(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
(表面処理液)
本発明の表面処理液は、無機材料または樹脂材料の表面処理に使用され、前記の化学式(I)で示されるアゾールシラン化合物を有効成分として含有するが、このアゾールシラン化合物は、化学式(I)におけるYが、
-CO-NH-(CH
2)
3-Si(OR)
3である場合のアゾールシラン化合物(以下、アゾールシラン化合物(Ia)と云う)、
-CO-NH-(CH
2)
3-Si(OR)
2(OH)である場合のアゾールシラン化合物(以下、アゾールシラン化合物(Ib)と云う)、
-CO-NH-(CH
2)
3-Si(OR)(OH)
2である場合のアゾールシラン化合物(以下、アゾールシラン化合物(Ic)と云う)および
-CO-NH-(CH
2)
3-Si(OH)
3である場合のアゾールシラン化合物(以下、アゾールシラン化合物(Id)と云う)を包含する。
なお、本発明の表面処理液を、単に表面処理液または処理液と云うことがある。
【0020】
即ち、アゾールシラン化合物(Ia)は、前記の化学式(I)においてnが0である場合のアゾールシラン化合物である。
同様に、アゾールシラン化合物(Ib)は、nが1である場合のアゾールシラン化合物であり、アゾールシラン化合物(Ic)は、nが2である場合のアゾールシラン化合物であり、アゾールシラン化合物(Id)は、nが3である場合のアゾールシラン化合物である。
【0021】
アゾールシラン化合物(Ib)〜(Id)は、表面処理液中に存在するアゾールシラン化合物(Ia)が、加水分解されて生成する種であり、これらは、トリアルコキシ体のアゾールシラン化合物(Ia)と共に、シランカップリング剤の成分として好適なものである。また、アゾールシラン化合物(Ib)〜(Id)は、例えば、表面処理液から揮発分を除去することにより表面処理液から抽出して用いることができる。
【0022】
本発明の実施においては、表面処理液中の成分の原料として、アゾールシラン化合物(Ia)を使用することが好ましい。
【0023】
このアゾールシラン化合物(Ia)は、
2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}、
2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}、
2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−ベンズイミダゾール}、
2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−ベンズイミダゾール}、
2,2′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−ベンズイミダゾール}、
2,2′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−ベンズイミダゾール}、
3,3′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}、
3,3′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}、
3,3′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}、
3,3′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}、
4,4′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,3−トリアゾール}、
4,4′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,3−トリアゾール}、
5,5′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−テトラゾール}および
5,5′−ジチオビス{1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−テトラゾール}を包含する。
なお、本発明の実施においては、これらから選択される2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
当該アゾールシラン化合物(Ia)は、対応する前駆体の化学式(II)で示されるジチオジアゾール化合物と、化学式(III)で示されるイソシアナトプロピルシラン化合物を、適量の反応溶媒中において適宜の反応温度および反応時間にて反応させることにより合成することができる。
【0026】
【化3】
(式中、Rは前記と同様である。)
【0027】
前記の前駆体となるジチオジアゾール化合物は、
2,2′−ジチオジ(1H−イミダゾール)、
2,2′−ジチオジ(1H−ベンズイミダゾール)、
2,2′−ジチオビス(5−アミノ−1H−ベンズイミダゾール)、
3,3′−ジチオジ(1H−1,2,4−トリアゾール)、
3,3′−ジチオビス(5−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール)、
