特許第6523914号(P6523914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523914
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】テンプレート基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20190527BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   B29C59/02 BZNM
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-208992(P2015-208992)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2017-84871(P2017-84871A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】金光 真吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正光
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−033907(JP,A)
【文献】 特開2010−228989(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/126313(WO,A1)
【文献】 特開2011−249567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C59 /02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、
前記第1面の反対側にある第2面と、
前記第1面上に設けられ周囲よりも突出した第1領域と、
前記第1領域の少なくとも端部にあり、前記パターンの転写時に用いられるアライメントマークが形成される予定の第2領域であって、第1不純物と第2不純物とを含む第2領域と、を備え
前記第1不純物および第2不純物は、前記アライメントマークの底面となる位置よりも前記第1領域の表面に近い位置に濃度最大値を有するように導入されている、テンプレート基板。
【請求項2】
第1面と、
前記第1面の反対側にある第2面と、
前記第1面上に設けられ周囲よりも突出した第1領域と、
前記第1領域の少なくとも端部にあり、マグネシウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、マンガン、ジルコニウムのうち少なくとも1つの元素を含む第1不純物と、クロム、モリブデン、亜鉛、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、銅、銀、金、白金のうち少なくとも1つの元素を含む第2不純物とを含む第2領域と、を備えたテンプレート基板。
【請求項3】
前記第1不純物の濃度が最大値となる深さおよび前記第2不純物の濃度が最大値となる深さはほぼ同じ深さにある、請求項2に記載のテンプレート基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、テンプレート基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の製造プロセスにおいて、フォトリソグラフィ技術の代替手法としてナノインプリント技術が開発されている。ナノインプリント技術は、テンプレート(レプリカテンプレート)を半導体基板の上方のレジストに押し付けることによってレジストにテンプレートのパターンを転写する技術である。
【0003】
テンプレートのパターンには、テンプレートをレジストに重ね合わせる際に用いられるアライメントマークが含まれている。しかし、テンプレートの材料である石英の可視光に対する屈折率や透過率は、レジストの可視光に対する屈折率や透過率に近い。このため、テンプレートがレジストに押し付けられたときに、アライメントマークが見え難くなるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−33907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アライメントマーク形成領域の光学的特性を充分に変化させ、高いアライメント精度を得ることができるテンプレート基板およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によるテンプレート基板は、第1面と、第1面の反対側にある第2面とを備える。第1領域は、第1面上に設けられ周囲よりも突出している。第2領域は、第1領域の少なくとも端部にあり、パターンの転写時に用いられるアライメントマークが形成される予定の領域である。第2領域は、第1不純物と第2不純物とを含む。第1不純物および第2不純物は、アライメントマークの底面となる位置よりも第1領域の表面に近い位置に濃度最大値を有するように導入されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態によるテンプレート基板1の一例を示す平面図、および、図1(A)のB−B線に沿ったテンプレート基板1の断面図。
図2】テンプレート基板1のメサ領域R1の一例を示す平面図。
図3】テンプレート基板1のメサ領域R1の一例を示す断面図。
