(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態のX線CT装置及び画像処理装置について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
なお、本実施形態のX線CT装置には、X線管と検出器とが1体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプと、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本発明を適用可能である。本実施形態では、現在、主流を占めている回転/回転タイプとして説明する。
【0017】
本実施形態のX線CT装置では、所要のX線エネルギーにて画像化された単色X線画像や、X線エネルギー帯にて画像化された多色X線画像及び後述する多色X線混合画像等を生成するために、異なる複数の種類の管電圧を用いて被検体を撮影して画像を取得する手法であるデュアルエネルギースキャンが用いられる場合を例にとって説明する。このデュアルエネルギースキャンによる撮影方法中にも、大きく分けると少なくとも3つの方法が含まれる。第1の方法として、1つのX線管を用いて1つ目の管電圧で撮影した後に、1つ目の管電圧と異なる2つ目の管電圧で撮影する「Slow−kV switching方式(2回転方式)」がある。第2の方法として、回転中(スキャン中)のビュー毎に高速にX線管の管電圧を切り替えて撮影する「Fast−kV switching方式(高速スイッチング方式)」がある。この場合、管電圧の切り替えに同期してデータ収集装置がデータ収集を行ない、異なる管電圧のデータを1つのスキャン中に収集する。また、第3の方法として、1つのX線管ではなく2のX線管を搭載した上でそれらを用いて異なる管電圧で撮影する「Dual Source(2管球方式)」がある。第4の方法として、多層構造のX線検出器を用いる「多層方式」がある。例えば2層構造(浅い層の検出器、深い層の検出器)のX線検出器を用いる場合、浅い層の検出器で低エネルギーのX線が検出され、浅い層の検出器を通過した深い層の検出器で高エネルギーのX線が検出される。いずれのタイプでも本発明を適用することが可能である。本実施形態では、上記第2の方法の場合について説明する。
【0018】
さらに、本発明は、デュアルエネルギー(二重エネルギー)以上のマルチエネルギースキャンが用いられてもよい。
【0019】
加えて、本発明は、光子計数型のX線CT装置が採用されることで、シングルエネルギースキャンに基づく再構成前データが収集されてエネルギー弁別されることで、所要のエネルギーにて画像化された単色X線画像を生成してもよい。
【0020】
図1は、本実施形態に係るX線CT装置を示す構成例を示す図である。
【0021】
図1は、本実施形態に係る、デュアルエネルギースキャンを実行するX線CT装置1を示す。X線CT装置1は、大きくは、スキャナ装置11及び画像処理装置(コンソール)12によって構成される。X線CT装置1のスキャナ装置11は、通常は検査室に設置され、患者O(被検体)に関するX線の透過データを生成するために構成される。一方、画像処理装置12は、通常は検査室に隣接する制御室に設置され、透過データを基に投影データを生成して再構成画像の生成・表示を行なうために構成される。
【0022】
X線CT装置1のスキャナ装置11は、架台装置21、寝台装置22、及びコントローラ(処理回路)23を備える。
【0023】
スキャナ装置11の架台装置21は、土台部(図示しない)に固定された固定架台31と、回転架台32とを備える。
【0024】
固定架台31は、回転駆動装置41を備える。回転駆動装置41は、コントローラ23による制御によって、回転架台32がその位置関係を維持した状態で回転中心を含む開口部の周りを回転するように回転架台32を固定架台31に対して回転させる機構を有する。
【0025】
回転架台32は、X線源(X線管)51、絞り52、X線検出器53、DAS(data acquisition system)54、高電圧発生装置55、及び絞り駆動装置56を一体として保持する。回転架台32は、X線管51とX線検出器53とを対向させた状態で、X線管51、絞り52、X線検出器53、DAS54、高電圧発生装置55、及び絞り駆動装置56を一体として患者Oの周りに回転できるように構成されている。なお、回転架台32の回転中心軸と平行な方向をz軸方向、そのz軸方向に直交する平面をx軸方向、y軸方向で定義する。
【0026】
X線管51は、高電圧発生装置55から供給された管電圧に応じて金属製のターゲットに電子線を衝突させることでX線(連続スペクトルX線)を発生させ、X線検出器53に向かって照射する。X線管51から照射されるX線によって、ファンビームX線やコーンビームX線が形成される。X線管51は、高電圧発生装置55を介したコントローラ23による制御によって、X線の照射に必要な電力が供給される。
【0027】
絞り52は、絞り駆動装置56によって、X線管51から照射されるX線の照射範囲(照射野)を調整する。すなわち、絞り駆動装置56によって絞り52の開口を調整することによって、スライス方向のX線照射範囲を変更できる。
【0028】
X線検出器53は、チャンネル方向に複数、及び列(スライス)方向に単数の検出素子を有する1次元アレイ型の検出器である。又は、X線検出器53は、マトリクス状、すなわち、チャンネル方向に複数、及びスライス方向に複数の検出素子を有する2次元アレイ型の検出器(マルチスライス型検出器ともいう。)である。X線検出器53がマルチスライス型検出器である場合、1回転のスキャンで列方向に幅を有する3次元の撮影領域を撮影することができる(ボリュームスキャン)。X線検出器53は、コントローラ23による制御によって、X線管51から照射されたX線を検出する。
【0029】
DAS54は、デュアルエネルギースキャンにおける管電圧の切り替えに同期してデータ収集を行なう。DAS54は、X線検出器53の各検出素子が検出する透過データ(X線検出データ)の信号を増幅してデジタル信号に変換する。DAS54の出力データは、スキャナ装置11のコントローラ23を介して画像処理装置12に供給される。DAS54の詳細については後述する。
【0030】
高電圧発生装置55は、コントローラ23による制御によって、デュアルエネルギースキャンを実行するために必要な電力をX線管51に供給する。
【0031】
