特許第6523764号(P6523764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523764
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】洗濯機および洗濯機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/02 20060101AFI20190527BHJP
【FI】
   D06F33/02 T
   D06F33/02 G
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-85037(P2015-85037)
(22)【出願日】2015年4月17日
(65)【公開番号】特開2016-202372(P2016-202372A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 亮二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲士
(72)【発明者】
【氏名】片根 和俊
(72)【発明者】
【氏名】林 祐太朗
【審査官】 高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−104150(JP,A)
【文献】 特開2012−029710(JP,A)
【文献】 特開2010−227164(JP,A)
【文献】 特開2010−268842(JP,A)
【文献】 特開2011−240078(JP,A)
【文献】 特表2013−515558(JP,A)
【文献】 特開2002−011287(JP,A)
【文献】 特開2012−205629(JP,A)
【文献】 特開2013−128539(JP,A)
【文献】 特開2011−104245(JP,A)
【文献】 特開2011−041643(JP,A)
【文献】 特開平05−337281(JP,A)
【文献】 特開平07−080183(JP,A)
【文献】 特開2011−244885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00−51/02
58/00−60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水可能な外槽と、
前記外槽内に設けられた内槽と、
前記内槽の底部に設けられた脈動翼盤と、
前記内槽と前記脈動翼盤とを回転駆動する駆動部と、
給水する給水部と、
前記外槽の排水をおこなう排水部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記駆動部を制御して前記内槽と前記脈動翼盤とを一体に回転するとともに、前記排水部を排水動作させながら、前記給水部により前記内槽の内側の外周側に向けてすすぎ水を散水し、かつ、洗濯物の半量に水が浸透して脱水されるように回転数と散水量を調整する回転シャワーすすぎ運転と、
前記給水部と前記排水部を制御して前記外槽にすすぎ水を貯水し、前記駆動部を制御して前記内槽を固定した状態で前記脈動翼盤を正逆回転して洗濯物を撹拌するとともに、前記外槽のすすぎ水を前記内槽の上部から洗濯物に横一文字状に散水するためすすぎ運転と、
を有するすすぎ工程を複数回おこなう
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、さらに、
前記外槽のすすぎ水をくみ上げて、前記内槽の上部から内槽内部に散水するすすぎ水循環部と、
前記すすぎ水が、導水されて整流され、内槽の径方向に直線状に延在する吐出口から前記内槽に吐出する三角形状の循環水路と、
を備え、
前記制御装置は、前記ためすすぎ運転において、前記すすぎ水循環部を駆動して、前記外槽のすすぎ水を前記循環路により前記内槽の洗濯物に散水する
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の洗濯機において、
前記制御装置は、
前記回転シャワーすすぎ運転とためすすぎ運転の間で、前記排水部を排水動作させながら、前記駆動部を制御して前記内槽を高速回転する脱水運転をおこなう
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記回転シャワーすすぎ運転では、前記内槽の内面に押し付けられた洗濯物の上部にすすぎ水がシャワー散水され、排水される
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
洗濯物を収容する内槽と前記内槽の底部に設けられた脈動翼盤と前記内槽が設けられた外槽と備える洗濯機の制御方法であって、
すすぎ工程では、
前記内槽と前記脈動翼盤とを一体に回転しながら、前記内槽の内側の外周側に向けてすすぎ水を散水し、前記すすぎ水を排水する際に、洗濯物の半量に水が浸透して脱水されるように回転数と散水量を調整する第1の回転シャワーすすぎ運転と、
前記外槽にすすぎ水を貯水し、前記内槽を固定した状態で前記脈動翼盤を正逆回転して洗濯物を撹拌するとともに、前記外槽のすすぎ水を前記内槽の上部から洗濯物に横一文字状に散水する第1のためすすぎ運転と、
前記内槽と前記脈動翼盤とを一体に回転しながら、前記内槽の内側の外周側に向けてすすぎ水を散水し、前記すすぎ水を排水する際に、洗濯物の半量に水が浸透して脱水されるように回転数と散水量を調整する第2の回転シャワーすすぎ運転と、
前記外槽にすすぎ水を貯水し、前記内槽を固定した状態で前記脈動翼盤を正逆回転して洗濯物を撹拌するとともに、前記外槽のすすぎ水を前記内槽の上部から洗濯物に横一文字状に散水する第2のためすすぎ運転と、を順次おこなう
