【文献】
KERSTIN FORTMUELLER,Prostate,米国,2011年 5月 1日,Vol. 71, No. 6,pp. 588-596
【文献】
H C WHITAKER,Oncogene,2013年11月18日,Vol. 33, No. 45,pp. 5274-5287
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記二重特異性抗体が、癌細胞のアポトーシスを誘導し、癌幹細胞を死滅させるか若しくはその数を低減させ、及び/又は循環癌細胞を死滅させるか又はその数を低減させる、請求項1〜4のいずれか一項記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(発明の詳細な説明)
以下に詳述される本発明は、癌、例えば本発明の疾患を、治療又は予防するために、治療用組成物を、対象、例えば哺乳動物対象へ投与することを包含している。本発明はまた、哺乳動物対象における癌、例えば本発明の疾患の臨床スクリーニング、診断及び予後のため、特定の治療的処置に最も反応すると考えられる患者を確定するため、癌、例えば本発明の疾患の治療の結果をモニタリングするため、薬剤のスクリーニング及び薬剤開発のための方法及び組成物も提供する。
【0046】
本発明は、NAALADL2タンパク質が、いくつかの癌において発現されるという知見に基づく。特に、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌及び膵臓癌の細胞膜におけるNAALADL2タンパク質の発現を裏付けるデータが、本明細書に包含されている。また、免疫組織化学分析は、前立腺癌、結腸直腸癌及び乳癌において強力な染色を示し、食道癌、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、胃癌及び子宮癌においてより軽度の染色を示した。したがって、NAALADL2に向けられた抗体は、これらの癌及びNAALADL2の発現を示す他の癌型の治療及び診断において有用性があり得る。
【0047】
本明細書において使用される用語「対象」とは、動物、好ましくは哺乳動物をいう。哺乳動物対象は、非-ヒト哺乳動物であってよいが、一般にヒト成人などの、ヒトである。
【0048】
対象は概して、生存対象である。しかし、本発明の使用、方法及び組成物は、生存対象のスクリーニング、診断及び予後に特に適しているが、これらはまた、例えば、同じ疾患を発症するリスクのある家族の一員を特定するために、対象における死後診断に使用してもよい。
【0049】
本明細書において使用される用語「患者」とは、1以上の本発明の疾患を有するか又は有することが疑われる対象をいう。
【0050】
本明細書において使用される用語「本発明のタンパク質」とは、不活性N-アセチル化-α-結合型酸性ジペプチダーゼ-様タンパク質2(GeneID:254827)をいい、これは本明細書においてNAALADL2と称される。このタンパク質は、様々な癌において差次的に発現され、したがって、これらの癌の親和性-ベースの療法のための新規標的を提供することがわかっている。NAALADL2タンパク質のヒト配列は、配列番号:1に供されている。用語NAALADL2(タンパク質の文脈において)は、そのアミノ酸配列が、配列番号:1で供されたアミノ酸配列又はそれらの誘導体若しくは変種、特にそれらの天然のヒト誘導体若しくは変種からなるか又はこれらを含むタンパク質を包含している。
【0051】
このタンパク質は、実施例1に記載する方法及び装置(例えば、膜タンパク質抽出物の液体クロマトグラフィー−質量分析)によって、癌患者由来の癌組織試料の膜タンパク質抽出物において同定されている。ペプチド配列は、SWISS-PROT及びTrEMBLデータベース(www.expasy.orgで利用可能な、スイスバイオインフォマティクス研究所(SIB)及びヨーロッパバイオインフォマティクス研究所(EBI)の管理下にある。)と比較され、エントリ:Q58DX5、不活性N-アセチル化-α-結合型酸性ジペプチダーゼ-様タンパク質2、-NAALADL2が同定された。このタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、アクセッション番号NM_207015でみられ、配列番号:3で供される。
【0052】
SWISS-PROTによると、NAALADL2は、ペプチダーゼM28ファミリーの一回貫通タンパク質である。このタンパク質は、1個の膜貫通領域からなり、且つ配列番号:1のアミノ酸143-795の間の653個のアミノ酸の細胞外尾部(配列番号:19)を有する。NAALADL2は、WO2009028521において先行して開示されており、そこではsiRNA標的化PIKB及びNAALADL2遺伝子を使用し、前立腺癌細胞の細胞成長を阻害している。本発明者らは、免疫組織化学により、癌細胞の表面上にNAALADL2発現を示し、正常前立腺細胞には示さず、このことは、これらの癌患者を含む、患者におけるNAALADL2タンパク質(配列番号:1-2)に対する親和性-ベースの療法は、治療効果を有することを示唆している。
【0053】
免疫組織化学分析はまた、前立腺癌、結腸直腸癌及び乳癌において強力な染色を示し、食道癌、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、胃癌及び子宮癌においてより軽度の染色を示した。後者の癌も、好ましい本発明の疾患である。
【0054】
NAALADL2は、断片、特にエピトープ含有断片、例えばその抗原性若しくは免疫原性断片及びその誘導体、特にタンパク質の細胞外ドメイン(例えば、細胞外尾部又はループ)を含む断片として有用である。抗原性若しくは免疫原性断片を含むエピトープ含有断片は、通常、長さ12アミノ酸以上、例えば20アミノ酸以上、例えば50又は100アミノ酸以上である。断片は、完全なタンパク質の長さの95%以上、例えば完全なタンパク質の長さの90%以上、例えば75%又は50%又は25%又は10%以上であってもよい。
【0055】
あるいは、本明細書中において使用され又は言及されるタンパク質/ポリペプチドは、本明細書に具体的に列挙/記載するそれらのタンパク質/ポリペプチド、又は、これらと少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98若しくは99%のアミノ酸配列同一性若しくは類似性を有する変種又は誘導体に限定され得る。アミノ酸配列同一性/類似性の割合は、適切なデフォルトのパラメータを使用する、任意の好適なアルゴリズム、例えばBLAST、CLUSTALにより決定されてよい。
【0056】
したがって、タンパク質又はポリペプチドの文脈において用語「NAALADL2」とは、配列番号:1-2のいずれかと少なくとも90%又は95%の配列同一性を有し且つそのタンパク質がNAALADL2と本質的に同じ組織分布を有する配列番号:1-2のいずれかで供されるアミノ配列、又は、それらの誘導体若しくは変種からなるか又はこれを含むタンパク質をいう。
【0057】
核酸の文脈において、用語「NAALADL2」とは、そのヌクレオチド配列が、配列番号:1-2のいずれかで供されるアミノ配列、又は配列番号:1-2のいずれかと少なくとも90%又は95%の配列同一性を有し且つそのタンパク質がNAALADL2タンパク質と本質的に同じ組織分布を有するそれらの誘導体若しくは変種を含むタンパク質をコードしている核酸をいう。
【0058】
核酸の文脈における用語「NAALADL2」とはまた、そのヌクレオチド配列が、配列番号:3-4のいずれかで供される配列、又は配列番号:3-4のいずれかと少なくとも90%又は95%の配列同一性を有し且つNAALADL2タンパク質と本質的に同じ組織分布を有するタンパク質をコードしているそれらの誘導体若しくは変種を含む核酸をいう。
【0059】
抗原性若しくは免疫原性断片を含むNAALADL2のエピトープ含有断片は、患者において関連する免疫応答を誘発することができる。NAALADL2をコードするDNAは、その断片、例えばその免疫原性断片などのNAALADL2の断片をコードするDNAとしても有用である。NAALADL2をコードする核酸(例えばDNA)の断片は、完全なコード領域の長さの95%以上、例えば完全なコード領域の長さの90%以上、例えば75%又は50%又は25%又は10%以上であってもよい。核酸(例えば、DNA)の断片は、36ヌクレオチド以上、例えば60ヌクレオチド以上、例えば150又は300ヌクレオチド以上の長さであってもよい。
【0060】
NAALADL2の誘導体には、1以上(例えば1〜20、例として15アミノ酸など、又はタンパク質の全長を基準としたアミノ酸の数に対して最大20%、例として最大10%又は5%又は1%など)の欠失、挿入又は置換がなされた配列上の変種が含まれる。置換は、通常、保存的置換であり得る。誘導体は、通常、これらが誘導されるタンパク質と同じ生物学的機能を本質的に有する。誘導体は、通常、これらが誘導されるタンパク質と同等の抗原性であるか又は免疫原性である。誘導体は、通常、これらが誘導されるタンパク質の、リガンド結合活性若しくは活性受容体複合体形成能力のいずれか、又は好ましくはこれらの両方を有する。誘導体及び変種は一般に、NAALADL2と同じ組織分布を有する。
【0061】
また、タンパク質の誘導体には、例えば精製中に処理される、カルボキシメチル化された、カルボキシアミド化された、アセチル化されたタンパク質などの化学的に処理されたタンパク質も含まれる。
【0062】
一態様において、本発明は、NAALADL2又はNAALADL2を含有する組成物を提供する。このタンパク質は、単離された又は精製された形状であってよい。本発明は更に、NAALADL2をコードしている核酸及びNAALADL2をコードしている核酸を含む組成物を提供する。
【0063】
更なる態様において、対象において免疫応答を誘発し得る組成物であって、NAALADL2ポリペプチド及び/又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片、並びに1以上の適切な担体、賦形剤、希釈剤又はアジュバント(適切なアジュバントは後述する。)を含む組成物が提供される。
【0064】
免疫応答を誘発し得る組成物は、例えば、NAALADL2ポリペプチド又はその誘導体若しくは変種、及び/又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片を、任意に1以上の適切な担体、賦形剤、希釈剤又はアジュバントと一緒に含むワクチンとして提供することができる。
【0065】
別の態様において、本発明は、例えば1以上の本発明の疾患の治療又は予防のための、NAALADL2ポリペプチド、又はその1以上の断片若しくは誘導体若しくは変種を提供する。
【0066】
別の態様において、本発明は、例えば1以上の本発明の疾患の治療又は予防のための、NAALADL2ポリペプチド、又はその1以上の断片若しくは誘導体若しくは変種の使用を提供する。
【0067】
また本発明は、例えば1以上の本発明の疾患の治療又は予防のための医薬品の製造における、NAALADL2ポリペプチド、その1以上の断片若しくは誘導体若しくは変種の使用を提供する。
【0068】
一態様において、例えば1以上の本発明の疾患の治療又は予防のために、NAALADL2ポリペプチド、その1以上の断片若しくは誘導体若しくは変種の治療有効量を投与することを含む、治療方法が提供される。
【0069】
本発明は、対象における例えば本発明の疾患の治療若しくは予防の方法、又は例えば1以上の本発明の疾患に対し対象にワクチン接種する方法であって、NAALADL2ポリペプチド及び/又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片若しくは誘導体若しくは変種の有効量を、例えばワクチンとして対象に投与する工程を含む方法を更に提供する。
【0070】
別の態様において、本発明は、例えば本発明の疾患を治療する方法であって、(a)例えば本発明の疾患の発症若しくは発生を予防するために;(b)例えば本発明の疾患の進行を予防するために;又は、(c)例えば本発明の疾患の症状を改善するために、例えば本発明の疾患を有する患者において、NAALADL2の発現若しくは生物活性(又はこれらの両方)を調節する(例えば、上方制御するか若しくは下方制御する)か又は補完する、化合物の治療有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0071】
また更なる実施態様において、本発明は、癌の治療、好ましくは本発明の疾患の一つの治療において、同時、連続又は個別に投与するために、(a)NAALADL2、及び(b)抗癌剤を、個別に又は一緒に含む医薬品を提供する。
【0072】
NAALADL2は、例えば本発明の疾患を検出、予後、診断、又はモニタリングするために、又は薬剤開発のために使用することができる。
【0073】
本発明の別の態様によれば、本発明者らは、例えば本発明の疾患を検出、診断及び/又はスクリーニングするか又はその進行をモニタリングする方法、又は例えば対象における本発明の疾患に対する抗癌剤又は療法の効果をモニタリングする方法であって、NAALADL2、又はその1以上の断片の存在又はレベルを、又はNAALADL2をコードしている核酸の存在又はレベルを、又はNAALADL2の活性の存在又はレベルを検出することを含むか、又は該対象におけるそれらのレベルの変化を検出することを含む方法を提供する。
【0074】
本発明の別の態様によれば、本発明者らは、候補対象において、例えば本発明の疾患を検出、診断及び/又はスクリーニングする方法であって、該候補対象において、NAALADL2、又はその1以上の断片の存在を、又はNAALADL2をコードしている核酸の存在を、又はNAALADL2の活性の存在を検出することを含み、ここで(a)健常対象のレベルと比較しての候補対象における、NAALADL2若しくは該1以上のその断片のレベルの上昇、若しくはNAALADL2をコードしている核酸のレベルの上昇の存在、又はNAALADL2活性のレベルの上昇の存在、あるいは(b)健常対象において対応する検出不可能なレベルと比較しての候補対象における、NAALADL2若しくは該1以上のその断片の検出可能なレベル、若しくはNAALADL2をコードしている核酸の検出可能なレベルの存在、又はNAALADL2活性の検出可能なレベルの存在が、該対象において例えば本発明の疾患の存在を示す方法も提供する。
【0075】
本発明の別の態様によれば、本発明者らは、対象において、例えば本発明の疾患の進行をモニタリングする方法、又は、本発明の疾患に対する、例えば抗癌剤若しくは治療の効果をモニタリングする方法であって、第一の時点及び後の時点で、該候補対象において、NAALADL2、若しくはその1以上の断片の存在を、又はNAALADL2をコードしている核酸の存在を、又はNAALADL2の活性の存在を検出することを含み、該第一の時点での対象におけるレベルと比較しての、後の時点での対象におけるNAALADL2、若しくはその1以上の該断片の上昇又は下降したレベル、若しくはNAALADL2をコードしている核酸の上昇又は下降したレベルの存在、又はNAALADL2の活性の上昇又は下降したレベルの存在が、該対象における、例えば本発明の疾患の進行又は退行を示すか、又は本発明の疾患に対する例えば抗癌剤又は療法の有効又は無効を示す方法を提供する。
【0076】
NAALADL2に関して、例えば本発明の疾患を有しない対象由来の組織を分析することで得られた検出レベルに対する、例えば本発明の疾患を有する対象由来の組織試料を分析することで得られた検出レベルは、使用される特定の分析プロトコール及び検出技術に依存するであろう。したがって、本発明は、各研究室が、診断技術において従来のように、使用に際しての分析プロトコール及び検出技術に従い、例えば本発明の疾患を有しない対象における基準範囲を確立することを意図する。好ましくは、例えば本発明の疾患を有することがわかっている対象由来の少なくとも1つの陽性対照の組織試料、又は例えば本発明の疾患でないことがわかっている対象由来の少なくとも1つの陰性対照の組織試料(より好ましくは、陽性及び陰性対照試料の両方)が、分析される試験試料の各バッチに含まれる。
【0077】
本発明の一態様において、例えば本発明の疾患のスクリーニング又は診断のためのNAALADL2の発現を測定するため、本発明の疾患患者の予後を決定するため、本発明の疾患療法の有効性をモニタリングするため、又は薬剤開発のために、液体クロマトグラフィー-質量分析又は他の好適な方法を使用し、対象、好ましくは生存対象由来の本発明の疾患の組織試料を分析する。
【0078】
前述の方法のいずれにおいても、癌、例えば本発明の疾患を有する候補対象において検出され得るレベルは、健常対象におけるレベルよりも2倍以上高いことが好ましい。
【0079】
本発明の一実施態様において、対象(例えば、本発明の疾患を有することが疑われる対象)由来の組織試料は、NAALADL2検出のための液体クロマトグラフィー質量分析により分析される。本発明の疾患を有さない1又は複数の対象由来の組織(例えば、対照試料)又は先に決定された基準範囲と比べ、対象由来の組織中のNAALADL2の増加した存在量は、本発明の疾患の存在を示す。
【0080】
NAALADL2の断片、エピトープ含有断片、免疫原性断片又は抗原性断片に関して:
関連する癌の適用では、本発明の一態様において、これらは、実施例1のトリプシン処理配列と同定される配列を含む。
【0081】
本明細書に使用するNAALADL2は、実質的に混入タンパク質がない調製物、すなわち、存在するタンパク質全量の10%未満(例えば、5%未満、例として1%未満などの)が混入タンパク質である調製物で存在する場合、「単離」されている。混入タンパク質は、質量スペクトル分析によって決定されるとおり、単離されたNAALADL2の配列と顕著に異なるアミノ酸配列を有するタンパク質である。本明細書に使用する「顕著に異なる」配列は、実施例1で本明細書に記載のプロトコールにしたがって行われる質量スペクトル分析によって、混入タンパク質がNAALADL2から分離することを可能とするものである。
【0082】
本発明の診断及び予後方法において、NAALADL2は、当業者に公知の方法によりアッセイすることができ、この方法には、本明細書に記載する好ましい技術、キナーゼアッセイ、酵素アッセイ、結合アッセイ及び他の機能アッセイ、イムノアッセイ、及びウエスタンブロットが含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
あるいは、NAALADL2は、イムノアッセイで検出することができる。一実施態様において、イムノアッセイは、NAALADL2が存在する場合に結合(例えば、免疫特異的結合)が起こり得る条件下で、試験すべき対象由来の試料を、抗-NAALADL2抗体(又は他の親和性試薬)と接触させること、及び該親和性試薬による任意の結合(例えば、免疫特異的結合)の量を検出又は測定することにより、行われる。NAALADL2結合剤は、本明細書に教示する方法及び技術によって製造することができる。特定の実施態様において、NAALADL2は、免疫組織化学分析を用いて分析される。
【0084】
NAALADL2は、その断片、例えばそのエピトープ含有(例えば、免疫原性又は抗原性)断片の検出により、検出することができる。断片は、少なくとも10、より一般的には少なくとも20アミノ酸、例えば少なくとも50又は100アミノ酸、例えば少なくとも150又は200アミノ酸、例えば少なくとも300又は500のアミノ酸、例えば少なくとも700又は900アミノ酸の長さを有し得る。
【0085】
一実施態様において、組織切片における親和性試薬(例えば、抗体)の結合は、異常なNAALADL2局在、又はNAALADL2の異常なレベルを検出するのに使用することができる。具体的実施態様において、NAALADL2に対する抗体(又は他の親和性試薬)は、NAALADL2のレベルについて患者組織(例えば、前立腺、膀胱、乳房、食道、頭頸部、結腸直腸、肝臓、肺、卵巣、胃、子宮及び膵臓の組織)をアッセイするのに使用することができ、ここで異常なレベルのNAALADL2は、本発明の疾患を示す。本明細書に使用する「異常なレベル」とは、本発明の疾患を有しない対象におけるレベル、又は基準レベルと比較して増加したレベルを意味する。
【0086】
ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光イムノアッセイ及びタンパク質Aイムノアッセイなどの技術を用いる競合的及び非競合的アッセイ系を含むが、これらに限定されない、いずれかの適切なイムノアッセイを用いることができる。
【0087】
例えば、NAALADL2は、二段階サンドイッチアッセイによって、流体試料(例えば、血液、尿又は唾液)において検出することができる。第一段階において、捕捉試薬(例えば、抗-NAALADL2抗体又は他の親和性試薬)を使用して、NAALADL2を捕捉する。捕捉試薬は、場合により、固相上に固定することができる。第二段階において、直接又は間接的に標識された検出試薬を使用して、捕捉されたNAALADL2を検出する。一実施態様において、検出試薬はレクチンである。本目的のために、NAALADL2と同じコアタンパク質を有する他のアイソフォーム、又は抗体により認識される抗原決定基を共有する他のタンパク質に対してよりもNAALADL2に優先的に結合する、いずれかのレクチンを使用することができる。好ましい実施態様において、選択されたレクチンは、NAALADL2と同じコアタンパク質を有する該他のアイソフォーム、又は親和性試薬により認識される抗原決定基を共有する前述の他のタンパク質に対してよりも、少なくとも2倍大きな親和性、より好ましくは少なくとも5倍大きな親和性、更により好ましくは少なくとも10倍大きな親和性で、NAALADL2に結合する。本記載に基づいて、NAALADL2を検出することに適したレクチンは、当該技術分野で周知の方法によって容易に同定することができ、例えば、Gabius H-J及びGabius S (編), 1993,「レクチン及び糖鎖生物学(Lectins and Glycobiology)」の158-174頁におけるSumarらによる「疾患関連糖形態の指標としてのレクチン(Lectins as Indicators of Disease-Associated Glycoforms)」の158〜159頁の表Iに列挙されている1以上のレクチン(引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。)を試験することができる。代替的実施態様において、検出試薬は抗体(又は他の親和性試薬)であり、例えば、他の翻訳後修飾を特異的に(例えば、免疫特異的に)検出する抗体、例えばリン酸化されたアミノ酸に免疫特異的に結合する抗体である。かかる抗体の例としては、ホスホチロシンに結合する抗体(BD Transduction Laboratories社、カタログ番号:P11230-050/P11230-150; P11120; P38820; P39020)、ホスホセリンに結合する抗体(Zymed Laboratories社(South San Francisco, CA)製, カタログ番号61-8100)、及びホスホスレオニンに結合する抗体(Zymed Laboratories社、South San Francisco, CA, カタログ番号71-8200, 13-9200)が挙げられる。
【0088】
望ましいならば、NAALADL2をコードする遺伝子、関連する遺伝子、又は相補配列を含む関連する核酸配列若しくはサブ配列もハイブリダイゼーションアッセイに使用することができる。NAALADL2をコードするヌクレオチド、又は少なくとも8ヌクレオチド、好ましくは少なくとも12ヌクレオチド及び最も好ましくは少なくとも15ヌクレオチドを含むそのサブ配列は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。NAALADL2をコードする遺伝子の異常発現に関連する状態、障害若しくは病態の検出、予後、診断若しくはモニタリングのために、又は、例えば本発明の疾患で示唆的徴候又は症状を有する対象の鑑別診断のために、ハイブリダイゼーションアッセイを用いることができる。特に、かかるハイブリダイゼーションアッセイは、核酸を含有する対象の試料を、NAALADL2をコードするDNA若しくはRNAにハイブリダイズし得る核酸プローブと、ハイブリダイゼーションが起こり得る条件下で接触させること、及び任意のその結果生じたハイブリダイゼーションを検出若しくは測定すること、を含む方法により行うことができる。
【0089】
したがって、NAALADL2をコードする核酸(例えばDNA、又はより好適にはRNA)は、例えば、NAALADL2をコードする核酸にハイブリダイズし得るハイブリダイズ剤(特にオリゴヌクレオチドプローブ)を使用して検出することができる。
【0090】
かかる例示的な方法の一つは:
NAALADL2をコードするヌクレオチド配列に相補的な10以上の連続ヌクレオチドを含む1以上のオリゴヌクレオチドプローブを、対象由来の生体試料から得られるRNAと、又はRNAから複製したcDNAと接触させることであって、ここでこれらが存在する場合、該接触は、プローブのヌクレオチド配列へのハイブリダイゼーションを許容する条件下で起こること;
プローブとヌクレオチド配列との間におけるハイブリダイゼーションが存在する場合にこれを検出すること;並びに、
工程(b)において検出されたハイブリダイゼーションが存在する場合、これを、対照試料において検出されるハイブリダイゼーションと、又はあらかじめ決定された基準範囲と比較すること:を含む。
【0091】
また、本発明は、抗-NAALADL2抗体(又は他の親和性試薬)を備える診断用キットも提供する。加えて、かかるキットは、次の1つ以上を場合により備えていてもよい:
(1)診断、予後、治療モニタリング又はこれらの用途のいずれかの組合せについての抗-NAALADL2親和性試薬の使用に関する取扱説明書;
(2)親和性試薬に対する標識化された結合パートナー;
(3)抗-NAALADL2親和性試薬が固定されている固相(試薬ストリップなど);及び、
(4)診断、予後若しくは治療的使用又はこれらのいずれかの組合せのための規制認可を示すラベル又は添付文書。親和性試薬への標識された結合パートナーが提供されない場合、抗-NAALADL2親和性試薬自体を、検出可能なマーカー、例えば、化学発光部分、酵素部分、蛍光部分、又は放射性部分で標識することができる。
【0092】
また、本発明は、NAALADL2をコードする核酸、好適にはRNAにハイブリダイズし得る核酸プローブを備えたキットも提供する。具体的実施態様において、キットは、1以上の容器に、適切な反応条件下で、例えばポリメラーゼ連鎖反応(例えば、Innisらの文献:1990, 「PCRプロトコール(PCR Protocols)」, Academic Press社(San Diego, CA)を参照)、Qβレプリカーゼを使用するリガーゼ連鎖反応(欧州特許第320,308号参照)、周期的プローブ反応又は当該技術分野で公知の他の方法により、NAALADL2をコードする核酸の少なくとも一部の増幅を開始することができる一対のプライマー(例えば、それぞれ、6〜30ヌクレオチド、より好ましくは10〜30ヌクレオチド、及び更により好ましくは10〜20ヌクレオチドのサイズ範囲)を備える。
【0093】
キットは、任意に、例えば標準又は対照として使用するための、あらかじめ定められた量のNAALADL2又はNAALADL2をコードする核酸を更に備え得る。
【0094】
本明細書において使用される用語「試料」は、体液(例えば、血液、尿又は唾液)、並びに1以上の本発明の疾患を有するリスクのある対象から採取された生検組織(例えば前立腺、膀胱、乳房、食道、頭頸部、結腸直腸、肝臓、肺、卵巣、胃、子宮及び膵臓の生検などの、生検)、又はそれらのホモジネートを含む。
【0095】
例えば、使用される生体試料は、血清試料又は組織試料などのいずれかの供給源由来であり、例えば、前立腺、膀胱、乳房、食道、頭頸部、結腸直腸、肝臓、肺、卵巣、胃、子宮及び膵臓の組織であり得る。例えば、本発明の疾患の転移についての証拠を探索する場合、本発明の疾患の転移の主な部位、例えば、前立腺癌については、骨、膀胱、直腸;膀胱癌については、骨、肺、皮膚及び肝臓;乳癌については、骨、肝臓及び肺;結腸直腸癌については、肝臓、腹膜腔、骨盤、腹膜後腔及び肺;頭頸部癌については、肺、骨、肝臓及び皮膚;肝臓癌については、肺及び骨;肺癌については、脳、肝臓、骨及び副腎;膵臓癌については肝臓;卵巣癌については、腹部;食道癌については、肝臓、肺及び骨;子宮癌については、膀胱、直腸、肺及び骨;並びに、胃癌については、肝臓、肺、脳、骨、腎臓及び膵臓を探索する。
【0096】
あるいは、NAALADL2若しくはその1以上の断片の存在、又はNAALADL2をコードする核酸の存在、又はNAALADL2の活性の存在は、インサイチュ分析によって検出することができる。
【0097】
いくつかの実施態様において、本明細書に説明する診断方法は、少なくとも部分的に又は全てを、インビトロ又はエクスビボにおいて行うことができる。
【0098】
NAALADL2若しくはその1以上の断片の存在、又はNAALADL2をコードする核酸の存在、又はNAALADL2の活性の存在は、定量的に検出されることが適切である。
【0099】
例えば、定量的な検出は:
生体試料を、NAALADL2に特異的な親和性試薬と接触させることであって、該親和性試薬が、任意に、検出可能な標識に複合されていること;並びに、
親和性試薬と試料中の少なくとも1つの種との間に結合が生じたか否かを検出することであって、該検出が直接又は間接的に行われることを含むことができる。
【0100】
あるいは、NAALADL2若しくはその1以上の断片の存在、又はNAALADL2をコードする核酸の存在、又はNAALADL2の活性の存在は、イメージング技術の使用を含む手段によって定量的に検出することができる。
【0101】
