(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523710
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】スライディングノズル装置のスライド金枠と駆動装置との連結切り替え構造
(51)【国際特許分類】
B22D 41/38 20060101AFI20190527BHJP
B22D 11/10 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
B22D41/38
B22D11/10 340D
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-38868(P2015-38868)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-159317(P2016-159317A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今長谷 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】船渡 淳一
【審査官】
河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5283772(JP,B1)
【文献】
特開2014−208380(JP,A)
【文献】
特開昭53−053526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 41/38,41/34
B22D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置の駆動によりスライド金枠をスライドさせることで面圧を負荷又は解除するスライディングノズル装置におけるスライド金枠と駆動装置との連結切り替え構造であって、
スライド金枠に、駆動装置の駆動ロッドのロッドヘッドを連結するための連結部が駆動装置側に突設して設けられ、
この連結部に、ロッドヘッドがスライド金枠のスライド方向に移動可能かつ着脱可能に配置される連結空間を有し、
この連結空間へ挿脱可能にセパレーターが設けられ、
このセパレーターを連結空間へ挿入することで、当該連結空間はスライド金枠のスライド方向において、スライド金枠側の第1連結室と駆動装置側の第2連結室とに仕切られ、
第1連結室では、ロッドヘッドの背面がセパレーターのスライド金枠側の第1当接面に当接可能な第1連結状態となり、
第2連結室では、ロッドヘッドの前面がセパレーターの駆動装置側の第2当接面に当接可能な第2連結状態となり、
このセパレーターを連結空間から抜き出した状態でロッドヘッドをスライド金枠のスライド方向に移動させてから再びセパレーターを連結空間へ挿入することで、第1連結状態と第2連結状態とを切り替え可能であり、
かつ連結部には、セパレーターが連結空間に挿入されたときに当該セパレーターを嵌合する嵌合部を有する、スライディングノズル装置のスライド金枠と駆動装置との連結切り替え構造。
【請求項2】
連結部には連結空間内に挿入される駆動ロッドの長手方向中心軸に対して対称に2つの嵌合凹部を有し、セパレーターにはそれぞれの嵌合凹部に嵌合可能な2つの嵌合部を有する、請求項1に記載のスライディングノズル装置のスライド金枠と駆動装置との連結切り替え構造。
【請求項3】
連結部に、突起を連結空間側に有する防熱カバーを開閉可能に有し、この防熱カバーを閉じたときに突起が連結空間の第1連結室又は第2連結室に挿入される、請求項1又は請求項2に記載のスライディングノズル装置のスライド金枠と駆動装置との連結切り替え構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の流量制御を行うスライディングノズル装置のスライド金枠と駆動装置との連結切り替え構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スライディングノズル装置は、2枚又は3枚のノズル孔を有する耐火物製のプレートを高圧で挟んだ状態(面圧を負荷した状態)で、これらのうち1枚のプレートをスライド(摺動)することにより、ノズル孔の開度を変えて溶融金属の流量を制御する。このスライドするプレートはスライド金枠に保持されており、スライド金枠は、プレートを交換するため開閉可能に取り付けられている。
【0003】