ことを特徴とする洗濯機の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の洗濯機の制御方法において、
前記第1のためすすぎ運転と前記第2のためすすぎ運転の少なくとも一方で、
前記外槽のすすぎ水を前記内槽の洗濯物に散水する
ことを特徴とする洗濯機の制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載の洗濯機の制御方法において、
前記外槽のすすぎ水を排水しながら前記内槽を高速回転して前記洗濯物を遠心脱水したのちに、前記第1の回転シャワーすすぎ運転をおこない、
前記外槽のすすぎ水を排水しながら前記内槽を高速回転して前記洗濯物を遠心脱水したのちに、前記第1のためすすぎ運転をおこない、
前記外槽のすすぎ水を排水しながら前記内槽を高速回転して前記洗濯物を遠心脱水したのちに、前記第2の回転シャワーすすぎ運転をおこない、
前記外槽のすすぎ水を排水しながら前記内槽を高速回転して前記洗濯物を遠心脱水したのちに、前記第2のためすすぎ運転をおこなう
ことを特徴とする洗濯機の制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の洗濯機の制御方法において、
前記第2のためすすぎ運転では、
前記第1のためすすぎ運転のすすぎ水の洗剤残量と、前記第2のためすすぎ運転のすすぎ水の洗剤残量の差に応じて、前記第2のためすすぎ運転を制御する
ことを特徴とする洗濯機の制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の洗濯機の制御方法において、
前記すすぎ水の洗剤残量は、すすぎ水のアルカリ度から求める
ことを特徴とする洗濯機の制御方法。
【請求項10】
洗濯物を収容する内槽と前記内槽の底部に設けられた脈動翼盤と前記内槽が設けられた外槽と備える洗濯機の制御方法であって、
すすぎ工程では、
前記外槽にすすぎ水を貯水し、前記内槽を固定した状態で前記脈動翼盤を正逆回転して洗濯物を撹拌するとともに、前記外槽のすすぎ水を前記内槽の上部から洗濯物に横一文字状に散水するためすすぎ運転と、
前記内槽と前記脈動翼盤とを一体に回転しながら、前記内槽の内側の外周側に向けてすすぎ水を散水し、前記すすぎ水を排水し、かつ、前記洗濯物の半量に水が浸透して脱水されるように回転数と散水量を調整する回転シャワーすすぎ運転と、
、回転シャワーすすぎ運転からためすすぎ運転の順に複数回おこなわれる
ことを特徴とする洗濯機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機および洗濯機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止のために家電製品の省エネ化が進んでいる。洗濯機では、洗い工程において洗剤の化学的な洗浄力を有効活用することによって洗濯物に作用する物理的な力を軽減しながら、高い洗浄力を得ているが、省エネ化のために、消費電力低減や節水が求められている。使用水量を減らすと、洗濯物に十分に洗濯水が行き渡らずに、洗浄力やすすぎ性能が低下する問題がある。
【0003】
そこで、洗濯槽の底部に溜まっている洗濯水を循環ポンプで洗濯槽の上部までくみ上げて、このくみ上げた洗濯水を洗濯物(洗濯物)に散布する洗濯水循環機構を備えた洗濯機が提案されている(特許文献1参照)。
また、排水弁を開いた状態で洗濯兼脱水槽を回転させながらシャワーを供給する回転シャワーをおこなって、散布した水を洗濯物に浸透させ、その後、排水弁を開いた状態のままシャワーの供給を停止して洗濯兼脱水槽を所定の回転速度で所定時間回転させて、浸透すすぎ運転を行うことで、少ない水でもすすぎ性能を向上させた洗濯機が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−223305号公報
【特許文献2】特開2014−210122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
省エネ化に対する要求は依然強く、特に、ドラム式の洗濯機と縦型の洗濯機を比べると、縦型の洗濯機の使用水量は、ドラム式の洗濯機より多く、洗濯物の残留洗剤を減少させ、節水をおこなうことが望まれている。
【0006】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、すすぎ性能をより向上した洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の洗濯機は、貯水可能な外槽と、前記外槽内に設けられた内槽と、前記内槽の底部に設けられた脈動翼盤と、前記内槽と前記脈動翼盤とを回転駆動する駆動部と、給水する給水部と、前記外槽の排水をおこなう排水部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記駆動部を制御して前記内槽と前記脈動翼盤とを一体に回転するとともに、前記排水部を排水動作させながら、前記給水部により前記内槽の内側の外周側に向けてすすぎ水を散水し、かつ、洗濯物の半量に水が浸透して脱水されるように回転数と散水量を調整する回転シャワーすすぎ運転と、前記給水部と前記排水部を制御して前記外槽にすすぎ水を貯水し、前記駆動部を制御して前記内槽を固定した状態で前記脈動翼盤を正逆回転して洗濯物を撹拌するとともに、前記外槽のすすぎ水を前記内槽の上部から洗濯物に横一文字状に散水するためすすぎ運転と、を有するすすぎ工程を複数回おこなうようにした。
