(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一の実施形態>
以下、本発明に係る運搬車両の第一の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態を説明するための全図において同一の機能を有するものは同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0012】
本実施形態は、運搬車両として、鉱山用のダンプトラックを例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態に係るダンプトラックの左側面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のダンプトラック10は、本体を形成するフレーム11と、車輪12と、ホイストシリンダ19によって上下方向の回動可能にフレーム11上に設けられる荷台13と、フレーム11上に配置される運転室14と、を備える。また、本実施形態のダンプトラック10は、位置センサ15と、重量センサ16と、気圧センサ17と、演算装置18と、をさらに備える。
【0014】
位置センサ15は、ダンプトラック10の位置を検出し、位置信号(位置データ)として出力する。位置信号として、例えば、2次元の直交座標系の座標値を特定可能な情報を出力する。位置センサ15は、例えば、GPS等であってもよい。
【0015】
気圧センサ17は、ダンプトラック10の周囲の現在の気圧を計測し、気圧信号(気圧データ)として出力する。
【0016】
重量センサ16は、ダンプトラック10の荷台13に積み込まれた積載物の重量を測定し、重量信号(重量データ)として出力する。
【0017】
なお、重量センサ16は、間接的にダンプトラック10の重量を推定可能なセンサであってもよい。例えば、圧力センサなどである。この場合、圧力センサで、フレーム11に備え付けられたサスペンションの圧力を測定し、測定した値を積載物の重量に変換して出力する。
【0018】
本実施形態の演算装置18は、ダンプトラック10の各部を制御する。本実施形態の演算装置18は、各部の制御に必要な、走路上のダンプトラック10の高度を算出する高度算出部30(
図2(a)参照)を備える。高度算出部30は、位置センサ15、気圧センサ17の出力を用い、気圧の時間的変化を反映(補正)した高度を算出し、出力する。出力先は、例えば、上述のような燃料消費を推定する燃料消費推定部90(
図2(a)参照)等である。
【0019】
気圧式高度計を用いて高度を算出(推定)する場合、気圧P[hPa]の位置の標高(海抜高度)H[m]は、以下の式(1)で推定できる。
H=153.85×(T
0+273.15)×[1−(P/P
0)
0.190255] ・・・(1)
なお、T
0℃およびP
0[hPa]は、それぞれ、標高0mでの気温および気圧である。
【0020】
燃料消費推定部90では、上述のように、車体の力学的エネルギーに基づく燃料消費量推定アルゴリズムを用いる。このような燃費計算では、走路の高低差データとして、任意の地点を基準とした高度を用いる。従って、必ずしも標高Hが必要ではない。
【0021】
上記特許文献1によると、任意の基準とする位置における高度(基準高度)h
ref[m]とその高度における気圧(基準気圧)P
ref[hPa]とを用い、気圧P[hPa]の場所の高度h[m]は、以下の式(2)で与えられる。
h=h
ref+4.43308×10
4[1−(P/P
ref)
0.19263] ・・・(2)
なお、上記式(2)は、現在の大気がICAO(International Civil Aviation Organization)の標準大気モデルに従うことを前提としている。
【0022】
しかしながら、大気圧は時間とともに変動する。すなわち、基準高度href[m]における基準気圧Pref[hPa]も時間とともに変動する。このため、気圧式高度計を用いて高度を得る場合、この大気圧の変動を考慮して算出する必要がある。そこで、本実施形態の高度算出部30は、ダンプトラック10内で取得したデータのみから、大気の時間変動を反映(補正)した高度(高低差データ)を算出する。
【0023】
本実施形態のダンプトラック10は、基本的に、所定の距離だけ離れた、積み込み場所と、放出場所との間の走路を、往復する。走路は、積み込み場所、放出場所との間を結ぶ経路で、ほぼ、予め定められた走行路である。なお、走路は、積み込み場所の位置、および/または、放出場所の位置の変化により、多少変動することもある。
【0024】
このような走路上を往復する本実施形態のダンプトラック10は、時々刻々と、位置センサ15によって、自車の位置を検出し、重量センサ16によって、積載量を測定し、気圧センサ17によって周囲の大気圧を測定し続ける。
【0025】
