップ31の実施例を
図8及び
図9を参照しながら説明する。
図8は、立体・角度自在型のドレンキャップ31を斜め上方から視た斜視図である。なお、立体・角度自在型のドレンキャップ31は、キャップ本体32を除き、その他の構成が上述した立体型のドレンキャップ21と同一であるため、上述した立体型のドレンキャップ21の実施例と同様の構成には同一の符号を付し、上述した立体型のドレンキャップ21の実施例の説明と重複することになる説明を省略する。
【0079】
キャップ本体32は、一対のキャップ構成部材32A,32Bと、この一対のキャップ構成部材32A,32Bを一端部に沿って互いに回動自在に連結する連結ピン33と、を備えている。
【0080】
一対のキャップ構成部材32A,32Bは、同一金型を用いたアルミダイカスト成型によって成形され同一形状となっている。キャップ構成部材32A(32B)は、略矩形状の主排水面32aを有している。略矩形状を構成する長辺のうちの一辺は、もう片方のキャップ構成部材32B(32A)と連結される側の辺となる。以下、長辺のうち連結される側の辺を連結辺(一端部)と称する。
【0081】
主排水面32aは、その長辺方向(幅方向)に沿って二つの開口が形成されている。その開口には、斜めに開口を塞ぐリブ32eが等間隔に複数形成されている。また、リブ32eとリブ32eとの間は、雨水を排水するスリットとなる。また、二つの開口の間には、短辺方向(奥行方向)に沿ってガイド溝32dが形成されている。以下、リブ32eが形成される側を表面側と称し、その反対側を裏面側と称する。
【0082】
主排水面32aの連結辺からは、主排水面32aに直交する方向(裏面側)へ湾曲して延びる湾曲部32hが連結辺に沿って八個形成されている。この八個の湾曲部32hのうち両端の湾曲部32hには、短辺方向に貫通する貫通孔37が形成されている。この貫通孔37は、主排水面32aの裏面側から離れた位置に形成されている。
【0083】
主排水面32aの長辺のうち連結辺でない方の長辺には、長さが等しく形成され、外方へ向けて傾斜して延びる支持脚32fが複数形成されている。また、主排水面32aの短辺には、短辺方向に沿って手前から奥へ向かって等間隔に、第一の支持脚31g1、第二の支持脚32g2、第三の支持脚32g3、第四の支持脚32g4が主排水面32aに対して直交する方向に延びるように形成されている。この長辺及び短辺に沿って形成される複数の支持脚32f,32gは、複数で側部排水面32b,32cを構成する。
【0084】
この四本の支持脚32g1,32g2,32g3,32g4は、短辺方向(奥行方向)の手前から奥へ向かって等間隔に形成されている。そして、第一の支持脚32g1、第二の支持脚32g2、第三の支持脚32g3、第四の支持脚32g4は、連結辺側でない側から連結辺側に向かうに従って主排水面32aから先端までの長さが長くなるように形成されている。
【0085】
ここで、第四の支持脚32g4は、主排水面32aから先端までの距離が、第三の支持脚32g3のその距離とほぼ同じ長さになっている。また、第四の支持脚32g4は、連結辺に形成された八個の湾曲部32hのうちの端の湾曲部32hから延びている。この第四の支持脚32g4は、先端を側面視すると円弧になっている。
【0086】
これに対し、第一の支持脚32g1、第二の支持脚32g2、第三の支持脚32g3は、短辺から延び、立体・角度自在型のドレンキャップ31を横引きドレン51に載置した際に揃って面接触するように先端の一部が切断されて平坦面を有する。
【0087】
キャップ構成部材32A(32B)は、以上に説明した主排水面32aと、長辺及び短辺に沿って形成される複数の支持脚32f,32gによって構成される側部排水面32b,32cと、によって横引きドレン51を立体的に覆う部分を構成する。
【0088】
