特許第6523810号(P6523810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6523810無線中継システム、無線中継システムの子機、及び、無線中継システムの復帰方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523810
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】無線中継システム、無線中継システムの子機、及び、無線中継システムの復帰方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/04 20090101AFI20190527BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20190527BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20190527BHJP
【FI】
   H04W24/04
   H04W16/26
   H04W88/08
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-121308(P2015-121308)
(22)【出願日】2015年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-11323(P2017-11323A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川畑 賢正
【審査官】 三枝 保裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−217148(JP,A)
【文献】 特開2004−247824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機と、
前記親機よりも通信経路の下位側に接続され、端末と無線通信する複数の子機と、を備えた無線中継システムにおいて、
前記複数の子機のそれぞれは、
前記親機または上位側の前記子機から送られてきた信号を受信した後、当該信号を前記端末に無線通信し、下位側の前記子機へ前記信号を送信する通信部と、
前記親機または上位側の前記子機と下位側の前記子機とを前記通信部を介して接続する通常接続と、前記親機または上位側の前記子機と下位側の前記子機とを前記通信部を介さずに接続するバイパス接続とに切り替え可能な切替部と
記通信部が正常か異常かを判定する判定部と、
前記判定部が前記通信部を異常と判定すると、前記切替部を前記バイパス接続に切り替え、前記切替部を前記バイパス接続に切り替えた後、予め定められた復帰時刻に前記切替部を前記通常接続に切り替える切替制御部と、
を備え、
前記判定部は、前記切替部を前記通常接続に切り替えた後、前記通信部を再起動させる、
無線中継システム。
【請求項2】
前記判定部が再起動させた前記通信部を異常と判定すると、
前記切替制御部は前記切替部を前記バイパス接続に切り替える
請求項1に記載の無線中継システム。
【請求項3】
前記判定部が予め定められた規定回数再起動させた前記通信部を異常と判定すると、
前記切替制御部は、前記切替部を前記バイパス接続に切り替える
請求項に記載の無線中継システム。
【請求項4】
通信経路の上位側の親機または上位側の子機から送られてきた信号を受信した後、当該信号を端末に無線通信し、下位側の子機へ前記信号を送信する通信部と、
前記親機または前記上位側の子機と前記下位側の子機とを前記通信部を介して接続する通常接続と、前記親機または前記上位側の子機と前記下位側の子機とを前記通信部を介さずに接続するバイパス接続とに切り替え可能な切替部と
記通信部が正常か異常かを判定する判定部と、
前記判定部が前記通信部を異常と判定すると、前記切替部を前記バイパス接続に切り替え、前記切替部を前記バイパス接続に切り替えた後、予め定められた復帰時刻に前記切替部を前記通常接続に切り替える切替制御部と、
を備え、
前記判定部は、前記切替部を前記通常接続に切り替えた後、前記通信部を再起動させる、
無線中継システムの子機。
【請求項5】
前記判定部が再起動させた前記通信部を異常と判定すると、
前記切替制御部は前記切替部を前記バイパス接続に切り替える
請求項に記載の無線中継システムの子機。
【請求項6】
前記判定部が予め定められた規定回数再起動させた前記通信部を異常と判定すると、
前記切替制御部は、前記切替部を前記バイパス接続に切り替える
請求項に記載の無線中継システムの子機。
【請求項7】
親機と、親機よりも通信経路の下位側に接続され、端末と無線通信する複数の子機と、を備えた無線中継システムにおいて実行される無線中継システムの復帰方法であって、
前記複数の子機のそれぞれは、