本実施形態のダンプトラック10は、これらの各センサで検出したデータから、大気圧の時間的変動を補正した、走路の高低差データを得、例えば、燃料消費量を推定し、燃費計算を行う。
【0026】
このため、本実施形態の高度算出部30は、位置センサ15および気圧センサ17の出力を用い、大気圧の時間変動を補正した高度を算出する。なお、ここで算出する高度は、上述のように燃料消費量を推定するために用いるデータであるため、標高ではなく、基準とする位置(以下、基準位置と呼ぶ)からの相対的な高度、すなわち高低差データである。
【0027】
本実施形態の高度算出部30は、これを実現するため、
図2(a)に示すように、データ取得部31と、同位置レコード決定部32と、高度表作成部33と、出力高度算出部34と、を備える。また、高度算出部30は、位置センサ15、重量センサ16および気圧センサ17が取得した各データを、取得時刻に対応づけて保持する計測データベース(計測DB)41と、高度表作成部33が作成した高度表42を備える。
【0028】
本実施形態の演算装置18は、
図2(b)に示すように、各種の演算を行うCPU(Central Processing Unit)51、CPU51による演算を実行するためのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置53、およびCPU51がプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)等のメモリ52を含むハードウェアを備える。また、演算装置18は、記憶装置53に記憶され、CPU51により実行されるソフトウェアとから構成される。
【0029】
このような演算装置18の構成において、記憶装置53に格納されたプログラム等がメモリ52に読み出され、CPU51の制御に従って動作することにより、ソフトウェアとハードウェアとが協働して、演算装置18の各機能を実現する。
【0030】
なお、演算装置18の全部または一部の機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(field−programmable gate array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0031】
また、各機能の処理に用いる各種のデータ、例えば、上記計測DB41、高度表42のような処理中に生成される各種のデータは、記憶装置53等に格納される。
【0032】
[データ取得部]
データ取得部31は、位置センサ15が検出した位置データと、気圧センサ17が測定した気圧データと、重量センサ16が取得した重量データとを、所定の時間間隔で、取得し、取得した時刻に対応づけて、計測DB41として保持する。
【0033】
[計測DB]
図3(a)に、本実施形態の計測DB41の一例を示す。本図に示すように、本実施形態の計測DB41では、各データを取得した取得時刻411[t]と、その時刻の位置データ(走路上位置)412と、気圧データ(測定気圧)413[hPa]と、重量データ414[kg]とが対応づけられ、1レコードとして保持される。なお、走路上位置412として、例えば、予め定めたxy直交座標系における、座標(x、y)を特定する情報が保持される。
【0034】
[同位置レコード決定部]
本実施形態の同位置レコード決定部32は、計測DB41に蓄積されたレコードの中から、走路上位置412が略同じであって、異なる時刻に取得された複数のレコードを同位置レコードとして抽出する。また、後述の高度表作成部33が算出する高度の基準とする位置である基準位置を決定する。
【0035】
同位置レコード決定部32は、計測DB41に新たなレコード(新規レコード)が蓄積されると、計測DB41に既に保持されているレコードの中に、候補レコードがあるか否かを判別する。なお、候補レコードは、新規レコードの走路上位置412と、走路上位置412が同一であり、かつ、新規レコードとは異なる時刻に取得されたレコードである。そして、ある場合、例えば、候補レコードの中で、走路上位置412が、新規レコードの走路上位置412に最も近いレコードを抽出し、新規レコードとともに同位置レコードとする。さらに、同位置レコード決定部32は、これらの2つの同位置レコードのいずれかの走路上位置412を、基準位置とする。
【0036】
なお、異なる時刻とは、例えば、第一の所定時間Th1以上離れた時刻とする。例えば、同位置レコード決定部32は、計測DB41に蓄積されたレコードの中で、新規レコードの取得時刻tより第一の所定時間Th1以上前に取得されたレコードについて、上記判別を行う。第一の所定時間Th1は、予めユーザ等により設定される。
【0037】
また、走路上位置412が同一とは、例えば、2つの走路上位置412間の距離dが、予め定めた閾値ε以下、すなわち、下記の式(3)を満たすものとする。
d=(x(ta)−x(tb))
2+(y(ta)−y(tb))
2<ε ・・・(3)