プレートは数回の使用で寿命となるため、プレートの交換時あるいは損傷状態をチェックする場合にはスライド金枠を開く必要がある。この際、スライド金枠を開く前には面圧を解除し、スライド金枠を閉じた後には面圧を負荷しなければならない。
【0004】
スライディングノズル装置において面圧を負荷解除する方式の一つとして、スライド金枠のスライド(摺動)によって面圧を負荷解除する方式が知られている。すなわち、スライド金枠がスライドするときの駆動力を使ってバネを撓ませる方式である。この方式では、面圧を負荷解除するときのスライド金枠のスライド範囲(移動範囲)を、鋳造中のスライド範囲外で行うようになっている。このため、鋳造中と面圧負荷解除作業時とでストロークの異なる駆動装置を使用する場合があるが、この場合、2台の駆動装置を必要とするためにコストアップとなる問題がある。
【0005】
一方、1台の駆動装置を使用して、この駆動装置とスライド金枠との連結位置を切り替えることも提案されている。
【0006】
例えば特許文献1には、駆動装置とスライドケース(スライド金枠)とをガイドピースを介して連結し、駆動装置とガイドピースとの連結位置を、ガイドピースに設けた開口内で連結切り替え手段によって切り替える方式が開示されている。また、このガイドピースは、基枠に設けられたガイドレール及び当該ガイドレールを摺動して延伸するように配設された延伸ガイドにより直線移動するように構成されている。
【0007】
より具体的には、特許文献1の第2形態において連結切り替え手段20は、
図16に示されるように、全体形状が平面でみて四角状の角材よりなると共に、半円柱状の凹部20aと取手20bが設けられている。また、凹部20aの両端にこの凹部20aよりも径大のざぐりからなる第1、第2ざぐり部20aA,20aBが形成されている。各ざぐり部20aA,20aB内には、後述するロッド7A先端の張出し部7eが係合するように構成されている。
【0008】
この連結切り替え手段20は、
図17において第1連結位置では駆動装置7の連結部材7aと開口25の第1位置決め面aとの間に配設され、また、図示していないが、第2連結位置では、連結切り替え手段20は、連結部材7aの張出し部7eと第2位置決め面bとの間に配設される。また、このような連結切り替え手段20の位置変更は、
図18に示すように、連結切り替え手段20を矢印A方向及びD方向に上下させるとともにロッド7Aを矢印B方向又はD方向に移動させることにより行うことが記載されている。
【0009】
しかし、特許文献1に開示された方式では、ロッド7Aの進退による駆動力が、連結切り替え手段20及びガイドピース24を介してスライドケース4に伝達されることになり、しかも、連結切り替え手段20とガイドピース24は単に当接するだけであるため、ロッド7Aの進退によるスライドケース4への駆動力の伝達の確実性及び円滑性に問題がある。
【0010】
さらに、連結切り替え手段20をロッド7Aの延長手段として、空間内でロッド7Aのヘッドの前面と空間の内壁面、ロッド7Aのヘッドの後面と空間との間に入れるスペーサーとしているため、この連結切り替え手段20は面圧負荷解除時と使用時の2ヶ所の位置(第1連結位置と第2連結位置)に入れなければならず作業が煩雑となり連結切り替え手段の入れる位置を間違える可能性がある。さらに連結切り替え手段20は、第1連結位置と第2連結位置とでその配設位置が異なるため、連結切り替え手段20をガイドピースへ保持することができず取り外す必要があるため、作業が煩雑でしかも連結切り替え手段20を紛失しやすい問題もある。
【0011】
さらに、特許文献1ではロッド7Aとスライドケース4とをガイドピース24を介して連結しているが、このガイドピース24は、基枠に設けられたガイドレール及び当該ガイドレールを摺動して延伸するように配設された延伸ガイドにより直線移動するように構成されているため、ガイドピース24を介した連結構造が複雑かつ大型となっている。加えて、ガイドピース24にはスライドケース4との着脱部を有するため、ガイドピースがより大型になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5283772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、スライディングノズル装置のスライド金枠と駆動装置との連結位置を切り替えるための、単純かつ小型で、しかも駆動装置の駆動力を確実かつ円滑にスライド金枠に伝達可能な切り替え構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一観点によれば、次の連結切り替え構造が提供される。
