(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の技術の問題は、伝送ラインに外部からノイズが混入したとき、制御盤は、操作箱などからの起動信号であると誤って検出し、これによって防護区画への消火剤の誤放出が行なわれてしまうおそれがある。伝送ラインへのノイズの混入は、伝送ラインが断線したり取外されたりして伝送ラインの接続が外れたとき、その伝送ラインの浮遊容量に起因した電荷によって、または伝送ラインのインダクタンス成分に起因した蓄積エネルギによって、伝送ラインに瞬時に比較的大きな電流が流れて放電したとき、生じる。また、操作箱と制御盤との間で、前記伝送ラインとともに、火災発生時にスピーカから避難警報を大音量で音響出力する音響信号のための信号ラインなどが、長距離にわたって並行して配線敷設される。この音響信号に起因するノイズが、伝送ラインに混入する。
【0005】
本発明の目的は、ノイズの混入などに起因して防護区画へ消火剤が誤放出されることを確実に防ぐことができるようにした消火装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
消火すべき防護区画10に、貯蔵容器11からの消火剤を、開閉弁14を介して放出する消火装置において、
(a)防護区画10の近傍に設けられる起動装置100であって、
防護区画10内に火災が発生したとき、火災の発生に関する複数の相互に異なる火災信号を発生する火災信号発生手段102,103;111、112;113と、
火災信号発生手段102,103;111、112;113からの火災信号を送信する送信手段130とを備える起動装置100と、
(b)送信手段からの火災信号を伝送する伝送ライン2と、
(c)制御盤200であって、
伝送ライン2を介する火災信号を受信する受信手段240と、
受信手段240からの各火災信号によってそれぞれ活性化される論理演算素子315,351,352,353,354を有し、これらの活性化された論理演算素子315,351,352,353,354によって論理演算を行なって消火剤の放出に関する第1放出信号316を得る第1演算回路310と、
受信手段240からの各火災信号を、予め定めるプログラムの実行によって論理演算を行なって消火剤の放出に関する第2放出信号328を得る第2演算回路270,320,326と、
第1および第2放出信号316、328に応答し、第1および第2放出信号316,328の両者が得られたとき、前記開閉弁14を駆動して開く開閉弁駆動手段330とを備える制御盤200とを含むことを特徴とする消火装置である。
【0007】
また本発明は、
火災信号発生手段は、
手動操作されることによって、起動用の火災信号を発生する起動スイッチ112と、
起動スイッチ112の手動操作を可能にするために操作される操作部材107と、
その操作部材107が操作されることによって、操作用の火災信号を発生する操作部材スイッチ111とを含むことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、
火災信号発生手段は、
火災が起きたことを感知して火災信号をそれぞれ発生する複数の火災感知器102,103であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防護区画の近傍に設けられる起動装置は、火災信号発生手段と、その火災信号を、伝送ラインを介して送信する送信手段とを備える。火災信号発生手段は、防護区画内に火災が発生したとき、火災の発生に関する複数の火災信号を発生する。たとえば、防護区画の近傍の固定位置に操作箱が取付けられ、この操作箱の扉または蓋である操作部材によって起動スイッチが覆われて構成される。火災の発生時、先ず、操作部材を手動操作して開き、この操作部材が開かれることによって、起動スイッチがたとえば押圧などの手動操作可能に露出し、このとき操作部材スイッチはスイッチング態様が変化して操作用の火災信号を発生し、次に、起動スイッチが操作されることによってスイッチング態様が変化して起動用の火災信号を発生する。これらの時間順次的に発生される操作部材スイッチによる操作用火災信号と、起動スイッチとによる起動用火災信号とが、制御盤の第1および第2演算回路によって論理演算されることによって、消火剤の放出に関する第1および第2放出信号が得られる。
【0010】
あるいはまた防護区画内に設けられる複数の各火災感知器は、火災が起きたことを自動的に感知して火災信号をそれぞれ発生する。たとえば、或る火災感知器は、防護区画内の火災による煙を感知して火災信号を発生し、また他の火災感知器は防護区画内の炎、温度などを感知して火災信号を発生する。火災感知器からの各火災信号が、制御盤の第1および第2演算回路によって論理演算されることによって、第1および第2放出信号が得られる。
【0011】
火災信号発生手段からの複数の火災信号は、伝送ラインを介して制御盤の受信手段によって受信される。受信手段によって受信された各火災信号は、第1および第2演算回路において論理演算される。第1演算回路では、受信された各火災信号によって、たとえば直並列接続されるスイッチング素子などの論理演算素子がそれぞれ活性化され、活性化された論理演算素子によって論理演算が行なわれ、消火剤の放出に関する1放出信号が得られる。論理演算素子は、ホトカプラによって実現され、受信された火災信号によって発光素子が発光され、これによって受光素子が導通して活性化する構成を有してもよい。論理演算素子はまた、リレーによって実現され、受信された火災信号によってリレーコイルが励磁され、これによってリレースイッチのスイッチング状態が変化して活性化するように構成されてもよい。これらの複数の論理演算素子がたとえば並列または直列などに接続されて組み合わされる、いわばハードウエアの論理回路によって、受信手段から得られた各火災信号を論理演算し、これによって消火剤の放出に関する第1放出信号を得る。
【0012】
第2演算回路は、たとえばマイクロコンピュータなどの予め定めるプログラムの各ステップを順次的に実行するコンピュータを含んで実現される。こうして、いわばソフトウエアの実行によって、受信手段から得られた各火災信号を論理演算し、これによって消火剤の放出に関する第2放出信号を得る。第2演算回路は、プログラムを実行するシーケンスコントローラなどによって実現されてもよい。
【0013】
開閉弁駆動手段は、第1演算回路から第1放出信号が得られ、かつ第2演算回路から第2放出信号が得られたとき、開閉弁を駆動して開き、貯蔵容器からの消火剤が防護区画に放出される。
【0014】
前述のように、起動装置から伝送ラインを介して制御盤における受信手段によって受信された複数の各火災信号は、第1および第2演算回路に与えられ、第1演算回路は、各火災信号によって個別的に活性化される論理演算素子の論理演算によって、第1放出信号を出力し、第2演算回路は、各火災信号を、プログラムの実行による論理演算して、第2放出信号を出力する。これらのハードウエアによる第1演算回路の第1放出信号と、ソフトウエアによる第2演算回路からの第2放出信号の両者が得られたとき、開閉弁が駆動されて消火剤が放出される。したがって第1演算回路によるハードウエアの論理演算素子による演算と、第2演算回路のソフトウエアによる演算とが、いずれも達成されることによって消火剤が放出されるので、第1および第2演算回路がいずれも正常に動作したときのみ、消火剤が放出され、誤放出を確実に防ぐことができる。
【0015】
本発明によれば、第1および第2演算回路に与えられる複数の火災信号は、同一でもよいが、相互に異なってもよく、複数の火災信号のうちの一部のみが同一であってもよく、また第1および第2演算回路による論理演算は、同一でもよいが、相互に異なってもよい。
非常停止スイッチ113,213も、火災信号を発生するようにしてもよい。
【0016】
消火剤の誤放出を防止する本発明に従う実施の形態の制御盤200では、
図20に示される単一の(すなわち第1および第2演算回路310,320に共通の)マイクロコンピュータによって実現される処理回路270は、(1)受信された火災信号を個別に出力して第1演算回路310の
図22〜24のホトカプラ303、304、315、351,352、リレー回路305、リレー353、354などに与えて演算させるとともに、(2)処理回路270の内部でソフトウエア演算して
図25の第2演算回路320における端子326からの出力も行なっている。この処理回路270の実行プログラムは、(1)第1演算回路310への出力のためのソフトウエア演算と、(2)第2演算回路320への出力のためのソフトウエア演算とでは、部分的に異なるので、誤放出のおそれが低下することになる。
【0017】
さらに好ましくは、処理回路270は、第1演算回路310への出力から遅延時間W91(たとえば2〜3sec)だけ経過した後、第2演算回路320への出力を行なう。第2演算回路320からの
図25における端子328の出力は、処理回路270の
図25における端子326と、処理回路270の動作を監視するウオッチドッグタイマ274の出力321との直列and演算で得られるので、処理回路270の異常時には、第2演算回路320における端子328からの消火剤を放出する第2放出出力は、発生されず、このことによっても、誤放出のおそれが低下する。
【0018】
本発明に従う実施の他の形態では、受信した各火災信号を導出する第1演算回路310のための処理回路と、受信した各火災信号を第2演算回路320のために前記ソフトウエア演算する処理回路とを、別々のマイクロコンピュータによって実現してもよい。この実施の形態では、2つの処理回路の相互監視の構成が設けられる。
【0019】
本発明は、
送信手段は、送信すべき信号WDを伝送ライン2へ時分割多重化してサイクリック伝送し(
図6(2)のW1)、
火災信号発生手段102,103;111、112;113が火災信号を発生しないとき、伝送の予め定める第1の時間間隔(
図6(2)のW2、
図17のW21)に設定し、
火災信号発生手段が火災信号を発生したとき、第1の時間間隔W21よりも短い予め定める第2の時間間隔(
図6(2)のW2、
図17のW22)に設定することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、起動装置の送信手段は、伝送ラインへ、たとえばフレーム毎の、キャラクタ毎の、または一塊のデータ毎の信号WDを、時分割多重化してサイクリック伝送し、制御盤の受信手段が受信する。火災信号が発生されないとき、起動装置の送信手段は、第1の時間間隔W21、たとえば2secの周期で繰返し伝送する。第1および第2演算回路の論理演算に必要な火災信号が発生されると、送信手段は、火災信号を含む信号を、もっと短い第2の時間間隔W22、たとえば50msecの周期で繰返し伝送する。これによって起動装置の送信手段と制御盤の受信手段とは、火災信号の迅速な送受信が可能になり、制御盤における第1および第2放出信号の演算が迅速に行なわれるようになる。
【0021】
本発明は、
制御盤200は、
受信手段240による火災信号の連続的な受信回数n(
図29)を計数する手段371(
図20)と、
受信手段による各回の受信された火災信号を比較する手段(
図29のi4)と、
計数手段と比較手段との出力に応答し、計数手段371による連続的な受信回数の計数値nが予め定める値n100以上にわたって、同一である受信された火災信号を、第1および第2演算回路310,320に与える手段(