εは予め定めた0以上の実数とする。また、(x(ta)、y(ta))は、時刻taに取得したレコードの走路上位置412、(x(tb)、y(tb))は、時刻tbに取得したレコードの走路上位置412とする。ここで、ta≧tb+Th1である。
【0038】
また、基準位置として、例えば、積み込み場所、放出場所などを用いてもよい。しかしながら、本実施形態では、これらに限定されない。
【0039】
同位置レコード決定部32による候補レコードの有無の判別は、第二の所定時間Th2以上、計測DB41にレコードが蓄積されてから開始するよう構成してもよい。なお、第二の所定時間Th2は、上記走路を1往復するために必要とされるおおよその時間とする。
【0040】
同位置レコードの有無の判別は、新規レコードが蓄積される毎に行わなくてもよい。例えば、所定数のレコードが計測DB41に蓄積される毎に、行うよう構成してもよい。この場合、計測DB41に蓄積されている全てのレコードの中に、互いに走路上位置412が同一であり、かつ、異なる時刻に取得された一対のレコードがあるか否かを判別する。そのような一対のレコードが複数ある場合は、その中で、互いに走路上位置412が最も位置の近い一対のレコードを、同位置レコードとする。
【0041】
[高度表作成部]
本実施形態の高度表作成部33は、計測DB41に蓄積された各走路上位置412について、気圧の時間変化を補正した推定高度を算出し、高度表42を作成する。なお、高度表42に格納される推定高度は、同位置レコード決定部32が決定した基準位置の高度を0[m]としたときの高度、すなわち、基準位置に対する相対高度である。
【0042】
本実施形態では、まず、同位置レコードとされた2つのレコードの各取得時刻411および各測定気圧413を用い、気圧の時間変化を表す変動関数Pref(t)を決定する。そして、上記式(2)のPrefの代わりに、この変動関数Pref(t)を用いて、計測DB41に蓄積された各走路上位置412の、高度hと基準高度hrefとの差(高低差データΔh)を推定高度として計算する。そして、各走路上位置に推定高度を対応づけて、高度表42を作成する。
【0043】
なお、高度表42に格納するデータは、高低差データΔhに限定されない。例えば、基準高度hrefが既知の場合、その値を用い、高度hを算出し、高度hを推定高度として保持してもよい。この場合、例えば、基準高度hrefは、上記式(1)を用いて算出してもよい。
【0044】
ここで、気圧の時間的変化を表す変動関数Pref(t)の決定手法を説明する。
図4(a)は、計測DB41に蓄積された取得時刻t毎の測定気圧P(t)の値の変化の様子を示すグラフ61である。ここでは、時刻taおよびtbに取得した2つのレコードを同位置レコードとする。また、時刻taの走路上位置412を、前記基準位置とする。P(ta)、P(tb)は、それぞれ、時刻taおよびtbの測定気圧413である。
【0045】
上述のように、時刻taの走路上位置412と、時刻tbの走路上位置412とは、同一である。そして、同一な位置は、同一の高度であるはずである。従って、この2点で気圧が異なるのは、時間(tb−ta)の間の気候の変化によるものと考えられる。
【0046】
高度表作成部33は、まず、この気圧の時間変化を特定する近似式(変動関数)を決定する。ここでは、例えば、
図4(b)に示すように、一次関数で近似する。この場合、基準位置の気圧である基準気圧Prefの、時間tを変数とする変動関数Pref(t)は、以下の式(4)で表される。
Pref(t)=P(ta)+[(P(tb)−P(ta))/(tb−ta)]*(t−ta)
・・・(4)
【0047】
高度表作成部33は、上記式(2)のPrefの代わりに、変動関数Pref(t)を用いた式により、上記計測DB41の各走路上位置412の推定高度を計算する。具体的には、各走路上位置412の取得時刻411を、上記式(4)の時間tとし、当該時刻tの推定高度(h−href)を得る。
【0048】
そして、高度表作成部33は、走路上位置毎の推定高度を、高度表42として保持する。
図3(b)は、本実施形態で得られる高度表42の一例を示す。高度表42は、本図に示すように、走路上位置421毎に、推定高度422が保持される。
【0049】
なお、高度表42のデータは、後述の出力高度算出部34が各位置の高度を算出する際に用いる。従って、高度表42には、少なくとも走路の片道分の走路上位置412の推定高度が格納されていることが望ましい。このため、例えば、少なくとも走路の片道分の走路上位置412のデータが計測DB41に蓄積されてから高度表42を作成することが望ましい。
【0050】
[出力高度算出部]
出力高度算出部34は、高度表作成部33が高度表42を作成した後、位置センサ15から位置データを受け取るごとに、高度表42を参照し、受け取った位置データ(現在位置)の出力高度を算出し、出力する。例えば、現在位置に最も近い走路上位置421に対応付けて登録されている推定高度422を抽出し、出力高度とする。