図4図3(A)の直線Aに沿ったDz方向における不純物の濃度プロファイルを示すグラフ。
図5】メサ領域R1の他の例を示す平面図。
図6】メサ領域R1の他の例を示す平面図。
図7】不純物導入領域15とアライメントマーク形成領域R2との関係を示す平面図。
図8】第1の実施形態によるテンプレート基板1の製造方法を示すフロー図。
図9】基板11を示す図。
図10】ステンシルマスク22の一例を示す平面図。
図11】イオン注入装置100の構成の一例を示す図。
図12】第1不純物Im1のイオン注入工程の様子を示す図。
図13】第1の実施形態によるレプリカテンプレートの製造方法の一例を示すフロー図。
図14】第1の実施形態によるレプリカテンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図15】不純物導入領域15におけるテンプレート基板1の光透過率を示すグラフ。
図16】第2の実施形態によるテンプレート基板1の製造方法の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1(A)は、第1の実施形態によるテンプレート基板1の一例を示す平面図である。図1(B)は、図1(A)のB−B線に沿ったテンプレート基板1の断面図である。
【0010】
図1(A)および図1(B)に示すように、テンプレート基板1は、第1面F1と、第1面F1の反対側にある第2面F2とを有する基板11を備えている。基板11は、図1(A)に示すように、第1面F1の上方から見たときに略四角形の形状を有している。基板11には、例えば、石英を用いており、基板11の可視光の透過率は高い。
【0011】
基板11の第1面F1上には、第1領域としてのメサ領域R1が設けられている。メサ領域R1は、第1面F1の中央部において、その周囲よりも突出しており、メサ領域R1とその周辺の領域Rpとの間には段差が設けられている。メサ領域R1は、第1面F1の上方から見たときに略四角形の形状を有している。メサ領域R1は、後に、半導体基板上のレジストへ転写されるべきパターンが形成される。即ち、メサ領域R1は、転写パターンの形成予定領域である。パターンが形成された後のメサ領域R1は、半導体装置の製造プロセスにおいて、半導体基板上のレジストへ押し付けられ、該レジストへパターンを転写するために用いられる。即ち、テンプレート基板1は、所謂、ナノインプリント技術に用いられるテンプレートの基板である。メサ領域R1は、レジストへ押し付けられる際に、レジストとの密着性を向上させるために突出している。基板11のメサ領域R1以外の領域(周辺領域)Rpには、転写パターンは形成されていない。メサ領域R1の表面と周辺領域Rpの表面とは略平行でよい。メサ領域R1の四隅(端部)に不純物導入領域15が設けられている。不純物導入領域15については、図2を参照して後で説明する。
【0012】
第1面F1上には、マスク膜12が設けられていている。マスク膜12は、金属を含む薄膜であり、例えば、窒化クロム膜である。マスク膜12は、メサ領域R1の表面Fr1にマスターテンプレートのパターンを転写する際にマスク材として用いられる。
【0013】
寸法の一例を示すと、基板11は、上方から見て、縦および横の長さがそれぞれ約152mmの正方形であり、厚さは約6.35mmである。メサ領域R1は、上方から見て、縦および横の長さが約26mmおよび約33mmの長方形であり、高さは約30μmである。マスク膜12の膜厚は、例えば、約5〜10nmである。
【0014】
図2は、テンプレート基板1のメサ領域R1の一例を示す平面図である。メサ領域R1は、デバイス領域14と、不純物導入領域15とを含む。デバイス領域14は、メサ領域R1の中央部に位置し、デバイスパターンが形成される予定の領域である。尚、デバイスパターンは、テンプレート基板1を用いてレプリカテンプレートを作製する際に形成される。従って、デバイスパターンは、テンプレート基板1のデバイス領域14にはまだ形成されていない。
【0015】
不純物導入領域15は、メサ領域R1の四隅(端部)に位置し、デバイス領域14の周辺の一部に設けられている。不純物導入領域15には、アライメントマーク形成領域R2が設けられている。第2領域としてのアライメントマーク形成領域R2は、パターンの転写時に用いられるアライメントマークが形成される予定の領域である。アライメントマークは、半導体基板上のレジストに対する位置合わせのために用いられる。尚、アライメントマークは、デバイスパターンと同様に、テンプレート基板1を用いてテンプレートを作製する際に形成される。従って、アライメントマークは、テンプレート基板1のアライメントマーク形成領域R2にはまだ形成されていない。
【0016】
ここで、図1(A)〜図2に示すように、不純物導入領域15には、不純物が局所的に導入されている。不純物は、図1(B)に示すように、メサ領域R1の表面Fr1と周辺領域Rpの表面F1との間の深さに導入されている。即ち、不純物は、メサ領域R1の表面Fr1よりも深く、かつ、周辺領域Rpの表面(第1面F1)よりも浅い位置に導入されている。
【0017】
不純物は、少なくとも2種類の元素の不純物を含む。例えば、不純物は、第1不純物および第2不純物を含む。第1不純物の導入領域と第2不純物の導入領域との少なくとも一部は重複しており、好ましくは、第1不純物および第2不純物は、ほぼ同じ深さに導入されている。従って、第1不純物および第2不純物のそれぞれの濃度最大値は、メサ領域R1の表面Fr1よりも深く、かつ、周辺領域Rpの表面F1よりも浅い位置にあり、好ましくは、ほぼ同じ深さにある。