図2は、本実施形態に係るX線CT装置1に設けるX線管51及び高電圧発生装置55の構成例を示す図である。
【0032】
図2に示すように、X線管51は、陽極51a及びフィラメント(陰極)51bを備える。また、高電圧発生装置55は、低管電圧設定器55a、高管電圧設定器55b、タイミング制御器55c、スイッチ55d、高電圧電源55e、しきい値設定器55f、コンパレータ55g、及びコンデンサCを備える。以下、デュアルエネルギースキャンにおけるHigh−kV(高管電圧)を140kVと、Low−kV(低管電圧)を80kVとする場合を説明するが、その場合に限定されるものではなく、どのような組み合わせの高管電圧と低管電圧に設定するようにしてもよい。そして、デュアルエネルギースキャンにおけるHigh−kV(高管電圧)を「第1の管電圧」と定義し、Low−kV(低管電圧)を「第2の管電圧」と定義する。
【0033】
低管電圧設定器55aは、Low−kVを設定する一方、高管電圧設定器55bは、High−kVを設定する。管電圧設定器55aと55bの出力は、いずれも選択可能である。管電圧設定器55a又は55bの出力は、タイミング制御器55cによって制御されるスイッチ55dを介して高電圧電源55eに接続される。スイッチ55dは、タイミング制御器55cから出力される信号aによって制御される。信号aが「L」を示す場合、低管電圧設定器55aが選択される一方、「H」を示す場合、高管電圧設定器55bが選択される。
【0034】
高電圧電源55eのプラス側出力は、X線管51の陽極51aに電気的に接続されると共に、接地される。また、高電圧電源55eのマイナス側出力は、X線管51のフィラメント51bに電気的に接続される。高電圧電源55eの出力は、信号aによる切り替えのタイミングでLow−kV又はHigh−kV(例えば管電圧80kV又は140kV等)に切り換わる。高電圧電源55eには管電圧検出端子Tが備えられ、管電圧検出端子Tは、コンパレータ55gのプラス側入力に接続される。しきい値設定器55fは、コンパレータ55gのマイナス側入力に接続される。
【0035】
コンパレータ55gは、高電圧電源55eの管電圧検出端子Tから入力する信号bと、しきい値設定器55fから入力する信号cとを入力し、信号bが信号cより大きい場合に「L」を示す一方、信号bが信号c以下の場合「H」を示すような信号dをDAS54に出力する。DAS54は、信号dが「L」を示す場合、Low−kVによる透過データと判断する一方、「H」を示す場合、High−kVによる透過データと判断する。
【0036】
コントローラ23は、後述する
図4の処理回路61の管電圧制御手段71からの管電圧制御信号に従い、高電圧発生装置55のタイミング制御器55cを介してスイッチ55dの切り換えを制御してデュアルエネルギースキャンを実行させ、低管電圧設定器55aによるLow−kVを高電圧電源55eから出力させるか、又は、高管電圧設定器55bによるHigh−kVを高電圧電源55eから出力させるかを選択する。コントローラ23からの制御信号により、スイッチ55dは、選択された管電圧設定信号を高電圧電源55eに与える。
【0037】
また、コントローラ23からの制御信号はDAS54にも送られる。DAS54は、デュアルエネルギースキャンによって収集したデータが、Low−kVのX線照射によるものか、又は、High−kVのX線照射によるものかを認識する。
【0038】
図1の説明に戻って、絞り駆動装置56は、コントローラ23による制御によって、絞り52におけるX線のスライス方向の照射範囲を調整する機構を有する。
【0039】
スキャナ装置11の寝台装置22は、天板22a及び天板駆動装置22bを備える。天板22aは、患者Oを載置可能である。
【0040】
天板駆動装置22bは、コントローラ23による制御によって、天板22aをy軸方向に沿って昇降動させると共に、z軸方向に沿って進入/退避動させる機構を有する。天板駆動装置22bは、回転架台32の回転中心を含む開口部に向けて天板22aに載置された患者Oを挿入させ、開口部から天板22aに載置された患者Oを退避させる。
【0041】
スキャナ装置11のコントローラ23は、図示しない処理回路としてのCPU(central processing unit)及びメモリ等を備える。コントローラ23は、画像処理装置12からの指示によって、架台装置21の回転駆動装置41、X線検出器53、DAS54、高電圧発生装置55、及び絞り駆動装置56や、寝台装置22の天板駆動装置22b等の制御を行なってデュアルエネルギースキャンを実行させる。
【0042】
X線CT装置1の画像処理装置12は、コンピュータをベースとして構成されており、ネットワーク(local area network)Nと相互通信可能である。画像処理装置12は、大きくは、処理回路としての処理回路61、メモリ62、記憶装置63、入力装置64、及び表示装置65等の基本的なハードウェアから構成される。処理回路61は、共通信号伝送路としてのバスを介して、画像処理装置12を構成する各ハードウェア構成要素に相互接続されている。なお、画像処理装置12は、記憶媒体ドライブ66を具備する場合もある。
【0043】
処理回路61は、専用又は汎用のCPU(central processing unit)の他、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、及び、プログラマブル論理デバイスなどの処理回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:simple programmable logic device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:complex programmable logic device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)などが挙げられる。処理回路61はメモリ62に記憶された、又は、処理回路61内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで
図4及び
図5に示す機能を実現する。
【0044】
また、処理回路61は、単一の処理回路によって構成されてもよいし、複数の独立した回路の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、プログラムを記憶するメモリ62は処理回路ごとに個別に設けられてもよいし、単一のメモリ62が複数の回路(処理回路)の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0045】