【0008】
また、本発明の洗濯物を収容する内槽と前記内槽の底部に設けられた脈動翼盤と前記内槽が設けられた外槽と備える洗濯機の制御方法は、すすぎ工程で、前記内槽と前記脈動翼盤とを一体に回転しながら、前記内槽の内側の外周側に向けてすすぎ水を散水し、前記すすぎ水を排水する際に、洗濯物の半量に水が浸透して脱水されるように回転数と散水量を調整する第1の回転シャワーすすぎ運転と、前記外槽にすすぎ水を貯水し、前記内槽を固定した状態で前記脈動翼盤を正逆回転して洗濯物を撹拌するとともに、前記外槽のすすぎ水を前記内槽の上部から洗濯物に横一文字状に散水する第1のためすすぎ運転と、前記内槽と前記脈動翼盤とを一体に回転しながら、前記内槽の内側の外周側に向けてすすぎ水を散水し、前記すすぎ水を排水する際に、洗濯物の半量に水が浸透して脱水されるように回転数と散水量を調整する第2の回転シャワーすすぎ運転と、前記外槽にすすぎ水を貯水し、前記内槽を固定した状態で前記脈動翼盤を正逆回転して洗濯物を撹拌するとともに、前記外槽のすすぎ水を前記内槽の上部から洗濯物に横一文字状に散水する第2のためすすぎ運転と、を順次おこなうようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、すすぎ性能をより向上した洗濯機を提供することができる。これにより、洗剤残量が従来と同様あるいは減少する場合であっても、すすぎで従来使用していた水量よりも減少させ、節水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の縦型の洗濯乾燥機を示す外観斜視図である。
図2】実施形態の洗濯機の概略構造を示す縦断面図である。
図3】洗濯機の内槽を収容した外槽を示す斜視図である。
図4】外槽カバーを裏面側から見たときの平面図である。
図5】制御装置の構成を説明する機能ブロック図である。
図6】本実施形態の洗濯機の動作の概要を示す図である。
図7】すすぎ工程の特徴を説明する図である。
図8】実施例のすすぎ工程を説明するタイムチャートである。
図9】実施例の他のすすぎ工程を説明するタイムチャートである。
図10】実施例の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の洗濯機は、所謂縦型の洗濯乾燥機であり、以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例の洗濯機の外観斜視図である。なお、図1は、外蓋3を開けた状態を示している。
洗濯機100は、外郭が鋼板と樹脂成型品とを組み合わせて構成された筐体1を備えている。筐体1の上部には、樹脂製のトップカバー2が設けられている。トップカバー2には、洗濯槽の上部を開閉する外蓋3が設けられている。
【0012】
外蓋3は、上向きに凸となるように山型に折れ曲がりながら後ろ側に開くことにより筐体1の上部に形成された開口部1aを開放するように構成されている。また、外蓋3は、各種操作ボタンスイッチ6や表示器7を備えた操作パネル8を備えている。この操作パネル8は、機体底部に設けたマイクロコンピュータ40(以下、マイコンと略記する)と電気的に接続されている。また、トップカバー2の前面には、洗濯機100の電源のオン/オフを行う電源スイッチ5が設けられている。
【0013】
また、筐体1内部の開口部1aの後方には、給水電磁弁4(図2参照)が設けられ、この給水電磁弁4に水道水(清水)を供給するための接続口4a(図2参照)がトップカバー2の後部に設けられている。また、トップカバー2には、洗剤・柔軟剤容器28が設けられ、外蓋3を閉じたときに、洗剤・柔軟剤容器28が外蓋3によって覆われるようになっている。
循環ポンプ16は、筐体1の底部(外槽10の下方)に設けられ、外槽10の底部に溜められた洗濯水やすすぎ水を、内槽9内に汲み上げる。
【0014】
図2は、実施例の洗濯機の概略構造を示す縦断面図である。
図2に示すように、洗濯機100は、筐体1内に、内槽9、外槽10、脈動翼盤11(回転翼盤)、流体バランサ12、洗濯水循環機構50などを含んで構成されている。
【0015】
内槽9は、洗濯兼脱水槽として機能するものであり、有底円筒状に形成され、鉛直方向(上下方向)に回転軸を有している。また、内槽9は、その外周壁に通水および通風のための複数の小さな貫通孔9aが形成されるとともに、その底壁に通水および通風のための複数の貫通孔9bが形成されている。また、内槽9は、駆動装置13によって回転可能に支持されている。
【0016】
外槽10は、有底円筒状に形成され、内槽9を同軸上に内包している。また、外槽10は、筐体1の上端部の四隅部に設けた隅板(不図示)に係止して垂下させた4本の支持棒に緩衝装置(不図示)を介して該筐体1内の中心部に弾性支持されている。
【0017】
また、外槽10の上縁部には、外槽カバー14が設けられている。この外槽カバー14は、内槽9の上方を閉塞するように構成されている。
【0018】
脈動翼盤11(パルセータともいう)は、略円盤状に形成され、内槽9の底部に設けられている。また、脈動翼盤11は、駆動装置13によって回転可能に支持されている。これにより、洗い時やすすぎ時に、脈動翼盤11を回転させることで洗濯水を洗濯物ごと攪拌することができる。
【0019】
流体バランサ12は、合成樹脂などでリング状に形成され、内槽9の胴板の上端縁部(上縁部)に設けられている。この流体バランサ12は、内部に比重の大きな流体(塩水など)を封入して構成され、内槽9の回転時に洗濯物の偏りなどによって偏心が生じたときに、流体バランサ12内での流体の移動によって偏心を打ち消し、回転のバランスを維持する機能を有している。
