特許第6523969号(P6523969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523969
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】水性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 151/08 20060101AFI20190527BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20190527BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190527BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20190527BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20190527BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   C09D151/08
   C09D5/02
   C09D201/00
   B05D7/24 301F
   B32B27/30 A
   C08F265/06
【請求項の数】7
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2015-559772(P2015-559772)
(86)(22)【出願日】2014年12月12日
(86)【国際出願番号】JP2014083000
(87)【国際公開番号】WO2015114963
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2017年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-13927(P2014-13927)
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】中水 正人
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/151050(WO,A1)
【文献】 特開2006−056973(JP,A)
【文献】 特開2012−131092(JP,A)
【文献】 特開2011−016957(JP,A)
【文献】 特開2004−224907(JP,A)
【文献】 特開2012−062445(JP,A)
【文献】 高分子学会 高分子辞典編集委員会,新版 高分子辞典,日本,朝倉書店,2001年 3月20日,114-115頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
C08G 18/00−18/87
B05D 1/00−7/26
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び任意選択で架橋剤(C)を含有する水性塗料組成物であって、
該アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)は、アクリルウレタン樹脂(I)及び分散安定剤としてグラフトアクリル樹脂(II)を含有し、
前記アクリルウレタン樹脂(I)はアクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分と含み、
前記グラフトアクリル樹脂(II)は、疎水鎖成分及び親水鎖成分を有し、重量平均分子量5000以上であり、
該疎水鎖成分及び親水鎖成分は、それぞれの重合性不飽和モノマー成分を多段階に分けて重合することにより合成され、
該疎水鎖成分の重合性不飽和モノマー及び該親水鎖の重合性不飽和モノマーは、重合性不飽和基以外の互いに反応性を有する官能基を有する重合性不飽和モノマーをそれぞれ含有し、
前記グラフトアクリル樹脂(II)は、疎水鎖成分中及び親水鎖成分中の互いに反応性を有する官能基同士を反応させることにより得られるグラフトアクリル樹脂であり、
前記疎水鎖及び親水鎖は溶解度パラメータの差が、少なくとも0.5以上であり、
(ここで、前記疎水鎖及び親水鎖の溶解度パラメータは、下記式(2)で求められる値である:
S1×Φ1+S2×Φ2・・・・・ 式(2)
(式中、S1、S2・・・・・は共重合体に使用されたそれぞれのモノマーの溶解度パラメータを示し、Φ1 、Φ2 ・・・・・は共重合体中のそれぞれのモノマーの容積分率を示す。))
前記アクリルウレタン樹脂(I)が、アクリル樹脂成分の構成モノマー成分及びウレタン樹脂成分を含む水系媒体中、かつ、グラフトアクリル樹脂(II)の存在下で、アクリル樹脂成分の構成モノマー成分を共重合して合成されたアクリルウレタン樹脂であることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)におけるアクリルウレタン樹脂(I)が、アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分とが化学的に結合したアクリルウレタングラフト樹脂(I−A)である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)におけるアクリルウレタン樹脂(I)のアクリル樹脂は、
イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを構成モノマー成分とするものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
反応性基含有樹脂(B)の反応性基は、水酸基、酸基、カルボニル基、N−メチロールアルキルエーテル基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、カルボジイミド基、及びヒドラジド基から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物が塗装された物品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装することを含む塗膜形成方法。
【請求項7】
下記の工程を含む、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び任意選択で架橋剤(C)を含有する水性塗料組成物の製造方法:
アクリルウレタン樹脂(I)及び分散安定剤としてグラフトアクリル樹脂(II)を含有するアクリルウレタン複合樹脂粒子を製造する工程であって、
アクリル樹脂成分の構成モノマー成分及びウレタン樹脂成分を含む水系媒体中、かつ、グラフトアクリル樹脂(II)の存在下で、アクリルウレタン樹脂(I)を合成する工程であり、
前記アクリルウレタン樹脂(I)はアクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分と含み、
前記グラフトアクリル樹脂(II)は、疎水鎖成分及び親水鎖成分を有し、重量平均分子量5000以上であり、
該疎水鎖成分及び親水鎖成分は、それぞれの重合性不飽和モノマー成分を多段階に分けて重合することにより合成され、
該疎水鎖成分の重合性不飽和モノマー及び該親水鎖の重合性不飽和モノマーは、重合性不飽和基以外の互いに反応性を有する官能基を有する重合性不飽和モノマーをそれぞれ含有し、
前記グラフトアクリル樹脂(II)は、疎水鎖成分中及び親水鎖成分中の互いに反応性を有する官能基同士を反応させることにより得られるグラフトアクリル樹脂であり、
前記疎水鎖及び親水鎖は溶解度パラメータの差が、少なくとも0.5以上である
(ここで、前記疎水鎖及び親水鎖の溶解度パラメータは、下記式(2)で求められる値である:
S1×Φ1+S2×Φ2・・・・・ 式(2)
(式中、S1、S2・・・・・は共重合体に使用されたそれぞれのモノマーの溶解度パラメータを示し、Φ1 、Φ2 ・・・・・は共重合体中のそれぞれのモノマーの容積分率を示す。))
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2014年1月29日に出願された、日本国特許出願第2014-013927号明細書(その開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、仕上がり外観及び貯蔵安定性に優れたアクリルウレタン複合樹脂粒子を含有する水性塗料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ウレタン樹脂粒子は、物性に優れることから、例えば塗膜性能を向上させる目的で、塗料用途の樹脂粒子としてこれまでにも広く使用されている。
【0004】
また、アクリルとウレタンとの相乗効果、アクリル樹脂系の塗料に適用したときの相溶性向上、及びウレタン樹脂粒子のコスト低減等の目的からアクリルウレタン複合樹脂粒子も塗料分野等において使用されている。
【0005】
アクリルウレタン複合樹脂粒子の合成は、水系への分散形態に基づいて、(i)自己乳化型のものと(ii)乳化剤により分散されたものとに大別することができる。
【0006】
自己乳化型のものとして、例えば、特許文献1には、乳化剤を用いずに調製できるウレタンの水分散体をシードとして、アクリル系モノマーのシード重合を行い、その後、得られたウレタンとアクリルとの粒子内混合物の水分散体をシードとして、再度アクリル系モノマーのシード重合を行うことにより得られた、造膜性や耐水性にすぐれた、ウレタンーアクリル粒子内混合物水分散体の製造方法及び該ウレタンーアクリル粒子内混合物水分散体がフィルム形成材や塗料、接着剤または粘着剤に利用できることが開示されている。
【0007】
しかしながら、このような自己乳化型のアクリルウレタン複合樹脂粒子を水性塗料組成物用途に適用した場合、他の樹脂成分との相溶性が不十分であり、得られる塗膜に濁りが生じる場合、仕上がり外観が不十分となる場合があった。さらには、分散安定性が不十分であるため水性塗料組成物の貯蔵安定性に問題がある場合があった。
【0008】
乳化剤により分散されたものとして、例えば、特許文献2には、1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体を予め分散した原料乳化液を、水系媒体に逐次的又は連続的に添加することにより、ウレタン樹脂の存在下で、上記1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体を乳化重合して、(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を製造する方法及び該(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を用いた繊維複合材、繊維質基材積層体等が開示されている。
【0009】
しかしながら、このような乳化剤により分散されたアクリルウレタン複合樹脂粒子を水性塗料組成物用途に適用した場合においても、他の樹脂成分との相溶性が不十分であり、得られる塗膜に濁りが生じる場合、及び、仕上がり外観が不十分となる場合があった。さらには、このようなアクリルウレタン複合樹脂粒子は、相当量の乳化剤を使用することとなるので塗料用途に適用した際、得られる塗膜の水負荷に対する耐性(例えば耐水性等)に問題がある場合があった。
【0010】
また、特許文献3には、ポリウレタンと(メタ)アクリル系重合体とが水性媒体中に分散されてなるポリウレタン−(メタ)アクリル系重合体複合樹脂水性分散液において、ポリウレタンを構成するジオール由来の構成単位と多価イソシアネート由来の構成単位との少なくとも−方がシクロヘキサン環を有しており、かつ、当該シクロヘキサン環の含有量がポリウレタン1kg当り2.5モル以上であり、しかも、(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)が50〜160℃であることを特徴とするポリウレタン−(メタ)アクリル系重合体複合樹脂水性分散液及び該複合樹脂分散液を含有する水性コーティング剤等がABS等の樹脂基材やアルミニウム等の金属基材に対する密着性等に優れていること等が開示されている。
【0011】
しかしながら、このようなポリウレタン−(メタ)アクリル系重合体複合樹脂水性分散液を水性塗料組成物用途に適用した場合においても、ポリウレタン−(メタ)アクリル系重合体複合樹脂水性分散液と他の樹脂成分との相溶性が不十分であるため、得られる塗膜の仕上がり外観が不十分となる場合があった。さらには、ポリウレタン−(メタ)アクリル系重合体複合樹脂水性分散液の分散安定性が不十分であるため水性塗料組成物の貯蔵安定性に問題がある場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−120304号公報
【特許文献2】特開2011−149011号公報
【特許文献3】特開2010−150519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れ、他の樹脂成分との相溶性が良好であり、得られる塗膜の仕上がり外観及び耐水性等の塗膜性能にも優れるアクリルウレタン複合樹脂粒子を含有する水性塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、分散安定剤として、疎水鎖及び親水鎖を有する重量平均分子量5000以上のグラフトアクリル樹脂を使用してその存在下で合成することにより得られたアクリルウレタン複合樹脂粒子によれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本願発明は以下の態様を包含する:
項1、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び任意選択で架橋剤(C)を含有する水性塗料組成物であって、
該アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)は、アクリルウレタン樹脂(I)及びグラフトアクリル樹脂(II)を含有し、
アクリルウレタン樹脂(I)が、疎水鎖及び親水鎖を有する重量平均分子量5000以上のグラフトアクリル樹脂(II)の存在下で合成されたアクリルウレタン複合樹脂粒子であることを特徴とする水性塗料組成物。
【0016】
項2、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)におけるアクリルウレタン樹脂(I)が、アクリルウレタングラフト樹脂(I−A)である項1に記載の水性塗料組成物。
【0017】
項3、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)におけるアクリルウレタン樹脂(I)のアクリル樹脂は、
イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを構成モノマー成分とするものであることを特徴とする項1又は2に記載の水性塗料組成物。
【0018】
項4、反応性基含有樹脂(B)の反応性基は、水酸基、酸基、カルボニル基、N−メチロールアルキルエーテル基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、カルボジイミド基、及びヒドラジド基から選ばれる少なくとも1種である項1〜3のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【0019】
項5、項1〜4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物が塗装された物品。
【0020】
項6、項1〜4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装することを含む塗膜形成方法。
【0021】
項7、下記の工程を含む、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び任意選択で架橋剤(C)を含有する水性塗料組成物の製造方法:
アクリルウレタン樹脂(I)及びグラフトアクリル樹脂(II)を含有するアクリルウレタン複合樹脂粒子を製造する工程であって、
系媒体中で、疎水鎖分及び親水鎖を有する重量平均分子量5000以上のグラフトアクリル樹脂(II)の存在下で、アクリルウレタン樹脂(I)を合成する工程。
【発明の効果】
【0022】
本発明の水性塗料組成物は、分散安定剤として、疎水鎖及び親水鎖を有するグラフトアクリル樹脂を使用して、アクリルウレタン樹脂が水系媒体中において分散している形態を有するアクリルウレタン複合樹脂粒子を含有することを主たる特徴とするものである。
【0023】
このアクリルウレタン複合樹脂粒子は、分散安定剤であるグラフトアクリル樹脂の効果により、アクリルウレタン樹脂が極めて安定に水系媒体中に分散されることから、従来のアクリルウレタン複合樹脂粒子にくらべて分散安定性及び貯蔵安定性が極めて優れている。
【0024】
複合樹脂粒子のアクリル樹脂は、アクリルウレタン樹脂中のアクリル樹脂部分と分散安定剤であるグラフトアクリル樹脂とに分割された形態となって、機能分割が可能となることから、従来のアクリルウレタン複合樹脂粒子にくらべて、アクリル樹脂部はもちろんのこと、ウレタン樹脂部も含めた複合樹脂粒子全体としての組成、分子量等の選択の幅が広がり、設計の自由度が非常に高いアクリルウレタン複合樹脂粒子である。
【0025】
これにより、従来のアクリルウレタン複合樹脂粒子にくらべて、他のアクリル樹脂等の樹脂との相溶性が良好であることから、貯蔵安定性に優れ、得られる塗膜の仕上がり外観及び耐水性等の塗膜性能にも優れた水性塗料組成物を得ることができる、という効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の水性塗料組成物について、さらに詳細に説明する。
【0027】
本発明の水性塗料組成物(以下、「本塗料」と略称する場合がある)は、
アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び必要に応じて架橋剤(C)を含有する水性塗料組成物であって、
該アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)は、アクリルウレタン樹脂(I)及びグラフトアクリル樹脂(II)を含有し、アクリルウレタン樹脂(I)が、分散安定剤として、疎水鎖及び親水鎖を有する重量平均分子量5000以上のグラフトアクリル樹脂(II)を使用して合成されたアクリルウレタン複合樹脂粒子であることを特徴とする水性塗料組成物である。