メモリ62は、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)等を含む記憶装置である。メモリ62は、IPL(initial program loading)、BIOS(basic input/output system)及びデータを記憶したり、処理回路61のワークメモリやデータの一時的な記憶に用いられたりする。
【0046】
記憶装置63は、メモリやHDD(hard disc drive)等によって構成される。記憶装置63は、処理回路61において用いられる制御プログラムの実行に必要なデータや、インターフェース(図示しない)又はリムーバブルメディア(removable media)を介して受信されたデータや、処理回路61によって生成されたデータを記憶する。
【0047】
記憶装置63は、画像処理装置12にインストールされたプログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(operating system)等も含まれる)や、データを記憶する記憶装置である。また、OSに、術者等の操作者に対する表示装置65への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力装置64によって行なうことができるGUI(graphical user interface)を提供させることもできる。
【0048】
入力装置64は、操作者によって操作が可能なポインティングデバイスであり、操作に従った入力信号が処理回路61に送られる。
【0049】
表示装置65は、図示しない画像合成回路、VRAM(video random access memory)、及びディスプレイ等を含んでいる。画像合成回路は、画像データに種々のパラメータの文字データ等を合成した合成データを生成する。VRAMは、合成データをディスプレイに展開する。ディスプレイは、液晶ディスプレイやCRT(cathode ray tube)等によって構成され画像を順次表示する。
【0050】
図3は、本実施形態に係るX線CT装置1に備えるDAS54の構成例を示す図である。
【0051】
図3に示すように、DAS54は、ゲイン記憶回路54a、ゲイン制御回路54b、QV変換回路(積分回路及びゲイン可変増幅回路)54c、A/D変換回路54d、キャリブデータ記憶回路54e、及びキャリブデータ適用回路54fを備える。以下、各回路54a〜54fがX線検出器53を構成するX線検出素子毎に備えられるものとするが、複数のX線検出素子によって構成されるX線検出素子群毎に備えられていてもよい。
【0052】
ゲイン記憶回路54aは、ゲイン(増幅率)を予め記憶する。ゲイン記憶回路54aは、頭部撮影用に、頭部の大きさに応じたゲインを予め記憶しておき、胸部撮影用に、胸部の大きさに応じたゲインを予め記憶しておき、腹部撮影用に、腹部の大きさに応じたゲインを予め記憶しておく。ゲイン記憶回路54aは、体径サイズの異なる複数部位について1回のX線照射で画像収集できるようなゲインを記憶することもできる。
【0053】
ゲイン制御回路54bは、コントローラ23の制御によって、ゲイン記憶回路54aに記憶されたゲインを設定するようにQV変換回路54cを制御する。
【0054】
QV変換回路54cは、X線検出器53を構成する第mチャンネル、第n列のX線検出素子E
m,nから出力される電圧信号をX線の照射周期に同期して周期的に積分する。また、QV変換回路54cは、オペアンプ(operational amplifier)A、異なる容量の3個のコンデンサC(C1,C2,C3)、及び3個のスイッチS(S1,S2,S3)を備える。スイッチS1,S2,S3は、それぞれ各コンデンサC1,C2,C3に対応され、ゲイン制御回路54bによってON/OFFを制御される。コンデンサC1,C2,C3のON/OFFの組み合わせによって、QV変換回路54cは、6種類のゲインを設定することができる。なお、QV変換回路54cは、6種類のゲインを設定するために同一容量の6個のコンデンサCを備えてもよい。また、QV変換回路54cが備えるコンデンサCの数は、3個及び6個に限定されるものではない。
【0055】
QV変換回路54cは、X線検出素子E
m,nから出力される透過データを、ゲイン制御回路54bによって制御されたゲインを用いて増幅する。
【0056】
A/D変換回路54dは、QV変換回路54cから出力されるアナログデータをデジタルデータに変換する。
【0057】
キャリブデータ記憶回路54eは、コントローラ23の制御によってキャリブデータ(キャリブレーションデータ)用にデュアルエネルギースキャンで予め得られた正確なキャリブデータを記憶する。キャリブデータ記憶回路54eに記憶されるキャリブデータについて説明する。
【0058】
キャリブデータ適用回路54fは、デュアルエネルギースキャンによるA/D変換回路54dの出力データに、キャリブデータ記憶回路54eに記憶されたキャリブデータを適用する。キャリブデータ適用回路54fは、デュアルエネルギースキャンによって収集したデータの管電圧ペアと、管電流モジュレーションにおける管電流の各値とを認識する。キャリブデータ適用回路54fは、キャリブデータ記憶回路54eから、認識した管電圧ペア及び管電流の各値に対応するキャリブデータを取得してA/D変換回路54dの出力信号に適用する。
【0059】
キャリブデータ記憶回路54eが離散的な管電流に対してキャリブデータを有している場合には、キャリブデータ適用回路54fは、データの無い管電流については、キャリブデータを補間して適用する。
【0060】
図1の説明に戻って、画像処理装置12は、スキャナ装置11のDAS54から入力された生データに対して対数変換処理や、感度補正等の補正処理(前処理)を行なって投影データを生成して記憶装置63に記憶させる。また、画像処理装置12は、前処理された投影データに対して散乱線の除去処理を行なう。画像処理装置12は、X線曝射範囲内の投影データの値に基づいて散乱線の除去を行なうものであり、散乱線補正を行なう対象の投影データ又はその隣接投影データの値の大きさから推定された散乱線を、対象となる投影データから減じて散乱線補正を行なう。画像処理装置12は、補正された投影データに基づいて画像データを生成して記憶装置63に記憶させたり、表示装置65に表示させたりする。