前記親機または上位側の前記子機から送られてきた信号を受信した後、当該信号を前記端末に無線通信し、下位側の前記子機へ前記信号を送信する通信部と、
前記親機または上位側の前記子機と下位側の前記子機とを通信部を介して接続する通常接続と、前記親機または上位側の前記子機と下位側の前記子機とを前記通信部を介さずに接続するバイパス接続とに切り替え可能な切替部と、を備え、
前記通信部が正常か異常かを判定する判定段階と、
前記判定段階によって前記通信部を異常と判定すると、前記切替部を前記バイパス接続に切り替え、前記切替部を前記バイパス接続に切り替えた後、予め定められた復帰時刻に前記切替部を前記通常接続に切り替える切替制御段階と、
前記切替部を前記通常接続に切り替えた後、前記通信部を再起動させる再起動段階と、
を含む無線中継システムの復帰方法。
【請求項8】
前記判定段階で前記通信部が異常と判定されると、前記通信部を前記バイパス接続に切り替える第2切替制御段階を更に備える請求項に記載の無線中継システムの復帰方法。
【請求項9】
前記再起動段階による前記通信部の再起動を予め定められた規定回数実行して、前記通信部が異常と判定されると、前記通信部を前記バイパス接続に切り替える第3切替制御段階を更に備える請求項に記載の無線中継システムの復帰方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線中継システム、無線中継システムの子機、及び、無線中継システムの復帰方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信事業者の不感知対策及び通信エリア拡張として、基地局からの無線信号を同軸ケーブルまたは光ファイバを介して中継して接続された親機と、親機と接続された子機とを備える無線中継システムが知られている。このような無線中継システムでは、互いに接続され、無線中継装置としても機能する複数の子機を無線信号の届かない閉空間に設置することで不感知帯の解消、通信エリア拡張を実現する。
【0003】
このような無線中継システムでは、シリアルに接続された子機のいずれかが故障すると、当該子機の下位側に接続された子機が正常であっても端末と通信できない。そこで、故障した子機をバイパスして、故障した子機の下位側の子機と、故障した子機の上位側の子機または親機とを接続する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−247824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、故障した子機が一時的な故障であっても、当該子機がバイパスされているので作業者に修理されるまで通信できないといった課題がある。
【0006】
本発明の実施形態は、上記に鑑みてなされたものであって、一時的な故障の子機を復帰させて通信させることができる無線中継システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の無線中継システムは、親機と、複数の子機とを備える。複数の子機は、親機よりも通信経路の下位側に接続され、端末と無線通信する。複数の子機のそれぞれは、切替部と、通信部と、判定部と、切替制御部とを備える。通信部は、親機または上位側の子機から送られてきた信号を受信した後、当該信号を端末に無線通信し、下位側の子機へ信号を送信する。切替部は、親機または上位側の子機と下位側の子機とを通信部を介して接続する通常接続と、親機または上位側の子機と下位側の子機とを通信部を介さずに接続するバイパス接続とに切り替え可能である。判定部は、通信部が正常か異常かを判定する。判定部が通信部を異常と判定すると、切替部をバイパス接続に切り替え、切替部をバイパス接続に切り替えた後、予め定められた復帰時刻に切替部を通常接続に切り替える。判定部は、切替部を通常接続に切り替えた後、通信部を再起動させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態にかかる無線中継システムの全体構成図である。
図2図2は、子機の内部構成図である。
図3図3は、通信部の異常が検出された場合に、制御部によって実行される復帰処理のフローチャートである。
図4図4は、第2実施形態にかかる無線中継システムの全体構成図である。
図5図5は、第2実施形態にかかる子機の内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の例示的な実施形態や変形例には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、重複する説明が部分的に省略される。実施形態や変形例に含まれる部分は、他の実施形態や変形例の対応する部分と置き換えて構成されることができる。また、実施形態や変形例に含まれる部分の構成や位置等は、特に言及しない限りは、他の実施形態や変形例と同様である。
【0010】
