特許第6523760号(P6523760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523760
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】杭回転圧入機及び杭回転圧入工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/00 20060101AFI20190527BHJP
   E02D 7/00 20060101ALI20190527BHJP
   E02D 7/20 20060101ALI20190527BHJP
   E21B 3/02 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   E02D13/00 Z
   E02D7/00 A
   E02D7/20
   E21B3/02 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-82995(P2015-82995)
(22)【出願日】2015年4月15日
(65)【公開番号】特開2016-204825(P2016-204825A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】大野 正明
(72)【発明者】
【氏名】村田 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】堀川 幸典
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−120745(JP,A)
【文献】 特開2006−336408(JP,A)
【文献】 特開平09−279972(JP,A)
【文献】 特開2002−220830(JP,A)
【文献】 特開平02−157387(JP,A)
【文献】 特開昭57−024721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/00
E02D 7/00
E02D 7/20
E21B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の杭を把持し、回転させながら地中に圧入する杭回転圧入手段と、
前記杭の内部に挿通して、前記杭の回転圧入に伴う杭内部の土砂の圧密進行を抑制するオーガスクリュと、
前記オーガスクリュとともに前記杭の内部に挿通され、前記オーガスクリュが挿設された筒状のケーシングと、
前記オーガスクリュの上端部に接続され、前記オーガスクリュを回転させるオーガスクリュ回転手段と、
前記オーガスクリュを前記杭に対して固定する固定手段と、
を備え
前記オーガスクリュにより前記ケーシングの下端から上方に搬送された土砂は、前記ケーシングの側面に設けられた排土口より前記杭内に排出されるようにしたことを特徴とする杭回転圧入機。
【請求項2】
前記オーガスクリュの中心軸が前記杭の中心軸より径方向に偏在して配置されたことを特徴とする請求項1に記載の杭回転圧入機。
【請求項3】
前記オーガスクリュの中心軸が前記杭の中心軸より径方向に偏在して配置され、前記固定手段は前記ケーシングを前記杭の内壁に接して固定することを特徴とする請求項に記載の杭回転圧入機。
【請求項4】
前記杭の上端から下端に向けて前記杭の内部に配管され、下端に流体の噴出口を有する流体供給管を備える請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の杭回転圧入機。
【請求項5】
前記オーガスクリュを前記杭に対して上下に移動させる昇降手段を備える請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の杭回転圧入機。
【請求項6】
請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の杭回転圧入機を用いた杭回転圧入工法であって、
管状の杭の内部に前記オーガスクリュを挿通して前記固定手段により該杭に固定し、
前記オーガスクリュが固定された該杭を前記杭回転圧入手段に把持させ、
前記杭回転圧入手段により該杭を回転圧入させながら、前記オーガスクリュ回転手段により前記オーガスクリュを回転させることで、該杭の回転圧入に伴う杭内部の土砂の圧密進行を抑制することを特徴とする杭回転圧入工法。
【請求項7】
管状の杭を把持し、回転させながら地中に圧入する杭回転圧入手段と、
前記杭の内部に挿通して、前記杭の回転圧入に伴う杭内部の土砂の圧密進行を抑制するオーガスクリュと、