【0061】
図4及び
図5は、本実施形態に係るX線CT装置1の機能を示すブロック図である。
【0062】
画像処理装置12の処理回路61がプログラムを実行することによって、X線CT装置1は、
図4及び
図5に示すように、管電圧制御手段71、第1生成手段72、第2生成手段73、及び表示画像生成手段74として機能する。なお、手段71〜74の全部又は一部は、画像処理装置12のみならず、高電圧発生装置55やコントローラ23に備えられるものであってもよい。
【0063】
また、手段71〜74がそれぞれプログラムとして構成され、1の処理回路が手段71〜74を実行することができる。又は、手段71〜74が専用の独立した複数のプログラム実行回路にそれぞれ実装されてもよい。
【0064】
まず、
図4に示す管電圧制御手段71について説明する。
【0065】
管電圧制御手段71は、高電圧発生装置55により発生される管電圧の切り替え及び切替時の条件等を制御するための管電圧制御信号を生成し、生成された管電圧制御信号をコントローラ23に供給する機能を有する。具体的には、管電圧制御手段71は、条件設定手段71a及びフィラメント電流値演算手段71bとして機能する。
【0066】
条件設定手段71aは、スキャン計画、スキャンに先立つ位置決め画像(スカウト画像)から得られる情報、又は、スキャン中に被検体を透過したX線透過データに基づいて、管電流条件(モジュレーション時の最大の管電流値)を設定する。また、条件設定手段71aは、スキャン計画、スカウト画像から得られる情報、又は、スキャン中に被検体を透過したX線透過データに基づいて、時系列に対するX線照射量の変調(モジュレーション)の条件を設定する。
【0067】
モジュレーションとしては、回転角に対する周期的なモジュレーション(回転角モジュレーション)、z軸方向に対するモジュレーション(z軸モジュレーション)、心電信号に同期した周期的なモジュレーション(心電同期モジュレーション)、及び、眼球及び卵巣等の高感受性部位の被曝を低減するためのモジュレーション(高感受性部位モジュレーション)や、それらの組み合わせが挙げられる。条件設定手段71aによってそれぞれ設定された管電流条件及びモジュレーション条件は、フィラメント電流値演算手段71bに送られる。
【0068】
フィラメント電流値演算手段71bは、コントローラ23及び高電圧発生装置55を介して、条件設定手段71aによって設定された管電流条件及びモジュレーション条件に基づくX線管51のフィラメント電流値を算出する。また、フィラメント電流値演算手段71bは、算出されたフィラメント電流値をX線管51のフィラメントに供給する。
【0069】
次に、
図4に示す第1生成手段72について説明する。
【0070】
第1生成手段72は、デュアルエネルギースキャンによって得られた再構成前データセット(複数ビューの再構成前データ)に基づいて、適切なX線エネルギーにて画像化された単色X線画像を第1画像として生成(再構成)する機能を有する。又は、第1生成手段72は、デュアルエネルギースキャンによって得られた再構成前データセットに基づいて、比較的狭いX線エネルギー帯(後述する第2生成手段73による多色X線画像のX線エネルギー帯より狭いX線エネルギー帯)にて画像化された多色X線画像を第1画像として生成する機能を有する。なお、本実施形態では、第1生成手段72が適切なX線エネルギーにて画像化された単色X線画像を第1画像として生成する場合を例にとって説明する。
【0071】
図6は、第1画像の画像化に係る、比較的狭いX線エネルギー帯を示す図である。
【0072】
図6の上段は、第1画像の画像化に係るX線エネルギーを示すスペクトルである。
図6の下段は、後述する第2画像の画像化に係るX線エネルギーを示すスペクトルである。
【0073】
図6に示すように、第1画像の画像化に係るX線エネルギー帯は、第2画像の画像化に係るX線エネルギー帯よりも狭い。また、
図6に示すように、第1画像の画像化に係るX線エネルギー帯は、第2画像の画像化に係るX線エネルギー帯の実効エネルギーEを含む。
【0074】
図4の説明に戻って、第1生成手段72が用いる再構成前データは、生データの場合もあるし、投影データの場合もある。再構成前データが生データである場合、再構成前データセットは生データセット(複数ビューの生データ)であるし、再構成前データが投影データである場合、再構成前データセットは投影データセット(複数ビューの投影データ)である。複数ビュー(投影角度)は、回転架台32(
図1に図示)の1回転内の場合もあるし、ハーフ+α回転内の場合もある。本実施形態では、再構成前データが投影データである場合を例にとって説明する。
【0075】
X線CT装置1によりデュアルエネルギースキャンが実行されて各スキャンに基づく投影データセットが収集される。例えば、デュアルエネルギースキャンの1つの方法として、回転中(スキャン中)のビュー毎に高速にX線管の管電圧を切り替えて撮影する「Fast−kV switching方式(高速スイッチング方式)」が用いられる。
【0076】
第1生成手段72は、投影データ読み出し手段72a、分離手段72b、再構成手段72c、物質判別手段72d、エネルギー設定手段72e、及び第1画像生成手段72fとして機能する。
【0077】
投影データ読み出し手段72aは、画像処理装置12の記憶装置63に記憶されている、2種類の管電圧に基づく2種類の投影データセットを読み出す。
【0078】
分離手段72bは、投影データ読み出し手段72aからの2種類の投影データセットを用いて、撮影の対象範囲に存在する、予め決定された複数の基準物質(水、造影剤、CaCo
3、尿酸、及び脂肪等)を分離(弁別)する。そして、分離手段72bは、2つの基準物質を分離して2つの基準物質のそれぞれに対応する2種類の単色X線の投影データセットを生成する。本実施形態では、分離手段72bが、2つの基準物質を分離して2つの基準物質のそれぞれに対応する2種類の単色X線の投影データセットを生成する場合について説明するが、基準物質は複数であればよく2つに限定されるものではない。
【0079】
再構成手段72cは、分離手段72bによって分離された2種類の単色X線の投影データセットを基に、画像データとしての基準物質画像(基準物質強調画像)をそれぞれ再構成する。再構成手段72cは、基準物質1の投影データセットに基づいて基準物質1の基準物質画像を生成し、基準物質2の投影データセットに基づいて基準物質2の基準物質画像を生成する。例えば、再構成手段72cは、水成分が強調された投影データセットに基づいて水成分の基準物質画像を生成し、造影剤成分が強調された投影データセットに基づいて造影剤成分の基準物質画像を生成する。