【0018】
第1および第2不純物は、ともに金属であるが、第2不純物のイオン化傾向は、第1不純物のイオン化傾向よりも小さい。尚且つ、第2不純物の原子量または質量は、第1不純物の原子量または質量よりも大きい。第1不純物は、例えば、マグネシウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、マンガン、ジルコニウムのうち少なくとも1つの元素である。第2不純物は、例えば、クロム、モリブデン、亜鉛、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、銅、銀、金、白金のうち少なくとも1つの元素である。
【0019】
第2不純物のイオン化傾向は第1不純物のイオン化傾向よりも小さいので、第1不純物の多くは、酸化物として不純物導入領域15内に存在すると考えられ、一方、第2不純物の多くは、酸化されずにそのまま不純物導入領域15内に存在すると考えられる。このようにイオン化傾向が第2不純物より大きい第1不純物を導入することによって、第1不純物が不純物導入領域15内の酸素と結合して酸化し、不純物導入領域15内の酸素が少なくなる。このため、第2不純物は、少ないドーズ量でも、左程酸化せずに不純物導入領域15にそのまま残存することができる。また、第1不純物は、イオン化傾向が比較的大きいので、少ないドーズ量でも不純物導入領域15内の酸素を効率良く捕捉することができる。このように、第1および第2不純物を導入することによって、全体として少ないドーズ量でも、第1不純物は不純物導入領域15内の酸素を捕捉し、第2不純物は不純物導入領域15にそのまま残存することができる。
【0020】
また、第1不純物の原子量または質量は、第2不純物の原子量または質量よりも小さい。これにより、第1不純物をイオン注入するときに、加速エネルギーが小さくて済む。従って、第1不純物を不純物導入領域15に導入するときにときに、メサ領域R1の表面に与えるダメージが小さくて済む。
【0021】
不純物の導入によって基板11の透過率を効率的に低下させるためには、不純物は、屈折率および消衰係数の大きな材料(例えば、消衰係数k≧3)であることが好ましい。しかし、このような不純物の屈折率および消衰係数は、酸化すると極端に小さくなることが多い。本実施形態では、このような屈折率および消衰係数の比較的大きな材料を第2不純物として用い、第2不純物よりもイオン化傾向の大きな材料を第1不純物として用いることによって、第1不純物で酸素を捕捉しつつ、第2不純物を酸化させずに不純物導入領域15に残存させることができる。これにより、本実施形態は、少ない不純物で不純物導入領域15における基板11の透過率を効率的に低下させることができる。
【0022】
図3(A)および図3(B)は、テンプレート基板1のメサ領域R1の一例を示す断面図である。図3(A)は、図2のA−A線に沿った断面図であり、図3(B)は、図2のB−B線に沿った断面図である。図3(A)には、不純物の導入位置(導入深さ)とアライメントマークとの関係を示すためにアライメントマークの溝16aの形成位置を示している。図3(B)には、デバイスパターンの溝14aの形成位置を示している。
【0023】
図3(A)に示すように、アライメントマークは、複数の溝16aで形成されている。アライメントマークが形成されると、アライメントマーク形成領域R2において、複数の溝16aが基板11の第1面F1にDx方向またはDy方向に配列され、互いに略平行に設けられる(図7参照)。この場合、アライメントマークは、ライン・アンド・スペースパターンとなる。溝16aの幅(スペース幅)や隣接する溝16aの間隔(ライン幅)は等しくてもよい。あるいは、アライメントの際にモアレ縞を生成させる場合、スペース幅やライン幅は相違させてもよい。即ち、ライン・アンド・スペースパターンのピッチは、任意に設定可能である。アライメントマーク形成領域R2は、図2に示すように、Dx方向に配列された複数の溝16a、および、Dx方向に対して直交するDy方向に配列された複数の溝16aを含む。これにより、Dx方向とDy方向とからなる平面上において、Dx方向およびDy方向に二次元的にテンプレートの位置合わせが可能となる。
【0024】
また、図3(B)に示すように、テンプレート基板1にデバイスパターンが形成される際には、デバイス領域14において、基板11の第1面F1に溝14aが形成される。このような溝16aおよび14aは、同一工程で連続して形成されてよい。溝16aおよび溝14aの深さは相互に略等しく、例えば、約60nmである。また、基板11のDz方向(第1面F1、第2面F2に対して垂直方向、即ち、深さ方向)において、不純物注入領域15は、溝16aの中間部分に位置している。即ち、溝16aが形成される際には、溝16aは不純物注入領域15をDz方向に貫通するように形成される。
【0025】
図4は、図3(A)の直線Aに沿ったDz方向における不純物の濃度プロファイルを示すグラフである。縦軸は、メサ領域R1の表面Fr1からの距離(深さ)を示す。横軸は、不純物濃度を示す。P1は、第1不純物の濃度プロファイルを示し、P2は、第2不純物の濃度プロファイルを示す。尚、不純物濃度プロファイルとアライメントマークの溝16aとの位置関係を示すために、図4には、アライメントマークの溝16aを並べて表示している。
【0026】