4,4′−ジチオジ(1H−1,2,3−トリアゾール)および
5,5′−ジチオジ(1H−テトラゾール)を包含する。
【0028】
前記のイソシアナトプロピルシラン化合物は、
3−イソシアナトプロピルトリメトキシシランおよび
3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランを包含する。
【0029】
前記の前駆体を2,2′−ジチオジ(1H−イミダゾール)とした場合の反応例を、スキーム(A)に示す。
【0030】
【化4】
(式中、Rは前記と同様である。)
【0031】
本発明の表面処理液は、前記のアゾールシラン化合物(Ia)と水を混合することにより調製されるが、水と共に可溶化剤を併用してもよい。
なお、水と可溶化剤を併用する場合の表面処理液の調製方法については、当該アゾールシラン化合物(Ia)と水を混合した後に可溶化剤を加えてもよいし、該化合物と水および可溶化剤の混合液を混合してもよいし、該化合物と可溶化剤を混合した後に水を加えてもよい。
また、表面処理液の調製に使用される水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水が好ましい。
【0032】
前記の可溶化剤としては、
メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、2−ピロリドン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、炭酸ジメチル、エチレンカーボネート、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、グリセリン酸、マロン酸、コハク酸、レブリン酸、フェノール、安息香酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピリジンが好ましい。
なお、本発明の実施においては、これらからなる群から選択される2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
アゾールシラン化合物(Ia)は、前述のとおり、水と接触すると加水分解されるが、この加水分解の態様をスキーム(B)に示した。
このスキーム(B)においては、前記のアゾールシラン化合物(Ia)〜(Ic)の有するシリル基が加水分解される態様、即ち、トリアルコキシシリル基が、漸次、ジアルコキシヒドロキシシリル基、ジヒドロキシアルコキシシリル基、トリヒドロキシシリル基に変化する様子が簡略的に示される。
【0035】
一般に、分子中にアルコキシシリル基を有する物質は、シランカップリング剤として作用することが知られている。
例えば、銅と樹脂材料との接着を例に挙げると、本発明の実施において、表面処理液中の成分として好ましく使用されるアゾールシラン化合物(Ia)は、分子中にアゾール環とアルコキシシリル基(−Si−OR)を有しており、アゾール環は、樹脂および銅と相互作用し、化学結合を形成する。
また、アルコキシシリル基は加水分解を受けて、ヒドロキシシリル基(−Si−OH)に変換され、このヒドロキシシリル基は銅表面に点在する酸化銅と化学結合する。
従って、樹脂材料と表面処理液を接触させることにより、樹脂層の表面に形成される化学式(I)で示されるアゾールシラン化合物に由来する化成皮膜は、この化成皮膜の表面に銅を接着させた場合には、樹脂層に直に銅を接着させる場合に比べて、銅と樹脂材料との接着性を高めることができる。
【0036】
本発明の実施においては、表面処理液中におけるアゾールシラン化合物(I)の濃度が、トリアルコキシ体のアゾールシラン化合物(Ia)の濃度に換算して、0.001〜10重量%であることが好ましく、0.01〜5重量%であることがより好ましい。
この濃度が0.001重量%未満である場合には、接着性の向上効果が十分ではなく、この濃度が10重量%を超える場合には、接着性の向上効果がほぼ頭打ちとなり、アゾールシラン化合物の使用量が増えるばかりで経済的ではない。
【0037】
ところで、表面処理液中に生成したヒドロキシシリル基を有するアゾールシラン化合物(Ib)〜(Id)は、徐々に、互いに反応して脱水縮合し、ヒドロキシシリル基がシロキサン結合(Si−O−Si)を形成し(スキーム(B)参照)、水に溶け難いシランオリゴマー(スキーム(B)中の化学式(e)で示される基を有するアゾールシラン化合物)に変換される。なお、化学式(e)で示される基のXは、繰り返し単位の数を表す整数である。
【0038】
表面処理液中におけるシランオリゴマーの生成量が多くなると、不溶解分が析出して(処理液が白濁し)、処理槽や処理槽に接続された配管、処理液中に浸漬された処理液の温度や液面を検出するためのセンサー類に付着し、円滑な表面処理が阻害されるおそれがある。
これを避けるために、前記の可溶化剤を表面処理液中に含有させることが好ましい。
可溶化剤の含有量については、水100重量部に対して0.1〜90重量部の割合とすることが好ましく、1〜50重量部の割合とすることがより好ましい。
【0039】
本発明の表面処理液の調製においては、アゾールシラン化合物(Ia)の加水分解を促進させる為に、酢酸や塩酸等の酸、あるいは、水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリを使用してもよい。