図29のi7)とを備えることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、起動装置の送信手段からの火災信号を前述のように第2の短い時間間隔で受信し、受信手段による各回の受信された火災信号を比較手段によって比較し、連続的な受信の各回毎の火災信号が、計数手段による連続的な受信回数の計数値が予め定める値以上、たとえば100回にわたって、同一であるとき、その受信した火災信号が第1および第2演算回路に与えられ、第1および第2放出信号の演算のために用いられる。こうして火災信号のノイズ混入などによる誤った受信を防ぐことができる。このことによって、消火剤の誤放出を確実に防ぐことができる。
【0023】
本発明は、
起動装置100において、
火災信号発生手段102,103;112の異常を検出する第1異常検出手段(
図12〜15)が備えられ、
送信手段130は、第1異常検出手段(
図12〜15)からの異常検出出力を送信し、
制御盤200において、
伝送ライン2または開閉弁14の異常を検出する第2異常検出手段(
図16;26、27)と、
受信手段260によって受信された第1異常検出手段(
図12〜15)からの異常検出出力と、第2異常検出手段(
図16;26,27)からの異常検出出力との少なくともいずれかに応答し、開閉弁駆動手段330を不能動化に強制する手段(
図28のh2、h3、h17)とが備えられることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、起動装置に備えられる第1異常検出手段は、火災信号発生手段の異常を検出し、この第1異常検出手段からの出力が送信手段によって送信される。第1異常検出手段によって検出される異常状態は、たとえば起動スイッチが押釦によって実現されるとき、導通したままである異常状態(
図12、13)、火災感知器の断線などの異常状態(
図14、15)および火災信号発生手段のそのほかの異常状態であり、さらに伝送ライン2の断線の異常状態(
図16)などを含んでもよい。
【0025】
制御盤に備えられる第2異常検出手段は、伝送ライン2の断線などの異常状態(
図16)および開閉弁の駆動のための電磁ソレノイドの断線の異常状態(
図26,27)などを検出する。制御盤において不能動化強制手段は、起動装置の第1異常検出手段からの異常検出出力を受信したとき、および制御盤における第2異常検出手段からの異常検出出力が得られたときのうち、少なくともいずれかにおいて、開閉弁駆動手段が開かないようにして閉じたままの状態に強制する。これによって貯蔵容器からの消火剤の誤放出が防がれる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の実施の一形態の消火装置1における電気的構成の一部を簡略化して示す図である。この消火装置1の起動装置100と制御盤200とは、伝送ライン2を介して信号の授受が行なわれる。消火装置1の起動装置100および制御盤200とに共通な直流電源400は、電源ライン3,4から、制御盤200と起動装置100との間で電源ライン5,6を介して直流電力が供給される。一方の電源ライン5は高電位である。他方の電源ライン6は起動装置100および制御盤200に共通な低電位であり、伝送ラインとしても用いられる。
【0028】
起動装置100および制御盤200には、安定化電源401,402がそれぞれ設けられる。これらの安定化電源401,402には、直流電源400の電力が与えられ、電圧を降下して処理回路170,270およびそのほかの回路装置に電力を供給する。安定化電源401,402は、たとえばDC/DCコンバータなどを含んで実現されてもよい。これらの安定化電源401,402は、省略されてもよい。直流電源400は、たとえば出力電圧24Vであり、安定化電源401,402の出力電圧はたとえば5Vであってもよい。
【0029】
起動装置100のほかに、さらに1または複数の起動装置100aが設けられ、電源ライン7,8によって接続されてもよい。起動装置100aにおける起動装置100と対応する部分には、参照符に添え字aを付して示す。
【0030】
図2は、消火装置1の全体の簡略化した斜視図である。消火すべき防護区画10には、この防護区画10内へ消火剤を噴射して放出する噴射ヘッド18が設けられる。消火剤は、たとえばCO
2、N
2などのガスでもよいが、粉体などでもよい。防護区画10の近傍には、起動装置100が設けられる。起動装置100は、防護区画10に設けられた複数(たとえば2)の火災感知器102,103が備えられる。貯蔵庫9には、消火剤を充填した貯蔵容器11が設けられる。貯蔵容器11には、容器弁12が備えられる。この容器弁12は、駆動ガスが供給されてパイロット圧が作用することによって、開く。これによって貯蔵容器11内の消火剤が消火剤導管15を経て噴射ヘッド18に供給され、防護区画10内の消火が行なわれる。駆動ガス容器13には、駆動ガスが充填され、その開閉弁14が開かれることによって、駆動ガスが駆動ガス導管17から容器弁12に供給される。開閉弁14は、電磁ソレノイドを有し、電磁ソレノイドが励磁駆動されることによって、開く。制御盤200は、駆動ライン16を介して、開閉弁14の電磁ソレノイドを励磁制御する。
【0031】
図3は起動装置100の操作箱105を示す正面図であり、
図4はこの操作箱105の簡略化した縦断面図である。操作箱105の本体106には、手動で開閉動作される操作部材である扉107が設けられる。扉スイッチ111は、扉107が
図3のように閉じられた状態および
図4のように開かれた状態に対応して、スイッチング状態を変化して検出する。扉107が
図4のように開かれることによって、起動スイッチ112および非常停止スイッチ113が操作可能とされる。これらの起動スイッチ112と非常停止スイッチ113とは、たとえば押釦などによって実現されてもよい。本体106には表示手段115が設けられ、また本件消火装置の自動および手動の起動動作を切換えるための自動/手動切換えスイッチ116が設けられる。
【0032】
図5は、起動装置100と制御盤200との間で伝送ライン2を介して通信されるデータを表わす信号の波形を示す図である。この信号は矩形波の電流信号であり、各ビットデータは、LレベルおよびHレベルを有する2値論理値である。この電流信号の電流I2は、たとえば16〜20mAであり、ノイズの混入が避けられ、したがって、消火剤の誤放出が防がれる。
【0033】
図6は、起動装置100と制御盤200との間で伝送ライン2を介して通信を行なう通信装置30によって送受信される多重伝送による通信を説明するための図である。
図6(1)は、伝送ライン2によって伝送される一塊のデータの信号WDを示す図である。この信号WDによって、シリアルデータがサイクリックに伝送される。この信号WDは、全22バイトの固定長で構成され、たとえば伝送速度は4800bpsであり、誤り検出のために奇数パリティ1ビットが1バイト毎の各単位データD0〜D21に付加される。これらの1バイト毎のデータの内容は、次の表1のとおりである。
【0035】
起動装置100から制御盤200へのデータの内容のうち、たとえば起動スイッチ112が押圧操作されて起動操作されたことを表わすデータの内容は、16進法HでD8(01)D9(00)D10(00)で表わされる。また非常停止スイッチ113が押圧操作されたことを表わすデータの内容は、たとえばD8(80)D9(00)D10(00)で表わすことができる。
【0036】
図6(2)は、
図6(1)に示される全22バイトのデータD0〜D21を一塊とするデータ信号WDが伝送ライン2に、周期的に繰返してサイクリックに伝送される状態を示す図である。データ信号WDの伝送の後、時間間隔W2をあけて、周期W1毎にデータ信号WDの送受信が繰返される。たとえばデータ信号WDの伝送は、たとえばμsecのオーダの時間であり、時間間隔W2は、後述の
図17のように、第1の時間間隔W21、またはもっと短い第2の時間間隔W22に定められる。起動装置100における操作箱105の扉スイッチ111および起動スイッチ113ならびに火災感知器102,103は、さらには非常停止スイッチ113,213も、論理演算のための火災信号を発生する火災信号発生手段を構成する。
【0037】
再び
図1を参照して、起動装置100と制御盤200との通信のための通信装置30において、起動装置100では、端子26,27間で、第1送信用ホトカプラ回路130と第1受信用ホトカプラ回路140とが直列接続されて第1直列回路129を構成する。制御盤200では、端子24,25間で、第2送信用ホトカプラ回路230と第2受信用ホトカプラ回路240とが直列接続されて第2直列回路229を構成する。第1送信用ホトカプラ回路130は、受信手段として働く第2受信用ホトカプラ回路240のための送信手段である。第2送信用ホトカプラ回路230は、受信手段として働く第1受信用ホトカプラ回路140のための送信手段である。伝送ライン2は、第1および第2直列回路129,229の間に介在される。直流電源400は、これらの第1および第2直列回路129,229に直列に接続される。こうして直流電源400からの出力および通信のための信号は、電源ライン3から第2直列回路229、伝送ライン2および第1直列回路129を経て、さらに伝送ライン22によってタンデム接続または渡り配線された、もう1つの追加的な起動装置100aを経て、さらに共通電位の電源ライン8および電源ライン6を経て電源ライン4に与えられ、こうして電流の閉ループが形成される。信号の伝送ラインは、この形成された閉ループによって達成されるが、説明の簡略のために、伝送ライン2で示すことがある。
【0038】
図7は、第1送信用ホトカプラ回路130および第1受信用ホトカプラ回路140とが直列接続された第1直列回路129と、それに関連する電気的構成を示す電気回路図である。起動装置100の端子26には、第1送信用ホトカプラ回路130において、定電流ダイオード131から第1送信用ホトカプラ132の受光素子132dが接続される。その第1送信用ホトカプラ132の出力は、スイッチングトランジスタ133のベースに与えられる。定電流ダイオード131の出力は、このスイッチングトランジスタ133を経てライン134から第1受信用ホトカプラ回路140の第1受信用ホトカプラ142の発光素子142eに与えられ、ライン143を経て端子27に接続される。第1送信用ホトカプラ回路130における定電流ダイオード131には並列に抵抗135が接続され、これによって第1送信用ホトカプラ回路130の受光素子132dおよびトランジスタ133に流れる電流が調節される。第1送信用ホトカプラ132および第1受信用ホトカプラ142などは、半導体素子から成る。
【0039】
第1送信用ホトカプラ回路130には、端子26とライン134との間に直流電源400とは逆極性に逆起ダイオード136が接続される。第1受信用ホトカプラ回路140における第1受信用ホトカプラ142の発光素子142eには並列に逆起ダイオード146が、直流電源400の逆極性に並列に接続される。逆起ダイオード136は、第1送信用ホトカプラ132の受光素子132dおよびトランジスタ133に並列に接続される。これらの逆起ダイオード136,146は、端子27からライン134を経て端子26に向かう不所望な電圧が、第1受信用ホトカプラ142の発光素子142eならびに第1送信用ホトカプラ132の受光素子132dおよびトランジスタ133に逆方向に、逆耐圧を超えて印加されることを阻止して、不所望な電圧による電流を流し、これらの回路素子の破損を防ぐ働きをする。
