(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
各実施形態の説明には、XYZ直交座標系を用いる。n
−形半導体領域2からn
−形半導体領域5に向かう方向であって相互に直交する2方向をX方向及びY方向とする。また、カソード電極31からアノード電極32に向かう方向をZ方向とする。
以下の説明において、n
+、n
−及びp
+、pの表記は、各導電形における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」および「−」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「−」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0008】
(第1実施形態)
図1および
図2を用いて、第1実施形態に係る半導体装置の一例について説明する。
図1は、第1実施形態に係る半導体装置100を表す平面図である。
図2は、
図1のA−A’断面図である。
なお、
図1では、空隙Vの外縁が破線で表されている。
【0009】
半導体装置100は、ダイオードである。
図1および
図2に表すように、半導体装置100は、n
+形(第1導電形)半導体領域1(第1半導体領域)と、n
−形半導体領域2(第2半導体領域)と、p形(第2導電形)半導体領域3(第3半導体領域)と、p
+形半導体領域4と、n
−形半導体領域5(半導体部)と、絶縁部11(第1絶縁部)、絶縁部12(第2絶縁部)、絶縁部13、絶縁部20(第3絶縁部)と、カソード電極31(第1電極)と、アノード電極32(第2電極)と、絶縁部40(第4絶縁部)と、導電層41と、空隙Vと、を有する。
【0010】
図1に表すように、アノード電極32は、半導体装置100の上面に設けられている。アノード電極32の周りには、絶縁部40が設けられている。空隙Vは、半導体装置100の中心部分を囲むように、環状に設けられている。
【0011】
図2に表すように、カソード電極31は、半導体装置100の下面に設けられている。
n
+形半導体領域1は、カソード電極31の上に設けられ、カソード電極31と電気的に接続されている。
n
−形半導体領域2は、n
+形半導体領域1の上に設けられている。
p形半導体領域3は、n
−形半導体領域2の上に設けられている。
p
+形半導体領域4は、p形半導体領域3の上に選択的に設けられている。
【0012】
絶縁部11は、n
−形半導体領域2およびp形半導体領域3の周りに設けられている。絶縁部11は、n
−形半導体領域2およびp形半導体領域3に接している。
絶縁部12は、絶縁部11の周りに、絶縁部11と離間して設けられている。絶縁部11と絶縁部12との間には、空隙Vが形成されている。
n
+形半導体領域1の空隙Vに面する部分には、絶縁部13が設けられている。
n
−形半導体領域5は、絶縁部12の周りに設けられている。絶縁部12は、n
−形半導体領域5に接している。
【0013】
アノード電極32は、p
+形半導体領域4の上に設けられ、p
+形半導体領域4と電気的に接続されている。
絶縁部20は、アノード電極32の周りに設けられ、p形半導体領域3の外周上、p
+形半導体領域4の外周上、およびn
−形半導体領域5上に位置している。また、絶縁部20は、空隙Vを覆っている。すなわち、空隙Vは、絶縁部11〜13および絶縁部20によって囲まれた空間である。
【0014】
アノード電極32の一部は、絶縁部20の上に設けられ、空隙Vの上に位置している。
絶縁部40は、アノード電極32の周りに設けられ、絶縁部20の外周およびアノード電極32の外周を覆っている。
導電層41は、n
−形半導体領域5、絶縁部20、およびアノード電極32と、絶縁部40と、の間に設けられている。また、導電層41は、n
−形半導体領域5およびアノード電極32と電気的に接続されている。
【0015】
なお、空隙Vは、
図2に表す例に限らず、n
−形半導体領域2の一部およびp形半導体領域3の周りに設けられていてもよい。すなわち、n
−形半導体領域2の一部が空隙Vによって囲まれ、n
−形半導体領域2の他の一部が空隙Vの周りに設けられていてもよい。
あるいは、空隙Vは、
図2に表す例よりも深く形成され、n
