(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、所望温度への迅速な設定調整が可能である、保育器のための暖房制御装置と、対応する保育器並びに対応する暖房制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題は、請求項1の特徴部分に記載された本発明による暖房制御装置、請求項7の特徴部分に記載された本発明による保育器、請求項9の特徴部分に記載された本発明による方法によって解決される。本発明のさらに別の好適な態様は従属請求項にも記載されている。
【0005】
本発明による、乳児用保育器のための暖房制御装置は、保育器チャンバ内部の温度の少なくとも1つの第1の温度測定値と、前記保育器の暖房装置の温度の少なくとも1つの第2の温度測定値とを検出するための温度検出装置を備えている。前記暖房制御装置は、第1の動作モードと第2の動作モードとを有している。前記第1の動作モードにおいては、カスケード制御が行われ、前記保育器チャンバ内部の温度に対する目標値が設定され、第1の制御ステップにて、前記暖房装置の温度に対する目標値が、前記保育器チャンバ内部の温度に対する目標値と、前記少なくとも1つの第1の温度測定値とに依存して算出され、第2の制御ステップにて、前記暖房装置に対する制御量が、前記暖房装置の温度に対する前記目標値と、前記少なくとも1つの第2の温度測定値とに依存して算出される。前記第2の動作モードにおいては、第1の制御ステップにて、前記暖房装置の前記温度に対する目標値が前記少なくとも1つの第1の温度測定値に依存せずに算出され、第2の制御ステップにて、前記暖房装置に対する制御量が、前記暖房装置の前記温度に対する前記目標値と、前記少なくとも1つの第2の温度測定値とに依存して算出される。
【0006】
このようにして、暖房装置の制御が、2つの異なる動作モードで可能となる。第2の動作モードは、保育器チャンバ内部の温度の第1の温度測定値には依存していないため、この動作モードは、保育器チャンバの開いた状態での動作に適しており、これによって保育器が開いた状態での暖房装置の温度の迅速かつ正確な設定調整が提供される。それに対して第1の動作モードは、保育器チャンバが閉じられた状態での動作に適している。カスケード制御により、前記2つの動作モードは、共に良好に置き換え可能である。
【0007】
好適には、前記暖房制御装置は、乳児の体温の制御が可能である。ここでの前記温度検出装置は、前記乳児の体温の測定値を検出し、さらに前記保育器チャンバ内部の空気温度の測定値を前記第1の温度測定値として検出するように構成されている。さらに前記第1の動作モードの前記第1の制御ステップは、カスケード制御を含んでおり、但し前記保育器チャンバ内部の前記温度に対する前記目標値は、前記乳児の前記体温に対する目標値であり、前記第1の制御ステップの第1のカスケードステップにて、前記保育器チャンバ内部の前記空気温度に対する前記目標値が、前記乳児の前記体温に対する前記目標値と前記乳児の前記体温の前記測定値とに依存して算出される。前記第1の制御ステップの第2のカスケードステップでは、前記暖房装置の前記温度に対する目標値が、前記保育器チャンバ内部の前記空気温度に対する前記目標値と、前記保育器チャンバ内部の前記空気温度の前記測定値とに依存して算出される。
【0008】
また前記暖房制御装置においては、前記温度検出装置は、前記暖房装置内部の空気温度の測定値を検出し、さらに加熱素子の温度の測定値を第2の温度測定値として検出するように構成可能であり、さらに前記第1の動作モード及び/又は前記第2の動作モードの前記第2の制御ステップがカスケード制御を含んでおり、但し前記暖房装置の前記温度に対する前記目標値は、前記暖房装置内部の前記空気温度に対する目標値であり、前記第2の制御ステップの第1のカスケードステップにて、前記加熱素子の前記温度に対する目標値が、前記暖房装置内部の前記空気温度に対する前記目標値と、前記暖房装置内部の前記空気温度の前記測定値とに依存して算出され、さらに前記第2の制御ステップの第2のカスケードステップにて、前記暖房装置に対する前記制御量は、前記加熱素子の前記温度に対する前記目標値と、前記加熱素子の前記温度の前記測定値とに依存して算出される。