【0028】
アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)
アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)は、主体部分であるアクリルウレタン樹脂(I)と分散安定剤であるグラフトアクリル樹脂(II)とを主たる構成成分とするものである。
【0029】
アクリルウレタン複合樹脂粒子は水に分散されていればその形態は特に限定されない。例えば、アクリルウレタン樹脂(I)のまわりに分散安定剤であるグラフトアクリル樹脂(II)が位置した構造を有する粒子として水に分散されていることが好ましい。言い換えると、グラフトアクリル樹脂(II)を外側に、アクリルウレタン樹脂(I)を内側にしたコアシェル構造を有するミセルとして水に分散していることが好ましい。アクリルウレタン複合樹脂粒子は、ほぼそのような粒子形態を有していると考えられる。
【0030】
なお、コアシェル構造とは、具体的には同一ミセル中に異なる樹脂組成の成分が存在し、中心部分(コア)と外殻部分(シェル)とで異なる樹脂組成からなっている構造をいう。
【0031】
上記コアシェル構造は、通常、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率、その他の条件等により、シェル部が層構造を形成するのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよい。
【0032】
アクリルウレタン複合樹脂粒子のアクリルウレタン樹脂(I)とグラフトアクリル樹脂(II)との構成比率は、アクリルウレタン樹脂(I):グラフトアクリル樹脂(II)=20:80〜95:5(質量比)とすることが好ましく、さらに好ましくは40:60〜90:10、さらに特に好ましくは60:40〜80:20である。
【0033】
複合樹脂粒子中のアクリルウレタン樹脂(I)比率が20質量%未満であるとウレタン樹脂比率が少なく、ウレタン樹脂の特性が低下する場合がある。また、該比率が95質量%を超えると分散安定剤が少ないため、複合樹脂粒子の分散性が低下する場合がある。
【0034】
アクリルウレタン樹脂(I)
アクリルウレタン樹脂(I)は、アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分とを主たる構成成分とする。アクリルウレタングラフト樹脂(I)は、アクリルウレタン樹脂のうち、アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分とが、化学的に結合したものを主に指す。アクリルウレタングラフト樹脂は、アクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体と換言することもできる。また、「アクリル樹脂成分」及び「ウレタン樹脂成分」は、アクリルウレタングラフト樹脂(I)の一部分をそれぞれ構成するため、「アクリル樹脂部分」及び「ウレタン樹脂部分」と換言することもできる。
【0035】
アクリル樹脂成分
アクリルウレタン樹脂(I)のアクリル樹脂成分は、常法により、重合性不飽和モノマーを構成モノマー成分として共重合することにより合成することができる。
【0036】
本明細書において、「重合性不飽和モノマー」とは、主に、重合性不飽和基含有化合物を指す。重合性不飽和基はラジカル重合しうる不飽和基であって、具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、マレイミド基、ビニルエーテル基等を挙げることができる。これらの重合性不飽和基のうち、反応性に優れる観点から、アクリロイル基及びメタクリロイル基が好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
【0037】
重合性不飽和モノマーとしては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;
【0038】
アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;
ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香環含有重合性不飽和モノマー;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;
パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;
マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;
N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;
【0039】
グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;
分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;
アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;
1−アミノエチル(メタ)アクリレート、1−アミノプロピル(メタ)アクリレート、アリルアミン、p−ビニルアニリン等のアミノ基含有重合性不飽和モノマー;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;等をあげることができる。
【0040】
上記アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートのうち、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0041】
上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーのうち、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0042】
得られるアクリルウレタン複合樹脂粒子の分散安定性、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性及び得られる塗膜の耐水性等の塗膜性能の観点から、アクリルウレタン樹脂(I)のアクリル樹脂成分の構成モノマー成分として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
【0043】
重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを使用する場合、その使用量はアクリルウレタン樹脂(I)のアクリル樹脂成分の構成モノマー成分中、0.1〜20質量、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは3〜20質量%の範囲内にあることが適している。
【0044】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーのうち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0045】
上記アミノ基含有重合性不飽和モノマーのうち、1−アミノエチル(メタ)アクリレート、1−アミノプロピル(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0046】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルまたはメタクリロイルを、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド又はメタクリルアミドをそれぞれ意味する。
【0047】
これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0048】
なお、アクリルウレタン樹脂(I)のアクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分とは、アクリルウレタン複合樹脂粒子の分散安定性及び得られる塗膜の塗膜性能等の観点から、化学的に結合したアクリルウレタン樹脂(I)(以下、これを、アクリルウレタングラフト樹脂(I−A)と呼ぶことがある)であることが好ましい。
【0049】
アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分とのグラフト(結合)は、例えば、アクリル樹脂成分中の構成モノマー成分として、イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する重合性不飽和モノマーを使用して合成することにより行うことができる。
【0050】
イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する基を有する重合性不飽和モノマーにおいて、イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する基は、アクリルウレタングラフト樹脂(I−A)のアクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分とのグラフト反応基となるものである。イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する基を含有する重合性不飽和モノマー(1)は、アクリル樹脂部の合成前に、イソシアネート基と反応性の活性水素原子が、あらかじめウレタン樹脂部分のイソシアネート基と反応をしたものをも包含する。
【0051】
また、アクリル樹脂成分とのグラフト反応にあずからなかったイソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する基は、架橋反応性基とすることができる。
【0052】
イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等を挙げることができる。
【0053】
イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する基を含有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前記重合性不飽和モノマー中の、水酸基含有重合性不飽和モノマー、アミノ基含有重合性不飽和モノマー、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。
【0054】
イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する基を含有する重合性不飽和モノマーとしては、反応制御のしやすさの観点から、水酸基含有重合性不飽和モノマーが好ましい。
【0055】
イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する基を含有する重合性不飽和モノマーを使用する場合、その使用割合は、アクリルウレタン複合樹脂粒子の水性媒体中における安定性及び架橋性官能基付与の観点から、アクリル樹脂成分の構成モノマー成分の総量を基準として、0.1〜30質量%であるのが好ましく、1〜25質量%であるのが更に好ましく、5〜20質量%であるのが更に特に好ましい。
【0056】
アクリル樹脂成分(重合性不飽和基)の重合反応は、公知のラジカル重合反応により行うことができる。重合開始剤としては水溶性開始剤、油溶性開始剤のいずれも使用することができる。水系条件下で油溶性開始剤を使用する場合は、水分散液とする前に予め添加しておくことが好ましい。
【0057】
重合開始剤は、その種類により適正量が異なるが、通常、重合性不飽和モノマーの総量に対して、0.05〜5質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0058】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等の無機過酸化物をあげることができる。
【0059】
これらの重合開始剤は、一種単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0060】
有機又は無機過酸化物は、還元剤と組み合わせてレドックス系開始剤として使用することもできる。還元剤としては、L−アスコルビン酸、L−ソルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ロンガリット等が挙げることができる。
【0061】
重合温度は20〜100℃程度で行うことができる。レドックス系で、レドックス系開始剤を使用する場合は、75℃程度以下の温度で行うことができる。
【0062】
重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量などに応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含有させてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。また、始めに全量を一括仕込みする方法、時間をかけて全量を滴下する方法、始めに一部を仕込んで残りを後から追加する方法等のいずれの方法でも行うことができる。
【0063】
また、重合反応を十分に行い、残存モノマーを削減する観点から、重合反応の途中、或いは一旦重合を終えた後に重合開始剤を追加して、さらに重合反応を行うこともできる。この際、重合開始剤の組合せは任意に選択することができる。
【0064】
上記の追加する重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、0.1〜5質量%程度が好ましく、0.2〜3質量%程度がより好ましい。
【0065】
重合性不飽和モノマーの重合において、分子量を調節する目的で公知の連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えばメルカプト基を有する化合物が包含され、具体的には例えば、ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メチル−5−tert−ブチルチオフェノール、メルカプトエタノール、チオグリセロール、メルカプト酢酸(チオグリコール酸)、メルカプトプロピオネート、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート等を使用することができる。
【0066】
連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、一般に、使用される全重合性不飽和モノマーの合計量を基準にして、0.05〜10質量%、特に0.1〜5質量%の範囲内が好適である。
【0067】
重合反応は、通常1〜12時間程度である。
【0068】
アクリルウレタン樹脂(I)のアクリル樹脂成分は、塗料組成物の貯蔵安定性及び得られる塗膜の性能の観点から、水酸基価が1〜150mgKOH/gであるのが好ましく、2〜120mgKOH/gであるのがより好ましく、5〜100mgKOH/gであるのが更に好ましい。
【0069】
また、アクリルウレタン樹脂(I)のアクリル樹脂成分は、重合安定性の観点から、酸価は実質的に0であることが好ましい。
【0070】
さらに、アクリルウレタン樹脂(I)のアクリル樹脂成分は、塗料組成物に適用して得られる塗膜の性能の観点から、ガラス転移温度が、−60〜60℃、特に−60〜40℃、さらに特に−60〜20℃の範囲内であることが好適である。
【0071】
本明細書において、アクリル樹脂についてのガラス転移温度Tg(絶対温度)は、下記式により算出される値である。
1/Tg=W/T+W/T+・・・W/T
[式中、W、W、・・・Wは各モノマーの質量分率であり、T、T・・・Tは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。]
【0072】
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK Fourth Edition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が5万程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析により測定したときの値を使用した。
【0073】
ウレタン樹脂成分
アクリルウレタン樹脂(I)のウレタン樹脂成分は、例えば、有機ポリイソシアネート化合物、及びポリオール、必要に応じて任意選択でさらに活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用して合成することができる。
【0074】
上記有機ポリイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)及びこれと2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)の混合物、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を使用することができる。また、必要に応じ上記TDI、HMDI、IPDI等の3量体、或いはトリメチロールプロパン等との反応物である3価のポリイソシアネートも使用することができる。
【0075】
ポリオールとしては、以下の化合物をあげることができる。
【0076】
ジオール化合物:エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等。
【0077】
ポリエーテルジオール:前記のジオール化合物のアルキレンオキシド付加物、アルキレンオキシドや環状エーテル(テトラヒドロフランなど)の開環(共)重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの(ブロックまたはランダム)共重合体、グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコール等。
【0078】