+形半導体領域1の一部をさらに囲んでいてもよい。
【0016】
ここで、各構成要素の材料の一例を説明する。
n
+形半導体領域1、n
−形半導体領域2、p形半導体領域3、およびp
+形半導体領域4は、半導体材料として、シリコン、炭化シリコン、窒化ガリウム、またはガリウムヒ素を含む。半導体材料としてシリコンが用いられる場合、n形不純物として、ヒ素、リン、またはアンチモンを用いることができる。p形不純物としては、ボロンを用いることができる。
絶縁部11〜13および絶縁部20は、酸化シリコンや窒化シリコンなどの絶縁材料を含む。
カソード電極31およびアノード電極32は、ニッケルやアルミニウムなどの金属を含む。
絶縁部40は、ポリイミドなどの絶縁性樹脂を含む。
導電層41は、半絶縁性シリコン窒化層や、半絶縁性多結晶シリコン層などの、高い電気抵抗を有する層である。導電層41における電気抵抗は、n
−形半導体領域5における電気抵抗およびアノード電極32における電気抵抗よりも高く、絶縁部20における電気抵抗よりも低い。
【0017】
次に、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一例について説明する。
図3、
図5、および
図6は、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を表す工程断面図である。
図4は、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を表す工程平面図である。
【0018】
まず、n
+形半導体層1aとn
−形半導体層2aとを有する半導体基板を用意する。次に、n
−形半導体層2aの表面にp形不純物をイオン注入する。続いて、半導体基板を熱酸化することで、n
−形半導体層2aの表面に絶縁層IL1が形成されるとともに、p形半導体領域3が形成される。続いて、p形半導体領域3の表面にp形不純物をイオン注入し、
図3(a)に表すように、p
+形半導体領域4を形成する。
【0019】
次に、絶縁層IL1の上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、絶縁層IL2を形成する。続いて、絶縁層IL1およびIL2をパターニングする。この工程により、
図3(b)に表すように、絶縁層IL1およびIL2に、複数の開口OP1が形成される。
【0020】
このとき、複数の開口OP1は、
図4に表すように、p形半導体領域3およびp
+形半導体領域4の周りに、周方向に並べて形成される。複数の開口OP1を周方向に並べて形成することで、この後の工程においてトレンチT1が形成された際に、トレンチT1の上に位置する絶縁層IL1およびIL2が崩落する可能性を低減することができる。
一例として、開口OP1は、平面視において矩形を有し、短辺が3μm以下となるように形成される。
【0021】
次に、複数の開口OP1を通して、n
−形半導体層2aの一部を除去する。このとき、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法などの異方性エッチングと、CDE(Chemical Dry Etching)法などの等方性エッチングと、を交互に繰り返し行う。これにより、開口OP1を通して露出した半導体領域に加えて、絶縁層IL1およびIL2に覆われた半導体領域の一部もエッチングされる。この結果、複数の開口OP1の下に、1つの大きなトレンチT1が形成される。トレンチT1は、n
−形半導体層2aの一部の周りおよびp形半導体領域3の周りに環状に形成される。このとき、トレンチT1の周りに位置するn
−形半導体層2aの一部が、
図2に表すn
−形半導体領域5に相当する。
【0022】
次に、半導体基板を熱酸化することで、
図5(a)に表すように、トレンチT1の内壁に絶縁層IL3を形成する。絶縁層IL3の各部が、
図2に表す絶縁部11〜13のそれぞれに相当する。
【0023】
次に、絶縁層IL1およびIL2の上に、CVD法を用いて、開口OP1を塞ぐ絶縁層IL4を形成する。このとき、トレンチT1を埋め込まないように絶縁層IL4を形成することで、空隙Vが形成される。
