特許第6523715号(P6523715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6523715粘着シートおよびこれを備える電気電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523715
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】粘着シートおよびこれを備える電気電子機器
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20190527BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20190527BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J201/00
   C09J11/06
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-43818(P2015-43818)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-160417(P2016-160417A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】金澤 雅夫
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103935098(CN,A)
【文献】 特開2014−105326(JP,A)
【文献】 特開2014−196377(JP,A)
【文献】 特開2012−014043(JP,A)
【文献】 特開2009−227851(JP,A)
【文献】 特開平08−001848(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104403612(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤と、青色可視光吸収剤と、紫外線吸収剤を含み、
450nmの透過率は、65.0%以上90.0%以下であり、
380nm〜495nmの平均透過率は、55.0%以上85.0%以下であり、
式(1):
0.40≦T1/T2≦0.70 (1)
(式中、T1は380nm〜400nmの平均透過率、T2は400nm〜420nmの平均透過率を示す)
を満たす、粘着シートであって、前記青色可視光吸収剤が1分子内に5−ピラゾロン骨格とフェニル骨格を有する化合物を含み、前記青色可視光吸収剤の含有量が0.001質量%以上0.35質量%以下であり、前記紫外線吸収剤がトリアジン系の紫外線吸収剤を含む、粘着シート
【請求項2】
式(2):
0.90≦T2/T3≦0.98 (2)
および式(3):
0.92≦T3/T4≦0.99 (3)
(各式中、T2は400nm〜420nmの平均透過率、T3は420nm〜440nmの平均透過率、T4は440nm〜495nmの平均透過率を示す)
を満たす、請求項1記載の粘着シート。
【請求項3】
励起子によって発光する電子部品を具する構成部材を製品の一部として組み込んだ電気電子機器に貼付するための、請求項1または2記載の粘着シート。
【請求項4】
請求項1〜いずれか記載の粘着シートを備える、電気電子機器。
【請求項5】
ファブレット端末またはウェアラブル端末である、請求項記載の電気電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートおよびこれを備える電気電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、スマートフォン、ファブレット端末、タブレット端末、カーナビ、テレビ、パソコン、カメラ、電子辞書、照明機器などの電気電子機器類の普及により、人工的な光源に接する機会が増加している。これらの光源から発せられる可視光線のうち、ブルーライトと呼ばれる380nm〜495nmの波長の光(以下、青色可視光ともいう。)は、人間の目の網膜への刺激性が高いとされており、眼精疲労やドライアイなど、目に悪影響を与えると言われている。
【0003】
青色可視光を低減するものとしては種々提案されており、例えば、特許文献1には、粘着性樹脂と380〜500ナノメートルに極大吸収波長を有する青色可視光吸収剤を含有することを特徴とする粘着剤が開示されており、前記粘着剤を貼り付けすることで、青色可視光放射対象物を目視できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−105326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示される粘着剤を透過した光は、青色可視光が吸収されるものの、電気電子機器などの光源の色に対する色再現性が低く、人の目で見る色調に違和感を生じさせることがある。
【0006】
本発明の課題は、青色可視光を吸収しつつも、電気電子機器などの光源の色に対する色再現性の高い粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