図4に示すように、不純物注入領域15におけるDz方向に沿った第1および第2不純物の濃度プロファイルP1、P2は、溝16aの底面となる予定の位置Btmよりもメサ領域R1の表面Fr1に近い位置で最大値を有する。即ち、濃度プロファイルP1、P2の最大値は、位置Btmと表面Fr1との間の深さに位置する。これにより、アライメントマークの溝16aが形成されると、溝16a内の不純物注入領域15が除去される。一方、隣接する溝16a間において不純物注入領域15は残置される。
【0027】
ここで、本実施形態によるテンプレート基板1は、メサ領域R1のうち不純物導入領域15に第1不純物および第2不純物が導入されている。第1不純物および第2不純物の濃度最大値は、アライメントマークの溝16aの底面となる位置よりもメサ領域R1の表面F1に近い位置にある。また、第2不純物は、第1不純物よりもイオン化傾向において小さい。これにより、不純物導入領域15に、第2不純物を酸化させずに残置させることができる。そして、テンプレート形成時に、不純物導入領域15内のアライメントマーク形成領域R2には、アライメントマークの溝16aが形成される。アライメントマークの溝16aは、不純物導入領域15よりも深いので、上述の通り、アライメントマークの溝16a内のスペースパターンにおいて、第1および第2不純物は除去される。従って、このスペースパターンにおいて、透過率は、基板11(例えば、石英)の透過率となり、非常に高くなる。一方、隣接する溝16a間のラインパターンにおいて、第1および第2不純物は残置される。第2不純物には屈折率および消衰係数の比較的大きな材料を用いている。従って、このラインパターンにおいて、透過率は効果的に低くなり得る。これにより、アライメントマークにおけるスペースパターンとラインパターンとの透過率の差(コントラスト)が大きくなる。即ち、本実施形態によるテンプレート基板1を用いれば、第1および第2不純物の少なくとも2種類の不純物を導入することによって、不純物導入領域15の光学的特性を充分に変化させ、アライメントマークにおけるコントラストを大きくすることができる。その結果、テンプレート基板1を用いて作成されたテンプレートは、アライメントマークにおける高いアライメント精度を得ることが可能となる。
【0028】
本実施形態において、不純物導入領域15およびアライメントマーク形成領域R2は、メサ領域R1の四隅に設けられていた。しかし、不純物導入領域15およびアライメントマーク形成領域R2は、メサ領域R1の側部(側辺部)に設けられていてもよい。例えば、図5に示すように、不純物導入領域15およびアライメントマーク形成領域R2は、メサ領域R1の4つの側辺部に設けられていてもよい。また、図6に示すように、デバイス領域14がメサ領域R1の表面において複数に分割されている場合、不純物導入領域15およびアライメントマーク形成領域R2は、メサ領域R1の4つの側辺部だけでなく、隣接するデバイス領域14間にも設けられていてもよい。図5および図6は、メサ領域R1の他の例を示す平面図である。
【0029】
図7は、不純物導入領域15とアライメントマーク形成領域R2との関係を示す平面図である。図7は、図2に示す1つの不純物導入領域15および1つのアライメントマーク形成領域R2の拡大図と言ってもよい。アライメントマーク形成領域R2は、Dx方向に配列された複数の溝16aと、Dy方向に配列された複数の溝16aとを含む。不純物導入領域15は、アライメントマーク形成領域R2全体を含むように設定される。従って、不純物導入領域15は、メサ領域R1の表面Fr1において、破線15_1のように、Dx方向およびDy方向に配列された溝16aの全体を含むように設定してもよく、あるいは、破線15_2のように、Dx方向に配列された溝16aとDy方向に配列された溝16aのそれぞれを含むように設定してもよい。いずれの場合にも、アライメントマークは、メサ領域R1の表面Fr1において、不純物導入領域15内に形成され得る。尚、アライメントマークの形状はライン・アンド・スペースパターンに限定されず、他のパターンであってもよい。
【0030】
通常、半導体装置をナノインプリント法によって大量生産する場合には、テンプレートとして、マスターテンプレートおよびレプリカテンプレートの2種類のテンプレートを作製する。マスターテンプレートは、メサ領域の無い平板状の石英基板に、例えば、電子ビーム描画によって形成されたデバイスパターンおよびアライメントマークを有する。マスターテンプレートは、通常、1枚のみ製造される。一方、レプリカテンプレートは、上述のメサ領域が形成されたテンプレート基板に、マスターテンプレートによってデバイスパターンおよびアライメントマークを転写して製造される。このレプリカテンプレートのパターンを半導体基板に転写することにより、半導体装置を製造する。但し、半導体基板への転写を繰り返すことにより、デバイスパターンおよびアライメントパターンが徐々に損傷を受けるため、レプリカテンプレートは消耗品である。このため、レプリカテンプレートは、マスターテンプレートを用いて複数枚製造される。本実施形態に係るテンプレート基板1は、例えば、レプリカテンプレートを形成するための基板である。
【0031】
次に、テンプレート基板1の製造方法について説明する。
【0032】
図8は、第1の実施形態によるテンプレート基板1の製造方法を示すフロー図である。
【0033】