前記オーガスクリュとともに前記杭の内部に挿通され、前記オーガスクリュが挿設された筒状のケーシングと、
前記オーガスクリュの上端部に接続され、前記オーガスクリュを回転させるオーガスクリュ回転手段と、
前記オーガスクリュを前記ケーシングを介して前記杭に対して固定する固定手段と、
を備え、
前記固定手段には、前記杭に対して固定され、前記ケーシングを挟持及び開放可能な挟持手段が設けられている杭回転圧入機。
【請求項8】
前記固定手段には、前記杭と略同径で前記杭と同軸に配置され前記杭の上端に連結固定される筒状支持体が設けられ、前記挟持手段は、前記筒状支持体の内壁側面に固定されている請求項7に記載の杭回転圧入機。
【請求項9】
管状の杭を把持し、回転させながら地中に圧入する杭回転圧入手段と、
前記杭の内部に挿通して、前記杭の回転圧入に伴う杭内部の土砂の圧密進行を抑制するオーガスクリュと、
前記オーガスクリュとともに前記杭の内部に挿通され、前記オーガスクリュが挿設された筒状のケーシングと、
前記オーガスクリュの上端部に接続され、前記オーガスクリュを回転させるオーガスクリュ回転手段と、
前記オーガスクリュを前記ケーシングを介して前記杭に対して固定する固定手段と、
を備え、
前記固定手段には、
前記杭に対して固定され、前記ケーシングを挟持及び開放可能な挟持手段と、
前記昇降手段により前記杭に対して上下移動可能にされ、前記ケーシングを挟持及び開放可能な可動挟持手段が設けられている杭回転圧入機。
【請求項10】
前記挟持手段による前記ケーシングの拘束を開放する一方で、前記可動挟持手段によって前記ケーシングを挟持しつつ、前記昇降手段により前記可動挟持手段を昇降させることで前記オーガスクリュを昇降させることと、
前記挟持手段により前記ケーシングを挟持する一方で、前記可動挟持手段を開放し、前記昇降手段により前記可動挟持手段の上下位置を変更し、再び前記可動挟持手段によって前記ケーシングを挟持することで、前記可動挟持手段による前記ケーシングの挟持位置を上下に変更することとが可能にされた請求項9に記載の杭回転圧入機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭回転圧入機及びこれを用いた杭回転圧入工法に関する。
【背景技術】
【0002】
管状の杭を地盤に回転圧入施工する際、その杭の内部に入り込んだ土砂が杭下端部内に圧密し、閉塞するおそれがある。杭下端部内で土砂が閉塞し、閉塞した土砂が杭と供回りするようになると、その杭を回転圧入するために非常に大きな圧入力を要することとなり、場合によってはその杭の圧入が不可能になることがある。
杭下端部内で土砂が閉塞してしまうことを防いで、その杭をスムーズに圧入する方法として、杭の内側にオーガを挿入し、杭先端部の地盤を掘削しながら圧入施工する施工方法(特許文献1)や、杭先端から下方地盤に向けて流体物を噴出させながら圧入施工する施工方法(特許文献2)が知られている
特許文献1に記載の技術では、管状の杭を回転しながら圧入することで、杭圧入時の抵抗力を軽減して杭の圧入を補助するとともに、オーガスクリュにより杭先端部の地盤または土砂を掘削することで、杭先端部の抵抗力を低減し、杭内部での土砂の閉塞を防止している。
また、特許文献2に記載の技術では、杭の内部に入り込んでくる土砂と杭の内壁との間に流体物を介在させるか、杭の内部に入り込んでくる土砂のうち杭の内壁近傍の土砂に対して流体物を混合させて流体混合土砂とするか、または、その両方をすることで、杭内壁面における土砂の周面摩擦力を低減させて、杭内部での閉塞層の形成を防止し、貫入抵抗の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−120745号公報
【特許文献2】特開2005−127095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、引用文献1に記載の技術や引用文献2に記載の技術によれば、杭下端部内での土砂の閉塞を防止し杭先端部の抵抗力を軽減させて杭を回転圧入することができる。
しかしながら、引用文献1に記載の技術においては、オーガスクリュで掘削した土砂が杭の内部から外部に大量に排出されるため、排出された大量の土砂の処分が問題となる。