【0020】
駆動装置13は、インバータ駆動電動機または可逆回転型のコンデンサ分相単相誘導電動機を使用した電動機13aと電磁操作クラッチ機構(クラッチ)13bと遊星歯車減速機構を内蔵して構成されている。また、駆動装置13は、マイコン40によって電動機13aとクラッチ13bを制御することによって、内槽9を静止させるように係止、または自由に回転できるように解放した状態で、脈動翼盤11を繰り返し正逆回転させる洗濯・すすぎ駆動モードと、内槽9と脈動翼盤11とを一体的に同一方向に回転させる脱水駆動モードと、を選択的に実行する機能を有する。
【0021】
洗濯水循環機構50は、循環ポンプ16、循環パイプ17(循環路、戻し流路)、循環水路18、吐出口31を有する水路カバー30、蛇腹管29a、29bなどで構成されている。
【0022】
循環ポンプ16は、筐体1の底部(外槽10の下方)に設けられ、循環パイプ17を介して外槽10の底部に溜められた洗濯水を、外槽10の底部に設けた通水通気口10bから循環水路18の洗濯水導入口14bに向けてくみ上げる機能を有する。なお、本実施形態では、循環ポンプ16が筺体1内の底部左側に配置されている。
【0023】
循環パイプ17は、外槽10の通水通気口10bと洗濯水導入口14bとを連通させる流路を構成し、当該循環パイプ17の途中に前記循環ポンプ16が設けられている。
また、循環パイプ17には、循環ポンプ16の上流側に異物トラップ(不図示)が設けられ、異物トラップ(不図示)の上流側には、排水弁15を備えた排水ホース24が分岐して接続されている。
【0024】
洗い時やすすぎ時に、循環ポンプ16が駆動すると、外槽10の底の洗濯水は、外槽10の底部に形成された通水通気口10bから循環パイプ17を通り外槽10の外部を通って外槽10の上部に運ばれ、洗濯水導入口14bから循環水路18に導入され、循環水路18から内槽9内に戻るようにして循環する。
【0025】
また、洗濯機100は、図2に示すように、乾燥運転時に機能する乾燥ユニット60を備えている。この乾燥ユニット60は、公知の方法によって構成することができ、外槽10の底部と外槽カバー14とを連通させる乾燥ダクト22(一部のみ図示)に、送風ファン19(図5を参照)、ヒータ20(図5を参照)、リントフィルタ(不図示)、除湿機構(不図示)を備えることで構成されている。これにより、送風ファンを運転し、ヒータを通電することで、内槽9内に温風が吹き込まれ、内槽9内の洗濯物が温められて水分が蒸発する。そして、高温多湿となった空気が、乾燥ダクトを通って除湿機構によって低湿の空気となり、ヒータで再度加熱され、内槽9内に吹き込まれるようにして循環する。
【0026】
なお、洗濯機100は、ゴム製の蛇腹管29a、29b、29c、29dを備えている。これら蛇腹管29a〜29dは、振動変位側に設けた外槽10や外槽カバー14、固定側(筐体1やトップカバー2など)に設けた乾燥ダクト22や給水電磁弁4,循環ポンプ16などとの接続に用いられている。
【0027】
接続口4aに供給された水道水(清水)は、給水電磁弁4により通流が制御されて、給水導入口14d(図3参照)に供給され、外槽カバー14の散水口14f(図4参照)から内槽9内にシャワー散水される。このとき、散水口14fは、内槽9の内側の外周側に設置されている。
【0028】
図3は、内槽9を収容した外槽10を示す斜視図である。なお、図3では、外槽カバー14に設けられる内蓋(不図示)を取り外した状態を示している。
図3に示すように、外槽カバー14は、手前側に略台形状の洗濯物投入口14a(投入口)が形成されている。また、外槽カバー14には、洗濯物投入口14aを開閉する内蓋(不図示)が設けられている。内蓋は、洗濯物投入口14aの後端に設けられたヒンジ機構(不図示)を介して洗濯物投入口14aの全体を閉塞するように構成されている。
【0029】
また、外槽カバー14には、洗濯物投入口14aの後方に、内槽9内に洗濯水を導入する洗濯水導入口14b、外槽10内に温風を導入する温風導入口14c、水道栓からの給水を導入する給水導入口14dが設けられている。また、洗濯水導入口14bは、左端に位置している。
【0030】
脈動翼盤11は、回転することによって上面に乗っている洗濯物に上下方向の動きを繰り返し発生するように回転方向になだらかに傾斜した複数の傾斜面からなる隆起部11aと、多数の水抜き貫通孔11bと、を備える。隆起部11aは、周方向に傾斜し、かつ、外周部位が順次高くなるように、径方向に傾斜する面を有している。本実施例では、隆起部11aが2ヶ所(一方のみ図示)設けられているが、2ヶ所に限定されるものではなく、3箇所以上であってもよい。また、脈動翼盤11の隆起形状は、一例であって本実施例に限定されるものではない。
【0031】
この脈動翼盤11が回転することで、脈動翼盤11上の洗濯物は、該脈動翼盤11上を滑りながら該脈動翼盤11の回転方向に回転するとともに、隆起部11aによって押し上げられて、上下方向に振動する。このとき、洗濯水(または、すすぎ水。以下同様)を循環しながら洗濯物の上方から散水することで、洗濯物に洗濯水を行き渡らせることができる。こうすることで、内槽9内に洗濯物が洗濯水に浸かるほど洗濯水を溜めなくても、洗濯物を洗濯することができ、大幅な節水が可能になる。ちなみに、洗濯物に洗濯水を均一に散布することができれば、洗浄力やすすぎ力が向上するため、洗濯時間の短縮につながる。なお、洗濯水を均一に散布する詳細な構成については後記する。
【0032】
図4は、外槽カバーを裏面側から見たときの平面図である。なお、図4は、外槽カバー14に水路カバー30が取り付けられた状態を示している。