「駆動装置の駆動によりスライド金枠をスライドさせることで面圧を負荷又は解除するスライディングノズル装置におけるスライド金枠と駆動装置との連結切り替え構造であって、
スライド金枠に、駆動装置の駆動ロッドのロッドヘッドを連結するための連結部が駆動装置側に突設して設けられ、
この連結部に、ロッドヘッドがスライド金枠のスライド方向に移動可能かつ着脱可能に配置される連結空間を有し、
この連結空間へ挿脱可能にセパレーターが設けられ、
このセパレーターを連結空間へ挿入することで、当該連結空間はスライド金枠のスライド方向に
おいて、スライド金枠側の第1連結室と
駆動装置側の第2連結室とに仕切られ、
第1連結室では、ロッドヘッドの背面がセパレーターのスライド金枠側の第1当接面に当接可能な第1連結状態となり、
第2連結室では、ロッドヘッドの前面がセパレーターの駆動装置側の第2当接面に当接可能な第2連結状態となり、
このセパレーターを連結空間から抜き出した状態でロッドヘッドをスライド金枠のスライド方向に移動させてから再びセパレーターを連結空間へ挿入することで、第1連結状態と第2連結状態とを切り替え可能であり、
かつ連結部には、セパレーターが連結空間に挿入されたときに当該セパレーターを嵌合する嵌合部を有する、スライディングノズル装置のスライド金枠と駆動装置との連結切り替え構造。」
【発明の効果】
【0015】
本発明の連結切り替え構造では、連結空間へセパレーターを挿入する際には連結部と嵌合関係になっているため、ロッドヘッドの挿入が可能な第1連結室と第2連結室を常に形成することになり、その切り替え構造が単純であり、装置を小型にすることができる。また、セパレーターを連結部あるいはスライド金枠に保持することができるので、作業がより単純で、セパレーターを紛失する心配も無い。
【0016】
さらに、セパレーターは連結部と嵌合関係にあるため、駆動装置の駆動力を伝達する位置を複数の任意のポイントにできるため、駆動装置の駆動力をバランス良く配分してスライド金枠の連結部に伝達することができる。したがって、駆動装置の駆動力を確実かつ円滑にスライド金枠に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施例(第1の実施例)に係るスライディングノズル装置のスライド金枠と駆動装置との連結切り替え構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1の連結切り替え構造を適用するスライディングノズル装置の斜視図である。
【
図4】
図1の連結切り替え構造において、ロッドヘッドが基端フレームに当接しかつ駆動装置が前進限になった状態を示す。
【
図5】
図1の連結切り替え構造において、プレートのチェック又は交換が終わった後、スライド金枠を閉じしかも面圧が解除された状態を示す。
【
図6】
図1の連結切り替え構造において、ロッドヘッドが連結フレームに当接した状態を示す。
【
図7】
図1の連結切り替え構造において、セパレーターが挿入・固定され、ロッドヘッドが第2連結室に位置した状態(第2連結状態)を示す。
【
図8】
図1の連結切り替え構造において、ロッドヘッドが第2連結室に位置し、防熱カバーを閉じた状態を示す。
【
図9】
図1の連結切り替え構造において、ロッドヘッドが第2連結室に位置し防熱カバーを開いた状態(第2連結状態)を示す。
【
図10】
図1の連結切り替え構造において、セパレーターのロックを解除後、嵌合部より引かれロッドヘッドが連結フレームに当接した状態でセパレーターを引抜いた状態を示す。
【
図11】
図1の連結切り替え構造において、ロッドヘッドがセパレーターをかわし基端フレームに当接した状態でセパレーターを引抜いた状態示す。
【
図12】
図1の連結切り替え構造において、セパレーターが挿入されロッドヘッドが第1連結室に位置した状態(第1連結状態)を示す。
【
図13】
図1の連結切り替え構造において、ロッドヘッドが第1連結室に位置しかつ駆動装置が後退限になった状態(第1連結状態)を示す。
【
図14A】本発明の他の実施例(第2の実施例)に係る連結切り替え構造の要部を示す斜視図で、セパレーターを開いた状態を示す。
【
図14B】本発明の他の実施例(第2の実施例)に係る連結切り替え構造の要部を示す斜視図で、セパレーターを閉じた状態を示す。
【