一対のキャップ構成部材32A,32Bは、連結辺の湾曲部32hを、互い違いに組み合わせ、第四の支持脚32g4に形成された貫通孔37に、スプリングピン33(連結ピン)を配して連結辺に沿って互いに回動自在に連結される。このスプリングピン33が配される位置は、主排水面32aから離れた位置である。ここで、スプリングピン33は、弾性のある板を円筒状に丸め、径方向にばね作用を生じる。
【0089】
また、一対のキャップ構成部材32A,32Bは、主排水面32aから離れた湾曲部32hのスプリングピン33によって回動自在に連結される。また、第四の支持脚32g4は、連結された湾曲部32hから延びている。これによって、一対のキャップ構成部材2A,2Bは、第四の支持柱32g4,32g4が互いにスプリングピン33の回動軸方向に沿って重なっている。ここで、回動軸方向は、主排水面32aの長辺方向(図中の幅方向)と平行である。
【0090】
以上に説明したキャップ構成部材32A,32Bをスプリングピン33によって互いに揺動可能に組み合わせるとキャップ本体32となる。このキャップ本体32は、その内部空間に収まるように連結部材3が配される。具体的には、この連結部材3は、一端側がガイド溝32dの裏面側に雄ねじ13によって固定される。また、この連結部材3は、他端側に板ばね4が固定される。
【0091】
また、このキャップ本体32は、床と壁の隅部に配置された横引きドレン51の開口を排水可能に覆うために、横引きドレン51の水平部(床)と垂直部(壁)とのなす角度に調整でき、スプリングピン33によって、その状態が保持される。
【0092】
この際、回動軸方向に沿って重ねられた内方側の第四の支持脚32g4が、外方側の第四の支持脚32g4と第三の支持脚32g3の間に現れて、雨水を排水する開口が大きくならないようになっている(
図9A参照)。これによって、落ち葉等が横引きドレン51の開口に流れ込むのが防止される。
【0093】
以下、キャップ本体32のうち床側に配されるキャップ構成部材を床側キャップ構成部材32Aと称し、壁側に配されるキャップ構成部材を壁側キャップ構成部材32Bと称する。
【0094】
図9を参照しながら、立体・角度自在型のドレンキャップ31を、横引きドレン51に設置する様子を説明する。
図9(A)は、内部空間に手を入れられるように、キャップ本体を揺動させた様子を示す断面図である。
図9(B)は、立体・角度自在型のドレンキャップ31を横引きドレン51に設置した様子を示す断面図である。
【0095】
先ず、立体・角度自在型のドレンキャップ31を、横引きドレン51の開口から離して横引きドレン51の上に載置する。そして、壁側のキャップ構成部材2Bを図に示すように揺動させて、キャップ本体32の内部空間に、設置者の手を上から入れることができる状態とする。この状態は、スプリングピン33によって、
図9(A)に示す立体・角度自在型のドレンキャップ31の状態で保持される。
【0096】
次に、設置者は、上から内部空間に手を入れ、板ばね4の両端の間隔が横引きドレン51の開口径よりも小さくなるように撓ませる。そして、床側のキャップ構成部材2Aを横引きドレン51の床を滑らせながら、板ばね4の先端を横引きドレン51の開口に挿入させていく。
【0097】
そして、板ばね4の両先端が横引きドレン51の開口内に挿入されたら、壁側のキャップ構成部材2Bを揺動させて、設置を完了させる。この際、板ばね4は、理想固定状態になっていなくとも、排水部51aの内周面から応力を受けることによって、連結部材3の二つの揺動部3a,3bが揺動して理想固定状態に矯正される。
【0098】
<効果>
本発明のドレンキャップ1(21,31)によれば、キャップ本体2(22,32)と板ばね4を連結する連結部材3を有するとともに、その連結部材3が二つの揺動部3a,3b(屈曲するための可動部)を有している。これによって、二つの揺動部3a,3bを可動させることによって、設置者が工具を用いずに板ばね4の姿勢を調整できる。
【0099】