なお、後の工程において、半導体基板が加熱された際に、空隙Vにおける気体の熱膨張によって半導体基板に圧力が加わり、半導体基板が損傷する場合がある。半導体基板に加わる圧力を低減するために、減圧雰囲気中で絶縁層IL4を形成し、空隙Vを形成しても良い。この場合、空隙Vにおける圧力は、大気圧未満となる。
続いて、絶縁層IL1、IL2、およびIL4のそれぞれの一部を除去することで、
図5(b)に表すように、p
+形半導体領域4の上面およびn
−形半導体領域5の上面を露出させる。
【0024】
次に、絶縁層IL4を覆う金属層を形成し、この金属層をパターニングすることで、アノード電極32を形成する。このとき、パターニングされた絶縁層IL1、IL2、およびIL4は、絶縁部20に相当する。
続いて、アノード電極32の外周に導電層41を形成し、その上に絶縁部40を形成する。このときの様子を
図6(a)に表す。
【0025】
次に、n
+形半導体層1aが所定の厚みになるまで、n
+形半導体層1aの裏面を研削する。続いて、
図6(b)に表すように、研削後のn
+形半導体層1aの裏面にカソード電極を形成する。その後、
図6(b)の破線で表す位置で半導体基板をダイシングすることで、
図1および
図2に表す半導体装置100が得られる。
【0026】
このとき、n
−形半導体領域5の一部を残すように半導体基板をダイシングすることで、
図2に表すように、絶縁部12の周りにn
−形半導体領域5が設けられた半導体装置100が得られる。
なお、RIE法などを用いて、絶縁層IL3に対してn
−形半導体領域5を選択的にエッチングして半導体基板をダイシングすることも可能である。この場合、空隙Vの周りに絶縁部12のみが設けられた半導体装置が得られる。
【0027】
また、上述した製造方法において、絶縁層IL1は、半導体基板の熱酸化によって形成されているのに対して、絶縁層IL3は、CVD法によって形成されている。このため、絶縁層IL1は、絶縁層IL3よりも緻密な層であり、絶縁層IL1における絶縁材料の密度は、絶縁層IL3における絶縁材料の密度よりも高い。
従って、上述した製造方法を用いて半導体装置100を製造した場合、例えば絶縁層20の断面を観察することで、絶縁層IL1に形成されていた開口OP1の位置や、開口OP1中に形成された絶縁層IL3を確認することが可能である。
【0028】
第1実施形態に係る半導体装置100は、
図3〜
図6に表す方法に代えて、
図7および
図8に表す方法を用いて製造することも可能である。
図7および
図8は、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法の他の一例を表す工程断面図である。
【0029】
まず、
図3(a)に表す工程と同様に、n
−形半導体層2aの表面に、p形半導体領域3、p
+形半導体領域4、および絶縁層IL1を形成する。次に、絶縁層IL1の上に絶縁層IL2およびフォトレジスト層を形成する。続いて、絶縁層IL1、絶縁層IL2、およびフォトレジスト層をパターニングし、
図7(a)に表すように、これらの層に開口OP1を形成する。開口OP1は、p形半導体領域3およびp
+形半導体領域4の周りに環状に形成される。また、開口OP1の幅は、後の工程で形成される空隙Vの幅と同程度の幅となるように形成される。
【0030】
次に、開口OP1を通して、n
−形半導体層2aの一部およびp形半導体領域3の一部を異方性エッチングにより除去し、トレンチT1(第1トレンチ)を形成する。続いて、半導体基板を熱酸化することで、
図7(b)に表すように、トレンチT1の内壁に絶縁層IL3を形成する。
【0031】
次に、トレンチT1の内部に、犠牲層としてのフォトレジストPRを形成する。続いて、CVD法を用いて、絶縁層IL2およびフォトレジストPRを覆う絶縁層IL4を形成する。続いて、絶縁層IL3に複数の開口OP2を形成し、
図8(a)に表すように、フォトレジストPRの一部を露出させる。
なお、開口OP2は、例えば、
図4に表す開口OP1と同様に、周方向に並べて形成される。また、フォトレジストPRに代えて、他の有機材料を用いてもよい。
【0032】
次に、開口OP2を通して、酸素ガスやオゾンガスのプラズマを用いてフォトレジストPRをアッシングすることで、フォトレジストPRを除去する。これにより、先の工程で形成したトレンチT1が再度現れる。続いて、CVD法を用いて、開口OP2を塞ぐ絶縁層IL5を形成する。このとき、トレンチT1を埋め込まないように絶縁層IL5を形成することで、空隙Vが形成される。
