(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6524076
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】ピッチ推進式の乗り物
(51)【国際特許分類】
B62K 17/00 20060101AFI20190527BHJP
B62J 99/00 20090101ALI20190527BHJP
A63C 17/08 20060101ALI20190527BHJP
A63C 17/12 20060101ALI20190527BHJP
B62K 1/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
B62K17/00
B62J99/00 J
A63C17/08
A63C17/12
B62K1/00
【請求項の数】26
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-525962(P2016-525962)
(86)(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公表番号】特表2016-540672(P2016-540672A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】US2014058912
(87)【国際公開番号】WO2015061020
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年4月12日
(31)【優先権主張番号】14/058,937
(32)【優先日】2013年10月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516118693
【氏名又は名称】イクアリア・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】EQUALIA LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144082
【弁理士】
【氏名又は名称】林田 久美子
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】ビグラー・ロバート・エー
【審査官】
稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−286323(JP,A)
【文献】
特開2007−176455(JP,A)
【文献】
特開2008−87674(JP,A)
【文献】
特表平7−505323(JP,A)
【文献】
特開平10−23613(JP,A)
【文献】
特開2010−188998(JP,A)
【文献】
特開2009−126295(JP,A)
【文献】
特開平1−204811(JP,A)
【文献】
特開2010−167992(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0093256(US,A1)
【文献】
特開2011−57111(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0254789(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 17/08
17/12
B60G 1/00−99/00
B62K 1/00
17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザを運ぶ乗り物であって、
前記ユーザを支えるボードと、
前記ボードに連結された単一の地面接触部材と、
前記地面接触部材に接続されたモータ付き駆動アセンブリと、
前記駆動アセンブリに接続された少なくとも1つのセンサと、
を備え、前記駆動アセンブリが、前記センサによって検出される、前記ボードよりも下
に位置する表面からの、前記ボードの少なくとも1つの距離に基づいて、前記表面に対す
る前記ボードのピッチを算出し、このピッチに対応する前記地面接触部材の予め定められ
た速度が得られるように前記地面接触部材に力を加えることによって前記地面接触部材の
速度を調節する、乗り物。
【請求項2】
請求項1に記載の乗り物において、前記ボードが、前後平面の寸法に沿って長く、この前後平面は、当該乗り物の前進走行方向及び後退走行方向と整合する、乗り物。
【請求項3】
請求項2に記載の乗り物において、前記センサのうち、少なくとも1つの前側のセンサが、前記ボードの長寸の前記前後表面のうちの前端部に配置されており、前記センサのうち、少なくとも1つの後側のセンサが、前記ボードの長寸の前記前後表面のうちの後端部に配置されている、乗り物。
【請求項4】
請求項1に記載の乗り物において、前記ピッチは、前記駆動アセンブリが前記表面の凹凸に合わせて調節を行うように、前記少なくとも1つの距離と2つ以上の前記距離の平均との差を求めることによって算出される、乗り物。
【請求項5】
請求項2に記載の乗り物において、前記地面接触部材によってバランスが取られた状態の前記ボードは、前記モータ付き駆動アセンブリが動作していないときには前記前後平面に沿ったチッピングに関して不安定であり、かつ、前記モータ付き駆動アセンブリは、当該モータ付き駆動アセンブリが動作しているときに前記前後平面に沿ったチッピングに関して自動的に前記ボードのバランスを取るように構成されている、乗り物。
【請求項6】
請求項1に記載の乗り物において、さらに、 前記駆動アセンブリに動作可能に接続された乗り物ロックモジュール、 を備え、前記乗り物ロックモジュールは、ロックされているときには前記駆動アセンブリの動作を行えないようにする、乗り物。
【請求項7】
請求項1に記載の乗り物において、前記地面接触部材が、ホイール、ボール、トレッド、および途切れのあるホイールにおける円弧状の部位からなる群のうちの、一つを含む、乗り物。
【請求項8】
請求項1に記載の乗り物において、さらに、
前記ボードに連結された少なくとも1つのロック用の留め具、
を備え、前記留め具をロックしたりまたはロック解除したりすることにより、前記地面接触部材は、前記留め具を介して選択的に前記ボードに連結したり前記ボードから外れたりすることが可能である、乗り物。
【請求項9】
請求項1に記載の乗り物において、さらに、
前記ボードの上部に連結された少なくとも1つのグリップ、
を備え、前記グリップは、ユーザが足で前記ボードを持ち上げるように前記ボードの上方に突出している、乗り物。
【請求項10】
請求項1に記載の乗り物において、前記センサが、音響センサであり、かつ、前記駆動アセンブリが、前記地面接触部材を駆動する直接駆動モータを含む、乗り物。
【請求項11】
請求項1に記載の乗り物において、前記駆動アセンブリが、前記地面接触部材の速度の各々の調節を、ある時間の間、遅らせて、各々の調節ごとの前記ある時間の長さは、前記地面接触部材が、調節のベースになっている表面上のポイントと接触する、算出される時間に基づいている、乗り物。
【請求項12】
請求項1に記載の乗り物において、さらに、 前記地面接触部材に接続された少なくとも1つの乗り手センサ、 を備え、前記乗り手センサは、当該乗り手センサによって検出される、前記地面接触部材による前記ボードへの力に基づいて、前記ボード上にユーザ又はペイロードが存在しているときに感知する、乗り物。
【請求項13】
乗り物上に位置を占めることを含む、ユーザを運ぶ方法であって、
前記乗り物が、 前記ユーザを支えるボードと、 前記ボードに連結された単一の地面接触部材と、 前記地面接触部材に接続されたモータ付き駆動アセンブリと、 前記駆動アセンブリに接続された少なくとも1つのセンサと、を備え、