別の実施態様において、本発明の方法は、NAALADL2若しくはその1以上の断片の存在、又はNAALADL2をコードする核酸の存在、又はNAALADL2の活性の存在を決定し、これによって、例えば本発明の疾患の細胞の局在を見つけ出すために、例えば、前立腺、膀胱、乳房、食道、頭頸部、結腸直腸、肝臓、肺、卵巣、胃、子宮及び膵臓の組織切片における免疫組織化学法の使用を含む。
【0102】
一実施態様において、NAALADL2又はその1以上のエピトープ含有断片の存在は、例えば、抗体などの、NAALADL2又はその1以上の断片に特異的に結合し得る親和性試薬を使用して検出される。
【0103】
別の実施態様において、NAALADL2の活性が検出される。
【0104】
(臨床試験における使用)
本発明の診断方法及び組成物は、例えば、本発明の疾患の治療用薬剤を評価する臨床試験をモニタリングする際に役に立ち得る。一実施態様において、候補分子は、例えば本発明の疾患を有する対象のNAALADL2レベルを、本発明の疾患を有しない対象において見出されるレベルまで回復させるこれらの能力について、又は治療された対象におけるNAALADL2レベルを、非-前立腺癌、非-膀胱癌、非-乳癌、非-食道癌、非-頭頸部癌、非-結腸直腸癌、非-肝臓癌、非-肺癌、非-卵巣癌、非-胃癌、非-子宮癌若しくは非-膵臓癌の値に若しくはその値近傍に保持するこれらの能力について、試験される。
【0105】
別の実施態様において、本発明の方法及び組成物は、例えば本発明の疾患を有する個人を確定する臨床試験の候補をスクリーニングするのに使用され;その後、かかる個人は、その試験から除外することができるか、又は治療若しくは分析について別々のコホートに配置することができる。
【0106】
(本発明のタンパク質及び対応する核酸の生産)
一態様において、本発明は、例えば本発明の疾患を治療又は予防する方法であって、かかる治療又は予防を必要とする対象に、治療有効量のNAALADL2をコードする核酸又はその1以上の断片若しくは誘導体を、例えばワクチンの形態で投与することを含む方法を提供する。
【0107】
別の態様において、例えば本発明の疾患を治療又は予防する方法であって、かかる治療又は予防を必要とする対象に、NAALADL2の機能若しくは発現を阻害する核酸の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0108】
本発明の方法(及び/又は本明細書に開示する他のDNA態様)は、例えば、核酸がNAALADL2アンチセンス核酸若しくはリボザイムである方法を含み得る。
【0109】
したがって、本発明には、例えば本発明の疾患を治療又は予防するための医薬品の製造における、NAALADL2をコードする核酸又はその1以上の断片若しくは誘導体の使用が含まれる。
【0110】
また、例えば1以上の本発明の疾患を治療又は予防するための医薬品の製造における、NAALADL2の機能又は発現を阻害する核酸の使用も提供される。
【0111】
本発明に使用するDNAは、出発物質として市販mRNAを使用するcDNAライブラリーからcDNA断片として単離すること、そのヌクレオチド配列を決定及び同定することにより得ることができる。すなわち、具体的には、クローンは、Oharaらの方法(DNA Research 第4巻、53-59(1997))にしたがって調製されるcDNAライブラリーからランダムに単離される。次に、ハイブリダイゼーションを介し、複製されたクローン(これは繰り返し現れる。)を除去した後、インビトロ転写及び翻訳を行う。50 kDa以上の産物が確認されたクローンの両方の末端ヌクレオチド配列を決定する。
【0112】
さらに、公知の遺伝子のデータベースで、このようにして得られた末端ヌクレオチドチド配列をクエリーとして使用して、相同性について検索する。
【0113】
上述のスクリーニング方法に加え、cDNAの5’及び3’末端配列をヒトゲノム配列に関連付ける。次いで、未知の長鎖遺伝子を配列間の領域で確認し、cDNAの完全長を分析する。このようにして、既知の遺伝子に依存する従来のクローニング方法によって得ることができない未知の遺伝子を、体系的にクローン化することができる。
【0114】
さらに、本発明のDNAを含有するヒト由来遺伝子の領域のすべては、短い断片又は得られた配列において起こる人為的誤りを防ぐように十分注意を払いながら、RACEなどのPCR法を用いて調製することもできる。上述のとおり、本発明のDNAを有するクローンを得ることができる。
【0115】
本発明のDNAをクローニングするための別の手段において、本発明の一部のポリペプチドの適切なヌクレオチド配列を有する合成DNAプライマーを作製した後、適切なライブラリーを使用してPCR法により増幅させる。あるいは、選択は、適切なベクターに組み込まれ、本発明のポリペプチドの領域の一部若しくは全部をコードするDNA断片又は合成DNAで標識されたDNAを用いる、本発明のDNAのハイブリダイゼーションにより行うことができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(Frederick M. Ausubelら編, 1987)に記載されている方法により行うことができる。本発明のDNAは、これらが上述した本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有する限り、いかなるDNAであってもよい。かかるDNAは、cDNAライブラリーから同定及び単離されたcDNAであってもよく、前立腺、膀胱、乳房、食道、頭頸部、結腸直腸、肝臓、肺、卵巣、胃、子宮及び膵臓の組織に由来するようなものであってもよい。また、かかるDNAは、合成DNAなどであってもよい。ライブラリー構築に使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどのいずれかであってもよい。さらに、上述の細胞及び/又は組織から調製される全RNA画分又はmRNA画分の使用により、増幅は、直接的な逆転写共役ポリメラーゼ連鎖反応(以下、「RT-PCR法」と略記される。)により行うことができる。
【0116】
NAALADL2のアミノ酸配列に実質的に同一であるアミノ酸配列からなる上述のポリペプチドをコードするDNA、又はアミノ酸配列の一部を構成する1以上のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加によるNAALADL2のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列からなる上述のポリペプチドをコードするDNAは、例えば、当業者に公知の部位特異的突然変異生成法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法及びPCR法の適切な組合せにより、容易に生産することができる。加えて、現時点で、ポリペプチドに実質的に同等の生物活性をもたらし得る方法は、ポリペプチドを構成するアミノ酸間での相同アミノ酸(例えば、極性及び無極性アミノ酸、疎水性及び親水性アミノ酸、正荷電及び負荷電アミノ酸、並びに芳香族アミノ酸)の置換である。さらに、実質的に同等の生物活性を維持するために、本発明のポリペプチドに含有されている機能的ドメイン内のアミノ酸は、好ましくは保存される。
【0117】
さらに、本発明のDNAの例としては、NAALADL2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むDNA、及びDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNAALADL2のアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能と同等の生物活性(機能)を有するポリペプチド(タンパク質)をコードするDNAが挙げられる。かかる条件下で、NAALADL2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むDNAにハイブリダイズし得る、かかるDNAの例は、DNAの全ヌクレオチド配列にある程度、例えば、およそ80%以上、好ましくはおよそ90%以上、及びより好ましくはおよそ95%以上の全体平均相同性を有するヌクレオチド配列を含むDNAである。ハイブリダイゼーションは、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(Frederick M. Ausubelら編, 1987)に記載されている方法などの当業者に公知の方法、又はこれに準じた方法により行うことができる。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、およそ1×SSC、0.1% SDS及び37℃であり、よりストリンジェントな条件とは、およそ0.5×SSC、0.1% SDS及び42℃であり、又は、更によりストリンジェントな条件とは、およそ0.2×SSC、0.1% SDS及び65℃である。よりストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いると、プローブ配列と高い相同性を有するDNAの単離が予想することができる。上述のSSC、SDS及び温度条件の組合せは、説明目的のために提供される。上述のものに類似するストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーの決定のための上述の因子又は他の因子(例えば、ハイブリダイゼーションのためのプローブ濃度、プローブ長及び反応時間)の適切な組合せを用いて、当業者により達成することができる。
【0118】
本発明のクローン化DNAは、目的に応じて、直接使用することができるか、又は、望ましいならば、制限酵素での消化又はリンカーの追加の後に使用することができる。DNAは、5’末端側の翻訳開始コドンとしてATGを有し、3’末端側の翻訳終止コドンとして、TAA、TGA又はTAGを有し得る。これらの翻訳開始及び翻訳終止コドンは、適切な合成DNAアダプターを使用して追加することもできる。
【0119】
本発明の方法/使用において、NAALADL2は、例えば、NAALADL2ポリペプチドが少なくともある程度まで精製されたものなどの単離された形態で提供することができる。NAALADL2ポリペプチドは、実質的に純粋な形態で、すなわち実質的範囲で他のタンパク質を含まない形態で、提供することができる。NAALADL2ポリペプチドは、組換え法を用いて生産することができ、合成的に生産することができるか、又はこれらの方法の組合せによって生産することもできる。NAALADL2は、当業者に公知のいずれかの方法によっても容易に調製することができ、これは、本発明の適切なDNAを含有する発現ベクター又は本発明のDNAを含有する遺伝子を生産すること、発現ベクターを使用して形質転換された形質転換体を培養すること、本発明の関連ポリペプチド又はポリペプチドを含有する組換えタンパク質を生成し蓄積すること、その後、結果物を回収することを含む。
【0120】
組み換えNAALADL2ポリペプチドは、発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から、当該技術分野で周知の方法によって調製することができる。したがって、本発明は、NAALADL2ポリペプチド又は核酸を含む発現系に、かかる発現系によって遺伝子操作された宿主細胞に、及び組換え法によるNAALADL2ポリペプチドの生産にも関する。組換えNAALADL2ポリペプチド生産のために、宿主細胞は、核酸に発現系又はその一部を組み込むように遺伝子操作することができる。かかる組込みは、当該技術分野で周知の方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAD-デキストラン媒介型トランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、カチオン脂質媒介型トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、切屑負荷(scrape loading)、バレット導入又は感染を用いて行うことができる(例えば、Davisらの文献:「分子生物学における基本的方法(Basic Methods in Molecular Biology)」, 1986、並びにSambrookらの文献:「分子クローニング:研究室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」,第2版, Cold Spring Harbour laboratory Press, Cold Spring Harbour, NY, 1989参照)。
【0121】
宿主細胞として、例えば、エシェリキア属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、ストレプトマイセス属の細菌、バチルス属の細菌、酵母、アスペルギルス細胞、昆虫細胞、昆虫、及び動物細胞が使用される。本明細書に使用するエシェリキア属の細菌の具体例としては、大腸菌K12及びDH1(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., Vol. 60, 160 (1968))、JM103(Nucleic Acids Research, Vol. 9, 309 (1981))、JA221(Journal of Molecular Biology, Vol. 120, 517 (1978))、及びHB101(Journal of Molecular Biology, Vol. 41, 459 (1969))が挙げられる。バチルス属の細菌としては、例えば、枯草菌MI114(Gene, Vol. 24, 255 (1983))及び207-21(Journal of Biochemistry, Vol. 95, 87 (1984))が使用される。酵母としては、例えば、出芽酵母(Saccaromyces cerevisiae)AH22、AH22R-、NA87-11A、DKD-5D及び20B-12、分裂酵母(Schizosaccaromyces pombe )NCYC1913及びNCYC2036、並びにピキア・パストリス(Pichia pastoris)が使用される。昆虫細胞としては、例えば、ショウジョウバエS2及びスポドプテラSf9細胞が使用される。動物細胞としては、例えば、COS-7及びベロサル細胞、CHOチャイニーズハムスター細胞(以下、CHO細胞と略記される)、dhfr遺伝子欠損CHO細胞、マウスL細胞、マウスAtT-20細胞、マウス骨髄腫細胞、ラットGH3細胞、ヒトFL細胞、COS、HeLa、C127、3T3、HEK 293、BHK及びボーズメラノーマ細胞が使用される。
【0122】
また、無細胞翻訳システムも、組換えポリペプチドを生産するのに使用することができる(例えば、ウサギ網状赤血球溶解液、小麦麦芽溶解液、Roche Diagnostics社(Lewes, UK)製SP6/T7インビトロT&T及びRTS 100大腸菌HY転写及び翻訳キット、並びにPromega UK社(Southampton, UK)製TNTクイック共役転写/翻訳システム)。
【0123】
発現ベクターは、当該技術分野で公知の方法にしたがって生産することができる。例えば、ベクターは、(1)本発明のDNAを含有するDNA断片又は本発明のDNAを含有する遺伝子を切除すること、及び(2)適切な発現ベクターにおいてプロモーターの下流にDNA断片を連結することにより生産することができる。広範囲の発現系を使用することができ、例えば、染色体、エピソーム及びウイルスから派生した系、例えば大腸菌に由来するプラスミド(例えば、pBR322、pBR325、pUC18及びpUC118)、枯草菌に由来するプラスミド(例えば、pUB110、pTP5及びpC194)、バクテリオファージ由来の系、トランスポゾン由来の系、酵母エピソーム由来の系(例えば、pSH19及びpSH15)、挿入因子由来の系、酵母染色体要素由来の系、バキュロウイルス、パポバウイルス(例えば、SV40)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルスなどのウイルス由来の系、並びにこれらの組合せ由来のベクター、例えばプラスミド及びバクテリオファージ(λファージなど)遺伝因子由来のベクター、例えばコスミド及びファージミドなどであるが、これらに限定されない。発現系は、発現を調節するだけでなく、発現を発生させる制御領域も含有し得る。遺伝子発現のために使用される宿主に適切である限り、本発明に使用するプロモーターは、いかなるプロモーターであってもよい。例えば、宿主が大腸菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、pLプロモーター、lppプロモーターなどが好ましい。宿主が枯草菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。動物細胞を宿主として使用する場合、この事例に使用するプロモーターの例としては、SRaプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター及びHSV-TKプロモーターが挙げられる。通常、宿主においてポリペプチドを産生する核酸を維持し、増殖させるか又は発現することができる、いずれかの系又はベクターを使用することができる。
【0124】
適切な核酸配列は、上述したSambrookらの文献に記載されているものなどのいずれかの種々の周知方法かつルーチン法により、発現系に挿入することができる。適切な分泌シグナルは、小胞体内腔、細胞膜周辺腔又は細胞外環境への翻訳タンパク質の分泌を可能にするために、NAALADL2ポリペプチドに組み込むことができる。これらのシグナルはNAALADL2ポリペプチドに内在性であってもよいし、又はシグナルは異種性シグナルであってもよい。宿主細胞の形質転換は、当該技術分野で公知の方法にしたがって行うことができる。例えば、次に示す文献を参照することができる:Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., Vol. 69, 2110 (1972); Gene, Vol. 17, 107 (1982); Molecular & General Genetics, Vol. 168, 111 (1979); Methods in Enzymology, Vol. 194, 182-187 (1991); Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.), Vol. 75, 1929 (1978); Cell Technology, 別冊8, 「新規細胞技術、試験プロトコール(New Cell Technology, Experimental Protocol.)」263-267 (1995) (Shujunsha発行);及びVirology, Vol. 52, 456 (1973)。このように、本発明のDNAを含有する発現ベクター又は本発明のDNAを含有する遺伝子で形質転換して得られた形質転換体は、当該技術分野で公知の方法にしたがって培養することができる。例えば、宿主がエシェリキア属の細菌である場合、細菌は通常、およそ15℃〜43℃でおよそ3〜24時間培養する。必要に応じて、通気又は攪拌も追加することができる。宿主がバチルス属の細菌である場合、細菌は通常、およそ30℃〜40℃でおよそ6〜24時間培養する。必要に応じて、通気又は攪拌も追加することができる。宿主が酵母である形質転換体を培養する場合、培養は通常、pHをおよそ5〜8に調整した培地を使用して、およそ20℃〜35℃でおよそ24〜72時間行う。必要に応じて、通気又は攪拌も追加することができる。宿主が動物細胞である形質転換体を培養する場合、細胞は通常、pHをおよそ6〜8に調整した培地を使用して、およそ30℃〜40℃でおよそ15〜60時間培養する。必要に応じて、通気又は攪拌も追加することができる。
【0125】
NAALADL2ポリペプチドが細胞ベースのスクリーニングアッセイ用に発現される場合、ポリペプチドは細胞表面に産生されることが好ましい。この場合、細胞は、スクリーニングアッセイでの使用の前に回収することができる。NAALADL2ポリペプチドが培地に分泌される場合、培地は、該ポリペプチドを単離するために回収することができる。細胞内で産生される場合、細胞は、NAALADL2ポリペプチドが回収される前に、最初に溶解する必要がある。
【0126】
NAALADL2ポリペプチドは、組換え細胞培養物から、又は他の生物学的供給源から、硫酸アンモニウム若しくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、分子篩クロマトグラフィー、遠心分離法、電気泳動法及びレクチンクロマトグラフィを含む周知の方法により、回収及び精製することができる。一実施態様において、これらの方法の組合せが用いられる。別の実施態様において、高速液体クロマトグラフィーが使用される。更なる実施態様において、NAALADL2ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、NAALADL2ポリペプチドを含む試料の該ポリペプチドを枯渇させるか又は該ポリペプチドを精製するのに使用することができる。
【0127】
培養生成物から本発明のポリペプチド又はタンパク質を分離して精製するために、例えば、培養後に、微生物本体又は細胞を公知の方法により回収し、これらを適切な緩衝液中で懸濁させ、微生物本体又は細胞を、例えば、超音波、リゾチーム、及び/又は凍結融解により破壊し、次いで、その結果物を遠心分離又はろ過に供し、その後、タンパク質の粗抽出物を得ることができる。緩衝液は、尿素若しくは塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤、又はTriton X-100(商標)などの界面活性剤も含有し得る。タンパク質が培養液中に分泌される場合、微生物本体又は細胞及び上清は、培養の完了後に公知の方法によって分離され、上清は回収される。このようにして得られた培養上清又は抽出物に含有するタンパク質は、公知の分離及び精製法の適切な組合せにより、精製することができる。本発明のこのようにして得られたポリペプチド(タンパク質)は、公知の方法又はこれに準じる方法によって、塩に変換することができる。逆に、本発明のポリペプチド(タンパク質)が塩の形態で得られる場合、これは、公知の方法又はこれに準じた方法によって、遊離タンパク質又はペプチド又は他の塩に変換することができる。さらに、トリプシン又はキモトリプシンなどの適切なタンパク質修飾酵素は、精製の前又は後に組換えによって生産されたタンパク質への作用をもたらし、かかる修飾は適宜追加することができ、又はポリペプチドは部分的に除去することができる。本発明のポリペプチド(タンパク質)又はその塩の存在は、種々の結合アッセイ、特異的抗体を使用する酵素イムノアッセイなどによって測定することができる。
【0128】
NAALADL2ポリペプチドが単離及び/又は精製の間に変性する場合、NAALADL2ポリペプチドの天然の又は活性のある立体構造を再生するリフォールディングのために、当該技術分野で周知の技術を使用することができる。本発明に関連して、NAALADL2ポリペプチドは、血液試料又は組織試料、例えば前立腺、膀胱、乳房、食道、頭頸部、結腸直腸、肝臓、肺、卵巣、胃、子宮及び膵臓の組織試料などであるが、これらに限定されない、いずれかの供給源由来の生体試料から得ることができる。
【0129】
NAALADL2ポリペプチドは、「成熟タンパク質」の形態であり得るか、又は融合タンパク質などのより大きなタンパク質の一部であり得る。分泌若しくはリーダー配列、プレ‐、プロ‐又はプレプロ‐タンパク質配列を含む追加的アミノ酸配列、又は親和性タグ、例えば複数のヒスチジン残基、FLAGタグ、HAタグ又はmycタグ(これらに限定されない)などの精製に有用な配列を含むことは、有益であることが多い。
【0130】
NAALADL2は、例えば、ヘモフィルス・インフルエンザB由来のタンパク質Dとして知られている表在性タンパク質、NS1などのインフルエンザウイルス由来の非構造タンパク質、B型肝炎由来のS抗原、又はそのC末端などのLYTAとして公知のタンパク質などの異種融合パートナーと融合させることができる。
【0131】
組換え生産の間に安定性を提供することができる追加的配列を使用することもできる。かかる配列は、追加的配列又はその一部として切断可能配列を組み込むことにより、必要に応じて、任意に除去することができる。したがって、NAALADL2ポリペプチドは、他のポリペプチド又はタンパク質(例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ及びプロテインA)を含む他の部分に融合することができる。かかる融合タンパク質は、適切なプロテアーゼを使用して切断でき、そして、各タンパク質に分離することができる。かかる追加的配列及び親和性タグは当該技術分野で周知である。上述のものに加え、所望の場合、エンハンサー、スプライシングシグナル、polyA付加シグナル、選択マーカー及びSV40複製起点などの当該技術分野で公知の特性を発現ベクターに追加することができる。
【0132】
一態様において、本発明は、疾患、例えば癌、特に本発明の疾患の治療、スクリーニング、検出及び/又は診断で使用するための、NAALADL2、又はそれらの断片に特異的に結合することが可能な物質、又はNAALADL2をコードしている核酸へのハイブリダイズすることができるハイブリダイズ物質、又はNAALADL2の活性の検出が可能な物質を提供する。
【0133】
(NAALADL2に対する親和性試薬の生産)
一態様において、本発明は、NAALADL2又はそれらの断片に特異的に結合することが可能である親和性試薬又は免疫親和性試薬、例えば、検出可能な標識を含むか若しくはこれに複合された、又は細胞毒性部分など治療的部分を含むか若しくはこれに複合された親和性試薬を提供する。親和性物質は、例えば、抗体であってよい。親和性試薬は、単離された親和性試薬又は精製された親和性試薬であってよい。
【0134】
本発明で使用するための親和性試薬は、NAALADL2上のエピトープ、例えば配列番号:1-2のいずれかの1以上の部分に結合することができる。好ましくは、親和性試薬は、NAALADL2の細胞外ドメイン(例えば、細胞外尾部又は細胞外ループ)(例えば配列番号:19)に特異的に結合する。
【0135】
公知技術によれば、3種類の主要な免疫親和性試薬、すなわち、モノクローナル抗体、ファージディスプレイ抗体、並びにアフィボディ、ドメイン抗体(dAb)、ナノボディ、ユニボディ、DARPin、アンチカリン、デュオカリン、アビマー又はバーサボディなどのより小型の抗体由来分子がある。一般に、抗体の使用が記載される本発明の適用において、他の親和性試薬(例えば、アフィボディ、ドメイン抗体、ナノボディ、ユニボディ、DARPin、アンチカリン、デュオカリン、アビマー又はバーサボディ)を使用することができる。かかる物質は、NAALADL2に免疫特異的に結合することができると考えられる。適切である場合、「親和性試薬」という用語は、リガンド、レクチン、ストレプトアビジン、抗体模倣体及び合成結合剤を含むがこれらに限定されない、免疫親和性試薬並びにNAALADL2に特異的結合し得る他の物質を含むものとする。
【0136】
(NAALADL2に対する抗体の生産)
本発明によれば、NAALADL2、NAALADL2類似体、NAALADL2-関連タンパク質、又は前述のいずれかの断片若しくは誘導体を免疫原として使用し、かかる免疫原に免疫特異的に結合する抗体を生産することができる。かかる免疫原は、先に記載した方法を含むいずれかの都合のよい手段によって単離することができる。本明細書に使用する「抗体」という用語は、抗原又はエピトープを特異的に結合し得る、1又は複数の免疫グロブリン遺伝子又はその断片に由来するか、これらに倣って生産されるか、又はこれらによって実質的にコードされる、ペプチド又はポリペプチドをいう。例えば、Fundamental Immunology, 第3版, W.E. Paul編, Raven Press, N.Y. (1993); Wilsonの文献 (1994) J. Immunol. Methods 175:267-273; Yarmushの文献 (1992) J. Biochem. Biophys. Methods 25:85-97を参照されたい。抗体という用語には、抗原結合部分、すなわち、抗原に結合する能力を保持する「抗原結合部位」(例えば、断片、サブ配列、相補性決定領域(CDR))が含まれ、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片;(ii) F(ab')
2断片、ヒンジ領域でジスルフィド結合により連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardらの文献 (1989):Nature, 341:544-546);及び、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。単鎖抗体も、「抗体」という用語に関して含まれる。本発明の抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体若しくはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片及びF(ab')
2断片、Fab発現ライブラリーによって生産される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、並びに上述したもののうちのいずれかのエピトープ結合断片が含まれるが、これらに限定されない。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子のいずれかのクラス(例えば、IgGなどの、IgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)又はサブクラスであり得る。
【0137】