まず、図9(A)および図9(B)に示すように、第1面F1と、第2面F2とを有する基板11を準備する(S1)。基板11は、例えば、可視光透過率の高い石英基板である。基板11は、1辺の長さが例えば約152mmの略正方形の平板状である。基板11の厚さは、例えば、約6.35mmである。基板11の第1面F1の中央部には、メサ領域R1が設けられている。メサ領域R1は、例えば、メサ領域R1の形成予定領域をレジスト膜で被覆し、メサ領域R1の形成予定領域以外の第1面F1をエッチングすることにより形成される。メサ領域R1は、例えば、縦の長さが約33mm、横の長さが約26mmの長方形状であり、高さは例えば約30μmである。
【0034】
次に、マスターテンプレートの設計情報からアライメントマークに関する情報を取得する(S2)。具体的には、アライメントマーク領域R2の数、位置およびサイズに関する情報を取得する。この情報は、通常、CAD(Computer Aided Design)の利用が可能なデータフォーマットによって記述されている。
【0035】
次に、メサ領域R1の角部を原点とした直交座標系を設定する。そして、この直交座標系を基準として、アライメントマーク領域R2の座標データを変換する(S3)。これにより、各アライメントマーク領域R2の座標を記述することができる。
【0036】
次に、アライメントマーク領域R2の位置情報に基づいて、不純物注入領域15を決定する(S4)。不純物注入領域15は、イオン注入装置100(図11参照)における注入位置の誤差を考慮して設定する。誤差は、イオンビームを照射する際の目標位置と実際に照射された位置との間のズレ量であって、イオン注入装置ごとに統計的に予測される値である。
【0037】
不純物注入領域15はメサ領域R1の表面Fr1においてアライメントマーク領域R2を含むように設定される。誤差を考慮すると、不純物注入領域15の外縁は、アライメントマーク領域R2の外縁から誤差以上の距離だけ離隔した位置に設定される。これにより、不純物の注入位置が誤差の範囲内でずれたとしても、アライメントマーク領域R2には不純物が確実に注入される。
【0038】
次に、ステップS4において決定された不純物注入領域15に対応するステンシルマスク22を準備する(S5)。図10は、ステンシルマスク22の一例を示す平面図である。ステンシルマスク22には、例えば、シリコン基板等の導電性材料を用いる。ステンシルマスク22は、不純物を通過させるアパーチャー22aを有する。アパーチャー22aは、アライメントマーク形成領域R2を含む不純物導入領域15全体に不純物をイオン注入するために、アライメントマーク形成領域R2よりも或る程度のマージンをもって広く形成されている。ステンシルマスク22のアパーチャー22a以外の領域は、不純物の通過を阻止する。このようなステンシルマスク22を用いて不純物をイオン注入することによって、メサ領域R1の所望の位置に不純物導入領域15を形成することができる。尚、ステンシルマスク22は、アパーチャー22aの他に、観察用窓(図示せず)が形成されていてもよい。また、図10に示すステンシルマスク22は、図6の不純物導入領域15に対応するが、ステンシルマスク22のアパーチャー22aを変更することによって、図2または図5の不純物導入領域15に対応させることもできる。
【0039】
次に、イオン注入装置100にステンシルマスク22および基板11を装着し、位置合わせを行う(S6)。以下、イオン注入装置100の構成について、簡単に説明する。
【0040】
図11は、イオン注入装置100の構成の一例を示す図である。イオン注入装置100は、ステージ101、イオン源室102、加速機構103、質量分析マグネット104およびビーム光学系105を備えている。ステージ101は、基板11を搭載可能であり、位置合わせのために基板11を移動させることができる。イオン源室102、加速機構103、質量分析マグネット104およびビーム光学系105は、不純物イオンの経路を構成している。不純物イオンの経路に介在するように、ビーム光学系105とステージ101との間に、ステンシルマスク22が配置される。ステンシルマスク22は、基板11の直上に配置されている。
【0041】
次に、イオン注入装置100は、ステンシルマスク22のアパーチャー22aに従って第1不純物を基板11へ選択的にイオン注入する(S7)。例えば、第1不純物としてアルミニウムを用いる場合には、イオン源室102内にアルミニウム化合物をセットし、これを加熱すると共に、加速機構103に引出電圧を印加する。これにより、イオン源室102からアルミニウムイオンが引き出され、加速機構103によって加速される。そして、質量分析マグネット104を通過させることにより、アルミニウムイオンの純度を高め、ビーム光学系105により、アルミニウムイオンを平行なビーム状にする。このアルミニウムイオンビームは、アパーチャー22aを通過することにより、不純物導入領域15に相当する形状に成形され、基板11に照射される。例えば、ドーズ量は、約2×1016〜5×1016ions/cmとし、加速電圧を22kV以下とする。この場合、深さが約60nm以下の浅い領域に、不純物が注入される。好ましくは、テンプレートの製造時に形成される溝16aの深さの約半分の位置を目標位置として、第1不純物を注入する。例えば、溝16aの第1面F1からの深さが約60nmである場合、第1不純物は、メサ領域R1の表面Fr1から約30nmの位置(深さ)をターゲットとしてイオン注入される。これにより、第1不純物の濃度プロファイルは、深さ方向(Dz方向)における溝16aのほぼ中心の位置に最大値を有する略正規分布となる。その結果、第1不純物のほとんどが、メサ領域R1の表面Fr1から溝16aの底面Btmまでの間の深さに導入される。
