特許第6523897号(P6523897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ネオスの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523897
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】含フッ素カルボン酸化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/675 20060101AFI20190527BHJP
   B01F 17/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   C07C69/675CSP
   B01F17/00
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-187073(P2015-187073)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2017-61420(P2017-61420A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 信二
(72)【発明者】
【氏名】内貴 英人
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−270243(JP,A)
【文献】 特開2002−308914(JP,A)
【文献】 特開2004−018394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸化合物
【化1】
[式中、Rfは下記式(2)
【化2】
(式中、*は結合部位を表す)で表される分岐状パーフルオロアルキル基を表す。R1は炭素数1〜2のアルキレン基を表す。n1は2〜10の整数を表す。R2は下記の5種から選ばれるいずれかの基
【化3】
(式中、*は結合部位を表す)を表す。n2は〜17の整数を表す。R3は水素原子若しくはRf−R1を表す。R3においてRfおよびR1は前述と同義である。]
【請求項2】
下記一般式(4)で表される、含フッ素二鎖型カルボン酸化合物。
【化4】
[式中、Rfは下記式(2)
【化5】
(式中、*は結合部位を表す)で表される分岐状パーフルオロアルキル基を表す。R1は炭素数1〜2のアルキレン基を表す。n1は2〜10の整数を表す。R2は下記の5種から選ばれるいずれかの基
【化6】
(式中、*は結合部位を表す)を表す。
【請求項3】
請求項1に記載の含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸、又は請求項2に記載の含フッ素二鎖型カルボン酸を含有する界面活性剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素カルボン酸および界面活性剤に関する。本発明の含フッ素カルボン酸は含フッ素ジェミニ型界面活性剤および含フッ素/炭化水素ハイブリット型界面活性剤として利用でき、有機溶剤中で良好な表面張力低下能を有する。
【背景技術】
【0002】
機能性フィルムは幅広い分野で利用されている材料であり、たとえばディスプレイ分野では、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、モスアイフィルム、輝度向上フィルム、透明導電フィルム、ハードコートフィルム、光学用透明粘着フィルム、プロテクトフィルム、位相差フィルム等が例示される。また、自動車・産業用としては、加飾フィルム、転写フィルム、自己修復フィルム、絶縁フィルム、ウインドウフィルム、離型フィルム等が例示される。その他、半導体関連、建材、エネルギー、ライフサイエンス等、幅広い分野で機能性フィルムが利用されている。機能性フィルムを生産する際の工法の例として、有機溶剤を使用したウエットプロセスでの塗工が挙げられる。フィルム生産に限らず、有機溶剤を用いたウエットプロセスでの塗工は多くの分野で使用されている塗工方法である。例えば、半導体分野等でのフォトレジスト塗工や、印刷や塗装等が挙げられる。
【0003】
この様な塗工工程においては、塗工液の濡れ性や塗工後の膜の表面平滑性が要求され、それらの向上を目的として、フッ化炭素基を有するアルキレンオキサイド化合物、含フッ素カルボン酸等のフッ素化合物を利用する方法や、水素原子の少なくとも一つがフッ素原子に置換された、炭素原子数20以下のアルキル基を有する重合単位を有する重合体を利用する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。特に炭素数8以上のフッ化炭素基を用いた界面活性剤が表面張力低下能が高く、レベリング剤としての性能に優れることが示されている。しかしながら、近年、炭素数が8 以上の直鎖フッ化炭素基を有する化合物は分解により、毒性および環境・生体蓄積性が高いペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS) またはペルフルオロクタン酸(PFOA) を生成し得ることが明らかとなったため、その使用が制限されつつある。
このような状況から、炭素数6以下のフッ化炭素基を有するフッ素系界面活性剤への置き換えが進められているが、フッ化炭素基の低炭素数化に伴い、十分な表面張力低下能が得られず、濡れ性や表面平滑性が確保できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4055217号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、有機溶剤に溶解し、優れた表面張力低下能を有する低炭素数のフッ化炭素基含有カルボン酸および界面活性剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、親水基としてカルボキシル基を有する1親水基2疎水基型の含フッ素カルボン酸を界面活性剤として用いることで、同一のフッ化炭素基の1親水基1疎水基型界面活性剤に比べ有機溶剤中で良好な表面張力低下能を有することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は下記項1〜項3に記載の含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸化合物、含フッ素二鎖型カルボン酸化合物および界面活性剤に関する。
項1.