ポリエステルジオール:アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸(無水物)と上記で挙げたエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール化合物とを水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものが挙げられる。具体的には、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオール等を例示することができる。
【0079】
ポリエーテルエステルジオール:エーテル基含有ジオール(前記ポリエーテルジオールやジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を上記ポリエステルジオールで例示したような(無水)ジカルボン酸に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるもの、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物等。
【0080】
ポリカーボネートジオール:一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)−OH(式中Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ジオール残基、xは分子の繰返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である)で示される化合物等。これらは、飽和脂肪族ジオールと置換カーボネート(炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネート等)とを水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法、前記飽和脂肪族ジオールとホスゲンを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ジオールを反応させる方法等により得ることができる。
【0081】
上記ポリオール成分は得られる塗膜の性能等の観点から、ポリカーボネートジオールを有するポリオール成分を主として用いることが好ましい。
【0082】
上記ポリオールの数平均分子量は、水分散性等の観点から、好ましくは300〜3000、さらに好ましくは500〜2500である。
【0083】
ポリカーボネートジオールをポリオール成分として使用する場合、その割合は、ポリオール成分の総量に対して、10〜100質量%、特に30〜98質量%、さらに特に50〜95質量%の範囲内であることが好ましい。
【0084】
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、例えば、分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物、分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物等をあげることができる。これらの化合物は、ウレタン樹脂中でイオン形成基として作用する。アクリルウレタン複合樹脂粒子の分散安定性向上の観点から好適に使用することができる。
【0085】
カルボキシル基を含有するものとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸等のアルカノールカルボン酸類、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸や無水フタル酸とのハーフエステル化合物等をあげることができる。
【0086】
スルホン酸基を含有するものとしては、例えば、2−スルホン酸−1,4−ブタンジオール、5−スルホン酸−ジ−β−ヒドロキシエチルイソフタレート、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノエチルスルホン酸等をあげることができる。
【0087】
活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用する場合、その使用量は、ウレタン樹脂成分を構成する化合物の総量に対して、0〜20質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
【0088】
活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としてカルボキシル基、もしくはスルホン酸基を含有する化合物を使用した場合、塩を形成し親水性化するために中和剤としてトリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物を用いることができる。
【0089】
カルボキシル基もしくはスルホン酸基に対する中和率は通常50〜100モル%とすることができる。中和剤としては、分散性の観点からジメチルアミノエタノールが好ましい。
【0090】
アクリルウレタングラフト樹脂(I−A)において、アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分とのグラフト反応は、例えば、アクリル樹脂成分の構成成分としてイソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する重合性不飽和モノマーのイソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する基をグラフト反応基として反応させて行うことができ、この場合、ウレタン樹脂成分は、イソシアネート基が残存するようイソシネート基過剰の条件で合成される。
【0091】
有機ポリイソシアネート化合物のNCO基と、ポリオールと、活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物とを合わせた活性水素基との比率はモル比で、1.01:1〜3.0:1、特に1.05:1〜2.0:1.0の範囲内であることが好ましい。
【0092】
ウレタン樹脂成分は、有機ポリイソシアネート化合物及びポリオール、さらに必要に応じて活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を反応させて、イソシアネート基末端のウレタンプレポリマーとし、さらに必要に応じて鎖伸長反応させることにより合成することができる。
【0093】
上記プレポリマー化反応は50〜120℃で行うことが好ましく、アクリル樹脂成分の重合性不飽和モノマー存在下で行う場合は、重合性不飽和モノマーの熱による重合を防ぐため、空気の存在下で、p−メトキシフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、4−tert−ブチルカテコール等の重合禁止剤を重合性不飽和モノマーに対して20〜3000ppm程度の範囲で添加して行なうことが好ましい。
【0094】
また、この際、ウレタン化反応の触媒としてジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物やトリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等を必要に応じて使用することができる。
【0095】
アクリルウレタングラフト樹脂(I−A)において、アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分とのグラフト化反応は、限定されることなく公知の方法により行うことができるが、イソシネート基過剰の条件で合成されたウレタン樹脂成分のイソシアネート基に、イソシネート基と反応性の活性水素原子を有する重合性不飽和モノマー中のイソシネート基と反応性の活性水素原子を有する基を反応させて、ウレタン樹脂成分に重合性不飽和基を導入し、重合性不飽和基が導入されたウレタン樹脂成分と、重合性不飽和モノマーとを反応させて重合性不飽和基の重合反応を行って反応を完結させる手法により行うことが、重合反応の安定性の観点から好ましい。
【0096】
重合反応は、通常1〜12時間程度である。
【0097】
アクリルウレタン樹脂(I)において、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基は、必要に応じて一部又は全部をブロック剤によりブロックしてブロックイソシアネート基とすることができる。
【0098】
ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖するものである。ブロック化ポリイソシアネート基は、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、水酸基等の官能基と容易に反応することができる。
【0099】
かかるブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどのアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5−ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などのブロック剤を挙げることができる。
【0100】
これらのうち、オキシム系、ラクタム系及びピラゾール系のブロック剤、特にピラゾール系ブロック剤を低温硬化性付与の観点から好適に使用することができる。
【0101】
アクリルウレタン樹脂(I)のウレタン樹脂成分の重量平均分子量は、分散性、製造性、塗料組成物に適用して得られる塗膜性能の観点から、3000〜100000、特に5000〜50000の範囲内であることが好ましい。
【0102】
重量平均分子量が3000未満であると、塗料組成物に適用して得られる塗膜性能が低下する場合がある。また、100000を超えると、分散性が低下したり、製造中に粘度が大幅に上昇し、有機溶剤を多量に必要とする場合がある。
【0103】
グラフトアクリル樹脂(II)
グラフトアクリル樹脂(II)は、アクリルウレタン複合樹脂粒子の分散安定剤であり、疎水鎖成分(X)と親水鎖成分(Y)とがグラフトした構造を有するグラフトアクリル樹脂である。「疎水鎖成分(X)」及び「親水鎖成分(Y)」は、グラフトアクリル樹脂(II)の一部分をそれぞれ構成するため、「疎水部分(X)」及び「親水部分(Y)」と換言することができる。
【0104】
グラフトアクリル樹脂(II)は、例えば有機溶剤の存在下で、相異なる組成(疎水鎖成分(X)と親水鎖成分(Y))の重合性不飽和モノマー成分を多段階に分けて重合することにより合成することができる。
【0105】
このうち、親水鎖成分(Y)は、親水性基含有重合性不飽和モノマーを必須成分として合成する。
【0106】
疎水鎖成分(X)と親水鎖成分(Y)とのグラフト反応は、例えば、各成分中に重合性不飽和基以外の互いに反応性を有する官能基を有する重合性不飽和モノマーを、(X)成分中及び(Y)成分中にそれぞれ含有させて、互いに反応性を有する官能基同士を反応させることにより行うことができる。
【0107】
このような互いに反応性を有する官能基の組合せとしては、エポキシ基とカルボキシル基、水酸基とイソシアネート基、アルコキシシリル基同士の縮合等を挙げることができる。
【0108】
これらのうち、合成の簡便性の点から、エポキシ基とカルボキシル基の組合せを好適に使用することができる。
【0109】
互いに反応性を有する官能基同士の反応は、官能基の組合せ等の条件により、適宜、その組合せに応じた反応条件を設定することにより行うことができる。
【0110】
特に、疎水鎖成分(X)中に、エポキシ基含有重合性不飽和モノマーを含有させ、親水鎖成分(Y)中にカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有させて合成した、グラフトアクリル樹脂(II)(以下、これを、グラフトアクリル樹脂(II−p)と呼ぶことがある)を好適に使用することができる。
【0111】
グラフトアクリル樹脂(II)の疎水鎖成分(A)と親水鎖成分(B)とは、アクリルウレタン複合樹脂粒子の分散性の観点から、溶解度パラメータの差が、少なくとも0.5以上であることが好ましく、差が1.0以上であることがより好ましい。
【0112】
ここで、溶解度パラメータ(SP値(Solubility Parameter))とは、下記に式(1)で求められる特性値である。
(分子凝集エネルギー/分子容積)1/2 式(1)
【0113】
SP値は、疎水鎖成分(A)及び親水鎖成分(B)のそれぞれについて求めることができる。例えば、疎水鎖成分(A)及び親水鎖成分(B)のそれぞれが、2種以上の重合性不飽和モノマーを構成モノマー成分として重合して合成することができる共重合体である場合、下記式(2)で求めることができる。
S1×Φ1+S2×Φ2・・・・・ 式(2)
(式中、S1、S2・・・・・は共重合体に使用されたそれぞれのモノマーの溶解度パラメータを示し、Φ1 、Φ2 ・・・・・は共重合体中のそれぞれのモノマーの容積分率を示す。)
【0114】
グラフトアクリル樹脂(II−p)
グラフトアクリル樹脂(II−p)は、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a1)及びその他の重合性不飽和モノマー(a2)を構成モノマー成分として重合して合成することができる疎水鎖成分(X)と、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)及びその他の重合性不飽和モノマー(b2)を構成モノマー成分として重合して合成することができる親水鎖成分(Y)とをグラフト反応したアクリル樹脂を合成することにより得ることができる。
【0115】
疎水鎖成分(X)
疎水鎖成分(X)においてエポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a1)は、親水鎖成分(Y)中の構成モノマー成分であるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー中のカルボキシル基と反応させ、疎水鎖成分(X)と親水鎖成分(Y)とをグラフトさせるために用いられるモノマーであり、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0116】
これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0117】
その他の重合性不飽和モノマー(a2)は、上記モノマー(a1)以外の重合性不飽和モノマーであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート(商品名、大阪有機化学社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;
イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;
アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;
トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;
ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有する重合性不飽和モノマー;
パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;
フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;
【0118】
N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;
2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;
アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー;
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;
無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー;
水酸基含有重合性不飽和モノマー;等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0119】
上記の水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;アリルアルコール等を挙げることができる。
【0120】
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、アクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散性の向上、架橋性官能基の付与等の観点から、好適に使用することができる。
【0121】
水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合、その使用量はその他の重合性不飽和モノマー(a2)中、5質量%以上、好ましくは10質量%以上さらに好ましくは15〜50質量%の範囲内にあることが適している。
【0122】
親水鎖成分(Y)
親水鎖成分(Y)においてカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)は、疎水鎖成分(X)中の構成モノマー成分であるエポキシ基含有重合性不飽和モノマー中のエポキシ基と反応させる官能基を導入して、疎水鎖成分(X)と親水鎖成分(Y)とをグラフトさせるために用いられるモノマーであり、さらには、グラフトアクリル樹脂(II)に水分散基を導入するために用いられる、親水性基含有重合性不飽和モノマーでもある。
【0123】
具体的には(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0124】
その他の重合性不飽和モノマー(b2)は、上記モノマー(b1)以外の重合性不飽和モノマーであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー等;末端にヒドロキシ基、又は炭素数1〜3のアルキレンオキシ基を有し、且つポリオキシエチレン基、又はポリオキシプロピレン基を有するアクリルモノマー等のポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー;水酸基含有重合性不飽和モノマー;等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0125】