以降は、
図5(b)〜
図6(b)に表す工程と同様の工程を行うことで、半導体装置100が得られる。
【0033】
あるいは、第1実施形態に係る半導体装置100は、
図9に表す以下の方法を用いることでも製造することができる。
図9は、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法の他の一例を表す工程断面図である。
【0034】
まず、
図7(a)および
図7(b)に表す工程と同様の工程を行い、半導体基板にトレンチT1および絶縁層IL3を形成する。次に、トレンチT1の内部に犠牲層SLを形成する。犠牲層SLの材料には、室温において固体であり、加熱することで比較的容易に液体または気体となるものが用いられる。このような材料としてホウ酸が挙げられる。ホウ酸は室温で固体であり、おおよそ170度を超えると液体になる。
【0035】
続いて、
図9(a)に表すように、絶縁層IL2および犠牲層SLの上に、絶縁層IL4を形成する。絶縁層IL4は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂を塗布し、硬化させることで形成される。
【0036】
次に、絶縁層IL4に開口OP2を形成し、犠牲層SLを露出させる。続いて、犠牲層SLを加熱することで、犠牲層SLを液化させる。液化した犠牲層SLを、開口OP2を通して吸い上げることで、
図9(b)に表すように、先の工程で形成されたトレンチT1が再び現れる。あるいは、加熱により犠牲層SLを気化させ、開口OP2を通して、犠牲層SLが気化したガスを吸い上げてもよい。続いて、絶縁層IL4の上に、再度絶縁性樹脂を塗布し、硬化させることで、開口OP2を塞ぐ形成する。これにより、空隙Vが形成される。
以降は、
図5(b)〜
図6(b)に表す工程と同様の工程を行うことで、半導体装置100が得られる。
【0037】
ここで、本実施形態による作用および効果について説明する。
半導体装置に逆電圧が印加されているとき、n
−形半導体領域2およびp形半導体領域3は、空乏化している。このとき、等電位線は、n
−形半導体領域2中では、n
−形半導体領域2とp形半導体領域3とのpn接合面に沿って、X方向およびY方向に広がっている。一方で、n
−形半導体領域2およびp形半導体領域3の周りの絶縁体中では、一部の等電位線が、カソード電極31側またはアノード電極32側に向けて湾曲する。このとき、絶縁体の厚みが薄いと、n
−形半導体領域2の外周近傍においても等電位線の湾曲が生じる。n
−形半導体領域2中で等電位線の湾曲が生じると、この等電位線が湾曲した部分の電界強度が高くなり、半導体装置の耐圧が低下する。従って、半導体装置の耐圧を維持するためには、絶縁体は厚いことが望ましい。
一方で、耐圧を維持するために必要な絶縁体の厚みは、当該絶縁体の比誘電率に依存する。すなわち、絶縁体の比誘電率が低いほど、耐圧を維持するために必要な絶縁体の厚みが薄くなる。絶縁体の比誘電率が低いほど、絶縁体中で等電位線が密になり、絶縁体中における湾曲した等電位線の曲率が大きくなるため、n
−形半導体領域2の外周近傍における等電位線の湾曲が抑制されるためである。
【0038】
本実施形態に係る半導体装置では、n
−形半導体領域2およびp形半導体領域3の周りに空隙Vが形成されている。空隙Vは、絶縁体として機能する。また、空隙Vの比誘電率は、空気の比誘電率または真空の誘電率であるため、酸化シリコンや窒化シリコンなどの絶縁材料の比誘電率よりも小さい。このため、空隙Vがn
−形半導体領域2およびp形半導体領域3の周りに形成されることで、酸化シリコンや窒化シリコンなどからなる絶縁体がn
−形半導体領域2およびp形半導体領域3の周りに設けられている場合に比べて、絶縁体の厚みを薄くすることができる。
このため、本実施形態によれば、n
−形半導体領域2およびp形半導体領域3の周りの絶縁体の厚みを薄くし、半導体装置を小型化することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態に係る半導体装置では、n
+形半導体領域1、n