下記一般式(1)で表される含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸化合物。
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、Rfは下記式(2)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、*は結合部位を表す)で表される分岐状パーフルオロアルキル基を表す。R1は炭素数1〜2のアルキレン基を表す。n1は2〜10の整数を表す。R2は下記の5種から選ばれるいずれかの基
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、*は結合部位を表す)を表す。n2は9〜17の整数を表す。R3は水素原子若しくはRf−R1を表す。R3においてRfおよびR1は前述と同義である。]
【0014】
項2.
下記一般式(4)で表される、含フッ素二鎖型カルボン酸化合物。
【0015】
【化4】
【0016】
[式中、Rfは下記式(2)
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、*は結合部位を表す)で表される分岐状パーフルオロアルキル基を表す。R1は炭素数1〜2のアルキレン基を表す。n1は2〜10の整数を表す。R2は下記の5種から選ばれるいずれかの基
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、*は結合部位を表す)を表す。]

項1に記載の含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸、又は項2に記載の含フッ素二鎖型カルボン酸を含有する界面活性剤。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳述する。
本発明の界面活性剤として有用な含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸化合物及び含フッ素二鎖型カルボン酸は下記一般式(1)及び(4)で表される化合物である。
【0022】
【化7】
【0023】
一般式(1)においてRfは下記式(2)で表される分岐状パーフルオロアルキル基である。式中、*は結合部位を表す。
【0024】
【化8】
【0025】
一般式(1)において、R1は炭素数1〜2のアルキレン基(−CH−または−CHCH−)である。
【0026】
n1は2〜10の整数を表し、溶媒への相溶性およびフッ化炭素基の配向の点から、好ましくは4〜10であり、更に好ましくは8〜10である。
【0027】
R2として具体的には以下の基を挙げることができる。式中*は結合部位を表す。
【0028】
【化9】
【0029】
n2は2〜17の整数を表す。n2として好ましくは5〜11であり、更に好ましくは9〜11である。
【0030】
R3は水素原子若しくはRf−R1−を表す。Rf−R1−は前述と同義である。
【0031】
一般式()で表される化合物において、好ましくは下式(3)で表される化合物が例示される。
【0032】
【化10】
【0033】
本発明の含フッ素カルボン酸化合物は、例えば下記反応式(I)および(II)に従って合成することができるが、当該方法に限定されるものではない。
【0034】
反応式(I)
含フッ素二鎖型カルボン酸化合物の合成
【0035】
【化11】
【0036】
[反応式(I)中、Rf、R1、n1、R2は前述と同義である。]
【0037】
反応式(II)
含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸化合物の合成
【0038】
【化12】
【0039】
[反応式(II)中、Rf、R1、n1、R2、n2は前述と同義である。]
【0040】
反応式(I)および(II)において使用するフッ化炭素基を有する酸クロリドは、いかなる方法により合成してもよいが、例えば下記式(a)または(b)とモノヒドロキシカルボン酸とのエステル化反応物から誘導して得られる。
【0041】
【化13】
【0042】
式(a)の化合物を用いた場合、一般式(1)においてR1は炭素素1のアルキレン基(−CH−)となる。式(a)で表される化合物は、例えば特開平11−302242に記載の方法により合成することができる。
【0043】
式(b)の化合物を用いた場合、一般式(1)においてR1は炭素数2のアルキレン基(−CHCH−)となる。式(b)で表される化合物は、例えばP&M−Invest Ltd.より販売されているものを用いることができる。
【0044】
モノヒドロキシカルボン酸としては、炭素数3〜11のモノヒドロキシカルボン酸であり、具体的には11−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシデカン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、5−ヒドロキシペンタン酸、4−ヒドロキシブタン酸等を挙げることができ、これらの化合物はそれぞれ10−ウンデセン酸、9−デセン酸、5−ヘキセン酸、4−ペンテン酸、3−ブテン酸(東京化成製)から公知の方法により誘導することができる。
【0045】
反応式(I)は、ジヒドロキシカルボン酸とフッ化炭素基を有する酸クロリドとのエステル化反応により含フッ素二鎖型カルボン酸化合物を得る反応である。該反応は反応に悪影響を及ばさない慣用の溶媒を用いて、塩基の存在下で行えばよい。該反応に用いるジヒドロキシカルボン酸は、ベンジル基などでカルボキシル基を保護したものを用い、エステル化反応後に脱保護を行うことが好ましい。脱保護は、例えば公知の水素化反応(パラジウム炭素を用いた加水素分解反応)により行うことができる。
【0046】