【0040】
第1送信用ホトカプラ回路130における第1送信用ホトカプラ132の発光素子132eには、送信処理のための波形整形回路150が接続される。この波形整形回路150は、マイクロコンピュータなどによって実現される処理回路170からの前述の
図5に関連して述べた矩形波の送信信号を、ライン151を経て波形整形し、スイッチングトランジスタ156のベースに与える。このトランジスタ156は、発光素子132eに並列に接続される。
【0041】
第1受信用ホトカプラ回路140における第1受信用ホトカプラ142の受光素子142dの出力は、受信処理のための波形整形回路160に与えられる。この波形整形回路160は、受光素子142dの出力を波形整形し、ライン165から処理回路170に与える。
【0042】
図8は、定電流ダイオード131の特性を示すグラフである。定電流ダイオード131に印加される電圧は、直流電源400によって、
図8の値V1未満であり、その定電流ダイオード131に流れるピンチオフ電流Ip1は、たとえば20msecであり、一定に保たれる。こうして定電流ダイオード131は、第1送信用ホトカプラ132の受光素子132dおよびトランジスタ133などに流れる電流の上限値を制限して保護し、また第1受信用ホトカプラ142の発光素子142eに流れる電流を一定に保ち、信号が確実に受信される光強度を達成する。電圧V1は、たとえば24Vである。
【0043】
起動装置100の処理回路170からライン151へ、前述の
図5に示される矩形波の送信すべき信号は、波形整形回路150から
図7のトランジスタ156のベースに与えられる。トランジスタ156は、そのベースがLレベルであるとき遮断し、これによって第1送信用ホトカプラ132の発光素子132eが発光し、したがって受光素子132dが導通する。これによってトランジスタ133のベースがHレベルとなって導通し、定電流ダイオード131および抵抗135を介する電流は、トランジスタ133を経てライン134から第1受信用ホトカプラ142の発光素子142eを駆動し、ライン143を経て流れる。トランジスタ156は、そのベースがHレベルであるとき導通し、これによって第1送信用ホトカプラ132の発光素子142eは発光せず、受光素子132dが遮断し、トランジスタ133が遮断し、第1受信用ホトカプラ142の発光素子142eが発光しない。こうして処理回路170からライン151に導出される信号は、起動装置100から伝送ライン2を経て制御盤200に送信される。
【0044】
処理回路170からライン151に導出される信号はまた、前述のように第1受信用ホトカプラ142の受光素子142dから波形整形回路160を経てライン151から処理回路170に与えられる。処理回路170は、ライン151から導出した送信信号と、ライン165から与えられた受信信号とを比較することによって、送信信号が誤りなく正確に送信されたかどうかを確認することができる。また処理回路170は、ライン151から送信信号を導出せず、送信を休止した状態で、ライン165からの受信信号があるかどうかを監視することによって、伝送ライン2の信号が伝送中である通信ビジー状態であるか、または通信空き状態であるかを検出することができる。
【0045】
図9は、制御盤200における第2送信用ホトカプラ回路230と第2受信用ホトカプラ回路240とが直列接続されて構成される第2直列回路229と、それに関連する電気的構成を示す電気回路図である。
図9に示される構成とその動作とは、前述の
図7に示される構成とその動作とに類似し、対応する部分には参照符の下2桁を同一にして示し、説明を簡略にする。制御盤200の端子24には、第2送信用ホトカプラ回路230において、定電流ダイオード231から第2送信用ホトカプラ232が接続される。その第2送信用ホトカプラ232の出力は、スイッチングトランジスタ233に与えられる。定電流ダイオード131の出力は、このトランジスタ233を経てライン234から第2受信用ホトカプラ回路240の第2受信用ホトカプラ242に与えられ、ライン243を経て端子25に接続される。
【0046】
第2送信用ホトカプラ回路230には、端子24とライン234との間に直流電源400とは逆極性に逆起ダイオード236が接続される。第2受信用ホトカプラ回路240における第2受信用ホトカプラ242には並列に逆起ダイオード246が、直流電源400の逆極性に並列に接続される。これらの逆起ダイオード236,246は、端子25からライン243を経て端子24に向かう不所望な電圧が、第2受信用ホトカプラ242の発光素子242eならびに第2送信用ホトカプラ232の受光素子232dおよびトランジスタ233に逆方向に、逆耐圧を超えて印加されることを阻止して、不所望な電圧による電流を流し、これらの回路素子の破損を防ぐ働きをする。
【0047】
第2送信用ホトカプラ回路230における第2送信用ホトカプラ232の発光素子132eには、送信処理のための波形整形回路250が接続される。この波形整形回路250は、マイクロコンピュータなどによって実現される処理回路270からの前述の
図5に関連して述べた矩形波の送信信号を、ライン251を経て波形整形し、スイッチングトランジスタ256のベースに与える。このトランジスタ256は、発光素子232eに並列に接続される。処理回路270は、処理回路170と同様に、中央処理回路CPU271を有し、メモリ272にストアされたプログラムをステップ順次的に実行する。
【0048】
第2受信用ホトカプラ回路240における第2受信用ホトカプラ242の受光素子242dの出力は、受信処理のための波形整形回路260に与えられる。この波形整形回路260は、受光素子242dの出力を波形整形し、ライン265から処理回路270に与える。
【0049】
定電流ダイオード231は、定電流ダイオード131の
図8と同様な特性を有する。
定電流ダイオード131、231の働きについて、伝送ライン2に、定電流ダイオード131、231が結合されている方向性に沿って、外部から大きなノイズが混入することによって、あるいは、伝送ライン2の接続が外れたとき、その伝送ライン2の浮遊容量に起因した電荷によって、または伝送ライン2のインダクタンス成分に起因した蓄積エネルギによって、伝送ライン2に瞬時に比較的高い電圧が印加されるとき、定電流ダイオード131、231によって、大きな電流が流れて放電することが防がれる。そのため、第1および第2送信用ホトカプラ132,232の受光素子132d,232d、または第1および第2受信用ホトカプラ142,242の発光素子142e,242eが破損することが防がれる。
【0050】
2個の定電流ダイオード131、231は、電流ループ内で直列に接続される。これによって、各機器の接続時に結線を間違えた場合に、直列のライン以外から大きな電流が流れる可能性を、確実に回避する。
【0051】
図10は、
図7および
図9に示される逆起ダイオード136,146;236,246の働きを説明するための図である。前述の
図7における第1受信用ホトカプラ回路140において、第1受信用ホトカプラ142の発光素子142eは、
図10(1)に示される特性を有する。発光素子142eの発光時における順方向電圧降下V11は、たとえば2Vである。この発光素子142eの破壊に至る逆耐圧V12は、たとえば−50Vである。逆耐圧V12の発光素子142eが破壊されることを防ぐために、発光素子142eに並列に、逆起ダイオード146が接続される。
【0052】
図10(2)は、逆起ダイオード146の特性を示すグラフである。逆起ダイオード146の順方向電圧降下V13は、たとえば0.6Vであり、逆起ダイオード146の逆耐圧V14は、たとえば−50Vである(V13<V11、V13<|V12|)。
【0053】
逆起ダイオード136の順方向電圧降下は、第1送信用ホトカプラ132の受光素子132dおよびトランジスタ133の逆耐圧未満に選ばれる。逆起ダイオード236,246に関しても、逆起ダイオード136,146と同様である。
【0054】
再び
図9を参照して、第2送信用ホトカプラ回路230よりも端子24側で直流電源400の近傍には、放電用コンデンサ406が接続される。逆起ダイオード236は、放電用コンデンサ406に接続され、不所望な過大電流を逃がし易い。前述の第1送信用ホトカプラ回路130の逆起ダイオード136、第1受信用ホトカプラ回路140の逆起ダイオード146ならびに第2送信用ホトカプラ回路230の逆起ダイオード236および第2受信用ホトカプラ回路240の逆起ダイオード246に関連して、たとえば
図7の端子27から、直流電源400の逆極性に不所望な電圧が作用して電流が流入したとき、その電流は端子27から逆起ダイオード146、ライン134、逆起ダイオード136、端子26、伝送ライン2、端子25、
図9の逆起ダイオード246、ライン234、逆起ダイオード236を経て、さらに放電用コンデンサ406を経て放電される。こうして起動装置100における第1送信用ホトカプラ132および第1受信用ホトカプラ142を含む回路素子の逆耐圧を超える電流が流れることによる破損を防ぐことができて保護され、このことは制御盤200においても同様である。
【0055】
直流電源400の逆極性に不所望な電圧が作用して電流が流入する現象は、たとえば起動装置100の端子27に接続されているライン22(
図1参照)などが断線したり取外されたりして、伝送ライン2,22を含む伝送経路の一部の接続が外れたとき、その伝送経路を形成する伝送ライン2,22などの浮遊容量に起因した電荷によって、生じる。また伝送経路の一部の接続が外れたとき、伝送ライン2,22などのインダクタンス成分に起因した蓄積エネルギによって、直流電源400とは逆極性に比較的大きな電流が流れるおそれがある。伝送ライン2,22などに大きなノイズが混入するおそれがある。逆起ダイオード136,146、236,246および放電用コンデンサ406は、このような現象による回路素子の破損を防ぐ。放電用コンデンサ406は、電流ループにおける直流電源400の近傍で、外線接続部の直近に設けられるので、電流を安定させることができる。
【0056】
図11は起動装置100の具体的な電気的構成を示すブロック図であり、
図12はその起動装置100に含まれる起動スイッチ112に関連する起動スイッチ回路120を示す電気回路図である。処理回路170は、中央処理回路CPU171を有し、メモリ172にストアされたプログラムをステップ順次的に実行する。アドレス設定回路118は、起動装置100を識別するための自局アドレスを設定する。
【0057】
起動スイッチ112の接点121,122のうち、一方の接点121は抵抗123を介して高電位に接続され、他方の接点122は抵抗124を介して低電位に接続される。接点122は、抵抗125を介してライン126から処理回路170に接続される。ライン126には、ダイオード127、およびノイズの除去と電圧保持のためのコンデンサ128が接続される。
【0058】