また、引用文献2に記載の技術においては、特に現場が透水性の高い砂地盤の場合は、流体物を噴出してもその流体物が土砂に浸み込むため、内部応力を解放することがほとんどできず、杭下端部内での土砂の圧密が進行するおそれがある。そして、圧密が進行すると、杭下端部内で土砂が閉塞し、回転圧入施工が不可能となるおそれがある。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、杭の回転圧入において排土量を抑えつつ杭下端部内での土砂の圧密進行を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、管状の杭を把持し、回転させながら地中に圧入する杭回転圧入手段と、
前記杭の内部に挿通して、前記杭の回転圧入に伴う杭内部の土砂の圧密進行を抑制するオーガスクリュと、
前記オーガスクリュとともに前記杭の内部に挿通され、前記オーガスクリュが挿設された筒状のケーシングと、
前記オーガスクリュの上端部に接続され、前記オーガスクリュを回転させるオーガスクリュ回転手段と、
前記オーガスクリュを前記杭に対して固定する固定手段と、
を備え
前記オーガスクリュにより前記ケーシングの下端から上方に搬送された土砂は、前記ケーシングの側面に設けられた排土口より前記杭内に排出されるようにしたことを特徴とする杭回転圧入機である。
【0008】
請求項記載の発明は、前記オーガスクリュの中心軸が前記杭の中心軸より径方向に偏在して配置されたことを特徴とする請求項1に記載の杭回転圧入機である。
【0009】
請求項記載の発明は、前記オーガスクリュの中心軸が前記杭の中心軸より径方向に偏在して配置され、前記固定手段は前記ケーシングを前記杭の内壁に接して固定することを特徴とする請求項に記載の杭回転圧入機である。
【0010】
請求項記載の発明は、前記杭の上端から下端に向けて前記杭の内部に配管され、下端に流体の噴出口を有する流体供給管を備える請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の杭回転圧入機である。
【0011】
請求項記載の発明は、前記オーガスクリュを前記杭に対して上下に移動させる昇降手段を備える請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の杭回転圧入機である。
【0012】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の杭回転圧入機を用いた杭回転圧入工法であって、
管状の杭の内部に前記オーガスクリュを挿通して前記固定手段により該杭に固定し、
前記オーガスクリュが固定された該杭を前記杭回転圧入手段に把持させ、
前記杭回転圧入手段により該杭を回転圧入させながら、前記オーガスクリュ回転手段により前記オーガスクリュを回転させることで、該杭の回転圧入に伴う杭内部の土砂の圧密進行を抑制することを特徴とする杭回転圧入工法である。
請求項7記載の発明は、管状の杭を把持し、回転させながら地中に圧入する杭回転圧入手段と、
前記杭の内部に挿通して、前記杭の回転圧入に伴う杭内部の土砂の圧密進行を抑制するオーガスクリュと、
前記オーガスクリュとともに前記杭の内部に挿通され、前記オーガスクリュが挿設された筒状のケーシングと、
前記オーガスクリュの上端部に接続され、前記オーガスクリュを回転させるオーガスクリュ回転手段と、
前記オーガスクリュを前記ケーシングを介して前記杭に対して固定する固定手段と、
を備え、
前記固定手段には、前記杭に対して固定され、前記ケーシングを挟持及び開放可能な挟持手段が設けられている杭回転圧入機である。
請求項8記載の発明は、前記固定手段には、前記杭と略同径で前記杭と同軸に配置され前記杭の上端に連結固定される筒状支持体が設けられ、前記挟持手段は、前記筒状支持体の内壁側面に固定されている請求項7に記載の杭回転圧入機である。
請求項9記載の発明は、管状の杭を把持し、回転させながら地中に圧入する杭回転圧入手段と、
前記杭の内部に挿通して、前記杭の回転圧入に伴う杭内部の土砂の圧密進行を抑制するオーガスクリュと、
前記オーガスクリュとともに前記杭の内部に挿通され、前記オーガスクリュが挿設された筒状のケーシングと、
前記オーガスクリュの上端部に接続され、前記オーガスクリュを回転させるオーガスクリュ回転手段と、
前記オーガスクリュを前記ケーシングを介して前記杭に対して固定する固定手段と、
を備え、
前記固定手段には、
前記杭に対して固定され、前記ケーシングを挟持及び開放可能な挟持手段と、
前記昇降手段により前記杭に対して上下移動可能にされ、前記ケーシングを挟持及び開放可能な可動挟持手段が設けられている杭回転圧入機である。
請求項10記載の発明は、前記挟持手段による前記ケーシングの拘束を開放する一方で、前記可動挟持手段によって前記ケーシングを挟持しつつ、前記昇降手段により前記可動挟持手段を昇降させることで前記オーガスクリュを昇降させることと、