【0080】
再構成手段72cによって生成された複数の基準物質画像を、重み付け係数を変えて加算することで、複数のX線エネルギーに相当する複数の単色X線画像を生成することが可能である。
【0081】
物質判別手段72dは、再構成手段72cによって生成された2種類の基準物質画像を用いて、撮影の対象範囲に存在する各物質(組織、造影剤、及び骨等を含む)の判別(特定)を行なう。ここで、撮影の対象範囲に存在する基準物質の分離方法と、各物質の判別方法の概念について説明する。
【0082】
2重エネルギーに基づくデータによる物質の特定方法については、大きく分けて、2種類の投影データセットから生成された画像自体を元にして物質の特定を行なう技術と、2種類の投影データセットに基づいて2種類の基準物質を分離し、それぞれの基準物質に基づく基準物質画像を生成し、それらの基準物質画像より物質の特定を行なう技術とがある。いずれの場合であっても本発明を適用することができるが、本実施形態では後者を用いて説明する。勿論、上記以外の方法でもよく、物質を特定することができさえすればよい。
【0083】
エネルギー設定手段72eは、物質判別手段72dからの判別結果に基づいて、記憶装置63に予め記憶されているエネルギーテーブルを参照して、撮影の対象範囲に存在する各物質に関する単色X線画像を生成する際のX線エネルギー(又は、比較的狭いX線エネルギー帯)を設定する。
【0084】
第1画像生成手段72fは、エネルギー設定手段72eによって設定された各物質に関するX線エネルギーと、再構成手段72cによって生成された2つの基準物質画像に基づいて、各物質における適切なX線エネルギーにて画像化された単色X線画像(又は、比較的狭いX線エネルギー帯にて画像化された多色X線画像)を第1画像として生成する。
【0085】
第1画像生成手段72fは、単色X線画像(又は、比較的狭いX線エネルギー帯にて画像化された多色X線画像)を第1画像として記憶装置63に記憶する。なお、本実施形態で用いられる「単色X線画像」とは、特定のX線実効エネルギーを有する連続スペクトルX線を用いて得られた投影データセットに基づく画像であって、特定のX線エネルギーを有する単色X線を用いて撮影される場合に得られる画像と等価な関係となる画像を意味する。
【0086】
次に、
図4に示す第2生成手段73について説明する。
【0087】
第2生成手段73は、シングルエネルギースキャンに基づく再構成前データセットから、比較的広いX線エネルギー帯(第1生成手段72による多色X線画像のX線エネルギー帯より広いX線エネルギー帯)にて画像化された多色X線画像を第2画像として生成(再構成)する機能を有する。第1に、第2生成手段73は、シングルエネルギースキャンに基づく投影データセットから、比較的広いX線エネルギー帯にて画像化された多色X線画像を第2画像として生成する。
【0088】
第2に、第2生成手段73は、デュアルエネルギースキャンの一方のスキャンに基づく投影データセットから、比較的広いX線エネルギー帯にて画像化された多色X線画像を第2画像として生成する。第3に、デュアルエネルギースキャンに基づく2種類の投影データセットから2種類の多色X線画像を生成し、2種類の多色X線画像を混合(ブレンディング)して、比較的広いX線エネルギー帯にて画像化された模擬的な多色X線画像(以下、「多色X線混合画像」という)を第2画像として生成する。
【0089】
上記の第2及び第3の場合、X線CT装置1によりデュアルエネルギースキャンが実行されて2種類の投影データセットが収集される。例えば、デュアルエネルギースキャンの1つの方法として、回転中(スキャン中)のビュー毎に高速にX線管の管電圧を切り替えて撮影する「Fast−kV switching方式(高速スイッチング方式)」が用いられる。
【0090】
第2画像として多色X線混合画像が用いられる場合(上記の第3の場合)、多色X線混合画像の生成方法は、特許文献(特開2012−81108号公報)を準用するものとする。すなわち、第2画像として多色X線混合画像が用いられる場合、第2生成手段73は、投影データ読み出し手段73a、再構成手段73b、推定手段73c、混合率決定手段73d、及び第2画像生成手段73eを有する。
【0091】
投影データ読み出し手段73aは、画像処理装置12の記憶装置63に記憶されている2種類の投影データセットを読み出す。
【0092】
再構成手段73bは、投影データ読み出し手段73aからの2種類の投影データセットを用いて、デュアルエネルギースキャンのうちの第1のスキャンに基づく投影データセットから第1のX線エネルギー帯にて画像化された第1の多色X線画像と、第2のスキャンに基づく投影データセットからの第2のX線エネルギー帯にて画像化された第2の多色X線画像とを生成する。
【0093】
推定手段73cは、再構成手段73bによって生成された第1の多色X線画像及び第2の多色X線画像の間の画素値に基づいて、画素ごとに、第1物質及び第2物質の一方に対する他方の存在比率を推定する。
【0094】
混合率決定手段73dは、推定手段73cによって推定された画素ごとの第1物質及び第2物質の存在比率と、第1物質及び第2物質それぞれの減弱係数の低下率とに基づいて、第1の多色X線画像及び第2の多色X線画像間の画素値の混合率を画素ごとに決定する。第1物質及び第2物質それぞれの減弱係数の低下率は、第1のX線エネルギー帯又は第2のX線エネルギー帯に関する第1物質及び第2物質それぞれの減弱係数から、前述の比較的広いX線エネルギー帯に関する第1物質及び第2物質それぞれの減弱係数への低下を示す指標である。
【0095】
第2画像生成手段73eは、混合率決定手段73dによって決定された混合率に従って、第1の多色X線画像及び第2の多色X線画像を混合(ブレンディング)することで、前述の比較的広いX線エネルギー帯にて画像化された多色X線混合画像を第2画像として生成する。第2画像生成手段73eは、多色X線混合画像を記憶装置63に記憶する。
【0096】
図7は、多色X線混合画像の生成を示す図である。
【0097】
図7の上段は、デュアルエネルギースキャンのうちの第1のスキャン(管電圧:80kV)に基づく投影データセットから第1のX線エネルギー帯(49keV前後)にて画像化された第1の多色X線画像と、第2のスキャン(管電圧:135kV)に基づく投影データセットから第2のX線エネルギー帯(66keV前後)にて画像化された第2の多色X線画像とを示す。一方、