図16】従来の連結切り替え構造における連結切り替え手段の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(第1の実施例)
図1は、本発明の一実施例に係るスライディングノズル装置のスライド金枠と駆動装置との連結切り替え構造を示す斜視図、
図2は、
図1の連結切り替え構造を適用するスライディングノズル装置の斜視図である。なお、先に説明したプレートのチェックや交換は、スライディングノズル装置のスライド金枠1を鉛直状態に立てた状態で行うので、
図1及び
図2でもスライド金枠1を鉛直状態に立てた状態で示している。
【0020】
図1及び
図2に示すように本発明の一実施例に係るスライディングノズル装置のスライド金枠と駆動装置との連結切り替え構造は、スライド金枠1に設けた連結部3と、連結部3の連結空間6内にスライド金枠1のスライド方向に進退可能に配置された駆動装置2の駆動ロッド21と、連結空間6内に挿入されるセパレーター4とを含む。駆動装置2は、スライディングノズル装置の固定金枠5に保持されている。
【0021】
連結部3は、スライド金枠1から駆動装置2側に延びるように突設され、スライド金枠1によって保持されている。具体的には連結部3は、スライド金枠1の駆動装置2側の側面に接続される基端フレーム31と、この基端フレーム31からスライド金枠1のスライド方向Xに平行に延びる2つの平行フレーム32,33と、この2つの平行フレーム32,33どうしを繋ぐ連結フレーム34とで構成され、その内側に貫通孔状の連結空間6を有する。すなわち、連結空間6は、基端フレーム31と2つの平行フレーム32,33と連結フレーム34とで囲まれ、平面視が矩形をしている。なお、基端フレーム31は、スライド金枠1と共有することもできる。
【0022】
連結フレーム34の駆動装置2側でしかも固定金枠5側には、駆動装置2の駆動ロッド21がスライド方向Xに移動可能に嵌入するロッド用溝36が設けられている。このロッド用溝36を介して駆動ロッド21は連結部3に着脱可能である。
【0023】
また、連結部3は、2つの平行フレーム32,33の連結空間6側に嵌合凹部35を有している。この嵌合凹部35は、連結空間6内に挿入される駆動ロッド21の長手方向中心軸に対して対称になるように配置されている。
【0024】
ここで、連結部3は、上述のとおりスライド金枠1によって保持されているため、スライド金枠1のスライド過程において固定金枠5に接触することはないし、ガイドされることもない。
【0025】
図3は、セパレーターと連結部の説明図であり、説明のために2つを分離した状態で記載している。セパレーター4は、その両側がそれぞれ嵌合部41となっており、これらの嵌合部41が連結部3の平行フレーム32,33のそれぞれの嵌合凹部35へ嵌合し、スライド金枠のスライド方向Xに対して垂直方向に移動可能なように連結部3に保持されている。また、セパレーター4の両側の嵌合部41のそれぞれの側面に設けた溝42に、平行フレーム32,33の嵌合凹部35のそれぞれの内面に設けた突起38が嵌合することでセパレーター4が脱落しないように保持されている。またセパレーター4には駆動ロッド側の面に開口部を持つようにU字型の溝46が設けられており、セパレーター4はこの溝46に駆動ロッド21が嵌入するため、連結空間6内へ挿入することができる。セパレーター4のスライド金枠のスライド方向Xと直角な2つの第1当接面43と第2当接面44はそれぞれ駆動ロッド21のロッドヘッド22の背面と前面にそれぞれ当接可能となっている。また、セパレーター4の駆動ロッド21とは反対側の背面にはストッパー45を回動可能に有する。ストッパー45は、回動することでその両端が
図7に示すように連結部3(スライド金枠1)に設けた係合部37に係合することができる。
【0026】
以上の構成において、連結空間6は、セパレーター4によって第1連結室61と第2連結室62とに仕切られる(
図7)。そして、面圧の負荷解除を行う場合にはロッドヘッド22が第1連結室61に位置する第1連結状態とし、鋳造中はロッドヘッド22が第2連結室62に位置する第2連結状態とする。
【0027】
すなわち、ロッドヘッド22が第1連結室61に位置して連結されている第1連結状態は、面圧の負荷解除を行う状態であり、ロッドヘッド22がセパレーター4の第1当接面43又は基端フレーム31(スライド金枠1)と当接して駆動装置の駆動力を伝達してスライド金枠1をスライドする。一方、ロッドヘッド22が第2連結室62に位置して連結されている第2連結状態は、常に面圧負荷の状態でスライド金枠1をスライドして鋳造に使用する状態であり、ロッドヘッド22がセパレーター4の第2当接面44又は連結フレーム34に当接して駆動装置の駆動力を伝達しスライド金枠1をスライドする。
