(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
〈ポリカーボネート樹脂〉
本発明のポリカーボネート樹脂は、式(1)と式(2)で表される構成単位を含む。式(1)と式(2)との割合は、モル比で95:5〜5:95であり、90:10〜30:70であると好ましく、74:26〜50:50であるとより好ましい。式(1)と式(2)の割合が上記範囲内であると、高屈折率、低複屈折であり、表面硬度と耐折り曲げ性のバランスに優れるため好ましい。
【0013】
本発明のポリカーボネート樹脂は、式(1)と式(2)で表される構成単位を含むが、本発明の特性を損なわい程度に他のジオール成分を共重合してもよい。他のジオール成分は、全繰り返し単位中10mol%以下が好ましい。その他のジオール成分として、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール、イソソルビド、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビフェノール、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、1,1−ビ(2−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン)、1,1−ビ−2−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロン等が挙げられる。
【0014】
本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度は、0.12〜0.40が好ましく、0.15〜0.35であるとさらに好ましく、0.18〜0.30であるとよりいっそう好ましい。比粘度が上記範囲内であると成形性と機械強度のバランスに優れるため好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂の屈折率は、1.640〜1.660であると好ましく、1.641〜1.660であるとさらに好ましく、1.643〜1.660であるとよりいっそう好ましい。屈折率は25℃、波長589nmにおいて測定する。屈折率が1.635以上の場合、レンズの球面収差を低減でき、さらにレンズの焦点距離を短くする事ができるため好ましい。
【0015】
本発明のポリカーボネート樹脂のアッベ数(ν)は、19〜25であると好ましく、20〜24であるとさらに好ましい。アッベ数は25℃、波長486nm、589nm、656nmの屈折率から下記式を用いて算出する。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0016】
本発明のポリカーボネート樹脂は、配向複屈折(Δn)の絶対値が、好ましくは0〜6×10
−3、より好ましくは0〜4×10
−3、さらに好ましくは0〜2×10
−3の範囲である。配向複屈折(Δn)は、該ポリカーボネート樹脂より得られる厚さ100μmのキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸した時、波長589nmにおいて測定する。配向複屈折が上記範囲内であると、レンズの光学歪が小さくなるため好ましい。
【0017】
本発明のポリカーボネート樹脂は、1mm厚の全光線透過率が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは88%以上である。全光線透過率が上記範囲内であると、光学部材として適している。
本発明のポリカーボネート樹脂は、23℃、24時間浸漬後の吸水率が0.25%以下であると好ましく、0.20%以下であるとより好ましい。吸水率が上記範囲内であると、吸水による光学特性の変化が小さいため好ましい。
【0018】
本発明のポリカーボネート樹脂は、ガラス転移点(Tg)が120〜160℃であると好ましく、130〜160℃であるとより好ましい。ガラス転移点が上記範囲内であると、耐熱性と成形性のバランスに優れるため好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、耐折り曲げ性が20mm以下であると好ましく、15mm以下であるとより好ましく、10mm以下であるとよりいっそう好ましい。
【0019】
本発明のポリカーボネート樹脂の耐折り曲げ性とは、以下の方法により測定した値を示す。測定方法は、長さ40mm、幅10mm、厚さ100μmのフィルムを用いて、万力の左右の接合面の間隔を40mmに開き、前記試験片の両端を接合面内に固定した。次に左右の接合面の間隔を2mm/秒以下の速度で狭めていき、折れ曲がった試験片全体を該接合面内で圧縮した。そして、接合面間が完全に密着する迄に試験片が折れ曲がり部で2片(又は3片以上の破片)に割れた際、万力の接合面の移動を停止し、接合面の間隔を測定した。耐折り曲げ性の数値が大きいほど、フィルムが割れやすいことを示す。耐折り曲げ性が上記範囲内であると、光学部材として十分な機械強度があるため好ましい。
【0020】
本発明のポリカーボネート樹脂は、鉛筆硬度が好ましくはF以上、より好ましくはH以上である。鉛筆硬度とは、本発明のポリカーボネート樹脂を特定の鉛筆硬度を有する鉛筆で樹脂を擦過した場合に擦過しても擦過痕が残らない硬さのことであり、JIS K−5600に従って測定できる塗膜の表面硬度試験に用いる鉛筆硬度を指標とする。鉛筆硬度は、9H、8H、7H、6H、5H、4H、3H、2H、H、F、HB、B、2B、3B、4B、5B、6Bの順で柔らかくなり、最も硬いものが9H、最も軟らかいものが6Bである。
【0021】
〈ポリカーボネートの製造方法〉
本発明の樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
【0022】
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm−クレジルカーボネート等が例示される。なかでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.90〜1.02モル、より好ましは0.95〜1.00モルである。
【0023】
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、か
かる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性リン化合
物、含窒素化合物、金属化合物等が挙げられる。このような化合物としては、アルカリ金
属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシ
ド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしく
は組み合わせて用いることができる。
【0024】
アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、
水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、
炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリ
ン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム
、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム
、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リ
チウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム
塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩
、リチウム塩等が例示される。
【0025】
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ス
トロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウ
ム、炭酸バリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭
酸水素ストロンチウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム
、二酢酸バリウム等が例示される。塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチル
ホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチル
エチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチ
ルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジル
ホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ
素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム
塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム
塩等が挙げられる。
【0026】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホス
フィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホス
フィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
含窒素化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモ
ニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニ
ウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリー
ル基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が挙げられる。また、トリエチルアミン
、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾ
ール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる
。また、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモ
ニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフ
ェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
【0027】
金属化合物としては亜鉛アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、
アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が例示される
。これらの化合物は1種または2種以上併用してもよい。
これらの重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10
−9〜1
×10
−2当量、好ましくは1×10
−8〜1×10
−3当量、より好ましくは1×10
−7〜1×10
−5当量の範囲で選ばれる。
【0028】
また、必要によって反応後期に触媒失活剤を添加してもよい。使用する触媒失活剤とし
ては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩
、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウ
ム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアン
モニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
またスルホン酸のエステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エ
チル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フ
ェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエン
スルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル
等が好ましく用いられる。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニ
ウム塩が最も好ましく使用される。
【0029】
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化
合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好まし
くは0.5〜50モルの割合で、より好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好まし
くは0.8〜5モルの割合で使用することができる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、用途や必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安
定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸
収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
【0030】
〈光学部材〉
本発明のポリカーボネート樹脂からなる光学部材は、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、溶融押出成形、溶融押出製膜、キャスティング製膜等の任意の方法により成形、加工することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂からなる光学部材とは、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、レンズ、プリズム、光学膜、基盤、光学フィルター、ハードコート膜等である。
【0031】
〈光学レンズ〉
本発明のポリカーボネート樹脂からなる光学レンズは、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、溶融押出成形、キャスティング等の任意の方法により成形、加工することができるが、射出成形が特に好適である。射出成形の成形条件は特に限定されないが、成形機のシリンダ温度は180〜320℃が好ましく、220〜300℃がより好ましく、260〜290℃がよりいっそう好ましい。また、金型温度は70〜150℃が好ましく、80〜140℃がより好ましく、90〜130℃がよりいっそう好ましい。射出圧力は100〜2,000kgf/cm
2が好ましく、500〜1,700kgf/cm
2が好ましく、700〜1,500kgf/cm
2がよりいっそう好ましい。また、成形加工前に、本発明のポリカーボネート樹脂を100〜130℃で1〜12時間事前乾燥することが好ましい。
【0032】
本発明のポリカーボネート樹脂からなる光学レンズは、屈折率が高いことを特徴とする。一般的に、屈折率が高いと、同一屈折率を有するレンズエレメントをより曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくできる。その結果、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏心感度を低減したり、レンズ厚みを薄くして軽量化することが可能になる。
【0033】
本発明のポリカーボネート樹脂からなる光学レンズは、光学歪みが小さいことを特徴とする。一般的なビスフェノールAタイプのポリカーボネートからなる光学レンズは光学歪みが大きい。成形条件によりその値を低減することも不可能ではないが、その条件幅は非常に小さく成形が非常に困難となる。本発明の樹脂は、樹脂の配向により生じる光学歪みが極めて小さく、また成形歪みも小さいため、成形条件を厳密に設定しなくても良好な光学レンズを得ることができる。
【0034】
本発明のポリカーボネート樹脂からなる光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
【0035】
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、流動性が高いため、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05〜3.0mm、より好ましくは0.05〜2.0mm、さらに好ましくは0.1〜1.0mmである。また、直径が1.0mm〜20.0mm、より好ましくは1.0〜10.0mm、さらに好ましくは3.0〜10.0mmである。また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズであることが好ましい。
【0036】
本発明のポリカーボネート樹脂からなる光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