[1]粘着剤と、青色可視光吸収剤と、紫外線吸収剤を含み、
450nmの透過率は、65.0%以上90.0%以下であり、
380nm〜495nmの平均透過率は、55.0%以上85.0%以下であり、
式(1):
0.40≦T1/T2≦0.70 (1)
(式中、T1は380nm〜400nmの平均透過率、T2は400nm〜420nmの平均透過率を示す)
を満たす、粘着シート、および
[2][1]記載の粘着シートを備える、電気電子機器に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、青色可視光を吸収しつつも、電気電子機器などの光源の色に対する色再現性の高い粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1と比較例1の透過率のスペクトルである。
図2】実施例1と比較例2の透過率のスペクトルである。
図3】実施例1と比較例3の透過率のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
従来の粘着シートは、青色可視光領域に極大吸収波長を有するなど、青色可視光のみを極端に吸収するため、色再現性が低くなっている。本発明者らは、かかる観点に着目し、可視光全体に対して青色可視光のみが極端な吸収とならないように、粘着シートの透過率を所定範囲内にすることで、前記課題を解決することができることを見出し、鋭意研究を重ねて、本発明を完成するに至った。以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
粘着シートは、粘着剤と、青色可視光吸収剤と、紫外線吸収剤を含む。
【0012】
粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系などの粘着剤が挙げられ、粘着剤そのものの耐候性や電気電子機器などの光源に対する安定性、青色可視光吸収剤並びに紫外線吸収剤を混合する際の相溶性の観点から、アクリル系の粘着剤が好ましい。
【0013】
アクリル系の粘着剤としては、特に制限されないが、式(A):
CH=CHCOOR (A)
(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
を構成モノマーとして含むアクリル系共重合体などが挙げられる。
【0014】
式(A)で表される構成モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0015】
アクリル系共重合体中の式(A)で表される構成モノマーの含有量は、柔軟性および被着体に貼り合せる際の初期密着性の観点から、60〜98質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましい。
【0016】
式(A)以外の構成モノマーとしては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、アクリル酸などが挙げられる。
【0017】
アクリル系共重合体の重量平均分子量は、耐候性や共重合体の製造効率の観点から、50万〜150万好ましく、80万〜130万がより好ましい。ここで、アクリル系共重合体の重量平均分子量は、GPC法(ゲルパーミテーションクロマトグラフィー)により測定され、ポリスチレン換算により算出されるものである。
【0018】
粘着シート中の粘着剤の含有量は、特に制限されないが、粘着性維持の観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、また、特定波長吸収性色素を混合する観点から、99.99質量%以下が好ましく、99.9質量%以下がより好ましく、99.8質量%以下がさらに好ましい(ただし、
添加剤として金属などの無機物を含む場合を除く)。なお、二種以上の粘着剤を含有する場合における、前記粘着剤の含有量は、粘着剤の合計量を指す。
【0019】
青色可視光吸収剤としては、アゾ系、メチン系、ニトロ系などの青色可視光吸収剤が挙げられ、安定性の観点から、メチン系の青色可視光吸収剤が好ましい。
【0020】
メチン系の青色可視光吸収剤としては、1分子内に5−ピラゾロン骨格とフェニル骨格を有するメチン系化合物が、青色可視光吸収性、色再現性、および耐候性の観点でより好ましい。
【0021】
1分子内に5−ピラゾロン骨格とフェニル骨格を有するメチン系化合物としては、式(B)や式(C)で表される化合物などが好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を示す。)
【0024】
【化2】
【0025】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立してフェニル基を示し、このフェニル基は、メチル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rは水素原子を示す。)
【0026】
1分子内に5−ピラゾロン骨格とフェニル骨格を有する具体的な化合物としては、4−(4,5−ジヒドロ−1−フェニル−3−メチル−5−オキソ−1H−ピラゾール−4−イリデンメチル)−1−フェニル−3−メチル−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、2−フェニル−4−(2,4−ジメチルフェニルアゾ)−5−メチル−2H−ピラゾール−3(4H)−オンなどが挙げられる。