【0040】
同様に、表面処理液の安定性や化成皮膜の均一性を向上させるために、塩素イオン、臭素イオン等のハロゲンイオンや銅イオン、鉄イオン、亜鉛イオン等の金属イオンを生成する物質を使用することもできる。
【0041】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、公知のカップリング剤を併用してもよい。公知のカップリング剤としては、チオール基(メルカプト基)、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、アミノ基、クロロプロピル基等を有するシラン系カップリング剤が挙げられる。
【0042】
このようなシラン系カップリング剤の例としては、
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプトシラン化合物、
ビニルトリクロルシラン、
ビニルトリメトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン化合物、
p−ビニルフェニルトリメトキシシラン等のビニルフェニルシラン化合物、
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン化合物、
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシシラン、
メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、
メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシシラン化合物、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、
N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物、
3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシラン化合物、
3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピルシラン化合物、
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィドシラン化合物、
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシラン化合物等を挙げることができる。
その他、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等も挙げることができる。
【0043】
(表面処理方法)
本発明の表面処理液で処理される無機材料としては、例えば、シリコン、セラミックや、フィラーとして使用されるカーボン、無機塩およびガラス等が挙げられる。
具体的には、シリコン、炭化ケイ素、シリカ、ガラス、珪藻土、珪酸カルシウム、タルク、硝子ビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト等のケイ素化合物、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化チタン等の酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム、石膏等の硫酸塩、チタン酸バリウム等のチタン酸塩、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、鱗片状黒鉛(天然黒鉛)、膨張黒鉛、膨張化黒鉛(合成黒鉛)等のグラファイト類、活性炭類、炭素繊維類、カーボンブラック等が挙げられる。
これらの無機材料の中では、シリコン、セラミック(アルミナ、炭化ケイ素,窒化アルミニウム,窒化ケイ素およびチタン酸バリウム)、ガラスおよび無機塩が好ましい。
【0044】
本発明の表面処理液で処理される樹脂材料の例としては、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリブタジエン樹脂、オレフィン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂等が挙げられ、これらを混合したり、互いに変性したりして、組み合わせたものであってもよい。また、これらの樹脂の重合度に特に制限はなく、表面処理後に、適宜重合(硬化)したものであってもよい。
これらの樹脂材料の中では、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂およびポリイミド樹脂が好ましい。
【0045】
本発明の表面処理液で処理した無機材料または樹脂材料と接着させる金属としては、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、スズ、鉄、銀、金およびこれらの合金を好ましく挙げることができる。