反応式(II)の含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸化合物の合成においては、ジヒドロキシカルボン酸に対し、炭化水素基を有する酸クロリドまたはフッ化炭素基を有する酸クロリドのうち一方を反応させた後に、もう一方を反応させる方法である。先に炭化水素基を有する酸クロリドを反応させ、後でフッ化炭素基を有する酸クロリドを反応させることが好ましい。該反応は反応に悪影響を及ばさない慣用の溶媒を用いて、塩基の存在下で行えばよい。該反応に用いるジヒドロキシカルボン酸は、ベンジル基などでカルボキシル基を保護したものを用い、エステル化反応後に脱保護を行うことが好ましい。脱保護は、例えば公知の水素化反応(パラジウム炭素を用いた加水素分解反応)により行うことができる。
【0047】
反応式(II)で使用する炭化水素基を有する酸クロリドとして具体的にはCH(CH16COCl、CH(CH15COCl、CH(CH14COCl、CH(CH12COCl、CH(CH10COCl、CH(CHCOCl、CH(CHCOCl、CH(CHCOCl、CH(CHCOCl、CH(CHCOCl、CH(CHCOCl、CH(CHCOCl、CH(CHCOCl、CHCHCOCl(東京化成製)等を用いることができる。
【0048】
本発明の含フッ素カルボン酸化合物は、分子内に1つの親水基と、炭化水素基および/またはフッ化炭素基の2つの疎水基を有しており、例えば界面活性剤、表面処理剤、表面改質剤として有用である。機能性フィルムなどの有機溶剤を使用したウエットプロセスでの塗工において使用することができ、塗工液の濡れ性や塗工後の膜の表面平滑性の向上に有効である。
【0049】
本発明の含むフッ素カルボン酸はそれ自体で界面活性剤として使用できるが、有機溶剤を含む界面活性剤組成物としても用いることができる。有機溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ノルマルブチル等を用いることができる。
【実施例】
【0050】
本発明の内容を以下の合成例および実施例により説明するが、本発明の内容は実施例に限定されることは意図しない。
【0051】
合成例1−1〜1−6:フッ化炭素基を有する酸クロリドの合成
【0052】
合成例1−1
(10−ウンデセン酸ベンジルエステルの合成)
ナスフラスコに10−ウンデセン酸(10.025g,54.5mmol)を入れ、溶媒としてジメチルホルムアミド(以下、DMFと表す。30mL)を加えて溶解した。溶解後、炭酸カリウム(15.067g,109.5mmol)を加え、次いでベンジルブロマイド(8mL,60.0mmol)を氷冷下で徐々に加え、室温にて一晩撹拌した。1N−HClで中和した後、ヘキサン抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥・ろ過後、エバポレーターを用いて減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し、10−ウンデセン酸ベンジルエステル(収量:14.62g、収率:98%)を得た。得られた10−ウンデセン酸ベンジルエステルの外観およびH−NMRの測定結果を表1に示す。
【0053】
合成例1−2
(11−ヒドロキシウンデカン酸ベンジルエステルの合成)
ナスフラスコにソジウムボロハイドライド(0.355g,9.4mmol)を入れ、系内を窒素置換した。溶媒としてテトラヒドロフラン(以下、THFと表す。30mL)を加え、氷浴を用いて0℃に冷却した後、ヨウ素(0.949g,3.7mmol)をTHF(20mL)に溶解させ、徐々に滴下した。次いで、合成例1−1で得られた10−ウンデセン酸ベンジルエステル(5.49g,20mmol)を徐々に添加し、室温にて2時間撹拌し反応させた。反応後、蒸留水(3mL)とTHF(25mL)を加え、30%過酸化水素水(40mL)と3N−水酸化ナトリウム水溶液を加え酸化させた。その後、エーテル抽出を行い、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥・ろ過し、エバポレーターを用いて減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し、11−ヒドロキシウンデカン酸ベンジルエステル(収量:5.30g、収率:91%)を得た。得られた11−ヒドロキシウンデカン酸ベンジルエステルの外観およびH−NMRの測定結果を表1に示す。
【0054】
合成例1−3
(4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン酸クロリドの合成)
反応容器内に4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン酸((株)ネオス製、4.167g,11mmol)と塩化チオニル(5mL)を加え、50℃で4時間加熱撹拌した。反応終了後、過剰の塩化チオニルを減圧下で留去した。粗生成物をガラスチューブオーブンを用いて減圧蒸留により精製し、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン酸クロリド(収量:3.733g,収率:86%)を得た。得られた4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン酸クロリドの外観およびH−NMRの測定結果を表1に示す。
【0055】
合成例1−4
(4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン酸,11−オキソ−11−(フェニルメトキシ)ウンデシルエステルの合成)