【0009】
前記暖房装置の前記温度に対する前記目標値の好適な計算は、次のような暖房制御装置によって可能となる。すなわち、前記温度検出装置が、前記暖房装置内部の前記空気温度の測定値を検出し、さらに加熱素子の温度の測定値を第2の温度測定値として検出するように構成され、さらに前記第1の動作モード及び/又は前記第2の動作モードの前記第2の制御ステップがカスケード制御を含んでおり、但し前記暖房装置の前記温度に対する前記目標値は、前記暖房装置内部の前記空気温度に対する目標値であり、前記第2の制御ステップの第1のカスケードステップにて、前記加熱素子の前記温度に対する目標値が、前記暖房装置内部の前記空気温度に対する前記目標値と、前記暖房装置内部の前記空気温度の前記測定値とに依存して算出され、さらに前記第2の制御ステップの第2のカスケードステップにて、前記暖房装置に対する前記制御量は、前記加熱素子の前記温度に対する前記目標値と、前記加熱素子の前記温度の前記測定値とに依存して算出される、暖房制御装置によって可能となる。
【0010】
前記暖房制御装置は、前記暖房装置の送風機を開ループ制御又は閉ループ制御するように構成されていてもよい。この場合は前記第2の動作モードにおいて、前記暖房装置の内部における熱交換を保証するために、最小空気流が前記暖房装置によって設定調整される。このようにして、第2の動作モードにおける最適な制御機能が保証される。
【0011】
さらに、前記保育器チャンバの開かれた状態又は閉じられた状態を識別する、保育器状態検出装置が設けられていてもよく、その場合は、前記暖房制御装置は、前記暖房装置を、前記閉じられた状態においては前記第1の動作モードで動作させ、前記開かれた状態においては前記第2の動作モードで動作させる。
【0012】
本発明による乳児用保育器は、乳児を収容するための保育器チャンバと、但し前記保育器チャンバは、開かれた状態では周囲と接触し、閉じられた状態では、少なくとも部分的に周囲に対して熱的に遮断され、前記保育器チャンバが開かれた状態にあるのか又は閉じられた状態にあるのかを識別する保育器状態センサと、前記保育器チャンバ内の空気を加熱するための暖房装置とを含み、前記暖房装置は、空気流入センサを備え、前記空気流入センサは、前記暖房装置から前記保育器チャンバ内へ流入する空気の空気温度を検出しており、前記暖房装置は、前記保育器状態センサによって、前記保育器チャンバが開かれた状態にあることを検出した場合に、前記空気流入センサによって測定された、前記暖房装置から前記保育器チャンバ内へ流入する空気の空気温度を、予め定められた目標値に対応させて制御するように構成されている。このようにして、前記暖房装置は、開かれた状態においては、前記暖房装置から前記保育器チャンバ内へ流入する空気の空気温度を、自動的に目標値に制御している。それにより、前記暖房装置の効果的でかつ正確な予熱が、開かれた状態において可能となる。またこれにより、閉じられた状態への復帰の際にも、保育器チャンバ内部の空気の迅速な加熱が可能となる。
【0013】
さらに本発明によれば、乳児用保育器、とりわけ上述したような加熱暖房装置を備えている保育器も提供される。
【0014】
本発明による乳児用保育器の暖房制御方法は、保育器チャンバの開かれた状態又は閉じられた状態を検出するステップと、カスケード制御の第1の動作モード又は第2の動作モードを、前記保育器チャンバの状態に依存して選択するステップとを含み、但し前記閉じられた状態では暖房制御装置が第1の動作モードで動作され、前記開かれた状態では暖房装置(24)が第2の動作モードで動作される。前記第1の動作モードにおいては、カスケード制御が行われ、前記保育器チャンバ内部の温度に対する目標値が設定され、第1の制御ステップにて、前記暖房装置の温度に対する目標値が、前記保育器チャンバ内部の温度に対する目標値と、前記保育器チャンバ内部の温度の少なくとも1つの第1の温度測定値とに依存して算出され、さらに第2の制御ステップにて、前記暖房装置に対する制御量が、前記暖房装置の温度に対する前記目標値と、少なくとも1つの第2の温度測定値とに依存して算出される。前記第2の動作モードにおいては、第1の制御ステップにて、前記暖房装置の前記温度に対する目標値が、前記保育器チャンバ内部の温度に依存せずに算出され、さらに第2の制御ステップにて、前記暖房装置に対する制御量が、前記暖房装置の前記温度に対する前記目標値と、前記少なくとも1つの第2の温度測定値とに依存して算出される。