【0042】
図12(A)は、第1不純物Im1のイオン注入工程の様子を示す図である。第1不純物Im1が矢印A1で示すようにメサ領域R1へイオン注入されている。第1不純物Im1は、メサ領域R1の表面Fr1から例えば約30nmの深さを目標位置として注入されている。
【0043】
第1不純物は、上述の通り、イオン化傾向が第2不純物よりも大きく、原子量または質量が第2不純物よりも小さい材料であり、例えば、マグネシウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、マンガン、ジルコニウムのうち少なくとも1つの元素である。例えば、第1不純物としてアルミニウムを用いた場合、約22kVの加速電圧でイオン注入すれば、アルミニウムは、約30nmの位置(深さ)に注入される。アルミニウムは、イオン化傾向が比較的小さいため、不純物導入領域15において酸素と結合し、酸化アルミニウムとなっていると考えられる。また、アルミニウムは、原子量または質量が比較的小さいため、イオン注入の加速エネルギーが小さくて済み、かつ、メサ領域R1の表面を左程削らない。従って、メサ領域R1の表面に与えるダメージが小さくて済む。
【0044】
次に、イオン注入装置100は、ステンシルマスク22のアパーチャー22aに従って第2不純物を基板11へ選択的にイオン注入する(S8)。例えば、第2不純物としてアンチモンを用いる場合には、イオン源室102内にアンチモンをセットすればよい。ステンシルマスク22およびその位置は変更する必要はない。イオン源をアンチモンに交換し、質量分析マグネットおよび加速電圧等を変えることによって、第2不純物は、第1不純物とほぼ同じ位置に注入可能である。イオン注入装置100のその他の動作は、ステップS7と同様でよい。これにより、アンチモンイオンビームは、アパーチャー22aを通過することにより、不純物導入領域15に相当する形状に成形され、基板11に照射される。例えば、ドーズ量は、約2×1016〜5×1016ions/cmとし、加速電圧を60kV以下とする。この場合、深さが約60nm以下の浅い領域に、不純物が注入される。第1および第2不純物のドーズ量は、イオンビームの電流量および注入時間を用いて制御可能である。例えば、イオンビームの電流密度が1μA/cmの場合、イオンビームを約10分間照射すれば、約3.75×1015ions/cmのドーズ量の不純物を注入することができる。
【0045】
図12(B)は、第2不純物Im2のイオン注入工程の様子を示す図である。第2不純物Im2が矢印A2で示すようにメサ領域R1へイオン注入されている。第2不純物Im2は、メサ領域R1の表面Fr1から例えば約30nmの深さを目標位置として注入されている。従って、第2不純物Im2は、第1不純物Im1と同じ目標位置へイオン注入され、第1不純物Im1と重複した領域に注入される。
【0046】
第2不純物は、イオン化傾向が第1不純物よりも小さく、原子量または質量が第1不純物よりも大きい材料であり、例えば、クロム、モリブデン、亜鉛、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、銅、銀、金、白金のうち少なくとも1つの元素である。例えば、第1不純物としてアンチモンを用いた場合、約60kVの加速電圧でイオン注入すれば、アンチモンは、約30nmの位置(深さ)に注入される。アルミニウムは、イオン化傾向がアンチモンよりも大きいので、不純物導入領域15内の酸素を捕捉する(酸化しやすい)。このため、不純物導入領域15内のアンチモンは、酸化され難くなり、比較的少ないドーズ量でもアンチモン本来の光学的特性を充分に得ることができる。アンチモンのドーズ量を比較的小さくすることにより、アンチモンは、原子量においてアルミニウムよりも大きいものの、メサ領域R1の表面に与えるダメージを小さくすることができる。
【0047】
このように、第1および第2不純物がメサ領域R1にイオン注入されることによって、不純物導入領域15が形成される。上述の通り、第1不純物が不純物導入領域15において酸素原子と結合している。このため、第2不純物の酸化が抑制され、第2不純物は、比較的本来の光学的特性を維持したまま不純物導入領域15に存在することができる。即ち、第2不純物に、屈折率および消衰係数の大きな材料を用いることによって、不純物導入領域15における可視光の透過率を低減させることができる。
【0048】
次に、基板11を洗浄し、表面に付着しているパーティクルおよび不純物イオンの注入によって付着したコンタミネーションを除去する(S9)。
【0049】
次に、例えば、スパッタ法を用いて、基板11の第1面F1上にマスク膜12の材料を堆積させる(S10)。マスク膜12の材料は、例えば、窒化クロムでよい。これにより、図1(A)および図1(B)に示すテンプレート基板(レプリカブランク)1が完成する。
【0050】
次に、本実施形態に係るテンプレート用基板を用いたレプリカテンプレートの製造方法について説明する。
【0051】
図13は、第1の実施形態によるレプリカテンプレートの製造方法の一例を示すフロー図である。図14(A)〜図14(G)は、第1の実施形態によるレプリカテンプレートの製造方法の一例を示す断面図である。
【0052】
まず、図14(A)に示すように、本実施形態に係るテンプレート基板1を用意する(S61)。上述のように、テンプレート基板1には、デバイスパターン領域14およびアライメントマーク領域16が設定されている。