【0027】
粘着シート中の青色可視光吸収剤の含有量は、特に制限されないが、特定波長の光を吸収する性能の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.010質量%以上がさらに好ましく、また、変色するのを防止する観点、加えて析出を防止する観点から、0.35質量%以下が好ましく、0.30質量%以下がより好ましく、0.25質量%以下がさらに好ましい。なお、二種以上の青色可視光吸収剤を含有する場合における、前記青色可視光吸収剤の含有量は、青色可視光吸収剤の合計量を指す。
【0028】
紫外線吸収剤としては、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などの紫外線吸収剤が挙げられ、耐熱性、耐候性、および環境負荷の観点から、トリアジン系の紫外線吸収剤が好ましい。
【0029】
トリアジン系の紫外線吸収剤は、式(D)で表される化合物などが好ましい。
【0030】
【化3】
【0031】
(式中、Rは炭素原子数1〜12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数3〜8のアルケニル基、炭素原子数6〜18のアリール基、炭素原子数7〜18のアルキルアリール基または炭素原子数7〜18のアリールアルキル基を示す。但し、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12のアルキル基または炭素原子数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよく、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基またはイミノ基で中断されていてもよい。また、前記の置換および中断は組み合わされてもよい。R10は水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数3〜8のアルケニル基を示し、R11は水素原子またはヒドロキシ基を示し、R12は水素原子またはO−Rを示す。)
前記でいう中断とは、直鎖中に当該官能基を含むもののことをさす。
【0032】
トリアジン系の紫外線吸収剤としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(アルキルオキシ;オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどの長鎖アルキルオキシ基)を有する紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0033】
トリアジン系の紫外線吸収剤の市販品としては、例えば「チヌビン1577」、「チヌビン460」、「チヌビン477」(チバスペシシャリティーケミカルズ社製)などが挙げられる。
【0034】
トリアジン系の紫外線吸収剤は25℃において固体であっても液状であってもよいが、使用時に析出の可能性を低くする観点から、25℃において液状であることが好ましい。
その中でも、相溶性が高く吸収特性が優れている点から、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(アルキルオキシ;オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどの長鎖アルキルオキシ基)を有するヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤がより好ましい。
【0035】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0036】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0037】
粘着シート中の紫外線吸収剤の含有量は、特に制限されないが、十分に紫外線を吸収する観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、また、粘着物性維持の観点から、7.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。なお、二種以上の紫外線吸収剤を含有する場合における、前記紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤の合計量を指す。
【0038】
さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、粘着シートは、任意に、他の添加剤を含んでいても良い。
【0039】
他の添加剤としては、軟化剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、無機または有機の充填剤、金属粉、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤に加え、本願に記載されている以外の染料、顔料などの任意の添加剤が挙げられる。