図13は、処理回路170の扉スイッチ111および起動スイッチ112に関連する動作を説明するためのフローチャートである。ステップa1からステップa2に移り、扉スイッチ111の出力によって操作箱105の扉107が閉じられているかどうかが判断される。扉107が閉じられていれば、次のステップa3では、起動スイッチ112の出力の有無が判断される。起動スイッチ112の故障、経年変化などによって2つの接点121,122の導通状態が予め定める抵抗値、たとえば27kΩ未満となって、ライン126の電圧が、予め定める値以上に高くなれば、そのことが処理回路170において異常であると判断される。起動スイッチ112が異常であることを表わす信号は、ステップa4において発生され、前述の表1のバイト番号D8〜D10のデータによって、そのことが表わされた信号が伝送ライン2を介して制御盤200に与えられる。
【0059】
ステップa2において扉107が閉じられておらず、すなわち扉107が開かれたとき、ステップa5で、この扉107が開かれた状態を表わす扉開の火災信号が発生され、伝送ライン2を介して制御盤200に送信される。そこで、次のステップa6に移り、起動スイッチ112が操作されたかどうかが判断される。起動スイッチ112が押圧操作されると、ステップa7に移り、起動スイッチ112による火災信号が発生されて伝送ライン2を介して制御盤200に送信される。こうしてステップa8では、一連の動作を終了する。
【0060】
図14は、火災感知器102、103を含む火災感知器回路177,178の構成を示す電気回路図である。火災感知器102の両端は、火災感知器回路177において、断線であるかどうか、および火災を感知しているかどうかが検出され、その出力が処理回路170に与えられる。もう1つの火災感知器103の火災感知器回路178もまた、火災感知器回路177と同様に構成される。火災感知器102の出力は、断線検出のための比較回路181に与えられるとともに、火災を感知したかどうかを検出する比較回路182に与えられる。比較回路181,182には、弁別レベル設定回路1831、1832からの各基準電圧がそれぞれ与えられる。火災感知器102が断線して、たとえば220kΩ以上になると、その出力は弁別レベル設定回路1831によって設定された断線検出のための基準電圧未満となり、これによって比較回路181の出力は、Lレベルとなり、したがってトランジスタ184が導通し、これによってホトカプラ185のLレベルの出力は、ライン186を介して処理回路170に与えられ、異常が判断される。
【0061】
火災感知器102が防護区画10における火災の煙を検出すると、火災感知器102の抵抗値が小さくなり、これによって火災検出のための比較回路182では、火災感知器102の出力が弁別レベル設定回路1832の火災感知のための設定電圧以上となってHレベルの出力がトランジスタ187に与えられる。これによって火災検出のためのホトカプラ188はライン189にLレベルの信号を導出し、火災感知器102によって煙が発生したことを表わす火災信号が処理回路170に与えられる。
【0062】
もう1つの火災感知器103は、防護区画10の火災による炎、温度を検出する。火災感知器103の断線および火災による出力は、火災感知器回路178によって検出されて前述の火災感知器102と同様に処理回路170に与えられる。火災感知器回路178の構成と動作は、火災感知器回路177に類似する。
【0063】
図15は、火災感知器102に関連する処理回路170の動作を説明するためのフローチャートである。ステップb1からステップb2に移り、火災感知器102が火災感知器回路177のライン186からの出力によって断線しているかどうかが判断され、断線していれば、ステップb3において火災感知器102の断線による異常を表わす信号が伝送ライン2を介して制御盤200に送信される。ステップb2において火災感知器102が断線していないとき、ステップb4に移り、火災感知器102が火災を検出しているかどうかが判断され、火災感知器回路177のライン189からの出力によって火災が発生しているものと判断されると、次のステップb5において火災信号が制御盤200に送信される。火災感知器102が火災を検出していなければ、次のステップb6に移る。
【0064】
このステップb6では、もう1つの火災感知器103について、前述のステップb2〜b5の各ステップが、火災感知器回路178の出力によって実行される。こうしてステップb7では、一連の動作を終了する。
【0065】
図16は、処理回路170による通信異常を検出するための動作を説明するためのフローチャートである。ステップc1からステップc2に移り、処理回路170はライン151(
図7)への送信すべき信号の導出を中止し、次のステップc3では、信号の送信の時間間隔W2(
図6(2)参照)が経過したかどうかが判断される。この時間W2は、たとえば前述のようにW21またはW22である。この時間W2が経過した後、次のステップc4ではライン165(
図7)からの信号の受信があるかどうかが判断され、受信信号があれば、次のステップc5において受信動作を行なう。ステップc6において受信信号を受信する動作が終了すれば、次のステップc7において通信異常タイマTMR1の計数値を零とする。
【0066】
ステップc4においてライン165からの信号の受信がなければ、次のステップc8において通信異常タイマTMR1の計数値を1だけインクリメントする。ステップc9において、通信異常タイマTMR1の計数値が予め定める値W3以上になったかどうかが判断される(W2<W1<W3)。この時間W3は、たとえば3分であってもよい。
【0067】
ステップc10では、ライン165に時間W3以上にわたって受信信号が存在しないとき、伝送ライン2,22などを含む伝送経路の断線などに起因した通信異常であるものと判断する。このような通信経路の異常を表わす信号は、処理回路170によってライン151から伝送ライン2を介して制御盤200に送信される。こうしてステップc11では、一連の動作を終了する。
【0068】
図17は、処理回路170の送信動作を説明するためのフローチャートである。ステップd1からステップd2に移り、起動装置100から制御盤200へ送信するデータの信号WDを作成して準備する。この信号WDは、重要イベントの信号と、その他の付随的な信号とを含む。重要イベントの信号は、扉スイッチ111が開かれたことを表わす信号、起動スイッチ112が押圧操作されたことを表わす信号、2つの各火災感知器102,103が火災をそれぞれ検出したことを表わす信号、ならびに非常停止スイッチ113が押圧操作されたことを表わす信号などを含む火災信号である。本発明の実施の他の形態では、重要イベントの全ての前記種類の信号の一部分である1または複数の信号を、火災信号と呼ぶこともできる。
【0069】
前記付随的な信号は、起動スイッチ112の異常を表わす信号、2つの各火災感知器102,103がそれぞれ異常であることを表わす信号、自動/手動切換えスイッチ116のスイッチング状態を表わす信号、伝送ライン2の断線などの通信異常を表わす信号、アドレス設定回路118によって設定された自局アドレス信号、ならびに制御盤200のアドレス設定回路218によって設定された相手方の送信局アドレス信号などを含む。
【0070】
ステップd3において、起動装置100から制御盤200へ送信するデータ信号に、重要イベントの火災信号が含まれていなければ、ステップd4で、サイクリック伝送の時間間隔W2(前述の
図6(2)参照)をW21に選んで送信動作を行なう。ステップd3において、重要イベントの火災信号が送信すべきデータ信号WDに含まれていれば、ステップd5では、サイクリック伝送の時間間隔W2を、前述のステップd5の時間間隔W21よりも短い値W22に選んで送信する。ステップd6では、伝送ライン2、22を含む伝送経路における信号の衝突を防止するための
図18の通信動作が行なわれる。こうしてステップd7では、一連の動作を終了する。
【0071】
図18は、処理回路170による伝送経路における信号の衝突を防止する通信動作を説明するためのフローチャートである。起動装置100からデータの信号WDを送信するにあたり、ステップe1からステップe2に移り、待ち回数カウンタ173の計数値NWを零とする。次のステップe3では、ライン151(
図7)から信号を導出することなく、ライン165(
図7)から伝送ライン2を介する信号が受信されるかどうかを判断する。ライン165(
図7)から信号が受信されていなくて、通信ビジー状態でなければ、すなわち通信空き状態であれば、次のステップe4に移り、周期W1内でたとえばフレーム間ギャップの時間W6をあけて、次のステップe5において送信データDTを有する信号WDを送信する。ステップe6では、この送信時、ライン165から受信される受信データDRを得る。ステップe7では、ライン151から導出された送信データDTがライン165から得られる受信データDRと同一であるかを判断し、同一であれば、正確に送信されたものと判断されて、ステップe8において一連の通信動作を終了する。送信データDTと受信データDRとが異なれば、ステップe7からステップe3へ戻る。
【0072】
ステップe3において、ライン165(
図7)から信号が受信されていて、起動装置100と制御盤200との伝送ライン2が通信ビジー状態であることが判断されると、次のステップe7において待ち回数カウンタ173の待ち回数NWを1だけインクリメントする。ステップe10において、計数された待ち回数NWに対応して疑似乱数などによってランダムな待ち時間W5が選ばれる。この待ち時間W5は、たとえば60〜100msecのうちから選ばれる値であってもよい。ステップe11では、この選択されたランダム時間W5だけ送信を行なわずに待機し、ステップe3に戻る。こうして待ち回数NWの増加に伴って、ランダムな待ち時間W5が選ばれて、起動装置100と制御盤200との通信の衝突を防止することができる。
【0073】
再び
図11を参照して、処理回路170に関連してウォッチドッグタイマ174が設けられる。このウォッチドッグタイマ174は、処理回路170の動作を監視する。
【0074】
図19は、ウォッチドッグタイマ174の動作を説明するための波形図である。ウォッチドッグタイマ174には、処理回路170の同期動作をするためのクロック信号が常時与えられる。このクロック信号は、正常時、
図19(1)に示されるように一定の周期W8を有する。処理回路170のクロック信号が途絶えた後、予め定める時間W9(W8<W9)、たとえば1分だけ経過すると、ウォッチドッグタイマ174は
図19(2)に示されるHレベルからLレベルに変化する異常を表わす信号を導出し、これによって表示灯175が点灯する。こうして処理回路170の動作の異常を知ることができる。
【0075】
図20は、制御盤200の具体的な電気的構成を示すブロック図である。
図20に示される制御盤200の構成は、前述の起動装置100の構成に部分的に類似し、対応する部分には参照符の下2桁を同一にして示す。この制御盤200には、起動スイッチ212、非常停止スイッチ213、表示手段215、自動/手動切換えスイッチ216およびアドレス設定回路218などが、起動装置100の各構成に対応して設けられる。処理回路270は、前述の処理回路170に関連して述べた
図16の通信異常の検出動作および
図18の衝突防止のための動作を、同様な通信異常タイマTMR1待ち回数カウンタ273を含む構成によって達成する。また起動スイッチ212に関連して、前述の
図12の起動スイッチ回路120と同様な短絡検出のための構成220が備えられ、処理回路270は、前述の