【0053】
次に、図14(B)に示すように、テンプレート基板1の第1面F1の全面に、紫外線硬化型のレジスト膜61を塗布する(S62)。塗布は通常インクジェット機構などにより微小液滴をパターンに応じた密度で配置することにより行われ、後述のマスターテンプレートを密着させることにより均一に延伸される。
【0054】
次に、マスターテンプレート(図示せず)をテンプレート基板1に押し付けることにより、メサ領域R1に塗布されたレジスト膜61をマスターテンプレートのパターンの形状に変形させる。この状態で、例えば、約365nmの波長を有する紫外線を照射して、レジスト膜61を硬化させる。これにより、図14(C)に示すように、マスターテンプレートのパターンがレジスト膜61に転写されて、レジストパターン62が形成される(S63)。レジストパターン62には、デバイスパターンおよびアライメントマークが形成される。その後、マスターテンプレートをテンプレート基板1およびレジストパターン62から引き剥がす。
【0055】
次に、図14(D)に示すように、レジストパターン62をマスクとし、塩素を含むエッチングガスを用いて、ドライエッチングを行う。これにより、窒化クロムからなるマスク膜12がエッチングされて、レジストパターン62のパターンがマスク膜12へ転写される(S64)。
【0056】
次に、図14(E)に示すように、レジストパターン62を除去する(S65)。
【0057】
次に、図14(F)に示すように、マスク膜12をマスクとして用いて、フッ素を含むエッチングガスで、ドライエッチングを行う。これにより、石英からなる基板11がエッチングされて、デバイスパターン領域14に溝14aが形成されるとともに、アライメントマーク領域16に溝16aが形成される(S66)。溝14aによりデバイスパターンが構成され、溝16aによりアライメントマークが構成される。溝14aおよび溝16aは、不純物注入領域15の下面よりも深く形成され、例えば、約60nmの深さに形成される。これにより、溝16aは不純物注入領域15を貫通する。
【0058】
次に、図14(G)に示すように、硝酸セリウムを用いたウェットエッチングを行うことにより、マスク膜12を除去する。これにより、レプリカテンプレート70が完成する。
【0059】
このように形成されたレプリカテンプレート70を用いてナノインプリント法を実施することにより、半導体装置を製造する。例えば、シリコンウェーハ等の半導体基板(図示せず)上に紫外線硬化型のレジスト材料(図示せず)を塗布し、レプリカテンプレート70を押し付けた状態で紫外線を照射することにより、半導体基板上にレジストパターンを形成する。このとき、レプリカテンプレート70に形成されたアライメントマークと半導体基板に形成されたアライメントマークとを重ね合わせて、これを、波長が例えば530nm程度の白色光を用いて観察することによって、レプリカテンプレート70と半導体基板との位置合わせを行う。これらのアライメントマークは、いずれも複数本の溝が周期的に配列されたパターンであるが、その周期は相互に少し異なっている。このため、両マークを重ね合わせるとモアレ模様が発生し、両マークの相対的な位置関係が変化するとモアレ模様の位置が変化する。これにより、両マークの相対的な位置関係を、増幅して検出することができ、レプリカテンプレート70を半導体基板に対して高精度に位置決めすることができる。
【0060】
また、図2に示すように、アライメントマークは、直交するDx方向およびDy方向に配列された複数の溝16aを備える。このようなアライメントマークは、レプリカテンプレート70および半導体基板の双方に設けられている。これにより、アライメントマークは、Dx方向とDy方向とにおいて、半導体基板に対して相対的に位置決めすることができる。
【0061】
次に、レジストパターンをマスクとして、半導体基板を処理する。この処理は、例えば、エッチングであってもよく、不純物の注入であってもよい。例えば、レジストパターンをマスクとしてエッチングすることにより、半導体基板または半導体基板上の材料膜を選択的にエッチングすることができる。あるいは、レジストパターンをマスクとして不純物を選択的に注入することにより、半導体基板または半導体基板上の材料膜に不純物拡散層を形成することができる。このように、半導体装置が形成され得る。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、まず、第1不純物が、アライメントマークの溝16aの底面Btmとなる位置よりもメサ領域R1の表面Fr1の表面に近い位置に濃度最大値を有するように不純物導入領域15に導入される。次に、第2不純物が、第1不純物と同様の位置に導入される。これにより、第1および第2不純物の導入領域が不純物導入領域15において重複する。第2不純物は、第1不純物よりもイオン化傾向において小さいので、不純物導入領域15に第2不純物を酸化させずに残置させることができる。
【0063】
図15は、不純物導入領域15におけるテンプレート基板1の光透過率を示すグラフである。横軸は、光の波長を示し、縦軸は、光の透過率を示す。波長帯域Laは、テンプレートと半導体基板との位置合わせの際に用いられる光の波長帯域を示す。ラインL1は、第1不純物Im1のみが導入されている場合の透過率を示す。ラインL2は、第2不純物Im2のみが導入されている場合の透過率を示す。ラインL12は、第1および第2不純物Im1、Im2の両方が導入されている場合の透過率を示す。