「特異的結合」又は「特異的に結合する」(又は「免疫特異的に結合する」)という用語は、抗体がその意図する標的のみに結合することを示すことを意図するものではない。むしろ、抗体は、通常、その意図する標的に対する親和性が、非標的分子に対するその親和性と比較した場合に、約5倍を上回る場合に、「特異的に結合する」。好適には、望ましくない物質、特に健常な人又は動物の天然のタンパク質又は組織との有意な交差反応又は交差結合は存在しない。抗体の親和性は、非標的分子に対するその親和性よりも、少なくとも約5倍、好ましくは10倍、より好ましくは25倍、更により好ましくは50倍、及び最も好ましくは100倍以上、標的分子に対して大きな親和性であることが好ましい。一部の実施態様において、抗体又は他の結合物質及び抗原との間の特異的結合は、少なくとも10
6M
-1の結合親和性を意味する。抗体は、例えば、少なくとも約10
7M
-1、好ましくは約10
8M
-1〜約10
9M
-1、約10
9M
-1〜約10
10M
-1、又は約10
10M
-1〜約10
11M
-1の親和性で結合し得る。
【0138】
親和性はK
d=k
off/k
onとして算出される(k
offは解離速度定数であり、k
onは会合速度定数であり、K
dは平衡定数である。)。親和性は、種々の濃度(c)で標識化リガンドの画分結合(r)を測定することによって、平衡で決定することができる。データは、スキャッチャード式:r/c=K(n-r):
(式中、
r=平衡時の結合したリガンドのモル数/受容体のモル数;
c=平衡時の遊離リガンド濃度;
K=平衡会合定数;及び、
n=受容体分子1個あたりのリガンド結合部位の数)を用いてグラフ化される。図式解析により、r/cをY軸にプロットし、対してrをX軸にプロットし、こうしてスキャッチャードプロットを作成する。親和性は、その線の負の傾斜である。K
offは、結合した標識化リガンドを、標識されていない過剰のリガンドと競合させることにより決定することができる(例えば、米国特許第6,316,409号参照)。その標的分子に対する標的化物質の親和性は、例えば、少なくとも約1×10
-6モル/リットル、例えば少なくとも約1×10
-7モル/リットル、例えば少なくとも約1×10
-8モル/リットル、特に少なくとも約1×10
-9モル/リットル、及び特に少なくとも約1×10
-10モル/リットルである。スキャッチャード分析による抗体親和性測定は、当該技術分野で周知であり、例えば、van Erpらの文献:J. Immunoassay 12: 425-43, 1991;Nelson及びGriswoldの文献:Comput. Methods Programs Biomed. 27: 65-8, 1988を参照されたい。
【0139】
一実施態様において、NAALADL2をコードする遺伝子の遺伝子産物を認識する、任意の公に入手可能な抗体を使用することができる。別の実施態様において、当業者に公知の方法は、NAALADL2、NAALADL2類似体、NAALADL2-関連ポリペプチド、又は前述のいずれかの断片若しくは誘導体を認識する抗体を生産するのに使用される。当業者は、例えば、文献:「抗体、研究室マニュアル(Antibodies, A Laboratory Manual)」, Ed Harlow及びDavid Lane編, Cold Spring Harbor Laboratory (1988), Cold Spring Harbor, N.Y.に記載されているような多くの手段が、抗体生産に利用可能であることを認識する。当業者はまた、抗体を模倣する結合断片又はFab断片も種々の手段により遺伝情報から調製できることも認識する(「抗体工学:実践的アプローチ(Antibody Engineering: A Practical Approach)」(Borrebaeck, C編), 1995, Oxford University Press, Oxford; J. Immunol. 149, 3914-3920 (1992))。
【0140】
本発明の一実施態様において、NAALADL2の特定のドメインに対する抗体が生産される。具体的実施態様において、NAALADL2の親水性断片が、抗体生産のための免疫原として使用される。
【0141】
抗体生産において、所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野で公知の技術、例えばELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)によって達成することができる。例えば、NAALADL2の特定のドメインを認識する抗体を選択するために、かかるドメインを含むNAALADL2断片に結合する生成物について作製されたハイブリドーマをアッセイすることができる。第1のNAALADL2相同体に特異的に結合するが、第2のNAALADL2相同体には特異的に結合しない(又は結合性が低い)抗体の選択のために、第1のNAALADL2相同体への陽結合(positive binding)、及び第2のNAALADL2相同体への結合の欠如(又は結合の減少)に基づき、抗体を選択することができる。同様に、NAALADL2に特異的に結合するが、同じタンパク質の異なるアイソフォーム(NAALADL2と同じコアペプチドを有する異なるグリコフォームなど)に特異的に結合しない(又は結合性が低い)抗体の選択のために、NAALADL2への陽結合、及び異なるアイソフォーム(例えば、異なるグリコフォーム)への結合の欠如(又は結合の減少)に基づき、抗体を選択することができる。したがって、本発明は、NAALADL2の異なる1又は複数のアイソフォーム(例えば、グリコフォーム)に対するよりも、NAALADL2に対して大きな親和性(例えば少なくとも2倍、例として少なくとも5倍、特に少なくとも10倍大きな親和性など)で結合する抗体(モノクローナル抗体など)を提供する。
【0142】
本発明の方法に使用することができるポリクローナル抗体は、免疫動物の血清由来の抗体分子の異種集団である。非分画免疫血清を使用することもできる。当該技術分野で公知の種々の手順は、NAALADL2、NAALADL2の断片、NAALADL2関連ポリペプチド、又はNAALADL2関連ポリペプチドの断片に対するポリクローナル抗体の生産に使用可能である。例えば、方法のうちの一つは、関心対象ポリペプチドを精製すること、又は、例えば当該技術分野で周知の固相ペプチド合成法を用いて、関心対象ポリペプチドを合成することである。例えば、「タンパク質精製の手引き(Guide to Protein Purification)」, Murray P. Deutcher編, Meth. Enzymol. Vol 182 (1990);「固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)」, Greg B. Fields編, Meth. Enzymol. Vol 289 (1997);Kisoらの文献:Chem. Pharm. Bull. (Tokyo) 38:1192-99, 1990;Mostafaviらの文献:Biomed.Pept.Proteins Nucleic Acids 1:255-60, 1995;Fujiwaraらの文献:Chem.Pharm.Bull. (Tokyo)44:1326-31, 1996を参照されたい。そして、選択されたポリペプチドは、注入によりウサギ、マウス、ラットなどを含むがこれらに限定されない種々の宿主動物を免疫し、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を産生するのに使用することができる。NAALADL2がゲル電気泳動により精製される場合、NAALADL2は、ポリアクリルアミドゲルからの前抽出を用いてか又は用いずに、免疫に使用することができる。完全又は不完全フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及びBCG(カルメット‐ゲラン桿菌)又はコリネバクテリウム・パルバムなどのアジュバントを含むがこれらに限定されない種々のアジュバント(すなわち、免疫賦活剤)を、宿主種に応じて、免疫応答を強化するのに使用することができる。更なるアジュバントも、当該技術分野で周知である。
【0143】
NAALADL2、NAALADL2の断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、又はNAALADL2関連ポリペプチドの断片に対するモノクローナル抗体(mAb)の調製のために、培養で持続細胞株による抗体分子の生産を提供するいずれかの技術を使用することができる。例えば、ハイブリドーマ技術は、Kohler及びMilstein (1975, Nature 256:495-497)によりはじめて開発され、同様にトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborらの文献1983:Immunology Today 4:72)及びEBV-ハイブリドーマ技術(Coleらの文献1985:モノクローナル抗体及び癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)において, Alan R. Liss社, 77-96頁)がヒトモノクローナル抗体を生産するために開発された。かかる抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びそのいずれかのサブクラスを含む、いずれかの免疫グロブリンのクラスのものであり得る。本発明のmAbを生産するハイブリドーマは、インビトロ又はインビボで培養してもよい。本発明の更なる実施態様において、モノクローナル抗体は、公知の技術(国際特許出願第PCT/US90/02545号(引用により本明細書中に組み込まれる。))を利用して無菌動物において生産することができる。
【0144】
モノクローナル抗体には、ヒトモノクローナル抗体及びキメラモノクローナル抗体(例えば、ヒト‐マウスキメラ)を含むが、これらに限定されない。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種由来である分子、例えばヒト免疫グロブリン定常領域及びマウスmAb由来の可変領域を有する分子である(例えば、Cabillyらの米国特許第4,816,567号;及び、Bossらの米国特許第4,816,397号参照。これらは、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。)。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1以上の相補性決定領域(CDR)、及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する、非ヒト種由来の抗体分子である(例えば、Queenの米国特許第5,585,089号参照。当該文献は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる。)。
【0145】
キメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、例えば国際公開第87/02671号;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;国際公開公報第86/01533号;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第125,023号;Betterらの文献1988:Science 240:1041-1043;Liuらの文献1987:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-3443;Liuらの文献1987:J. Immunol.139:3521-3526;Sunらの文献1987:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218;Nishimuraらの文献1987:Canc.Res. 47:999-1005;Woodらの文献1985:Nature 314:446-449;及び、Shawらの文献1988:J.Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559;Morrisonの文献1985:Science 229:1202-1207;Oiらの文献1986:BioTechniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesらの文献, 1986, Nature 321:552-525;Verhoeyanらの文献 (1988):Science 239:1534;及び、Beidlerらの文献1988:J. Immunol.141:4053-4060に記載されている方法を用いる、当該技術分野で公知の組換えDNA法によって生産することができる。
【0146】
完全ヒト抗体は、ヒト対象の治療的処置に特に望ましい。かかる抗体は、内在性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子は発現することができないが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して、生産することができる。トランスジェニックマウスは、選択された抗原、例えばNAALADL2の全体又は一部を用いて通常の様式で免疫される。抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使用して得ることができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化時に再編成し、その後、クラススイッチング及び体細胞突然変異を受ける。したがって、かかる技術を使用して、治療に有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を生産することができる。ヒト抗体を生産するこの技術の概要については、Lonberg及びHuszarの文献(1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を生産するためのこの技術、並びにかかる抗体を生産するためのプロトコールの詳細な論考については、例えば、米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,661,016号;及び、米国特許第5,545,806号を参照されたい。加えて、Abgenix社(Freemont,CA)及びGenpharm社(San Jose, CA)などの企業は、先に記載したものと類似の技術を使用して、選択された抗原に対するヒト抗体を提供するのに関係し得る。
【0147】
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「ガイドセレクション」と呼ばれる技術を使用して生産することができる。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウス抗体)は、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を導くために使用される(Jespersらの文献(1994):BioTechnology 12:899-903)。
【0148】
本発明の抗体は、選択された標的への結合について、ポリペプチドのライブラリーを作製してスクリーニングするファージディスプレイ技術の使用により生産することもできる。例えば、Cwirlaらの文献:Proc. Natl. Acad. Sci USA 87, 6378-82, 1990;Devlinらの文献:Science 249, 404-6, 1990, Scott及びSmithの文献:Science 249, 386-88, 1990;及び、Ladnerらの米国特許第5,571,698号を参照されたい。ファージディスプレイ法の基本的概念は、スクリーニングされるポリペプチドをコードするDNAとそのポリペプチドとの間の物理的関連付けの確立である。この物理的関連付けは、ポリペプチドをコードするファージゲノムを封入するキャプシドの一部としてポリペプチドを提示する、ファージ粒子により提供される。ポリペプチドとその遺伝物質との間の物理的関連付けの確立は、異なるポリペプチドを有する非常に多数のファージの同時大量スクリーニングを可能にする。標的への親和性を有するポリペプチドを提示するファージは標的に結合し、これらのファージは、標的への親和性スクリーニングにより濃縮される。これらのファージから提示されるポリペプチドの同一性は、これらの各ゲノムにより決定することができる。そして、これらの方法を用いて、所望の標的に対し結合親和性を有すると確定されたポリペプチドは、従来の手段により大量に合成することができる。例えば、米国特許番号第6,057,098号を参照されたい。当該文献のすべての表、図面及び特許請求の範囲を含むそのすべてが引用により本明細書中に組み込まれる。特に、かかるファージは、レパートリ又は組合せの抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示するのに利用することができる。関心対象の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原、例えば、標識化抗原、又は固体表面若しくはビーズに結合若しくは捕捉された抗原を使用して、選択又は同定することができる。これらの方法で使用するファージは、通常、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えにより融合されたFab、Fv又はジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するファージから発現されたfd 及びM13結合ドメインを含む、線維状ファージである。本発明の抗体を作製するのに用いることができるファージディスプレイ法には、Brinkmanらの文献:J. Immunol.Methods 182:41-50 (1995);Amesらの文献:J. Immunol.Methods 184:177-186 (1995);Kettleboroughらの文献:Eur.J. Immunol.24:952-958 (1994);Persicらの文献:Gene 187 9-18 (1997);Burtonらの文献:Advances in Immunology 57:191-280 (1994);国際特許出願第PCT/GB91/01134号;国際公開公報第90/02809号;同91/10737号;同92/01047号;同92/18619号;同93/11236号;同95/15982号;同95/20401号;及び、米国特許第5,698,426号;同5,223,409号;同5,403,484号;同5,580,717号;同5,427,908号;同5,750,753号;同5,821,047号;同5,571,698号;同5,427,908号;同5,516,637号;同5,780,225号;同5,658,727号;同5,733,743号及び同5,969,108号(それぞれ、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる。)に開示されているものが含まれる。
【0149】
上述の文献に記載されているように、ファージ選択の後、ファージ由来の抗体コード領域は、ヒト抗体を含む全抗体又はいずれかの他の所望の抗原結合断片を作製するために単離して使用することができ、例えば、以下に詳細に説明するような哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含む、いずれかの所望の宿主において発現させることができる。例えば、Fab、Fab'及びF(ab')
2断片を組換えにより作製する技術は、国際公開公報第92/22324号;Mullinaxらの文献:BioTechniques 12(6):864-869 (1992);及びSawaiらの文献, AJRI 34:26-34 (1995);及びBetterらの文献:Science 240: 1041-1043 (1988)(前述の文献は引用によりそのすべてが組み込まれる。)に開示されているものなどの、当該技術分野で公知の方法を用いて、利用することもできる。
【0150】
単鎖Fvs及び抗体を生産するのに使用することができる技術の例としては、米国特許第4,946,778号及び同5,258,498号;Hustonらの文献:Methods in Enzymology 203:46-88 (1991); Shuらの文献:PNAS 90:7995-7999 (1993);及びSkerraらの文献:Science 240:1038-1040 (1988)に記載されているものが挙げられる。
【0151】
本発明は、当該技術分野で公知の方法により作製することができる二重特異性抗体の使用を更に提供する。完全長二重特異性抗体の従来の生産は、2つの免疫グロブリン重鎖‐軽鎖対の同時発現であって、2つの鎖が異なる特異性を有する、前述の同時発現に基づいている(Milsteinらの文献1983:Nature, 305:537-539)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな分類のため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の潜在的混合物を生じ、そのうちの1つのみが的確な二重特異性構造を有する。通常、親和性クロマトグラフィー工程によってなされる的確な分子の精製は、むしろ扱いにくく、産物収率は低い。同様の手法は、1993年5月13日に公開された国際公開公報第93/08829号、及びTrauneckerらの文献1991:EMBO J. 10:3655-3659に開示されている。
【0152】
別のより好ましいアプローチによると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体‐抗原結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。該融合物は、好ましくは、ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインを伴う。融合物のうちの少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含有する、第1の重鎖定常部(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物、及び所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを別々の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクトする。これは、構築に使用した不均等な比率の3つのポリペプチド鎖が最適収量を提供する実施態様において、3つのポリペプチド断片の相互の比率を調節する際に優れた柔軟性を提供する。しかし、同等の比率の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現により高収率を生じる場合、又は比率が具体的意義を有しない場合、2つ又は3つすべてのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することができる。
【0153】
このアプローチの好適な実施態様において、二重特異性抗体は、一方のアームにおける第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、及び他方のアームにおける(第2の結合特性を提供する)ハイブリッド免疫グロブリン重鎖‐軽鎖対から構成される。二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することが、容易な単離方法を提供するので、この非対称構造は、望まれない免疫グロブリン鎖組合せからの所望の二重特異性化合物の単離を促進することがわかった。このアプローチは、1994年3月3日に公開された国際公開公報第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体の生産に関する更なる詳細については、例えば、Sureshらの文献:Methods in Enzymology, 1986 121:210を参照されたい。
【0154】
本発明は、抗-NAALADL2免疫グロブリン分子の機能的に活性な断片、誘導体又は類似体を提供する。機能的に活性とは、断片、誘導体又は類似体が、断片、誘導体又は類似体が誘導される抗体により認識されるのと同じ抗原を認識する抗‐抗イディオタイプ抗体(すなわち、三次抗体)を誘発できることを意味する。具体的には、好適な実施態様において、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性は、フレームワーク及び特異的に抗原を認識するCDR配列に対するC末端であるCDR配列の欠失により強化することができる。どのCDR配列が抗原に結合するかについて判断するために、CDR配列を含有する合成ペプチドを、当該技術分野で公知のいずれかの結合アッセイ法による抗原を用いる結合アッセイに使用することができる。
【0155】
本発明は、F(ab')
2断片及びFab断片などであるがこれらに限定されない抗体断片を提供する。特異的なエピトープを認識する抗体断片は、公知の技術によって作製することができる。F(ab')
2断片は、可変領域、軽鎖定常領域及び重鎖のCH1ドメインから構成され、抗体分子のペプシン消化によって生産される。Fab断片は、F(ab')
2断片のジスルフィド架橋を還元することにより生産される。また、本発明は、本発明の抗体の重鎖と軽鎖との二量体、又はFvs若しくは単鎖抗体(SCA)などのいずれかのその最小断片(例えば、米国特許第4,946,778号;Birdの文献1988:Science 242:423-42;Hustonらの文献1988:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;及び、Wardらの文献1989:Nature 334:544-54に記載されているようなもの)、又は本発明の抗体と同じ特異性を有するいずれかの他の分子も提供する。単鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖及び軽鎖断片を連結することにより形成され、一本鎖ポリペプチドを生じる。大腸菌(E. coli)における機能的なFv断片の集成のための技術を使用してもよい(Skerraらの文献1988:Science, 242:1038-1041)。
【0156】
他の実施態様において、本発明は、本発明の免疫グロブリンの融合タンパク質(又はその機能的に活性な断片)、例えば、免疫グロブリンがN末端又はC末端において、共有結合(例えば、ペプチド結合)を介してその免疫グロブリンでない別のタンパク質のアミノ酸配列(又はその一部、好ましくはタンパク質の少なくとも10、20又は50アミノ酸部分)に融合されている融合タンパク質を提供する。好ましくは、免疫グロブリン又はその断片は、定常ドメインのN末端において、他のタンパク質に共有結合される。上述したように、かかる融合タンパク質は、精製を容易にし、インビボでの半減期を増加させ、及び免疫系に対する上皮関門を越えた抗原の送達を増強し得る。
【0157】
本発明の免疫グロブリンには、修飾される、すなわち、いずれかの型の分子の共有結合が免疫特異的結合を損なわない限り、かかる共有結合による類似体及び誘導体が含まれる。例えば、免疫グロブリンの誘導体及び類似体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、ホスフィレーション(phosphylation)、アミド化、公知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンド又は他のタンパク質に対する結合などにより更に修飾されたものが含まれるが、これらに限定されない。特定の化学開裂、アセチル化、ホルミル化などを含むが、これらに限定されない多くの化学修飾のいずれかを、公知の技術により行うことができる。加えて、類似体又は誘導体は、1以上の非古典的アミノ酸を含有し得る。
【0158】
前述の抗体は、NAALADL2の局在及び活性に関して、当該技術分野で公知の方法で、例えば、このタンパク質を画像化するのに、適切な生理的試料においてそのレベルを測定するのに、診断方法などにおいて、使用することができる。
【0159】
(NAALADL2に対するアフィボディの生産)
アフィボディ分子は、ブドウ球菌プロテインAのIgG-結合ドメインのうちの1つに由来する、58アミノ酸残基のタンパク質ドメインに基づく親和性タンパク質の新規なクラスを表す。この三重螺旋束ドメインは、コンビナトリアルファージミドライブラリーの構築に対する足場として使用され、これからファージディスプレイ技術を使用して、所望の分子を標的化するアフィボディ変種を選択し得る(Nord K, Gunneriusson E, Ringdahl J, Stahl S, Uhlen M, Nygren PAの文献:「αヘリカル細菌受容体ドメインのコンビナトリアルライブラリーから選択された結合タンパク質(Binding proteins selected from combinatorial libraries of an α-helical bacterial receptor domain)」, Nat Biotechnol 1997; 15:772-7. Ronmark J, Gronlund H, Uhlen M, Nygren PAの文献:「プロテインAのコンビナトリアル工学からのヒト免疫グロブリンA (IgA)特異的リガンド(Human immunoglobulin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, Eur J Biochem 2002;269:2647-55)。その低分子量(6kDa)と組み合わせたアフィボディ分子の単純で堅固な構造により、広範囲の用途に、例えば検出試薬として(Ronmark J, Hansson M, Nguyen T,らの文献:「大腸菌において産生されるアフィボディ-Fcキメラの構築及び特性評価(Construction and characterization of Affibody-Fc chimeras produced in Escherichia coli)」, J Immunol Methods 2002;261 :199-211)、及び受容体相互作用を阻害するために(Sandstorm K, Xu Z, Forsberg G, Nygren PAの文献:「コンビナトリアルタンパク質工学により開発されたCD28結合アフィボディリガンドによるCD28-CD80共刺激シグナルの阻害(Inhibition of the CD28-CD80 co-stimulation signal by a CD28-binding Affibody ligand developed by combinatorial protein engineering)」, Protein Eng 2003; 16:691-7)、アフィボディ分子が適するようになる。アフィボディ及びその生産方法の更なる詳細は、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる米国特許第5831012号を参照することにより得ることができる。