前記駆動アセンブリが、前記センサによって検出される、当該ボードよりも下に位置する表面からの前記ボードの少なくとも1つの距離に基づいて、前記地面接触部材の速度を調節する、過程と、 前記ボードを前記表面に対してチルト動作させることによって前記乗り物を動作させる過程と、を含み、
前記地面接触部材の速度の調節が、前記距離を用いて前記表面に対する前記ボードのピッチを算出し、このピッチに対応する前記地面接触部材の予め定められた速度が得られるように前記地面接触部材に力を加えることによって行う、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記ボードが、前後平面の寸法に沿って長く、この前後平面は、前記乗り物の前進走行方向及び後退走行方向と整合する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記センサのうち、少なくとも1つの前側のセンサが、前記ボードの前記前後表面の長寸のうちの前端部に配置されており、前記センサのうち、少なくとも1つの後側のセンサが、前記ボードの前記前後表面の長寸のうちの後端部に配置されている、方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法において、前記ピッチは、前記駆動アセンブリが前記表面の凹凸に合わせて調節を行うように、前記少なくとも1つの距離と2つ以上の前記距離の平均との差を求めることにより算出される、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法において、前記地面接触部材によってバランスが取られた状態の前記ボードは、前記モータ付き駆動アセンブリが動作していないときには前記前後平面に沿ったチッピングに関して不安定であり、かつ、前記モータ付き駆動アセンブリは、当該モータ付き駆動アセンブリが動作しているときに前記前後平面に沿ったチッピングに関して自動的に前記ボードのバランスを取るように構成されている、方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法において、前記乗り物が、さらに、
前記駆動アセンブリに動作可能に接続された乗り物ロックモジュール、
を備え、前記乗り物ロックモジュールは、ロックされているときには前記駆動アセンブリの動作を行えないようにする、方法。
【請求項19】
請求項13に記載の方法において、前記地面接触部材が、ホイール、ボール、トレッド、および途切れのあるホイールにおける円弧状の部位からなる群のうちの、一つを含む、方法。
【請求項20】
請求項13に記載の方法において、さらに、 前記ボードに連結された少なくとも1つのロック用の留め具をロックしたり、ロックを解除したりすることにより、前記地面接触部材を、前記留め具を介して選択的に前記ボードに連結したり前記ボードから外したりする過程、を含む、方法。
【請求項21】
請求項13に記載の方法において、前記乗り物が、さらに、
前記ボードの上部に連結された少なくとも1つのグリップ、
を備え、前記少なくとも1つのグリップは、ユーザが足で前記ボードを持ち上げるように前記ボードの上方に突出している、方法。
【請求項22】
請求項13に記載の方法において、前記センサが、音響センサであり、かつ、前記駆動アセンブリが、前記地面接触部材を駆動する直接駆動モータを含む、方法。
【請求項23】
請求項13に記載の方法において、前記駆動アセンブリが、前記地面接触部材の速度の各々の調節を、ある時間の間、遅らせて、かつ、各々の調節ごとの前記ある時間の長さは、前記地面接触部材が、調節のベースになっている表面上のポイントと接触する、算出される時間に基づいている、方法。
【請求項24】
請求項13に記載の方法において、前記乗り物が、さらに、
前記地面接触部材に接続された少なくとも1つの乗り手センサ、
を備え、前記乗り手センサは、当該乗り手センサによって検出される、前記地面接触部材による前記ボードへの力に基づいて、前記ボード上にユーザ又はペイロードが存在しているときに感知する、乗り物。
【請求項25】
ユーザを運ぶ乗り物であって、
前後平面上の寸法に沿って長く、この前後平面は、当該乗り物の前進走行方向及び後退走行方向と整合している、前記ユーザを支える長寸のボードと、
前記ボードに連結された単一の地面接触部材と、
前記ボードに接続された少なくとも1つのセンサと、
前記地面接触部材及び前記センサに動作可能に接続されたモータ付き駆動アセンブリであって、前記センサによって検出される、前記ボードよりも下に位置する表面からの少なくとも1つの前記ボードの距離によって示唆される前記ボードのピッチに基づいて、前記地面接触部材の速度を調節する、モータ付き駆動アセンブリと、を備える乗り物。
【請求項26】
請求項25に記載の乗り物において、前記ピッチは、前記駆動アセンブリによって自動的に安定化されているときの前記地面接触部材周りの前記ボードの角度からの、ズレの度合いとして定められる、乗り物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物の分野に関する。詳細には、本発明は、ピッチ感知ベース(pitch-sense based)・モーションの乗り物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
人間を運ぶ商用の乗り物や娯楽用の乗り物は、数多くの種類のものが知られている。これらの乗り物の大半は、その乗り物のユーザ及びそれ以外のバランスを取って支持する3つ又は4つのホイールを組み込むことによって、チッピング(tipping:傾き)に関して安定となるように設計されている。例えば、スケートボードは、ボード及びユーザのための安定した土台を全方向において形成するように配置された4つのホイールを用いる、周知の乗り物である。しかし、少なくとも部分的に不安定な乗り物に乗るという挑戦を楽しむユーザも多い。そのような部分的に不安定な乗り物の一例として、スクータが挙げられる。スクータは、ホイール同士の並び方向においては安定であるが、その並びと直交する横方向には傾動し得る。同様に、1つのホイールを用いる一輪車は、全方向のチッピングに関して不安定である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、セグウェイ(Segwey)等といった、バランス補助システムを用いた乗り物が開発されている。このバランス補助システムは、当該システムなしでは不安定となる乗り物の安定化を支援するだけでなく、その乗り物の傾動(チッピング)を利用することによって当該乗り物の移動を制御することができる。しかし、このような安定化・運動制御は、平らな面では良好に機能するものの、上記のような乗り物に乗っている際にしばしば遭遇する平坦でない面では、その平坦でない面上で満足に機能したりその平坦でない面に満足に適応したりすることができない。しかも、これらの乗り物は、設計が複雑かつ高価となり得る。そのため、故障の可能性や、修理コストや、製造総コストが増加する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ユーザを運ぶ乗り物であって、ユーザを支えるボードと、ボードに連結された地面接触部材(ground-contacting member)と、地面接触部材に接続されたモータ付き駆動アセンブリと、駆動アセンブリに接続された少なくとも1つのセンサと、を備える乗り物(Vehicle)を提供する。動作時において、駆動アセンブリは、センサによって検出される、ボードよりも下に位置する表面からの少なくとも1つのボードの距離に基づいて、地面接触部材の速度を調節する。これにより、このシステムは、上り時にも下り時にも平坦でない面の走行時にも、ボードを過度に傾動させる必要なく、時には不可能なまでの傾動(チルト;tilting)を必要とせずに、所望の速度を維持することができる。