【0028】
なお、第2連結室62において、ロッドヘッド22とのスライド方向Xの隙間は、連結位置を切り替えない従来の連結構造と同じ程度の隙間で十分である。一方、第1連結室61は、面圧負荷と面圧解除のためにスライド金枠をスライドさせるためだけにロッドヘッド22に連結するため、連結精度は要求されない。したがって、連結位置の切り替え作業に支障を与えないように十分な隙間を確保することができる。
【0029】
セパレーター4は、両側のそれぞれの嵌合部41が連結部3の平行フレーム32,33のそれぞれの嵌合凹部35へ嵌合することで連結空間6にロッドヘッド22が嵌合可能な2つの連結室(第1連結室61及び第2連結室62)を形成することができる。したがって、セパレーター4の挿入位置が常に一定となるため、簡便な作業となりしかも作業者による挿入位置の間違いを防止することができる。さらに、本実施例のようにセパレーター4を連結部3に保持することができるので、セパレーター4を連結部3から離す煩雑さやセパレーター4を紛失することが無い。なお、セパレーター4は、本実施例以外の手段でも連結部に保持することが可能であり、後に第2の実施例として説明するように、例えばヒンジによって開閉式に保持しても良い。
【0030】
さらに、連結部3には、
図4に示すような防熱カバー5を設けることができる。防熱カバー5は一方の平行フレーム32の側面にヒンジ52によって回動可能に設けられた板状物で、連結空間6側に1本の突起51と嵌合溝53を有する。この突起51は、防熱カバー5を閉じたときに連結空間6のうち第1連結室61側に挿入される。すなわち、ロッドヘッド22が第1連結室61に位置して連結されている第1連結状態では、突起51がロッドヘッド22に当たるため、防熱カバー5を閉じることはできない。さらに、セパレーター4のストッパー45が連結部3の係合部37に止まっていないと、ストッパー45の取っ手45aが嵌合溝53に嵌合できないため防熱カバー5を閉じることができず、ストッパー45の止め忘れを防止することができる。この防熱カバー5は、他方の平行フレーム33に設けたブラケット39に、貫通孔を有するガイド54の孔を合わせてピン55を挿入することでロックすることができる。
【0031】
次に面圧負荷解除の操作手順を説明する。
【0032】
まず、プレートのチェック又は交換が終わった後、スライド金枠を閉じしかも面圧が解除された状態の
図5の状態から面圧を負荷する操作手順について説明する。
(1)
図5の状態は、スライド金枠1を閉じた直後で駆動装置2は後退限の状態である。この状態で駆動装置2を前進限にしスライド金枠1を移動して面圧を負荷する。移動後にセパレーター4を引いて
図4の状態にする。
(2)
図4において駆動装置2を後退限にすると、ロッドヘッド22の背面は連結フレーム34に当接するかあるいは近接する、
図6の状態となる。このとき、セパレーター4は手前に引いているのでロッドヘッド22はセパレーター4に接触することなく移動することができる。
(3)
図6において、セパレーター4を駆動ロッド21側へ押し込んでストッパー45を90度右側へ回転して係合部37に係合してロッドヘッド22を第2連結室62に位置させ
図7の状態(第2連結状態)とする。
(4)防熱カバー5を閉じて
図8の状態になる。
【0033】
次に、
図8の面圧を負荷した状態から面圧を解除する手順について説明する。
(1)
図8の状態から防熱カバー5を開いて
図9の状態にする。
(2)
図9において、ストッパー45を左側に90度回転した後、セパレーター4を引いて
図10の状態とする。
(3)駆動装置2を前進限にしてロッドヘッド22を基端フレーム31側に移動し、
図11の状態とする。
(3)
図11においてセパレーター4を押し込んで
図12の状態(第1連結状態)とする。このとき、ストッパー45でロックする必要は無い。
(4)駆動装置2を後退限とし面圧を解除する(
図13)。面圧を解除した後は、スライド金枠1を開くことができる。
【0034】
このように、
図12の第1連結状態と
図7の第2連結状態との切り替えは、セパレーター4の連結空間6内でのスライドとロッドヘッド22の移動によって簡単に実現できる。このとき、セパレーター4の連結空間6への挿入位置は常に同じ位置であり従来のように挿入位置が変わることがない。このため、作業が単純であり挿入位置を間違える問題も無い。