【0051】
なお、出力高度算出部34は、位置センサ15から直接、位置データを受け取ってもよいし、データ取得部31を介して、位置データを受け取ってもよい。
【0052】
なお、出力高度算出部34は、近傍の複数の走路上位置421の推定高度422を用いて出力高度を算出してもよい。
【0053】
この場合、例えば、まず、現在位置と同一位置の走路上位置421が高度表42に登録されているか否かを判別する。判別は、例えば、上記式(3)を用いて行う。そして、登録されていれば、その走路上位置421に対応づけて登録されている推定高度422を出力高度とする。
【0054】
一方、登録されていない場合、例えば、計測DB41に保持されている走路上位置421の中で、現在位置に最も近い2点の走路上位置421にそれぞれ対応づけられている推定高度422を抽出する。そして、それらに対し、一般的な手法により、距離に基づく重みづけ平均値算出処理などを行い、現在位置の出力高度を算出する。
【0055】
[同位置レコード決定および高度表作成処理]
次に、本実施形態の同位置レコード決定部32および高度表作成部33による同位置レコード決定および高度表作成処理の流れを説明する。
図5は、本実施形態の同処理の処理フローである。
【0056】
同位置レコード決定部32は、予め定めたデータ蓄積期間tzの経過を待つ(ステップS101)。データ蓄積期間tzは、任意に定める。例えば、異なる時刻と認定できる程度の時間、すなわち、上記第一の所定時間Th1とする。あるいは、ダンプトラック10が、走路を往復する程度の時間、すなわち、上記第二の所定時間Th2としてもよい。なお、この間、データ取得部31は、計測DB41へのデータの蓄積を継続して行う。
【0057】
データ蓄積期間tzを経過すると、同位置レコード決定部32は、計測DB41に新規レコードが蓄積される毎に(ステップS102)、計測DB41内に候補レコードがあるか否かを判別する(ステップS103)。なお、候補レコードは、上述のとおり、走路上位置412が新規レコードと同一であって、異なる時刻に取得されたレコードである。判断手法は上述のとおりである。
【0058】
ステップS103において、候補レコードがないと判別された場合、ステップS102に戻り、処理を繰り返す。
【0059】
ステップS103でありと判別された場合、同位置レコード決定部32は、候補レコードの中で、走路上位置412が新規レコードの走路上位置412に最も近いレコードを抽出し、新規レコードとともに同位置レコードとする(ステップS104)。このとき、合わせて、基準位置も決定する。
【0060】
次に、高度表作成部33は、同位置レコードとされた2つのレコードの取得時刻411および測定気圧413を用い、上記手法で基準位置における気圧の時間による変動を特定する変動関数を決定する(ステップS105)。
【0061】
そして、高度表作成部33は、計測DB41に記憶されている各レコードについて、変動関数を用いて気圧補正後の高度として推定高度422を算出する(ステップS106)。
【0062】
そして、高度表作成部33は、各レコードの走路上位置421と推定高度422とを対応づけて、高度表42として保持し(ステップS107)、処理を終了する。
【0063】
[高度算出処理]
次に、本実施形態の出力高度算出部34による出力高度算出処理の流れを説明する。
図6は、本実施形態の高度算出処理の処理フローである。本実施形態の出力高度算出部34は、所定の時間間隔で、位置センサ15から、位置データ(現在位置データ)を取得する(ステップS201)。
【0064】
出力高度算出部34は、現在位置データを取得すると、高度表42が作成されているか否かを判別する(ステップS202)。ここで、高度表42が未作成の場合は、位置データの取得を繰り返す。
【0065】
一方、高度表42が作成されている場合、出力高度算出部34は、高度表42にアクセスし、現在位置データに最も近い位置データ(走路上位置421)を有するレコードを最寄レコードとして抽出する(ステップS203)。最寄レコードは、現在位置データの位置との距離dが最も小さい走路上位置421を含むレコードである。
【0066】
出力高度算出部34は、抽出した最寄レコードの推定高度422を、現在位置の高度(出力高度)として出力し(ステップS204)、処理を終了する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、ダンプトラック10の位置センサ15および気圧センサ17で取得したデータを用い、気圧の時間変化を補正した高度(高低差データ)を算出できる。従って、本実施形態のダンプトラック10は、自車内のシステムだけで、高精度に、自車が走行する走路の高低差データを算出(推定)できる。
【0068】
上述のように、ダンプトラック10に搭載されている省燃費運転支援システムにおいて、燃料消費量を推定するためには、走路の高精度な高低差データが必要不可欠である。従来は、高精度な高低差データを得るためには、高価な運行管理システムや、大掛かりな通信設備を導入する必要があり、大規模な鉱山以外では、非現実的であった。