【0005】
本願の一態様は、ユーザを運ぶ乗り物に関する。この乗り物は、前記ユーザを支えるボードと、前記ボードに連結された地面接触部材と、前記地面接触部材に接続されたモータ付き駆動アセンブリと、前記駆動アセンブリに接続された少なくとも1つのセンサと、を備え、前記駆動アセンブリが、前記センサによって検出される、ボードよりも下に位置する表面からの少なくとも1つのボードの距離に基づいて、前記地面接触部材の速度を調節する。一部の実施形態において、前記ボードは、前後平面上の寸法に沿って長く、この前後平面は、前記乗り物の前進走行方向及び後退走行方向と整合する。一部の実施形態において、前記センサのうち、少なくとも1つの前側のセンサは、前記ボードの長寸の前記前後平面のうちの前端部に配置されており、前記センサのうち、少なくとも1つの後側のセンサは、前記ボードの長寸の前記前後表面のうちの後端部に配置されている。一部の実施形態において、前記駆動アセンブリは、前記少なくとも1つの距離に基づいた前記地面接触部材の速度の調節を、前記距離を用いて前記表面に対する前記ボードのピッチを算出し、このピッチに対応する前記地面接触部材の予め定められた速度が得られるように前記地面接触部材に力を加えることによって行う。一部の実施形態において、前記ピッチは、前記駆動アセンブリが前記表面の凹凸に合わせて調節を行うように、少なくとも1つの距離と2つ以上の前記距離の平均との差異を求めることによって算出される。一部の実施形態において、前記地面接触部材によってバランスが取られた状態の前記ボードは、前記モータ付き駆動アセンブリが動作していないときには前記前後平面に沿ったチッピングに関して不安定であり、かつ、前記モータ付き駆動アセンブリは、当該モータ付き駆動アセンブリが動作しているときに前記前後平面に沿ったチッピングに関して自動的に前記ボードのバランスを取るように構成されている。前記乗り物は、さらに、前記駆動アセンブリに動作可能に接続された乗り物ロックモジュール、を備え得て、前記乗り物ロックモジュールは、ロックされているときには前記駆動アセンブリの動作を行えないようにする。一部の実施形態において、前記地面接触部材は、ホイール、ボール、トレッド、および途切れのあるホイール(discontinuous wheel)における円弧状の部位(arcuate section)からなる群のうちの、一つを含む。
前記乗り物は、さらに、前記ボードに連結された少なくとも1つのロック用の留め具、
(locking fastener)を備え得て、前記留め具をロックしたり解除したりすることにより、前記地面接触部材は、前記留め具を介して選択的に前記ボードに連結したり前記ボードから外れたりすることが可能である。前記乗り物は、さらに、前記ボードの上部に連結された少なくとも1つのグリップ、を備え得て、前記少なくとも1つのグリップは、ユーザが足で前記ボードを持ち上げるように前記ボードの上方に突出している。一部の実施形態において、前記センサは、音響センサであり、かつ、前記駆動アセンブリは、前記地面接触部材を駆動する直接駆動式モータを含む。一部の実施形態において、前記駆動アセンブリが、前記地面接触部材の速度の各々の調節を、ある時間の間遅らせて、各々の調節ごとのある時間の長さは、前記地面接触部材が、調節のベースになっている表面上のポイントと接触する計算された時間に基づいている。一部の実施形態において、前記乗り物は、さらに、前記地面接触部材に接続された少なくとも1つの乗り手センサ、を備え、前記乗り手センサは、当該乗り手センサによって検出される、前記地面接触部材による前記ボードへの力に基づいて、前記ボード上にユーザ又はペイロード(payload)が存在しているときに感知する。
【0006】
本願の他の態様は、ユーザを運ぶ方法に関する。この方法は、乗り物上のある位置を占める(assuming a position)過程を含み、前記乗り物が、前記ユーザを支えるボードと、前記ボードに連結された単一の地面接触部材と、前記地面接触部材に接続されたモータ付き駆動アセンブリと、前記駆動アセンブリに接続された少なくとも1つのセンサと、を備え、前記駆動アセンブリが、前記センサによって検出される、ボードよりも下に位置する表面からの少なくとも1つの前記ボードの距離に基づいて、前記地面接触部材の速度を調節する、過程と、前記ボードを前記表面に対してチルト動作(tilt)させることによって前記乗り物を動作させる過程と、を含む。一部の実施形態において、前記ボードは、前後平面上の寸法に沿って長く、この前後平面は、前記乗り物の前進走行方向及び後退走行方向と整合する。
一部の実施形態において、前記センサのうち、少なくとも1つの前側のセンサは、前記ボードの前記長寸のうちの前端部に配置されており、前記センサのうち、少なくとも1つの後側のセンサは、前記ボードの前記長寸のうちの後端部に配置されている。一部の実施形態において、前記駆動アセンブリは、前記少なくとも1つの距離に基づいた前記地面接触部材の速度の調節を、前記距離を用いて前記表面に対する前記ボードのピッチを算出し、このピッチに対応する前記地面接触部材の予め定められた速度が得られるように前記地面接触部材に力を加えることによって行う。一部の実施形態において、前記ピッチは、前記駆動アセンブリが前記表面の凹凸に合わせて調節を行うように、少なくとも1つの距離と2つ以上の前記距離の平均との差異を求めることによって算出される。一部の実施形態において、前記地面接触部材によってバランスが取られた状態の前記ボードは、前記モータ付き駆動アセンブリが動作していないときには前記前後平面に沿った傾動に関して不安定であり、かつ、前記モータ付き駆動アセンブリは、当該モータ付き駆動アセンブリが動作しているときに前記前後平面に沿った傾動に関して自動的に前記ボードのバランスを取るように構成されている。一部の実施形態において、前記乗り物は、さらに、前記駆動アセンブリに動作可能に接続された乗り物ロックモジュール、を備え、前記乗り物ロックモジュールは、ロックされているときには前記駆動アセンブリの動作を行えないようにする。一部の実施形態において、前記地面接触部材は、ホイール、ボール、トレッド、および途切れのあるホイールにおける円弧状の部位からなる群のうちの、一つを含む。前記方法は、さらに、前記ボードに連結された少なくとも1つのロック用の留め具をロックしたりロックを解除したりすることにより、前記地面接触部材を、前記留め具を介して選択的に前記ボードに連結したり前記ボードから外したりする過程、を含み得る。一部の実施形態において、前記乗り物は、さらに、前記ボードの上部に連結された少なくとも1つのグリップ、を備え、前記少なくとも1つのグリップは、ユーザが足で前記ボードを持ち上げるように前記ボードの上方に突出している。一部の実施形態において、前記センサは、音響センサであり、かつ、前記駆動アセンブリは、前記地面接触部材を駆動する直接駆動式モータを含む。一部の実施形態において、前記駆動アセンブリは、前記地面接触部材の速度の各々の調節を、ある時間の間遅らせて、各々の調節ごとの前記ある時間の長さは、前記地面接触部材が、調節のベースになっている表面上のポイントと接触する、計算された時間に基づいている。一部の実施形態において、前記乗り物は、さらに、前記地面接触部材に接続された少なくとも1つの乗り手センサ、を備え、前記乗り手センサは、当該乗り手センサによって検出される、前記地面接触部材による前記ボードへの力に基づいて、前記ボード上にユーザ又はペイロードが存在しているときに感知する。