図4に示すように、洗濯物投入口14aは、径方向の中心Oよりも後方に位置するとともに左右方向(幅方向)に延在する直線部14a1と、中心Oよりも前方に位置するとともに左右方向に延在する直線部14a2と、直線部14a1の一端(左端)と直線部14a2の一端(左端)とをつなぐ円弧部14a3と、直線部14a1の他端(右端)と直線部14a2の他端(右端)とをつなぐ円弧部14a4と、を有している。なお、洗濯物投入口14aの平面視における形状は、図4の形状に限定されるものではなく、例えば、直線部14a2が円弧形状であって、全体として略半径状に形成されていてもよい。また、外槽カバー14の洗濯物投入口14aの外周部分は、流体バランサ12と対向するようになっている。
【0033】
水路カバー30は、外槽カバー14の裏面(内槽9側の面)に設けられることで、水路カバー30と外槽カバー14とによって循環水路18を構成している。また、水路カバー30は、平面視略三角形状を呈し、洗濯物投入口14aの直線部14a1に沿って直線状に延在する吐出口31(戻し口)を有している。この吐出口31は、直線部14a1よりも短く形成されている。
【0034】
また、水路カバー30は、吐出口31の一端側(左端側)に洗濯水導入口14bが位置している。また、水路カバー30は、直線部14a1に沿って延在する直線状の外周辺部32aと、この外周辺部32aの一端(左端、図示右側)から洗濯水導入口14bに向けて延在する外周辺部32bと、外周辺部32aの他端(右端、図示左側)から洗濯水導入口14bに向けて延在する外周辺部32cと、を有している。また、水路カバー30の外周縁部は、複数個所において外槽カバー14にねじ固定されている。また、水路カバー30の外周縁部と外槽カバー14とは、図示しないパッキンを介して水密に構成されている。
【0035】
このように、本実施形態では、外槽カバー14と水路カバー30とによって、洗濯水導入口14bから吐出口31に通じる循環水路18が構成されている。循環水路18の壁の一面(上面)を外槽カバー14によって構成することで、外槽カバー14から下方(内槽9側)に突出する突出量を減らすことができ、洗濯水をより高い位置から散布させることができる。
【0036】
また上記のとおり、外槽カバー14と水路カバー30とで構成される循環水路18には、複数の案内突起が形成されている。これらの案内突起により、洗濯水導入口14bから導入された洗濯水(または、すすぎ水。以下同様)が、吐出口31の一端側に向けて整流され、均一な流量で、吐出口31から内槽9に吐出している。
【0037】
図5は、本実施例の洗濯機100の制御装置110の構成を説明する機能ブロック図である。制御装置110は、マイコン40を中心に構成される。
マイコン40は、運転パターンデータベース111と、工程制御部112と、回転速度算出部113と、洗濯物重量算出部114と、水質測定部115と、洗剤量・洗い時間決定部116とを備える。
【0038】
マイコン40は、操作ボタンスイッチ6から入力された運転コースにあった運転パターンを運転パターンデータベース111から呼び出し、洗濯または/および乾燥を開始する。
工程制御部112は、運転パターンデータベース111から呼び出された運転パターンに基づき、給水工程、洗い工程,すすぎ工程,脱水工程,乾燥工程の各工程を運転・制御する。
【0039】
詳しくは、マイコン40は、給水電磁弁4を制御して洗濯水またはすすぎ水の供給制御をおこない、排水弁15を制御して洗濯水またはすすぎ水の排水をおこなう。
また、マイコン40は、モータ駆動回路121により電動機13aを駆動し、クラッチ制御回路122によりクラッチ機構13bを制御することで、内槽9と脈動翼盤11の回転駆動を制御して、洗濯機100の洗い運転・脱水運転・すすぎ運転をおこなう。
【0040】
また、マイコン40は、ヒータスイッチ123によりヒータ20のON/OFFを制御し、ファン駆動回路124により送風ファン19を駆動する。これにより、洗濯機100の乾燥運転をおこなう。
また、マイコン40は、循環ポンプ駆動回路125により循環ポンプ16を駆動制御し、洗濯水循環機構50の洗濯水またはすすぎ水の循環をおこなう。
【0041】
回転速度算出部113は、電動機13aの回転を検出する回転検出装置28からの検出値に基づき、電動機13aの回転速度を算出する。
洗濯物重量算出部114は、回転速度算出部113で算出された電動機13aの回転速度と、モータ電流検出装置29の検出値に基づいて、内槽9の洗濯物の重量を算出する。詳しくは、洗濯物の重量が増加することにより内槽9の回転負荷が大きくなり、電動機13aのモータ電流が多く必要になることから、電動機13aのモータ電流と回転速度により洗濯物の重量を算出する。
【0042】
水位センサ21は、内槽9の洗濯水あるいはすすぎ水の水位を検出センサである。マイコン40は、水位センサ21の検出結果に基づいて、内槽9に洗濯水あるいはすすぎ水を所定量給水する。また、所定の水位を満たしていないときには、補水をおこなう。
温度センサ26は、水道水の温度を検出するセンサである。マイコン40は、温度センサ26で検出した温度が高い場合には投入する洗剤量を減らすように表示器25に表示し、洗濯時間を短縮する。
振動センサ27は、外槽10の側面外側に設置してあり、内槽9が高速回転する脱水時の振動を検出する。マイコン40は、振動センサ27の出力結果が許容範囲外となる場合には、内槽9の高速回転を停止し、洗濯物の均一撹拌をおこなって、再度脱水を行うか、異常として運転停止する。
【0043】