銅合金の例としては、銅を含む合金であれば特に限定されず、例えば、Cu−Ag系、Cu−Te系、Cu−Mg系、Cu−Sn系、Cu−Si系、Cu−Mn系、Cu−Be−Co系、Cu−Ti系、Cu−Ni−Si系、Cu−Zn−Ni系、Cu−Cr系、Cu−Zr系、Cu−Fe系、Cu−Al系、Cu−Zn系、Cu−Co系等の合金を挙げることができる。
また、その他の合金では、アルミニウム合金(Al−Si合金)、ニッケル合金(Ni−Cr合金)、鉄合金(Fe−Ni合金、ステンレス)等を挙げることができる。
これらの金属の中では、銅および銅合金(以下、両者を指して、単に銅ということがある)がより好ましい。
【0046】
また、本発明の表面処理液で処理した無機材料または樹脂材料と接着させる金属とは、プリント配線板、リードフレーム等の電子デバイス、装飾品、建材等に用いられる箔(例えば、電解銅箔、圧延銅箔)、めっき膜(例えば、無電解銅めっき膜、電解銅めっき膜)、蒸着法、スパッタ法、ダマシン法等により形成された薄膜や、粒状、針状、繊維状、線状、棒状、管状、板状等の用途・形態において用いられるものである。なお、近年の高周波の電気信号が流れる銅配線の場合には、銅の表面は平均粗さが0.1μm以下の平滑面であることが好ましい。銅の表面に、前処理として、ニッケル、亜鉛、クロム、スズ等のめっきを施してもよい。
【0047】
本発明の表面処理液を無機材料または樹脂材料の表面に接触させる方法としては、特に制限はなく、浸漬、塗布、スプレー等の手段を採用することができる。
表面処理液と無機材料または樹脂材料を接触させる時間(処理時間)については、1秒〜10分とすることが好ましく、5秒〜3分とすることがより好ましい。処理時間が1秒未満の場合には、無機材料または樹脂材料の表面に形成される化成皮膜の膜厚が薄くなり、材質の異なる材料間の接着力が十分に得られず、一方10分より長くしても、化成皮膜の膜厚に大差はなく、接着性の向上も期待できない。
また、表面処理液を無機材料または樹脂材料の表面に接触させる際の処理液の温度については、5〜50℃とすることが好ましいが、前記の処理時間との関係において、適宜設定すればよい。
【0048】
本発明の表面処理液と無機材料または樹脂材料を接触させた後は、水洗してから乾燥してもよいし、水洗せずに乾燥させてもよい。
乾燥温度は、室温〜150℃とすることが好ましい。
水洗に使用する水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水が好ましいが、水洗の方法や時間には特に制限なく、例えば、浸漬やスプレー等の手段によって適宜の時間洗浄すればよい。
【0049】
本発明の表面処理液を無機材料または樹脂材料の表面に接触させる前に、当該無機材料または樹脂材料の表面に、酸洗処理、アルカリ洗処理、粗化処理または耐熱処理から選択される少なくとも1つの前処理を行ってもよい。
【0050】
前記の酸洗処理は、無機材料または樹脂材料の表面に付着した油脂成分を除去する為に行うものである。この酸洗処理には、塩酸系溶液、硫酸系溶液、硝酸系溶液、硫酸−過酸化水素系溶液、有機酸系溶液、無機酸−有機溶媒系溶液、有機酸−有機溶媒系溶液等の溶液を用いることができる。
【0051】
前記のアルカリ洗処理は、無機材料または樹脂材料の表面に付着した油脂成分を除去する為に行うものである。このアルカリ洗処理には、水酸化ナトリウム系溶液、水酸化カリム系溶液、水酸化マグネシウム系溶液、水酸化カルシウム系溶液、アミン系溶液、無機アルカリ−有機溶媒系溶液、アミン−有機溶媒系溶液等の溶液を用いることができる。
【0052】
前記の粗化処理は、無機材料または樹脂材料の表面に凹凸形状を形成して、そのアンカー効果により金属、無機材料および樹脂材料から選択される2つの材料の接着性(密着性)を高める為に行うものである。この粗化処理には、デスミア法、プラズマエッチング法、金属スパッタリング法、無電解めっき法、電気めっき法、防錆処理、酸化・還元法、ブラシ研磨法、ジェットスクラブ法等の方法を採用することができる。
【0053】
デスミア法においては、例えば、過マンガン酸カリウム塩系や過マンガン酸ナトリウム塩系のデスミア剤を使用することができる。また、デスミア法による粗化処理前後に膨潤処理や中和処理を行っても良い。
金属スパッタリング法や無電解めっき法においては、無機材料または樹脂材料の表面に微細な金属粒子を析出させることにより、無機材料または樹脂材料の表面に凹凸を形成させる。
【0054】
前記の耐熱処理は、無機材料または樹脂材料の表面に、ニッケル、ニッケル−リン、亜鉛、亜鉛−ニッケル、銅−亜鉛、銅−ニッケル、銅−ニッケル−コバルトまたはニッケル−コバルトから選択される少なくとも1種の皮膜が形成される。
この皮膜の形成においては、公知の無電解めっき法を採用することができるが、蒸着その他の手段であってもよい。
【0055】
本発明の表面処理液を無機材料または樹脂材料の表面に接触させる前に、銅イオンを含む水溶液を無機材料または樹脂材料の表面に接触させてもよい。この銅イオンを含む水溶液は、無機材料または樹脂材料の表面に形成される化成皮膜の厚みを均一にさせる機能を有する。
銅イオン源としては、水に溶解する銅塩であれば特に限定されず、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、ギ酸銅、酢酸銅等の銅塩を挙げることができる。銅塩を水に可溶化するために、アンモニアや塩酸等を併用してもよい。