図13と同様な動作を達成し、すなわち起動スイッチ212が短絡しておらず、正常であれば、起動スイッチ回路120による起動装置100からの信号と同様に、起動スイッチ212の出力に応答して動作する。非常停止スイッチ113、213などに関しても、起動スイッチ112、212と同様な短絡検出のための構成が実現されてもよい。制御盤200における起動装置100と同様な構成と動作とは、図示と説明とを省略することがある。
【0076】
起動装置100と制御盤200との間で、火災発生時に表示手段115,215に備えられるスピーカから避難警報を大音量で音響出力する音響信号のための信号ラインなどが、音響信号源から、長距離にわたって伝送ライン2とともに並行して配線敷設される。この音響信号に起因するノイズが、伝送ライン2に混入する。本発明では、耐ノイズ性能が向上されるので、伝送ライン2に混入したノイズによる処理回路170、270を含む起動装置100と制御盤200との誤動作が回避され、消火剤の誤放出が防がれる。
【0077】
図21は、消火装置1の火災発生から消火するまでの動作を簡略化して示すフローチャートである。起動装置100または制御盤200にそれぞれ備えられる自動/手動切換えスイッチ116または216によって手動起動に設定された場合、
図21のステップf1において火災が発生したとき、人が、ステップf2では、火災を発見し、ステップf3では、その火災を確認し、その後、次のステップf4で操作箱105の扉107を開く。これによって、ステップf4aでは、制御盤200に設けられた表示手段215のブザーによる音響表示が行なわれる。ステップf5で起動スイッチ112を押圧操作する。扉107の扉スイッチ111および起動スイッチ112の各火災信号は、個別的に制御盤200に送信される。この起動装置100の起動スイッチ112または制御盤200の起動スイッチ212の押圧操作が、たとえば誤りであって、消火剤を放出すべきでないとき、その押圧操作から制御盤200でカウントダウン刻時動作する予め定める遅延時間W7(後述の
図28)以内であれば、ステップf7で非常停止スイッチ113または213を押圧操作することによって、ステップf8では、起動が不能動化されて停止に強制され、したがって消火剤が放出されることはない。
図21の仮想線290内の各動作は、制御盤200の処理回路270によって行なわれる。
【0078】
自動/手動切換えスイッチ116,216が自動起動に設定された場合、ステップf1において火災が発生し、ステップf9、f10で火災感知器102,103によってそれぞれ検出された各火災信号は、個別的に制御盤200に送信される。火災が火災感知器102,103のいずれか一方によって感知されると、ステップf11では表示手段215の火災感知器作動灯が点灯して、そのことが目視表示されるとともに、表示手段215のブザーによる音響表示が行なわれる。火災感知器102,103の両者が火災を感知して、ステップf12においてその火災感知による火災信号のand論理が制御盤200において成立したと判断されると、ステップf13以降の動作が行なわれる。前述のステップf5において起動スイッチ112または212が押圧され、遅延時間W7以内に非常停止スイッチ113または213が操作されなかったときにもまた、ステップf13以降の動作が行なわれる。遅延時間W7は、制御盤200の処理回路270における非常停止タイマTMR2(
図20)によって計時される。予め定める遅延時間W7の経過後、ステップf14では、駆動ガス容器13の開閉弁14の電磁ソレノイドが励磁駆動され、これによって駆動ガスが駆動ガス管17を経て容器弁12に与えられ、貯蔵容器11内の消火剤が導管15を経て噴射ヘッド18から防護区画10内に、ステップf16において放出される。こうしてステップf17において消火され、ステップf18において消火が確認されることになる。
【0079】
図22は、制御盤200の表示手段215の一部の構成を示す電気回路図である。起動装置100において、操作箱105の扉107が開かれることによって、扉スイッチ111のスイッチング状態が変化し、この扉開を表わす信号は、制御盤200に前述のように伝送され、受信される。制御盤200の処理回路270は、起動装置100の扉スイッチ111のスイッチング状態が、扉107の開かれた状態を表わすスイッチング状態であることを判断し、端子293をLレベルとする。これによってホトカプラ294の発光ダイオード294eが発光し、受光素子294dが導通する。そのため、リレー295のリレーコイル296が励磁され、そのリレースイッチ297が導通する。これによって表示灯298が点灯し、起動装置100の扉107が開かれたことが表示される。起動スイッチ112、非常停止スイッチ113ならびに火災感知器102,103に関しても、表示のために同様な構成が設けられる。
【0080】
図23は、起動装置100および制御盤200における自動/手動切換えスイッチ116,216に関連する制御盤200に設けられる自動/手動回路300の構成を示す電気回路図である。起動装置100の自動/手動切換えスイッチ116が自動および手動のいずれかの起動のためのスイッチング状態とされたとき、そのことを表わす信号が起動装置100から制御盤200に送信され、処理回路270は端子343,344をそれぞれLレベルとする。これによってホトカプラ303,304の発光素子303e,304eが発光し、受光素子303d,304dが導通する。制御盤200に設けられる自動/手動切換えスイッチ216は、自動および手動の起動のために切換えられてHレベルとなる接点301,302を有し、これらの各出力はリレー回路305に与えられる。起動装置100の自動/手動切換えスイッチ116による自動および手動の起動に対応したホトカプラ303,304の各出力もまた、リレー回路305に与えられる。リレー回路305は、セットまたはリセットに一旦励磁されると、その後、励磁されなくなっても、スイッチング状態を保つ。
【0081】
再び
図20を参照して、制御盤200には、処理回路270と協動する第1および第2演算回路310,320が設けられる。開閉弁駆動手段330には、これらの第1および第2演算回路310,320のライン316,328からの消火剤の放出に関する第1および第2放出信号が、それぞれ与えられる。開閉弁駆動手段330は、開閉弁14の電磁ソレノイドを、消火剤放出のために励磁駆動して開く。
【0082】
図24は、第1演算回路310の具体的な構成を示す電気回路図である。前述の
図23に示されるリレー回路305は、
図24のリレースイッチ311を有する。リレースイッチ311は、自動起動が選択されてリレー回路305(
図23)が励磁されてセットされたとき、導通し、手動起動が選択されてリレー回路305が励磁されてリセットされたとき、遮断する。制御盤200に設けられる非常停止スイッチ213は、直流電源400の高電位のライン312とライン313との間に直列に接続される。非常停止スイッチ213は、非常停止のために押圧操作されることによって遮断し、操作されないとき導通したままである。ライン313には、ダイオード314を介してホトカプラ315の受光素子315dが接続され、さらにライン316に接続される。
【0083】
処理回路270の端子317には、ホトカプラ315の発光素子315eが接続される。処理回路270は、起動装置100における操作箱105の扉107が開かれて、そのことが扉スイッチ111によって検出された後、起動スイッチ112が押圧操作され、非常停止スイッチ113が押圧操作されていなければ、その時間順次的なスイッチング状態を表わす信号が制御盤200で受信され、処理回路270は端子317をLレベルにする。これによってホトカプラ315の発光素子315eが発光し、受光素子315dが導通し、このとき制御盤200の非常停止スイッチ213が押圧操作されずに導通していれば、ライン316は、ライン312,313と同一電圧のHレベルになる。
【0084】
制御盤200に設けられる起動スイッチ212は、ライン313,316間に接続され、リレー364のリレースイッチを構成する。直流電源400に接続されるライン316と低電位の共通接地ライン366との間には、リレー364のリレーコイル365が接続される。非常停止スイッチ213が操作されず、ライン316がHレベルになることによって、リレー364のリレーコイル365が励磁される。これによってリレー364における起動スイッチ212が導通したスイッチング状態が自己保持される。
【0085】
起動装置100の各火災感知器102,103が火災を感知して火災信号を発生し、その火災信号が制御盤200で受信されることによって、処理回路270は端子318,319からLレベルをそれぞれ導出する。ライン313は、ホトカプラ351,352およびリレー353,354に接続される。これによってホトカプラ351,352の発光素子351e,352eがそれぞれ発光し、受光素子351d,352dがそれぞれ導通する。これらの受光素子351d,352dの各導通によって、リレー353,354のリレーコイル355,356がそれぞれ励磁され、各リレースイッチ357,358が導通した状態が自己保持される。この各リレー353,354のリレーコイル355,356の励磁によって、火災感知器102,103にそれぞれ対応するリレースイッチ362,363が導通した状態が保たれる。起動スイッチ112に対応するホトカプラ315の受光素子315dと、起動スイッチ212とは、ライン313,316間で並列に接続される。さらに自動/手動が切換えられて自動の起動が選択されたときに導通するリレースイッチ311と火災感知器102,103の火災信号によって導通するリレースイッチ362,363とは直列に接続され、この直列回路は、ライン313,316間に接続される。
【0086】
非常停止スイッチ213が押圧操作されて遮断されると、リレー353,354,364の自己保持が解除され、ライン316はLレベルとなる。
【0087】
こうして第1演算回路310では、起動装置100から送信された信号が制御盤200で受信されることによって、火災信号は処理回路270の
図24の端子317〜319から導出され、ホトカプラ315,351,352およびリレー353,354,364がそれぞれ活性化される。これらの活性化されたホトカプラ315,351,352およびリレー353,354,364によって、いわばハードウエアによって論理演算が行なわれ、ライン316から消火剤の放出に関する第1放出信号が得られる。
【0088】
ライン316の第1放出信号は、消火剤を放出すべきとき、Hレベルとなる。すなわち、ライン316のHレベルは、(1)起動装置100において非常停止スイッチ113が操作されずに起動スイッチ112が押圧によって手動起動されて端子317がLレベルとなり、受光素子315dが導通した状態、(2)起動装置100において非常停止スイッチ113が操作されずに火災感知器102,103が火災を感知して火災信号を発生し、直列のリレースイッチ311、362,363が導通した状態、または(3)起動スイッチ212が押圧操作された状態のうち、いずれかの状態が成立し、かつ(4)非常停止スイッチ213が操作されない状態が成立した論理演算が達成されるとき得られる第1放出信号である。
【0089】