水質センサ120は、洗濯前の水道水や運転(洗い、すすぎ、脱水)時に洗濯水やすすぎ水の電導度を検出するものであり、外槽10の底部に配置されている。マイコン40は、水質センサ120の検出結果により、洗濯水の洗剤量を判定して洗剤溶解工程の時間を設定し、すすぎ水の洗剤残留量を判定してすすぎ時間またはすすぎ回数を設定する。
【0044】
つぎに、本実施例の洗濯機の処理の概要を、図6により説明する。
マイコン40は、電源スイッチ5が押されて電源が投入されると起動し、図6のフローチャートの基本的な制御処理プログラムを実行する。
【0045】
まず、マイコン40は、洗濯機100の状態確認および初期設定を行う(S601)。
つぎに、マイコン40は、操作パネル8の表示器7を点灯表示し、操作ボタンスイッチ6からの入力指示にしたがって運転コースを設定する(S602)。
そして、マイコン40は、操作パネル8のスタートスイッチ(操作ボタンスイッチ6)を監視し、スタートスイッチが押下されると、洗濯・乾燥運転を開始する(S603)。
【0046】
ステップS604で、マイコン40は、内槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を一方向に回転させ、このときの電動機13aの回転状態に基づいて、内槽9に投入されている乾布状態の洗濯物の量を検出する。そして、検出した量に基づいて、洗剤量・洗い時間・回転数を決定する。
【0047】
給水・洗剤投入の工程(S605)では、給水電磁弁4を開弁して水道水を外槽10に供給し、所定の洗濯水量を貯水する。この洗濯水量は、洗濯物の量が所定の範囲(適量)内のときには脈動翼盤11を越えない水位を維持して外槽10の底部に溜まる水量(水位)になっている。
このとき、水道水は、洗剤・柔軟剤容器28にも供給されて、洗濯洗剤と水道水が外槽10に投入される。そして、内槽9または脈動翼盤11を駆動して水を撹拌し、洗濯洗剤を溶解する。
引き続き、水道水を外槽10に供給し、所定量の洗濯水が貯水されると、つぎの洗い工程に進む(S606)。
【0048】
洗い工程(S606)では、マイコン40は、内槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を正逆回転させる撹拌を間欠的に行い、脈動翼盤11の正逆回転中に循環ポンプ16を運転することによって外槽10の底部の洗い水(洗濯水)を循環パイプ17によってくみ上げて、外槽カバー14に形成された洗濯水導入口14bから水路カバー30に洗濯水を導入する。そして、水路カバー30に形成された吐出口31から洗濯物上に洗濯水を横一文字状に散布する。このように、内槽9が正逆回転中に吐出口31から洗濯水が散布されるので、洗濯物の全体に洗濯水を散水することができる。
【0049】
また、マイコン40は、脈動翼盤11と循環ポンプ16の停止期間中に水位センサ21の検出信号を参照しながら給水電磁弁4を開いて水位が設定水位を越えないように補給水を行う。これにより、洗い工程の初期では、高濃度の洗濯水が洗濯物にむらなく浸透する。洗濯物に浸透した高濃度の洗い水は、油の溶解能力が高く、油脂汚れを溶解し、洗濯物から汚れを浮き上がらせる効果が非常に大きく、高い洗浄力が得られる。
【0050】
洗濯水が所定水位に補給水された後にも、洗い運転を所定時間継続する。このときにも、内槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を正逆回転させながら循環ポンプ16を運転して外槽10の底部に溜った洗濯水(洗い水)を水路カバー30に形成された吐出口31から洗濯物に散布する洗い水循環を行う約2分間の撹拌と、循環ポンプ16の運転を停止して洗濯水(洗い水)の循環を止めた状態で脈動翼盤11を正逆回転させる約1分間の布ほぐし撹拌とを繰り返す。
【0051】
所定時間の洗い運転が経過すると、マイコン40は、循環ポンプ16の運転を停止し、洗濯水の循環を止めた状態で脈動翼盤11を正逆回転させる均一化撹拌を実行した後、洗い運転を終了する。
この後、詳細を後述するすすぎ工程1(S607)とすすぎ工程2(S608)をおこなう。ここでは、説明を省略する。
【0052】
脱水工程(S609)では、マイコン40は、最終脱水を実行する。最終脱水では、排水弁15を開放したままの状態で、内槽9と脈動翼盤11を一体的にして一方向に約1000rpmで高速回転し、内槽9内の洗濯物を遠心脱水する。この最終脱水の運転時間は、所望の脱水率が得られる時間に設定する。
【0053】
つぎに、洗濯乾燥コースが設定されているか否かを判定する(S610)。
洗濯乾燥コースが設定されていないと判定した場合には(S610のNo)、洗濯機100の運転を終了する。
洗濯乾燥コースが設定されていると判定した場合には(S610のYes)、つぎの乾燥工程(S611)を実行する。
【0054】
乾燥工程(S611)では、マイコン40は、排水弁15を開放したまま、洗い行程と同様に、内槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を正逆回転させながら、乾燥ダクト(不図示)の途中に設けた送風ファン19を運転する。これにより、外槽10内の空気が通水通気口10b(図2参照)から乾燥ダクト(不図示)内に吸い出され、乾燥ダクト内を通過するときに該乾燥ダクト内に設置した除湿機構から流れ落ちる冷却水に触れることで冷却除湿される。冷却除湿された空気は、リントフィルタを通して糸屑を捕集し、ヒータ20によって加熱された後に温風導入口14c(図3参照)から内槽9内に吹き込まれる。
マイコン40は、所定時間の経過後に、上記の制御を終了し、乾燥工程(S611)を終了する。
【0055】
つぎに、本実施例の洗濯機100のすすぎ工程1、2(S607、S608)の詳細を説明する。