【0040】
粘着シート中の他の添加剤の含有量は、特に制限されないが、0.01〜10質量%が好ましい。
【0041】
粘着シートの450nmの透過率は、色再現性の観点から、65.0%以上であり、 67.0%以上が好ましく、70.0%以上がより好ましく、また、青色可視光吸収の観点から90.0%以下であり、88.0%以下が好ましく、85.0%以下がより好ましい。
【0042】
粘着シートの380nm〜495nmの平均透過率は、色再現性の観点から、55.0%以上であり、58.0%以上が好ましく、60.0%以上がより好ましく、また、青色可視光吸収の観点から85.0%以下であり、82.0%以下が好ましく、80.0%以下がより好ましい。
【0043】
粘着シートの380nm〜780nmの平均透過率は、色再現性の観点から、70.0%以上が好ましく、75.0%以上がより好ましく、80.0%以上がさらに好ましく、また、青色可視光吸収の観点から、90.0%以下が好ましい。
【0044】
粘着シートは、色再現性の観点から、式(1):
0.40≦T1/T2≦0.70 (1)
(式中、T1は380nm〜400nmの平均透過率、T2は400nm〜420nmの平均透過率を示す)
を満たす。
【0045】
粘着シートは、色再現性の観点から、式(2):
0.90≦T2/T3≦0.98 (2)
を満たし、また、
式(3):
0.92≦T3/T4≦0.99 (3)
(各式中、T2は400nm〜420nmの平均透過率、T3は420nm〜440nmの平均透過率、T4は440nm〜495nmの平均透過率を示す)
を満たすことが好ましい。
【0046】
本明細書において、透過率は、紫外可視近赤外分光光度計により測定されるものである。
【0047】
本明細書において、平均透過率は、該波長範囲における光の透過率の積分値を、波長の差で徐することで算出されるものである。
【0048】
粘着シートの粘着力は、特に制限されないが、例えば、5〜50N/25mmとすることができる。粘着力の測定は、JIS Z 0237に準拠する。
【0049】
粘着シートの形状、サイズ、厚さは、特に制限されないが、例えば、0.1インチ以上100インチ以下の電気電子機器用ディスプレイに適合する形状、サイズや、厚さ5〜200μmとすることができる。
【0050】
粘着シートは、携帯電話、スマートフォン、ファブレット端末、タブレット端末、その他のウェアラブル端末、カーナビ、テレビ、パソコン、カメラ、電子辞書、照明機器などの電気電子機器類に使用することができ、特に、LED、有機EL、レーザー光源などの、励起子によって発光する電子部品を具する構成部材を製品の一部として組み込んだ電気電子機器に貼付するための部材として使用され得る。
【0051】
粘着シートが電気電子機器の部材として用いられる具体的な態様として、例えば、ガラス、ポリカーボネート、アクリルのようなパネル状の形態のものや、ITOフィルムや有機導電材が付与されるなどした導電フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、ARフィルムなどの光学フィルム、ハードコートフィルムなどの機能性フィルムなどに貼付し、使用される。
【0052】
上記に開示される本実施形態の粘着シートは、青色可視光を吸収しつつも、電気電子機器などの光源の色に対する色再現性が高いため、人の目で見る色調に違和感が少ない。
【0053】
本実施形態の粘着シートの作製方法は、特に限定されないが、粘着剤溶液を、グラビア印刷法、スプレー法、ディッピング法、ロールコータ法、ダイコーター法などの公知の方法で剥離シートにし、乾燥後、剥離力の異なる剥離シートと貼り合わせることによって、芯材なしの両面粘着シートである粘着シートを作製することができる。
【0054】
剥離シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルム、ゴムシート、発泡シート、金属箔、紙、不織布またはこれらのラミネート体などからなる適当な薄葉体を用いることができる。剥離シートの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理が施されていてもよい。剥離シートの剥離性は、剥離処理に用いる薬剤の種類、および塗工量のうち少なくとも一方のパラメータを調節することにより制御することができる。
【実施例】
【0055】
<粘着シートの作製>
実施例1〜3
アクリル酸メチル(MA)10質量部、アクリル酸ブチル(BA)3質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)75質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)2質量部、およびアクリルアミド(Am)10質量部からなる構成モノマーを、重量平均分子量が120万となるよう重合して、アクリル系共重合体(粘着剤)を得た。この粘着剤100質量部に対し、表1に示す量のトリアジン系の紫外線吸収剤(商品名 チヌビン477/BASF社製)およびメチン系の青色可視光吸収剤(商品名 FS1002/有本化学工業株式会社製)を添加し、さらに架橋剤(商品名 コロネートHX/東ソー株式会社製)を0.1質量部を添加して得られた混合物をPET基材からなる剥離シート上に塗工した。この塗工は、乾燥後の塗工厚が25μmとなるように行った。その後、90℃で5分間乾燥し、更に60℃環境下で3日間エージングを行い、剥離シートを剥離して、粘着シートを得た。