そして、板ばね4を横引きドレン51の排水部51aに挿入後は、板ばね4が排水部51aの内周面から応力を受けるとともに、二つの揺動部3a,3b(第一の可動連結部と第二の可動連結部)が揺動し、板ばね4が自動的に理想固定状態に矯正される。
【0100】
また、本発明のドレンキャップ1(21,31)を構成する連結部材3は、キャップ本体2(22,32)に対する取り付け部分となるキャップ取付部材6と、板ばね4を支持する板ばね支持部材8(固定具支持部材)と、キャップ取付部材6と板ばね支持部材8を連結するアーム部材7と、を備えている。そして、アーム部材7は、キャップ取付部材6をその一端(一端側)に揺動可能に連結するキャップ側の揺動部3aと、板ばね支持部材8をその他端に揺動可能に連結する板ばね側の揺動部3bと、を有している。これによって、キャップ側の揺動部3aが揺動することで板ばね4の高さ位置を調整でき、板ばね側の揺動部3bが揺動することで板ばね4の先端側の延びる方向を調整できる。
【0101】
そして、板ばね4を横引きドレン51の排水部51aに挿入後は、板ばね4が排水部51aの内周面から応力を受けるとともに、キャップ側の揺動部3aと板ばね側の揺動部3bが揺動し、板ばね4が自動的に理想固定状態に矯正される。
【0102】
また、本発明のドレンキャップ(21,31)は、キャップ本体22,32が内部空間を有するとともに、その内部空間に横引きドレン51の開口が配されることで、横引きドレン51の開口が立体的に覆われる。これによって、落ち葉等により覆われて閉塞され、雨水が横引きドレン51から排水できなくなるおそれが少なくなる。
【0103】
また、本発明のドレンキャップ21(31)は、連結部材3のキャップ側の揺動部3aと板ばね側の揺動部3bが、キャップ本体22(32)の内部空間内に位置し、内部空間内で揺動する。すなわち、連結部材3は、横引きドレン51の排水部51aで折れ曲がることなく、連結部材3が排水部51a内の雨水の流れに与える影響が少ない。
【0104】
また、本発明のドレンキャップ31は、キャップ本体32が、一対のキャップ構成部材32A,32Bを備えている。そして、この一対のキャップ構成部材32A,32Bは、設置する場所の床と壁とのなす角度に合うように揺動可能に連結され、一方のキャップ構成部材2Aを床に載置した状態で、他方のキャップ構成部材2Bを壁から離れるように揺動させると、板ばね4に対して作業が可能な開口がキャップ本体32に現れる。これによって、ドレンキャップ31を横引きドレン51の開口の近くに設置後、キャップ本体32の内部空間内に位置する板ばね4を撓めて横引きドレン51の開口に挿入することができる。
【0105】
また、本発明のドレンキャップ31は、キャップ本体32を構成する一対のキャップ構成部材32A,32Bが、同一金型で成形されている。これによって、本発明のドレンキャップ31は、コストを抑えることができる。
【0106】
また、本発明のドレンキャップ1(21,31)は、キャップ本体2(22,32)がガイド溝2b(22d,32d)を有し、連結部材3の一端側がガイド溝2b(22d,32d)に対して移動可能に取り付けられている。これによって、予めキャップ取付部材6の位置を変更することによって、開口の違いをより大きく許容することができる。
【0107】
なお、本発明のドレンキャップは、上述の実施例にのみ限定されない。例えば、連結部材3の可動部をピン接合で説明したがこの構成に限定されない。ここで、可動部とは、屈曲するための間節部分のことをいう。連結部材3の可動部は、例えば、ユニバーサルジョイント、ボールジョイントとする構成としても良い。
【0108】
また、連結部材3は、フレキシブルアームを採用し、その基端をキャップ本体の裏面に取り付け、先端に固定具である板ばね4を固定する構成としても良い。
【0109】
本発明のドレンキャップは、それぞれの実施例で説明した構成は、全て他の実施例に転用することができる他、その要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。