無線中継システム10は、一般に、リピータとか、分散アンテナシステム(DAS:Distributed Antenna System)とも称されるシステムである。無線中継システム10は、基地局12からの無線信号を同軸ケーブルまたは光ファイバを介して中継して接続された親機(Master Unit:略してMU)14と、複数の子機(Remote Unit:略してRU)18に分配することよって通信を中継して、無線信号の届かない閉空間(例えば、ビル、地下街等)に設置され、親機と接続された子機(Remote Unit:略してRU)18を介して通信を中継するもので、モバイル通信事業者の不感知帯の解消、通信エリア拡張を実現するシステムである。
【0011】
<第1実施形態>
第1実施形態は、無線中継システム10を、無線信号の届かない閉空間の一例として鉄道や高速道路等の交通機関のトンネルに設置された場合の実施形態である。本実施形態の無線中継システム10では、一般的なビル、地下街等の屋内空間に設置される装置に故障が発生した場合、人が容易に設置場所に入り込んで修理を行うことができる。これに対し、交通機関等のトンネルに無線中継システム10が設置されている場合(特に、速度の速い新幹線等)では、人がトンネルに入り込んで修理を行うためには、安全上運行を止めて(道路の場合は通行止めの処置を行ってから)修理を行う必要がある。このため、運行が終了した夜間等まで待たないと、修理を行うことができない。
【0012】
図1は、第1実施形態にかかる無線中継システム10の全体構成図である。図1に示すように、無線中継システム10は、基地局12と、親機14と、トンネル92等の内部にシリアルに設置された複数の子機18と、監視装置16とを備える。
【0013】
基地局12は、携帯電話網に接続されるもので、トンネル92の外部に設置される。
【0014】
親機14は、基地局12と光ファイバまたは同軸ケーブル等によって接続されている。親機14は、基地局12と有線通信によって、情報を送受信する。親機14は、例えば、トンネル92の外部等に設置されるが、特に設置場所は限定されるものではない。
【0015】
監視装置16は、無線中継システム10を監視して、異常状態等を検出する。監視装置16は、コンピュータ等を有する。
【0016】
複数の子機18は、直接的または間接的に親機14と接続される。複数の子機18は、光ファイバ94によってシリアル(即ち、直列)に接続されている。シリアルに接続された子機18のうち最も上位の子機18は、親機14と光ファイバ94によって接続されている。最も上位の子機18以外の子機18は、互いに光ファイバ94でシリアルに接続されている。換言すれば、子機18は、通信経路において、上位側の子機18または親機14と接続されるとともに、下位側の子機18と接続されている。これにより、子機18は、上位側の子機18と下位側の子機18との通信を中継する無線中継装置として機能する。複数の子機18は、トンネル92の内部の異なる複数の場所に設置される。これにより、複数の子機18が、トンネル92の内部の全域での通信を実現する。この結果、無線中継システム10は、複数の子機18によって、不感知帯対策及び通信エリア拡張を実現する。各子機18は、携帯電話及びスマートフォン等の端末90と無線通信によって情報を送受信する。
【0017】
図2は、子機18の内部構成図である。図2に示すように、複数の子機18のそれぞれは、切替部の一例である光スイッチ20と、通信部22と、制御部24とを備える。
【0018】
光スイッチ20は、4つの端子26、28、30、32を有し、これら4つの端子26、28、30、32の接続を切り替える。端子26は、上位側の子機18または親機14と接続される。端子28は、下位側の子機18と接続される。端子30及び端子32は、通信部22と接続される。
【0019】
光スイッチ20は、通信部22が端末90と通信可能な正常状態では、図2に実線で示すように、端子26と端子30とを接続するとともに、端子28と端子32とを接続(以下、通常接続)する。これにより、光スイッチ20は、通常接続では、通信経路の上位側の子機18または親機14と、通信経路の下位側の子機18とを、通信部22を介して接続する。
【0020】
光スイッチ20は、通信部22が端末90と通信不可能な異常状態、及び、子機18への電源未投入または電源装置異常等の電源が入らない異常状態では、図2に点線で示すように、端子26と端子28とを接続する。端子30と端子32は、他の端子26及び端子28に接続されない。これにより、光スイッチ20は、通信経路の上位側の子機18または親機14と、通信経路の下位側の子機18とを、通信部22を介さずに接続(以下、バイパス接続)する。従って、通信部22は、バイパス接続では、通信経路に接続されず、通信に関与しない。光スイッチ20は、制御部24の制御に基づいて、通常接続と、バイパス接続とを切り替える。
【0021】