このライン316の出力は、ホトカプラ367の発光素子367eに与えられ、その受光素子367dの出力は、端子368から処理回路170に、非常停止タイマTMR2のカウントダウン刻時動作のために与えられる。
【0090】
図25は、第2演算回路320の具体的な電気的構成を示す電気回路図である。処理回路270は、その出力端子329から、その処理回路270のプログラム実行の同期動作のためのクロック信号を導出する。ウォッチドッグタイマ274は、起動装置100のウォッチドッグタイマ174に類似し、
図19に関連して前述した構成、動作に類似し、処理回路270が正常な動作をし、クロック信号が発生されているとき、ライン321をLレベルとする出力を導出する。ライン321がLレベルであるとき、ホトカプラ323の発光素子323eが発光し、受光素子323dが導通する。こうして処理回路270によるプログラムの実行動作が正常に行なわれているとき、受光素子323dの導通によってライン325がLレベルに保たれる。処理回路270のクロック信号が発生されなくなって異常な状態になると、ウォッチドッグタイマ274は、ライン321をHレベルとし、したがって、発光素子323eが発光せず、したがって受光素子323dが遮断したままとなり、次に述べるライン328はLレベルとならず、消火剤の放出は不能動化に強制される。
【0091】
処理回路270はまた、端子326から、消火剤を放出すべき状態の論理演算が達成されたとき、Lレベルの出力を導出する。これによってホトカプラ327の発光素子327eが発光し、受光素子327dが導通する。受光素子327dの導通によって、ライン328はライン325に接続されることになる。こうして第2演算回路320では、受光素子323dと受光素子327dとが直列に接続されるので、ウォッチドッグタイマ274によって処理回路270が正常なプログラム実行動作をしていることが検出されており、かつ処理回路270による端子326からの消火剤を放出すべきLレベルの信号が導出されたとき、ライン328には、Lレベルである消火剤の放出に関する第2放出信号が得られる。すなわち第2演算回路320では、起動装置100からの火災信号が受信されて、処理回路270が正常に動作して、後述の
図27〜29などに示される予め定めるプログラムの実行によって論理演算を行ない、ライン328には、そのプログラム実行による論理演算の結果、ライン328がLレベルとなる。
【0092】
図26は、開閉弁駆動手段330の具体的な構成を示す電気回路図である。開閉弁14の磁気ソレノイドは、ライン16を介して端子331,332に接続される。リレー333のリレーコイル336は、第1および第2演算回路310,320のライン316(
図24)、328(
図25)に接続される。端子331は、リレー333の切換えリレースイッチ334を介して、および抵抗341を介して、高電位のライン312に接続される。端子332は、リレー333のもう1つのリレースイッチ335を介して低電位のライン366に接続される。
【0093】
リレーコイル336が励磁されることによって、切換えリレースイッチ334は端子331とライン312とを導通し、もう1つのリレースイッチ335を導通させる。リレーコイル336が消磁されているとき、切換えリレースイッチ334はライン312をトランジスタ337およびホトカプラ338の発光素子338eに接続する。端子332はトランジスタ337のベースに接続され、このトランジスタ337は発光素子338eに並列に接続される。ホトカプラ338の受光素子338dからは、端子339を介して処理回路270に接続される。
【0094】
リレー333のリレーコイル336が励磁されていない状態では、開閉弁14の電磁ソレノイドが断線していなければ、ライン312から抵抗341、端子331、ライン16および開閉弁の電磁ソレノイド、端子332を経てトランジスタ337のベースがHレベルとなり、これによってトランジスタ337が導通する。切換えリレースイッチ334は、リレーコイル336が励磁されていないとき、ライン312を、抵抗342を介してトランジスタ337に接続する。トランジスタ337の導通によってホトカプラ338の発光素子338eは発光せず、受光素子338dは遮断している。
【0095】
開閉弁14の電磁ソレノイドが断線しているとき、端子331,332は遮断されるので、トランジスタ337は遮断し、これによって発光素子338eは発光し、受光素子338dが導通する。そのため端子339は、電磁ソレノイドの断線を表わすLレベルとなる。こうして処理回路270は、電磁ソレノイドの異常な状態を表わす信号が与えられ、そのことが表示手段215によって表示される。
【0096】
第1および第2演算回路310,320からライン316,328を経て第1および第2放出信号が得られたとき、すなわちライン316がHレベルとなり、ライン328がLレベルとなったとき、リレー333のリレーコイル336が励磁される。これによってライン312はリレースイッチ334を経て端子331に接続され、もう1つの端子332はリレースイッチ335を経てライン366に接続される。こうして開閉弁14の電磁ソレノイドには、端子331,332からライン16を経て励磁電力が供給され、駆動ガスが駆動ガス容器13から駆動ガス管17を経て容器弁12に与えられ、消火剤が噴射ヘッド18から防護区画10へ噴射される。
【0097】
図27は、開閉弁駆動手段330における開閉弁14の電磁ソレノイドの断線を検出するための処理回路270の動作を説明するためのフローチャートである。ステップg1からステップg2に移り、第1および第2放出信号のいずれもが発生されておらず、したがって、断線を検出すべきことが判断されると、次のステップg3に移り、ホトカプラ338に接続された端子339がLレベルであるかどうかが判断される。端子339がLレベルであれば、ステップg4において開閉弁14の電磁ソレノイドが断線して異常な状態であることが判断され、こうしてステップg5では、一連の動作を終了する。
【0098】
ステップg2において、断線を検出すべきときは、処理回路270において、たとえば起動スイッチ112,212が押圧操作されておらず、また2つの火災感知器102,103からの火災を検出した火災信号が導出されておらず、したがって第1演算回路310のライン316(
図24)がLレベルであり、あるいはまた第2演算回路320のライン328がLレベルでないときの状態であり、あるいはまた第1演算回路310における
図24の端子368(
図24)がLレベルとなっておらず、また端子326がLレベルの出力となっていない状態にあるときである。
【0099】
図28Aは処理回路270の火災信号を受信する動作を説明するためのフローチャートであり、
図28Bは処理回路270の開閉弁14を駆動する動作を説明するためのフローチャートである。ステップh1からステップh2に移り、起動装置100の異常な状態を表わす信号を受信したかどうかが判断される。この起動装置100の異常な状態は、前述の
図12〜16などによって検出される。
【0100】
起動装置100の異常な状態が制御盤200において受信されていなければ、次のステップh3において制御盤200の異常な状態が検出されているかどうかが判断される。この制御盤200の異常な状態は、制御盤200の処理回路270においても、起動装置100と類似して同様に、
図12、13および
図16などによって検出され、さらに
図27によって開閉弁14の電磁ソレノイドの断線が検出される。
【0101】
起動装置100および制御盤200のいずれかにおいて、異常な状態が検出されていれば、ステップh17において、第1および第2放出信号の演算出力のための動作をせずに、不能動化する。その不能動化状態は、表示手段115,215によって目視、音響表示される。
【0102】
異常な状態が検出されていなければ、ステップh4では、起動装置100からの信号を制御盤200において受信する。その受信した信号の内容のうち、ステップh5では、重要イベントが発生しているかどうかが判断される。この重要イベントは、
図17のステップd4に関連して前述したとおりである。
【0103】
重要イベントを表わす信号がステップh5で受信されたとき、火災信号の受信誤りを避けて消火剤の誤放出を防止するために、ステップh6では、火災信号を繰り返して受信する。ステップh6の詳細な動作は、
図29に関連して後述する。
【0104】
ステップh7では、火災感知器102,103の両者が火災信号を発生しているかどうかが判断され、これらの両者102,103が火災信号を発生していなければ、次のステップh8に移り、操作箱105の扉107が開かれたかどうかが判断され、扉107が開かれていれば、次のステップh9において起動スイッチ112が操作されたかが判断される。扉107が開かれていなければ、および起動スイッチ112が押圧操作されていなければ、ステップh18へ移る。ステップh7で火災感知器102,103の両者が火災信号を発生しており、あるいはまたステップh9において起動スイッチ112,212が押圧操作されており、
図24の非常停止スイッチ213が操作されず導通していれば、ステップh11において消火剤を放出するための準備状態となる。ステップh11において処理回路270は、端子368(
図24)のLレベルの出力に応答して、非常停止タイマTMR2の計時動作を開始する。
【0105】
2つの火災感知器102,103の両者が火災信号を発生し、または起動スイッチ112,212が押圧操作されると、
図24の非常停止スイッチ213が操作されず導通しているとき、ライン316からはHレベルの第1放出信号が得られる。
【0106】
ステップh12では、端子368(
図24)がLレベルになることによって、非常停止タイマTMR2による遅延時間のカウントダウン刻時動作のために、計数値を零とする。次のステップh13では、非常停止スイッチ113または213が押圧操作されたかが判断される。これらの非常停止スイッチ113,213が操作されていなければ、ステップh14において非常停止タイマTMR2の計数値を1だけインクリメントする。ステップh15では、非常停止タイマTMR2の計数値が予め定める遅延時間W7以上になったかどうかが判断される。時間W7は、たとえば消火剤がCO
2 では25秒に、N
2 では5秒に選ばれる。
【0107】
予め定める遅延時間W7経過した時点で、ステップh16では、処理回路270は、消火剤を放出すべき状態の論理演算を達成したとき、端子326(
図25)から、Lレベルの出力を導出する。このときウオッチドッグタイマ274によって監視される処理回路270の動作が正常であれば、第2演算回路320のライン328をLレベルとして第2放出信号が導出される。したがって、開閉弁駆動手段330のリレー333のリレーコイル336は励磁され、消火剤が放出される。
【0108】
ステップh13で非常停止スイッチ113または213が押圧操作されたことが判断されると、
図24のライン316がLレベルとなり、
図25の端子326からの出力はLレベルとはならない。したがって、ステップh17において、開閉弁駆動手段330のリレー333のリレーコイル336は消磁されたままであり、開閉弁駆動手段330は不能動化に強制される。したがって、消火剤は放出されない。
【0109】
ステップh18において、開閉弁駆動手段330による消火剤の放出および不能動化の状態、さらに前述の異常の状態などは、制御盤200から起動装置100へ送信され、起動装置100の表示手段115によって表示される。