【0007】
本願のさらなる他の態様は、ユーザを運ぶ乗り物に関する。この乗り物は、前記ユーザを支える長寸のボードであって、前後平面上の寸法に沿って長く、この前後平面は、前記乗り物の前進走行方向及び後退走行方向と整合する、ボードと、前記ボードに連結された単一の地面接触部材と、前記ボードに接続された少なくとも1つのセンサと、前記地面接触部材及び前記センサに動作可能に接続されたモータ付き駆動アセンブリであって、前記センサによって検出される、ボードよりも下に位置する表面からの少なくとも1つのボードの距離によって示唆される前記ボードのピッチに基づいて、前記地面接触部材の速度を調節する、モータ付き駆動アセンブリと、を備え、前記モータ付き駆動アセンブリは、前記ボードを、前記表面と前記ボードの前端部との間および前記表面と前記ボードの後端部との間の所望の距離が維持されるように自動的に前記地面接触部材周りで安定化させ、前記所望の距離は、前記ボードの前記前端部と前記表面との間および前記ボードの前記後端部と前記表面との間の検出される現在の平均距離として動的に求められる。一部の実施形態において、前記ピッチは、前記駆動アセンブリによって自動的に安定化されているときの前記ボードの前記地面接触部材周りの角度からの、ズレの度合いとして定められる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】一部の実施形態におけるピッチ推進式の乗り物の側面図である。
【
図1B】一部の実施形態におけるピッチ推進式の乗り物の平面斜視図である。
【
図1C】一部の実施形態におけるピッチ推進式の乗り物の底面斜視図である。
【
図1D】一部の実施形態におけるピッチ推進式の乗り物の平面図である。
【
図1E】一部の実施形態におけるピッチ推進式の乗り物の底面図である。
【
図2】一部の実施形態におけるコントローラの一例を示すブロック図である。
【
図3】一部の実施形態におけるユーザを運ぶ方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ユーザを支えるボードと、ボードに連結された地面接触部材と、地面接触部材に接続されたモータ付き駆動アセンブリと、駆動アセンブリに接続された少なくとも1つのセンサと、を備えるピッチ推進式の乗り物の、システム、装置および方法の実施形態について説明する。動作時において、駆動アセンブリは、センサによって検出される、ボードよりも下に位置する表面からの少なくとも1つのボード距離に基づいて、地面接触部材の速度を調節する。これにより、この乗り物は、ピッチ/速度関係が重力に対して維持できなくなる上り坂、下り坂又は平坦でない面を走行しているときに、ピッチ/速度関係を変化させることができるという利点を奏する。本明細書で用いる「地面」は、大地、床、または乗り物100が走行可能な他のあらゆる表面であり得る。
【0010】
図1A〜
図1Eには、一部の実施形態におけるピッチ推進式の乗り物100が示されている。
図1A〜
図1Eに示されているように、乗り物100は、プラットホーム又はボード102、ガード103、地面接触部材104、駆動アセンブリ106(106a〜106g)、少なくとも1つのグリップ108、および少なくとも1つのスクレーパ109を備えており、これらの構成要素は、いずれも動作可能に互いに連結している。変形例として、これらの構成要素のうちの少なくとも1つが省略されてもよい。バランスが取れているときに地面接触部材104がボード102を保持/支持することができると共にボード102が少なくとも1人の乗り手を地面よりも上の位置に支持することができるように、ボード102は、剛体であり且つ地面接触部材104に取外し可能に連結されるものとされ得る。一部の実施形態において、ボード102は、地面接触部材104および/または駆動アセンブリ106(106a〜106g)のうちの一部もしくは全部をそのボード102に取外し可能に連結する、部材留め具アセンブリ(member fastener assembly)105を有する。この構成によれば、部材留め具105をロックしたりロック解除したりすることにより、地面接触部材104を、選択的にボード102から切り離したりボード102に連結したりすることが可能となる。部材留め具105のこのロック/ロック解除機構は、キーロック、スナップフィット連結、ねじ回し止め/外し、あるいは、地面接触部材104および/または駆動アセンブリ106(106a〜106g)のうちの一部もしくは全部をボード102に対する係止位置に保持することができる他種の留め具であり得る。これにより、乗り物100は、部材留め具105を用いてボード102および/または地面接触部材104を容易に交換したり修理したりすることができるという利点を奏する。
【0011】
図1Aに示されているように、ガード103は、ボード102を通り抜けて突出する地面接触部材104の上部から乗り手を護る。この構成は、乗り手が地面接触部材104を踏む又は地面接触部材104に触れることによって負傷するのを防ぐという利点を奏する。図面では、ガード103がボード102の上部を通り抜けて突出する地面接触部材104の側面の一部しか覆っていないが、地面接触部材104のうちのガード103によって覆われる部分を、これよりも多く又は少なく(例えば、全部に)設定するようにしてもよい。
図1Aに示されているように、2つのスクレーパ109が、地面接触部材104の下端部に隣接するようにおよび/または地面接触部材104のこの下端部を取り囲むように、地面接触部材104の両側に配置されている。これにより、スクレーパ109は、地面接触部材104とボード102との間から石などの破片が乗り物100に侵入しないように、乗り物100を保護することができる。具体的には、スクレーパ109は、地面接触部材104とボード102の下側との間の隙間を塞ぐように寸法決めされ得て、および/または、そのような隙間から破片が乗り物100に侵入するのを妨げるように地面接触部材104に可能な限り近づけて配置され得る。これと同様にガード103および/またはグリップ108を、ボード102の上側でこのボード102と地面接触部材104との間の隙間から小片物が乗り物100に侵入するのを妨げるようにボード102の上部に配置することも考えられる。また、使用するスクレーパ109の数を1つ又は3つ以上とすることも考えられる。
【0012】
ボード102は、乗り手の足を受ける/支えるための、厚みならびに、幅広のおよび/または実質的に平坦な上面/下面を有するものとされ得る。一部の実施形態において、ボード102は、スケートボードのボードのように、前後方向に長寸である楕円形状の上面を有する。具体的には、この長寸は、スケートボードに乗るときのように乗り手が走行方向の横からボード102に乗ることができるように、地面接触部材104の向きと実質的に合致するものとされ得る。変形例として、ボード102の上面は、実質的に円形(円状)、実質的に卵形(卵状)、実質的に長方形(長方形状)、実質的に正方形(正方形状)、または他の形状とされてもよい。
図1A〜
図1Eに示されているように、ボード102は、乗り手にとってより良好な制御が可能となるように、かつ、乗り手の足がボード102から滑り落ちないように、前端部および後端部で上方に曲がるものとされ得る。変形例として、ボード102は、平坦であるか、あるいは、一方又は両方の端部で上方又は下方に同じ角度又は異なる角度で曲がるものとされてもよい。一部の実施形態において、ボード102は、駆動アセンブリ106および/またはグリップ108および/または地面接触部材104の一部もしくは全部を収容し保護することができるように、少なくとも部分的に中空とされる。変形例として、ボード102は、中実なものとされ得る。