【0064】
第1不純物Im1(例えば、アルミニウム)のみが導入されている場合、波長帯域Laにおいて、基板11の透過率は、ほとんど低下していない。これは、第1不純物Im1が不純物導入領域15において酸化され、透過率が高くなるからである。
【0065】
第2不純物Im2(例えば、アンチモン)のみが導入されている場合、波長帯域Laにおいて、基板11の透過率は、或る程度低下するものの依然として高い。不純物を含まない石英(基板11)の透過率を100%とした場合、波長帯域LaにおけるL2の透過率は、例えば、約80%である。これは、第2不純物Im2は、イオン化傾向において第1不純物Im1よりも小さいものの、不純物導入領域15において或る程度酸化されるからである。
【0066】
これに対し、第1および第2不純物Im1,Im2(例えば、アルミニウムおよびアンチモン)の両方が導入されている場合、波長帯域Laにおいて、基板11の透過率は、かなり低下する(例えば、約30%以下)。これは、第1不純物Im1が不純物導入領域15内の酸素と結合して酸化され、第2不純物Im2の多くが不純物導入領域15においてそのまま残置されるからである。尚、第1不純物Im1がマグネシウムであり、第2不純物Im2がコバルトである場合、波長帯域Laにおいて、ライン12の透過率は、例えば、約40%以下となる。
【0067】
このように、本実施形態によれば、不純物導入領域15における波長帯域Laの光の透過率を低下させることができる。これにより、アライメントマークの溝16aが形成されたときに、ラインパターンとスペースパターンとの間で大きな透過率の差(コントラスト)を得ることができる。即ち、本実施形態によるテンプレート基板1から形成されたレプリカテンプレートを用いて半導体装置を製造すれば、高感度のアライメント信号を取得することができ、半導体基板に対してレプリカテンプレートを精度良く位置合わせすることができる。
【0068】
もし、第1不純物のみを用いた場合、第1不純物は、比較的イオン化傾向が大きいため、酸化されやすく、不純物導入領域15の光学的特性を大きく変化させることが困難である。また、第2不純物のみを用いた場合、第2不純物は、比較的イオン化傾向が小さいものの、やはり酸化されるため、ドーズ量が大きくなる。第2不純物は原子量または質量が大きいため、大量にイオン注入すると、メサ領域R1の表面Fr1が削られてしまう。また、メサ領域R1の内部において、歪みが大きくなる。従って、第1不純物または第2不純物のいずれか一方のみを用いた場合、少ないドーズ量で不純物導入領域15の光学的特性を充分に変化させることが困難である。
【0069】
これに対し、本実施形態によれば、第1および第2不純物を導入することによって、全体として少ないドーズ量で、不純物導入領域15の光学的特性を充分に変化させることが容易となる。
【0070】
(第2の実施形態)
図16(A)〜図16(C)は、第2の実施形態によるテンプレート基板1の製造方法の一例を示す断面図である。
【0071】
図16(A)に示すように、第1および第2不純物を導入することによって、メサ領域R1の表面Fr1は、左程ダメージを受けないものの、或る程度削られるため、非平坦になる場合もある。そこで、第2の実施形態では、図16(B)に示すように、第1および第2不純物の導入後、メサ領域R1の表面Fr1上にガラス膜としてのSOG(Spin On Glass)を塗布する。その後、テンプレート基板1およびSOGを熱処理することによって一体化させる。これにより、メサ領域R1の表面Fr1を略平坦にすることができる。
【0072】
この場合、第1および第2不純物の濃度プロファイルがSOGの厚みの分だけ深くなる。しかし、SOGの厚みを制限すれば、第1および第2不純物の濃度プロファイルはアライメントマークの溝16aの深さよりも浅く維持することができる。例えば、溝16aが約60nmの深さであり、第1および第2不純物が約30nmの深さに導入されている場合、SOGの厚みを約10nm以下に制限すれば、第1および第2不純物の濃度最大値の深さは、約30nm〜40nmとなる。この場合、第1および第2不純物の濃度プロファイルは、依然としてアライメントマークの溝16aの深さよりも浅く維持することができる。第2の実施形態によるテンプレート基板1のその他の構成および製造方法は、第1の実施形態によるテンプレート基板1の対応する構成および製造方法と同様でよい。
【0073】
これにより、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第2の実施形態は、メサ領域R1の表面Fr1上にガラス膜を備えるので、メサ領域R1の表面Fr1を略平坦にすることができる。
【0074】
上記実施形態において、2種類の不純物が不純物導入領域15へ導入されている。しかし、不純物は、3種類以上、不純物導入領域15へ導入されていてもよい。この場合、不純物の少なくとも2種類が上述の第1不純物および第2不純物に適合すればよい。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
1・・・テンプレート基板、11・・・基板、R1・・・メサ領域、15・・・不純物導入領域、R2・・・アライメントマーク形成領域、16a・・・溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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