通信部22は、送受信する通信の信号を変換等の処理を実行して、他の子機18及び端末90等と信号を送受信する。通信部22は、光スイッチ20と接続されている。通信部22は、上位側光電変換部40と、信号処理部42と、送信部44と、デュプレクサ46と、アンテナ48と、受信部50と、下位側光電変換部52とを備える。
【0022】
上位側光電変換部40は、光スイッチ20の端子30と信号処理部42との間に接続されている。上位側光電変換部40は、光スイッチ20の端子26及び端子30を介して、上位の子機18または親機14から入力された光信号を電気信号に変換する。上位側光電変換部40は、変換した電気信号を信号処理部42へ出力する。また、上位側光電変換部40は、信号処理部42から入力された電気信号を光信号に変換する。上位側光電変換部40は、光スイッチ20の端子30及び端子26を介して、変換した光信号を上位の子機18または親機14へ出力する。
【0023】
信号処理部42は、上位側光電変換部40、送信部44、下位側光電変換部52、及び、受信部50と接続されている。信号処理部42は、上位側光電変換部40から入力された電気信号を送信部44及び下位側光電変換部52へ出力する。信号処理部42は、加算器54を有する。信号処理部42は、受信部50及び下位側光電変換部52から入力された電気信号を加算器54によって加算、即ち、多重化して上位側光電変換部40へ出力する。
【0024】
送信部44は、信号処理部42とデュプレクサ46との間に接続されている。送信部44は、D/A変換部56と、アナログ回路58とを有する。送信部44では、D/A変換部56が、信号処理部42が出力したデジタルの電気信号をアナログの電気信号に変換する。アナログ回路58は、D/A変換部56が出力したベースバンドのアナログの電気信号を無線周波数の電気信号に変換して増幅した後、デュプレクサ46及びアンテナ48を介して、端末90へ送信する。
【0025】
デュプレクサ46は、送信部44、受信部50、及び、アンテナ48と接続されている。デュプレクサ46は、送信部44が出力した電気信号を受信部50へ出力することなく、アンテナ48へ出力する。デュプレクサ46は、外部の端末90からアンテナ48が受信した電気信号を、送信部44へ出力することなく、受信部50へと出力する。
【0026】
アンテナ48は、デュプレクサ46を介して送信部44から入力した電気信号を端末90へと送信する。アンテナ48は、外部の端末90が送信した電気信号を受信して、デュプレクサ46へと出力する。
【0027】
受信部50は、信号処理部42とデュプレクサ46との間に接続されている。受信部50は、アナログ回路60と、A/D変換部62とを有する。受信部50では、アナログ回路60が、アンテナ48を介して端末90から受信した無線周波数の電気信号を増幅してベースバンドの電気信号に変換する。A/D変換部62は、アナログ回路60が出力したベースバンドのアナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換して、信号処理部42へ出力する。
【0028】
下位側光電変換部52は、光スイッチ20の端子32と信号処理部42との間に接続されている。下位側光電変換部52は、信号処理部42から入力された電気信号を光信号に変換する。下位側光電変換部52は、光スイッチ20の端子28及び端子32を介して、変換した光信号を下位の子機18へと出力する。また、下位側光電変換部52は、光スイッチ20の端子28及び端子32を介して、下位の子機18から入力された光信号を電気信号に変換する。下位側光電変換部52は、変換した電気信号を信号処理部42へ出力する。
【0029】
制御部24は、子機18の制御全般を司る。制御部24の一例は、コンピュータである。制御部24は、光スイッチ制御部74と、記憶部76とを有する。
【0030】
光スイッチ制御部74は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を含む。光スイッチ制御部74は、判定部78と、切替制御部80とを備える。例えば、光スイッチ制御部74は、記憶部76に記憶されたプログラムを読み込むことによって、切替制御部80と、判定部78として機能する。尚、判定部78及び切替制御部80の一部または全てを回路等のハードウエアによって構成してもよい。
【0031】
判定部78は、子機18の通信部22を制御する。判定部78は、通信部22が通信可能な正常か通信不可能な異常かを判定する。判定部78は、通信部22が異常と判定すると、切替制御部80に異常である旨の信号を出力して、光スイッチ20をバイパス接続に切り替えさせる。判定部78の判定する通信部22及び制御部24の異常は、電源異常及び通信異常を含む。電源異常は、通信部22に電力を供給する電源の異常、及び、電力の供給異常を含む。尚、制御部24が電源異常となり動作しない場合、光スイッチ20は制御部24の制御によらず自律的にバイパス接続となる。通信異常は、通信用に通信部22に供給されるクロックの異常を含む。また、判定部78は、異常と判定した後、通信部22及び制御部24を含む子機18を再起動させて、切替制御部80が光スイッチ20をバイパス接続から通常接続に復帰させた状態で、通信部22が正常か異常かを再度判定する。例えば、判定部78は、異常と判定した後、予め定められた復帰時刻に子機18を再起動させる。判定部78は、通信部22の上位側光電変換部40、信号処理部42、送信部44、デュプレクサ46、受信部50、及び、下位側光電変換部52のいずれかまたは全てと制御部24とを再起動させる。判定部78は、再起動させた通信部22が正常と判定すると、通常接続を維持させる。