【0069】
しかしながら、本実施形態によれば、外部システムから既知の高低差データを受け取ることなく、燃料消費計算に必要な走路の高低差データを高精度に推定できる。このため、予め高低差データを用意したり、外部から受け取ったりする必要がない。従って、このようなデータを保持する高価な運行管理システムを導入する必要がない。また、通信設備のない、あるいは、通信環境の悪い作業エリアでも、高い精度で走路の高低差データを推定できる。
【0070】
よって、ダンプトラック10が屋外の広い場所を常に移動して作業を行う、例えば、小規模な鉱山等でも、高精度な高低差データを得ることができる。その結果、本実施形態によれば、ダンプトラック10の作業環境によらず高精度な走路の高低差データを得ることができ、その結果を用いて高精度にダンプトラック10の燃料消費の推移を推定することができる。従って、適切に省燃費運転支援を行うことができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、異なる時刻の略同じ位置の気圧から、気圧の時間変化を算出し、それを用いて各走路上位置の推定高度を算出する。そして、ダンプトラック10が、略同じ走路を往復するという特性を用い、その後は、算出した推定高度を用いて、出力高度を得る。従って、簡易な計算で高速に、気圧の時間変化を補正した高度を得ることができる。
【0072】
なお、本実施形態によれば、ダンプトラック10が走路を1往復すれば、上記変動関数を得ることができる。そして、得られた変動関数を用い、走路の各走路上位置の高度データを得、高度表42を作成することができる。例えば、ダンプトラック10を、走路上を複数回往復させ、この高度表42の作成を、往復する毎に繰り返す。そして、得られた各位置の複数の推定高度に統計的処理を行い、最終的な推定高度とするよう構成してもよい。
【0073】
統計的処理は、例えば、得られた各位置の複数の推定高度の平均値、中央値、最頻値を算出するなどの処理である。このように構成することで、推定高度(高低差データ)の推定精度を、向上させることができる。
【0074】
あるいは、上記実施形態では、一例として、略同じ位置の、異なる2つの時刻における気圧データを用い、変動関数を決定している。しかしながら、変動関数の決定は、これに限定されない。
【0075】
例えば、n往復分のデータを取得し、同じ位置の、異なる2n個の時刻の気圧データを取得し、変動関数を、2n次以下の多項式等で近似してもよい。この場合、係数は、例えば、最小二乗法等で算出する。
【0076】
なお、上述のように、本実施形態では、重量データを用いない。このため、本実施形態では、重量センサ16を備えなくてもよい。そして、重量センサ16を備えない場合は、重量データ414はなくてもよい。
【0077】
<第二の実施形態>
次に、本発明の第二の実施形態を説明する。
【0078】
本実施形態のダンプトラック10は、基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。以下、本実施形態について、第一の実施形態と同様の構成については、説明を省略し、異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0079】
本実施形態では、同位置レコードおよび基準位置を重量データにより決定する。
【0080】
また、本実施形態のデータ取得部31は、位置センサ15が検出した位置データと、気圧センサ17が検出した気圧データと、重量センサ16が取得した重量データとを、所定の時間間隔で取得する。そして、
図3(a)に示すように、重量データ414を取得した時刻(取得時刻)411に対応づけて計測DB41として保持する。
【0081】
本実施形態の同位置レコード決定部32は、上述のように同位置レコードおよび基準位置を、ダンプトラック10の積載物の重量の変化により決定する。
【0082】
上述のように、本実施形態のダンプトラック10は、積み込み場所で積載物を積み込み、放出場所において、積載物を放出することを繰り返すことを想定している。従って、重量が大きく変化するのは、積み込み場所および放出場所である。本実施形態では、ダンプトラック10が、これらのいずれかの場所にいる際に取得した2つのレコードを同位置レコードとし、また、その位置を、基準位置とする。
【0083】
本実施形態の同位置レコード決定部32は、第一の実施形態と同様に、計測DB41に蓄積されたレコードの中から、走路上位置412が略同じであって、異なる時刻に取得された複数のレコードを同位置レコードとして抽出する。また、基準位置を決定する。
【0084】