ナスフラスコに合成例1−2で得られた11−ヒドロキシウンデカン酸ベンジルエステル(0.756g,2.6mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジン(以下、DMAPと表す。0.319g,2.6mmol)、ジクロロエタン(30mL)を加えて溶解した。ここに、合成例1−3で得られた4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン酸クロリド(1.03g,2.6mmol)をジクロロエタン(5ml)に溶解した後、氷冷下で徐々に滴下した。室温で一晩撹拌した後、3時間リフラックスさせた。反応後、エーテルを加え析出した塩をろ過した後、1N−HClで中和し、エーテル抽出を行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥・ろ過し、エバポレーターにて減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン酸,11−オキソ−11−(フェニルメトキシ)ウンデシルエステル(収量:1.37g、収率:81%)を得た。得られた4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン酸,11−オキソ−11−(フェニルメトキシ)ウンデシルエステルの外観およびH−NMRの測定結果を表1に示す。
【0056】
合成例1−5
(11−[(1−オキソ−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン−1−イル)オキシ]ウンデカン酸の合成)
合成例1−4で得られた4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン酸,11−オキソ−11−(フェニルメトキシ)ウンデシルエステル(3.262g,5mmol)を酢酸エチル(5ml)に溶解させ、触媒量のPd(OH)/Cを加えた。水素雰囲気化、室温にて1日撹拌を行い、Pd(OH)/Cをろ過した後、エバポレーターを用いて減圧濃縮し、11−[(1−オキソ−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン−1−イル)オキシ]ウンデカン酸(収量:2.76g、収率:98%)を得た。得られた11−[(1−オキソ−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン−1−イル)オキシ]ウンデカン酸の外観およびH−NMRの測定結果を表1に示す。
【0057】
合成例1−6
(11−[(1−オキソ−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン−1−イル)オキシ]ウンデカン酸クロリドの合成)
合成例1−5で得られた11−[(1−オキソ−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン−1−イル)オキシ]ウンデカン酸(0.569g,1mmol)に塩化チオニル(0.5ml)を加え、50℃で4時間加熱撹拌した。反応後、過剰の塩化チオニルを減圧下で留去し、11−[(1−オキソ−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン−1−イル)オキシ]ウンデカン酸クロリド(0.51g,88%)を得た。得られた11−[(1−オキソ−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン−1−イル)オキシ]ウンデカン酸クロリドの外観およびH−NMRの測定結果を表1に示す。
【0058】
合成例2:ジヒドロキシルカルボン酸のカルボキシル基保護
【0059】
合成例2
(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸ベンジルエステルの合成)
反応容器内に2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(25.58g,0.19mol)と溶媒としてDMF(100mL)を加え、50℃に加熱した後、水酸化カリウム(10.663g,0.19mol)を加えた。均一透明になった後、室温まで冷却し、ベンジルブロマイド(32.6g,0.19mol)を滴下し、室温にて一晩撹拌した。生成したKBrをろ過した後、エバポレーターを用いて減圧濃縮した。メタノール溶媒で再結晶を行い、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸ベンジルエステル(収量:25.6g,収率:60%)を得た。得られた2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸ベンジルエステルの外観およびH−NMRの測定結果を表1に示す。
【0060】
合成例3−1〜3−3:含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸の合成
【0061】
合成例3−1
デカン酸,2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−3−オキソ−3−(フェニルメトキシ)プロピルエステルの合成)
ナスフラスコに合成例2と同様にして合成した2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸ベンジルエステル(0.897g,4mmol)、DMAP(0.489g,4mmol)、THF(100mL)を加えて溶解した。そこに、ラウリル酸クロライド(0.875g,4mmol)を氷冷下で滴下し、室温で一晩撹拌した。反応後、塩をろ過で取り除き、エバポレーターで減圧濃縮した。残渣を塩化アンモニウムで中和し、エーテル抽出を行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥・ろ過し、エバポレーターで減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し、デカン酸,2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−3−オキソ−3−(フェニルメトキシ)プロピルエステルを(収量:0.942g、収率58%)得た。得られたデカン酸,2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−3−オキソ−3−(フェニルメトキシ)プロピルエステルの外観および1H−NMRの測定結果を表1に示す。
【0062】
合成例3−2