図7の下段は、2種類の多色X線画像に基づいて生成される3種類のX線エネルギー帯(55keV、60keV、及び65keV前後)にてそれぞれ画像化された3種類の多色X線混合画像を示す。多色X線画像及び多色X線混合画像には、ビームハードニングアーチファクトBが存在する。
【0098】
次に、
図5に示す表示画像生成手段74について説明する。
【0099】
表示画像生成手段74は、第1生成手段72によって生成された第1画像と、第2生成手段73によって生成された第2画像とに基づいて、表示のための表示画像を生成する。表示画像生成手段74は、第1画像データ読み出し手段74a、第2画像データ読み出し手段74b、差分(サブトラクション)画像生成手段74c、補正領域特定手段74d、及び補正手段74eを有する。
【0100】
第2生成手段73によって生成された第2画像は、シングルエネルギースキャンに基づく投影データセットからの多色X線画像であるか、デュアルエネルギースキャンのうちの一方のスキャンに基づく投影データセットからの多色X線画像であるか、デュアルエネルギースキャンの各スキャンに基づく投影データセットからの多色X線画像が混合された多色X線混合画像(
図7の下段)である。
【0101】
第1画像データ読み出し手段74aは、画像処理装置12の記憶装置63に記憶されている、第1生成手段72によって生成された第1画像を読み出す。
【0102】
第2画像データ読み出し手段74bは、画像処理装置12の記憶装置63に記憶されている、第2生成手段73によって生成された第2画像を読み出す。
【0103】
差分画像生成手段74cは、第1画像データ読み出し手段74aによって読み出された第1画像と、第2画像データ読み出し手段74bによって読み出された第2画像とを差分することで差分画像を生成する。第2画像が多色X線混合画像である場合、差分画像生成手段74cは、互いのCT値(平均値)が略同一(最も近い)となるような第1画像及び第2画像を用いて差分することが望ましい。その場合、CT値が第2画像と略同一となるようなX線エネルギーの第1画像が選択されるか、CT値が第1画像と略同一となるようなX線エネルギー帯の第2画像が選択される。
【0104】
なお、差分される第1画像と第2画像とで互いのCT値が略同一となるように、選択される第1画像及び第2画像のX線エネルギー(X線エネルギー帯)が予め設定されてもよいし、同じX線エネルギーの第1画像及び第2画像が生成されるようにしてもよい。差分画像生成手段74cによる差分により、画像上のビームハードニング量を算出することができる。
【0105】
図8は、差分画像の生成を示す図である。
【0106】
図8の左端は、組織O2及びビームハードニングアーチファクトB2を含む第2画像を示し、同中央は、組織O1のみを含む第1画像を示す。
図8の右端の差分画像は、第2画像に含まれるビームハードニングアーチファクトB2のCT値(輝度値)から、第1画像に含まれる組織O1のCT値を減算したCT値を有するビームハードニングアーチファクトB3を含む。
【0107】
図5の説明に戻って、補正領域特定手段74dは、第1画像データ読み出し手段74aによって読み出された第1画像のうち、補正対象の領域(補正領域)を特定する。補正領域特定手段74dは、第1画像のうち、差分画像生成手段74cによって生成された差分画像上のビームハードニングB3(
図8に図示)の領域を補正領域として特定する。補正領域を含む補正領域画像は、
図9の左端に示される。
【0108】
補正領域特定手段74dは、差分画像生成手段74cによる差分処理で、ある閾値以上の差がある領域を抽出すればよい。特に、第2画像としての多色X線混合画像で黒く落ち込むアーチファクトが、単色X線画像で改善する場合がある。この場合、差分画像で当該アーチファクトの領域はマイナスの値をとるので、補正領域特定手段74dは、閾値より小さい当該アーチファクトの領域を抽出することができる。よって、補正領域特定手段74dは、ビームハードニングアーチファクト以外のアーチファクトの除去にも対応できる。
【0109】
補正手段74eは、第2画像データ読み出し手段74bによって読み出された第2画像のうち、補正領域特定手段74dによって特定された領域を第1画像に基づいて補正する。補正手段74eは、補正領域特定手段74dによって第1画像(差分画像)に基づいて生成された補正領域画像と、第2画像データ読み出し手段74bによって読み出された第2画像とを用いて、合成処理(重ね合わせ処理)により補正画像を生成することで、第2画像を補正する。
【0110】
例えば、補正手段74eは、補正領域画像自体及び第2画像自体を位置合わせして合成(フュージョン)することで補正画像を表示画像として生成する。表示画像によれば、第2画像上に現れるビームハードニングアーチファクトB1(
図8に図示)を低減することが可能となる。また、補正手段74eは、補正領域画像及び第2画像の一方に合成係数(重み付け係数)wを乗じ、他方に(1−w)を乗じることで、合成率を変更することも可能である。
【0111】
図9は、補正画像の生成を示す図である。
【0112】
図9は、補正領域画像と第2画像とが合成されることで得られる補正画像を示す。補正画像によれば、第2画像上に現れるビームハードニングアーチファクトB2の部分が第1画像によって補われることになるので、補正画像上にはビームハードニングアーチファクトは現れない。
【0113】
続いて、本実施形態のX線CT装置1における表示画像の生成処理動作について説明する。
【0114】
図10は、本実施形態のX線CT装置1における表示画像の生成処理動作を示すフローチャートである。
【0115】
X線CT装置1は、記憶装置63から、所要のX線エネルギーにて画像化された単色X線画像(又は、比較的狭いX線エネルギー帯にて画像化された多色X線画像)を第1画像として読み出す(ステップST1)。X線CT装置1は、比較的広いX線エネルギー帯にて画像化された多色X線画像(多色X線混合画像を含む)を第2画像として読み出す(ステップST2)。
【0116】
X線CT装置1は、ステップST1によって読み出された第1画像と、ステップST2によって読み出された第2画像とを差分して差分画像を生成する(ステップST3)。X線CT装置1は、ステップST1によって読み出された第1画像のうち、ステップST3によって生成された差分画像上のビームハードニングB3(