これらのうち、リン酸基含有重合性不飽和モノマー、スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー、酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー、ポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリルモノマー及び水酸基含有重合性不飽和モノマーは親水性基含有重合性不飽和モノマーである。
【0126】
親水鎖成分(Y)においても水酸基含有重合性不飽和モノマーを、アクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散性の向上、架橋性官能基の付与等の観点から、同様に好適に使用することができる。
【0127】
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、前記不飽和モノマー(a2)の中で例示したものを同様に使用することができる。
【0128】
水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合、その使用量はその他の重合性不飽和モノマー(b2)中、5質量%以上、好ましくは10質量%以上さらに好ましくは15〜70質量%の範囲内にあることが適している。
【0129】
グラフトアクリル樹脂(II−イ)において、疎水鎖成分(X)における不飽和モノマー(a1)及び(a2)の割合は、不飽和モノマー(a1)及び(a2)の総量を基準にして、一般に、 モノマー(a1)が好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%、 モノマー(a2)が好ましくは90〜99.9質量%、さらに好ましくは95〜99.9質量%の範囲内であることができる。
【0130】
また、親水鎖成分(Y)における不飽和モノマー(b1)及び(b2)の割合は、不飽和モノマー(b1)及び(b2)の総量を基準にして、一般に、 モノマー(b1)が好ましくは0.2〜50質量%、さらに好ましくは0.2〜40質量%、 モノマー(b2)が好ましくは50〜99.8質量%、さらに好ましくは60〜99.8質量%の範囲内であることができる。
【0131】
さらに、親水鎖成分(Y)において、親水性基含有重合性不飽和モノマーの割合は、水分散性の観点から、不飽和モノマー(b1)及び(b2)の総量を基準にして、好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは20〜50質量%、さらに特に好ましくは20〜40質量%である。
【0132】
疎水鎖成分(X)及び親水鎖成分(Y)において、疎水鎖成分(X)中に含まれるエポキシ基1モルに対する親水鎖成分(Y)中に含まれるカルボキシル基の量としては、1〜20モル、特に、2〜10モルの範囲内となるように調整されることが、アクリルウレタン複合樹脂粒子の分散安定性及び貯蔵安定性の観点から好ましい。
【0133】
なお、グラフトアクリル樹脂(II)において、疎水鎖成分(X)及び親水鎖成分(Y)がグラフトせず、グラフト反応していない未反応の疎水鎖成分(X)の分子及び親水鎖成分(Y)の分子の態様で存在している分子が混在している場合もあり得る。
【0134】
本発明においては、そのようなグラフト反応していない分子態様のものが含まれる場合であっても、未反応物も含めた混合物をグラフトアクリル樹脂(II)として使用し、アクリルウレタン複合樹脂粒子の分散安定剤として使用される。
【0135】
グラフトアクリル樹脂(II)において上記疎水鎖成分(X)及び親水鎖成分(Y)の比率は、疎水鎖成分(X)/親水鎖成分(Y)の質量比で50/50〜95/5、特に、60/40〜90/10の範囲内にあることがアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散性及び貯蔵安定性の観点から適している。
【0136】
グラフトアクリル樹脂(II)の重合は、特に制限されるものではないが、例えば、有機溶剤の存在下で加熱しながら疎水鎖成分(X)を構成するモノマー組成物を滴下して重合し、疎水鎖成分(X)の共重合体溶液中に、親水鎖成分(Y)を構成するモノマー組成物を滴下して重合させることにより合成を行うことができる。
【0137】
疎水鎖成分(X)及び親水鎖成分(Y)を重合させる際の反応温度は通常約60〜約200℃、好ましくは約70〜約160℃程度の範囲内であり、反応時間は通常約10時間以下、好ましくは約0.5〜約6時間程度である。
【0138】
上記の反応において、重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4'−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等を挙げることができる。
【0139】
これら重合開始剤は単独で又は2種以上併用してもよい。また、疎水鎖成分(X)及び親水鎖成分(Y)の重合反応において、重合開始剤の種類や量が異なっても何ら問題ない。
【0140】
重合開始剤の配合量としては、その段階で使用される重合性不飽和モノマーの総量に基づいて、重合反応性等の観点から、通常、0.01〜20質量%、特に0.1〜15質量%、さらに特に0.3〜10質量%の範囲内とすることができる。
【0141】
グラフトアクリル樹脂(II)の合成は、有機溶剤の存在下で行うことが製造の観点から好ましい。有機溶剤は、重合温度、また、アクリルウレタン複合樹脂粒子の分散性及び貯蔵安定性等を考慮して適宜選択することができる。
【0142】
上記有機溶剤としては、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、カルビトール系溶剤などが好ましい。具体的には、例えば、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のカルビトール系溶剤などを挙げることができる。
【0143】
また、有機溶剤としては、上記以外の水と混合しない不活性有機溶剤もアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散安定性に支障を来たさない範囲で使用可能であり、このような有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤などを挙げることができる。
【0144】
グラフトアクリル樹脂(II)は、重量平均分子量が5000以上であり、特に5000〜50000、さらに特に10000〜30000の範囲内にあることが、アクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散性や貯蔵安定性及び製造の観点から適している。
【0145】
なお、本明細書において、樹脂の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0146】
グラフトアクリル樹脂(II)の水酸基価は50〜250mgKOH/g、特に100〜200mgKOH/g、さらに特に150〜200mgKOH/gの範囲内、酸価は10〜100mgKOH/g、特に20〜70mgKOH/gさらに特に25〜50mgKOH/gの範囲内にあることがアクリルウレタン複合樹脂粒子の分散性、貯蔵安定性及び水負荷の耐性等の観点から適している。
【0147】
また、同様の観点から、グラフトアクリル樹脂(II)の疎水鎖成分の酸価は、20mgKOH以下、特に10mgKOH/g以下、さらに特に5mgKOH/g以下の範囲内、親水鎖成分の酸価は、50〜400mgKOH/g、特に100〜300mgKOH/g、さらに特に150〜300mgKOH/gの範囲内、さらには、疎水鎖成分と親水鎖成分との酸価の値の差が、30〜400、特に、50〜300、さらに特に100〜300の範囲内であることが好ましい。
【0148】
アクリルウレタン複合樹脂粒子の製造方法
アクリルウレタン複合樹脂粒子は、グラフトアクリル樹脂(II)を分散安定剤として、アクリルウレタン樹脂(I)が水系媒体中に分散された形態を有する複合樹脂粒子である。
【0149】
アクリルウレタン複合樹脂粒子は、例えば下記の工程を含む製造方法により製造することができる:
水系媒体中で、疎水鎖分及び親水鎖を有する重量平均分子量5000以上のグラフトアクリル樹脂の存在下で、アクリルウレタン樹脂(I)を合成する工程。本発明を束縛するものではないが、グラフトアクリル樹脂は分散安定剤としての使用が意図される。
【0150】
アクリルウレタン複合樹脂粒子の代表的な製造方法を以下に示すが、従来既知のアクリルウレタン複合樹脂粒子の製造方法も使用可能であり、この方法に限定されるものではない。
【0151】
以下にイソシアネート過剰の条件でウレタン樹脂成分(ウレタンプレポリマー)を合成する方法による、アクリルウレタン複合樹脂粒子の代表的な製造方法の一例を示す。各工程の具体的条件は、前述に記載のものを適用することができる。
【0152】
1.最初にアクリルウレタン樹脂(I)のウレタン樹脂成分を、アクリル樹脂成分の重合性不飽和モノマーの全部又は一部中で、ウレタン樹脂成分の重合反応を行って、ウレタンプレポリマーを合成する。
【0153】
この際、アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分とがグラフト(結合)したアクリルウレタングラフト樹脂(I−A)とする、或いは架橋性官能基を導入するために、アクリル樹脂成分の構成モノマー成分として、イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する重合性不飽和モノマーも使用する場合は、イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する基とウレタン樹脂成分の構成成分中のイソシアネート基とが反応するので、このウレタンプレポリマー合成反応においては、イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する重合性不飽和モノマーは上記重合性不飽和モノマーとして使用しないことが好ましい。
【0154】
重合性不飽和モノマー中で製造することにより、不要な有機溶媒を使用することなくウレタン樹脂成分を合成することができる。このウレタン樹脂成分の重合反応においては、重合性不飽和モノマーが存在するので、重合禁止剤を使用する等の手段を施して重合性不飽和モノマーの重合を防止することは、アクリルウレタン樹脂(I)のウレタン樹脂成分のところで説示したとおりである。
【0155】
2.次に必要に応じて、ブロック剤を使用してイソシアネート基のブロック化反応を行う。
【0156】
3.アクリル樹脂成分の構成モノマー成分として、イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する重合性不飽和モノマーを使用する場合は、イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する重合性不飽和モノマーを添加して、必要に応じて、ウレタン樹脂成分のイソシアネート基とウレタン化反応させて、ウレタン樹脂成分に重合性不飽和基を導入する。
【0157】
これにより、後にアクリル樹脂成分の重合反応(重合性不飽和基の重合反応)を行うことにより、イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する重合性不飽和モノマーを介して、アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分とがグラフトして化学的に結合させることができる。
【0158】
またこの際、イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する重合性不飽和モノマーは、イソシアネート基と反応性の活性水素原子を有する基を最終的に残存させるために、ウレタン樹脂成分のイソシアネート基に対し、過剰に添加することもできる。
【0159】
4.予め合成された分散安定剤であるグラフトアクリル樹脂(II)を添加する。グラフトアクリル樹脂(II)は、アクリルウレタングラフト樹脂(I)とグラフトアクリル樹脂(II)との比率が、アクリルウレタングラフト樹脂(I):グラフトアクリル樹脂(II)=20:80〜95:5(質量比)となるように添加することが好ましく、さらに好ましくは40:60〜90:10、さらに特に好ましくは60:40〜80:20となるように添加する。
【0160】
5.上記1及び3で所望配合量の重合性不飽和モノマーの一部のみを使用したのであれば、さらに残りの重合性不飽和モノマーを添加する。
【0161】
6.次いで、酸基の中和剤及び脱イオン水を添加して、水分散液を得る。
【0162】
該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、中和のための塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、ジエチルアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチレントリアミンなどの有機アミン;或いはカセイソーダ、カセイカリなどのアルカリ金属水酸化物等を挙げることができる。
【0163】
これらの中和剤は、最終的にアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散液のpHが6.0〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
【0164】
通常、カルボキシル基等の酸基に対して、0.1〜1.5当量、好ましくは0.3〜1.2当量用いることが適当である。
【0165】
水分散液を得る方法としては、通常の撹拌機による分散で可能であるが、より粒子径の細かい均一な水分散液を得るためにホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー、ラインミキサー等を使用することができる。
7.この水分散液にラジカル重合開始剤を添加して、重合性不飽和モノマーの重合反応を行う。必要に応じて任意選択で、ウレタン樹脂成分(ウレタンプレポリマー)の鎖伸長反応もさらに行うことにより、すべての反応を完結させる。
【0166】
ウレタンプレポリマーの鎖伸長を行う場合、必要に応じて水以外の鎖伸長剤を添加して、ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを反応させることもできる。鎖伸長剤としては、活性水素を有する公知の鎖伸長剤を使用することができる。具体的には、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン類、ヒドラジン等をあげることができる。
【0167】
以上の工程を行うことによりアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を製造することができる。
【0168】
アクリルウレタン複合樹脂粒子は、分散性及び貯蔵安定性の観点から、一般に10〜5000nm、好ましくは10〜1000nm、さらに好ましくは20〜500nm、さらに特に好ましくは50〜300nmの範囲内の平均粒子径を有することができる。
【0169】
本明細書において、樹脂粒子の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0170】
アクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体中の固形分濃度は20〜50質量%が好ましく、より好ましくは30〜40質量%である。固形分濃度が50質量%を超えると乳化が困難となり、水分散体が得難くなる場合がある。20質量%未満であると、低濃度であるため溶媒(主として水)成分が多くなるため例えば、水性塗料組成物の構成成分として使用し難くなる場合がある。
【0171】
反応性基含有樹脂(B)
反応性基含有樹脂はアクリルウレタン複合樹脂粒子(A)以外の樹脂であり、反応性基含有樹脂の種類については、反応性基を含有する樹脂であれば、特に制限されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0172】
反応性基とは、架橋反応をすることができる反応性を有する官能基をいう。具体的には、水酸基、酸基、カルボニル基、N−メチロールアルキルエーテル基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、カルボジイミド基、ヒドラジド基等の反応性を有する官能基をあげることができる。
【0173】
本発明においては、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を好適に使用することができる。以下、これらの樹脂についてさらに詳述する。
【0174】
アクリル樹脂
前記アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)以外の、ビニルモノマーに代表される重合性不飽和モノマーを共重合することによって既知の方法で、合成することができるアクリル樹脂である。乳化重合により合成されるもの或いは溶液重合により合成されるもののいずれであってもよく、両者を併用することもできる。溶液重合により合成する場合、反応に使用する有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコールエーテル系、ジプロピレングリコールエーテル系等の親水性有機溶剤を使用するのが好ましい。また、水分散性の観点から、該アクリル樹脂はカルボキシル基等の酸基を有しているものが好ましい。
【0175】
乳化重合により合成する場合、例えば乳化剤の存在下で、上記モノマー成分を乳化重合させることによって容易に得ることができる。乳化剤としては非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、及び共重合性不飽和基を有する反応性界面活性剤などが挙げられ、これらの乳化剤の1種、または2種以上の存在下で重合開始剤を使用して乳化重合することによって得られる。乳化重合以外にも公知の懸濁重合によっても得ることができる。