【0015】
この方法は、上述した利点を有する保育器の暖房制御を可能にする。
【0016】
本発明のさらなる利点及び特徴は、以下の明細書と関連する図面から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び
図2には、乳児12を収容するための保育器チャンバ14を備えた乳児12用保育器10が示されている。
【0019】
保育器10はカバー16を有しており、該カバー16は、保育器チャンバ14の上方の領域を形成している。
図1での前記カバー16は、閉じられた状態で示されており、保育器チャンバ14はこの状態では実質的に、周囲に対して熱的に遮断されている。このカバー16は、当該の閉じられた位置から、
図2に示されている開かれた位置へもたらすことが可能である。この開かれた位置において、乳児は、保育器チャンバ14内へ載置され、乳児と両親若しくは看護者との間のコンタクトが容易に可能である。この開かれた位置では、保育器チャンバ14は周囲と直接コンタクトする。
【0020】
保温ランプ18が設けられており、この保温ランプ18は、前記カバー16の開かれた位置において、保育器チャンバ14と乳児への熱放射が可能である。
【0021】
保育器チャンバ14はさらに側面窓20も有しており、保育器チャンバ14が閉じられた状態であっても、この窓20を通して、当該保育器チャンバ14内部へのアクセスが可能である。
【0022】
保育器状態センサ22は、保育器チャンバが開かれた状態にあるのか又は閉じられた状態にあるのかを識別するために設けられている。
【0023】
図3には、保育器チャンバ14と暖房装置24の詳細図が示されている。この暖房装置24は、保育器チャンバ14内の空気の暖めのために設けられている。暖房装置24は、空気吸い込みチャネル26を含んでおり、この空気吸い込みチャネル26は、保育器チャンバ14の頭部側端部及び足部側端部から送風機28まで続いている。送風機28からは、その出口側開口部において、空気供給チャネル30が保育器チャンバ14の長手側に沿って設けられており、この空気供給チャネル30を介して暖房装置24内で暖められた空気が、保育器チャンバ14内へ流入する。
【0024】
前記空気吸い込みチャネル26内及び/又は前記空気供給チャネル30内には、加熱素子32が設けられており、この加熱素子32が、チャネル内を案内される空気に熱を与え、それによって空気が暖められる。図示の実施形態では、これらの加熱素子32はプレート状に構成されており、それらに沿って空気流が案内される。これらのプレートの下側には、当該プレートと熱伝導的に結合された複数の電気的な加熱ロッドが設けられている。
【0025】
しかしながら、前述したのとは異なる空気チャネル26、30、送風機28及び加熱素子32の他の幾何学的配置構成が設けられていてもよい。例えば、個別の制御若しくは一括した制御が可能な複数の加熱素子32を設けることも可能である。
【0026】
前記暖房装置24は、さらに、前記暖房装置24から前記保育器チャンバ14内へ流入する空気の空気温度を検出する空気流入センサ34を有する。図示の実施形態では、この空気流入センサ34は、空気供給チャネル30内に配置され、好適には、出口側開口部の近傍に配置されている。また様々な空気流入センサ34を様々な領域に配置することも可能である。それにより、例えば均等な温度分布の検査が可能になる。
【0027】