【0110】
図29は、
図28のステップh6における火災信号を繰り返して受信する動作を説明するためのフローチャートである。重要イベントを表わす信号が
図28のステップh5で受信されたとき、
図29のステップi1からステップi2に移り、処理回路270に備えられる受信繰返し数カウンタ371の計数値nを零とする。ステップi3におけるデータの信号WDの受信のたびに、ステップi4では、たとえば前述の50msecである時間間隔W22毎の受信信号が同一であるかどうかが判断され、同一であれば、ステップi5ではカウンタ371の計数値を1だけインクリメントする。こうしてカウンタ371の計数値が予め定める受信回数n100(たとえば100回)以上になれば、すなわち同一受信信号を100回受信すれば、ステップi7では、その火災信号を誤りなく正確に受信されたものと判断して、ステップi7において、各端子317,318,319;326から出力動作を行なう。こうしてステップi8では、一連の動作を終了する。
【0111】
処理回路270は、処理回路170と同様に、
図18に関連して前述した衝突防止の動作などを実行する。
【0112】
図30は、直流電源400の構成を示す電気回路図である。商用電力などの交流電源404の出力は、トランス408によってたとえば24Vに降圧され、全波整流回路409によって整流され、平滑回路410の平滑用コンデンサ411,412によって平滑される。この平滑回路410の直流電力は、ライン3,4に出力され、起動装置100および制御盤200に供給される。
【0113】
交流電源404の出力また、もう1つのトランス413によって降圧され、全波整流回路414に与えられる。この全波整流回路414の整流出力は、ライン415,416から2次電池であるバッテリ417に与えられて充電する。
【0114】
交流電源404の出力はさらに、リレー418のリレーコイル419に与えられる。リレー418は、リレーコイル419が励磁されているときリレースイッチ421を遮断し、リレーコイル419が消磁されると、リレースイッチ421を導通する。整流回路414の出力ライン415は、ダイオード422を経てリレースイッチ421からライン3に接続される。整流回路414の他方のライン416は、ライン4(
図1)に接続されて共通電位に接地される。リレー418のリレーコイル419は、前述のように交流電源404によって直接に、または実施の他の形態ではトランス413の出力によって励磁されるように構成されてもよいが、本発明の実施のさらに他の形態では、整流回路414の出力によって励磁されるように構成されてもよい。
【0115】
図31は、
図30の直流電源400の瞬時停電を防止する動作を説明するための波形図である。交流電源404の供給電圧が時刻t1において遮断されると、平滑回路410の出力、したがってライン3,4(
図1)の出力電圧は、
図31(2)に示される波形ライン423のように電圧V20から時間経過に伴って下降してゆく。リレー418は、リレーコイル419が時刻t1において消磁されると、動作遅れ時間W11を経過した時刻t2においてリレースイッチ421を
図31(3)に示されるように遮断状態から導通状態にする。リレースイッチ421が導通することによって、バッテリ417の出力はダイオード422を経てリレースイッチ421からライン3に供給される。
図31(2)に示されるライン3,4の出力電圧は、時刻t2においてV21である。この電圧V21は、ライン3,4から導出される出力電圧が与えられる起動装置100および制御盤200の各電力消費手段が正常に動作する下限電圧値V22を超える値である(V22<V21)。平滑回路410を構成する平滑用コンデンサ411,412の容量は、リレー418の動作遅れ時間W11においてライン3,4の出力電圧V21が下限電圧値V22を超えるように大きく選ばれる。
【0116】
時刻t2においてリレースイッチ421が導通することによって、バッテリ417の電力がライン3,4に供給される。したがってライン3,4間の電圧は、時刻t2以降において波形ライン424で示されるように上昇する。
【0117】
時刻t3において瞬時停電が回復して交流電源404から交流電力が供給されると、リレー418のリレーコイル419は再び励磁される。こうしてリレースイッチ421は、交流電源404の復旧した時刻t3から動作遅れ時間W22を経過した時刻t4において遮断される。このときライン3,4には、復旧した交流電源404の平滑回路410によって平滑された直流電力が供給されている。
【0118】
参考のために述べると、もしも仮に、バッテリ417およびリレー418が設けられていない構成を想定すると、時刻t1において交流電源404の停電後、ライン3,4の電圧は、
図31(2)の波形ライン423に沿って、さらに参照符435で示されるように低下してゆく。停電から時間W13経過後の時刻t5では、起動装置100および制御盤200の電力消費手段が正常に動作する下限電圧値V22未満になる。
【0119】
図32は、直流電源400からの電力が供給される安定化電源401の構成を示す電気回路図である。他の安定化電源402もまた同様な構成を有する。直流電源400から電源ライン3,4;5,6(
図1)を経て供給される電力は、
図32のライン425,426から直列のダイオード427および並列接続されたコンデンサ428を経てDC/DCコンバータ429に与えられる。DC/DCコンバータ429は、入力されるたとえば24Vの電圧をライン431,432に5Vに降圧して安定化して導出する。ライン431,432間には出力側のコンデンサ433が設けられる。
【0120】
本発明によれば、次の実施の形態が可能である。
(1)第1送信用ホトカプラ132を含む回路130と、
第1送信用ホトカプラ132を含む回路130に直列接続されて第1直列回路129を構成する、第1受信用ホトカプラ142を含む回路140と、
第2送信用ホトカプラ232を含む回路230と、
第2送信用ホトカプラ232を含む回路230に直列接続されて第2直列回路229を構成する、第2受信用ホトカプラ242を含む回路240と、
第1および第2直列回路129,229の間に介在される伝送ライン2と、
第1または第2直列回路129,229に接続される直流電源400とを含み、
第1および第2送信用ホトカプラ132,232によって信号WDを多重伝送によって送信し、
第1および第2受信用ホトカプラ142,242によって前記信号WDを受信することを特徴とする通信装置。
【0121】
第1送信用ホトカプラを含む回路と第1受信用ホトカプラを含む回路とによって第1直列回路が構成され、第2送信用ホトカプラを含む回路と第2受信用ホトカプラを含む回路とによって第2直列回路が構成され、直流電源から、第1および第2直列回路の一方から伝送ラインを経て第1および第2直列回路の他方に接続されて閉ループが形成され、第1および第2送信用ホトカプラによって信号が多重伝送によって送信され、それらの信号が第1および第2受信用ホトカプラによって受信されて取り出される。
【0122】
したがって伝送ラインのノイズ混入、浮遊容量、またはインダクタンス成分などに起因して、およびその他の原因によって、第1および第2直列回路ならびに伝送ラインを含む信号経路に瞬時に比較的大きな電流が流れ、または瞬時に比較的高い電圧が印加されるなどしたとき、せいぜい、第1および第2送信用ホトカプラの受光素子、または第1および第2受信用ホトカプラの発光素子が破損するだけに留めることができ、破損する範囲が小さく抑えられ、破損個所の修理が容易である。たとえばマイクロコンピュータなどを含むことがある電子回路装置は、送受信信号のために、伝送ラインに直接に電気的に接続されてはおらず、第1および第2送信用ホトカプラの発光素子に、ならびに第1および第2受信用ホトカプラの受光素子に接続される。したがって、送受信のための、たとえば前記電子回路装置に、ノイズ混入時または伝送ラインの離脱時などにおいても、瞬時に比較的大きな電流が流れることはなく、そのような電子回路装置が破損することが防がれ、破損する範囲が可及的に小さく抑えられる。
【0123】
前記直流電源は、定電圧源または定電流源であってもよい。
(2)直流電源は、第1および第2直列回路129,229に予め定める電流を供給する定電流ダイオード131,231を含むことを特徴とする。
【0124】
第1および第2直列回路には、電流の上限値を予め定める一定値に保つ働きを果す定電流ダイオードが接続されるので、これによって第1および第2送信用ホトカプラの受光素子に適切な電流を供給して信号の受信を確実にし、また第1および第2受信用ホトカプラの発光素子に適切な電流を供給して発光を確実にすることができる。
【0125】
さらに、伝送ラインに、定電流ダイオードが結合されている方向性に沿って、外部から大きなノイズが混入することによって、あるいは、伝送ラインの接続が外れたとき、その伝送ラインの浮遊容量に起因した電荷によって、または伝送ラインのインダクタンス成分に起因した蓄積エネルギによって、伝送ラインに瞬時に比較的高い電圧が印加されるとき、定電流ダイオードによって、大きな電流が流れて放電することが防がれる。そのため、第1および第2送信用ホトカプラの受光素子、または第1および第2受信用ホトカプラの発光素子が破損することが防がれ、また送受信信号のための、たとえばマイクロコンピュータなどを含むことがある電子回路装置が破損することが防がれる。
【0126】
(3)第1送信用ホトカプラ132によって送信される信号DTと第1受信用ホトカプラ142によって受信される信号DRとを比較する比較手段(
図18のe7)を含むことを特徴とする。
【0127】
第1送信用ホトカプラの発光素子を駆動する送信信号と、その第1送信用ホトカプラを含む回路に直列接続される第1受信用ホトカプラの受光素子によって受信される信号とを比較手段によって比較する。これによって、比較した結果、送信信号と受信信号とが同一であれば送信信号が誤りなく正確に送信されたことを確認することができる。誤動作によって、または伝送ライン上の信号の衝突などによって、送信信号と受信信号とが異なれば、たとえば、送信信号と受信信号とが同一になるまで、送信信号を再度送信する動作を繰り返し、これによって、誤った信号を送信することを防ぐことができる。
【0128】
比較手段は、第2送信用ホトカプラ232によって送信される信号と第2受信用ホトカプラ242によって受信される信号とを比較するように構成されてもよく、さらに第1および第2直列回路129、229の両者にそれぞれ設けられてもよい。
【0129】
(4)通信制御手段(
図18)が備えられ、この通信制御手段は、
第1送信用ホトカプラ132による信号の送信を休止して(
図18のe1a)、第1受信用ホトカプラ142によって信号を受信しているかどうかを監視する監視手段(
図18のe3)と、
監視手段(
図18のe3)の出力に応答し、伝送ライン2の信号が伝送中である通信ビジー状態が検出されるとき、第1送信用ホトカプラ132による送信をせずに、予め定める待ち時間W5だけ待機する待機手段(
図18のe10、e11)と、
待機手段(
図18のe10、e11)の出力に応答し、前記待ち時間W5が経過した後、監視手段(
図18のe3)の出力に応答し、伝送ライン2の信号が伝送されていない通信空き状態が検出されるとき、第1送信用ホトカプラ132によって信号を送信させる再送駆動手段(
図18のe5)とを含むことを特徴とする。