前記挟持手段により前記ケーシングを挟持する一方で、前記可動挟持手段を開放し、前記昇降手段により前記可動挟持手段の上下位置を変更し、再び前記可動挟持手段によって前記ケーシングを挟持することで、前記可動挟持手段による前記ケーシングの挟持位置を上下に変更することとが可能にされた請求項9に記載の杭回転圧入機である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、杭の回転圧入において排土量を抑えつつ杭下端部内での土砂の圧密進行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る杭回転圧入機の側面図(杭部断面視)である。
図2】本発明の一実施形態に係る杭回転圧入機の杭上部の縦断面図(a)、A−A断面図(b)、B−B断面図(c)及びC−C断面図(d)である。
図3】本発明の一実施形態に係る杭回転圧入機の杭下端部の部分縦断面図であり、(a)は流体を下方に噴出する形態を、(b)は流体を側方に噴出する形態を示す。
図4】本発明の一実施形態に係る杭回転圧入機の杭上部の縦断面図(a)、及びD−D断面図(b)(c)であり、(b)はシリンダ固定式を、(c)はネジ固定式を示す。
図5】本発明の一実施形態に係る杭回転圧入機の杭上部の縦断面図(a)、E−E断面図(b)、F−F断面図(c)及びG−G断面図(d)である。
図6】本発明の一実施形態に係る杭回転圧入機の杭下端部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0016】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態につき説明する。
図1に示すように、本実施形態の杭回転圧入機1は、既設の管状の杭25から反力を取って管状の杭7を把持し、回転させながら地中に圧入する装置であって、従来の杭圧入引抜機と同様に、既設の管状の杭25をつかむクランプ26を下部に備えたサドル27と、サドル27に対して前後にスライド移動するスライドベース28と、スライドベース28上で旋回するマスト29とを備える。
図1図2により示すように、マスト29の前方に設けられた杭回転圧入手段(チャック)2に把持された管状の杭7には、オーガスクリュ5が固定手段3により着脱可能に取り付けられている。
【0017】
オーガスクリュ5の上端にはオーガスクリュ5を回転させるオーガスクリュ回転手段としてのモータMが接続されている。モータMは、その上部に設けられたロータリジョイントやスイベル等の回転接続手段6を介して駆動源と接続されている。
オーガスクリュ5は、筒状のケーシング4に挿設されており、ケーシング4とモータMの筐体部とが一体連結されている。ケーシング4とオーガスクリュ5が同軸に配置され、ケーシング4の内径はオーガスクリュ5の外径よりやや大きく、オーガスクリュ5の回転にケーシング4が干渉しないようにクリアランスがとられる。そして、ケーシング4はオーガスクリュ5とともに杭7の内部に挿通される。
杭7の径よりも十分に小径なオーガスクリュ5が適用されている。例えば、杭7の直径1000mmに対しオーガスクリュ5の直径が200mmである。
【0018】
固定手段3は、杭7とほぼ同径の筒状支持体31の下端に設けられた杭クランプシリンダ装置32により杭7の上端壁部をそれぞれ把持する。また固定手段3の内側には、筒状支持体31の内壁側面に固定された一対の固定シリンダ装置33,33と、オーガスクリュ5を杭7に対して上下に移動させる昇降手段としての昇降シリンダ装置35を介して筒状支持体31の内壁上面に連結支持された一対の可動シリンダ装置34,34とが設けられている。
【0019】
固定シリンダ装置33,33及び可動シリンダ装置34,34がそれぞれ所定のタイミングでケーシング4を挟持可能にされていて、可動シリンダ装置34が昇降シリンダ装置35で上下動可能にされていることで、固定手段3にはオーガ上下送り機構が構成される。すなわち、固定シリンダ装置33によるケーシング4の拘束を開放する一方で、可動シリンダ装置34によってケーシング4を挟持しつつ、昇降シリンダ装置35により可動シリンダ装置34を(従ってケーシング4)昇降させることでオーガスクリュ5を昇降させることができ、その後、一旦固定シリンダ装置33によりケーシング4を挟持する一方で、可動シリンダ装置34を開放し、昇降シリンダ装置35により可動シリンダ装置34の上下位置を変更し、再び可動シリンダ装置34によってケーシング4を挟持することで、可動シリンダ装置34によるケーシング4の挟持位置を上下に変更する、すなわち、掴み直しが可能であるから、上方及び下方にオーガスクリュ5を送ることができるオーガ上下送り機構となっている。このオーガ上下送り機構により、施工後にオーガスクリュ5を引き抜くことができる。