【0176】
重合性不飽和モノマーとしては、従来から公知のものが使用でき、例えば、反応性基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを使用することができる。
【0177】
反応性基含有重合性不飽和モノマーの反応性基としては、例えば、水酸基、酸基、カルボニル基、N−メチロールアルキルエーテル基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、カルボジイミド基、ヒドラジド基等の反応性を有する官能基をあげることができる。
【0178】
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどをあげることができる。
【0179】
酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、カルボキシル基又は酸無水基含有重合性不飽和モノマー等をあげることができる。
【0180】
カルボキシル基又は酸無水基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、β−カルボキシエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸又はこれらの酸無水物を挙げることができる。
【0181】
カルボキシル基又は酸無水基以外の酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレートおよびそのナトリウム塩もしくはアンモニウム塩などをあげることができる。
【0182】
カルボニル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロールおよびビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなどの炭素原子数4〜7個のビニルアルキルケトンなどを挙げることができる。これらのうち特に好ましいものは、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミドである。
【0183】
N−メチロールアルキルエーテル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテルなどをあげることができる。
【0184】
イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に、未ブロックイソシアネート基とラジカル重合性二重結合とをそれぞれ少なくとも1個ずつ有する化合物であって、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−イソシアネートエチルメタクリレート、m−又はp−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート、又は、水酸基含有重合性不飽和モノマーとジイソシアネート化合物との1:1(モル比)付加物(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートとイソホロンジイソシアネートとの等モル付加物)などをあげることができる。
【0185】
エポキシ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、CYCLOMER A−200(脂環式エポキシ基含有モノマー)、CYCLOMER M−100(脂環式エポキシ基含有モノマー)等をあげることができる。
【0186】
アミノ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよびジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等をあげることができる。
【0187】
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリブトキシシラン、ビニルトリス−β−メトキシエトキシシラン、ジビニルメトキシシラン、ジビニルジ−β−メトキシエトキシシランなどをあげることができる。
【0188】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のC1〜C24のアルキル又はシクロアルキルエステル;アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシブチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸エトキシブチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のC1〜C16アルコキシアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン等の芳香族不飽和単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン等のオレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物;シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ビニルピバレート、ベオバモノマー(シェル化学社製品)などを挙げることができる。
【0189】
アクリル樹脂の重量平均分子量は耐侯性及び仕上り性等の観点から、溶液重合により合成されるものである場合、1000〜200000、特に、2000〜100000の範囲内であるのが好ましい。
【0190】
アクリル樹脂が水酸基を有する場合、その水酸基価は、溶液重合により合成されるものである場合、塗膜の硬化性の観点から、10〜250mgKOH/g、とくに30〜150mgKOH/gであるのが好ましい。また、乳化重合により合成されるものである場合、塗膜の耐水性及び硬化性の観点から、5〜150mgKOH/g、特に10〜90mgKOH/gであるのが好ましい。
【0191】
アクリル樹脂が酸基を有する場合、その酸価は、溶液重合により合成されるものである場合、水性塗料中での分散安定性及び塗膜の硬化性、付着性の観点から、3〜150mgKOH/g、特に5〜70mgKOH/gであるのが好ましい。また、乳化重合により合成されるものである場合、塗膜の耐水性の観点から、0.01〜100mgKOH/g、特に0.1〜75mgKOH/gであるのが好ましい。
【0192】
アクリル樹脂が酸基を有するものであり、水分散する場合、水への混合及び分散を容易にするため、中和剤により中和を行なうのが、水分散性を向上させる観点から好ましい。
【0193】
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール、などの第1級モノアミン化合物;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミンなどの第2級モノアミン化合物;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミンなどの第3級モノアミン化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミン化合物;ピリジン;モルホリン等をあげることができる。
【0194】
これらのうち、第1級モノアミン化合物、第2級モノアミン化合物、第3級モノアミン化合物、ポリアミン化合物を使用するのが好ましい。
【0195】
ポリエステル樹脂
既知の方法で、常法に従い、多塩基酸と多価アルコ−ルとをエステル化反応させることによって合成することができるポリエステル樹脂である。また、水分散性の観点から、該ポリエステル樹脂としては、カルボキシル基等の酸基を有しているものが好ましい。
【0196】
多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、及びこれらの無水物などをあげることができる。
【0197】
また、多価アルコ−ルは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどのグリコール類、これらのグリコール類にε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのポリエステルジオール類、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカン、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、並びに、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
【0198】
また、ポリエステル樹脂として、あまに油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸などの(半)乾性油脂肪酸などで変性した脂肪酸変性ポリエステル樹脂も使用することができる。これらの脂肪酸の変性量は一般に油長で30重量%以下であることが適している。また、ポリエステル樹脂は安息香酸などの一塩基酸を一部反応させたものであってもよい。
【0199】
また、ポリエステル樹脂としては、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)などのモノエポキシ化合物などをポリエステル樹脂の酸基と反応させたものであってもよい。
【0200】
ポリエステル樹脂へカルボキシル基を導入する場合、例えば、水酸基含有ポリエステルに無水酸を付加し、ハーフエステル化することで導入することもできる。
【0201】
ポリエステル樹脂が水酸基を有する場合、その水酸基価は、塗膜の耐水性及び硬化性の観点から、10〜250mgKOH/g、特に40〜170mgKOH/gであるのが好ましい。
【0202】
ポリエステル樹脂が酸基を有する場合、その酸価は、塗膜の耐水性及び付着性の観点から、5〜100mgKOH/g、特に10〜60mgKOH/gであるのが好ましい。
【0203】
ポリエステル樹脂の数平均分子量は、塗膜の耐水性及び硬化性の観点から、1000〜100000、特に1000〜50000であるのが好ましい。
【0204】
ポリエステル樹脂が、酸基を有するものであり、水分散する場合、水への混合及び分散を容易にするため、中和剤により中和を行なうのが、水分散性を向上させる観点から好ましい。
【0205】
中和剤としては、前記アクリル樹脂で例示したものを同様に使用することができる。
【0206】
架橋剤(C)
架橋剤(C)は、必要に応じて任意選択で、含有させることができ、特に制限されるものではないが、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)が架橋反応性基を有する場合の架橋反応性基、反応性基含有樹脂(B)が有する反応性基に応じて、該反応性基と反応性を有する架橋剤を使用することができる。
【0207】
架橋剤(C)としては、具体的には、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ポリヒドラジド化合物、ポリセミカルバジド化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ化合物、ポリカルボン酸などをあげることができる。硬化剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0208】
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。
【0209】
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられる。
【0210】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
【0211】
上記メラミン樹脂は、重量平均分子量が400〜6,000であるのが好ましく、500〜4,000であるのがより好ましく、600〜3,000であるのがさらに好ましい。
【0212】
メラミン樹脂としては市販品を使用することができる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル204」、「サイメル211」、「サイメル212」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル253」、「サイメル254」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル380」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製);「レジミン735」、「レジミン740」、「レジミン741」、「レジミン745」、「レジミン746」、「レジミン747」(以上、モンサント社製);「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製);「スミマールM55」、「スミマールM30W」、「スミマールM50W」(以上、住友化学社製);等を挙げることができる。
【0213】
架橋剤(C)としてメラミン樹脂を使用する場合、硬化触媒として、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸;該スルホン酸とアミンとの中和塩;リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩等を使用することができる。
【0214】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。
【0215】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、具体的には、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体などをあげることができる。
【0216】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0217】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどをあげることができる。
【0218】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどをあげることができる。
【0219】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート、例えば、ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどをあげることができる。
【0220】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等を挙げることができる。
【0221】
また、ポリイソシアネート化合物として、ブロック剤により、遊離のイソシアネート基を封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することもできる。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、反応性基と容易に反応することができる。
【0222】
かかるブロック剤としては、例えば、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5−ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などのブロック剤を挙げることができる。
【0223】
架橋剤(C)としてポリイソシアネート化合物を使用する場合、硬化触媒として、有機錫化合物等を用いることができる。
【0224】
ポリイソシアネート化合物は、例えば、水酸基或いはアミノ基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0225】
ポリヒドラジド化合物は、1分子中に2個以上のヒドラジド基を有する化合物である。
【0226】
ポリヒドラジド化合物としては、例えば、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;炭酸ジヒドラジドなどの炭酸のポリヒドラジド;;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸ジヒドラジド、ならびにピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジドなどの芳香族ポリカルボン酸のポリヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジドなどの脂肪族トリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジドなどのテトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラ−ド)と反応させてなるポリヒドラジド(特公昭52−22878号参照)などをあげることができる。
【0227】
上記ポリヒドラジド化合物は、疎水性が強すぎると水分散化が困難となり、均一な架橋塗膜が得られないことから、適度な親水性を有する比較的低分子量(300以下程度)の化合物を使用することが好ましい。このようなポリヒドラジド化合物としては、例えば、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド等の如くC4〜C12のジカルボン酸のジヒドラジド化合物が挙げられる。
【0228】
ポリヒドラジド化合物は、例えば、カルボニル基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0229】
ポリセミカルバジド化合物は、1分子中に2個以上のセミカルバジド基を有する化合物である。
【0230】
ポリセミカルバジド化合物としては、例えば、脂肪族、脂環族又は芳香族のビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート又はそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド、該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルとポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド(例えば、特開平8−151358号参照);該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物等のセミカルバジド基を有する化合物;ビスアセチルジヒドラゾン等のヒドラゾン基を有する化合物等をあげることができる。