まず、図7により、本実施例のすすぎ工程の特徴を説明する。
【0056】
図7は、すすぎ工程での内槽9内を模式的に表わした図である。本実施例の一つのすすぎ工程は、回転シャワーすすぎ運転とためすすぎ運転の2つの方式のすすぎ運転をおこなっている。図7の左図は、回転シャワーすすぎ運転時の内槽9内を表わし、図7の右図は、ためすすぎ運転時の内槽9内を表わしている。
【0057】
図7の左図のとおり、高速脱水後の内槽9内の洗濯物は、内槽9の内周に均一に押し付けられた凹状態となっている。回転シャワーすすぎ運転では、内槽9と脈動翼盤11を一体に低速回転させ(約50rpm)、内槽9の洗濯物に、外槽カバー14の散水口14f(図4参照)から水道水をシャワー散水している。
回転シャワーすすぎ運転では、洗濯物には常に散布された清澄な水が浸透し、洗濯物の繊維の間から洗濯洗剤や汚れが水に移動し、洗濯洗剤や汚れが移動した水はすぐに排水されるので、洗濯洗剤や汚れが洗濯物に再付着することがなく、すすぎ効果が高い。
【0058】
しかし、高速脱水後の内槽9内の洗濯物は凹状態となっているため、内槽9の内面の高い位置に押し付けられた洗濯物と、内槽9の底の洗濯物とでは、水の浸透状態や脱水状態が異なる。このため、本実施例では、高い位置の洗濯物に向けてシャワー散水をおこない、洗濯物全体の約半分程度に水が浸透して、脱水されるように、シャワー散水量と内槽9の回転数(約50rpm)を調節している。
つまり、本実施例の回転シャワーすすぎ運転では、洗濯物の半量が、洗濯洗剤や汚れが少なくなりやすく、すすぎやすい状態となっているが、残りの半量は、すすぎにくい状態となっている。
なお、回転数を調整するのは、回転数が高めると遠心力が大きくなるので、遠心脱水量が増し、洗濯物へのすすぎ水の浸透が少なくなるためである。
【0059】
そこで、本実施例ですすぎ工程では、回転シャワーすすぎ運転の後に、図7の右図のように、ためすすぎ運転をおこなうようにした。これにより、洗濯物のすすぎが弱い部分のすすぎがおこなわれるとともに、洗濯物の撹拌をおこなって、洗濯物のすすぎ状態を均一化している。
ためすすぎ運転は、内槽9を固定した状態で脈動翼盤11を正逆回転させる撹拌を間欠的に行い、すすぎ水の撹拌・洗濯の撹拌をおこなっているが、すすぎ水を循環するようにしてもよい(以降、これを循環ためすすぎ運転という)。
【0060】
詳しくは、循環ためすすぎ運転では、内槽9を固定した状態で脈動翼盤11を正逆回転させる撹拌を間欠的に行い、脈動翼盤11の正逆回転中に循環ポンプ16を運転することによって、外槽10の底部のすすぎ水(洗濯水)を、循環パイプ17を介して汲み上げて、外槽カバー14に形成された洗濯水導入口14bから水路カバー30に洗濯水を導入する。そして、水路カバー30に形成された吐出口31から洗濯物上にすすぎ水を横一文字状に散水する。このように、内槽9が正逆回転中に吐出口31からすすぎ水が散水されるので、洗濯物の全体にすすぎ水を散水する。
これにより、ためすすぎ水を少量化でき、また、すすぎ性能も向上する。
【0061】
本実施例の洗濯機100では、ひとつのすすぎ工程で回転シャワーすすぎ運転のつぎに循環ためすすぎ運転をおこなうようにし、洗濯・乾燥運転では、少なくとも2回のすすぎ工程をおこなうようにした。これにより、洗濯物の回転シャワーすすぎされる部分を均一化して、洗濯物全体では、汚れがなく、残留洗剤を減少させることができる。
【0062】
つぎに、本実施例の洗濯機100のすすぎ工程を図8により詳細に説明する。図8は、図6のステップS607のすすぎ工程1とステップS608のすすぎ工程2の工程図のタイムチャートである。図の上部にそれぞれの工程の名称を記し、中部に内槽9または脈動翼盤11の回転状態を示し、下段に電動機13aと給水電磁弁4と柔軟剤投入と排水弁15と循環ポンプ16の制御状態を示している。
【0063】
上述のとおり、本実施例では、すすぎ工程1(S607)とすすぎ工程2(S608)は、それぞれ、回転シャワーすすぎ運転と循環ためすすぎ運転をおこなうとともに、回転シャワーすすぎ運転と循環ためすすぎ運転の前に、脱水運転をおこなっている。
詳しくは、すすぎ工程1では脱水1と回転シャワーすすぎ1と脱水2と循環ためすすぎ1の運転を順次おこない、すすぎ工程2では脱水3と回転シャワーすすぎ2と脱水4と循環ためすすぎ2の運転を順次おこう。
つぎに、それぞれの運転の内容を説明する。
【0064】
脱水1の運転では、排水弁15を作動(ON)して開放にしたまま、電動機13aを作動(ON)して、内槽9と脈動翼盤11を一体的に一方向に高速回転(約1000rpm)させ、内槽9内の洗濯物を遠心脱水する。
このとき、洗濯物に含まれるすすぎ水は、内槽9の外周壁の貫通孔9aから外槽10に排水されるが、外槽10からの排水が滞留することないように、内槽9の回転を段階的に高くする。
【0065】
所定時間が経過すると、電動機13aを停止(OFF)し、内槽9がつぎの回転シャワーすすぎ1の回転数になると、脱水1の運転が終了する。
なお、脱水1の運転の前の、洗い工程の最後に、洗濯水の循環を止めた状態で脈動翼盤11を正逆回転させる均一化撹拌を実行しているので、洗濯物のアンバランス状態はなくなっている。
【0066】
回転シャワーすすぎ1の運転では、電動機13aを作動(ON)して内槽9を低速回転数(約50rpm)に設定する。そして、給水電磁弁4を作動(ON)して、脱水1の運転で内槽9の内周に均一に押し付けられた凹状態となっている洗濯物の上部に、シャワー散水する。シャワー散水されたすすぎ水は、内槽9の外周壁の貫通孔9aから外槽10に流水し、さらに、排水弁15が作動(ON)しているので、排水される。