(含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸ベンジルエステルの合成)
ナスフラスコに、合成例3−1で得られたウンデカン酸,2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−3−オキソ−3−(フェニルメトキシ)プロピルエステル(0.409g,1mmol)、DMAP(0.123g,1mmol)、ジクロロエタン(20mL)を加えて溶解した。そこに、合成例1−6で得られた11−[(1−オキソ−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン−1−イル)オキシ]ウンデカン酸クロリドをジクロロエタンに溶解した後、氷冷下でゆっくり滴下した。室温にて一晩撹拌した後、3時間リフラックスさせた。反応後エーテルを加え、析出した塩をろ過で取り除き、1N‐塩酸で中和した後、エーテル抽出を行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥・ろ過後、エバポレーターを用いて減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し、含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸ベンジルエステル(収量:0.507g,収率53.3%)を得た。得られた含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸ベンジルエステルの外観およびH−NMRの測定結果を表1に示す。
【0063】
合成例3−3
(含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸の合成)
合成例3−2と同様にして合成した含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸ベンジルエステル(0.752g,0.79mmol)を酢酸エチル(5ml)に溶解させ、触媒量のPd(OH)/Cを加え、水素雰囲気下、室温にて一日撹拌した。Pd(OH)/Cをろ過した後、エバポレーターで減圧濃縮し、含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸(収量:0.669g,収率:98%)を得た。得られた含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸の外観およびH−NMRの測定結果を表1に示す。
【0064】
合成例4−1〜4−2:含フッ素二鎖型カルボン酸の合成
【0065】
合成例4−1
(含フッ素二鎖型カルボン酸ベンジルエステルの合成)
ナスフラスコに合成例2と同様にして合成した2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸ベンジルエステル(0.127g,0.56mmol)、DMAP(0.136g1.1mmol)、ジクロロエタン(50mL)を加えて溶解させた。そこに、合成例1−6と同様にして合成した11−[(1−オキソ−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン−1−イル)オキシ]ウンデカン酸クロリドをジクロロエタン(5ml)に溶解した後、氷冷下でゆっくり滴下した。室温にて一晩撹拌した後、3時間リフラックスさせた。反応後エーテルを加え、析出した塩をろ過で取り除き、1N‐塩酸で中和した後、エーテル抽出を行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥・ろ過後、エバポレーターを用いて減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製し、含フッ素二鎖型カルボン酸ベンジルエステル(収量:0.282g、収率:39%)を得た。得られた含フッ素二鎖型カルボン酸ベンジルエステルの外観およびH−NMRの測定結果を表1に示す。
【0066】
合成例4−2
(含フッ素二鎖型カルボン酸の合成)
合成例4−1で得られた含フッ素二鎖型カルボン酸ベンジルエステル(0.282g、0.21mmol)を酢酸エチル(5ml)に溶解させ、触媒量のPd(OH)/Cを加え、水素雰囲気下、室温にて一日撹拌した。Pd(OH)/Cをろ過した後、エバポレーターで減圧濃縮し含フッ素二鎖型カルボン酸(収量:0.252g、収率:98%)を得た。得られた含フッ素二鎖型カルボン酸の外観およびH−NMRの測定結果を表1に示す。
【0067】
合成例1−1〜4−2で得られた物質のH−NMRは、Bruker社製AVANCE−III400核磁気共鳴分光器を用いて測定した。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例1
N−メチルピロリドンを用いて、合成例3−3で合成した含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸の0.1wt%溶液を調製した。
調製した溶液について、協和界面化学製、自動表面張力計CBVP−Zを用いてウイルヘルミ法により25℃での表面張力を測定した。
測定結果を表2に示す。
【0070】
実施例2
N−メチルピロリドンを用いて、合成例4−2で合成した含フッ素二鎖型カルボン酸の0.1wt%溶液を調製し、表面張力を測定した。
【0071】
比較例1
N−メチルピロリドンを用いて、合成例1−5で合成した11−[(1−オキソ−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン−1−イル)オキシ]ウンデカン酸の0.1wt%溶液を調製し、表面張力を測定した。
【0072】
比較例2
N−メチルピロリドンのみで表面張力を測定した。
【0073】
【表2】
【0074】
表面張力測定の結果から、比較例1の単鎖の含フッ素カルボン酸に比べて、実施例1で用いた含フッ素/炭化水素二鎖型カルボン酸および実施例2で用いた含フッ素二鎖型カルボン酸は同一濃度において有機溶剤の表面張力低下能に優れることがわかる。