【0056】
本発明の表面処理液を無機材料または樹脂材料の表面に接触させた後に、酸性あるいはアルカリ性の水溶液を無機材料または樹脂材料の表面に接触させてもよい。この酸性あるいはアルカリ性の水溶液も、前記の銅イオンを含む水溶液と同様に、無機材料または樹脂材料の表面に形成される化成皮膜の厚みを均一にさせる機能を有する。
酸性水溶液およびアルカリ性水溶液は、特に限定されないが、酸性水溶液としては、硫酸、硝酸、塩酸等の鉱酸や、ギ酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、アミノ酸等の有機酸を含む水溶液等を挙げることができる。アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア、エタノールアミン、モノプロパノールアミン等のアミン類を含む水溶液を挙げることができる。
【0057】
本発明の表面処理液を前記の無機材料または樹脂材料の表面に接触させる前あるいは接触させた後に、プラズマ、レーザー、イオンビーム、オゾン、加熱もしくは加湿等の処理を行い、無機材料または樹脂材料の表面を改質させてもよい。また、プラズマ、レーザー、イオンビーム、パーミス・ブラシ等の機械研磨やドリル等の加工方法を用いて、無機材料または樹脂材料の樹脂・イオン残渣除去を目的とした洗浄を行ってもよい。
【0058】
本発明の表面処理液を接触させた無機材料または樹脂材料の表面に、金属めっきあるいは、実装する工程において、プラズマ、レーザー、イオンビーム、オゾン、加熱もしくは加湿等の処理を行い、表面改質や、残渣除去を目的とした洗浄を行ってもよい。
【0059】
本発明の表面処理液を接触させた無機材料または樹脂材料の表面に、金属めっきあるいは、実装する工程において、密着性向上を目的とした有機皮膜や金属皮膜等のプライマー処理を行ってもよい。
【0060】
前記の前処理および後処理は、適宜に組み合わせて実施してもよい。
【0061】
本発明の表面処理液は、前記の無機材料または樹脂材料の表面を処理するために用いることができる。本発明の表面処理液を用いて無機材料または樹脂材料の表面を処理することで、無機材料または樹脂材料の表面に化成皮膜を形成し、他の材料との接着性を高めることができる。
【0062】
本発明において、前記の金属、無機材料、樹脂材料からなる群から選択される2つの材料を本発明の表面処理液を用いて接着させることができる。本発明の表面処理液により形成される化成皮膜(化成皮膜層)を介することで、互いの親和性を向上させることができるため、材質の異なる材料同士であってもより強固に接着することができる。
【0063】
(接着方法)
接着方法としては、公知の方法により行うことができる。
無機材料および/または樹脂材料の表面に、本発明の表面処理液を接触させて、何れか一方の材料の表面あるいは両方の材料の表面に化成皮膜を形成し、2つの材料を塗布、圧着、混合等の手段や、接着剤、接着シート(フィルム)の利用あるいはこれらの手段を組合わせて接着する方法が挙げられる。
また、無機材料または樹脂材料の表面に、本発明の表面処理液を接触させて化成皮膜を形成し、形成した化成皮膜の一部または全体に金属を圧着等の手段や、接着剤、接着シート(フィルム)の利用あるいはこれらの手段を組合わせて接着する方法が挙げられる。
【0064】
本発明の表面処理液を用いることにより、前述のように2つの材料、特に材質の異なる2つの材料を接着させた複合材料が得られるので、そのような複合材料が具備されている各種電気部品、電子部品等の電子デバイスやプリント配線板に好適に利用することができる。
【0065】
なお、本発明の表面処理液は、半硬化または硬化したプリプレグ、ソルダーレジスト、半硬化または硬化したドライフィルム(絶縁樹脂層)と、銅回路(銅配線層)との間の接着性(密着性)を高めることを目的とする樹脂材料の表面処理に好適であり、銅配線層に接して絶縁樹脂層を有するプリント配線板において、銅配線層と絶縁樹脂層との間の接着性を高めることができる。
【0066】
前記のプリント配線板は、本発明の表面処理液と絶縁樹脂層の表面を接触させて、その後水洗・乾燥した後、該絶縁樹脂層と銅配線層表面を接着させることにより作製することができる。この接触の方法については、前述のとおりであり、表面処理液中への絶縁樹脂層の浸漬または該処理液による絶縁樹脂層表面へのスプレー等が簡便かつ確実であり好ましい。
また、前記の水洗の方法についても特に制限はないが、洗浄水中への絶縁樹脂層の浸漬または洗浄水による絶縁樹脂層表面へのスプレーが簡便かつ確実であり好ましい。
前記の絶縁樹脂層と銅配線層を接着させる方法には、公知の方法、例えば半硬化の樹脂材料を貼り付ける方法等を採用することができる。
多層プリント配線板を作製する場合には、絶縁樹脂層と銅配線層を接着させるプロセスを所望の回数繰り返し、上下の配線を導通させるために、ビアホールを形成させればよい。
【0067】
前記の銅配線については、無電解めっき法、電解めっき法、蒸着法、スパッタ法、ダマシン法等どのような方法で作製されたものでもよく、インナービアホール、スルーホール、接続端子等を含んだものでもよい。
【0068】