図1Bおよび
図1Dに示されているように、ボード102は、乗り手の足とボード102の表面とのトラクションを向上するように、テクスチャー加工された表面112を有するものとしたり、および/またはボード102の上面に連結されたテクスチャー加工されたパッド112を含むものとしたり、され得る。
【0013】
図1A〜
図1Eに示されているように、乗り物100は、ボード102の前端部および後端部において部材留め具105の近傍に配置された、2つのグリップ108を備える。変形例として、グリップ108の数はどのようなものであってもよく、かつ、ボード102のうちのどのような部位に配置されてもよい。例えば、ボード102は、このボード102に切離し可能に取り付けられる理想的なグリップの数及び位置をユーザが選択することができるように、1つ以上のグリップ108と解除可能に連結するように構成された複数の連結位置(カップリング位置)を有するものとされ得る。これに加えて、あるいは、これに代えて、これらの連結位置は、各々の連結位置(および/またはグリップ108)ごとにユーザがグリップの位置をその連結位置によって可能とされる広範囲の位置から調節することができるように、調節可能なものとされ得る。上記のような構成により、ボード102およびグリップ108は、ユーザがグリップ108の幅および/または向きおよび/または数および/または他の特性を、足で乗り物100を最も良好にグリップするように調節することを可能にするという利点を奏する。同様に、ボード102上の少なくとも1つのグリップ108を、異なるサイズ、色、形状および他の特性を有するグリップ108と必要に応じて交換することも可能となる。一部の実施形態において、少なくとも1つのグリップ108は、
図1A〜
図1Eに示されているように、ユーザが足で当該グリップ108に掴まる能力を高めるように全体的または部分的に表面加工されている。変形例として、グリップ108は省略されてもよい。
【0014】
図1A〜
図1Eに示されているように、地面接触部材104は、単一のホイールを含むものとされ得る。一部の実施形態において、地面接触部材は、1.5インチ(3.81cm)以下やボード102の幅の1/5以下等といった小さい幅を有する、1つ又は複数のホイールである。この構成によれば、ボード102およびホイール104を左側又は右側に傾動(チルト)させることにより、乗り物100をより容易に旋回させることが可能となる。また、地面接触部材104が前述したようにボード102に取外し可能に連結されたものであると、地面接触部材104のバランス特性および旋回特性(したがって、乗り物100のバランス特性および旋回特性)を調節するために、異なる幅および/または異なる他の寸法を有する地面接触部材104と必要に応じて入れ替えることも可能である。変形例として、地面接触部材104は、ホイール、ボール、ホイール又はボールにおける円弧状(arcuate)の部位、ホイールの集まり、トラックの集まり、トレッドの集まり、当該技術分野において周知である他種の地面接触部材の集まり、あるいはこれらの組合せを含む。また、図面には地面接触部材104が1つしか示されていないが、地面接触部材104を複数とすることも考えられる。一部の実施形態において、地面接触部材104は、駆動アセンブリ106によって回転されるおよび/またはその他の駆動がなされるように駆動アセンブリ106に動作可能に接続するための複数の溝を有する。一部の実施形態において、地面接触部材104は、ボード102に対してオフセンター(off-center)している。この構成によれば、ボード102を地面により近づけた状態で、このボード102を地面接触部材104によって地面よりも上の位置で支持することが可能となる。上記の構成に代えて、あるいは、上記の構成に加えて、アクスル[ボード102は、アクスルを中心としている(centered about the axle)]および/または当該技術分野において周知である他の機構のような、他のパワー伝達機構を用いることが可能である。
【0015】
図1A〜
図1Eに示されているように、駆動アセンブリ106は、少なくとも1つのモータ106aおよび/または少なくとも1つのバッテリ106bおよび/または少なくとも1つのコントローラ106cおよび/または少なくとも1つの乗り手センサ106dおよび/または少なくとも1つの地面センサ106eおよび/または少なくとも1つのユーザディスプレイ106fおよび/または少なくとも1つの安全エレメント106gを含み、これらの構成要素は、乗り物100を動作させるようにいずれも動作可能に互いに接続している。変形例として、駆動アセンブリ106は、より多くの種類もしくはより少ない種類の構成要素を含み、および/または、各種類の構成要素の数をより多くもしくはより少なく含む。
図1A〜
図1Eでは図中の特定の位置で示されているが、駆動アセンブリ106のうちの少なくとも1つの構成要素を、ボード102上の又はボード102内のどのような箇所に配置してもよい。例えば、一部の実施形態では、ユーザディスプレイ106fを1つだけにしてもよいし、あるいは、ユーザディスプレイ106f自体を省略してもよい。駆動アセンブリ106は、ボード102によって収容されている。この構成によれば、ボード102が、駆動アセンブリ106を損傷から護ることが可能となる。変形例として、駆動アセンブリ106のうちの少なくとも1つの構成要素が、全体的または部分的に露出したものとされてもよい。
図1Cおよび
図1Eを参照すると、乗り物100は、モータ106aおよび/またはバッテリ106bおよび/またはコントローラ106cおよび/または乗り手センサ106dおよび/または地面センサ106eおよび/またはユーザディスプレイ106fおよび/または安全エレメント106gを限られた数だけ含んでいるが、これらの構成要素のうちの少なくとも1種類を省略することも含め、各種類の構成要素の数をより多くまたはより少なくすることも考えられる。
【0016】
少なくとも1つのモータ106aは、地面接触部材104を回転させることによって乗り物100を安定化させて且つ当該乗り物100を移動させるように、地面接触部材104に動作可能におよび/または機械的に接続されている。いくつかの実施形態において、モータ106aは、当該モータ106aの運動/パワーを地面接触部材104に伝えるように地面接触部材104内の複数の溝に係合又はカップルしている。例えば、少なくとも1つのモータ106aは、コントローラ106cの制御に従って地面接触部材104を回転/作動させるように地面接触部材104の溝に機械的に直接接続する、電気式および/または直接駆動式モータ(例えば、ギヤボックス等の減速なしで部材に接続する直接駆動機構を有するモータ)とされてもよい。これによりこのような実施形態において、乗り物100は、途中での動力損失がないことによる効率の向上、部品の点数減少/部品の簡素化による騒音の軽減および長寿命化、低回転数(毎分回転数)域での高トルク、ならびに機械的なガタ(バックラッシ)、ヒステリシスおよび弾性を排除することによる高速/高精度な位置決めを達成するという利点を奏する。変形例として、少なくとも1つのモータ106aは、燃焼モータ、油圧モータ、直接駆動式又は間接駆動式の他種のモータ等といった、非直接駆動式および/または電気式のモータとされてもよい。
【0017】