もちろん、昇降シリンダ装置35のストローク範囲内のオーガスクリュ5の上下位置調整は、掴み直しなしで可能であり、施工時にオーガスクリュ5の先端の位置調節が迅速に行える。
【0020】
杭回転圧入手段2は、マスト29に対して上下に可動に組みつけてあり、シリンダ装置9によって上下に駆動できるようになっている。
この杭回転圧入手段2は、その突出した部分にチャック部10を有し、その中心に設けられた穴に管状の杭7を挿通できるようになっている。
チャック部10には、その穴の中心に向かって伸長可能なシリンダ装置が設けられていて、これによって管状の杭7を外側から把持する。
また、このチャック部10には、モータなどの駆動源が備えられており、管状の杭7の中心軸を略中心として杭7を連続的に回転できるようになっている。
【0021】
本実施形態では図2(b)〜(d)に示すようにオーガスクリュ5の中心軸が杭7の中心軸より径方向に偏在して配置されている。オーガスクリュ5の外周位置及びケーシング4の外周位置も杭7の中心軸から径方向に離れて配置されている。
さらに、固定手段3はケーシング4を杭7の内壁に接して固定する。
【0022】
また、杭回転圧入機1は、図1図3に示すように杭7の上端から下端に向けて杭7の内部に配管され、下端に流体の噴出口を有する流体供給管8を備える。
流体供給管8の下端部を杭7の下端部内に配置する。流体供給管8の下端部には、図3(a)に示すように下端に開口する噴出口81又は図3(b)に示すように側面に開口する噴出口82が設けられている。流体供給管8の上端から流体(水、薬液等)を送り噴出口81(82)から噴出させる。
図3(a)に示す下端に開口する噴出口81を実施する場合は、流体が下方に噴出される。
図3(b)に示す側面に開口する噴出口82を実施する場合には、噴出口82を杭7の外周方向に向けるとともに、杭7の下端部に設けた貫通孔71に連通するように配置し、流体が貫通孔71を通って杭7の外側へ径方向外方に向けて噴出される。
尚、側面に開口する噴出口82を実施する場合、図示は省略するが、杭7の下端部に貫通孔71設けずに、噴出口82を杭7の内周方向に向けて、流体が杭7の内側へ径方向内方に向けて噴出されるようにしてもよい。
【0023】
次に、以上のように構成される杭回転圧入機1を用いた杭回転圧入工法について説明する。
図1に示すように杭回転圧入機1は、クランプ26により既設の杭25をつかんで既設の杭25から反力を取った状態で、新たな管状の杭7を圧入する。
【0024】
まず、地上で横倒しにした杭7の内部に、オーガスクリュ5が挿設されたケーシング4を挿通して、固定手段3により杭7に固定する。このとき、オーガスクリュ5の先端部を、杭7の下端より下方に突出させることなく、杭7の下端部内に位置させる。
また、杭7を圧入する地盤によっては、必要に応じて、杭7の上端から下端に向けて、下端に流体の噴出口を有する流体供給管8を杭7の内部に配管する。このとき、流体供給管8の下端を、杭7の下端部近傍に位置させる。
次に、オーガスクリュ5が固定された杭7を杭回転圧入手段(チャック)2に把持させ、杭7を回転圧入させながらオーガスクリュ5を回転させる。
このオーガスクリュ5の働きにより、杭7の内部の土砂の圧密部分の内部応力を解放することで、杭7の回転圧入に伴う杭内部の土砂の圧密進行を抑制しつつ杭7の回転圧入を実行する。
また、杭7の回転圧入時には、任意に流体(例えば、水、薬液、空気、これらの組み合わせ等)を噴出口81(82)から噴出させることで、回転圧入の周面摩擦抵抗を軽減する。
オーガスクリュ5によりケーシング4の下端から上方に搬送された土砂は、ケーシング4の側面に設けられた排土口41より杭7内に排出される。
必要により固定手段3のオーガ上下送り機構により、オーガスクリュ5の先端位置を調節する。
【0025】
以上の実施形態によれば、杭7の径よりも十分に小径のオーガスクリュ5を用いるため、土砂が杭7の内部から外部に大量に排出されることを回避した上で、杭7の内部での土砂の圧密進行が抑制される。これにより、圧入力を低減し、ゆとりある反力によって効率的な杭回転圧入施工が実現される。
また、圧密進行を抑制するために小径のオーガスクリュ5を用いる技術は、透水性の高い砂地盤であってもオーガスクリュ5の働きにより内部応力を解放できるため、砂地盤における杭7の回転圧入施工にも適用できる。