前記暖房装置24は、前記カバー16の開かれた状態において、空気流入センサ34によって測定された、前記暖房装置24から前記保育器チャンバ14内へ流入する空気の空気温度を、予め定められた目標値に対応させるような制御がなされるように構成されている。前記カバー16の状態は、保育器状態センサ22によって自動的に識別される。このようにして、前記暖房装置24は、保育器チャンバ14の開かれた状態において、前記暖房装置24から保育器チャンバ14内へ流入する空気の空気温度を自動的に目標値に制御する。それにより、前記暖房装置24の効果的でかつ正確な予熱が前記開かれた状態において可能となり、これによって、閉じられた状態への復帰の際にも、保育器チャンバ14内部の空気の迅速な加熱が可能となる。
【0028】
前記保育器10は、さらに、乳児12の身体において、乳児12の体温(皮膚温度)を検出する体温センサ36と、保育器チャンバ14内部の空気温度を検出する内部温度センサ38と、前記加熱素子32の温度を検出する加熱素子温度センサ40と、前記保育器の周囲温度を検出する外部温度センサ42とを有している。
【0029】
前記保育器状態センサ22、前記空気流入センサ34、前記体温センサ36、前記内部温度センサ38、前記加熱素子温度センサ40、及び前記外部温度センサ42は、前記暖房装置24の暖房制御装置44に接続されている。
【0030】
図4には、この暖房制御装置44の概略図が示されている。
【0031】
最初にこの暖房制御装置44の基本原理を、
図4に基づいて、破線で示されている制御要素と共に説明する。
【0032】
前記暖房制御装置44は、前記保育器チャンバ内部の温度の少なくとも1つの第1の温度測定値T1と、前記保育器の暖房制御装置44の温度の少なくとも1つの第2の温度測定値T2とを検出するための温度検出装置46を含んでいる。
【0033】
図示の実施形態では、第1の温度測定値T1は、乳児の体温の測定値T
S及び/又は保育器チャンバ14内部の空気温度の測定値T
iであってもよい。
【0034】
第2の温度測定値T2は、暖房装置24内部の空気温度の測定値T
c及び/又は加熱素子32の温度の特性値T
hであってもよい。
【0035】
温度検出装置46は、相応のセンサによって、すなわち、空気流入センサ34、体温センサ36、内部温度センサ38、加熱素子温度センサ40及び/又は対応する外部センサのためのインターフェースによって構成されていてもよい。
【0036】
前記暖房制御装置44は、第1の動作モードと第2の動作モードを有する。
【0037】
第1の動作モードでは、カスケード制御が行われる。ここでは保育器チャンバ内部の温度に対する目標値R1が設定される。
【0038】
第1の制御ステップ48では、暖房装置の温度に対する目標値R2が、保育器チャンバ内部の温度に対する目標値R1と、少なくとも1つの第1の温度測定値T1とに依存して算出される。
【0039】
算出された目標値R2は、カスケード制御の第2の制御ステップ50に転送され、そこで暖房装置24に対する制御量Rが、暖房装置の温度に対する目標値R2と、少なくとも1つの第2の温度測定値T2とに依存して算出される。
【0040】
このようにしてカスケード制御は次のような2つの制御ステップを備え、第1の制御ステップでは、保育器チャンバ14内部の温度の閉ループ制御が形成され、第2の制御ステップでは、暖房装置内部の温度の閉ループ制御が形成される。前記カスケード制御は迅速な制御を可能にし、そこでは各制御ループ毎に所定の温度限界値が設けられる。例えば、乳児への過剰な暖房作用を回避するために、保育器チャンバ14内部の空気温度に対して、39℃の最大温度が設けられる。それに対して暖房装置24内部では、例えば200℃の最大温度、好適には150℃の最大温度が設けられる。
【0041】
この場合、各制御ループでは、目標値と測定値との間の差異を最小にすることが行われる。
【0042】
前述した第1の動作モードは、保育器チャンバ14の閉じられた状態に適している。なぜならこの状態では、周囲から熱的に遮断された保育器チャンバ14内部で、安定した温度が形成されるからである。何らかの支障、例えば側面窓20の開放による温度低下は、第1の動作モードにおける閉ループ制御によって迅速に補償可能である。
【0043】
最後に、四段階のカスケード制御を伴う具体的な実施形態を説明する。この実施形態は
図4において実線と共に示されており、そこでは前述した2つの制御ステップ48,50がそれぞれ二段階のカスケード制御に分割されている。