また、本発明に使用する「銅」とは、プリント配線板、リードフレーム等の電子デバイス、装飾品、建材等に用いられる箔(電解銅箔、圧延銅箔)、めっき膜(無電解銅めっき膜、電解銅めっき膜)、線、棒、管、板等の用途・形態において用いられるものである。なお、近年の高周波の電気信号が流れる銅配線の場合には、銅の表面は平均粗さが0.1μm以下の平滑面であることが好ましい。
【0069】
(絶縁性組成物)
化学式(I)で示されるアゾールシラン化合物は、シランカップリング剤として、樹脂材料および/または無機材料と混合させることにより絶縁性組成物とすることができる。
また、前記化学式(I)で示されるアゾールシラン化合物を有機溶剤等に溶解して、樹脂材料および/または無機材料と混合することにより絶縁性組成物を得ることもできる。
【0070】
絶縁性組成物中の当該アゾールシラン化合物の含有量は、0.001〜10重量%であることが好ましく、0.01〜5重量%であることがより好ましい。該アゾールシラン化合物の含有量が絶縁性組成物中0.001重量%未満である場合には、接着性の向上効果が十分ではなく、この濃度が10重量%を超える場合には、接着性の向上効果がほぼ頭打ちとなり、該アゾールシラン化合物の使用量が増えるばかりで経済的ではない。
前記絶縁性組成物は公知の方法により作製することができる。例えば、当該アゾールシラン化合物を有機溶剤に溶解させ、固形または液状の樹脂材料と混合することにより、絶縁性組成物を作製することができる。また、当該アゾールシラン化合物を液状の樹脂材料に直接添加して混合して、絶縁性組成物を作製してもよい。さらに、従来公知の無機材料を前記の成分に添加して、絶縁性組成物を作製することができる。有機溶剤としては、塗料あるいは塗料の希釈液として使用される通常の有機溶剤を使用することができる。
【0071】
本発明の絶縁性組成物は、高い強度を有する絶縁材料を与えるので、各種電気部品、電子部品等の電子デバイスやプリント配線板等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において使用した主原料は次のとおりである。
【0073】
[主原料]
・2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}(参考例1に合成例を示した)
・3,3′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール(参考例2に合成例を示した)
・3,3′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}(参考例3に合成例を示した)
・4,4′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,3−トリアゾール}(参考例4に合成例を示した)
・イミダゾールシラン化合物(参考例5に合成方法を示した)
・3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、品名「KBM−903」)
・エチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業社製、試薬)
・ソルダーレジスト(アクリレート・エポキシ樹脂、太陽インキ製造社製、品名「PSR−4000AUS308」)
【0074】
[参考例1]
<2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}の合成>
2,2′−ジチオジ(1H−イミダゾール)2.0g(10mmol)を、脱水N,N−ジメチルホルムアミド45gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン4.1g(20mmol)を滴下した。
発熱が収まった後、40℃にて6時間撹拌し、反応液を減圧濃縮し、褐色液体として、化学式(I−1)で示される標題のアゾールシラン化合物6.5g(10mmol、収率100%)を得た。
【0075】
【化6】
【0076】
[参考例2]
<3,3′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールの合成>
3,3′−ジチオジ(1H−1,2,4−トリアゾール)4.02g(20.1mmol)を、脱水N,N−ジメチルホルムアミド150gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン9.49g(46.2mmol)を滴下した。その10分後にトリエチルアミン0.92g(9.1mmol)を加え、60℃にて8時間撹拌した。
反応液を減圧濃縮し、淡黄色液体として、化学式(I−2)で示される標題のアゾールシラン化合物12.3g(20.1mmol、収率100%)を得た。
【0077】
【化7】
【0078】
[参考例3]
<3,3′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}の合成>
3,3′−ジチオビス(5−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール)2.00g(8.7mmol)を脱水N,N−ジメチルホルムアミド45gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン3.56g(17.3mmol)を滴下した。その5分後にトリエチルアミン0.3g(3mmol)を加え、55℃にて5時間撹拌した。