【0160】
また、標識化アフィボディは、アイソフォームの存在量を測定するためのイメージング用途にも有用であり得る。
【0161】
(NAALADL2に対するドメイン抗体の生産)
本明細書における抗体についての言及は、ドメイン抗体についての言及を包含する。ドメイン抗体(dAb)は、抗体の最も小さな機能的結合単位であり、ヒト抗体の重(V
H)鎖又は軽(V
L)鎖の可変領域に対応する。ドメイン抗体は、およそ13kDaの分子量を有する。Domantis社は、完全ヒトV
H及びV
L dAbの一連の大きくかつ高度に機能的なライブラリーを開発し(各ライブラリーにおいて10,000,000,000超の異なる配列)、これらのライブラリーを使用して治療標的に特異的であるdAbを選択する。多くの従来抗体とは対照的に、ドメイン抗体は、細菌、酵母及び哺乳動物細胞系において良好に発現する。ドメイン抗体及びその生産方法の更なる詳細は、次に示すものを参照することによって得ることができる:米国特許第6,291,158号;同6,582,915号;同6,593,081号;同6,172,197号;同6,696,245号;米国出願第2004/0110941号;欧州特許出願第1433846号、並びに欧州特許第0368684号及び同0616640号;国際公開公報第05/035572号、同04/101790号、同04/081026号、同04/058821号、同04/003019号及び同03/002609号(これらはそれぞれ、その全体が本明細書中に引用により組み込まれる。)。
【0162】
(NAALADL2に対するナノボディの生産)
ナノボディは、抗体由来の治療用タンパク質であり、天然に存在する重鎖抗体の固有の構造及び機能特性を含有する。これらの重鎖抗体は、1つの可変ドメイン(VHH)及び2つの定常ドメイン(C
H2及びC
H3)を含有する。重要なことに、クローン化されかつ単離されたVHHドメインは、もとの重鎖抗体の全抗原結合能を保持する完全に安定なポリペプチドである。ナノボディは、ヒト抗体のV
Hドメインと高い相同性を有し、活性の損失を全く伴わずに更にヒト化することができる。重要なことに、ナノボディは低免疫原性能を有し、これは霊長類研究において、ナノボディリード化合物を用いて確認された。
【0163】
ナノボディは、従来型抗体の利点を、低分子薬の重要な特徴と組み合わせる。従来の抗体のように、ナノボディは、高い標的特異性、これらの標的に対する高親和性、及び低い固有毒性を示す。しかしながら、低分子薬のように、ナノボディは、酵素を阻害することができ、受容体間隙に容易に到達し得る。さらに、ナノボディは極めて安定で、注入以外の手段により投与することができ(例えば、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる国際公開公報第04/041867号を参照)、作製が容易である。ナノボディの他の利点には、これらの小さいサイズにより共通していないか又は隠れたエピトープを認識すること、これらの特有の三次元構造に起因する高親和性及び選択性によりタンパク質標的の腔若しくは活性部位に結合すること、薬剤様式柔軟性、半減期の合目的化、並びに薬剤発見の容易性及び迅速性が含まれる。
【0164】
ナノボディは、1つの遺伝子によってコードされ、ほとんどすべての原核生物及び真核生物宿主、例えば大腸菌(例えば、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる米国特許第6,765,087号参照)、カビ(例えば、アスペルギルス又はトリコデルマ)、及び酵母(例えば、サッカロマイセス、クルイベロマイセス、ハンセヌラ又はピキア)(例えば、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる米国特許第6,838,254号参照)において効率的に生産される。生産過程は計測可能であり、数キログラム量のナノボディが生産されている。ナノボディは、従来の抗体と比較して優れた安定性を発揮するので、これらは、長期貯蔵寿命があり、すぐに使用可能な溶液として製剤化することができる。
【0165】
ナノクローン法(例えば、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる国際公開公報06/079372号参照)は、B細胞の自動化ハイスルーアウト選択に基づき、所望の標的に対してナノボディを生成する特許取得済みの方法である。
【0166】
(NAALADL2に対するユニボディの生産)
ユニボディは、別の抗体断片技術である。しかしながら、これは、IgG4抗体のヒンジ領域の除去に基づくものである。ヒンジ領域の欠失は、従来のIgG4抗体の基本的に半分のサイズであり、かつIgG4抗体の二価結合領域よりもむしろ一価結合領域を有する分子を生じる。IgG4抗体が不活性で、それゆえ免疫系と相互作用しないことも周知であり、これは免疫応答が望ましくない疾患の治療に有利であり得、この利点はユニボディに受け継がれている。例えば、ユニボディは、これらが結合した細胞を阻害又は抑制するが、死滅させないように機能し得る。加えて、癌細胞に結合するユニボディは、癌細胞が増殖することを刺激しない。さらに、ユニボディは従来型IgG4抗体の約半分のサイズであるので、これらは、潜在的に有利な効率でより大きな固形腫瘍により良好な分布を示し得る。ユニボディは、全IgG4抗体と同等の速度で身体から排出され、これらの抗原に対し全抗体と同等の親和性で結合することができる。ユニボディの更なる詳細は、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる特許(国際公開公報第2007/059782号)を参照することにより得ることができる。
【0167】
(NAALADL2に対するDARPinの生産)
DARPin(設計されたアンキリンリピートタンパク質(Designed Ankyrin Repeat Proteins))は、非抗体ポリペプチドの結合能力を利用するために開発された、抗体模倣体DRP(設計されたリピートタンパク質(Designed Repeat Protein))技術の1つの例である。アンキリン又はロイシンリッチリピートタンパク質などのリピートタンパク質は遍在的な結合分子であり、抗体と異なった様式で、細胞内及び細胞外で生じる。これらの固有のモジュラー構造は、構造単位を反復すること(繰返し)を特徴とし、これらはともに積み重なり、可変的及びモジュラー標的結合表面を提示する長いリピートドメインを形成する。このモジュラリティに基づき、高度に多様化された結合特異性を有するポリペプチドのコンビナトリアルライブラリーを作製することができる。この戦略には、可変表面残基を提示する自家和合性リピートのコンセンサス設計及びリピートドメインへのこれらのランダムなアセンブリが含まれる。
【0168】
DARPinは、細菌発現系において非常に高収率で生産でき、これらは公知の最も安定なタンパク質に属する。ヒト受容体、サイトカイン、キナーゼ、ヒトプロテアーゼ、ウイルス及び膜タンパク質を含む広範囲の標的タンパク質に対し高度に特異的で高親和性なDARPinが選択された。一桁台のナノモルからピコモル範囲に親和性を有するDARPinを得ることができる。
【0169】
DARPinは、ELISA、サンドイッチELISA、フローサイトメトリー解析(FACS)、免疫組織化学法(IHC)、チップ適用、親和性精製又はウエスタンブロット法を含む、広範囲の用途に使用されている。DARPinは、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)に融合した細胞内マーカータンパク質として、細胞内区画内で非常に活性であることも判明した。DARPinは更に、pM範囲のIC
50でウイルス侵入を阻害するのに使用された。DARPinは、タンパク質‐タンパク質相互作用を遮断するのに理想的であるだけでなく、酵素も阻害する。プロテアーゼ、キナーゼ及び輸送体は、ほぼアロステリック阻害様式で良好に阻害された。腫瘍上の非常に速くかつ特異的な富化並びに血液比率に対する腫瘍の高度な優位性により、DARPinがインビボ診断又は治療アプローチに非常に適するようになる。
【0170】
DARPin及び他のDRP技術に関する追加的情報は、米国特許出願公開第2004/0132028号及び国際公開公報第02/20565号に見出すことができ、これらはともに、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
【0171】
(NAALADL2に対するアンチカリンの生産)
アンチカリンは更なる抗体模倣技術であるが、この場合における結合特異性は、ヒト組織及び体液において自然にかつ豊富に発現される低分子量タンパク質のファミリーである、リポカリンに由来する。リポカリンは、化学的に感応性な又は不溶な化合物の生理学的輸送及び貯蔵に関連して、インビボにおける一定の範囲の機能を実行するために進化してきた。リポカリンは、タンパク質の一方の末端で4つのループを支持する、高度に保存されたβ-バレルを含む、堅固な固有の構造を有する。これらのループは、結合ポケットへの入口、及び個々のリポカリンの間の結合特異性におけるバリエーションの主因である分子のこの部分における高次構造的な差異を形成する。
【0172】
保存されたβ-シートフレームワークにより支持される超可変ループの全体構造は免疫グロブリンを連想させるが、リポカリンは、サイズに関して抗体と大きく異なり、これは、単一の免疫グロブリンドメインよりもわずかに大きい160〜180アミノ酸の単一のポリペプチド鎖からなる。
【0173】
リポカリンはクローン化され、これらのループは、アンチカリンを作製するために操作に供される。構造的に多様なアンチカリンのライブラリーが作製されており、アンチカリンディスプレイは、結合機能の選択及びスクリーニングを可能にし、続いて、原核生物系又は真核生物系の更なる分析のための可溶タンパク質の発現及び生産がなされる。試験は、アンチカリンが実質的に任意のヒト標的タンパク質に特異的であるように開発できることを実証することに成功し;これらは単離することができ、ナノモル以上の範囲の結合親和性で得ることができる。
【0174】
アンチカリンは、二重標的化タンパク質、いわゆるデュオカリンとして構成することもできる。デュオカリンは、標準的な製造法を用いて、1つの容易に生成された単量体タンパク質における2つの別々の治療標的に結合するとともに、その2つの結合ドメインの構造方向性(structural orientation)にかかわらず、標的特異性及び親和性を保持する。
【0175】
単一の分子を介する複数の標的の調節は、1つよりも多くの原因因子を含むことが公知の疾患において、特に有利である。さらに、デュオカリンなどの二価又は多価の結合様式は、疾患において細胞表面分子を標的化すること、シグナル伝達経路においてアゴニスト的効果を媒介すること、又は細胞表面受容体の結合及びクラスタリングを介する強化された内部移行効果を誘導することにおいて、顕著な潜在性を有する。さらにまた、デュオカリンの高度に固有な安定性は単量体アンチカリンに匹敵し、柔軟な製剤及びデュオカリンの送達能を提供する。
【0176】
アンチカリンに関する追加的情報は、米国特許第7,250,297号及び国際公開公報第99/16873号に見出すことができ、これらはともに、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
【0177】
(NAALADL2に対するアビマーの生産)
アビマーは、インビトロエキソンシャフリング及びファージディスプレイによりヒト細胞外受容体ドメインの大きなファミリーから進化し、結合特性及び阻害特性を有するマルチドメインタンパク質を生じる。複数の独立する結合ドメインを連結することは、結合力を生み出すことが示されており、従来の単一エピトープ結合タンパク質と比較して親和性及び特異性の向上をもたらす。他の考えられ得る利点には、大腸菌における複数標的特異的分子の単純かつ効果的な生産、耐熱性の向上及びプロテアーゼに対する耐性が含まれる。サブナノモルの親和性を有するアビマーは、種々の標的に対して得られている。
【0178】
アビマーに関する追加的情報は、米国特許出願公開第2006/0286603号、同2006/0234299号、同2006/0223114号、同2006/0177831号、同2006/0008844号、同2005/0221384号、同2005/0164301号、同2005/0089932号、同2005/0053973号、同2005/0048512号、同2004/0175756号に見出すことができ、これらはすべて、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
【0179】
(NAALADL2に対するバーサボディの生産)
バーサボディは、15%超のシステインを有する3〜5kDaの小さいタンパク質であり、これは、高いジスルフィド密度足場を形成し、一般的なタンパク質が有する疎水性コアを置換する。疎水性コアを含み、少数のジスルフィドを有する多数の疎水性アミノ酸の置換は、より小さく、より親水性で(より少ない凝集及び非特異的結合)、プロテアーゼ及び熱に対してより耐性があり、かつより低密度のT細胞エピトープを有するタンパク質を生じる。これは、MHC提示に大部分寄与する残基が疎水性であるからである。これら4つの特性のすべては、免疫原性に影響を及ぼすことが周知であるとともに、これらは、免疫原性を大きく減少させると予測される。
【0180】
バーサボディについてのインスピレーションは、ヒル、ヘビ、クモ、サソリ、カタツムリ及びアネモネによって産生される天然の注射可能なバイオ医薬品から生じ、これらは、予想外に低い免疫原性を示すことが公知である。サイズ、疎水性、タンパク質分解性抗原プロセシング、及びエピトープ密度を設計し、スクリーニングすることにより選択された天然のタンパク質ファミリーで開始することは、天然の注射可能なタンパク質の平均をはるかに下回るレベルまで最小化する。
【0181】
バーサボディの構造を前提とする場合、これらの抗体模倣体は、多価性、複特異性、半減期機構の多様性、組織標的化モジュール、及び抗体Fc領域の存在しない状態を含む、多用な様式を提供する。さらに、バーサボディは大腸菌において高収率で生産され、これらの親水性及び小さなサイズにより、バーサボディは高度に可溶性であり、高濃度で製剤化することができる。バーサボディは、例外的に、熱安定性(バーサボディは煮沸することができる。)であり、長期の貯蔵寿命をもたらす。
【0182】
バーサボディに関する追加的情報は、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0191272号において見出すことができる。
【0183】
(親和性試薬の発現)
(抗体の発現)
本発明の抗体は、抗体合成に関する当該技術分野で公知のいずれかの方法、特に、化学合成によって、又は組換え発現によって生産することができ、好ましくは組換え発現技術によって生産される。
【0184】
抗体又はその断片、誘導体又は類似体の組換え発現は、抗体をコードする核酸の構築を必要とする。抗体のヌクレオチド配列が公知である場合、抗体をコードする核酸は、(例えば、Kutmeierらの文献1994:BioTechniques, 17:242に記載されているように)化学的に合成されたオリゴヌクレオチドから集成してもよく、これは、簡単にいうと、抗体をコードする配列の部分を含有した重複するオリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーション、そして、PCRによる連結されたオリゴヌクレオチドの増幅を含む。
【0185】
あるいは、抗体をコードする核酸は、抗体をクローニングすることによって得ることができる。特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンは利用できないが、抗体分子の配列が公知の場合、該抗体をコードする核酸は、適切な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリー、又は抗体を発現するいずれかの組織又は細胞から生産されるcDNAライブラリー)から、配列の3’及び5’末端にハイブリダイズし得る合成プライマーを使用するPCR増幅、又は特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって、得ることができる。
【0186】
特定の抗原を特異的に認識する抗体分子(又は、かかる抗体をコードする核酸をクローニングするためのcDNAライブラリーのための供与源)が利用することができない場合、特定の抗原に特異的な抗体は、当該技術分野で公知のいずれかの方法によって、例えばウサギなどの動物を免疫して、ポリクローナル抗体を生産することによって、又は例えばモノクローナル抗体を作製することによって、生産することができる。あるいは、少なくとも抗体のFab部分をコードするクローンは、(例えば、Huseらの文献1989:Science 246:1275-1281に記載されているように)特異抗原に結合するFab断片のクローン用のFab発現ライブラリーをスクリーニングすることによって、又は抗体ライブラリーをスクリーニングすることによって(例えば、Clacksonらの文献1991:Nature 352:624;Haneらの文献1997:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4937参照)、得ることができる。
【0187】
一旦、少なくとも抗体分子の可変ドメインをコードする核酸が得られたら、これを、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含有するむベクターに導入することができる(例えば、国際公開公報第86/05807号;同89/01036号;及び、米国特許第5,122,464号参照)。完全な抗体分子の発現を可能にする核酸との同時発現のための完全な軽鎖又は重鎖を含有するベクターも利用することができる。そして、抗体をコードする核酸を使用して、スルフヒドリル基を含有しないアミノ酸残基との鎖内ジスルフィド結合に関与する1以上の可変領域システイン残基を置換する(又は欠失させる)のに必要なヌクレオチド置換又は欠失を導入することができる。かかる修飾は、ヌクレオチド配列における特定の突然変異又は欠失の導入のための当該技術分野で公知のいずれかの方法、例えば化学的突然変異誘発、インビトロ部位特異的突然変異誘発(Hutchinsonらの文献1978:J. Biol. Chem. 253:6551)、PCTに基づく方法などであるが、これらに限定されない方法で行うことができる。
【0188】
さらに、適切な生物活性のヒト抗体分子由来遺伝子とともに適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来遺伝子をスプライシングすることによる、「キメラ抗体」の生産のために開発された技術(Morrisonらの文献1984:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:851-855;Neubergerらの文献1984:Nature 312:604-608;Takedaらの文献1985:Nature 314:452-454)を使用することができる。上述したように、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物の種に由来する分子、例えば、マウスmAb及びヒト抗体定常領域に由来する可変領域を有する、例えばヒト化抗体などの分子である。
【0189】
一旦、本発明の抗体分子をコードする核酸が得られたら、抗体分子の生産のためのベクターは、当該技術分野で周知の技術を使用する組換えDNA技術によって生産することができる。したがって、抗体分子の配列を含有する核酸を発現することによりNAALADL2を調製するための方法が本明細書に記載される。当業者に周知の方法を用いて、抗体分子コード配列並びに適切な転写及び翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝子組換えが含まれる。例えば、Sambrookらの文献(1990, 「分子クローニング:研究室マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」,第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)及びAusubelら(編)の文献(1998, 「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」, John Wiley & Sons, NY)に記載されている技術を参照されたい。
【0190】
発現ベクターを従来技術によって宿主細胞に移入し、次いで、トランスフェクト細胞を従来技術によって培養し、本発明の抗体を生産する。
【0191】
本発明の組換え抗体を発現するのに使用される宿主細胞は、大腸菌などの細菌細胞、又は好ましくは、特に組換え抗体分子全体の発現のための真核細胞のいずれかであってもよい。特にチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと併せて、抗体の有効な発現系である(Foeckingらの文献1986:Gene 45: 101;Cockettらの文献1990:BioTechnology 8:2)。
【0192】
種々の宿主‐発現ベクター系を、本発明の抗体分子を発現させるのに利用してもよい。かかる宿主‐発現系は、関心対象のコード配列を生産し、その後に精製され得る媒体を表すだけでなく、適切なヌクレオチドコード配列により形質転換されたか又はトランスフェクトされた場合、本発明の抗体分子をインサイチュで発現し得る細胞も表し得る。これらには、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA若しくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌、枯草菌)などの微生物;抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロマイセス、ピキア);抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクターで感染させた植物細胞系(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)、又は抗体コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;又は、哺乳動物細胞のゲノムに由来する(例えば、メタロチオネインプロモーター)若しくは哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞)が含まれるが、これらに限定されない。
【0193】
細菌系では、発現される抗体分子の意図される用途に応じて、多数の発現ベクターを都合よく選択することができる。例えば、大量のかかるタンパク質が生産される場合、抗体分子を含む医薬組成物の生産のために、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を命令するベクターが望ましい場合がある。かかるベクターには、抗体コード配列がインフレームでlacZコード領域を有するベクターにそれぞれ連結され、それゆえ、融合タンパク質が生産され得る、大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherらの文献1983:EMBO J. 2:1791);pINベクター(Inouye及びInouyeの文献1985:Nucleic Acids Res. 13:3101-3109);Van Heeke及びSchusterの文献:1989, J. Biol. Chem. 24:5503-5509)などが含まれるが、これらに限定されない。pGEXベクターを使用して、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させてもよい。一般に、かかる融合タンパク質は可溶性であり、マトリクスグルタチオン‐アガロースビーズへの吸着及び結合、続く遊離グルタチオンの存在下における溶出により、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローン化された標的遺伝子産物がGST部分から放出することができるように、トロンビン又はXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0194】
昆虫系では、外来遺伝子を発現するためのベクターとして、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)を使用する。このウイルスは、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞において増殖する。抗体コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個々にクローン化することができ、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置することができる。哺乳動物宿主細胞において、多くのウイルスに基づく発現系(例えば、アデノウイルス発現系)を利用することができる。
【0195】
上述のように、挿入された配列の発現を調節するか、又は望まれる特定の様式で遺伝子産物を修飾及び加工された宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のかかる修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能に重要であり得る。
【0196】
組換え抗体の長期多収生産のためには、安定な発現が好ましい。例えば、安定的に関心対象の抗体を発現する細胞株は、細胞を抗体のヌクレオチド配列及び選択可能なヌクレオチド配列(例えば、ネオマイシン又はハイグロマイシン)を含む発現ベクターでトランスフェクトすること、及び選択可能マーカーの発現について選択することにより、生産することができる。かかる改変細胞株は、抗体分子と直接又は間接的に相互作用する化合物のスクリーニング及び評価に特に有用であり得る。
【0197】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって増加させることができる(総説については、Bebbington及びHentschelの文献:「DNAクローニングにおける哺乳動物細胞中のクローン化遺伝子の発現についての遺伝子増幅に基づくベクターの使用(The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning)」, 第3版 (Academic Press, New York, 1987)を参照)。抗体を発現するベクター系においてマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養に存在する阻害剤のレベルを高めることは、マーカー遺伝子の複製数を増加させる。増幅された領域は抗体遺伝子と関係するので、抗体の生産も増加する(Crouseらの文献1983:Mol. Cell. Biol. 3:257)。
【0198】
宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクター、すなわち、重鎖由来ポリペプチドをコードする第1のベクター、及び軽鎖由来ポリペプチドをコードする第2のベクターにより同時トランスフェクトしてもよい。2つのベクターは、同等の重鎖及び軽鎖ポリペプチドの発現を可能にする、同一の選択可能なマーカーを含有していてもよい。あるいは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドをともにコードする1つのベクターを使用してもよい。かかる状況において、有毒な遊離重鎖過剰を避けるために、軽鎖を重鎖の前に配置する必要がある(Proudfootの文献1986:Nature 322:52;Kohlerの文献1980:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2197)。重鎖及び軽鎖のコード配列は、cDNA又はゲノムDNAを含んでいてもよい。
【0199】
一旦本発明の抗体分子が組換え発現されたならば、これを、抗体分子の精製のための当該技術分野で公知のいずれかの方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインA若しくは特異抗原などを用いる親和性クロマトグラフィー、及びサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心単離、差動的溶解度により、又はタンパク質精製のための他のいずれかの標準的技術により、精製することができる。