【0231】
ポリセミカルバジド化合物は、例えば、カルボニル基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0232】
カルボジイミド基含有化合物は、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめることにより得られる化合物である。
【0233】
該当する市販品としては、例えば、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)などをあげることができる。
【0234】
カルボジイミド基化合物は、例えば、カルボキシル基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0235】
オキサゾリン基含有化合物としては、オキサゾリン基を有する重合体、例えばオキサゾリン基を有する重合性不飽和モノマーを、必要に応じその他の重合性不飽和モノマーと従来公知の方法(例えば溶液重合、乳化重合等)によって共重合させることにより得られる(共)重合体を挙げることができる。
【0236】
オキサゾリン基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを挙げることができる。
【0237】
上記のその他の重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜24個のアルキルまたはシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数2〜8個のヒドロキシアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上適宜選択される。
【0238】
オキサゾリン基含有化合物は、例えば、カルボキシル基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0239】
エポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。具体的には、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等のジエポキシ化合物、エポキシ基含有アクリル樹脂等をあげることができる。
【0240】
エポキシ化合物は、例えば、酸基又はアミノ基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0241】
ポリカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多塩基酸類:フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の芳香族多塩基酸類:ポリオールと1,2−酸無水物との付加反応により生成するハーフエステル;ポリエポキシドとポリエポキシドのエポキシ基に対して2当量以上の1,2−酸無水物との付加反応生成物;カルボキシル基含有アクリル系重合体;酸無水基をハーフエステル化してなる基を有するアクリル系重合体;カルボキシル基含有ポリエステル系重合体等が挙げることができる。
【0242】
ポリカルボン酸は、例えば、エポキシ基又はカルボジイミド基含有樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0243】
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物中のアクリルウレタン複合樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び架橋剤(C)の量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の樹脂固形分総量を基準として、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)が1〜99質量%、好ましくは1〜80質量%、さらに好ましくは3〜70質量%、反応性基含有樹脂(B)が1〜99質量%、好ましくは1〜90質量%、さらに好ましくは5〜80質量%、架橋剤(C)が、0〜60質量%、好ましくは0〜40質量%、さらに好ましくは0〜30質量%の範囲内であるのが適している。
【0244】
本発明の水性塗料組成物には、必要に応じて任意選択で、、顔料を使用することができる。顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等の着色顔料;タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等の体質顔料;アルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末等の光輝性顔料等を好適に用いることができる。
【0245】
顔料の配合量は、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて任意選択で含有される(C)成分の樹脂固形分総量を基準として、一般に0〜250質量%、特に3〜150質量%の範囲内が適している。
【0246】
本発明の水性塗料組成物には、さらに必要に応じて任意選択で、、硬化触媒、分散剤、沈降防止剤、有機溶剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤等を適宜使用することができる。
【0247】
本発明の水性塗料組成物は、耐水性等の塗膜性能及び塗面平滑性等の仕上がり外観に優れた塗膜を得ることができ、貯蔵安定性にも優れているので、例えば、建材用、建築用、自動車用等の塗料組成物として使用するのが適している。
【0248】
本発明の水性塗料組成物の塗装は、従来から知られている方法、例えば、ローラー塗装、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などにより行なうことができる。これらの塗装方法においては、必要に応じて任意選択で、、静電印加を行なってもよい。また、かかる塗装方法は、所望の膜厚が得られるまで、1回ないし数回に分けて行うことができる。その膜厚は硬化塗膜に基いて、3〜100μm、特に5〜60μmの範囲内が好ましく、その塗膜は、例えば、室温〜170℃で、必要に応じて任意選択で加熱することにより硬化させることができる。加熱硬化は、それ自体既知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、電磁誘導加熱炉等の乾燥炉を用いて行うことができる。必要に応じて任意選択で加熱硬化を行なう前に溶媒等の揮発成分の揮散を促進するために、50〜80℃程度の温度で3〜10分間程度のプレヒートを行なってもよい。
【0249】
被塗物としては、特に制限はないが、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属素材;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP等のプラスチック素材;コンクリート面、モルタル面、スレート板、瓦、PC板、ALC板、セメント、セメントケイ酸カルシウム板、陶磁器、タイル、ガラス、木材、石材、塗膜面等が好ましい。これらの内、金属素材及びプラスチック素材が好ましい。
【0250】
また、これらにより形成される自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両の車体、建材等であってもよい。
【0251】
また、該被塗物は、金属基材や上記車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
【0252】
また、これらの被塗物はあらかじめ、下塗塗装(例えばカチオン電着塗装など)及び場合によりさらに中塗塗装等を行なったものであってもよい。
【0253】
また、被塗物はさらに、中塗塗面上に、着色塗料等による塗膜が形成されてなるものであってもよい。
【0254】
本発明の水性塗料組成物は、その使用に際して、必要に応じて水及び/又は有機溶剤等を添加して希釈し、適正粘度に調整することにより塗装することができる。
【0255】
適正粘度は、塗料組成により異なるが、例えば、フォードカップ粘度計No.4を用いて調整した場合、20℃において、通常、20〜60秒程度、好ましくは25〜50秒程度の粘度である。また、上記において、本塗料の塗装固形分濃度は、通常、5〜70質量%程度、好ましくは10〜50質量%程度である。
【実施例】
【0256】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0257】
グラフトアクリル樹脂(II)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを30部仕込み、窒素ガス通気下で145℃に昇温した後、窒素ガスの通気を止め、1段目(疎水鎖成分(X))として、n−ブチルアクリレート23.8部、n−ブチルメタクリレート14部、スチレン7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート24.5部、及びグリシジルメタクリレート0.7部、ならびに開始剤ジ−t−ブチルパーオキサイド3.0部の混合物を4時間かけて滴下した。その後、30分間、同温度で保持した。
【0258】
更に、2段目(親水鎖成分(Y))として、n−ブチルアクリレート9部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12部、及びアクリル酸9部、ならびにジ−t−ブチルパーオキサイド1.0部の混合物を30分間かけて滴下した後、同温度で保持し、グラフト率が90%以上となった時点を終点として室温まで冷却した。
グラフト率(%)=(1−(2段目反応完了後のエポキシ価/1段目反応完了後のエポキシ価))×100
その後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート51部を添加して、固形分55%のグラフトアクリル樹脂(II−1)の溶液を得た。得られたグラフトアクリル樹脂(II−1)の重量平均分子量は15000であった。
【0259】
製造例2〜5、7、8及び10
組成を下記表1に示すように変更する以外は、製造例1と同様にして各グラフトアクリル樹脂(II−2)〜(II−5)、(II−7)、(II−8)及び(II−10)の溶液を得た。その際、重量平均分子量調整のため、開始剤の量を調整した。得られた各グラフトアクリル樹脂(II)の重量平均分子量も併せて下記表1に示す。
【0260】
なお、表1には、疎水鎖成分(1段目)及び親水鎖成分(2段目)の各樹脂成分につき、それぞれ合計量を100とした組成比を記載している。
【0261】
なお、グラフトアクリル樹脂(II−1)〜(II−5)、(II−7)、(II−8)及び(II−10)は、疎水鎖成分(X)中のエポキシ基と親水鎖成分(Y)中のカルボキシル基との反応によりグラフトされたグラフトアクリル樹脂(グラフトアクリル樹脂(II−p))である。
【0262】
製造例6
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを30部仕込み、窒素ガス通気下で145℃に昇温した後、窒素ガスの通気を止め、1段目(疎水鎖成分(X))として、n−ブチルアクリレート35部、n−ブチルメタクリレート27.3部、スチレン7部、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート0.7部、ならびに開始剤ジ−t−ブチルパーオキサイド3.0部の混合物を4時間かけて滴下した。その後、30分間、同温度で保持した。
更に、2段目(親水鎖成分(Y))として、n−ブチルアクリレート9部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12部、及びアクリル酸9部、ならびにジ−t−ブチルパーオキサイド1.0部の混合物を30分間かけて滴下した後、同温度で保持し、グラフト率が90%以上となった時点を終点として室温まで冷却した。
グラフト率(%)=(1−(2段目反応完了後のNCO価/1段目反応完了後のNCO価))×100
【0263】
その後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート51部を添加して、固形分55%のグラフトアクリル樹脂(II−6)の溶液を得た。得られたグラフトアクリル樹脂(II−6)の重量平均分子量は15000であった。
【0264】
なお、グラフトアクリル樹脂(II−6)は、疎水鎖成分(X)中のイソシアネート基と親水鎖成分(Y)中の水酸基との反応によりグラフトされたグラフトアクリル樹脂である。
【0265】
製造例9
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを30部仕込み、窒素ガス通気下で145℃に昇温した後、窒素ガスの通気を止め、n−ブチルアクリレート33.5部、n−ブチルメタクリレート14部、スチレン7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート36.5部、及びアクリル酸9部、ならびに開始剤ジ−t−ブチルパーオキサイド4.0部を4時間かけて滴下した。その後、同温度で2時間保持した。その後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート51部を添加して、固形分55%のグラフトアクリル樹脂(II−9)の溶液を得た。得られたアクリル樹脂(II−9)の重量平均分子量は15000であった(下記表1にも記載)。
【0266】
なお、上記から明らかなように、製造例9のアクリル樹脂は、一括重合であり、グラフトアクリル樹脂ではない。
【0267】
グラフトアクリル樹脂(II−9)及び(II−10)は比較例用のアクリルウレタン複合樹脂粒子製造用である(表中便宜上グラフトアクリル樹脂(II−9)となっているが、上記のとおりグラフトアクリル樹脂(II−9)は、グラフトアクリル樹脂ではない)。
【0268】
表1には、グラフトアクリル樹脂(II)の酸価及び水酸基価の計算値を示した。疎水鎖成分(X)及び親水鎖成分(Y)それぞれについても、同様に酸価及び水酸基価の計算値を示した。さらに、疎水鎖成分(A)及び親水鎖成分(B)それぞれについて、SP値の計算値も示した。
【0269】
【表1】
【0270】
アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)の製造
製造例11
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、ウレタン樹脂成分の原材料である、「ETERNACOLL UH−100」(商品名、宇部興産製、1,6−ヘキサンジオールベースポリカーボネートジオール、分子量約1000)17.2部、及びジメチロールブタン酸2.5部を、アクリル樹脂成分の重合性不飽和モノマーである、n−ブチルアクリレート24部及びエチレングリコールジメタクリレート1.5部を、ならびに不飽和基の重合禁止剤として、ブチルヒドロキシトルエン0.008部を仕込み、攪拌しながら100℃まで昇温させた後、さらにウレタン樹脂成分の原材料である、水添MDI(4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)10.3部を30分かけて滴下した。
【0271】
その後100℃を保持してNCO価が14mg/g以下となるまで反応させた。
【0272】
得られたウレタン樹脂成分の重量平均分子量は20000であった。
【0273】
この反応生成物に、アクリル樹脂成分の重合性不飽和モノマーである、2−ヒドロキシエチルアクリレート4.5部をさらに添加してNCO価が1mg/g以下となるまで反応させて室温まで冷却することにより、酸基及び末端不飽和基を有するポリウレタン樹脂のアクリルモノマー希釈溶液を得た。
【0274】
その後攪拌を続け、前記製造例1で得たグラフトアクリル樹脂(II−1)溶液72.7部及びジメチルエタノールアミン2.0部を添加して中和を行い、脱イオン水112.9部を適時添加しながら水分散(転相乳化)を行った。
【0275】
水分散(乳化)完了後、攪拌しながら70℃まで昇温させ、「VA−057」(商品名、和光純薬工業社製、重合開始剤、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド])0.06部を脱イオン水2.4部に溶解させた重合開始剤溶液を30分間かけて滴下し、2時間撹拌した。これによりアクリル樹脂成分(重合性不飽和基)の重合反応の重合反応を行う。この間、重合熱により多少発熱するので必要に応じて適宜温度をコントロールする。
【0276】
その後、さらに「VA−057」0.03部を脱イオン水1.2部に溶解させた重合開始剤溶液を追加触媒として添加して、該温度を保持しながら2時間撹拌してさらに反応を行う。その後室温まで冷却することにより、アクリルウレタン複合樹脂粒子No.1の水分散体を得た。
【0277】
得られたアクリルウレタン複合樹脂粒子No.1の質量固形分濃度は40%、平均粒子径は180nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定)であった。
【0278】
製造例12〜26、29、31及び32
組成を下記表2に示すように変更する以外は、製造例11と同様にして各アクリルウレタン複合樹脂粒子No.2〜16、19、21及び22の水分散体を得た。得られた各アクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体の固形分濃度及び平均粒子径を併せて下記表2に示す。
【0279】
なお、表2には、アクリル樹脂成分及びウレタン樹脂成分の各樹脂成分につき、それぞれ合計量を100とした組成比を記載している。
【0280】
また、工程中の反応終点NCO価や重合開始剤の配合量は、配合に合わせて適宜調整をした。
【0281】