反応液を減圧濃縮し、得られた濃縮物を脱水メタノールより2回再結晶し、減圧下に乾燥して、白色結晶として、化学式(I−3)で示される標題のアゾールシラン化合物3.65g(5.7mmol、収率65.5%)を得た。
【0079】
【化8】
【0080】
[参考例4]
<4,4′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,3−トリアゾール}の合成>
4,4′−ジチオジ(1H−1,2,3−トリアゾール)8.67g(43.3mmol)を、脱水N,N−ジメチルホルムアミド50gに加えて、室温にて撹拌して溶解し、これに、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン18.7g(91.1mmol)を滴下し、その20分後にトリエチルアミン1.84g(18.2mmol)を加え、室温下、15時間撹拌した。
反応液を減圧濃縮した後、液状の濃縮物をヘキサン130mLで洗浄し、減圧下に乾燥して、褐色液体として、化学式(I−4)で示される標題のアゾールシラン化合物26.0g(42.6mmol、収率98.3%)を得た。
【0081】
【化9】
【0082】
[参考例5]
<イミダゾールシラン化合物の合成>
イミダゾール3.4g(0.05mol)を95℃で融解し、アルゴン雰囲気下で撹拌しながら、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン11.8g(0.05mol)を30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに95℃の温度で1時間反応させた。
反応生成物は透明な橙色の粘稠な液体として得られた(特開平5−186479号公報から引用)。
注:特開平5−186479号公報によると、反応生成物は、化学式(IV−1)〜(IV−3)で示されるイミダゾールシラン化合物の混合物とされている。
【0083】
【化10】
【0084】
<接着性の評価試験>
以下の実施例および比較例において行った樹脂材料と金属の接着性の評価試験(a)〜(c)は、以下のとおりである。
【0085】
[接着性の評価試験(a)]
(1)樹脂材料
樹脂材料として、ガラス布エポキシ樹脂含浸プリプレグ(FR−4グレード)を用いた。
(2)樹脂材料の処理
樹脂材料の表面に、表面処理液をスプレー方式による処理を行った。
(3)プリント配線板の作製
処理した樹脂材料に、電解銅箔(厚み:35μm)S面を積層プレスし、樹脂材料と銅を接着してプリント配線板を作製した。
(4)接着性の評価
このプリント配線板から、「JIS C6481(1996)」に従って、幅10mmの試験片を作製し、銅箔の引き剥がし強さを測定した。
【0086】
[接着性の評価試験(b)]
(1)無機材料の処理
表面処理液100重量部に対して硫酸バリウムを10重量部添加して5分間撹拌した。続いて、シランカップリング剤が担持された硫酸バリウムを濾過し、100℃のオーブンで1時間乾燥した。
(2)樹脂組成物の調製
硬化前のソルダーレジスト100重量部に対して、シランカップリング剤が担持された硫酸バリウムを1重量部添加し、30分間撹拌を行い、樹脂組成物を調製した。
(3)プリント配線板の作製
得られた樹脂組成物を、電解銅箔(厚み:35μm)のS面上に塗布した後、150℃のオーブンで60分間加熱して、この樹脂組成物の硬化物(樹脂材料)と銅箔が接着したプリント配線板を作製した。
(4)接着性の評価
このプリント配線板から、「JIS C6481(1996)」に従って、幅10mmの試験片を作製し、銅箔の引き剥がし強さを測定した。
【0087】
[接着性の評価試験(c)]
(1)絶縁性組成物の調製
硬化前のソルダーレジスト100重量部に対して、後述の加水分解物1重量部を添加し、30分間撹拌を行い、絶縁性組成物を調製した。
(2)プリント配線板の作製
得られた絶縁性組成物を、電解銅箔(厚み:35μm)のS面上に塗布した後、乾燥(80℃/30分)、ポストキュア(150℃/60分)を行って、この絶縁性組成物の硬化物(樹脂材料)と銅箔が接着したプリント配線板を作製した。
(3)接着性の評価
このプリント配線板から、「JIS C6481(1996)」に従って、幅10mmの試験片を作製し、銅箔の引き剥がし強さを測定した。
【0088】
[実施例1]
2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}10gに、エチレングリコールモノブチルエーテル200gを加え、続いて水790gを加えて、室温にて2時間撹拌し、表面処理液(以下、処理液Aという)を調製した。
この処理液Aについて、当該アゾールシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(a)および(b)を行った。
続いて、処理液A中の揮発分を減圧下にて除去して、アゾールシラン化合物の加水分解物を得た。得られた加水分解物について、接着性の評価試験(c)を行った。