所定時間が経過すると、回転シャワーすすぎ1の運転を終了し、つぎの脱水2の運転をおこなう。
【0067】
脱水2の運転は、脱水1の運転と同様におこなえばよいので、説明は省略する。
ただし、脱水1の運転に比べて洗濯物に含まれるすすぎ水の量は少ないため、脱水時間は短くてもよく、また、内槽9の回転を短時間に高速にすることができる。また、脱水1の運転よりも高速回転(約1050rpm)することができる。
所定時間の脱水2の運転をおこなった後に、つぎの循環ためすすぎ1の運転をおこなう。
【0068】
循環ためすすぎ1の運転では、給水電磁弁4を作動(ON)して、外槽10に所定量のすすぎ水を給水する。
そして、電動機13aを作動(ON)して内槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を正逆回転させる撹拌を間欠的に行い、脈動翼盤11の正逆回転中に循環ポンプ16を作動(ON)して外槽10の底部のすすぎ水をくみ上げて、水路カバー30に形成された吐出口31から洗濯物上に洗濯水を横一文字状に散布する。
【0069】
所定時間、上記の運転をおこなった後に、排水弁15を作動させて、排水をおこなう。
このとき、脈動翼盤11を正逆回転させて撹拌をおこなっているので、内槽9の洗濯物のアンバランス状態はなくなっている。
排水が終了すると、すすぎ工程1(S607)を終了し、つぎのすすぎ工程2(S608)に移行する。
【0070】
すすぎ工程2(S608)では、すすぎ工程1(S607)と同様の運転をおこなう。詳しくは、脱水3の運転は脱水1の運転と同じであり、回転シャワーすすぎ2の運転は回転シャワーすすぎ1の運転と同じであり、脱水4の運転は脱水2の運転と同じである。循環ためすすぎ2の運転では、循環ためすすぎ1の運転と同じ運転をおこない、さらに、柔軟剤投入をおこなうようにする。
循環ためすすぎ2の運転で排水が終了すると、すすぎ工程2(S608)を終了し、脱水工程(S609)に移行する。
【0071】
すすぎ工程2(S608)では、すすぎ工程1(S607)と同様の運転をおこなえばよいが、洗濯物のすすぎが進行しているので、循環ためすすぎ2の運転時間を短くすることもできる。この際には、後述するすすぎ水の洗剤残量(アルカリ度)を検出し、すすぎ工程1のすすぎ水の洗剤残量(アルカリ度)からの変化に応じて、運転時間を短くすることもできる。
しかし、回転シャワーすすぎ2の運転時間は、洗濯物の洗濯洗剤や汚れが移動したすすぎ水を排水しているので、すすぎ効果が高く、回転シャワーすすぎ1の運転時間と同じ時間運転することが望ましい。
【0072】
図9は、すすぎ工程を、すすぎ工程1とすすぎ工程2とすすぎ工程3の3つの工程で運転する場合の工程図のタイムチャートを示している。
図9のすすぎ工程1とすすぎ工程2は図8のすすぎ工程1と同じ運転をおこない、図9のすすぎ工程3は図8のすすぎ工程2と同じ運転をおこなう。
図9では、図8で説明したすすぎ工程よりすすぎ運転回数が多いので、より大きなすすぎ性能を得ることができる。
【0073】
図8図9で説明したすすぎ工程は、洗濯機100の標準運転モードでおこなうようにしてもよいし、操作パネル8の操作ボタンスイッチ6により、運転コースのひとつとして設定できるようにしてもよい。
【0074】
つぎに、本実施例の効果を図10により説明する。
図10は、2種類のすすぎ工程をもつ従来の洗濯機のすすぎ性能の測定値と、図8図9で説明したすすぎ工程c、dをもつ本実施例の洗濯機のすすぎ性能の測定値を示したものである。
従来のすすぎ工程には、シャワーすすぎの後に、ためすすぎをおこなうすすぎ工程aと、3度のためすすぎをおこなうすすぎ工程bの2つがある。
【0075】
すすぎ性能の測定値として、洗い工程を含めた洗濯水量と、すすぎ水の洗剤残量を示している。
ここで、すすぎ水の洗剤残量について説明する。
すすぎ水の洗剤残量は、洗濯した洗濯物の洗剤残量を直接示すものではないが、すすぎ水の洗剤残量が少なければ、すすぎにより洗濯物から剥離された洗剤量は少なく、洗濯した洗濯物にも洗剤が残留していないと考えられる。すすぎ水の洗剤残量はアルカリ度で定量化され、水道水とすすぎ水のアルカリ度の差により求められる。したがって、この値が小さければ、洗濯物の洗剤残量は少ないといえる。
【0076】
図10に示されるとおり、本実施例のすすぎ工程c、dによれば、洗濯水量は増加するが、すすぎ水の洗剤残量(アルカリ度)は少なくなっており、洗濯物の洗剤残量を少なくすることができる。例えば、従来のすすぎ工程bと本実施例のすすぎ工程cの比較では、洗濯水量・すすぎ水の洗剤残量(アルカリ度)・洗濯時間が従来よりも少なくなっている。
特に、洗濯洗剤に含まれる界面活性剤の皮膚への刺激性が問題となる場合があるが、図9に示したすすぎ工程dによれば、乳幼児や皮膚が弱い人でも問題ないといわれているレベルに洗剤残量を低減することができる。
【0077】
また、詳細には説明しないが、すすぎ水の残留洗剤を減らすことで洗剤成分の中和作用が低下するので、柔軟剤の性能を十分発揮できるようなる。
【0078】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明で分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0079】
4 給水電磁弁
9 内槽
10 外槽
11 脈動翼盤
13 駆動装置
15 排水弁
16 循環ポンプ
40 マイコン
110 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10