【0032】
切替制御部80は、光スイッチ20を制御する。例えば、切替制御部80は、通信部22が判定部78によって通信可能な正常と判定されている状態では、図2に実線で示すように、端子26と端子30とを接続させるとともに、端子28と端子32とを接続させて、光スイッチ20を通常接続とする。切替制御部80は、判定部78が通信部22を通信不可能な異常と判定すると、図2に点線で示すように、端子26と端子28とを接続させて、光スイッチ20をバイパス接続に切り替える。また、切替制御部80は、通信部22が判定部78によって異常と判定されることにより光スイッチ20をバイパス接続に切り替えた後、復帰時刻になると、バイパス接続から通常接続に光スイッチ20を切り替える。
【0033】
記憶部76は、揮発性のRAM(Random Access Memory)、及び、不揮発性のフラッシュメモリ等を有する。記憶部76は、光スイッチ制御部74によって読み込まれるプログラム、及び、プログラムの実行に必要なパラメータ等を記憶する。
【0034】
次に、通信部22が判定部78によって正常と判定されている状態における子機18の動作について説明する。
【0035】
まず、通信部22が正常状態の子機18の動作を説明する。正常状態の子機18では、光スイッチ制御部74の切替制御部80は、図2に実線で示すように光スイッチ20の端子26と端子30とを接続するとともに、端子28と端子32とを接続させている。
【0036】
上位の子機18または親機14から電気信号が入力された場合の子機18の動作について説明する。光スイッチ20は、上位の子機18または親機14から電気信号が端子26に入力されると、端子30から上位側光電変換部40へ出力する。上位側光電変換部40は、信号処理部42を介して、電気信号を送信部44及び下位側光電変換部52へ出力する。送信部44は、アナログのベースバンドの電気信号をデジタルの無線周波数に変換した後、デュプレクサ46及びアンテナ48を介して、端末90へと送信する。また、下位側光電変換部52は、信号処理部42を介して、上位側光電変換部40から入力された電気信号を光信号に変換して光スイッチ20の端子32へと出力する。光スイッチ20は、端子32に入力した光信号を端子28から下位の子機18へと出力する。
【0037】
子機18が、端末90から電気信号を受信した場合、及び、下位の子機18から光信号が入力された場合の子機18の動作について説明する。アンテナ48が端末90から電気信号を受信すると、当該電気信号をデュプレクサ46を介して、受信部50へ出力する。受信部50は、無線周波数のアナログの電気信号をデジタルのベースバンドの電気信号に変換して、信号処理部42の加算器54へ出力する。光スイッチ20は、下位の子機18から端子28に入力された光信号を、端子32を介して、下位側光電変換部52へ出力する。下位側光電変換部52は、光信号を電気信号に変換して、信号処理部42の加算器54へ出力する。信号処理部42の加算器54は、受信部50から入力された電気信号及び下位側光電変換部52から入力された電気信号を加算、即ち多重化して上位側光電変換部40へ出力する。上位側光電変換部40は、多重化された電気信号を光信号に変換して、光スイッチ20の端子30へと出力する。光スイッチ20は、端子30に入力した電気信号を端子26から上位の子機18または親機14へと出力する。
【0038】
次に、通信部22が異常状態の子機18の動作を説明する。通信部22が異常状態の子機18では、光スイッチ制御部74の切替制御部80は、図2に点線で示すように光スイッチ20の端子26と端子28とをバイパス接続させる。この状態では、子機18は、上位の子機18または親機14から光スイッチ20の端子26に入力した光信号を、通信部22を介すことなく、端子28から下位の子機18へと出力する。また、子機18は、下位の子機18から光スイッチ20の端子28に入力した光信号を、通信部22を介すことなく、端子26から上位の子機18または親機14へと出力する。換言すれば、異常状態の子機18は、入力する光信号に対して何も変換及び処理することなく出力する。
【0039】
図3は、通信部22が異常と判定された場合に、光スイッチ制御部74が実行する復帰処理のフローチャートである。図3を参照して、異常状態における復帰処理について説明する。