また、本発明のポリカーボネート樹脂からなる光学レンズは、金型成形、切削、研磨、レーザー加工、放電加工、エッジングなど任意の方法により成形されてもよい。さらには、金型成形がより好ましい。
【0037】
〈透明フィルム〉
本発明のポリカーボネート樹脂からなる透明フィルムは、溶融押出製膜、キャスト製膜等の任意の方法により成形、加工することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂からなる透明フィルムとは、ディスプレイ用フィルム、延伸フィルム、加飾フィルム等である。
溶融押出製膜においては、Tダイを用いて樹脂を押し出し冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。押出機のシリンダ温度は、180〜320℃が好ましく、200℃〜300℃の範囲がより好ましい。また、成形加工前に、本発明のポリカーボネート樹脂を100〜130℃で1〜12時間事前乾燥することが好ましい。
【0038】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、有機溶媒に対する溶解性が良好なので、溶液キャスト製膜も適用することが出来る。溶媒としては塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジオキソラン、ジオキサン等が好適に用いられる。
本発明のポリカーボネート樹脂からなる透明フィルムの厚みは、30〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは40〜400μmの範囲である。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
各実施例と比較例で評価用サンプルは以下(a)の方法で調製した。
(a)フィルム
得られた樹脂3gを塩化メチレン50mlに溶解させ、ガラスシャーレ上にキャストする。室温にて十分に乾燥させた後、120℃以下の温度にて8時間乾燥して、厚さ約100μmのキャストフィルムを作成した。
【0040】
評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:重合終了後に得られた樹脂を十分に乾燥し、該樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(η
sp)を測定した。
(2)共重合比:重合終了後に得られた樹脂を日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。
(3)屈折率(nd)、アッベ数(ν):(a)の手法により作成したフィルムをATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて、25℃における屈折率(波長:589nm)及びアッベ数を測定した。
(4)配向複屈折:(a)の手法により作成したフィルムを長さ7cm、幅1.5cmにカットした後、長手方向の両端をチャックに挟み(チャック間4.5cm)、ポリカーボネート樹脂のTg+10℃で2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
(5)耐折り曲げ性:(a)の手法により作成したフィルムから長さ40mm、幅10mmの長方形の試験片を切り出した。万力の左右の接合面の間隔を40mmに開き、前記試験片の両端を接合面内に固定した。次に左右の接合面の間隔を2mm/秒以下の速度で狭めていき、折れ曲がった試験片全体を該接合面内で圧縮した。そして、接合面間が完全に密着する迄に試験片が折れ曲がり部で2片(又は3片以上の破片)に割れた際、万力の接合面の移動を停止し、接合面の間隔を測定した。
(6)鉛筆硬度:(a)の手法により作成したフィルムをJIS K5600−5−4に準拠し、750g加重で鉛筆硬度の測定を行い、表面に目視で傷がつかなかった鉛筆の硬度を評価結果とした。鉛筆は三菱鉛筆Uni(商品名)を使用した。
【0041】
(光学レンズの成形)
作成したポリカーボネート樹脂100重量部に、BASF製IRGAFOS168を0.05重量部、理研ビタミン(株)製リケマールS−100Aを0.1重量部加えて、ベント付きφ15mm単軸押出機を用いてペレット化した。その後、120℃で8時間乾燥した後、住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて、成形温度290℃、金型温度140℃にて、厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmの光学レンズを射出成形した。評価は、500ショット成形した際に、成形片、スプルー、ランナーが折れ、金型に樹脂が残ってしまう等で連続成形を止めた回数を評価し、結果を表1に記載した。
【0042】
実施例1
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン(以下“OPBPEF”と省略することがある)159.49部、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(以下“BPEF”と省略することがある)13.16部、ジフェニルカーボネート(以下“DPC”と省略することがある)63.62部、及び水酸化ナトリウム0.012×10
−3部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。完全溶解後、20分かけて20kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、ジャケットを260℃に保持したまま、80分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で5〜30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出し、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性、鉛筆硬度を測定し、結果を表1に記載した。
【0043】
実施例2
OPBPEFを131.14部、BPEFを34.20部とする以外は、実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性、鉛筆硬度を測定し、結果を表1に記載した。
【0044】
実施例3
OPBPEFを124.05部、BPEFを39.47部とする以外は、実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性、鉛筆硬度を測定し、結果を表1に記載した。
【0045】
実施例4
OPBPEFを88.61部、BPEFを65.78部とする以外は、実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性、鉛筆硬度を測定し、結果を表1に記載した。
【0046】
実施例5
OPBPEFを53.16部、BPEFを92.09部とする以外は、実施例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性、鉛筆硬度を測定し、結果を表1に記載した。
【0047】
比較例1
OPBPEFを177.21部、BPEFを0部とする以外は、実施例1と同様の方法で、WO2014/073496号公報の実施例12相当のポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性、鉛筆硬度を測定し、結果を表1に記載した。
【0048】
比較例2
OPBPEFを0部、BPEFを131.55部とする以外は、実施例1と同様の方法で、WO2014/073496号公報の実施例6相当のポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性、鉛筆硬度を測定し、結果を表1に記載した。
【0049】
比較例3
OPBPEFを159.49部、BPEFを9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下、“BCF”と省略する事がある)に変更し、11.36部、DPCを64.91部とする以外は、実施例1と同様の方法で、特開2015−86265号公報の実施例4相当のポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性、鉛筆硬度を測定し、結果を表1に記載した。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1〜5で得られたポリカーボネート樹脂は、高屈折率、低複屈折であり、かつ、表面硬度と耐折り曲げ性のバランスに優れる。また、連続成形性も良い。これに対して、比較例1及び3で得られたポリカーボネート樹脂は、脆いため、耐折り曲げ性及び連続成形性に劣る。また、比較例2で得られたポリカーボネート樹脂は、屈折率及び鉛筆硬度に劣る。