−形半導体領域2、およびp形半導体領域3の空隙Vに面した部分に、絶縁部11および12が設けられている。これらの絶縁部を設けることで、半導体領域の表面準位によるリーク電流の発生や半導体装置の耐圧の低下を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る半導体装置では、絶縁部20が空隙Vを覆い、アノード電極32の一部が空隙Vの上に設けられている。アノード電極32の一部が空隙Vの上に設けられていることで、アノード電極32の当該一部がフィールドプレート電極として機能し、n
−形半導体領域2とp形半導体領域3との間のpn接合面の端部における電界集中を抑制し、半導体装置の耐圧を向上させることが可能となる。
このとき、絶縁部13の周りにn
−形半導体領域5を設けることで、絶縁部20の端部が絶縁部12およびn
−形半導体領域5によって支持され、半導体装置の機械的強度を向上させることが可能となる。
【0041】
さらに、本実施形態に係る半導体装置では、アノード電極32およびn
−形半導体領域5と電気的に接続された導電層41が設けられている。半導体装置100に逆電圧が印加され、n
−形半導体領域2に電流が流れていない場合でも、導電層41には微小な電流が流れ、導電層41において電位分布が形成される。このとき、n
−形半導体領域2およびp形半導体領域3の周りの等電位線は、導電層41における電位分布に応じて分布する。この結果、pn接合面の端部における電界集中が抑制され、半導体装置の耐圧を向上させることが可能となる。
【0042】
なお、半導体装置の外部からの電荷の進入を抑制し、半導体装置の耐圧の変動を抑えるためには、空隙Vの幅が5μm以上であることが望ましい。より望ましくは、トレンチT1の幅は、n
−形半導体領域2のZ方向における厚みの、0.5倍以上1.5倍以下である。
なお、ここでは、幅とは、トレンチT1によって囲まれたn
−形半導体層2aの一部から、n
−形半導体領域5に向かう方向における寸法を意味している。
【0043】
しかし、このような幅が広いトレンチを形成し、このトレンチを埋め込まずに絶縁層で塞いで空隙Vを形成することは容易ではない。また、空隙Vを形成する際に、絶縁材料によってトレンチの一部が埋め込まれ、空隙Vの幅が減少してしまう可能性もある。
これに対して、本実施形態に係る製造方法では、例えば
図5(a)に表すように、複数の小さな開口OP1の下に大きなトレンチT1を形成し、開口OP1を塞ぐことで空隙Vを形成している。このように、小さな開口の下に大きな空間を形成し、当該開口を塞いで空隙Vを形成することで、空隙Vの幅の減少を抑えつつ、幅の広い空隙Vを容易に形成することが可能となる。
【0044】
なお、
図1および
図2では、半導体装置100がダイオードの場合について説明したが、本実施形態は、他のMOSFETやIGBTなどにも適用することが可能である。
【0045】
図10は、第1実施形態の変形例に係る半導体装置110を表す断面図である。
半導体装置110は、MOSFETである。
図10に表すように、半導体装置110は、半導体装置100と比べて、n
+形半導体領域6、ゲート電極15、およびゲート絶縁層16をさらに有する。また、カソード電極31に代えてドレイン電極33(第1電極)を有し、アノード電極32に代えてソース電極34(第2電極)を有する。
【0046】
n
+形半導体領域1は、ドレイン電極33の上に設けられ、ドレイン電極33と電気的に接続されている。
n
−形半導体領域2は、n
+形半導体領域1の上に設けられている。
p形半導体領域3は、n
−形半導体領域2の上に設けられている。
p
+形半導体領域4およびn
+形半導体領域6は、p形半導体領域3の上に選択的に設けられている。
ゲート絶縁層16は、ゲート電極15とp形半導体領域3との間に設けられている。
ソース電極34は、p
+形半導体領域4およびn
+形半導体領域6の上に設けられ、p形半導体領域3、p
+形半導体領域4、およびn
+形半導体領域6と電気的に接続されている。ソース電極34とゲート電極15との間にはゲート絶縁層16が設けられ、これらの電極は電気的に分離されている。
【0047】
本変形例に係る半導体装置110も、n
−形半導体領域2およびp形半導体領域3の周りに空隙Vが設けられているため、半導体装置100と同様に、半導体装置の小型化が可能となる。