なお、アクリルウレタン樹脂複合粒子No.21及び22は比較例用である。また、重量平均分子量4000のグラフトアクリル樹脂(II−10)を使用して製造を試みたアクリルウレタン樹脂複合粒子No.22は、合成時の安定性が不良で凝集物が多いため塗料組成物の試験に供することができなかった。
【0282】
製造例27
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、「ETERNACOLL UH−100」16.7部、ジメチロールブタン酸2.5部、n−ブチルアクリレート24部、エチレングリコールジメタクリレート1.5部、及びブチルヒドロキシトルエン0.008部を仕込み、攪拌しながら100℃まで昇温させた後、水添MDI 10.3部を30分かけて滴下した。
【0283】
その後100℃を保持してNCO価が14mg/g以下となるまで反応させた。
【0284】
得られた溶液のウレタン樹脂成分の重量平均分子量は20000であった。
【0285】
この反応生成物に、3,5−ジメチルピラゾール0.5部を添加し、NCO価が7mg/g以下となるまで反応させた。更に2−ヒドロキシエチルアクリレート4.5部を添加してNCO価が1mg/g以下となるまで反応させて室温まで冷却することにより、酸基及び末端不飽和基を有し、かつブロックイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂のアクリルモノマー希釈溶液を得た。
【0286】
その後攪拌を続け、グラフトアクリル樹脂(II−1)溶液72.7部及びジメチルエタノールアミン2.0部を添加して中和を行い、脱イオン水112.9部を適時添加しながら水分散(転相乳化)を行った。
【0287】
水分散(乳化)完了後、攪拌しながら70℃まで昇温させ、「VA−057」0.06部を脱イオン水2.4部に溶解させた重合開始剤溶液を30分間かけて滴下し、2時間撹拌した。この間、重合熱により多少発熱するので必要応じて適宜温度をコントロールする。
【0288】
その後、さらに「VA−057」0.03部を脱イオン水1.2部に溶解させた重合開始剤溶液を添加して、該温度を保持しながら2時間撹拌してさらに反応を行う。その後室温まで冷却することにより、アクリルウレタン複合樹脂粒子No.17の水分散体を得た。
【0289】
得られたアクリルウレタン複合樹脂粒子No.17の質量固形分濃度は40%、平均粒子径は180nmであった。
【0290】
製造例28
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、「ETERNACOLL UH−100」16.3部、ジメチロールブタン酸2.5部、n−ブチルアクリレート24部、エチレングリコールジメタクリレート1.5部、及びブチルヒドロキシトルエン0.008部を仕込み、攪拌しながら100℃まで昇温させた後、水添MDI 10.3部を30分かけて滴下した。
【0291】
その後100℃を保持してNCO価が14mg/g以下となるまで反応させた。
【0292】
得られた溶液のウレタン樹脂成分の重量平均分子量は20000であった。
【0293】
この反応生成物に、3,5−ジメチルピラゾール1.0部を添加し、NCO価が1mg/g以下(実質0)となるまで反応させて室温まで冷却することにより、酸基及びブロックイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂のアクリルモノマー希釈溶液を得た。
【0294】
その後攪拌を続け、2−ヒドロキシエチルアクリレート4.5部、グラフトアクリル樹脂(II−1)溶液72.7部及びジメチルエタノールアミン2.0部を添加して中和を行い、脱イオン水112.9部を適時添加しながら水分散(転相乳化)を行った。
【0295】
水分散(乳化)完了後、攪拌しながら70℃まで昇温させ、「VA−057」0.06部を脱イオン水2.4部に溶解させた重合開始剤溶液を30分間かけて滴下し、2時間撹拌した。この間、重合熱により多少発熱するので必要応じて適宜温度をコントロールする。
【0296】
その後、さらに「VA−057」0.03部を脱イオン水1.2部に溶解させた重合開始剤溶液を添加して、該温度を保持しながら2時間撹拌してさらに反応を行う。その後室温まで冷却することにより、アクリルウレタン複合樹脂粒子No.18の水分散体を得た。
【0297】
得られたアクリルウレタン複合樹脂粒子No.18の質量固形分濃度は40%、平均粒子径は170nmであった。
【0298】
なお、アクリルウレタン複合樹脂粒子No.18は、上記合成条件から明らかなように、アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分はグラフトされておらず、アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分がグラフトしていない複合樹脂粒子である。
【0299】
製造例30
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、「ETERNACOLL UH−100」28.7部、ジメチロールブタン酸4.3部、n−ブチルアクリレート40部、エチレングリコールジメタクリレート2.5部、及びブチルヒドロキシトルエン0.010部を仕込み、攪拌しながら100℃まで昇温させた後、水添MDI 17.2部を30分かけて滴下した。
【0300】
その後100℃を保持しNCO価が14mg/g以下となるまで反応させた。
【0301】
得られた溶液のウレタン樹脂成分の重量平均分子量は20000であった。
【0302】
この反応生成物に、2−ヒドロキシエチルアクリレート7.5部を添加してNCO価が1mg/g以下となるまで反応させて室温まで冷却することにより、酸基及び末端不飽和基を有するポリウレタン樹脂のアクリルモノマー希釈溶液を得た。
【0303】
その後攪拌を続け、ジメチルエタノールアミン2.0部及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート32.8部を添加して中和を行い、脱イオン水112.9部を適時添加しながら水分散(転相乳化)を行った。
【0304】
水分散(乳化)完了後、攪拌しながら70℃まで昇温させ、「VA−057」0.10部を脱イオン水2.4部に溶解させた重合開始剤溶液を30分間かけて滴下し、2時間撹拌した。この間、重合熱により多少発熱するので必要応じて適宜温度をコントロールする。
【0305】
その後、さらに「VA−057」0.05部を脱イオン水1.2部に溶解させた重合開始剤溶液を添加して、該温度を保持しながら2時間撹拌してさらに反応を行う。その後室温まで冷却することにより、アクリルウレタン複合樹脂粒子No.20の水分散体を得た。
【0306】
得られたアクリルウレタン複合樹脂粒子No.20の質量固形分濃度は40%、平均粒子径は100nmであった。アクリルウレタン複合樹脂粒子No.20は比較例用である。
【0307】
なお、表2中のアクリルウレタン樹脂(I)アクリル樹脂成分の水酸基価は、ウレタン樹脂成分のイソシアネート基とグラフト反応等により水酸基が消費された場合は、水酸基が消費された後の水酸基価(mgKOH/g)である。
【0308】
【表2】
【0309】
【表3】
【0310】
反応性基含有樹脂(B)の製造
水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)の製造
製造例33
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン174部、ネオペンチルグリコール327部、アジピン酸352部、イソフタル酸109部及び1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物101部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸59部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2−(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH7.2の水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)溶液を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が35mgKOH/g、水酸基価が128mgKOH/g、数平均分子量が1,480であった。
【0311】
水酸基含有アクリル樹脂(B2)の製造
製造例34
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル30部を仕込み85℃に昇温後、スチレン6部、メチルメタクリレート30部、n−ブチルアクリレート25部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート13部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2部の混合物を4時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル5部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらに2−(ジメチルアミノ)エタノール7.4部を添加して中和し、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度40%の水酸基含有アクリル樹脂(B2)溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂の酸価は47mgKOH/g、水酸基価は51mgKOH/g、重量平均分子量は50000であった。
【0312】
水酸基含有アクリル樹脂(B3)の製造
製造例35
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水145部、Newcol562SF(注1)1.2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物1のうちの全量の1%及び3%過硫酸アンモニウム水溶液5.2部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物1を3時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間、熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物2を2時間かけて滴下し、1時間熟成した後、1.5%ジメチルエタノールアミン水溶液89部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、酸価30.7mgKOH/gで水酸基価22.1mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂(B3)(固形分25.2%)を得た。
(注1)Newcol562SF;日本乳化剤社製、商品名、ポリオキシエチレンアルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム、有効成分60%。
【0313】
モノマー乳化物1:脱イオン水94.3部、メチルメタクリレート17部、n−ブチルアクリレート80部、アリルメタクリレート3部及びNewcol562SF1.2部を混合攪拌して、モノマー乳化物1を得た。
【0314】
モノマー乳化物2:脱イオン水39部、メチルメタクリレート15.4部、n−ブチルアクリレート2.9部、ヒドロキシエチルアクリレート5.9部、メタクリル酸5.1部及びNewcol562SF 0.5部を混合攪拌して、モノマー乳化物2を得た。
【0315】
反応性基含有樹脂(B4)〜(B6)の製造
製造例36
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水36部、Newcol707SF(日本乳化剤(株)製、アニオン性界面活性剤、不揮発分30%)0.36部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、82℃に昇温した。次いで過硫酸アンモニウム0.1部を添加し、添加15分後から下記組成のプレエマルションを3時間かけて滴下した。
【0316】
<プレエマルション組成>
脱イオン水52部、ダイアセトンアクリルアミド5部、アクリル酸0.5部、スチレン10部、メチルメタクリレート32.8部、エチルアクリレート27部、n−ブチルアクリレート24.7部、Newcol707SF 9.7部、過硫酸アンモニウム0.2部
滴下終了時から30分経過後、0.1部の過硫酸アンモニウムを1.2部の脱イオン水に溶解させた水溶液を30分かけて滴下した。ついで、さらに2時間熟成させた後40℃まで冷却し、pHが8.5となるようにアンモニア水で調整して、反応性基含有樹脂(B4)の分散液(固形分51.5%)を得た。
【0317】
製造例37
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水30部、Newcol707SF 0.1部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、85℃に昇温した。この中に下記組成のプレエマルション1の3質量%分及び下記過硫酸アンモニウム水溶液のうちの25質量%分を添加して攪拌した。
【0318】
添加20分後から残りのプレエマルション1と下記過硫酸アンモニウム水溶液の35質量%分を3時間かけて滴下した。
【0319】
<プレエマルション1組成>
脱イオン水27部、スチレン9.8部、メチルメタクリレート19.5部、n−ブチルアクリレート30.8部、2−エチルヘキシルアクリレート9.8部、アクリル酸0.14部、Newcol707SF 4.62部
【0320】
<過硫酸アンモニウム水溶液>
過硫酸アンモニウム0.5部、脱イオン水10部
滴下終了後、これをさらに1時間、85℃に保持した後、この中に下記プレエマルション2と上記過硫酸アンモニウム水溶液の15%分を1時間かけて滴下した。
【0321】
<プレエマルション2組成>
脱イオン水11.5部、スチレン4.2部、メチルメタクリレート6.8部、n−ブチルアクリレート13.2部、2−エチルヘキシルアクリレート4.2部、アクリル酸0.06部、ダイアセトンアクリルアミド1.5部、Newcol707SF 2.0部
滴下終了後、これをさらに2時間、85℃に保持した後、40℃に冷却した。次いでアンモニア水でpH8.5に調整することにより、反応性基含有樹脂(B5)の分散液(固形分濃度55%)を得た。
【0322】
製造例38
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水55部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.15部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、82℃に昇温した。この中に下記組成のプレエマルション1を3時間かけて滴下した。
【0323】
<プレエマルション1組成>
脱イオン水40部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ3部、過硫酸アンモニウム0.15部、シクロヘキシルメタクリレート20部、メチルメタクリレート10部、n−ブチルアクリレート29.6部、n−ブチルメタクリレート9部、ビニルトリメトキシシラン 0.7部及びメタクリル酸 0.7部
プレエマルション1の滴下終了後、その中に、下記組成のプレエマルション2を1時間かけて滴下し、その後82℃で2時間熟成した後、40℃まで冷却した。次いでアンモニア水でpH7.5に調整することにより、反応性基含有樹脂(B6)の分散液(固形分濃度47.7%、平均粒子径130nm)を得た。
【0324】
<プレエマルション2>
脱イオン水18部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ 1.5部、過硫酸アンモニウム0.05部、シクロヘキシルメタクリレート15部、メチルメタクリレート10部、n−ブチルアクリレート2部、n−ブチルメタクリレート2.4部、ビニルトリメトキシシラン0.3部及びメタクリル酸0.3部
【0325】
水性塗料組成物(水性中塗塗料)の製造
実施例1
製造例33で得た水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)溶液56部(樹脂固形分25部)、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)60部、「カーボンMA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)1部、「バリエースB−35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm)15部、「MICRO ACE S−3」(商品名、日本タルク社製、タルク粉末、平均一次粒子径4.8μm)3部及び脱イオン水5部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペーストを得た。
【0326】
次に、得られた顔料分散ペースト140部、製造例33で得た水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)溶液29部(樹脂固形分13部)、製造例34で得た水酸基含有アクリル樹脂(B2)溶液25部(樹脂固形分10部)、メラミン樹脂(C1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分80%、重量平均分子量800)40部(樹脂固形分32部)、及び製造例11で得たアクリルウレタン複合樹脂粒子No.1の水分散体50部(樹脂固形分20部)を均一に混合した。
【0327】
次いで、得られた混合物に、「UH−752」(商品名、ADEKA社製、ウレタン会合型増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、固形分濃度48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒の水性中塗塗料No.1を得た。
【0328】