【0200】
あるいは、任意の融合タンパク質を、発現される融合タンパク質に対して特異的な抗体を利用することによって、容易に精製することができる。例えば、Janknechtらの文献に記載されている系は、ヒト細胞株おいて発現される非変性融合タンパク質の容易な精製を可能にする(Janknechtらの文献1991:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8972-897)。この系では、遺伝子のオープンリーディングフレームが6ヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに翻訳可能に融合されるように、関心対象遺伝子をワクシニア組換えプラスミドにサブクローニングする。タグは、融合タンパク質に対するマトリクス結合ドメインとして有用である。組換えワクシニアウイルスを感染させた細胞由来の抽出物をNi
2+ニトリロ酢酸‐アガロースカラムにかけ、ヒスチジンタグを付けたタンパク質を、イミダゾール含有緩衝液で選択的に溶出する。
【0201】
次いで、これらの方法により生産された抗体を、関心対象の精製ポリペプチドとの親和性及び特異性について最初にスクリーニングし、必要であれば、抗体の親和性及び特異性の結果を、結合から除外されることが望まれるポリペプチドと比較することによって、選択してもよい。スクリーニング手順には、マイクロタイタープレートの別々のウェルにおける精製ポリペプチドの固定化を含めることができる。次いで、可能性のある抗体又は抗体群を含有する溶液をそれぞれのマイクロタイターのウェルに入れ、約30分間〜2時間インキュベートする。そして、マイクロタイターのウェルを洗浄し、標識化二次抗体(例えば、産生抗体がマウス抗体である場合、アルカリホスファターゼに複合された抗マウス抗体)をウェルに添加し、約30分間インキュベートし、その後洗浄する。基質をウェルに添加し、固定されたポリペプチドに対する抗体が存在する場合、呈色反応がみられる。
【0202】
次いで、こうして同定された抗体を、選択したアッセイデザインにおいて親和性及び特異性について更に分析してもよい。標的タンパク質に関するイムノアッセイの開発において、精製した標的タンパク質は、選択された抗体を使用するイムノアッセイの感受性及び特異性を判断するための標準として機能する。種々の抗体の結合親和性は異なり得るので、(例えば、サンドイッチアッセイにおいて)特定の抗体対が立体配置的になどで互いに妨げることがあり得、抗体のアッセイ性能は、抗体の絶対親和性及び特異性よりも重要な基準であり得る。
【0203】
当業者であれば、多くのアプローチが、抗体又は結合断片を生産すること、及び種々のポリペプチドに対する親和性及び特異性についてスクリーニングし、かつ選択することに採用できるが、これらのアプローチは本発明の範囲を変更しないことを認識する。
【0204】
治療的用途に関し、抗体(特に、モノクローナル抗体)は、好適には、ヒト又はヒト化動物(例えば、マウス)抗体であってもよい。動物抗体は、免疫原としてヒトタンパク質(例えば、NAALADL2)を使用し、動物において産生することができる。ヒト化は、通常、これにより同定されるCDRをヒトフレームワーク領域に移植することを含む。通常、鎖の高次構造を最適化するために、いくつかの後続のレトロ突然変異(retromutation)が必要とされる。かかる方法は当業者に公知である。
【0205】
(アフィボディの発現)
アフィボディの構築は、他に記載されており(Ronnmark J, Gronlund H, Uhlen, M., Nygren P.Aの文献:「プロテインAのコンビナトリアル工学からのヒト免疫グロブリンA(IgA)特異リガンド(Human immunoglobulin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, 2002, Eur. J. Biochem. 269, 2647-2655)、アフィボディファージディスプレイライブラリーの構築を含む(Nord, K., Nilsson, J., Nilsson, B., Uhlen, M.及びNygren, P.Aの文献:「a-ヘリカル細菌受容体ドメインのコンビナトリアルライブラリー(A combinatorial library of an a-helical bacterial receptor domain)」, 1995, Protein Eng. 8, 601-608。Nord, K., Gunneriusson, E., Ringdahl, J., Stahl, S., Uhlen, M.及びNygren, P.Aの文献:「a-ヘリカル細菌受容体ドメインのコンビナトリアルライブラリーから選択された結合タンパク質(Binding proteins selected from combinatorial libraries of an a-helical bacterial receptor domain)」, 1997, Nat. Biotechnol. 15, 772-777)。
【0206】
バイオセンサ結合試験を用いて最適なアフィボディ変種を調査するためのバイオセンサ分析も、他に記載されている(Ronnmark J, Gronlund H, Uhlen, M., Nygren P.Aの文献:「プロテインAのコンビナトリアル工学からのヒト免疫グロブリンA(IgA)特異リガンド(Human immunoglobulin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, 2002, Eur. J. Biochem. 269, 2647-2655)。
【0207】
(親和性試薬修飾)
好ましい実施態様において、抗体又はその断片などの抗-NAALADL2親和性試薬は、診断部分(検出可能な標識など)又は治療的部分に複合される。抗体は、診断に、又は所定の治療計画の有効性を判断するのに使用することができる。検出は、抗体を検出可能な物質(標識)に連結することによって促進することができる。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、ポジトロン放射金属(ポジトロン放出断層撮影における使用のため)、及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。一般に、本発明による診断に使用する、抗体に複合することができる金属イオンについては、米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素には、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β‐ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ;適切な補欠分子族には、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンが含まれ;適切な蛍光物質には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリトリンが含まれ;適切な発光物質には、ルミノールが含まれ;適切な生物発光物質には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが含まれ;適切な放射性核種には、
125I、
131I、
111In及び
99Tcが含まれる。
68Gaも利用することができる。
【0208】
上に示すように、本発明に使用する抗体などの親和性試薬は、細胞毒素、薬物(例えば、免疫抑制薬)又は放射性毒素などの治療的部分に複合することができる。かかる複合体は、本明細書中で「免疫複合体」とも称される。1以上の細胞毒素を含む免疫複合体は「免疫毒素」と称される。細胞毒素又は細胞傷害性物質には、細胞に対して有害な(例えば、死滅させる)いずれかの物質が含まれる。その例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン、並びにこれらの類似体又は相同体が挙げられる。また、治療剤としては、例えば、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、並びにシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧称ダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧称アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン及びアントラマイシン(AMC))、並びに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)も挙げられる。
【0209】
本発明の抗体に複合できる治療用細胞毒素の他の好ましい例としては、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、メイタンシン及びアウリスタチン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。カリケアマイシン抗体複合体の例は市販されている(Mylotarg(登録商標);American Home Products社製)。
【0210】
細胞毒素は、当該技術分野において利用可能なリンカー技術を使用して、本発明の抗体に複合することができる。抗体に細胞毒素を複合させるのに使用するリンカーの種類の例としては、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド、及びペプチド含有リンカーが挙げられるが、これらに限定されない。リンカーは、例えば、リソソーム区画内の低いpHによって切断されやすい、又はカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などの腫瘍組織において優先的に発現されるプロテアーゼなどのプロテアーゼによって切断されやすいものを選択することができる。
【0211】
細胞毒素の例は、例えば、米国特許第6,989,452号、同7,087,600号、及び同7,129,261号、国際特許出願第PCT/US2002/17210号、同PCT/US2005/017804号、同PCT/US2006/37793号、同PCT/US2006/060050号、同PCT/US2006/060711号、国際公開公報第2006/110476号、並びに米国特許出願第60/891,028号(これらの開示はすべて、全体において引用により本明細書中に組み込まれる。)に記載されている。細胞毒素の種類、リンカー、及び抗体への治療剤の複合方法についての更なる論考については、Saito, G.らの文献(2003):Adv. Drug Deliv. Rev. 55: 199-215;Trail, P.A.らの文献(2003):Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337;Payne, G.の文献(2003):Cancer Cell 3:207-212;Allen, T.M.の文献(2002):Nat. Rev. Cancer 2:750-763;Pastan, I.及びKreitman, R. J.の文献(2002):Curr. Opin. Investig. Drugs 3: 1089-1091;Senter, P.D.及びSpringer, C.J.の文献(2001):Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247-264も参照されたい。
【0212】
また、親和性試薬は、放射性同位体に複合して、細胞傷害性放射性医薬品(放射性免疫複合体ともいう。)を生成することもできる。診断又は治療に使用する抗体に複合することができる放射性同位元素の例としては、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90及びルテチウム177が挙げられるが、これらに限定されない。放射性免疫複合体の調製方法は、当該技術分野で確立されている。放射性免疫複合体の例は、商業的に入手可能であり、Zevalin(登録商標)(IDEC Pharmaceuticals社製)、及びBexxar(登録商標)(Corixa Pharmaceuticals社製)を含み、類似した方法を、本発明の抗体を使用して放射性免疫複合体を調製するのに用いることができる。
【0213】
また、親和性試薬は、フタロシアニン色素に複合されることもでき、以後これをフタロシアニン複合体と称す。診断又は治療に使用する抗体に複合することができるフタロシアニン色素の例は、IR700が挙げられるが、これに限定されない。フタロシアニン複合体の調製方法は、例えば、Mitsunaga M、Ogawa M、Kosaka N、Rosenblum LT、Choyke PL及びKobayashi Hの文献、Nat Med. 2011 Nov 6. doi: 10.1038/nm.2554 (2011)に記載されている。
【0214】
前述の複合体を使用して、所定の生物反応を修飾することができ、また、薬物部分は、古典的な化学治療剤に限定されるように解釈することはできない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質又はポリペプチドであり得る。かかるタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素若しくはジフテリア毒素などの酵素活性のある毒素若しくはその活性断片;腫瘍壊死因子若しくはインターフェロン‐γなどのタンパク質;又は、例えば、リンホカイン、インターロイキン‐1(「IL-1」)、インターロイキン‐2(「IL-2」)、インターロイキン‐6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、若しくは他の成長因子などの生物反応調節剤が含まれ得る。Senter P.D.の文献(2009):Curr. Opin. Chem. Biol. 13(3):235-244; Kovtunらの文献(2010):Cancer Res. 70(6):2528-2537を参照されたい。
【0215】
抗体にかかる治療的部分を複合させる技術は、周知であり、例えば、Arnonらの文献:「癌治療における薬剤の免疫標的化のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」, 「モノクローナル抗体と癌治療(Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy)」,Reisfeldら編, pp. 243-56 (Alan R. Liss社 1985);Hellstromらの文献:「ドラッグデリバリーのための抗体(Antibodies For Drug Delivery)」, 「ドラッグデリバリー制御(Controlled Drug Delivery)(第2版)」, Robinson ら編, pp. 623-53 (Marcel Dekker社 1987);Thorpeの文献:「癌治療における細胞傷害性物質の抗体担体:総説(Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review)」:「モノクローナル抗体'84:生物学的及び臨床応用(Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications)」, Pincheraら編, pp. 475-506 (1985);「癌治療における放射性同位元素標識化抗体の治療的使用に予想される分析、結果及び将来 (Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy)」, 「癌検出及び治療におけるモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy)」, Baldwinら編, pp. 303-16 (Academic Press社 1985);及び、Thorpeらの文献:Immunol. Rev., 62: 119-58 (1982)を参照されたい。
【0216】
あるいは、Segalにより米国特許第4,676,980号に記載されているように、抗体を第2の抗体に複合し、抗体ヘテロ複合体を形成することができる。
【0217】
抗体は、複合される治療的部分の有無にかかわらず、単独で、又は細胞傷害性因子及び/若しくはサイトカインと組み合わせて投与される治療薬として使用することができる。
【0218】
本発明は、抗体依存性細胞媒介性(antibody-directed cell-mediated)細胞傷害(ADCC)を誘導する、完全ヒト又はヒト化抗体も提供する。完全ヒト抗体は、タンパク質配列が天然に存在するヒト免疫グロブリン配列によってコードされており、単離された抗体産生ヒトBリンパ球、又は、染色体領域をコードするマウス免疫グロブリンがオルソログ的なヒト配列により置換されたマウスのトランスジェニックマウスBリンパ球のいずれかに由来する。後者の型のトランスジェニック抗体には、HuMab(Medarex社、CA)及びXenoMouse(Abgenix社、CA)が含まれるが、これらに限定されない。ヒト化抗体は、適切な抗原特異性の非ヒト抗体分子の定常領域が、適切なエフェクター機能を有するヒト抗体の、好ましくはIgGサブタイプの定常領域により置換される抗体である(Morrisonらの文献1984:Proc. Natl. Acad. Sci. 81:851-855; Neubergerらの文献1984:Nature 312:604-608;Takedaらの文献1985:Nature 314:452-454)。適切なエフェクター機能にはADCCが含まれ、これは、完全ヒト抗体又はヒト化抗体が癌細胞の表面上の標的に結合した場合、通常の免疫系の一部であるリンパ球の細胞死滅特性のスイッチを入れることによる、自然過程である。これらの活性なリンパ球、いわゆるナチュラルキラー(NK)細胞は、抗体が結合する生存細胞を破壊するために、細胞傷害過程を用いる。ADCC活性は、抗原特異的抗体及び免疫適格の生存ヒト対象から抽出した末梢血単核細胞の存在下、ユーロピウム(Eu
3+)標識された生存細胞からのEu
3+の放出を測定することにより検出及び定量化することができる。ADCC過程は、Janeway Jr. C.A.らの文献:Immunobiology, 第5版, 2001, Garland Publishing, ISBN 0-8153-3642-X; Pier G.B.らの文献:Immunology, Infection, and Immunity, 2004, p246-5; Albanell J.らの文献:Advances in Experimental Medicine and Biology, 2003, 532:p2153-68;及びWeng, W.-K.らの文献:Journal of Clinical Oncology, 2003, 21:p 3940-3947に詳細に記載されている。ADCCの検出及び定量化のための適切な方法は、Blombergらの文献:Journal of Immunological Methods. 1986, 86:p225-9; Blombergらの文献:Journal of Immunological Methods. 1986, 21;92:p117-23、並びにPatel及びBoydの文献:Journal of Immunological Methods. 1995, 184:p29-38に見出すことができる。
【0219】
ADCCは、通常、NK細胞の活性化を含み、NK細胞の表面上のFc受容体によって、抗体で被覆した細胞の認識に依存する。Fc受容体は、標的細胞の表面に特異的に結合した、IgGなどの抗体のFc(結晶質)部分を認識する。NK細胞の活性化を誘発するFc受容体は、CD16又はFcγRIIIaと呼ばれている。一旦FcγRIIIa受容体がIgG Fcに結合すると、NK細胞は、IFN-γなどのサイトカイン、並びに標的細胞に入りアポトーシスを誘発することによって細胞死を促進するパーフォリン及びグランザイムを含有する細胞傷害性顆粒を放出する。
【0220】
抗体による抗体依存性細胞傷害(ADCC)の誘導は、抗体定常領域(Fc)と、免疫系の細胞の表面に存在する種々の受容体との間の相互作用を変える修飾により強化することができる。かかる修飾には、哺乳動物細胞での天然合成若しくは組換え合成時において、抗体のFcに通常添加される複雑なオリゴ糖鎖におけるα1,6結合フコース部分の減少又は欠如が含まれる。好ましい実施態様において、抗体又はその断片などの非フコシル化抗NAALADL2親和性試薬は、ADCC反応を誘導するこれらの能力を強化する目的のために生産される。
【0221】
Fcのオリゴ糖鎖におけるα1,6結合フコース部分を低減又は除去する技術は十分に確立されている。第一の例において、組換え抗体は、α1,6結合のフコースを、二分岐複合型N結合Fcオリゴ糖の最も内側のN-アセチルグルコサミンに加えるその能力が欠損した細胞株において合成される。かかる細胞株には、低レベルのα1,6-フコシル基転移酵素遺伝子(FUT8)を発現するラットハイブリドーマYB2/0が含まれるが、これに限定されない。好ましくは、抗体は、FUT8遺伝子の両方の複製の欠失により、α1,6結合フコシル部分を複合型オリゴ糖鎖に加えることができない細胞株において合成される。かかる細胞株には、FUT8-/- CHO/DG44細胞株が含まれるが、これに限定されない。部分的にフコシル化されたか若しくはフコシル化されない抗体及び親和性試薬を合成する技術は、Shinkawaらの文献:J. Biol. Chem. 278:3466-34735 (2003);Yamane-Ohnukiらの文献:Biotechnology and Bioengineering 87: 614-22 (2004)、並びに国際公開公報第00/61739 A1号、同02/31140 A1号及び同03/085107 A1号に記載されている。第二の例において、組換え抗体のフコシル化は、二分岐N-アセチルグルコサミンを運搬する複合型N結合オリゴ糖の生産を最大にするレベルで糖タンパク質修飾糖転移酵素を過剰発現させるように遺伝子操作した細胞株の合成によって、低減されるか又は中止される。例えば、抗体は、酵素N-アセチルグルコサミン転移酵素III(GnT III)を発現する、チャイニーズハムスター卵巣細胞株において合成される。好適な糖タンパク質修飾糖転移酵素で安定的にトランスフェクトされた細胞株、及びこれらの細胞を使用する抗体の合成法は、国際公開公報第99/54342号に開示されている。
【0222】
非フコシル化抗体又は親和性試薬は、単独で、又は細胞傷害性因子及び/若しくはサイトカインと組み合わせて投与される治療薬として使用することができる。
【0223】
更なる修飾において、抗体Fcのアミノ酸配列は、リガンド親和性に影響を及ぼすことなく、ADCC活性化を高めるように変更される。かかる修飾の例は、Lazarらの文献:Proceedings of the National Academy of Sciences 2006, 103: p4005-4010;国際公開公報第03/074679号及び同2007/039818号に記載されている。これらの例において、239位のセリンのアスパラギン酸へ、及び332位のグルタミン酸のイソロイシンへなどの抗体Fc内のアミノ酸の置換は、Fc受容体への抗体の結合親和性を変更し、ADCC活性化の増加をもたらした。
【0224】
アミノ酸置換によりADCC活性化が増強された抗体試薬は、単独で、又は細胞傷害性因子及び/又はサイトカインと組み合わせて投与される治療薬として使用することができる。
【0225】
また、本発明は、第1の標的エピトープ(すなわち、NAALADL2)に対する少なくとも1つの第1の結合特異性及び第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を有する、二重特異性分子も提供する。第2の標的エピトープは、第1の結合特異性により結合されたものと同じ標的タンパク質に存在すると考えられ;または、第2の標的エピトープは、第1の結合特異性により結合された第1のタンパク質に結合されたものと異なる標的タンパク質に存在すると考えられる。第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープ(すなわち、NAALADL2)と同じ細胞に存在し得るか;または、第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープを提示する細胞によって提示されない標的に存在し得る。本明細書に使用する「結合特異性」という用語は、少なくとも1つの抗体可変ドメインを含む部分を指す。
【0226】
一実施態様において、二重特異性分子は、BiTE(二重特異性T-細胞誘導抗体(engager))である。特に本発明は、NAALADL2への第一の結合ドメイン、及びT-細胞抗原、好ましくはCD3への第二の結合ドメインを含む、二重特異性親和性試薬(好ましくは、二重特異性抗体)を提供する。
【0227】
これらの二重特異性分子は、エフェクター細胞(例えば、CD3発現細胞傷害性T細胞)へNAALADL2発現細胞を標的化し、T細胞クローン性増殖及びT細胞傷害などのCD3媒介エフェクター細胞活性を引き起こす。本発明の二重特異性抗体は、全部で2つ又は3つのいずれかの抗体可変ドメインを有し、ここで二重特異性抗体の第1の部分は、ヒト免疫エフェクター細胞に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することにより、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を補強することができ、エフェクター抗原は、ヒトCD3抗原であり、該第1の部分は、1つの抗体可変ドメインからなり、二重特異性抗体の第2の部分は、エフェクター抗原以外の標的抗原、例えばNAALADL2に特異的に結合することができ、該標的抗原は、前述のヒト免疫エフェクター細胞以外の標的細胞に位置し、該第2の部分は、1つ又は2つの抗体可変ドメインを含む。
【0228】
一つの好ましい実施態様において、本発明は、前立腺癌の治療のための、NAALADL2及びCD3に結合する二重特異性抗体(好ましくはBiTE)を提供する。
【0229】
(本発明の疾患を含む癌の診断)
本発明の別の態様によれば、対象において、NAALADL2へ免疫特異的に結合することができる抗体、又はその1以上のエピトープ含有断片の存在又はレベルを検出することを含むか、あるいはそれらのレベルの変化を検出することを含む、該対象における、癌、例えば本発明の疾患を検出、診断及び/又はスクリーニング若しくは進行をモニタリングする方法、又は本発明の疾患に対する、例えば抗癌剤又は治療の効果をモニタリングする方法も提供される。
【0230】
本発明の別の態様によれば、対象において、NAALADL2へ免疫特異的に結合することができる抗体、又はその1以上のエピトープ含有断片の存在を検出することを含む、該対象における癌、例えば本発明の疾患を検出、診断及び/又はスクリーニングする方法であって、(a)健常対象のレベルと比較しての該対象における、NAALADL2へ免疫特異的に結合することができる抗体、又はその1以上のエピトープ含有断片のレベルの上昇の存在、又は(b)健常対象において対応する検出不可能なレベルと比較しての、該対象における、NAALADL2へ免疫特異的に結合することができる抗体、又は該1以上のエピトープ含有断片の検出可能なレベルの存在が、該対象における該癌の存在を示していることを含む方法も提供される。
【0231】
癌、例えば本発明の疾患を検出、診断及び/又はスクリーニングする特定の方法の一つは:
試験すべき生体試料を、NAALADL2又はその1以上のエピトープ含有断片と接触させること;並びに
対象において、NAALADL2に免疫特異的に結合し得る抗体又はその1以上のエピトープ含有断片の存在を検出すること:を含む。
【0232】
本発明の別の態様によれば、対象において、癌、例えば本発明の疾患の進行をモニタリングする方法、又は本発明の疾患に対する、例えば抗癌剤又は治療の効果をモニタリングする方法であって、最初の時点及び後の時点での、該対象における、NAALADL2に免疫特異的に結合し得る抗体若しくはその1以上のエピトープ含有断片の存在を検出することを含み、該最初の時点における該対象のレベルと比較しての、後の時点での該対象のNAALADL2に免疫特異的に結合し得る抗体若しくはその1以上のエピトープ含有断片のレベルの上昇若しくは下降の存在が、該対象における該癌の進行若しくは退行を示すか、又は、該抗癌剤若しくは治療の効果若しくは非効果を示す方法が提供される。
【0233】
NAALADL2に免疫特異的に結合し得る抗体若しくはその1以上のエピトープ含有断片の存在は、通常、該対象から得られる生体試料の分析により検出される(例示的な生体試料は上述されており、例えば、試料は、前立腺、膀胱、乳房、食道、頭頸部、結腸直腸、肝臓、肺、卵巣、胃、子宮及び膵臓の組織の試料、又はこれら以外に血液若しくは唾液の試料である。)。方法には、通常、該対象由来の分析のための該生体試料を得る工程が含まれる。検出可能な抗体としては、IgA、IgM及びIgG抗体が挙げられる。
【0234】