すなわち、ダイオード以外の他の半導体装置についても、pn接合面を形成する半導体領域の周りに空隙Vを設けることで、半導体装置の小型化が可能である。
【0048】
なお、
図10に表す例では、半導体装置110は、半導体領域の上にゲート絶縁層16を介してゲート電極15が設けられた、プレーナ型ゲート構造を有する。しかし、本実施形態はこれに限らず、半導体装置110が、半導体領域中にゲート絶縁層16を介してゲート電極15が設けられた、トレンチ型ゲート構造を有していてもよい。
【0049】
また、半導体装置110がIGBTとして用いられる場合、半導体装置110は、n
+形半導体領域1の下に設けられるp
+形半導体領域をさらに有する。この場合、ドレイン電極33はコレクタ電極として機能し、ソース電極34はエミッタ電極として機能する。
【0050】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係る半導体装置200を表す断面図である。
図12は、第2実施形態に係る半導体装置200が有する絶縁部11および12の近傍を拡大した断面図である。
半導体装置200は、例えば、絶縁部11および絶縁部12の構造について、半導体装置100と差異を有する。
【0051】
図11に表すように、絶縁部11は、n
−形半導体領域2およびp形半導体領域3の周りに設けられ、絶縁部12は、空隙Vを介して絶縁部11の周りに設けられている。
図12に表すように、絶縁部11は、第1絶縁部分11aと、第2絶縁部分11bと、を有する。絶縁部12は、第3絶縁部分12cと、第4絶縁部分12dと、を有する。
【0052】
第1絶縁部分11aは、U字形を有し、第2絶縁部分11bは、この第1絶縁部分11aの内側に設けられている。
すなわち、n
−形半導体領域2およびp形半導体領域3の周りに第1絶縁部分11aの一部が設けられ、第1絶縁部分11aの当該一部の周りに第2絶縁部分11bが設けられている。そして、第2絶縁部分11bの周りに、第1絶縁部分11aの他の一部が設けられている。
【0053】
絶縁部12についても同様に、絶縁部11の周りに、空隙を介して第3絶縁部分12cの一部が設けられている。第3絶縁部分12cの当該一部の周りに、第4絶縁部分12dが設けられ、第4絶縁部分12dの周りに、第3絶縁部分12cの他の一部が設けられている。そして、第3絶縁部分12cの当該他の一部の周りに、n
−形半導体領域5が設けられている。
【0054】
一例として、第1絶縁部分11aおよび第3絶縁部分12cは、半導体材料の熱酸化により形成され、第2絶縁部分11bおよび第4絶縁部分12dは、CVD法により形成される。このため、第1絶縁部分11aおよび第3絶縁部分12cは、第2絶縁部分11bおよび第4絶縁部分12dに比べて緻密に形成される。
すなわち、第1絶縁部分11aおよび第2絶縁部分11bが、共通の絶縁材料を含む場合、第1絶縁部分11aにおける絶縁材料の密度は、第2絶縁部分11bにおける絶縁材料の密度よりも高い。
また、第3絶縁部分12cおよび第4絶縁部分12dが、共通の絶縁材料を含む場合、第3絶縁部分12cにおける絶縁材料の密度は、第4絶縁部分12dにおける絶縁材料の密度よりも高い。
【0055】
なお、
図11および
図12に表す例では、n
+形半導体領域1の一部が空隙Vに対して露出している。しかし、半導体装置100と同様に、n
+形半導体領域1の空隙Vに面する部分に、絶縁部13が設けられていてもよい。
【0056】
ここで、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する。
図13および
図14は、第2実施形態に係る半導体装置200の製造方法を表す工程断面図である。
【0057】
まず、
図3(a)に表す工程と同様に、n
−形半導体層2aの表面に、p形半導体領域3、p
+形半導体領域4、および絶縁層IL1を形成する。次に、絶縁層IL1の上に絶縁層IL2およびフォトレジスト層を形成する。続いて、絶縁層IL1および絶縁層IL2、およびフォトレジスト層をパターニングし、
図13(a)に表すように、これらの層に複数の開口OP1を形成する。それぞれの開口OP1は、p形半導体領域3およびp