【0044】
この目的のために、温度検出装置は、乳児12の体温の測定値T
S、保育器チャンバ14内部の空気温度の測定値T
i、暖房装置24内部の空気温度の測定値T
c、及び加熱素子32の温度の測定値を検出するように構成されている。
【0045】
保育器チャンバ14内部の温度に対する目標値R1は、乳児の体温に対する目標値R
sである。このようにして、乳児の体温はコントロールされる。
【0046】
第1の制御ステップ48の第1のカスケードステップ52では、保育器チャンバ14内部の空気温度に対する目標値R
iが、乳児12の体温に対する目標値R
sと、乳児12の体温の測定値T
Sとに依存して算出される。
【0047】
第1の制御ステップ48の第2のカスケードステップ54では、暖房装置24内部の空気温度に対する目標値R
cが、暖房装置24の温度に対する目標値R2として算出される。この暖房装置24内部の空気温度に対する目標値R
cは、保育器チャンバ14内部の空気温度に対する目標値R
iと、保育器チャンバ14内部の空気温度の測定値T
iとに依存して算出される。
【0048】
第2の制御ステップ50の第1のカスケードステップ56では、加熱素子32の温度に対する目標値R
hが、暖房装置24内部の空気温度に対する目標値R
cと、暖房装置24内部の空気温度の測定値T
cとに依存して算出される。
【0049】
第2の制御ステップ50の第2のカスケードステップ58では、暖房装置24に対する制御量Rが、加熱素子32の温度に対する目標値R
hと、加熱素子32の温度の測定値T
hとに依存して算出される。
【0050】
前記暖房装置24の制御量Rとは、例えば、加熱素子32の電気的加熱ロッドに対する電流値である。
【0051】
一つには、乳児12の体温の制御のもとでは、生物学的プロセスが重要な役割を果たしているので、当該制御においては、非線形的な作用を相応に強く考慮することが可能である。さらにとりわけ保育器チャンバ14内部の温度においては、強い影響、例えば保育器チャンバ14内部へのアクセスのための側面窓20の開放による影響が考慮されてもよい。それに対して、暖房装置24内部の温度の制御ステップと加熱素子32の温度の制御ステップに対しては、単純な線形関係と僅かな影響しか予測されない。カスケード制御により、個々の制御ステップは、状況に応じてそのつど適応化可能である。
【0052】
さらにまた第2の動作モードを、以下に説明するようにカスケード制御内へ組み込むことも比較的容易である。
【0053】
第2の動作モードでは、第1の制御ステップ60において、暖房装置24の温度に対する目標値R2が、ないしは暖房装置24の空気温度に対する目標値R
cが、少なくとも1つの第1の温度測定値T2に、ないしは乳児の体温に対する測定値T
Sに、及び保育器チャンバ内部の空気温度の測定値T
iに依存することなく算出される。
【0054】
第2の動作モードの第2の制御ステップ50では、第1の動作モードに類似して、暖房装置24に対する制御量Rが、暖房装置24の温度に対する目標値R2と少なくとも1つの第2の温度測定値T2とに依存して算出される。
【0055】
第2の動作モードの第2の制御ステップ50が第1の動作モードに類似して行われることによって、これらの2つの動作モードを1つの共通の制御装置で簡単に組み合わせることが可能になる。第2の動作モードは、保育器チャンバ内部の温度の第1の温度測定値には依存しないので、この動作モードは、開かれた保育器チャンバの動作に適する。これにより、保育器の開かれた状態における暖房装置の温度の迅速で正確な設定が達成される。
【0056】
図示の実施形態では、暖房装置24の温度に対する目標値R2の計算、ないしは、暖房装置24内部の空気温度に対する目標値R
cの計算が、保育器チャンバ14内部の温度に対する予め設定された目標値R
iと、周囲温度の測定値T
aとに依存して算出される。この目的のために、温度検出装置46は、保育器10の周囲温度の測定値T
aを検出するように構成される。この周囲温度の測定値T
aは、
図3に示した実施形態では、外部温度センサ42によって検出される。
【0057】