少なくとも1つのバッテリ106bは、モータ106aおよび/またはコントローラ106cおよび/または乗り手センサ106dおよび/または地面センサ106eおよび/またはユーザディスプレイ106fおよび/または安全エレメント106gに接続されて電力を供給し得る。一部の実施形態において、バッテリ106bは、乗り物100に電力を供給する再充電可能なバッテリである。一部の実施形態において、乗り物100は、電源出力等の外部の電力源から電力を受け取るポートまたはプラグを備える。変形例(一部の実施形態)として、乗り物100は、少なくとも1つのバッテリ106bを再充電することが可能な少なくとも1つのソーラーアレイを備えるものであってもよい。変形例として、バッテリは、定期的な交換が必要である再充電不能なものとされてもよい。一部の実施形態において、バッテリ106bは、ボード102内において地面接触部材104を中心としてモータ106aの重量と釣り合うように、ボード102内においてそのモータ106aと向かい合わせで配置される。変形例として、バッテリ106bは、ボード102上の又はボード102内のどのような箇所に配置されてもよい。
【0018】
乗り手センサ106dは、ボード102上にユーザ(又は総重量、ペイロード)が存在しているときに感知することが可能なように、地面接触部材104および/またはボード102に接続され得る。例えば、少なくとも1つの乗り手センサ106dは、乗り手の足又は他の乗車荷重がボード102の表面上に存在しているときに感知するように、ボード102の上面に配置され得る。変形例として、乗り手センサ106dは、乗り物100における他の箇所に配置されてもよい。例えば、少なくとも1つの乗り手センサ106dは、ボード102上のユーザの重量によってボード102を介して地面接触部材104に加わる力を測定するように、ボード102と地面接触部材104との連結ポイント(例えば、部材留め具105)に配置され得る。一部の実施形態において、乗り手センサ106dは、抵抗センサ、力センサ、音響センサ、視覚センサ、静電容量センサ、または当該技術分野において周知である他種のセンサを含む。力センサは、ボード102および/または地面接触部材104におけるある地点での重量または力を測定するものとされ得て、力の測定値が予め定められた閾値を超えるとユーザ又は乗車荷重が存在していると判断される。音響センサ(例えば、ソナーセンサ)は、音響信号を出力し、かつ、当該センサによる信号入力のエコーに基づいてボード102上にユーザ又は乗車荷重が存在しているか否かを判断するものとされ得る。同様に、視覚センサ(例えば、赤外線センサ)は、視覚信号を出力し(あるいは、単純に外部の視覚信号を利用し)、かつ、測定された入力光信号に基づいてボード102上にユーザ又はペイロード(乗車荷重)が存在しているか否かを判断するものとされ得る。また、静電容量センサは、ボード102に連結されたエレメント間の静電容量の変化を検出するものとされ得て、それらエレメント間の静電容量が予め定められた閾値を超えるとユーザ又はペイロード(乗車荷重)が存在していると判断される。
【0019】
地面センサ106eは、コントローラ106cの入力に基づいて当該コントローラ106cに信号を送信するように、コントローラ106cに動作可能に(例えば、電気的に)接続されている。
図1Cおよび
図1Eに示されているように、地面センサ106eは、ボード102の下部において地面接触部材104のどちらかまたは両方の側(前側及び後側)の端部に位置すると共にその内部に部分的に収容されるものであり得る。この構成によれば、地面センサ106eが、ボード102の両端部での当該ボード102と地面との間の距離を測定することが可能となる。詳しくはコントローラ106cに関する後述の説明の中で述べるが、これによりコントローラ106cは、それらの測定された距離(および地面接触部材104からの地面センサ106eの予め設定された距離)に基づいて、地面に対するボード102のピッチを決定することが可能となる。変形例として、地面センサ106eは、ボード102におけるその他の部位に配置されてもよい。一部の実施形態において、地面センサ106eは、ボード102の片方の端部(前端部又は後端部)のみに配置される。
【0020】
地面センサ106eは、音響信号を出力し当該センサ106eが受信するその音響信号のエコー又は反射に基づいて当該センサと地面又は別の物体との間の距離を求める、音響センサ(例えば、ソナーベースのセンサ)であり得る。変形例として、地面センサ106eは、例えば光信号(例えば、赤外線信号)を出力し当該センサ106eが受信するその光信号の反射に基づいて当該センサと地面又は別の物体との間の距離を求める、光センサであり得る。変形例として、地面センサ106eは、音響センサ、光センサ、電波センサ、力センサ、圧力センサ、あるいはこれらの組合せを含むものであってもよい。
【0021】
ユーザディスプレイ106fは、コントローラ106cから表示(ディスプレイ)指令を受信するように、コントローラ106cに動作可能に(例えば、電気的に)接続されている。この構成によれば、ユーザディスプレイ106fが、乗り物100についての情報を、コントローラ106cから受信したデータに基づいてユーザに表示することが可能となる。例えば、ディスプレイ106fは、バッテリ106bの充電レベルおよび/または乗り物100の現在の速度および/または地面接触部材104の毎分回転数および/またはボード102のピッチレベル及びピッチ方向および/または乗り物が不安全な状態又は損傷した状態にある場合の警告メッセージ又は修理メッセージおよび/または現在の時刻および/または当該技術分野において周知である他種の情報を表示し得る。
図1Bおよび
図1Dに示されているように、ディスプレイ106fは、ボード102の前端部および後端部に配置されている。変形例として、ディスプレイ106fは、ボード102におけるその他の部位に配置されてもよい。
【0022】
安全エレメント106gは、乗り物100から光および/または音を出力する、照明および/またはスピーカを含むものとされ得る。例えば、安全エレメント106gは、自動車の前照灯のように乗り物100の前方路および/または自動車の尾灯のように乗り物100の後方など、乗り物100の周辺を照明する照明を含むものとされ得る。一部の実施形態では、走行方向に最も近い安全エレメント106gが、近づきつつある道路/表面を照明するために白色光を発する。一部の実施形態では、走行方向からみて後方に最も近い安全エレメント106gが、乗り物100が減速/制動しているときに自動車の尾灯のように、乗り物100の後方に知らせる赤色光を発し、および/または、点灯するようにコントローラ106によって制御される。一部の実施形態では、安全エレメント106gの色および/または動作が、乗り物100の走行方向に基づいて切り替わる。例えば、尾灯として機能している安全エレメント106gが、乗り物100の方向が逆になると前照灯として機能するように動作を切り替えて、かつ、これと逆の動作も行うものとされ得る。一部の実施形態において、安全エレメント106gは、周囲光を感知し、かつ、検出された周囲光が閾値レベルを下回る場合にのみ起動するように構成されている。これに代えて、あるいは、これに加えて、安全エレメント106gは、手動で起動又は停止が可能なものとされてもよい。
【0023】
一部の実施形態において、安全エレメンント106gは、乗り物100が近いことを人々に警告する警告音を出力するものとされる。一部の実施形態において、この音は、乗り物100の加速、減速または他の動作に基づいてチューン(tune)、周波数またはその他が変化する。一部の実施形態において、安全エレメント106gは、音源から受信した信号に基づいて音声(audio)を生成することが可能なように、その音源にコントローラを介して又はコントローラを介さずに接続されている。例えば、安全エレメント106gは、ラジオもしくはアンテナおよび/または別の音源装置(例えば、電話、iPod(登録商標)など)から音楽を再生可能なものとされ得る。安全エレメント106gは、コントローラ106cから指令を受信するように、コントローラ106cに動作可能に(例えば、電気的に)接続されている。この構成によれば、ユーザディスプレイ106fが、コントローラ106cから受信したデータに基づいて動作することが可能となる。