【0056】
比較例1〜2
前記実施例1に記載の処方の内、紫外線吸収剤および青色可視光吸収剤の添加量を、表1に示す量とし、同様の方法で粘着シートを得た。
【0057】
比較例3
比較例1の青色可視光吸収剤の代わりに黒色色素(商品名 Black A―N/日本化薬株式会社製)を0.3質量部添加した以外は、同様の方法で粘着シートを得た。
【0058】
<青色可視光吸収性>
実施例および比較例で作製された粘着シートについて、青色可視光の中でも特に刺激性の高い450nmの透過率を測定し、以下の基準により、青色可視光吸収性を評価した。結果を表1に示す。
◎:450nmの透過率が70未満
○:450nmの透過率が70〜90%
×:450nmの透過率が90%を超える
【0059】
表1の透過率の測定には、紫外可視近赤外分光光度計(型番:UV−3150 島津製作所株式会社製)を使用し、粘着シートの一方面に支持体として1mm厚のソーダライムガラスを貼り合わせ、さらに他方面にポリエステルフィルムを貼り合せて作製したサンプルの光線透過率を測定した。
【0060】
<色再現性>
以下の条件において、白色が表示されたPCモニタ画面の前面に、実施例または比較例で作製された粘着シートが貼付された状態で、白色に見えるか否かについて10人のパネラーにより官能試験を行い、以下の基準により、電気電子機器の光源の光に対する色再現性を評価した。結果を表1に示す。なお、表中の括弧内に記載された色調は、粘着シートの色調である。
PCモニタ:SME1720NR 解像度1280×1024 色彩度32bit
全色:明度=0、コントラスト=50、ガンマ=1.0、色合い=0、彩度=0
赤:明度=0、コントラスト=50、ガンマ=1.0
緑:明度=0、コントラスト=50、ガンマ=1.0
青:明度=0、コントラスト=50、ガンマ=1.0
◎:白色または色は付いているが白色の領域と回答が9人以上
○:白色または色は付いているが白色の領域と回答が6〜8人
×:白色または色は付いているが白色の領域と回答が5人以下
【0061】
<耐候性>
前記の透過率の測定に使用されたサンプルを用い、サンプルにガラス面側から紫外線(照射条件:フレーム側キセノン照射、照度:70W/m、温度・湿度条件:B.P.T;65℃・50%)を以下の条件で照射し、色の退色、粘着層およびポリエステルフィルムの劣化状態を目視にて判定し、以下の基準により、耐候性を評価した。結果を表1に示す。
通常条件:紫外線を250時間照射
過酷条件:紫外線を500時間照射
(評価基準)
◎:過酷条件においても、色の退色、粘着層およびポリエステルフィルムの劣化が確認されない
○:通常条件においては、色の退色、粘着層およびポリエステルフィルムの劣化が確認されないが、過酷条件においては、色の退色、粘着層およびポリエステルフィルムの少なくとも一方の僅かな劣化が確認される
×:通常条件および過酷条件両方で色の退色、粘着層およびポリエステルフィルムの少なくとも一方の劣化が確認される
【0062】
【表1】
【0063】
実施例と比較例1との対比から、T1/T2を0.40〜0.70とすると色再現性が良いことがわかる。実施例1と比較例1の透過率のスペクトルを図1に示す。図1からもわかるように、比較例1においては、青色可視光領域のみを極端に吸収しており、色のバランスを欠くものである。
【0064】
実施例と比較例2との対比から、450nmの透過率を90%以下とすると青色可視光吸収性があることがわかる。実施例1と比較例2の透過率のスペクトルを図2に示す。なお、図示しないが、実施例の粘着シートは、紫外線吸収もできるものである。
【0065】
実施例1と比較例3の透過率のスペクトルを図3に示す。図3からわかるように、比較例3は、可視光領域全体の透過率が一律に低いものである。このため、色全体が暗いものとなり、色の再現性を欠く。実施例の粘着シートは、可視光領域における透過率を一律に低下させるものではないので、色再現性が良好であることがわかる。
【0066】
実施例と比較例との対比から、トリアジン系紫外線吸収剤を用いると、耐候性が良いことがわかる。
【0067】
なお、表中に記載はないが、実施例1の粘着シートの一方面に100μm厚のポリエステルフィルム(コスモシャインA4100(東洋紡社製))を表面基材として貼付し、ソーダライムフロートガラスに対する粘着力をオートグラフ(島津製作所製、型番AGS500NG)を使用し、25mm巾の試験片を用いて測定したところ、16.0N/25mmであった。
【0068】
本発明は、上記の実施態様および実施例によりなんら限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の実施態様を取り得る。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の粘着シートは、携帯電話、スマートフォン、ファブレット端末、タブレット端末、カーナビ、テレビ、パソコン、カメラ、電子辞書、照明機器などの電気電子機器類の保護シートなどに有用である。
図1
図2
図3