+形半導体領域4の周りに環状に形成される。また、開口OP1同士の間の間隔は、後の工程で形成される空隙Vの幅と同程度となるように形成される。
【0058】
次に、開口OP1を通して、n
−形半導体層2aの一部およびp形半導体領域3の一部を異方性エッチングにより除去し、環状のトレンチを形成する。続いて、半導体基板を熱酸化することで、このトレンチの内壁に絶縁層IL3を形成する。続いて、絶縁層IL2およびIL3の上に絶縁層IL4を形成し、
図13(b)に表すように、トレンチを埋め込む。これにより、n
−形半導体層2aの一部およびp形半導体領域3を囲む絶縁部11および12が形成される。
【0059】
次に、絶縁層IL1、IL2、およびIL4をパターニングし、
図14(a)に表すように、複数の開口OP2を形成する。この工程により、絶縁部11と絶縁部12との間のn
−形半導体層2aが開口OP2を通して露出する。開口OP2は、例えば、
図4に表す開口OP1と同様に、周方向に並べて形成される。
【0060】
次に、開口OP2を通して絶縁部11と絶縁部12との間のn
−形半導体層2aを除去し、トレンチT1を形成する。n
−形半導体層2aの除去には、等方性エッチングが用いられる。このとき、絶縁部11および12は、X−Y面内方向におけるエッチングを抑制するマスクとして機能する。
なお、トレンチT1を形成した後、半導体基板を熱酸化することで、トレンチT1の底部に絶縁層を形成してもよい。
【0061】
次に、絶縁層IL4の上に、CVD法を用いて、開口OP2を塞ぐ絶縁層を形成する。このとき、トレンチT1を埋め込まないように絶縁層を形成することで、空隙Vが形成される。
以降は、
図5(b)〜
図6(b)に表す工程と同様の工程を行うことで、半導体装置100が得られる。
【0062】
本実施形態に係る半導体装置においても、第1実施形態と同様に、n
−形半導体領域2およびp形半導体領域3の周りに、絶縁体としての空隙Vが形成されている。
このため、第1実施形態と同様に、n
−形半導体領域2およびp形半導体領域3の周りの絶縁体の厚みを薄くし、半導体装置を小型化することが可能である。
【0063】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、最初にトレンチを形成して絶縁層で埋め込み、次に、この絶縁層を側方へのエッチングに対するマスクとして用いてトレンチT1を形成している。
このため、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法に比べて、トレンチT1を形成する際の側方へのエッチング量のばらつきを低減し、トレンチT1の幅のばらつきを小さくすることが可能である。
【0064】
なお、本実施形態も、第1実施形態と同様に、MOSFETやIGBTなどの他の半導体装置に適用することが可能である。すなわち、
図10に表す半導体装置110において、
図12に表す構造を有する絶縁部11および12が設けられていてもよい。
【0065】
以上で説明した各実施形態における、各半導体領域の間の不純物濃度の相対的な高低については、例えば、SCM(走査型静電容量顕微鏡)を用いて確認することが可能である。なお、各半導体領域におけるキャリア濃度は、各半導体領域において活性化している不純物濃度と等しいものとみなすことができる。従って、各半導体領域の間のキャリア濃度の相対的な高低についても、SCMを用いて確認することができる。
また、各半導体領域における不純物濃度については、例えば、SIMS(二次イオン質量分析法)により測定することが可能である。
【0066】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態に含まれる、例えば、n
+形半導体領域1、n
−形半導体領域2、p形半導体領域3、p
+形半導体領域4、n
−形半導体領域5、n
+形半導体領域6、絶縁部11〜13、ゲート電極15、ゲート絶縁層16、絶縁部20、カソード電極31、アノード電極32、ドレイン電極33、ソース電極34、絶縁部40、導電層41、空隙Vなどの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の技術から適宜選択することが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。