また以上の実施形態によれば、小径なオーガスクリュ5ながらも、杭7の内部のうち杭7の内壁に隣接した大きく圧密しやすい領域の土砂の内部応力を解放し、効率よく圧密進行を抑制することができる。
さらに、オーガスクリュ5及びケーシング4が杭7の回転に伴って杭7の中心軸周りに搖動するために、杭7の内周に沿ってオーガスクリュ5の作用域、すなわち、オーガスクリュ5による内部応力の解放域を拡大することができ、効果的に圧密進行を抑制することができる。
杭7を圧入する地盤によっては、噴出口81(82)からの流体の噴出を併用することで、回転圧入時の周面摩擦抵抗が軽減されるために、圧入力をさらに低減することができる。
固定手段3のオーガ上下送り機構によりオーガスクリュ5の上下位置を容易に調節することができるため、杭7の内部での土砂の圧密状況や地盤状況などの状況の変化に応じて応答性良くオーガスクリュ5の上下位置を変更することができる。
地上で杭7を横倒しにした状態で下に位置する杭7の内面に沿わせてケーシング4を載置してこれを杭7に固定することができるため、オーガスクリュ5を杭7に固定する作業が容易である。
【0026】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態につき説明する。
本実施形態は上記第1実施形態に対し、オーガスクリュ5の上下送り機構を省いたものであり、その他は同様に実施する。
図4に示すように、オーガスクリュ5の上下送り機構を省いたためにオーガスクリュ5を杭7に対して固定する固定手段3A(3B)は、直接固定式の簡素なものとすることができる。
図4(a)及び(b)には、動力シリンダによるシリンダ固定式の固定手段3Aを示す。図4(c)に示すようにネジ固定式に代えて実施してもよい。
図4に示すように、固定手段3A(3B)の一端をケーシング4に固定し、固定手段3A(3B)の可動部とケーシング4の側面との間で杭7の上端壁部を挟持する機構により実施する。
本実施形態によれば、上記第1実施形態に比較して簡素な構成で実施可能である。
【0027】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態につき説明する。
本実施形態は上記第1実施形態に対し、オーガスクリュ5の配置を杭7の中央とするものであり、その他は同様に実施する。
図5に示すようにオーガスクリュ5を杭7と同軸に配置した構成である。
これに伴い一対の固定シリンダ装置33C,33C及び可動シリンダ装置34C,34Cの配置が変更されている。
【0028】
本実施形態によれば、上記第1実施形態に比較して以下の作用効果がある。
杭7を回転させてもオーガスクリュ5は常に杭の中心位置にあってオーガスクリュ5が杭7の回転における抵抗とならないため、杭7を回転させるトルクが上昇しない。
地上で杭7を横倒しにしてオーガスクリュ5を固定する場合は、ケーシング4のモータMに近い端部は一対の固定シリンダ装置33C,33Cや可動シリンダ装置34C,34Cで支えられるが、モータMから遠い端部については支えが必要になる。
杭7の内部のうち杭7の内壁に隣接した大きく圧密しやすい領域の土砂の内部応力を解放するのではなく、同領域から離れた杭7中央部の内部応力を解放することとなる。
【0029】
〔その他の実施形態〕
上記第1実施形態に対し、固定手段3が杭7の回転圧入施工時に所定の抵抗を受けるまでは杭7と一体回転し、所定の抵抗を受けるとその一体回転を停止するものであってもよい。
すなわち、杭7と一体となって回転するオーガスクリュ5が所定の抵抗を受けると、オーガスクリュ5が杭7に対して相対的に搖動する状態となる。
これにより、杭7と一体となって搖動するオーガスクリュが抵抗となることに起因して杭7の回転圧入施工が不可能となることが回避される。
【0030】
なお、図6に示すようにオーガスクリュ5の先端部51を杭7の下端より下方に突出させて杭7の回転圧入施工を実施してもよい。この場合は、オーガスクリュ5により杭7の内部土砂の圧密進行を抑制するとともに、杭7の先端部の抵抗力を軽減することもできる。
【符号の説明】
【0031】
1 杭回転圧入機
2 杭回転圧入手段
3(3A,3B,3C) 固定手段
4 ケーシング
5 オーガスクリュ
7 杭
8 流体供給管
10 チャック部
31 筒状支持体
32 杭クランプシリンダ装置
33(33C)固定シリンダ装置
34(34C)可動シリンダ装置
71 貫通孔
81 噴出口
82 噴出口
M モータ(オーガスクリュ回転手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6