図1Bおよび
図1Dに示されているように、安全エレメント106gは、ボード102の前端部および後端部に配置されている。変形例として、安全エレメント106gは、ボード102におけるその他の部位に配置されてもよい。
【0024】
コントローラ106cは、モータ106aおよび/または乗り手センサ106dおよび/または地面センサ106eおよび/またはユーザディスプレイ106fおよび/または安全エレメント106gに、後述する予め定められた動作プロトコルモジュールに従ってこれらの動作を制御するように動作可能に接続されている。一部の実施形態では、コントローラ106cと乗り物100のうちの少なくとも1つの構成品とが、コントローラエリアネットワーク(CAN)バスによって互いに接続されている。他の実施形態として、他のネットワークを用いることができる。
図2は、一部の実施形態におけるコントローラ106cの一例を示すブロック図である。
図2に示されているように、コントローラ106cは、ネットワークインターフェース202、メモリ204、プロセッサ206、少なくとも1つのI/O(入出力)装置208、バス210、およびストレージ装置212を有している。変形例として、図示の構成要素のうちの少なくとも1つの構成要素を、省略したり、あるいは、当該技術分野において周知である他の構成要素に置き換えたりしてもよい。プロセッサの選択に関して言えば、十分な速度を有する適切なプロセッサが選択される限り重要でない。メモリ204は、当該技術分野において既知である一般的などのようなコンピュータメモリであってもよい。ストレージ装置212は、ハードドライブ、CDROM、CDRW、DVD、DVDRW、フラッシュメモリカード、または他の任意のストレージ装置を含み得る。コントローラ106cは、少なくとも1つのネットワークインターフェース202を有し得る。ネットワークインターフェースの一例として、イーサネット(登録商標)または他種のLANに接続されたネットワークカードが挙げられる。少なくとも1つのI/O装置208は、キーボード、マウス、モニタ、ディスプレイ、プリンタ、モデム、タッチスクリーン、ボタンインターフェース、および他のデバイスのうちの、少なくとも一つを含み得る。乗り物100を動作させるのに用いられる動作プロトコル230は、ストレージ装置212及びメモリ204に記憶され得て、かつ、プログラムの典型的な処理と同じように処理され得る。
図2に示されている構成要素が、大体において、コントローラ106cに含められる。一部の実施形態では、ハードウェアが前記動作プロトコルの一部または全部を実行する動作プロトコルハードウェア(OPHW)220が含められている。
図2を参照すると、コントローラ106cは、前記動作プロコルを実行するためにソフトウェア230とハードウェア220とを含んでいるが、前記動作プロトコルは、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはこれらの任意の組合せによって実行することも可能である。また、コントローラ106cは、当該コントローラ106cが整流(commutation)およびその他の演算を実行することを可能にする、
図2に示されていない少なくとも1つの構成要素を有するものとされ得る。例えば、コントローラ106cは、ボード102または他のスタチックマーカに対する地面接触部材104の位置をエンコードするエンコーダを有するものとされ得る。上記の構成要素は当該技術分野において周知なので、本明細書では簡略化のために説明を省く。
【0025】
動作時においてコントローラ106cは、前記動作プロトコルを実行するにあたり、ボード102の前端部及び後端部のうちの一方又は両方と地面(すなわち、ボード102よりも下に位置する表面)との間の距離を、少なくとも1つの地面センサ106eからの入力に基づいて求める。次にコントローラ106cは、求められた少なくとも1つの距離に基づいて地面に対するボード102のピッチを算出し、この求められたボードピッチに基づいてモータ106aに地面接触部材104に対して力を加えさせる。例えば、ボード102が第1のレベルでピッチしているとコントローラ106cが判断すると、このコントローラ106cは、(モータ106aを介して)地面接触部材104の速度を下げておよび/または速度を上げておよび/または方向を逆にして、前記第1のレベルのピッチに対応付けられた所望の速度および/または加速度および/またはトルクに近付けて最終的に一致させる。これにより一般的に、コントローラ106cは、ユーザが自身を傾かせることでボード102を前方向または後方向に地面に対してピッチさせると、地面接触部材104(したがって、乗り物100)をその前方向または後方向に移動させる(あるいは、方向を逆にしてから移動させる)。上記の構成によれば、ボードピッチが地面に対して得られることから、乗り物100は、ボードピッチを決定する際に地面レベルの変化を補償することができるという利点を奏する。このことは、乗り物100が平らでない面を走行しているときに重要となる。というのも、平らでない面は、ボードがピッチする能力を制限し得るからである。例えば、ピッチを、重力を基準としてのボード角度のズレに基づいたものとするシステムでは、坂を上る場合、ボードを前方にピッチさせた状態を維持することが困難又は不可能になる。というのも、その坂/地面がさらなるピッチを妨げるからである。対照的に、本明細書で説明するピッチ推進式の乗り物100は、そのような坂/地面を基準としてピッチを決定することができるので、前方へのピッチが小さくても、乗り物100を所望の速度で前進させることが可能である。
【0026】
一部の実施形態において、ボードピッチは、少なくとも1つの地面センサ106eによって検出される、ボード102の前端部と前記表面との間の検出される現在の距離と、ボード102の後端部と前記表面との間の検出される現在の距離との平均に基づいて動的に求められる。変形例として、ボードピッチは、ボード102の片方の端部のみと前記表面との間の検出される距離によって動的に求められるものであってもよい。変形例として、ボードピッチは、ボード102の前端部と前記表面との間の検出される現在の距離とボード102の後端部と前記表面との間の検出される現在の距離との相違に基づいて動的に求められるものであってもよい。
【0027】
一部の実施形態において、コントローラ106cは、所望の速度および/または加速度および/またはトルクが得られるように、地面接触部材104に加えられる力を調節するとき、その地面接触部材104がトラバース(走行)しようとしている表面における検出された変化を考慮に入れて調節する。具体的には、センサ106eが地面接触部材104から前側(および後側)に離れていることで、地面/表面の特性および変化を、地面接触部材104が当該変化に到達する前に検出する(またはマッピングする)ことが可能となる。これにより、コントローラ106cは、地面接触部材104が地面の特性/変化に遭遇する前に、このような地面の特性/変化に基づいて、地面接触部材104に送信される指令信号を調節することが可能となる。そのような実施形態において、コントローラ106cは、地面接触部材104が前記特性/変化に到達すると予想される将来の時点を求めて、前記特性/変化に対応付けられた制御信号のタイミングをその求められた時点に合致するように調節する。この時点は、前記特性/変化に対する地面接触部材104の現在の位置、ならびに地面接触部材104の速度および/または加速度および/またはトルクに基づいて求められるものとされ得る。