【0040】
通信部22の異常状態における復帰処理は、判定部78によって通信部22が異常と判定された場合に、図2に点線で示すバイパス接続に切り替えられた状態から開始する。復帰処理では、判定部78は、復帰時刻か否かを判定する(S100)。復帰時刻は、予め設定されて記憶部76に格納されている。例えば、復帰時刻は、子機18と端末90との通信が少ない午前2時等の深夜の時刻に設定される。判定部78は、復帰時刻となるまで待機する(S100:No)。
【0041】
判定部78は、復帰時刻になったと判定すると(S100:Yes)、切替制御部80に復帰指示を出力する(S110)。切替制御部80は、復帰指示を取得すると、光スイッチ20をバイパス接続から通常接続に切り替える(S120)。判定部78は、復帰指示を出力した後、子機18を再起動させる(S130)。
【0042】
判定部78は、子機18を再起動させた状態で、通信部22が正常か異常かを判定する(S140)。判定部78は、通信部22が通常の通信ができる正常状態と判定すると(S140:Yes)、光スイッチ20の通常接続を維持させて(S145)、復帰処理を終了する。この結果、子機18は、通信部22による通常の通信に復帰する。
【0043】
一方、判定部78は、通信部22が通常の通信ができない異常状態と判定すると(S140:No)、判定カウントNを1インクリメントする(S150)。判定カウントNは、復帰処理が開始されたときは初期値(例えば、0)に設定されて記憶部76に格納されている。
【0044】
判定部78は、判定カウントNが規定回数SNか否かを判定する(S160)。規定回数SNは、予め設定されて記憶部76に格納されている。規定回数SNの一例は、数回である。判定部78は、判定カウントNが規定回数SNでないと判定すると(S160:No)、子機18を再起動して、通信部22が正常か否かを判定する。判定部78は、通信部22を正常と判定しない限り、ステップS130からS150を繰り返す。この後、判定部78は、ステップS130からS150を繰り返して、判定カウントNが規定回数SNになったと判定すると(S160:Yes)、切替制御部80へバイパス指示を出力する(S170)。切替制御部80は、バイパス指示を取得すると、光スイッチ20をバイパス接続に戻す(S180)。換言すれば、判定部78は通信部22を規定回数SN再起動しても通信部22を正常と判定しなかった場合、切替制御部80は光スイッチ20をバイパス接続に切り替える。この結果、光スイッチ制御部74は、子機18の通信部22を復帰させることなく、復帰処理を終了する。
【0045】
上述したように、無線中継システム10の子機18では、判定部78が異常と判定した子機18を再起動させて、切替制御部80が光スイッチ20を通常接続に切り替えた後、判定部78は、通信部22が正常か異常かを再度判定する。これにより、判定部78は、子機18を再起動させることによって、一時的に故障しただけで正常に動作する子機18を正しく判定することができるので、子機18による通信を容易に復帰させることができる。また、制御部24は、一時的に故障しただけの正常な通信部22を作業者等の修理によらず復帰させることができる。従って、無線中継システム10の子機18が、トンネル92等のように人が入り込んで修理することが困難な場所に設置されていても、それぞれの子機18の制御部24は、容易かつ迅速に通常の通信に復帰させることができる。この結果、それぞれの子機18の制御部24は、通信の再開に必要なトンネル92での作業の申請等を省略するとともに、作業に必要な時間を低減できる。
【0046】
子機18では、判定部78が予め設定した復帰時刻に子機18の再起動を実行する。これにより、制御部24は、子機18が通信をほとんど行わない夜間等に子機18の再起動を実行できる。これにより、制御部24は、通信部22を接続することによる下位の子機18の通信への影響を低減しつつ、通信部22の復帰を実現できる。
【0047】
子機18では、判定部78が再起動させた通信部22を異常と判定すると、切替制御部80が光スイッチ20をバイパス接続に戻す。これにより、制御部24は、通信部22が一時的な故障でない場合、下位の子機18を通信可能な状態に戻すことができる。
【0048】
子機18では、判定部78が通信部22を規定回数SN再起動させて、通信部22が正常か否かを判定するので、正常な通信部22の判定精度を向上させることができる。
【0049】
上述の実施形態では、携帯電話網の不感知対策としての無線中継システムついて、説明したが、インターネット網に接続された公衆無線LANシステムの不感知対策としても利用できる。この場合、親機14は基地局12ではなく、図示していないインターネット網に接続することで、同様の効果を奏することができる。