図8に図示)の領域を補正対象として含む補正領域画像を生成する(ステップST4)。
【0117】
X線CT装置1は、ステップST4によって生成された補正領域画像と、ステップST2によって読み出された第2画像とを合成することで補正画像を生成する。そして、X線CT装置1は、第2画像のうち補正領域を、第1画像に基づいてステップST3で生成された差分画像に基づいて補正する(ステップST5)。X線CT装置1は、ステップST5によって生成された補正画像を表示装置65に表示させる(ステップST6)。
【0118】
(第1変形例)
図11は、本実施形態の第1変形例に係るX線CT装置1の機能を示すブロック図である。
図11は、
図5の変形例である。
図12は、本実施形態の第1変形例に係るX線CT装置1による画像生成の流れを示す図である。
【0119】
画像処理装置12の処理回路61がプログラムを実行することによって、X線CT装置1は、
図4及び
図11に示すように、管電圧制御手段71、第1生成手段72、第2生成手段73、及び表示画像生成手段74Aとして機能する。なお、手段71〜74Aの全部又は一部は、画像処理装置12のみならず、高電圧発生装置55やコントローラ23に備えられるものであってもよい。
【0120】
また、手段71〜74Aがそれぞれプログラムとして構成され、1の処理回路が手段71〜74Aを実行することができる。又は、手段71〜74Aが専用の独立した複数のプログラム実行回路にそれぞれ実装されてもよい。
【0121】
表示画像生成手段74Aは、第1生成手段72によって生成された第1画像と、第2生成手段73によって生成された第2画像とに基づいて、表示のための表示画像を生成する機能を有する。具体的には、表示画像生成手段74Aは、第1画像データ読み出し手段74a、第2画像データ読み出し手段74b、差分画像生成手段74c、第1補正領域特定手段(
図5に示す補正領域特定手段)74d、第2補正領域特定手段74f、混合画像生成手段74g、部分控除画像生成手段74h、及び補正手段74iを有する。第2生成手段73によって生成された第2画像は、シングルエネルギースキャンに基づく投影データセットからの多色X線画像であるか、デュアルエネルギースキャンのうちの一方のスキャンに基づく投影データセットからの多色X線画像であるか、デュアルエネルギースキャンの各スキャンに基づく投影データセットからの多色X線画像が混合された多色X線混合画像(
図7の下段)である。
【0122】
なお、
図11において、
図5と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0123】
第1補正領域特定手段74dは、第1画像データ読み出し手段74aによって読み出された第1画像のうち、補正対象である補正領域を特定する。第1補正領域特定手段74dは、第1画像のうち、差分画像生成手段74cによって生成された差分画像上のビームハードニングB3(
図8に図示)の領域を補正領域として特定する。特定された補正領域について第1補正領域画像が生成される。
【0124】
第2補正領域特定手段74fは、第2画像データ読み出し手段74bによって読み出された第2画像のうち、補正対象の領域を特定する。第2補正領域特定手段74fは、第2画像のうち、差分画像生成手段74cによって生成された差分画像上のビームハードニングB3(
図8に図示)の領域を特定する。特定された補正領域について第2補正領域画像が生成される。
【0125】
混合画像生成手段74gは、第1補正領域特定手段74dによって生成された第1補正領域画像と、第2補正領域特定手段74fによって生成された第2補正領域画像とを混合して混合画像を生成する。混合画像生成手段74gは、第2画像生成手段73e(
図4に図示)で説明したのと同様な方法により混合処理を行なうものとし、混合率についても、任意に設定することができる。
【0126】
部分控除画像生成手段74hは、第2画像データ読み出し手段74bによって読み出された第2画像のうち、差分画像生成手段74cによって生成された差分画像上のビームハードニングB3(
図8に図示)の領域を控除した部分控除画像を生成する。
【0127】
補正手段74iは、第1補正領域特定手段74dによって生成された第1補正領域画像(補正領域画像)と、第2画像データ読み出し手段74bによって読み出された第2画像とを用いて、合成処理(重ね合わせ処理)により補正画像を生成する。例えば、補正手段74iは、第1補正領域画像自体及び第2画像自体ではなく、第1補正領域画像に基づいて混合画像生成手段74gによって生成された混合画像と、第2画像に基づいて生成された部分控除画像とを位置合わせして合成(フュージョン)することで補正画像を表示画像として生成する。
【0128】
表示画像によれば、第2画像上に現れるビームハードニングアーチファクトB1(
図8に図示)を低減することが可能となる。また、補正手段74iは、混合画像及び部分控除画像の一方に合成係数(重み付け係数)wを乗じ、他方に(1−w)を乗じることで、合成率を変更することも可能である。
【0129】
本実施形態のX線CT装置1によると、ノイズが低減された第2画像上のアーチファクトの領域を第1画像を用いて補正して表示のための画像を生成することで、アーチファクト及びノイズの両方が低減された新たな画像を診断者等の操作者に提供することができる。その結果、本実施形態のX線CT装置1によると、画像診断の精度が向上する。
【0130】
(第2変形例)
図13及び
図14は、本実施形態の第2変形例に係るX線CT装置1の機能を示すブロック図である。
図13は、
図4の変形例である。
図14は、
図5の変形例である。
【0131】
図4及び
図5は、画像データをベースとしてビームハードニング成分を抽出する場合の構成を示すが、
図13及び
図14は、再構成前データ(投影データ)をベースとしてビームハードニング成分を抽出する場合の構成を示す。
【0132】
図13及び
図14は、本実施形態に係るX線CT装置1の第2変形例の機能を示すブロック図である。
【0133】
画像処理装置12の処理回路61がプログラムを実行することによって、X線CT装置1は、
図13及び
図14に示すように、管電圧制御手段71、第1生成手段72B、及び表示画像生成手段74Bとして機能する。なお、手段71,72B,74Bの全部又は一部は、画像処理装置12のみならず、高電圧発生装置55やコントローラ23に備えられるものであってもよい。