本発明によれば、本発明の疾患を有することが疑われるか又は有することが既知の対象から得られた試験試料、例えば前立腺、膀胱、乳房、食道、頭頸部、結腸直腸、肝臓、肺、卵巣、胃、子宮又は膵臓の組織、血清、血漿又は尿を、診断又はモニタリングするのに使用することができる。一実施態様において、(本発明の疾患を有しない1又は複数の対象由来の)対照試料又はあらかじめ決定された基準範囲と比較しての試験試料におけるNAALADL2の存在量の変化は、本発明の疾患の存在を示す。別の実施態様において、対照試料又はあらかじめ決定された基準範囲と比較しての試験試料におけるNAALADL2の相対存在量は、本発明の疾患のサブタイプを示す(例えば、前立腺腺癌、移行上皮癌、炎症性乳癌、家族性又は散発性結腸直腸癌、頭頸部扁平上皮癌、肝細胞癌、肺扁平上皮癌、小細胞癌、膵内分泌腫瘍、卵巣腺癌、食道扁平上皮癌及び胃腺癌)。さらに別の実施態様において、対照試料又はあらかじめ決定された基準範囲と比較しての試験試料におけるNAALADL2の相対存在量は、本発明の疾患の程度又は重篤性(例えば、転移の可能性)を示す。上述した方法のいずれかにおいて、NAALADL2の検出は、任意に、本発明の疾患についての1以上の追加的なバイオマーカーの検出と組み合わせることができる。本明細書に記載する好ましい技術、キナーゼアッセイ、NAALADL2を検出し及び/又は視覚化するイムノアッセイ(例えば、ウエスタンブロット、免疫沈降後のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫組織化学法など)を含むがこれらに限定されない、いずれかの適切な当該分野の方法を用いて、NAALADL2のレベルを測定することができる。更なる態様において、対照試料又はあらかじめ決定された基準範囲と比較しての試験試料におけるNAALADL2をコードするmRNAの存在量の変化は、本発明の疾患の存在を示す。いずれかの適切なハイブリダイゼーションアッセイを用いて、NAALADL2をコードするmRNAを検出し及び/又は視覚化することによりNAALADL2発現を検出することができる(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット、インサイチュハイブリダイゼーションなど)。
【0235】
本発明の別の実施態様において、NAALADL2に特異的に結合する標識化抗体(又は他の親和性試薬)、その誘導体及び類似体は、本発明の疾患を検出し、診断し又はモニタリングするための診断目的に使用することができる。本発明の疾患は、好ましくは動物において、より好ましくは哺乳動物において、及び最も好ましくはヒトにおいて検出される。
【0236】
(スクリーニングアッセイ)
本発明は、NAALADL2に結合し、又はNAALADL2の発現若しくは活性に対し刺激効果若しくは阻害効果を有する物質(例えば、候補化合物又は試験化合物)を同定する方法を提供する。また、本発明は、NAALADL2-関連ポリペプチド若しくはNAALADL2融合タンパク質に結合するか、又はNAALADL2-関連ポリペプチド若しくはNAALADL2融合タンパク質の発現若しくは活性に対し刺激効果若しくは阻害効果を有する物質、候補化合物又は試験化合物を同定する方法を提供する。物質、候補化合物又は試験化合物の例としては、核酸(例えば、DNA及びRNA)、糖質、脂質、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、低分子及び他の薬物が挙げられるが、これらに限定されない。物質は、次に示すものを含む、当該技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのいずれかを用いて得ることができる:生物学的ライブラリー;空間的にアドレス指定可能な並列固相又は溶液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;及び、親和性クロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限られるが、他の4種のアプローチは、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマー又は低分子ライブラリーに適用することができる(Lamの文献1997:Anticancer Drug Des. 12:145;米国特許第5,738,996号;及び、米国特許第5,807,683号。それぞれ、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる。)。
【0237】
分子ライブラリーの合成方法の例は、当該技術分野において、例えば、DeWittらの文献1993:Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6909;Erbらの文献1994:Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:11422;Zuckermannらの文献1994:J. Med. Chem. 37:2678;Choらの文献1993:Science 261:1303;Carrellらの文献1994:Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059;Carellらの文献1994:Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061;及び、Gallopらの文献1994:J. Med. Chem. 37:1233に見出すことができ、これらはそれぞれ、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
【0238】
化合物のライブラリーは、例えば、溶液中に(例えば、Houghtenの文献1992:BioTechniques, 13:412-421)、又はビーズ上に(Lamの文献1991:Nature 354:82-84)、チップ上に(Fodorの文献1993:Nature, 364:555-556)、細菌に(米国特許第5,223,409号)、胞子に(特許番号5,571,698;5,403,484;及び5,223,409)、プラスミドに(Cullらの文献1992:Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:1865-1869)若しくはファージに(Scott及びSmithの文献1990:Science, 249:386-390;Devlinの文献1990:Science 249:404-406;Cwirlaらの文献1990:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378-6382;及びFeliciの文献1991:J. Mol. Biol. 222:301-310)存在し得、これらはそれぞれ、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
【0239】
一実施態様において、NAALADL2、NAALADL2断片(例えば、機能的に活性な断片)、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片、又はNAALADL2融合タンパク質と相互作用する(すなわち、結合する)物質は、細胞-ベースのアッセイ系で同定される。本実施態様によれば、NAALADL2、NAALADL2の断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片、又はNAALADL2融合タンパク質を発現する細胞を、候補化合物又は対照化合物と接触させ、NAALADL2と相互作用する候補化合物の能力を決定する。所望の場合、このアッセイを用いて、複数(例えば、ライブラリー)の候補化合物をスクリーニングすることができる。細胞は、例えば原核生物起源(例えば、大腸菌)又は真核生物起源(例えば、酵母又は哺乳動物)であり得る。さらに、細胞は、NAALADL2、NAALADL2の断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質を内因的に発現することができるか、又はNAALADL2、NAALADL2の断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質を発現するように遺伝子操作することができる。いくつかの場合において、NAALADL2、NAALADL2の断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質、又は候補化合物は、例えば、放射性標識(例えば、
32P、
35S及び
125I)又は蛍光標識(例えば、フルオレッセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド又はフルオレサミン)で標識化し、NAALADL2と候補化合物との間の相互作用の検出を可能にする。NAALADL2、NAALADL2の断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質により直接又は間接的に相互作用する候補化合物の能力は、当業者に公知の方法で決定することができる。例えば、候補化合物と、NAALADL2、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質との間の相互作用は、フローサイトメトリー、シンチレーションアッセイ、免疫沈降又はウエスタンブロット分析によって決定することができる。
【0240】
別の実施態様において、NAALADL2、NAALADL2断片(例えば、機能的に活性な断片)、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質と相互作用する(すなわち、結合する)物質は、無細胞アッセイ系で同定される。本実施態様によれば、天然型若しくは組換え型のNAALADL2若しくはその断片、天然型若しくは組換え型のNAALADL2-関連ポリペプチド若しくはその断片、NAALADL2-融合タンパク質若しくはその断片を候補化合物又は対照化合物と接触させ、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチド、又はNAALADL2融合タンパク質と相互作用する候補化合物の能力を決定する。所望の場合、このアッセイを用いて、複数(例えば、ライブラリー)の候補化合物をスクリーニングすることができる。好ましくは、NAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2-融合タンパク質は、はじめに、例えばNAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片、若しくはNAALADL2融合タンパク質を、これらを特異的に認識し結合する固定された抗体(若しくは他の親和性試薬)と接触させることにより、又はNAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質の精製調製物を、タンパク質に結合するように設計された表面と接触させることにより、固定される。NAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質は、部分的に若しくは完全に精製し得る(例えば、部分的に又は完全に他のポリペプチドがない)か、又は細胞溶解物の一部であり得る。さらに、NAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、若しくはNAALADL2-関連ポリペプチドの断片は、NAALADL2若しくはその生物学的活性部分、又はNAALADL2-関連ポリペプチドと、グルタチオン-S-トランスフェラーゼなどのドメインを含む融合タンパク質であり得る。あるいは、NAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質は、当業者に周知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals社(Rockford, IL)製)を使用してビオチン化することができる。NAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質と相互作用する候補化合物の能力は、当業者に公知の方法で決定することができる。
【0241】
別の実施態様において、細胞-ベースのアッセイ系を用いて、NAALADL2の生産若しくは分解の原因であるか、又はNAALADL2の翻訳後修飾の原因である酵素などのタンパク質又はその生物学的活性部分に結合し又はその活性を調節する物質を同定する。一次スクリーニングにおいて、複数(例えば、ライブラリー)の化合物を、次に示すものを自然に又は組換えにより発現する細胞と接触させる:(i)NAALADL2、NAALADL2アイソフォーム、NAALADL2相同体、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2融合タンパク質又は前述のいずれかの生物学的に活性な断片;及び、(ii)NAALADL2、NAALADL2アイソフォーム、NAALADL2相同体、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2融合タンパク質のプロセシングの原因であるタンパク質、又はNAALADL2、NAALADL2アイソフォーム、NAALADL2相同体、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2融合タンパク質若しくは断片の生産、分解又は翻訳後修飾を調節する化合物を同定するための断片。そして、望ましいならば、一次スクリーニングにおいて同定された化合物を、自然に又は組換えによりNAALADL2を発現する細胞に対する二次スクリーニングにおいてアッセイすることができる。NAALADL2、アイソフォーム、相同体、NAALADL2-関連ポリペプチド又はNAALADL2融合タンパク質の生産、分解又は翻訳後修飾を調節する候補化合物の能力は、フローサイトメトリー、シンチレーションアッセイ、免疫沈降及びウエスタンブロット分析を含むがこれらに限定されない、当業者に公知の方法で決定することができる。
【0242】
別の実施態様において、NAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質に競合的に相互作用する(すなわち、結合する)物質を、競合結合アッセイで同定する。本実施態様によれば、NAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質を発現する細胞を、候補化合物、及びNAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質と相互作用することが公知の化合物と接触させ;次いで、NAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質に優先的に相互作用する候補化合物の能力を決定する。あるいは、NAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド又はNAALADL2-関連ポリペプチドの断片に優先的に相互作用する(すなわち、結合する)物質は、無細胞アッセイ系において、NAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片若しくはNAALADL2融合タンパク質を、候補化合物、及びNAALADL2、NAALADL2-関連ポリペプチド若しくはNAALADL2融合タンパク質と相互作用することが公知の化合物と接触させることにより同定される。上述したように、NAALADL2、NAALADL2断片、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2-関連ポリペプチドの断片、若しくはNAALADL2融合タンパク質と相互作用する候補化合物の能力は、当業者に公知の方法で決定することができる。これらの細胞-ベースのアッセイ、又は無細胞アッセイのいずれかを用いて、複数(例えば、ライブラリー)の候補化合物をスクリーニングすることができる。
【0243】
別の実施態様において、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドの発現又は活性を調節する(すなわち、上方制御するか若しくは下方制御する)物質は、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドを発現する細胞(例えば、原核生物起源若しくは真核生物起源の細胞)を、候補化合物又は対照化合物(例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS))と接触させること、並びに、NAALADL2、NAALADL2-関連ポリペプチド、又はNAALADL2融合タンパク質、NAALADL2をコードするmRNA、又はNAALADL2-関連ポリペプチドをコードするmRNAの発現を決定することにより同定される。候補化合物の存在下におけるNAALADL2、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2をコードするmRNA又はNAALADL2-関連ポリペプチドをコードするmRNAの発現レベルは、候補化合物の存在しない状態における(例えば、対照化合物の存在下における)NAALADL2、NAALADL2-関連ポリペプチド、NAALADL2をコードするmRNA又はNAALADL2-関連ポリペプチドをコードするmRNAの発現レベルと比較される。そして、候補化合物は、この比較に基づいて、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドの発現のモジュレータと同定することができる。例えば、NAALADL2又はmRNAの発現が、候補化合物の存在下で、その存在しない状態よりも顕著に多い場合、候補化合物はNAALADL2又はmRNAの発現の刺激因子と同定される。あるいは、NAALADL2又はmRNAの発現が、候補化合物の存在下で、その存在しない状態よりも顕著に少ない場合、候補化合物はNAALADL2又はmRNAの発現の阻害因子と同定される。NAALADL2又はこれをコードするmRNAの発現レベルは、当業者に公知の方法により決定することができる。例えば、mRNA発現は、ノーザンブロット分析又はRT-PCRにより評価することができ、タンパク質レベルは、ウエスタンブロット分析により評価することができる。
【0244】
別の実施態様において、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドの活性を調節する物質は、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドを含む調製物、又はNAALADL2若しくはNAALADL2-関連ポリペプチドを発現する細胞(例えば、原核生物若しくは真核生物細胞)を、試験化合物若しくは対照化合物と接触させること、及び、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドの活性を調節する(例えば、刺激若しくは阻害する)試験化合物の能力を決定することにより、同定される。NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドの活性は、NAALADL2若しくはNAALADL2-関連ポリペプチドの細胞シグナル伝達経路の誘導(例えば、細胞内Ca
2+、ジアシルグリセロール、IP3など)を検出すること、適切な基質における標的の触媒活性若しくは酵素活性を検出すること、レポーター遺伝子(例えば、NAALADL2若しくはNAALADL2-関連ポリペプチドに応答性であり、かつ検出可能なマーカー(例えば、ルシフェラーゼ)をコードする核酸に機能的に連結された、調節エレメント)の誘導を検出すること、又は、細胞応答、例えば細胞分化若しくは細胞増殖を検出することにより、評価することができる。本記載に基づき、当業者に公知の技術が、これらの活性を測定するのに使用することができる(例えば、米国特許第5,401,639号(引用により本明細書中に組み込まれる。)参照)。そして、候補化合物は、対照化合物に対する候補化合物の効果を比較することにより、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドの活性のモジュレータと同定することができる。適切な対照化合物には、リン酸緩衝食塩水(PBS)及び通常の食塩水(NS)が含まれる。
【0245】
別の実施態様において、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドの発現、活性、又は発現と活性の両方を調節する(すなわち、上方制御するか若しくは下方制御する)物質を動物モデルにおいて同定する。適切な動物の例としては、マウス、ラット、ウサギ、サル、モルモット、イヌ及びネコが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、使用する動物は、本発明の疾患のモデルを表す(例えば、LNCaP、PC-3、及びDU-145などの前立腺癌細胞株の異種移植片、UCRU-BL-12、UCRU-BL-13及びUCRU-BL-14などの膀胱癌細胞株の異種移植片(Russellらの文献、Cancer Res. 1986 Apr;46(4 Pt 2):2035-40)、ヌードマウス若しくはSCIDマウスにおけるMCF-7(Ozzello L、Sordat M.の文献、Eur J Cancer. 1980;16:553-559)及びMCF10AT(Millerらの文献、J Natl Cancer Inst. 1993;85:1725-1732)などの乳癌細胞株の異種移植片、エストロゲン欠乏SCIDマウスにおけるMDA-MB-345などのヒト結腸直腸癌細胞株の異種移植片(Ecclesらの文献、1994 Cell Biophysics 24/25, 279)、FaDu及びHNX-OEなどの頭頸部癌細胞株の異種移植片、ヌードマウスにおけるMHCC97などの肝臓癌細胞株の異種移植片(Tianらの文献、Br J. Cancer 1999 Nov;81(5):814-21)、A549及びH460などの非小細胞肺癌細胞株の異種移植片、NCI-H345などの小細胞肺癌細胞株の異種移植片、ヌードマウスにおけるMIA PaCa-2などの膵臓癌細胞株の異種移植片(Marincolaらの文献、J Surg Res 1989 Dec;47(6):520-9)、ヌードマウスにおけるNCI-N87などの胃癌細胞株の異種移植片、並びにヌードマウスにおけるOVCAR3などの卵巣癌細胞株の異種移植片(Ulla K. NAssanderらの文献、CANCER RESEARCH 52, 646-653. February1. 1992)。これらのモデルにおいて示される病理は、例えば本発明の疾患の病理と類似しているので、これらは、NAALADL2のレベルを調節する化合物を試験するのに利用することができる。本実施態様により、試験化合物又は対照化合物を(例えば、経口的に、直腸に又は非経口的に、例えば腹膜内に又は静注で)適切な動物に投与し、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドの発現、活性、又は発現と活性の両方における効果を判断する。NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドの発現における変化は、先に概要を示した方法で評価することができる。
【0246】
さらに、別の実施態様において、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドは、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドに結合するか又は相互作用する他のタンパク質を同定するためのツーハイブリッドアッセイ又はスリーハイブリッドアッセイにおける「ベイトタンパク質」として使用される(例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosらの文献(1993):Cell 72:223-232; Maduraらの文献(1993):J. Biol. Chem. 268:12046-12054;Bartelらの文献(1993):BioTechniques 14:920-924;Iwabuchiらの文献(1993):Oncogene 8:1693-1696;及び、国際公開公報第94/10300号参照)。当業者に認識されているように、かかる結合タンパク質は、例えば、NAALADL2が関与するシグナリング経路の上流又は下流の要素として、NAALADL2によるシグナルの伝播に関与する可能性もある。
【0247】
本発明は、先に記載したスクリーニングアッセイにより同定される新規物質、及び本明細書に記載するような治療におけるその使用を更に提供する。加えて、本発明はまた、本発明の疾患の治療のための医薬品の製造における、NAALADL2と相互作用するか又はその活性を調節する物質の使用についても提供する。
【0248】
(NAALADL2の治療上の使用)
本発明は、治療用化合物の投与による種々の疾患及び障害の治療又は予防を提供する。かかる化合物には、次に示す化合物が含まれるが、これらに限定されない:NAALADL2、NAALADL2類似体、NAALADL2-関連ポリペプチド及びその誘導体及び変種(断片を含む);前述のものに対する抗体(又は他の親和性試薬);NAALADL2、NAALADL2類似体、NAALADL2-関連ポリペプチド及びその断片をコードする核酸;NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドをコードする遺伝子に対するアンチセンス核酸;及び、NAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドをコードする遺伝子のモジュレータ(例えば、アゴニスト及びアンタゴニスト)。例えば、本発明の重要な特徴は、本発明の疾患などの癌に関与するNAALADL2をコードする遺伝子の同定である。本発明の疾患を有する対象の血清若しくは組織中のNAALADL2の機能又は発現を減少させる治療用化合物の投与により治療することができる(例えば、症状を改善させるか又は発症若しくは進行を遅延させることができる)か又は予防することができる。
【0249】
一実施態様において、それぞれNAALADL2に特異的に結合する1以上の抗体(若しくは他の親和性試薬)を、単独で、又は1以上の追加的な治療用化合物若しくは治療と組み合わせて投与する。
【0250】
抗体(又は他の親和性試薬)などの生物学的生成物は、これが投与される対象に対し同種である。一実施態様において、ヒトNAALADL2若しくはヒトNAALADL2-関連ポリペプチド、ヒトNAALADL2若しくはヒトNAALADL2-関連ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はヒトNAALADL2若しくはヒトNAALADL2-関連ポリペプチドに対する抗体(若しくは他の親和性試薬)を、治療法(例えば、症状を改善させるか又は発症若しくは進行を遅延させる)又は予防のためにヒト対象に投与する。
【0251】
理論により制限されることなく、NAALADL2に特異的に結合する抗体(又は他の親和性試薬)の治療的活性は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の現象を介して達成できることが考えられる(例えば、Janeway Jr. C.A.らの文献:「免疫生物学(Immunobiology)」, 第5版, 2001, Garland Publishing, ISBN 0-8153-3642-X; Pier G.B. らの文献:「免疫学、感染及び免疫(Immunology, Infection, and Immunity)」, 2004, p246-5;Albanell J. らの文献:Advances in Experimental Medicine and Biology, 2003, 532:p2153-68及び、Weng, W-K. らの文献:Journal of Clinical Oncology, 2003, 21:p 3940-3947参照)。
【0252】
(本発明の疾患の治療及び予防)
本発明の疾患は、例えば、1以上の本発明の疾患を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象への、又は1以上の本発明の疾患を発生するリスクのある対象への、本発明の疾患を有しない対象の血清若しくは組織と比較して1以上の本発明の疾患を有する対象の血清若しくは組織に差次的に存在するNAALADL2のレベル又は活性(すなわち、機能)を調節する(すなわち、増加させるか若しくは減少させる)化合物の投与により、治療又は予防される。一実施態様において、本発明の疾患は、1以上の本発明の疾患を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象への、又は本発明の疾患が発生するリスクのある対象への、本発明の疾患を有する対象の血清若しくは組織において増加したNAALADL2のレベル又は活性(すなわち、機能)を上方制御する(すなわち、減少させる)化合物を投与することにより、治療又は予防される。かかる化合物の例としては、NAALADL2のアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、NAALADL2に対する抗体(又は他の親和性試薬)、及びNAALADL2の酵素活性を阻害する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。他の有用な化合物、例えば、NAALADL2アンタゴニスト及び低分子NAALADL2アンタゴニストは、インビトロアッセイを用いて同定することができる。
【0253】
また、癌、例えば本発明の疾患は、かかる癌を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象への、又はかかる癌を発生するリスクのある対象への、かかる癌を有する対象の血清又は組織において増加したNAALADL2のレベル又は活性(すなわち、機能)を下方制御する化合物の投与により、治療又は予防され得る。かかる化合物の例としては、次に示すものが挙げられるが、これらに限定されない:NAALADL2、NAALADL2断片及びNAALADL2-関連ポリペプチド;(例えば、遺伝子療法における使用のための)NAALADL2、NAALADL2断片及びNAALADL2-関連ポリペプチドをコードする核酸;並びに、酵素活性を有するNAALADL2又はNAALADL2-関連ポリペプチドのための、酵素活性を調節することが公知の化合物又は分子。使用可能な他の化合物、例えばNAALADL2アゴニストは、インビトロアッセイを用いて同定することができる。