【0130】
第1直列回路に関連して通信制御手段が備えられ、伝送ラインへ、たとえばフレーム毎の、キャラクタ毎の、または一塊のデータ毎の信号を、時分割多重化してサイクリック伝送して送信するにあたり、第2直列回路の第2送信用ホトカプラによる伝送ライン上の信号の衝突を防ぐために、監視手段は、第1送信用ホトカプラによる信号の送信を休止し、このとき第1受信用ホトカプラによって信号を受信しているかどうかを監視する。この監視手段によって、第2直列回路の第2送信用ホトカプラによって伝送ラインの信号が伝送中である通信ビジー状態であることが検出されるとき、第1送信用ホトカプラによる送信をせずに予め定める待ち時間だけ待機する。再送駆動手段は、待機手段による待ち時間が経過した後、監視手段によって通信ビジー状態であるか、または通信空き状態であるかが検出される。通信空き状態が検出されたとき、第1送信用ホトカプラによって信号を送信する。こうして伝送ラインを含む通信路における信号の送受信の衝突が回避される。
【0131】
(5)監視手段(
図18のe3)が連続的に繰返して検出した通信ビジー状態の回数NWを計数するビジー回数計数手段(
図18のe9)が備えられ、
待機手段(
図18のe10、e11)は、監視手段(
図18のe3)とビジー回数計数手段(
図18のe9)との出力に応答し、監視手段(
図18のe3)が通信ビジー状態を検出するたびに、たとえばフレーム間ギャップの時間などまたはその他の時間である予め定める検出間隔W6をあけて、監視手段に連続的に繰返して監視させ、前記待ち時間W5は、ビジー回数計数手段(
図18のe9)による計数値NWによって変化されることを特徴とする。
【0132】
ビジー回数計数手段は、監視手段が連続的に繰返して検出した通信ビジー状態の回数NWを計数する。待機手段の待ち時間W5は、ビジー回数計数手段による連続的な監視の回数NWである計数値によって変化され、たとえば通信ビジー状態の連続的な回数が増大するにつれて長く設定されてもよく、または待ち時間W5を選択する待ち時間候補の数を増大するようにしてもよく、これらの待ち時間W5は乱数によるランダムな時間に定められてもよい。待ち時間W5は、たとえば60〜100msecであってもよい。
【0133】
通信制御手段は、第2直列回路を構成する第2送信用ホトカプラを含む回路と第2受信用ホトカプラを含む回路とに関連して設けられてもよく、さらに第1および第2直列回路の両者に関連して設けられてもよい。
【0134】
(6)第1および第2直列回路129,229に、それぞれ並列に、かつ直流電源400とは逆極性に接続され、第1および第2直列回路129,229の各逆耐圧V12未満の順方向電圧降下V13をそれぞれ有する逆起ダイオード136,146;236,246と、
直流電源400の近傍に接続される放電用コンデンサ406とを含むことを特徴とする。
【0135】
第1および第2直列回路に逆起ダイオードが接続されるとともに、直流電源の近傍に放電用コンデンサが接続される。これによって、前述のように、たとえば長距離にわたる伝送ラインが断線したり取外されたりして伝送ラインの接続が外れたとき、その伝送ラインの浮遊容量に起因した電荷によって、または伝送ラインのインダクタンス成分に起因した蓄積エネルギによって、直流電源とは逆極性に比較的大きな電流が流れるおそれがある。これによって第1および第2直列回路を構成する第1および第2送信用ホトカプラおよび第1および第2受信用ホトカプラの逆耐圧を超える電圧が印加されて破壊するおそれがある。
【0136】
この問題を解決するために、逆起ダイオードが備えられる。逆起ダイオードは、前記ホトカプラを構成する発光素子および受光素子の逆耐圧未満の順方向電圧降下を有し、放電用コンデンサを介して、伝送ラインの浮遊容量による電荷を放電し、また伝送ラインのインダクタンス成分による蓄積されたエネルギを放電する。これによって第1および第2直列回路を構成する前述のホトカプラの破損を防ぐことができる。
【0137】
(7)消火すべき防護区画10に、貯蔵容器11からの消火剤を、開閉弁14を介して放出する消火装置1において、
(a)防護区画10の近傍に設けられる起動装置100であって、
(a1)防護区画10内に火災が発生したとき、火災の発生に関する火災信号を発生する火災信号発生手段102,103;111、112と、
(a2)第1送信手段であって、
第1送信用ホトカプラ132を含む回路130と、
火災信号を第1送信用ホトカプラ132に与えて多重伝送して送信する第1送信処理手段150とを有する第1送信手段と、
(a3)第1受信手段であって、
第1送信用ホトカプラ132を含む回路130に直列接続されて第1直列回路129を構成する、第1受信用ホトカプラ142を含む回路140と、
第1受信用ホトカプラ142を経て信号を受信する第1受信処理手段160とを有する第1受信手段とを含む起動装置100と、
(b)制御盤200であって、
(b1)第2送信手段であって、
第2送信用ホトカプラ232を含む回路230と、
第2送信用ホトカプラ232によって前記信号を多重伝送して送信する第2送信処理手段250とを有する第2送信手段と、
(b2)第2受信手段であって、
第2送信用ホトカプラ232を含む回路230に直列接続されて第2直列回路229を構成する、第2受信用ホトカプラ242を含む回路240と、
第2受信用ホトカプラ242を経て火災信号を受信して、消火剤の放出に関する放出信号を得て第2送信処理手段250に与える第2受信処理手段260とを有する第2受信手段とを含む制御盤200と、
(c)第1および第2直列回路の間に介在される伝送ライン2と、
(d)第1または第2直列回路129,229に接続される直流電源400と、
(e)第2受信処理手段260からの放出信号に応答し、前記開閉弁14を駆動して開く開閉弁駆動手段330とを含むことを特徴とする消火装置1。
【0138】
防護区画の近傍に設けられる起動装置では、火災信号発生手段からの火災信号は第1送信手段によって多重伝送して送信され、第1受信手段によって、伝送ラインを介する信号を受信し、制御盤において第2送信手段によって伝送ラインへ信号を多重伝送して送信し、第2受信手段によって火災信号を受信して放出信号を得、開閉弁駆動手段は放出信号によって開閉弁を駆動して開く。制御盤において第2送信手段によって伝送ラインへ放出信号およびその他の表示などのための信号を多重伝送して送信し、起動装置において第1受信手段によって伝送ラインを介する放出信号を受信し、たとえば目視または音響の表示などをして出力する。
【0139】
したがって前述のように、伝送ラインのノイズ混入、浮遊容量、またはインダクタンス成分などによって、伝送ラインを含む信号経路に瞬時に比較的大きな電流が流れ、または瞬時に比較的高い電圧が印加されるなどしたとき、ホトカプラなどが破損するだけに留めることができ、破損する範囲が小さく抑えられ、破損個所の修理が容易である。そのため、それらのホトカプラに接続されるマイクロコンピュータなどを含むことがある第1および第2送信処理手段ならびに第1および第2受信処理手段などの破損を防ぐことができる。したがって、消火装置の本来の働きである消火動作を発揮することができる状態を、可及的に常時、保つことが確実である。
【0140】
(8)(a)交流電力404を整流する第1整流回路409と、
(b)第1整流回路409の出力を平滑するコンデンサ411,412を含む平滑回路410であって、その平滑出力を電力消費手段401,402に供給する平滑回路410と、
(c)バッテリ417と、
(d)前記交流電力404を整流してバッテリ417を充電する第2整流回路414と、
(e)リレー418であって、
前記交流電力404によって、または第2整流回路414の出力によって、励磁される励磁コイル419と、
励磁コイル419が励磁および消磁されることによって、バッテリ417を電力消費手段401,402にそれぞれ遮断および導通するスイッチング状態とするリレースイッチ421とを有するリレー418とを有し、
(f)前記交流電力404の低下、停電時に、電力消費手段401,402に平滑回路410のコンデンサ411,412に蓄積された電荷が供給されて電力消費手段401,402が正常に動作している期間内に、リレースイッチ421のスイッチング状態が遮断から導通に変わることを特徴とする瞬時停電防止装置。
【0141】
交流電力の停電が生じていないとき、第1整流回路の出力は平滑回路によって平滑され、その電力は、電力消費手段、たとえば安定化電源などに与えられ、さらにそれよって駆動されるマイクロコンピュータなどの処理回路170,270のような回路素子などに与えられる。第2整流回路の出力は、バッテリに与えられて、バッテリが充電される。このとき交流電力または第2整流回路の出力は、リレーの励磁コイルを励磁し、リレースイッチは遮断しており、バッテリの出力が電力消費手段に供給されることはない。
【0142】
交流電力の瞬時停電などが生じてその交流電力の電圧または電流の低下、停電時に、第2整流回路の出力にはコンデンサを含む平滑回路などが設けられていないので、電荷の蓄積がなく、したがって、リレーの励磁コイルが直ちに消磁されてリレースイッチが導通する。こうして、
図31を参照して後述されるように、電力消費手段に平滑回路のコンデンサに蓄積されて残存している電荷が供給されて電力消費手段が正常に動作している時間W13未満の時間W11(W11<W13)に、リレースイッチのスイッチング状態が遮断から導通に変わり、バッテリの出力は、リレースイッチを介して電力消費手段に供給される。すなわち、リレースイッチのスイッチング状態が、遮断から導通に変わるまでの時間W11は、交流電力の低下、停電時に、電力消費手段に平滑回路のコンデンサに蓄積された電荷が供給されて電力消費手段が正常に動作している時間W13未満であるように、平滑回路のコンデンサの容量などが選ばれる。これによって電力消費手段には、常に電力が供給されたままの状態が保たれる。
【0143】
リレーの励磁コイルが消磁してリレースイッチが導通することによって、バッテリの出力は、電力消費手段だけでなく、平滑回路のコンデンサにも与えられてコンデンサに電荷が蓄積される。
【0144】
瞬時停電が回復すると、リレーの励磁コイルが再び励磁されることによってリレースイッチは、導通から遮断に変わる。平滑回路のコンデンサは、リレースイッチの導通によって前述のように充電されるので、停電回復からリレースイッチのスイッチング状態が導通から遮断に変わるまでの期間W12に拘らず、電力消費手段には、平滑回路のコンデンサに蓄積された電荷が供給され、また停電回復後は、第1整流回路の出力が平滑回路を経て供給される。これによって電力消費手段には、常に電力が供給されたままの状態が保たれる。こうして瞬時停電などが生じても、電力消費手段にはバッテリから常に電力が供給され続けることができ、電力消費手段の電力供給が途絶えることはない。
【0145】
(9)電力消費手段401,402は、降圧のための安定化電源であり、
その安定化電源の入力側にコンデンサ428が並列に接続されることを特徴とする。
【0146】
安定化電源の入力側にコンデンサが並列に接続されることによって、その蓄積電荷によって安定化電源に電力が供給され続けることができ、安定化電源への電力の供給が途絶えることはない。電力消費手段は、平滑回路の出力電圧を降下して供給する安定化電源であり、たとえばDC/DCコンバータなどによって実現されてもよい。