周囲温度は、制御の際に達成可能な最も低い温度と見なすことが可能である。なぜなら、一般に、保育器に対して冷却は想定されないからである。温度差の比(T
c−T
a)/(T
i−T
a)は、定常的なケースにおいて一定であり、動的なケースにおいてもT
c及びT
iの類似した動特性のもとでほぼ一定である;
(T
c−T
a)/(T
i−T
a)=k (1)
但し前記kは、定数である。
【0058】
この比からは、保育器チャンバ14内部の温度に対する目標値R
iの設定により、暖房装置24内部の空気温度に対する目標値R
cが算出され得る。
【0059】
代替的若しくは補足的に、暖房装置24内部の空気温度に対する目標値R
cないしは暖房装置24の温度に対する目標値R2は、保温ランプ18の放射出力P
IRから算出することが可能である。
【0060】
保育器チャンバ14の開かれた状態、いわゆる開放ケアでは、乳児12は、心身の状態や衣類に応じて所定の保温環境が必要である。保温ランプ18は、周囲温度に対し、出力P
IRに比例して体温T
Sを高める。ここでは以下の式、
T
S=P
IRk
I2s+T
a (2)
が有効である。
【0061】
閉じられた状態、いわゆる遮蔽ケアでは、空気温度T
iは、ほとんど所望の体温T
Sに相応する。ここで後から必要となる暖房装置24内部の温度T
cは、前述した温度比から以下の式のように、
T
c=(T
i−T
a)k+T
a (3)
算出される。但し前記項T
iは以下の式のように同等の項T
Sに置き換えられてもよい。すなわち、
T
c=(T
S−T
a)k+T
a (4)
である。さらに、前記式(2)の代入により、以下の式、
T
c=(P
IRk
I2s)k+T
a (5)
が得られる。従って開放ケアにおける目標温度R
cは、保温ランプ18の放射出力P
IRと周囲温度とに依存して、以下の式、
R
c=(P
IRk
I2s)k+T
a (6)
から得られる。
【0062】
このようにして、保育器の開かれた状態において、暖房装置24は、測定された周囲温度と、好適には保温ランプ18の放射出力P
IR若しくは乳児12の体温T
Sとに依存して、次のように動作させることが可能である。すなわち、閉じられた状態における保育器チャンバ14内の所望の空気温度に相応するようにである。このようにして、暖房装置24、すなわち加熱素子32及び空気チャネル26、30の予熱が行われ、それによって、開かれた状態から閉じられた状態への入れ替えの際に、所望の温度への迅速でかつ信頼性の高い設定が、前述の制御カスケードによって可能となる。
【0063】
第2の動作モードは、保温ランプ18の、医者自身が保温出力を設定するマニュアルモードも、放射出力P
IRが乳児の体温T
Sに依存して制御される閉ループ制御モードも、組み合わせて適用することが可能である。
【0064】
第2の動作モードでは、前述の実施例の変化例において、暖房装置24の温度に対する目標値R2を表す、暖房装置24内部の空気温度に対する目標値R
cが、第1の動作モードにおいて暖房装置24の温度に対する目標値R2の計算のために用いられる(すなわち保育器チャンバ14内部の空気温度の測定値T
i)第1の温度測定値T1に依存することなく算出される。
【0065】
暖房装置24の送風機28は、この場合暖房制御装置44によって開ループ制御又は閉ループ制御され、その際には、第2の動作モードにおいて、暖房装置24内部の加熱素子32と空気チャネル壁と対応する温度センサとの間の熱交換を保証するために、最小空気流が暖房装置24によって設定される。
【0066】
図示の実施形態によれば、暖房制御装置44はさらに保育器状態検出装置を備えており、この保育器状態検出装置は、例えば保育器状態センサ22によって、若しくは、対応する外部センサ用のインターフェースによって構成されていてもよい。この保育器状態検出装置は、保育器チャンバ14の開かれた状態若しくは閉じられた状態を識別するものである。識別された保育器チャンバ14の状態に応じて、暖房制御装置44は、暖房装置24を、閉じられた状態においては第1の動作モードで、そして開かれた状態では第2の動作モードで動作させる。このようにして動作モードの自動適応化が行われる。