【0254】
別の実施態様において、治療又は予防は、個々の対象の必要に合わせて作製する。したがって、具体的な実施態様において、NAALADL2のレベル又は機能を促進する化合物は、NAALADL2のレベル若しくは機能がないか、又は対照若しくは正常の基準範囲と比較してNAALADL2のレベル若しくは機能が減少している、癌、例えば本発明の疾患を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象に、治療的に若しくは予防的に投与される。更なる実施態様において、NAALADL2のレベル又は機能を促進する化合物は、NAALADL2のレベル若しくは機能が対照若しくは基準範囲と比較して増加している、癌、例えば本発明の疾患を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象に、治療的に若しくは予防的に投与される。更なる実施態様において、NAALADL2のレベル又は機能を減少させる化合物は、NAALADL2のレベル若しくは機能が対照若しくは基準範囲と比較して増加している、癌、例えば本発明の疾患を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象に、治療的に若しくは予防的に投与される。更なる実施態様において、NAALADL2のレベル又は機能を減少させる化合物は、NAALADL2のレベル若しくは機能が対照若しくは基準範囲と比較して減少している、癌、例えば本発明の疾患を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象に、治療的に若しくは予防的に投与される。かかる化合物の投与によるNAALADL2の機能又はレベルにおける変化は、例えば、試料(例えば、血液若しくは尿)を得、及びNAALADL2のインビトロレベル若しくは活性、又はNAALADL2をコードするmRNAのレベル、又は前述のいずれかの組合せをアッセイすることにより、容易に検出することができる。かかるアッセイは、本明細書に記載するように、本化合物の投与前及び投与後に行うことができる。
【0255】
本発明の化合物には、NAALADL2プロファイルを正常に回復させるいずれかの化合物、例えば、有機低分子、タンパク質、ペプチド、抗体(又は他の親和性試薬)、核酸などが含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物は、いずれかの他の化学療法剤と組み合わせて供することができる。
【0256】
(ワクチン療法)
本発明の別の態様は、NAALADL2若しくはそのエピトープ含有断片、又はNAALADL2をコードする核酸若しくはその断片を、任意に免疫賦活剤とともに含む、免疫原性組成物、好適にはワクチン組成物である。
【0257】
また、かかる組成物を対象に投与することを含む免疫応答を高める方法、並びに、かかる組成物の治療有効量をその必要のある対象に投与することを含む、癌、例えば本発明の疾患の治療方法又は予防方法、及び本発明の疾患の予防又は治療に使用するためのかかる組成物も提供する。
【0258】
したがって、NAALADL2は、抗原性物質として有用であり、癌、例えば本発明の疾患の治療又は予防のためのワクチンの製造に使用することができる。かかる物質は、「抗原性」及び/又は「免疫原性」であり得る。通常、「抗原性」とは、タンパク質が抗体(若しくは他の親和性試薬)を生じるように使用できるか、又は実際に対象若しくは実験動物における抗体反応を誘導できることを意味する。「免疫原性」とは、タンパク質が、対象又は実験動物において防御免疫応答などの免疫応答を誘発できることを意味する。したがって、後者の場合、タンパク質は、抗体反応を発生させるだけでなく、抗体に基づかない免疫応答も発生させ得る。また、「免疫原性」は、タンパク質がインビトロ設定、例えばT細胞増殖アッセイにおける免疫様反応を誘発することができるか否かも含む。適切な免疫応答の生成は、1以上のアジュバントの存在及び/又は抗原の適切な提示を必要とし得る。
【0259】
当業者は、NAALADL2の相同体又は誘導体も抗原性/免疫原性物質としての使用が見出されることを認識する。したがって、例えば、1以上の付加、欠失、置換などを含むタンパク質が本発明に含まれる。加えて、例えば、一方の疎水性アミノ酸を別のものに置き換えるなど、一方のアミノ酸を別の類似の「型」に置き換えることが可能である。アミノ酸配列を比較するために、CLUSTALプログラムなどのプログラムを使用することができる。このプログラムはアミノ酸配列を比較し、適切にいずれかの配列にスペースを挿入することにより最適なアライメントを見出す。最適なアライメントについてのアミノ酸同一性又は類似性(アミノ酸型の同一性及び保存)を算出することができる。BLASTxのようなプログラムは、類似配列で最も長いストレッチを並置し、値を適合させるように割り当てる。このようにしてそれぞれは異なるスコアを有する複数の類似領域が見出される比較を得ることが可能である。両方のタイプの分析が本発明で考慮される。
【0260】
相同体及び誘導体の場合、本明細書に記載するタンパク質との同一性の程度は、相同体又は誘導体がその抗原性及び/又は免疫原性を保持することよりも重要ではない。しかしながら、好適には、本明細書に記載するタンパク質又はポリペプチドと少なくとも60%の類似性を有する(上述のような)相同体又は誘導体が提供され、例えば、少なくとも80%の類似性などの少なくとも70%の類似性を有する相同体又は誘導体が提供される。特に、少なくとも90%又は更に95%の類似性を有する相同体又は誘導体が提供される。好適には、相同体又は誘導体は、本明細書に記載するタンパク質又はポリペプチドと少なくとも60%の配列同一性を有する。好ましくは、相同体又は誘導体は、少なくとも70%の同一性を有し、より好ましくは少なくとも80%の同一性を有する。最も好ましくは、相同体又は誘導体は、少なくとも90%又は更に95%の同一性を有する。
【0261】
代替的なアプローチにおいて、相同体又は誘導体は、例えば所望のタンパク質又はポリペプチドに効果的にタグを付けることによって精製がより容易にさせる部分を組み込んだ融合タンパク質であり得る。これは、「タグ」を除去するのに必要であるか、又は、これは、融合タンパク質自体が有用であるのに十分な抗原性を保持する場合でもあり得る。
【0262】
エピトープ領域、すなわちタンパク質又はポリペプチドの抗原性又は免疫原性の原因となるその領域を同定するのに抗原性タンパク質又はポリペプチドをスクリーニングできることは周知である。当業者に周知の方法は、抗原性について断片及び/又は相同体及び/又は誘導体を試験するのに用いることができる。したがって、本発明の断片には、1以上のかかるエピトープ領域が含まれる必要があるか、又は、本発明の断片は、これらの抗原性/免疫原性特性を保持するためにかかる領域に十分に類似する必要がある。そして、本発明による断片について、これらは本明細書に記載するタンパク質又はポリペプチド、相同体若しくは誘導体の特定の部分と100%同一であり得るので、同一性の程度は恐らく無関係と考えられる。重要な問題は、再度、断片が、その由来するタンパク質の抗原性/免疫原性特性を保持するということである。
【0263】
相同体、誘導体及び断片にとって重要なことは、これらが、それらの由来するタンパク質又はポリペプチドの抗原性/免疫原性の少なくとも1つの程度を有することである。したがって、追加的な本発明の態様において、NAALADL2の抗原性若しくは免疫原性断片、又はその相同体若しくは誘導体が提供される。
【0264】
NAALADL2又はその抗原性断片は、精製された若しくは単離された調製物として、単独で提供することができる。これらは、本発明の1以上の他のタンパク質又はその抗原性断片との混合物の一部として提供することができる。したがって、更なる態様において、本発明は、NAALADL2及び/又はその1以上の抗原性断片を含む抗原組成物を提供する。かかる組成物は、癌、例えば本発明の疾患の検出及び/又は診断に使用することができる。
【0265】
本発明のワクチン組成物は、予防用ワクチン組成物又は治療用ワクチン組成物のいずれかであってよい。
【0266】
本発明のワクチン組成物には、1以上のアジュバント(免疫賦活剤)が含まれ得る。当該技術分野で周知の例としては、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル類、及び不完全フロイントアジュバントなどの油中水乳剤が挙げられる。他の有用なアジュバントは、当業者に周知である。
【0267】
癌の治療のためにワクチン組成物に使用する適切なアジュバントには、次に示すものが含まれる:3De-O-アシル化モノホスホリル脂質A(3D-MPL又は簡単にMPLとして公知であり、国際公開公報第92/116556号参照)、サポニン、例えばQS21又はQS7、及び例えば国際公開公報第95/26204号に開示されているCpG含有分子などのTLR4アゴニスト。使用するアジュバントは、構成成分、例えばMPL及びQS21又はMPL、QS21及びCpG含有部分の組合せであってもよい。アジュバントは、水中油乳剤又はリポソーム製剤として製剤化することができる。かかる調製物には、他のビヒクルが含まれ得る。
【0268】
別の実施態様において、NAALADL2又はNAALADL2ペプチド断片をコードするヌクレオチド配列に相補的な10以上の連続するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの調製物を、癌、例えば本発明の疾患の治療のためのワクチンとして使用する。かかる調製物には、アジュバント又は他のビヒクルが含まれ得る。
【0269】
(本発明の疾患の治療のためのNAALADL2の阻害)
本発明の一実施態様において、癌、例えば本発明の疾患は、かかる癌を有しない対象の血清又は組織と比較して、かかる癌を有する対象の血清又は組織において上昇するNAALADL2のレベル及び/又は機能に拮抗する(阻害する)化合物の投与により治療されるか又は予防される。
【0270】
この目的のために有用な化合物には、抗NAALADL2抗体(又は他の親和性試薬、並びにその結合領域を含有する断片及び誘導体)、NAALADL2のアンチセンス又はリボザイム核酸、及び相同組換えによる内因性NAALADL2機能を「ノックアウト」するのに使用することができる機能障害性のNAALADL2をコードする核酸が含まれるが、これらに限定されない(例えば、Capecchiの文献1989:Science 244:1288-1292参照)。NAALADL2の機能を阻害する他の化合物は、公知のインビトロアッセイ、例えば、別のタンパク質又は結合パートナーへのNAALADL2の結合を阻害する、又は公知のNAALADL2の機能を阻害する試験化合物の能力についてのアッセイの使用により、同定することができる。
【0271】
かかる阻害は、例えば、インビトロで又は細胞培養でアッセイすることができるが、遺伝的アッセイを利用することもできる。また、好ましい技術を使用して、化合物の投与の前後でNAALADL2のレベルを検出することもできる。適切なインビトロ又はインビボアッセイは、以下により詳細に説明するように、具体的化合物の効果、及びその投与が罹患組織の治療を示すか否かを判断するのに利用される。
【0272】
具体的実施態様において、NAALADL2の機能(活性)を阻害する化合物は、本発明の治療を受けていない例えば本発明の疾患を有する対象の血清若しくは組織と比較して、NAALADL2の血清若しくは組織レベル又は機能的活性の増加(例えば、正常レベル又は所望のレベルよりも高い)が検出される対象に治療的又は予防的に投与されるか、又は、かかる癌を有しない対象において見出されるレベル若しくは活性又はあらかじめ決定された基準範囲をもたらすように、治療的又は予防的に投与される。先に概説したように、当該技術分野における標準的方法を利用して、NAALADL2のレベル又は機能における増加を測定することができる。適切なNAALADL2の阻害因子組成物には、例えば、低分子、すなわち1000ダルトン以下の分子が含まれ得る。かかる低分子は、本明細書に記載するスクリーニング方法によって同定することができる。
【0273】
(治療用化合物又は予防用化合物のアッセイ)
本発明は、NAALADL2を発現する癌、例えば本発明の疾患の治療又は予防のための化合物の有効性を確認又は検証するための、薬剤開発に使用するアッセイも提供する。
【0274】
したがって、NAALADL2の活性を調節する化合物のスクリーニングの方法が提供され、この方法は:(a)NAALADL2又はその生物学的活性部分を候補化合物と接触させること;及び、(b)NAALADL2の活性がこれによって調節されているか否かを判断することを含む。かかる方法は、(a)NAALADL2又はその生物学的活性部分を試料中の候補化合物と接触させること;及び、(b)該候補化合物を接触させた後の該試料中のNAALADL2又はその生物学的活性部分の活性を、該候補化合物を接触させる前の該試料中のNAALADL2又はその生物学的活性部分の活性と、又は活性の基準レベルと比較することとを含み得る。
【0275】
スクリーニングの方法は、NAALADL2の活性を阻害する化合物のスクリーニングの方法であり得る。
【0276】
NAALADL2又はその生物学的活性部分は、例えば細胞上に又は細胞により発現され得る。NAALADL2又はその生物学的活性部分は、例えばこれを発現する細胞から単離することができる。NAALADL2又はその生物学的活性部分は、例えば固相上に固定することができる。
【0277】
また、NAALADL2又はNAALADL2をコードする核酸の発現を調節する化合物のスクリーニングの方法であって、(a)NAALADL2又はNAALADL2をコードする核酸を発現する細胞を候補化合物と接触させることと;及び、(b)NAALADL2又はNAALADL2をコードする核酸の発現がこれにより調節されるか否かを判断することとを含む方法も提供される。かかる方法は、(a)NAALADL2又はNAALADL2をコードする核酸を発現する細胞を試料中の候補化合物と接触させること;及び、(b)該候補化合物を接触させた後の該試料中の細胞によるNAALADL2又はNAALADL2をコードする核酸の発現を、該候補化合物を接触させる前の該試料中の細胞のNAALADL2又はNAALADL2をコードする核酸の発現と、又は発現の基準レベルと比較することを含み得る。
【0278】
本方法は、NAALADL2又はNAALADL2をコードする核酸の発現を阻害する化合物のスクリーニング方法であり得る。
【0279】
本発明の他の態様には、次に示すものが含まれる:上述したスクリーニング方法により得ることができる化合物、NAALADL2又はNAALADL2をコードする核酸の活性又は発現を調節する化合物、例えば、NAALADL2又はNAALADL2をコードする核酸の活性又は発現を阻害する化合物。
【0280】
かかる化合物は、癌、例えば本発明の疾患の治療又は予防に使用するのに提供される。また、かかる化合物の治療有効量をその必要のある対象に投与することを含む、癌、例えば本発明の疾患を治療又は予防する方法も提供される。
【0281】
試験化合物は、かかる癌を有しない対象において見出されるレベルに対して例えば本発明の疾患を有する対象におけるNAALADL2のレベルを回復させるか、又はかかる癌の実験動物モデルにおいて同様の変化をもたらす、これらの能力についてアッセイすることができる。かかる癌を有しない対象において見出されるレベルに対して例えば本発明の疾患を有する対象におけるNAALADL2のレベルを回復させることができるか、又はかかる癌の実験動物モデルにおいて同様の変化をもたらすことができる化合物を、更なる創薬のリード化合物として使用することができるか又は治療に使用することができる。NAALADL2の発現は、好ましい技術、イムノアッセイ、ゲル電気泳動とこれに続く視覚化、NAALADL2の活性の検出、又は本明細書に教示するか若しくは当業者に公知の他のいずれかの方法によってアッセイすることができる。かかるアッセイは、臨床モニタリングにおいて、又は薬剤開発において、候補薬物をスクリーニングするのに使用することができ、NAALADL2の存在量は、臨床疾患の代理マーカーとして有用であり得る。
【0282】
種々の具体的な実施態様において、インビトロアッセイを、対象の障害に関与する細胞型の代表的な細胞により行い、化合物が、かかる細胞型において所望の効果を有するか否かについて判断することができる。
【0283】
治療に使用する化合物は、ヒトでの試験前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなど含むが、これらに限定されない適切な動物モデル系で試験することができる。インビボ試験については、ヒトに対する投与の前に、当該技術分野で公知のいずれかの動物モデル系を使用することができる。本発明の疾患の動物モデルの例としては、LNCaP、PC-3、及びDU-145などの前立腺癌細胞株の異種移植片、UCRU-BL-12、UCRU-BL-13及びUCRU-BL-14などの膀胱癌細胞株の異種移植片(Russellらの文献、Cancer Res. 1986 Apr;46(4 Pt 2):2035-40)、ヌードマウス若しくはSCIDマウスにおけるMCF-7(Ozzello L、Sordat M.の文献、Eur J Cancer. 1980;16:553-559)及びMCF10AT(Millerらの文献、J Natl Cancer Inst. 1993;85:1725-1732)などの乳癌細胞株の異種移植片、エストロゲン欠乏SCIDマウスにおけるMDA-MB-345などのヒト結腸直腸癌細胞株の異種移植片(Ecclesらの文献、1994 Cell Biophysics 24/25, 279)、FaDu及びHNX-OEなどの頭頸部癌細胞株の異種移植片、ヌードマウスにおけるMHCC97などの肝臓癌細胞株の異種移植片(Tianらの文献、Br J. Cancer 1999 Nov;81(5):814-21)、A549及びH460などの非小細胞肺癌細胞株の異種移植片、NCI-H345などの小細胞肺癌細胞株の異種移植片、ヌードマウスにおけるMIA PaCa-2などの膵臓癌細胞株の異種移植片(Marincolaらの文献、J Surg Res 1989 Dec;47(6):520-9)、ヌードマウスにおけるNCI-N87などの胃癌細胞株の異種移植片、並びにヌードマウスにおけるOVCAR3などの卵巣癌細胞株の異種移植片(Ulla K. NAssanderらの文献、CANCER RESEARCH 52, 646-653. February1. 1992)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのモデルにおいて示される病理は、例えば本発明の疾患の病理と類似しているので、これらは、NAALADL2のレベルを調節する化合物を試験するのに利用することができる。また、本開示に基づき、トランスジェニック動物がNAALADL2をコードする1又は複数の遺伝子の「ノックアウト」変異を有して産生され得ることも、当業者にとって明らかである。遺伝子の「ノックアウト」変異は、変異された遺伝子を発現させなくするか、又は異常形態で若しくは低レベルで発現させる突然変異であり、その結果、この遺伝子産物に関連する活性がほとんど又は完全になくなる。トランスジェニック動物は、好ましくは哺乳動物であり;より好ましくはトランスジェニック動物は、マウスである。
【0284】
一実施態様において、NAALADL2の発現を調節する試験化合物は、非ヒト動物(例えばマウス、ラット、サル、ウサギ及びモルモット)において、好ましくはNAALADL2を発現する本発明の疾患についての非ヒト動物モデルにおいて同定される。本実施態様により、試験化合物又は対照化合物を動物に投与し、NAALADL2の発現に対する試験化合物の効果を判断する。NAALADL2の発現を変える試験化合物は、試験化合物で処置した動物若しくは動物群におけるNAALADL2(若しくはこれをコードするmRNA)のレベルを、対照化合物で処置した動物若しくは動物群におけるNAALADL2又はmRNAのレベルと比較することにより、同定することができる。当業者に公知の技術、例えばインサイチュハイブリダイゼーションを用いて、mRNA及びタンパク質レベルを測定することができる。動物は、試験化合物の効果をアッセイするために致死させてもよく、又は致死させなくてもよい。
【0285】
別の実施態様において、NAALADL2又はその生物学的活性部分の活性を調節する試験化合物は、NAALADL2を発現する、非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、サル、ウサギ及びモルモット)、好ましくは本発明の疾患についての非ヒト動物モデルにおいて同定される。本実施態様により、試験化合物又は対照化合物を動物に投与し、NAALADL2の活性に対する試験化合物の効果を判断する。NAALADL2の活性を変える試験化合物は、対照化合物で処置した動物、及び試験化合物で処置した動物をアッセイすることにより同定することができる。NAALADL2の活性は、NAALADL2の細胞セカンドメッセンジャー(例えば、細胞内Ca
2+、ジアシルグリセロール、IP3など)の誘導を検出すること、NAALADL2若しくはその結合パートナーの触媒活性又は酵素活性を検出すること、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ若しくは緑色蛍光タンパク質などの検出可能なマーカーをコードする核酸を機能的に連結したNAALADL2応答性調節エレメント)の誘導を検出すること、又は細胞応答(例えば、細胞分化若しくは細胞増殖)を検出することにより評価することができる。当業者に公知の技術は、NAALADL2の活性の変化を検出するのに利用することができる(例えば、米国特許第5,401,639号(引用により本明細書中に組み込まれる。)参照)。
【0286】
さらに別の実施態様において、NAALADL2のレベル又は発現を調節する試験化合物は、例えば本発明の疾患を有するヒト対象において、好ましくは、例えば重篤な本発明の疾患を有するヒト対象において同定される。本実施態様により、試験化合物又は対照化合物をヒト対象に投与し、NAALADL2の発現に対する試験化合物の効果を、生体試料(例えば、血清、血漿若しくは尿)中のNAALADL2又はこれをコードするmRNAの発現を分析することにより判断する。NAALADL2の発現を変える試験化合物は、対照化合物で処置した対象又は対象群におけるNAALADL2又はこれをコードするmRNAのレベルを、試験化合物で処置した対象又は対象群におけるNAALADL2又はこれをコードするmRNAのレベルと比較することにより、同定することができる。あるいは、NAALADL2の発現の変化は、試験化合物の投与前又は後の対象又は対象群におけるNAALADL2又はこれをコードするmRNAのレベルを比較することによって確認することができる。当業者に公知の技術を使用して、生体試料を得、mRNA又はタンパク質発現を分析することができる。例えば、本明細書に記載する好ましい技術は、NAALADL2のレベルの変化を評価するのに使用することができる。
【0287】
別の実施態様において、NAALADL2の活性を調節する試験化合物は、例えば本発明の疾患を有するヒト対象(好ましくは、例えば重篤な本発明の疾患を有するヒト対象)で同定される。この実施態様において、試験化合物又は対照化合物をヒト対象に投与し、NAALADL2の活性に対する試験化合物の効果を判断する。NAALADL2の活性を変える試験化合物は、対照化合物で処置した対象由来の生物学的試料を、試験化合物で処置した対象由来の試料と比較することにより同定することができる。あるいは、NAALADL2の活性の変化は、試験化合物の投与前又は後の対象又は対象群におけるNAALADL2の活性を比較することによって同定することができる。NAALADL2の活性は、生体試料(例えば、血清、血漿若しくは尿)における、NAALADL2の細胞シグナル伝達経路(例えば細胞内Ca
2+、ジアシルグリセロール、IP3など)、NAALADL2若しくはその結合パートナーの触媒活性若しくは酵素活性、又は細胞応答、例えば、細胞分化若しくは細胞増殖の誘導を検出することにより評価することができる。当業者に公知の技術を使用して、NAALADL2のセカンドメッセンジャーの誘導における変化、又は細胞応答の変化を検出することができる。例えば、RT-PCRを使用して、細胞セカンドメッセンジャーの誘導における変化を検出することができる。
【0288】
別の実施態様において、対照対象(例えば本発明の疾患を有しない、例えばヒト)において検出されたレベルに対し、NAALADL2のレベル又は発現を変化させる試験化合物は、更なる試験用途又は治療的使用のために選択される。別の実施態様において、対照対象(例えば本発明の疾患を有しない、例えばヒト)において見出される活性に対し、NAALADL2の活性を変化させる試験化合物は、更なる試験又は治療的使用のために選択される。
【0289】
別の実施態様において、例えば本発明の疾患に関連する1以上の症状の重篤性を減少させる試験化合物は、例えば本発明の疾患を有するヒト対象、好ましくは、例えば重篤な本発明の疾患を有する対象で同定される。この実施態様により、試験化合物又は対照化合物を対象に投与し、例えば本発明の疾患の1以上の症状に対する試験化合物の効果を判断する。1以上の症状を減少させる試験化合物は、対照化合物で処置した対象を、試験化合物で処置した対象と比較することにより同定することができる。例えば本発明の疾患に精通している医師に公知の技術を使用して、試験化合物が、例えば本発明の疾患に関連する1以上の症状を減少させるか否かを判断することができる。例として、例えば本発明の疾患を有する対象において腫瘍量を減少させる試験化合物は、かかる対象に有益である。
【0290】
別の実施態様において、癌、例えば本発明の疾患に関連する1以上の症状の重篤性を減少させる試験化合物は、更なる試験又は治療的使用のために選択される。
【0291】
(治療用組成物及び予防用組成物及びそれらの使用)
本発明は、本発明の化合物(例えばNAALADL2タンパク質、NAALADL2若しくはその断片への特異的結合が可能な親和性試薬、又はNAALADL2をコードする核酸)の有効量を対象に投与することを含む、治療(及び予防)方法を提供する。特定の態様において、本化合物は、実質的に精製されている(例えば、その効果を制限するか又は望ましくない副作用をもたらす物質を実質的に含まない。)。
【0292】
本化合物が核酸を含む場合に利用することができる製剤及び投与方法は、先に記載されており;更なる適切な製剤及び投与経路は、以下に記載されている。
【0293】
例えば、リポソーム内のカプセル化、微小粒子、マイクロカプセル、本化合物を発現することができる組換え細胞、受容体媒介型エンドサイトーシス(例えば、Wu及びWuの文献:1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築などの種々の送達系が公知であり、本発明の化合物を投与するのに使用することができる。導入方法は、経腸的又は非経口的であり得、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外及び経口経路が含まれるが、これらに限定されない。本化合物は、いずれかの好都合な経路により、例えば、注入又は大量瞬時投与により、上皮性又は粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸管粘膜など)を介した吸収により投与することができ、他の生物活性物質とともに投与することができる。投与は、全身的又は局所的であり得る。さらに、脳室内及び髄腔内注射を含むいずれかの適切な経路により、本発明の医薬組成物を中枢神経系に導入することが望ましいことがあり;脳室内注入は、例えばオマヤレザバーなどの貯蔵部に取り付けた脳室内カテーテルにより容易にすることができる。また、例えば吸入器又は噴霧器の使用により、及びエアロゾル剤での処方により、肺投与も利用することができる。
【0294】
本発明の一態様において、本発明で利用される核酸は、例えば粒子媒介型表皮性送達を利用して真皮に送達することができる。
【0295】
具体的実施態様において、治療を必要とする領域に局所的に本発明の医薬組成物を投与することが望ましい場合があり;これは、例えば、限定されるものではないが、外科手術の間の局部的な注入、局所適用、例えば注射によって、カテーテルによって、又はインプラントによって達成してもよく、このインプラントは、サイラスティック膜などの膜を含む多孔性、非多孔性若しくはゲル状物質又は線維である。一実施態様において、投与は、例えば前立腺、膀胱、乳房、食道、頭頸部、結腸直腸、肝臓、肺、卵巣、胃、子宮及び膵臓の組織への直接注入によるものであるか、又は悪性腫瘍組織若しくは新生物組織若しくは前新生物組織の部位(又は前者の部位)での直接注入によるものであり得る。
【0296】
別の実施態様において、本化合物は、小胞、特にリポソームで送達することができる(Langerの文献1990:Science 249:1527-1533;Treatらの文献:「感染性疾患及び癌の治療法におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer)」中, Lopez Berestein及びFidler (編), Liss, New York, pp. 353-365 (1989);Lopez-Beresteinの文献:同書, pp. 317-327参照;同書を全般的に参照)。
【0297】