【0050】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態にかかる無線中継システム210の全体構成図である。図4に示す無線中継システム210では、子機218の接続形態がシリアル接続でなく、特定の子機218で、通信経路を分岐して接続形態を有する無線中継システムである。
【0051】
図5は、第2実施形態にかかる子機218の内部構成図である。図5に示すように、子機218は、第2下位側光電変換部252と、第3下位側光電変換部253とを更に備える。
【0052】
第2下位側光電変換部252は、上位側光電変換部40、信号処理部42の加算器54、及び、下位の子機18と接続されている。第2下位側光電変換部252は、上位側光電変換部40から入力した電気信号を光信号に変換して、下位の子機18へ出力する。第2下位側光電変換部252は、下位の子機18から入力した光信号を電気信号に変換して、信号処理部42の加算器54へと出力する。
【0053】
第3下位側光電変換部253は、上位側光電変換部40、信号処理部42の加算器54、及び、下位の子機18と接続されている。尚、第3下位側光電変換部253は、第2下位側光電変換部252と接続されている子機18と異なる子機18と接続される。第3下位側光電変換部253は、上位側光電変換部40から入力した電気信号を光信号に変換して、下位の子機18へ出力する。第3下位側光電変換部253は、下位の子機18から入力した光信号を電気信号に変換して、信号処理部42の加算器54へと出力する。
【0054】
子機218では、信号処理部42の加算器54は、下位側光電変換部52、第2下位側光電変換部252、及び、第3下位側光電変換部253が出力した3つの電気信号を加算して、上位側光電変換部40へ出力する。
【0055】
上述した各実施形態の構成は適宜変更してよい。上述した各実施形態は適宜組み合わせてもよい。
【0056】
例えば、上述の実施形態では、子機18同士を光ファイバ94によって接続したが、子機18同士を電線によって接続して、電気通信によって子機18同士が情報を送受信してもよい。また、子機18は、親機14と電線によって接続してもよい。
【0057】
上述の実施形態では、子機18がトンネル92に設置された無線中継システム10を例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、子機18がビルの屋内及び地下街に設置される無線中継システム10に上述の実施形態を適用してもよい。
【0058】
上述の実施形態では、光スイッチ制御部74は、復帰処理を予め定められた時刻に開始したが、これに限定されるものではなく、予め定められたタイミングで復帰処理を開始してもよい。例えば、光スイッチ制御部74は、異常状態と判定して、光スイッチ20をバイパス接続した状態から予め定められた時間経過した後に復帰処理を開始してもよい。
【0059】
上述の実施形態では、光スイッチ制御部74は、規定回数SN、再起動を繰り返したが、これに限定されるものではない。例えば、光スイッチ制御部74は、1回だけ再起動をして、正常か否かを判定してもよい。
【0060】
上述の実施形態では、子機18を再起動させたが、通信部22のみを再起動させてもよい。
【0061】
上述の実施形態の復帰処理のステップの順序は適宜変更してよい。例えば、ステップS120の処理と、ステップS130の処理は順序を入れ替えてもよい。即ち、判定部78が通信部22を再起動させた後、切替制御部80が光スイッチ20をバイパス接続から通常接続に切り替えてもよい。この場合であっても、判定部78は、切替制御部80が光スイッチ20を通常接続に切り替えてから、通信部22が正常か異常かを判定する。
【0062】
上述の実施形態では、制御部24を子機18に設けた例を示したが、制御部24の一部または全部を親機14または基地局12等の他の設備に設けてもよい。
【0063】
上述の実施形態では、通信部22は、上位側光電変換部40と、信号処理部42と、送信部44と、デュプレクサ46と、アンテナ48と、受信部50と、下位側光電変換部52とを備える構成としたが、通信部22の構成は適宜変更してよい。通信部22は、上位側光電変換部40、信号処理部42、送信部44、デュプレクサ46、アンテナ48、受信部50、及び、下位側光電変換部52の一部を有するように構成してもよい。
【0064】
上述の実施形態においても、携帯電話網の不感知対策としての無線中継システムついて、説明したが、インターネット網に接続された公衆無線LANシステムの不感知対策としても利用できる。この場合、親機14は、基地局12ではなく、図示していないインターネット網に接続することで、同様の効果を奏することができる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10…無線中継システム、14…親機、18…子機、20…光スイッチ(切替部)、22…通信部、24…制御部、78…判定部、80…切替制御部、210…無線中継システム、218…子機
図1
図2
図3
図4
図5