実施例2〜19及び比較例1〜2
実施例1において、配合組成を下記表3に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして、pH8.0、固形分濃度48質量%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒である水性中塗塗料No.2〜21を得た。
【0329】
水性中塗塗料No.20及び21は比較例である。
【0330】
表3において、「バイヒジュールVPLS2310」は、商品名、住化バイエルウレタン社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分38%である。
【0331】
実施例1〜19及び比較例1〜2で得られた各水性中塗塗料No.1〜21について、以下の評価試験を行った。評価結果も併せて下記表3に示す。
【0332】
貯蔵安定性:各水性中塗塗料につき、各々200gを密栓可能なガラスビンに入れ30℃の恒温室で貯蔵する。
【0333】
その後1ヶ月ごとに取り出し、凝固物の有無と粘度を確認し、凝固物があるかもしくは粘度の変化率が±30%以上となったときを記録した。
【0334】
表3中の評価データは、試験開始から上記劣化状態となるまでの期間が1ヶ月単位で表されており、例えば、2Mとあるのは、試験開始から2ヵ月後、3M<とあるのは試験開始から3ヵ月経過後も上記劣化状態にはいたらず、貯蔵安定性が良好であることを示す。
【0335】
塗装ガン洗浄性:各水性中塗塗料を、自動塗装機ABB社製のG−1コーペスベル(回転数3万回転/分、シェーピングエア圧力4.0kg/cm2、塗出量200cc/分)にて、10秒間塗出、50秒間放置の工程を10回繰り返した後、洗浄水(水/エチレングリコールブチルエーテル/イソプロパノール/ジメチルエタノールアミン=90/5/4/1(質量比))を2秒間塗出させた後のベル溝に残った塗料の状態を、以下の基準で評価し評価した。
A:ベル溝に塗料の残存が認められない、
B:ベル溝に塗料の残存がわずかに認められる、
C:ベル溝に塗料の残存がかなり認められる。
【0336】
以下のようにして試験板を作成し、仕上り外観(平滑性、鮮映性)及び耐水性の評価を行った。
【0337】
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
【0338】
上記試験用被塗物に、各水性中塗塗料を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚30μmとなるように静電塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、140℃で30分間加熱して中塗塗膜を形成した。さらに該中塗塗膜上に「WBC−713T No.176」(商品名、関西ペイント社製、アクリルメラミン樹脂系水性ベースコート塗料、シルバー塗色)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚15μmとなるように静電塗装し、ベースコート塗膜を形成した。3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、該未硬化のベースコート塗膜上に、「マジクロンKINO−1210」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤ塗料)を硬化膜厚が35μmとなるように静電塗装し、クリヤ塗膜を形成した。7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、上記ベースコート塗膜及びクリヤ塗膜を同時に硬化させ、各試験板を作製した。
【0339】
平滑性:「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWc値を用いて評価した。Wc値は、1〜3mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、測定値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。
【0340】
鮮映性:「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWb値を用いて評価した。Wb値は、0.3〜1mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、測定値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
【0341】
耐水性:試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、以下の基準で評価した:
S:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない、
A:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている、
B:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する、
C:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0342】
【表4】
【0343】
【表5】
【0344】
水性塗料組成物(水性上塗ベースコート塗料)の製造
実施例20
製造例33で得た水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)溶液66.7部(樹脂固形分30部)に、攪拌しながらサイメル325(日本サイテックインダストリーズ社製、メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分80%)37.5部、製造例35で得た水酸基含有アクリル樹脂(B3)(固形分25.2%)79.4部(樹脂固形分20部)、及び製造例11で得たアクリルウレタン複合樹脂粒子No.1の水分散体50部(樹脂固形分20部)を均一に混合した。
【0345】
その後、アルミ顔料分として20部となる量のアルミペーストGX180A(旭化成社製、アルミニウムフレークペースト)を攪拌しながら添加して混合分散し、さらに、プライマルASE−60(ロームアンドハース社製、アルカリ増粘型アクリルエマルション系増粘剤)、ジメチルエタノールアミン及び脱イオン水を添加してpH8.0、固形分濃度25質量%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性上塗ベースコート塗料No.1を得た。
【0346】
実施例21〜38及び比較例3〜4
実施例20において、配合組成を下記表4に示す通りとする以外は、実施例20と同様にして、pH8.0、固形分濃度25質量%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒である水性上塗ベースコート塗料No.2〜21を得た。
【0347】
水性上塗ベースコート塗料No.20及び21は比較例である。
【0348】
表4において、「バイヒジュールVPLS2310」は、商品名、住化バイエルウレタン社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分38%である。
【0349】
実施例20〜38及び比較例3〜4で得られた各水性上塗ベースコート塗料No.1〜21について、以下の評価試験を行った。評価結果も併せて下記表4に示す。
【0350】
貯蔵安定性及び塗装ガン洗浄性の試験は、前記水性中塗塗料と同様にして行った。
【0351】
以下のようにして試験板を作成し、仕上り外観(平滑性、鮮映性)及び耐水性の評価を行った。
【0352】
前記水性中塗塗料と同様にして作成した試験用被塗物に、「WP−307T」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステルメラミン樹脂系水性中塗塗料)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚30μmとなるように静電塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、140℃で30分間加熱して中塗塗膜を形成した。
【0353】
さらに該中塗塗膜上に各水性上塗ベースコート塗料を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚15μmとなるように静電塗装し、ベースコート塗膜を形成した。3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、該未硬化のベースコート塗膜上に、「マジクロンKINO−1210」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤ塗料)を硬化膜厚が35μmとなるように静電塗装し、クリヤ塗膜を形成した。7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、上記ベースコート塗膜及びクリヤ塗膜を同時に硬化させ、各試験板を作製した。
【0354】
得られた各試験板につき、前記水性中塗塗料の場合と同様にして、平滑性、鮮映性及び耐水性について評価を行った。
【0355】
【表6】
【0356】
【表7】
【0357】
水性塗料組成物(剥離性水性塗料組成物)の製造
実施例39〜40及び比較例5〜6
製造例36で得た反応性基含有樹脂(B4)の分散液(固形分濃度51.5%)1286部を撹拌器に投入し、45℃に昇温した。この中に、アジピン酸ジヒドラジド4.9部を脱イオン水25部に溶解させてなる溶液29.9部を添加し、アンモニア水でpH8.5に調整することにより、樹脂分散液(固形分50.7%)の架橋性樹脂分散液(X)を得た。
【0358】
架橋性樹脂分散液(X)、必要に応じて各アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)の水分散体及び下記剥離助剤(Y)を下記表5に示す配合量(固形分)で混合撹拌することにより、各剥離性水性塗料組成物No.1〜4を得た。
【0359】
剥離助剤(Y):変性シリコーンTSF4445(東芝シリコーン製、ポリエーテル変性シリコーンオイル)30部をポリオキシエチレンソルビタンモノオレート2部、水68部を加えてよく撹拌し、固形分30%の剥離助剤(Y)を得た。
【0360】
これらの各水性塗料組成物に、必要に応じてポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル及びパーフルオロアルキルアミンオキサイドを添加して表5に示す粘度及び表面張力に調整した後、これらを、パルボンド3050(商品名、リン酸亜鉛系表面処理剤、日本パーカライジング社製)で表面処理した軟鋼板(厚さ0.7mm)にアミノアルキド樹脂塗料(関西ペイント(株)製、商品名アミラック)を140℃、30分間焼付け塗装した塗板(硬化塗膜ガラス転移温度82℃)上にスプレー塗装し、70℃で10分間乾燥させることにより膜厚50〜70μmの剥離性被膜を形成させた。これらの性能試験結果も併せて表5にまとめて示す。試験及び評価方法は以下のとおりである。
【0361】
【表8】
【0362】
粘度:東京計器製(株)のB型粘度計を用いて測定した。測定条件は塗液温度20℃、ローター回転数60rpmとした。
【0363】
表面張力:協和化学(株)製の協和CBVP式表面張力計を用いて測定した。
【0364】
剥離性:被膜形成後、20℃で1日放置した後、試験板に塗布した剥離性水性塗料組成物被膜を端部から1m/30秒の速度ではがした場合の剥離し易さを試験し、以下の基準で評価した:
A:容易に剥離できる、
B:重いが剥離できる、
C:剥離不能である。
【0365】
促進耐侯性:Qパネル社製促進耐候性試験機を用いたQUV促進バクロ試験により、紫外線照射16H/70℃、水凝結8H/50℃を1サイクルとして960時間(40サイクル)試験をし、上記剥離性と同様な方法で被膜を剥離した後に、被塗物である、アミノアルキド塗膜の膨潤その他の塗面異常の有無を観察し、以下の基準で評価した:
A:異常なし、
B:軽い膨潤が認められる、
C:著しい膨潤が認められる。
【0366】
保護性(耐酸性):40%硫酸を0.4ml被膜上にスポットし、70℃で15分間加熱した後、水洗いしてから被膜を剥離して下のアミノアルキド塗膜の膨潤、ツヤビケ、エッチング跡の有無を観察し、以下の基準で評価した:
S:異常が認められない、
A:わずかにツヤビケしているが、膨潤、エッチングは認められない、
B:膨潤が認められる、
C:ツヤビケ、エッチングが認められる。
【0367】
被膜の強度及び伸び:インストロン式引張り試験機(島津製作所製オートグラフ)を用いて、20℃の条件で測定した。引張りスピードは50mm/分、加重は5kg重であった。
【0368】
水性塗料組成物(弾性ベース水性塗料組成物)の製造
実施例41〜43及び比較例7〜8
製造例37で得た反応性基含有樹脂(B5)の分散液(固形分濃度55%)、必要に応じて各アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)の水分散体及び下記表6に示す成分を配合(固形分)し、混合撹拌することにより、各弾性ベース水性塗料組成物No.1〜5を得た。
【0369】
上記で得た各弾性ベース水性塗料組成物を水で塗装適性粘度に調整した後、モルタル板上に砂骨ローラーで塗布量が約1.0kg/m2となるように塗装し、20℃、65%RHで1日乾燥させた。次に各ベース塗膜上に、上塗り塗料(「アレスレタン」(関西ペイント社製、水酸基含有アクリル系イソシアネート硬化型溶剤型上塗塗料)の樹脂固形分100部に対し、20部の「ES−48」(コルコート社製、エチルシリケートの低縮合物)及び5部のホウ酸トリエチルを混合、撹拌して塗料としたもの)を、エアスプレーにより塗布量が約0.2kg/m2となるように塗装し、20℃、65%RHで7日乾燥させ塗装仕上げ板を得た。
【0370】
各弾性ベース水性塗料組成物の配合と併せて塗装仕上げ板について行なった性能試験結果も併せて表6にまとめて示す。表6中の(*1)〜(*5)、試験及び評価方法は以下のとおりである。
【0371】
【表9】
(*1)ヒドロキシエチルセルロース:有効成分2.5%、増粘剤
(*2)SNデフォーマーA63:サンノプコ社製、消泡剤
(*3)ノプコサントK:サンノプコ社製、分散剤
(*4)造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
(*5)スワゾール310:コスモ石油社製、炭化水素系溶剤
【0372】
弾性ベース単独膜の伸び率:JIS A 6909に準じて試験片を作成した。該乾燥塗膜の単独膜の伸び率を引張試験機オートグラフAG2000B型(島津製作所)を用い、20℃雰囲気で引張速度200mm/分にて測定した。
【0373】
仕上り外観:上記で得られた各試験塗装板の塗膜表面の仕上り外観を、以下の基準で目視にて評価した:
S:均一にムラなく平滑に仕上がっており、塗膜外観が極めて良好。
A:平滑性は若干劣るが、塗膜外観は良好。
B:上塗り塗料の吸い込みムラが発生している。
【0374】
温冷繰り返し試験:仕上り性試験に用いた塗装仕上げ板を、JIS A 6909に準じて、20℃の水中に18時間漬浸した後、直ちに−20℃の恒温槽中で3時間冷却し、次いで50℃の恒温槽中で3時間加温する。この24時間を1サイクルとして20サイクル試験に供し、その後の塗面状態を、以下の基準で目視にて評価した:
A:ハガレ、フクレ、ワレが全くなく、且つ変色や光沢低下もない。
B:ハガレ、フクレ、ワレは認められないが、若干の変色や光沢低下が認められる。
C:ハガレ、フクレ、ワレのうちのいずれかが認められる。
【0375】
水性塗料組成物(建材用水性塗料組成物)の製造
実施例44〜45及び比較例9〜10
製造例38で得た反応性基含有樹脂(B6)の分散液(固形分濃度47.7%)、必要に応じて各アクリルウレタン複合樹脂粒子(A)の水分散体、シリコーン化合物(メチルトリメトキシシラン縮合物(重量平均分子量約4000))及び顔料ペースト(BYK−190(ビックケミー社製、商品名、分散樹脂)2部、脱イオン水50部、及びチタン白100部を混合し、これをペイントシェーカーにて分散処理したもの(固形分67%))など、下記表7に示す配合にて撹拌混合した後、アンモニア0.1部を加えてpHを約8〜9に調整し、固形分54%の各建材用水性塗料組成物No.1〜4を得た。尚、表7の配合は固形分表示である。また、造膜助剤(*6)は、前記表6の造膜助剤(*4)と同じである。得られた各建材用水性塗料組成物を下記性能試験に供した。
【0376】
各建材用水性塗料組成物の配合と併せて性能試験結果も表7にまとめて示す。試験及び評価方法は以下のとおりである。
【0377】
【表10】
【0378】
耐候性:シーラーを塗装したスレート板上に、各建材用水性塗料組成物を乾燥膜厚30μmになるように塗装し、120℃で20分間乾燥して各試験塗板を作成した。試験板の初期60°鏡面光沢値を測定しておく。
【0379】
引き続きサンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製)を使用して促進耐候性試験(降雨サイクル;12分/時間、ブラックパネル温度60〜66℃)を行った。試験時間5000時間後の60度鏡面光沢値を最終的な光沢値として測定し、これを初期光沢値で除し、この値を光沢保持率(%)として算出した。光沢保持率が高いほど塗膜の耐侯性は良好である。
【0380】
耐酸性:40%硫酸を各試験板の塗膜上に0.4cc滴下し、60℃に加熱したホットプレート上で15分間加熱した後、試験板を水洗した。硫酸滴下箇所のエッチング深さ(μm)を表面粗度計(東京精密社製、表面粗さ形状測定機 『サーフコム570A』)を用いて、カットオフ0.8mm(走査速度0.3mm/sec、倍率5000倍)の条件で測定することにより耐酸性の評価を行なった。エッチング深さが小さいほど耐酸性が良好であることを表わす。
【0381】
耐水性:試験板を20℃の恒温室に24時間放置後、80℃の温水中に5時間浸漬し、その後浸漬させたままの状態で80℃から室温まで徐々に冷却した。その後水中より引き上げた試験板の表面状態を以下の基準で評価した。
S:ツヤビケ、白濁が認められず極めて良好、
A:若干ツヤビケが認められるが良好、
B:ツヤビケが認められ、塗膜が白濁している。