【0028】
例えば、コントローラ106cが(現在の走行方向、前記表面と走行方向先頭側の少なくとも1つの地面センサ106eとの間の過去に求められた距離、および現在求められた距離に基づいて)前記表面の近づきつつある上り傾斜を検出すると、このコントローラ106cは、その予測された近づきつつある上り傾斜を補償するように地面接触部材104に加えられる力の量を増加させるものとされ得る。同様に、この力は、予測された近づきつつある下り傾斜を補償するように減少されることも可能であり得る。すなわち、現在の検出されたピッチが第1の力レベルに対応するものであったとしても、より高い又はより低い力レベルが、検出された又はマッピングされた前記特性/変化を見越して印加されることが可能となり得る。これにより、乗り物100は、近づきつつある障害物や地形を補償するように地面接触部材104の予測制御を提供するという利点を奏する。
【0029】
コントローラ106cは、モータ106aの作動(したがって、地面接触部材104の作動)を調節するために、ボード102に対する地面接触部材104の位置を細かく〔例えば、1回転当たり1,000カウントを超える精度(granularity)で〕エンコードして監視する。コントローラ106cは、この検出された現在の位置をフィードバックとして利用することにより、正弦波整流を用いてモータ106aの作動(したがって、地面接触部材104に加えられる力)を制御するものとされ得る。この構成は、他の整流方法によって特に低速度域で生じるコギング(cogging)を取り除くことにより、よりスムーズな乗り心地を提供することができるという利点を奏する。変形例として、台形波(trapezoidal)(すなわち、「6ステップ」)整流等といった他種の整流が採用されてもよい。一部の実施形態において、コントローラ106cは、制御ループフィードバックメカニズムを組み込み、そのフィードバック(すなわち、地面接触部材104の検出された現在の位置)に基づいてモータ106aの制御を分析および調節/補償する。例えば、コントローラ106cは、閉ループ比例−積分−微分(PID)制御フィードバックループを組み込み得て、この閉ループPID制御フィードバックループは、フィードバックを受けて且つそのフィードバックに基づいて、コントローラ106cがモータ106aの整流および/または制御を調節するのに用いる少なくとも1つの誤差補正信号を送信する。変形例として、PID制御部が開ループであってもよいし、および/または、当該技術分野において周知である他種の制御ループフィードバックメカニズムが採用されてもよい。変形例として、コントローラ106cは、フィードバックなしで乗り物100の動作を制御するものであってもよい。
【0030】
また、コントローラ106cは、(地面に対する)ピッチを所望のトルクに結び付ける(equate)のに代えて、(地面に対する)ピッチを所望の加速度に結び付けるように構成されてもよい。例えば、前記PID制御フィードバックループは、トルク誤差補償の代わりに加速度誤差補償を求めるように構成されてもよい。これにより、前記PID制御フィードバックループおよびコントローラ106cは、隆起、穴、その他の上り/下り等といった迫りくる表面変化の調節に、より多くの帯域幅を割り当てることができるという利点を奏する。変形例として、前記PID制御フィードバックループは、必要に応じて制御信号の補償を微調整するように必要に応じて構成可能なものであってもよい。変形例(一部の実施形態)として、乗り物100は、地面センサ106eから受信した情報をコントローラ106cが平滑化するか又はさらに処理することが可能なようにこのコントローラ106cに信号を送信する、少なくとも1つのジャイロセンサおよび/または少なくとも1つの加速度センサを備えるものであってもよい。
【0031】
図3は、一部の実施形態におけるユーザを運ぶ方法のフローチャートである。
図3を参照すると、ステップ302において、ユーザ/乗り手は、乗り物100のボード102上のある位置を占める。ステップ304において、ユーザ/乗り手は、ボード102を前記表面に対してチルト又はピッチ(tilt or pitch)させることによって、モータ106aが地面接触部材104に前記乗り物をそのチルト/ピッチの方向に推進させることにより、乗り物100を動作させる。一部の実施形態において、ユーザは、ボード102に連結された少なくとも1つの部材留め具105を係止したり解除したりすることにより、地面接触部材104を、当該留め具105を介して選択的にボード102に連結したりボード102から外したりする。一部の実施形態において、ボード102に連結された少なくとも1つの留め具を係止したり解除したりすることにより、グリップ108を、当該留め具を介して選択的にボード102に連結したりボード102から外したりする。上記の構成により、前記方法は、ボードピッチの決定を、地面またはボード102よりも下に位置する表面の変化を考慮して補償することができるという利点を奏する。
【0032】
本明細書で説明する、ピッチ推進式の乗り物の、システム、装置および方法は、数多くの利点を奏する。具体的には、この乗り物は、ピッチ/速度関係が重力に対して維持できなくなる上り坂、下り坂又は平坦でない面を走行しているときに、ピッチ/速度関係を、ボードよりも下に位置する(例えば音響センサなどによって検出された)表面に対応するように変化させることができるという前述したような利点を奏する。この乗り物は、さらに、カーブ又はその他の障害物に接近しつつあるときにユーザがジャンプしたり足でボードを持ち上げたりすることを可能にする、足用グリップ(foot grips)を備えるという利点を奏する。この乗り物は、さらに、地面接触部材を選択的にボード/駆動アセンブリから切り離したり/外したり、地面接触部材を選択的につけ直したり異なる地面接触部材と交換したりすることができるという利点を奏する。この乗り物は、さらに、地面接触部材により効率的に動力を伝達し、かつ、低速度域でより良好なトルクを提供し、かつ、バッテリの寿命を長持ちさせる、直動駆動式モータ/直接駆動機構を利用するという利点を奏する。この乗り物は、さらに、ボードを走行方向の横へと傾動させることで当該乗り物をより容易に旋回させることを可能にする、厚みが小さいホイール又は他種の地面接触部材を使用するという利点を奏する。
【0033】
上記では、本発明の構造原理および動作原理についての理解を促すために、細部にまで及ぶ具体的な実施形態を参照しながら、本発明を説明してきた。本明細書では、このように具体的な実施形態およびそれらの細部について言及してきたが、これは添付の特許請求の範囲を限定するものでない。当業者であれば、特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲を逸脱することなく、例示目的で選出された実施形態に対して、それ以外の様々な変更を施すことが可能であることを容易に理解するであろう。例えば、一部の実施形態では、駆動アセンブリ106が、盗難を防止するためにユーザが乗り物をロックすることを可能にするロックモジュール又はロック機構を含む。具体的には、コントローラ106cが、ユーザ入力を介してパスワードを受信しない限り、および/または、所定の信号とマッチするRF信号を受信しない限り、および/または、認識された識別子を有するモバイルコンピューティングデバイスとのブルートゥース(登録商標)接続が確立されない限り、および/または、他の適切なロック方法/ロック解除方法により、乗り物100の動作を行えないようにするように構成され得る。