このとき、本実施形態では、同位置レコード決定部32は、重量データ414を用いて計測DB41内の同位置レコードを特定する。具体的には、直前に取得したレコードの重量データ414の値から重量データ414の値が大きく変化したレコードを特定する。そして、そのようなレコードの中から、走路上位置412が略同じであって、異なる時刻に取得した2つのレコードを抽出し、同位置レコードとする。そして、2つの同位置レコードのうち、いずれかのレコードの走路上位置412を、基準位置とする。
【0085】
本実施形態の同位置レコード決定部32による、同位置レコードおよび基準位置決定処理の流れを、
図7に示す。なお、ここでは、第一の実施形態同様、新規レコードを取得する毎に、同位置レコードの有無を判別する手法を例にあげて説明する。
【0086】
同位置レコード決定部32は、計測DB41に新規レコードが蓄積されると(ステップS301)、重量データ414の変化量が所定以上であるか否かを判別する(ステップS302)。ここでは、新規レコードの重量データ414と、直前に蓄積されたレコードの重量データ414との差を計算し、その絶対値が予め定めた閾値以上であれば、所定以上であると判別する。所定以上でなければ、ステップS301に戻る。
【0087】
そして、同位置レコード決定部32は、変化量が所定以上の場合、新規レコードにフラグを付す(ステップS303)。
【0088】
次に、同位置レコード決定部32は、計測DB41に、既にフラグが付されているレコードがあるか否かを判別する(ステップS304)。なければ、ステップS301に戻る。
【0089】
あれば、同位置レコード決定部32は、既にフラグが付されているレコードの中に、新規レコードの走路上位置412と同一の走路上位置412を有するレコードがあるか否かを判別する(ステップS305)。このとき、同位置レコード決定部32は、上述のように、両レコードの走路上位置412間の距離が予め定めた所定の値ε以下となる場合、同一と判別する。なければ、ステップS301に戻る。
【0090】
ある場合、同位置レコード決定部32は、ステップS305で走路上位置412が同一とされたレコードと、新規レコードとを、同位置レコードとするとともに、新規レコードの位置を、基準位置とし(S306)、処理を終了する。
【0091】
なお、上記処理フローでは、重量データ414の変化量の絶対値で判断し、フラグを付しているが、この手法に限定されない。例えば、重量データ414の増減で異なるフラグを付すよう構成してもよい。
【0092】
例えば、新規レコードの重量データ414が、直前のレコードの重量データ414から、所定以上増加した場合、第一のフラグを付す。一方、所定以上減少した場合、第二のフラグを付す。第一のフラグが付されるレコードは、ダンプトラック10が積み込み場所にいる際に取得されたレコードである。一方、第二のフラグが付されるレコードは、ダンプトラック10が、放出場所にいる際に取得されたレコードである。
【0093】
この場合、ステップS304では、他に同一のフラグが付されているレコードがあるか否かを探索し、あれば、ステップS305の処理を行わずに、得られたレコードの中から同位置レコードを決定する。
【0094】
また、本実施形態においても、同位置レコードおよび基準位置の決定処理は、新規レコードの取得を契機に行わなくてもよい。所定量のレコードが計測DB41に蓄積された際、行うよう構成してもよい。
【0095】
この場合、まず、直前のレコードから重量データ414が所定以上変化したレコード全てにフラグを付す。そして、フラグを付したレコードの中から、走路上位置412が同一であり、かつ、異なる時刻に取得されたレコードの組を抽出し、その中で、互いの距離が最も近いレコードの組を同位置レコードとする。
【0096】
なお、本実施形態において、同位置レコードおよび基準位置を決定した後の処理、すなわち、高度表作成部33による高度表作成処理および出力高度算出部34による高度算出処理は、第一の実施形態と同様である。
【0097】
以上説明したように、本実施形態によれば、第一の実施形態同様、ダンプトラック10は、自車が有するシステムだけで、高精度に、自車が走行する走路の高低差を算出できる。従って、高精度に燃料消費の推移を推定でき、適切に省燃費運転支援を行うことができる。
【0098】
さらに、本実施形態によれば、気圧の変動関数を算出するための同位置レコードを、重量データ414を用いて特定する。従って、第一の実施形態より、さらに、簡単な計算で、精度よく同位置レコードおよび基準位置を得ることができる。
【0099】
なお、上記各実施形態では、高度算出部30を、ダンプトラック10に適用する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、適用する対象は、ダンプトラック10に限定されない。例えば、鉱山等を走行するあらゆる運搬車両に適用可能である。
【0100】
また、上記実施形態は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない様々な変更例は本発明に含まれるものである。