【0134】
また、手段71,72B,74Bがそれぞれプログラムとして構成され、1の処理回路が手段71,72B,74Bを実行することができる。又は、手段71,72B,74Bが専用の独立した複数のプログラム実行回路にそれぞれ実装されてもよい。
【0136】
まず、
図13に示す第1生成手段72Bについて説明する。
【0137】
第1生成手段72Bは、デュアルエネルギースキャンによって得られる2種類の投影データセットに基づいて、単色X線の第1投影データセットを生成する機能を有する。又は、第1生成手段72Bは、デュアルエネルギースキャンによって得られる2種類の投影データセットに基づいて、比較的狭いX線エネルギー帯の第1投影データセットを生成する機能を有する。本実施形態では、第1生成手段72Bが単色X線の第1投影データセットを生成する場合を例にとって説明する。
【0138】
具体的には、第1生成手段72Bは、投影データ読み出し手段72a及び分離手段72bを有する。
【0139】
分離手段72bは、単色X線の投影データセットを第1投影データセットとして記憶装置63に記憶する。
【0140】
次に、
図14に示す表示画像生成手段74Bについて説明する。
【0141】
表示画像生成手段74Bは、第1生成手段72Bによって生成された第1投影データセットと、スキャンによって得られる、第1のX線エネルギー帯より広い第2のX線エネルギー帯の多色X線の投影データセット(第2投影データセット)とに基づいて、表示のための表示画像を生成する機能を有する。表示画像生成手段74Bは、第1投影データ読み出し手段74j、第2投影データ読み出し手段74k、再構成範囲設定手段74l、差分投影データ生成手段74m、補正範囲特定手段74n、補正手段74o、及び再構成手段74pとして機能する。
【0142】
第1投影データ読み出し手段74jは、画像処理装置12の記憶装置63に記憶されている、第1生成手段72Bによって生成された第1投影データセットを読み出す。
【0143】
第2投影データ読み出し手段74kは、画像処理装置12の記憶装置63に記憶されている第2投影データセットを読み出す。
【0144】
再構成範囲設定手段74lは、第1投影データ読み出し手段74jによって読み出された第1投影データセット上に、生成予定の再構成画像上の関心領域(ROI:region of interest)に対応する範囲を再構成範囲として設定する。再構成範囲は、第1投影データセットのうち1の第1投影データ上で設定され、他の第1投影データに適用されればよい。再構成範囲は、入力装置64を介した操作者の指示に従って設定されてもよいし、各第1投影データの直接線の部分が自動的に削除された部分として設定されてもよい。再構成範囲設定手段74lによって、再構成手段74pによる再構成処理の負荷を軽減することができる。
【0145】
差分投影データ生成手段74mは、第1投影データ読み出し手段74jによって読み出された第1投影データセットと、第2投影データ読み出し手段74kによって読み出された第2投影データセットとを、同一ビューの投影データどうしで差分することで差分投影データセットを生成する。又は、差分投影データ生成手段74mは、再構成範囲設定手段74lによって設定された第1投影データセットの再構成範囲と、第2投影データセットの再構成範囲とを、ビューごとの投影データどうしで差分することで差分投影データセットを生成する。本実施形態では、後者を例にとって説明する。
【0146】
差分投影データ生成手段74mは、同一ビューに係る第1投影データ及び第2投影データにおいて、X線検出器53(
図1に図示)の同一検出素子に係る部分を差分する。
【0147】
補正範囲特定手段74nは、再構成範囲設定手段74lによって設定された第1投影データセットの再構成範囲のうち、補正対象の範囲を補正範囲としてビュー毎に特定する。補正範囲特定手段74nは、差分投影データ生成手段74mによる差分処理で、ある閾値以上の差がある範囲を抽出すればよい。
【0148】
補正手段74oは、再構成範囲設定手段74lによって設定された第2投影データセットのうち、補正範囲特定手段74nによって特定された補正範囲を第1投影データセットに基づいてビュー毎に補正する。補正手段74oは、補正範囲特定手段74nによって各第1投影データ(差分投影データ)に基づいて設定された補正範囲と、各第2投影データとを用いて、合成処理(加算、加算平均、及び加重平均処理)により補正投影データセットを生成することで、第2投影データセットを補正する。
【0149】
ここで、再構成範囲設定手段74l、差分投影データ生成手段74m、補正範囲特定手段74n、及び補正手段74oは、第2投影データセットに含まれる全ての第2投影データの補正範囲を補正することができる。又は、再構成範囲設定手段74l、差分投影データ生成手段74m、補正範囲特定手段74n、及び補正手段74oは、第2投影データセットに含まれる一部の第2投影データを間引きして、他の第2投影データについてのみ補正範囲を補正してもよい。
【0150】
再構成手段74pは、補正手段74oによって生成された補正投影データセットに基づいて、補正画像を表示画像として生成する。
【0151】
表示画像によれば、第2投影データセット(多色X線の投影データセット)に基づく画像上に現れるビームハードニングアーチファクトを低減することが可能となる。
【0152】
ここで、再構成手段74pによって表示画像が生成された後、表示画像上で設定される関心領域(ROI)について再度の再構成(拡大再構成)が行なわれる場合がある。その場合、再構成範囲設定手段74lは、第1投影データ読み出し手段74jによって読み出された第1投影データセット上に、表示画像上の関心領域に対応する範囲を再構成範囲として設定することができる。再構成範囲設定手段74lによって、再構成手段74pによる再度の再構成処理の負荷を軽減することができる。
【0153】
本実施形態のX線CT装置1の第2変形例によると、ノイズが低減された第2投影データセット(多色X線の投影データセット)上のアーチファクトの範囲を第1投影データセット(単色X線の投影データセット)を用いて補正して表示のための画像を生成することで、アーチファクト及びノイズの両方が低減された新たな画像を診断者等の操作者に提供することができる。その結果、本実施形態のX線CT装置1によると、画像診断の精度が向上する。
【0154】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。