【0035】
また、セパレーター4は、両端の嵌合部41と平行フレーム32,33の嵌合凹部35とが嵌合することで、当該セパレーター4からスライド金枠1へ駆動装置の駆動力を伝達する構造になっている。このため、駆動力を伝達する位置を複数の任意のポイントにできるため、駆動装置の駆動力をバランス良く配分してスライド金枠1の連結部3に伝達することができる。したがって、駆動装置の駆動力を確実かつ円滑にスライド金枠に伝達することができる。
【0036】
さらに本発明では、連結部3がスライド金枠1から突設されているため、上述したガイドピースを連結部とする特許文献1では必要であったガイドレール及び当該ガイドレールを摺動して延伸するように配設された延伸ガイドが不要となる。さらに、ロッドヘット22がスライド金枠1から突設した連結部3に着脱可能であるため、特許文献1のようなスライド金枠との着脱機構も不要となる。したがって、連結部3の構造が単純となり、小型にすることができ、さらに駆動装置2とスライド金枠1との距離を短くできるためスライディングノズル装置も小型にすることができる。
【0037】
また、本実施例では、駆動装置2がスライド金枠1よりも下に位置するため、スライド金枠1がそのスライド範囲の中で最も下に位置するときに面圧が解除されることになる。その結果、スライド金枠1を開いて駆動装置2とスライド金枠1との連結が外れても、重力によってスライド金枠1が下方へスライドすることがなく安全な構造となる。
【0038】
ただし、本発明は、スライド金枠1を開くときに駆動装置がスライド金枠1よりも上に位置する場合であっても、適用可能である。
【0039】
(第2の実施例)
図14A及び
図14Bは、本発明の他の実施例(第2の実施例)に係る連結切り替え構造の要部を示す斜視図で、
図14Aはセパレーターを開いた状態、
図14Bはセパレーターを閉じた状態を示す。
図15は、
図14AのA−A断面を示す。
【0040】
本実施例は、先の実施例(第1の実施例)とはセパレーターの構成が異なる。他の構成は先の実施例と実質的に同じであるので、
図14A、
図14B及び
図15において先の実施例の構成に対応する構成には同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0041】
本実施例では、一方の平行フレーム33の側面にセパレーター7が回動可能に設けられている。このセパレーター7は、
図15に示すように、カウンターウエイト71と、カウンターウエイト71から延びる開閉板72と、開閉板72に設けられた挿入部73を有し、ヒンジ76によって連結部3の一方の平行フレーム33の側面に回動可能に連結されている。セパレーター7の挿入部73は、断面がU字型の溝74を有し、その両側面に嵌合凸部75が突設されている。挿入部73は連絡空間6に挿入した際には、溝74が駆動ロッド21に嵌合し、それぞれの嵌合凸部75が、それぞれの平行フレーム32,33に設けた嵌合凹部35に嵌合する。さらに、挿入部73のスライド方向X側の両端面は、ロッドヘッド22と当接可能な面である第1端面77と第2端面78とを有している(
図14A参照)。
【0042】
さらに、連結部3には防熱カバー8を設けることができる。防熱カバー8は他方の平行フレーム32の側面にヒンジ82によって回動可能に設けられた板状物で、連絡空間側に2本の突起81を有する。この突起81は、防熱カバー8を閉じたときに連絡空間3のうち第1連絡室61側に挿入される。すなわち、ロッドヘッド22が第1連結室61に位置して連結されている第1連結状態では、突起がロッドヘッド22に当たるから、防熱カバー8を閉じることはできない。
【符号の説明】
【0043】
1 スライド金枠
2 駆動装置
21 駆動ロッド
22 ロッドヘッド
3 連結部
31 基端フレーム
32,33 平行フレーム
34 連結フレーム
35 嵌合凹部(嵌合部)
36 ロッド用溝
37 係合部
38 突起
39 ブラケット
4 セパレーター
41 嵌合部
42 溝
43 第1当接面
44 第2当接面
45 ストッパー
45a 取っ手
46 溝
5 防熱カバー
51 突起
52 ヒンジ
53 嵌合溝
54 ガイド
55 ピン
6 連結空間
61 第1連結室
62 第2連結室
7 セパレーター
71 カウンターウエイト
72 開閉板
73 挿入部
74 溝
75 嵌合凸部
76 ヒンジ
77 第1端面
78 第2端面
8 防熱カバー
81 突起
82 ヒンジ