さらに、別の実施態様において、本化合物は、放出制御システムで送達することができる。一実施態様において、ポンプを使用することができる(Langerの文献,上述; Seftonの文献1987:CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201;Buchwaldらの文献1980:Surgery 88:507; Saudekらの文献1989:N. Engl. J. Med. 321:574参照)。別の実施態様において、ポリマー物質を使用することができる(「放出制御の医学的適用(Medical Applications of Controlled Release)」, Langer及びWise (編), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974);「制御薬剤生体利用能、薬剤生産設計及び性能(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance)」, Smolen及びBall (編), Wiley, New York (1984); Ranger及びPeppas, J.の文献1983:Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61参照。また、Levyらの文献1985:Science 228:190;Duringらの文献1989:Ann. Neurol. 25:351;Howardらの文献1989:J. Neurosurg. 71:105も参照)。さらに別の実施態様において、放出制御システムは、治療標的、例えば本発明の疾患の近傍に配置することができ、このため、全身用量の一部のみが必要とされるにすぎない(例えば、Goodsonの文献, 「放出制御の医学的適用(Medical Applications of Controlled Release)」中,上述, vol. 2, pp. 115-138 (1984)参照)。他の放出制御システムは、Langerによる総説(1990, Science 249:1527-1533)に論じられている。
【0298】
本発明の化合物がタンパク質をコードする核酸である具体的実施態様において、核酸は、適切な核酸発現ベクターの一部としてこれを構築し、これが細胞内になるように投与することにより、例えば、レトロウイルスベクターの使用により(米国特許第4,980,286を参照)、又は直接注入により、又は微粒子照射の使用により(例えば、遺伝子銃;Biolistic, Dupont社)、又は脂質若しくは細胞表面受容体若しくはトランスフェクト試薬での被覆により、又は核内に入ることが公知のホメオボックス様ペプチドに連結してこれを投与すること(例えば、Joliotらの文献, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868参照)などにより、インビボで投与して、そのコードタンパク質の発現を促進することができる。あるいは、核酸は、細胞内に導入し、相同組換えにより発現のために宿主細胞DNA内に組み込むことができる。
【0299】
また、本発明は医薬組成物も提供する。かかる組成物は、治療有効量の本発明の化合物及び医薬として許容し得る担体を含む。具体的実施態様において、「医薬として許容し得る」という用語は、動物及びより特定するとヒトにおける使用について、連邦政府若しくは州政府の規制当局により適切に承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般的に認められている薬局方に収載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルをいう。かかる医薬担体は、水及び油などの滅菌液であり得、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物又は合成起源のものを含む。水は、医薬組成物を静脈内投与するときに好ましい担体である。特に注射用溶液については、生理食塩水並びに水性デキストロース溶液及びグリセロール溶液も液体担体として利用することができる。適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。組成物は、望ましいならば、微量の湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤も含有し得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態を採用することができる。組成物は、坐薬として、トリグリセリドなどの従来型の結合剤及び担体とともに製剤化することができる。経口製剤には、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的担体が含まれ得る。適切な医薬担体の例は、E.W. Martinによる文献:「レミントンの薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」に記載されている。かかる組成物は、治療有効量の本化合物を、例えば精製した形態で、対象への投与に適した形態を提供するのに適切な量の担体とともに含有する。製剤化は、投与様式に適合させる必要がある。
【0300】
例えば、1以上の抗体が利用される実施態様において、本組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合させた医薬組成物としてルーチン手順に従い製剤化される。通常、静脈内投与用組成物は、無菌の等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、本組成物には、可溶化剤、及び注射部位における疼痛を緩和するリドカインなどの局所麻酔薬も含まれ得る。一般に、成分は、単位剤形、例えば活性剤の量を示すアンプル若しくはサッシェなどの密封封止容器内に乾燥凍結粉末として若しくは水を含まない濃縮物として、個別に又は混合されて供給される。本組成物を輸液により投与する場合、無菌医薬品等級の水又は生理食塩水を含有する輸液ボトルで供給することができる。本組成物が注射により投与される場合、成分を投与前に混合することができるように、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0301】
本発明の化合物は、中性又は塩形態として製剤化することができる。医薬として許容し得る塩には、適切な場合、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの遊離アミノ基と形成されたもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されるものなどの遊離カルボキシル基と形成されたものが含まれる。
【0302】
癌、例えば本発明の疾患の治療に効果的である本発明の化合物の量は、標準的な臨床技術により決定することができる。加えて、任意に、最適な用量範囲の確定を補助するのに、インビトロアッセイを用いることができる。また、製剤に利用される正確な用量は、投与経路、及び疾患又は障害の重症度にも依存し、医療従事者の判断及び各対象の状況にしたがって決定されることを要する。しかし、静脈内投与に適切な用量範囲は、一般に、体重1キログラムあたり活性化合物約20〜500 μgである。鼻腔内投与に適切な用量範囲は、一般に、約0.01 pg/kg体重〜1 mg/kg体重である。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から得た用量反応曲線から推定することができる。
【0303】
坐薬は、一般に、0.5重量%〜10重量%の範囲の活性成分を含有し;経口製剤は、好ましくは10%〜95%の活性成分を含有する。
【0304】
また、本発明は、本発明の医薬組成物の1以上の成分を充填した1以上の容器を備える医薬パック又はキットも提供する。かかる容器は、任意に、医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府当局により規定された形態での通知を伴い得、この通知は(a)ヒト投与についての製造、使用又は販売の当該機関による承認、(b)使用に関する指示、又はこれらの両方を反映する。
【0305】
したがって、キットが本発明で利用される抗体を備えるという態様において、例えば、抗体は、投与又は使用の前の再構成のために凍結乾燥することができる。キットが癌などの療法/治療における使用のための場合、1又は複数の抗体は、等張水溶液により再構成することができ、この等張水溶液は、任意にキットに備えられてよい。一態様において、キットは、本発明で使用される免疫原性ポリペプチドなどのポリペプチドを備えており、これは、例えば凍結乾燥することができる。後者のキットは、免疫原性ポリペプチドを再構成するためのアジュバントを更に備えることができる。
【0306】
また、本発明は、本明細書に記載する組成物、例えば、対象において免疫応答を誘発するのに使用するための医薬組成物及び/又はワクチン組成物にも及ぶ。
【0307】
また更なる実施態様において、本発明は、癌の治療、好ましくは本発明の疾患の一種の治療における、同時、連続又は個別の投与のための:
(a)NAALADL2に結合する親和性試薬、及び
(b)抗癌剤又は他の活性物質、
を個別に又は一緒に含有する医薬品を提供する。
【0308】
(イメージング技術によるNAALADL2の存在量の測定)
イメージング技術によるNAALADL2の存在量の測定の利点は、かかる方法が非侵襲性であり(試薬を投与する必要があり得ることは別として)、対象から試料を抽出する必要がないことである。
【0309】
適切なイメージング技術には、ポジトロン放出断層撮影(PET)及び単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)が含まれる。かかる技術を使用するNAALADL2の視覚化は、適切な標識、例えば
18F、
11C又は
123Iなどの放射性トレーサの取り込み又は結合を必要とする(例えば、NeuroRx - The Journal of the American Society for Experimental NeuroTherapeutics (2005) 2(2), 348-360、及び技術の更なる詳細については同文献の361-371頁を参照)。放射性トレーサ又は他の標識は、好適に標識された特定のリガンドの対象への投与により(例えば注入により)、NAALADL2に組み込むことができる。あるいは、これらは、(例えば注入により)対象に投与できるNAALADL2に特異的な結合親和性試薬(例えば、抗体)に組み込むことができる。イメージングについてのアフィボディの使用に関する論考については、例えばOrlova A, Magnusson M, Eriksson TL, Nilsson M, Larsson B, Hoiden-Guthenberg I, Widstrom C, Carlsson J, Tolmachev V, Stahl S, Nilsson FYの文献:「ピコモル親和性HER2結合アフィボディ分子を使用する腫瘍イメージング(Tumor imaging using a picomolar affinity HER2 binding Affibody molecule)」, Cancer Res. 2006 Apr 15;66(8):4339-48を参照されたい。
【0310】
(免疫組織化学法を用いた本発明の疾患を含む癌の診断及び治療)
免疫組織化学法は、優れた検出技術であり、それゆえ、本発明の疾患を含む癌の診断及び治療に非常に有用であり得る。免疫組織化学法は、蛍光色素、酵素、放射性元素又はコロイド金などのマーカーにより視覚化される抗原‐抗体相互作用を通じて特異試薬としてNAALADL2に特異的に結合する標識化抗体(又は他の親和性試薬)、その誘導体及び類似体の使用により、組織切片におけるNAALADL2抗原の局在を介して、上述したような癌を検出し、診断し又はモニタリングするのに使用することができる。
【0311】
モノクローナル抗体技術の発達は、ヒト新生物の最新の正確な顕微鏡診断における免疫組織化学法の立場を確実にする際に極めて重要であった。免疫組織化学法による拡散した新生物形成性の悪性転換細胞の同定は、癌浸潤及び転移、並びに悪性度増加に対する腫瘍細胞関連免疫表現型の進化のより鮮明な画像を可能にする。将来の抗新生物治療アプローチには、個々の患者の新生物形成性疾患に伴う特定の免疫表現型的パターンに特異的な種々の個別的免疫治療が含まれ得る。更なる論考については、例えば、Bodey Bの論文:「新生物の診断及び治療における免疫組織化学法の意義(The significance of immunohistochemistry in the diagnosis and therapy of neoplasms)」, Expert Opin Biol Ther. 2002 Apr;2(4):371-93を参照されたい。
【0312】
本発明の各態様の好適な特徴は、必要な変更を加えた他の態様のそれぞれに関して同様である。本明細書に記載の先行技術文献は、法律により許容される最大範囲で組み込まれる。
【0313】
本発明は、次の非限定的な実施例によって示される。
【実施例】
【0314】
(実施例1:液体クロマトグラフィー‐質量分析(LC/MS)を使用する、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌及び膵臓癌の組織試料において発現するNAALADL2の同定)
次のプロトコールを用いて、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌及び膵臓癌の組織並びに対応する正常組織又は正常隣接組織(NAT)試料から抽出された膜タンパク質を消化し、得られたペプチドをタンデム質量によって配列決定した。
【0315】
(1.1 材料及び方法)
(1.1.1 細胞膜分画)
前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌及び膵臓癌又は正常組織若しくは正常隣接組織から回収した細胞を均質化し、1000×gで遠心分離した。その上清を採取し、49500×gで超遠心分離した。得られたペレットを再度均質化し、不連続スクロース密度勾配遠心分離により分離した。107000×gで超遠心分離した後、相境界の画分を回収し、ペレット化した。
【0316】
(1.1.2 細胞膜可溶化)
細胞膜画分を、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)中に再懸濁させ、最終SDS濃度0.5%とし、遠心分離し、可溶化したタンパク質を抽出した。
【0317】
(1.1.3 トリプシン分解)
溶液中消化のために、容積50μgのタンパク質溶液を、200mM炭酸水素アンモニウムを用い、100μlとした。この試料へ、還元剤DL-ジチオスレイトール(75mM) 10μlを添加し、80℃で15分間インキュベーションした。これに続けて、150mMヨードアセトアミド10μlを使用し、システインブロック工程を行い、室温、暗所で30分間インキュベーションした。その後SDS濃度を、超純水の添加により、0.05%まで希釈した。この混合物へ、タンパク質2.75μgに対しトリプシン1μgとするのに十分な容積のトリプシン(Promega社、V5111)を添加し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0318】
あるいは、タンパク質溶液105μgを、50mM TCEP 3μlを用いて還元し、60℃で1時間インキュベーションした。その後試料を、Protein Digestion Kit (Protein Discovery社)のFASP濾過装置上で、製造業者の指示に従い、炭酸水素アンモニウムの代わりに炭酸水素トリエチルアンモニウムを用いて、処理した。トリプシン分解を、最終容積75μlで、タンパク質50μgに対しトリプシン1μgを用い、行った。
【0319】
(1.1.4 ペプチド分画)
消化されたタンパク質試料を、真空下で乾燥させ、0.1%ギ酸水溶液中に再懸濁させ、トリフルオロ酢酸(TFA)を添加し、この溶液のpHを3未満まで低下させた。ペプチドを、Agilent LC1200シリーズ液体クロマトグラフィーシステム上のAgilent Zorbax Bio-強陽イオン交換シリーズIIカラムを用い、イオン交換により分離した。あるいは、Agilent 3100 OFFGEL Fractionator及びOFFGEL Kit pH 3 - 10を、供給業者のプロトコールに従い使用し、pIに基づく分離に使用した。IPGストリップの再水和後、等量の膜消化物を、各ウェルに加えた。分離後、得られる画分を酸性化した。
【0320】
(1.1.5 質量分析)
分画した試料を、nanoACQUITY UPLC BEH 130 C18 カラム、75μm×250mm (186003545)を装着したWaters社nanoACQUITY UPLCシステム、及びLTQ Orbitrap Velos (Thermo Fisher Scientific社)を使用し、液体クロマトグラフィー-質量分析により分析した。120分間にわたりアセトニトリルが3%から35%まで増加する300nl/分勾配で、ペプチドを溶出した。フルスキャン質量スペクトルを、Orbitrapにおいて、400〜2000m/z質量範囲、分解能60000で獲得した。各サイクルにおいて、20種の最強のペプチドを、その装置に装着されたナノスプレーイオン給源を備えたリニアイオントラップにおけるCID MS/MS走査のために選択した。
【0321】
(1.1.6 ペプチドのアミノ酸配列分析)
LTQ Orbitrap Velosから生成した生データを、Mowseアルゴリズム(Curr Biol. 1993 Jun 1;3(6):327-3)を用いる、Mascotソフトウェア(Matrix Science社)によって処理し、夾雑物のタンパク質配列と共に、Ensembl (http://www.ensembl.org/index.html)、IPI (www.ebi.ac.uk/IPI/IPIhuman.html)及びSwissProt (http://www.uniprot.org)からなる配列データベースに対し検索することにより、ピーク一覧からのアミノ酸配列を推測した。ペプチド同定についての基準には、トリプシン消化、最大2つのミスマッチ切断部位、並びに種々の生物学的及び化学的修飾(酸化メチオニン、MMTS又はヨードアセトアミドによるシステイン修飾、並びにセリン、トレオニン及びチロシンのリン酸化)が含まれていた。期待値0.05%以下、イオンスコア28以上を伴う1にランク付けされたペプチドを、本発明者らのOGAPデータベースに読み込み、そこでこれらをタンパク質群として処理した。
【0322】
(1.1.7前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌及び膵臓癌に関連するタンパク質の識別)
NAALADL2を同定する方法は、天然に存在するヒトタンパク質の上述の質量分析によって試験的に得られたペプチド配列を使用して、公開されているヒトゲノム配列におけるコード化エキソンを同定し、組織化するものである。表1に指定したこれらの試験的に決定した配列を、国際公開公報第2009/087462号に記載されている、ペプチド質量、ペプチド記号(peptide signature)、EST及びパブリックドメインゲノム配列データの処理及び統合によって編集されたOGAP(登録商標)データベースと比較した。
【0323】
表1.前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌及び膵臓癌の組織試料の細胞膜中のLC/MSにより同定されたNAALADL2特異的ペプチド
【表1】
【0324】
(1.1.8 タンパク質指標)
タンパク質指標は、タンパク質出現数(prevalence)及びペプチド存在量の両方の測定値である。アルゴリズムは、その中に該タンパク質が観察された試料の数、及び観察されたペプチドの数、対、各試料からの観察可能なペプチドの数の両方を考慮する。その後得られた値を、対応する正常試料、対、癌試料の対のある比較により等級化する。
【0325】
(1.2 結果)
本明細書に更に説明するように、これらの試験はNAALADL2を同定した。完全長NAALADL2は、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌及び膵臓癌の組織試料の細胞膜中で検出された。表2は、タンパク質指標で測定されたNAALADL2の発現分布を示す。これらの癌組織中のNAALADL2の発現は、NAALADL2は、これらの癌における価値のある治療的及び診断的標的であることを示している。
【0326】
表2. NAALADL2タンパク質指標(+++++=非常に高い;++++=高い;+++=中等度;++=低い;+=非常に低い;−=観察されず)
【表2】
【0327】
(実施例2:NAALADL2に対する抗体を使用する免疫組織化学法)
次の参照プロトコールを用いて、免疫組織化学法を、NAALADL2に対するヤギポリクローナル抗体(R&D Systems社, 英国)を使用し、FFPE腫瘍及び正常組織について行った。
【0328】
(2.1材料及び方法)
(2.1.1 材料)
EnVisionプラスキット(K4006及びK4010)は、DAKO社、CA、米国から得た。
EZ-De-Waxは、BioGenex社、CA、米国から得た。
組織切片及びアレイは、Biomax社、MD、米国から得た。
【0329】
(2.1.2脱パラフィン化及び再水和)
スライドを、緩衝液を含まない水浴中の50 mlファルコンにおいて、60℃で2時間加熱した。各ファルコンチューブは、1枚のスライド、又は2枚のスライドであって互いに固着することを防ぐためにこれらの間に長いゲルローディングチップを有する背合わせの2枚のスライドを有していた。スライドを、黒色のスライドラックにおいて5分間、EZ-DeWaxで脱パラフィン化し、次いで、同じDeWax溶液1mlで洗浄し、その後、水で洗浄した。水を充填したコプリンジャー(coplin jar)内にスライドを入れ、水を2回交換した。
【0330】
(2.1.3 抗原賦活化(マイクロウェーブ))
水を、抗原賦活化溶液=1×クエン酸塩緩衝液、pH 6(DAKO社製)に交換した。抗原を、マイクロウェーブ法により賦活化させた。抗原賦活化溶液中のプラスチック製コプリンジャーにあるスライドを、800Wマイクロウェーブ内へ配置し、次にこれを、抗原賦活化溶液が沸騰するまで、最大出力で加熱した。次に抗原賦活化溶液を残留させ、低出力で更に10分間煮立て、その後プラスチック製コプリンジャーをマイクロウェーブから取り出し、放置し、室温まで、更に20分間かけて冷却した。蓋を開け、試料を取り出し、ベンチ上に置いた。スライドをPBS-3T(0.5L PBS + 3滴のTween-20)で1×5分洗浄し、スライドをPBS中に入れた。
【0331】
(2.1.4 抗原賦活化(圧力鍋))
水を、抗原賦活化溶液=1×クエン酸塩緩衝液、pH 6(DAKO社製)に交換した。抗原を圧力鍋法により賦活化させた。抗原賦活化溶液中のプラスチック製コプリンジャーにあるスライドを圧力鍋に入れ、その後、ポジション6(Russell Hobbs 13407 Hob Electric Two Boiling Ring、モデル13407)まで加熱し、15〜20分間インキュベートし、温度をポジション3まで下げ、(圧力鍋内部の温度が117℃になったら)その状態で更に20〜25分間放置した。その後、ホブのスイッチを切り、冷却したホブ上に圧力鍋を置き、ハンドルを「開」と「閉」との間の位置に慎重に動かして圧力を開放させた。すべてのシステムをそのままにして、圧力を開放させ、更に20分間冷却した。蓋を開けて、試料を取り出し、ベンチ上に置いた。スライドをPBS-3T(0.5L PBS + 3滴のTween-20)で1×5分洗浄し、スライドをPBS中に入れた。
【0332】
(2.1.4 組織染色)
内在性ペルオキシドブロックを、EnVision+キットにより供給された溶液を使用して行った。スライドをコプリンジャーから取り出し、組織周りのPBSを拭き取った。組織表面上の過剰なPBSを、片側にスライドを傾け、浸漬することにより取り除き、組織切片の端に蓄積したPBS液滴を拭き取った。ペルオキシド溶液を、組織全体を覆うように滴下した。大きい切片であっても、覆うのに液滴1〜4滴で十分であった。全ての試料が、ペルオキシドブロックにより覆われた時点で、その時間を5分に設定した。スライドを洗浄瓶からの水で洗浄し、その後1×5分間PBS-3Tで、及び1×5分間PBSで洗浄した。次にこれらを、PBS中のコプリンジャー内に放置した。一次抗体を抗体希釈試薬(DAKO社製)で2.5μg/mlまで希釈した。過剰なPBSをスライドから拭き取り、過剰なPBSを組織切片から前述のように除去した。50〜200μlの希釈一次抗体を、全組織を被覆するように注意しつつ、各切片及び/又は組織マイクロアレイに適用した。スライドを静かに叩いて切片上に均一に抗体を分散させるか、又は、ピペット先端を切片の上部に使用した。スライドを、湿室内、室温で45分間インキュベートした。この抗体を、洗浄瓶からのPBSですすぎ、スライドを、Shandon Coverplateシステム中に封入した。PBSで充填されたコプリンジャーにカバープレートを配置し、組織切片を乗せたスライドを、カバープレートへゆっくりスライドさせることにより、スライドとプラスチック製カバープレートの間の気泡を防止した。スライドを、コプリンジャーから引き出し、同時にこれをカバープレートと緊密に一緒に保持した。集成されたスライドを、ラックに配置し、PBSを、漏斗内に捕獲させ、スライドとカバープレートの間を流れさせた。スライドを、2×2ml(又は4×1ml)PBS-3T、1×2ml PBSで洗浄した。対応するペルオキシダーゼポリマーを、スライド1枚につき2×2滴適用させ、室温で35分間インキュベーションした。スライドを上述のように洗浄した。DAB基質を希釈緩衝液中で作製し;2滴の基質を含有する2 mlは、10枚のスライドに十分であった。DAB試薬を一度に数滴適用することによって、スライドに適用した。DABのすべてを、スライド間に分散させた。スライドを10分間インキュベートした。スライドを、1×2ml PBS-3Tで、及び1×2ml(又は2×1ml)PBSで洗浄し、すべてのPBSがスライドを通るまで待機した。ヘマトキシリン(DAKO社製)を適用し;その1mlは、10枚のスライドに十分であり、スライドを室温で1分間インキュベートした。漏斗に2mlの水を充填し流れさせた。スライドが過剰のヘマトキシリンに透明である場合、システムを分解し;組織切片及び/又はアレイを洗浄瓶からの水により洗浄し、黒色のスライドラックに入れた。EZ-DeWaxにおいて5分間;次いで95%エタノールにおいて2〜5分間。スライドを、乾燥させ、その後、封入剤中に封入し、カバースリップで被覆した。
【0333】
(2.2 結果)
免疫組織化学分析は、前立腺癌、膀胱癌、乳癌、食道癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、胃癌及び子宮癌における腫瘍細胞を特異的に染色することを示した。高い倍率で、ほとんどの細胞は、細胞膜が濃く染色されたことは明らかであった。したがって、これらの癌及び他の癌の種類における治療及び診断がNAALADL2の発現を示すので、NAALADL2に対する抗体は、有用性があると考えられる。
【0334】
(実施例3:NAALADL2発現細胞のT細胞活性化及び特異的溶解)
(背景:)
標的がBiTEアプローチ(標的細胞又は組織上の特異的抗原の結合部位と一緒にされた抗-CD3結合エピトープと組合せた二重特異性抗体断片)に適している可能性を評価するために、抗-CD3及び関心対象の標的抗原に特異的なモノクローナル抗体によるT細胞の活性化を試験するアッセイを、開発した。
【0335】
(方法:)
このアッセイのために、NAALADL2を、LnCAP細胞上で発現させた。細胞をカウントし、800×gで遠心分離し、アッセイ培地(色素非含有RPMI+10%超低Ig FBS−Invitrogen社カタログ#16250078)中に、120000個細胞/mlで再懸濁した。6,000個細胞(50μl)を、96ウェル平底組織培養プレートの各好適なウェルに添加した。プレートは、予め、Southern Biotech社からのヤギ抗-マウスκ(カタログ# 1050-01)により、PBS中3μg/mlで、一晩コートした。過剰な抗体溶液を、プレートから除去し、その後LnCAP細胞を添加した。ヒトCD8+ T細胞(凍結)を、AllCells社カタログ番号PB009-3Fから購入した。T細胞を解凍し、製造業者の指示に従い洗浄した。細胞を、1,500,000個細胞/mlで、アッセイ培地中に、再懸濁した。T細胞を、96ウェル抗-κコートされたプレート中のLnCAP細胞へ、1ウェル当たり150,000個細胞で添加した。NAALADL2抗体(R&D社カタログ# MAB4665)を、好適なウェルに4.3μg/ml又は1.4μg/mlで添加した。機能等級の抗-CD3クローンOKT3(eBioscience社カタログ番号16-0037-85)を、好適なウェルに4.3又は1.4μg/mlで添加した。対照ウェルは、抗体を添加しなかった。プレートを、加湿した組織培養器内、37℃で、5% CO
2中で24時間インキュベーションした。
【0336】
各ウェルからの上清50μlを、96ウェル平底プレートに移した。培地を、CytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性(カタログ#G1780)上で製造業者の指示に従い、LDHについて分析し、可視プレートリーダー上でOD 490nmで読み取った。複製物に関するODを、平均をとり、これを使って溶解率(%)を算出した。提供された界面活性剤及び6000個のLnCAP細胞が播種された溶解ウェルを使用し、最大溶解を決定し、同時にこのアッセイを、播種した。最大溶解上清ODは、2.1であった。自発溶解を、無抗体ウェルを用いて決定した(抗-CD3又は抗-NAALADL2モノクローナル抗体を添加しないT細胞+LnCAP細胞)。
【0337】
(結果:)
図1は、抗-NAALADL2モノクローナル抗体によるLnCAP細胞の特異的溶解を示し、細胞死は、抗体濃度に比例した。したがって、抗-NAALADL2モノクローナル抗体は、CD3による活性化により、T-細胞細胞傷害性を誘導することができる。
【0338】
(配列表)
【表3】