得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0089】
[実施例2]
『2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}』の代わりに、『3,3′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}』を用いた以外は、実施例1と同様にして表面処理液(以下、処理液Bという)を調製した。
この処理液Bについて、当該アゾールシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(a)および(b)を行った。
続いて、処理液B中の揮発分を減圧下にて除去して、アゾールシラン化合物の加水分解物を得た。得られた加水分解物について、接着性の評価試験(c)を行った。
得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0090】
[実施例3]
『2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}』の代わりに、『3,3′−ジチオビス{5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール}』を用いた以外は、実施例1と同様にして表面処理液(以下、処理液Cという)を調製した。
この処理液Cについて、当該アゾールシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(a)および(b)を行った。
続いて、処理液C中の揮発分を減圧下にて除去して、アゾールシラン化合物の加水分解物を得た。得られた加水分解物について、接着性の評価試験(c)を行った。
得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0091】
[実施例4]
『2,2′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−イミダゾール}』の代わりに、『4,4′−ジチオビス{1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,3−トリアゾール}』を用いた以外は、実施例1と同様にして表面処理液(以下、処理液Dという)を調製した。
この処理液Dについて、当該アゾールシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(a)および(b)を行った。
続いて、処理液D中の揮発分を減圧下にて除去して、アゾールシラン化合物の加水分解物を得た。得られた加水分解物について、接着性の評価試験(c)を行った。
得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0092】
[比較例1]
『3−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール』の代わりに、『イミダゾールシラン化合物』を用いた以外は、実施例1と同様にして表面処理液(以下、処理液Eという)を調製した。
この処理液Eについて、当該イミダゾールシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(a)および(b)を行った。
続いて、処理液E中の揮発分を減圧下にて除去して、イミダゾールシラン化合物の加水分解物を得た。得られた加水分解物について、接着性の評価試験(c)を行った。
得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0093】
[比較例2]
『3−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール』の代わりに、『3−アミノプロピルトリメトキシシラン』を用いた以外は、実施例1と同様にして表面処理液(以下、処理液Fという)を調製した。
この処理液Fについて、3−アミノプロピルトリメトキシシランのメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(a)および(b)を行った。
続いて、処理液F中の揮発分を減圧下にて除去して、3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解物を得た。得られた加水分解物について、接着性の評価試験(c)を行った。
得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0094】
[比較例3]
シランカップリング剤を用いることなく、エチレングリコールモノブチルエーテル200gと水790gを混合し、室温にて2時間撹拌して、表面処理液(以下、処理液Gという)を調製した。
この処理液Gについて、接着性の評価試験(a)および(b)を行ったところ、得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
また、接着性の評価試験(c)については、ソルダーレジストに何も加えずに実施した。得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0095】
【表1】