特許第6524310号(P6524310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6524310
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】呼吸同調気体供給装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20190527BHJP
   A61M 16/20 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   A61M16/00 315
   A61M16/00 328Z
   A61M16/20 H
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-98119(P2018-98119)
(22)【出願日】2018年5月22日
(62)【分割の表示】特願2015-553636(P2015-553636)の分割
【原出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-161484(P2018-161484A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2018年5月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-263926(P2013-263926)
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-263927(P2013-263927)
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-269454(P2013-269454)
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503369495
【氏名又は名称】帝人ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】穂谷 百合香
(72)【発明者】
【氏名】内山 暢
(72)【発明者】
【氏名】藤本 勝志
(72)【発明者】
【氏名】善岡 幸司
(72)【発明者】
【氏名】縄田 秀男
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−512789(JP,A)
【文献】 特開2002−143306(JP,A)
【文献】 特開2005−176879(JP,A)
【文献】 特開2003−013750(JP,A)
【文献】 特開2007−066518(JP,A)
【文献】 特開昭58−142219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/20
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動開閉弁の弁開時間を調整することにより呼吸用気体を所定流量で使用者に供給する装置であり、流量設定つまみ、流量設定つまみによって切り替え可能な流量調整手段、流量設定つまみの回転軸と一体あるいは連動したカム、カムの円周上あるいは回転軸線と平行に2個以上配置されたスイッチを備え、流量設定つまみの回転に伴う位置をカム機構によるスイッチのON/OFFにより流量設定値の判断手段を備えた流量設定器を備えた呼吸同調型の呼吸用気体供給装置。
【請求項2】
該判断手段が該スイッチの接点信号を2進数化し、信号の組み合わせに流量設定値を判断する手段である、請求項1記載の呼吸用気体供給装置。
【請求項3】
該流量調整手段が、一定角度毎に位置決め可能な回転軸を有し、該回転軸と同軸上に取り付けられる円盤状の板であるオリフィスプレート、該オリフィスプレートには流量を整流するための穿孔を備えると共に、該回転軸が該流量設定つまみの回転軸と一体あるいは連動している、請求項1記載の呼吸用気体供給装置。
【請求項4】
流量設定つまみ、流量設定つまみの回転軸と一体あるいは連動したカム、カムの円周上あるいは回転軸線と平行に2個以上配置されたスイッチを備え、流量設定つまみの回転に伴う位置をカム機構によるスイッチのON/OFFにより流量設定値の判断手段を備え、判断結果に基づいて自動開閉弁の弁開時間を調整する流量設定器。
【請求項5】
該判断手段が該スイッチの接点信号を2進数化し、信号の組み合わせに流量設定値を判断する手段である、請求項4記載の流量設定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸用気体を使用者に供給する呼吸用気体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
肺気腫、慢性気管支炎等の呼吸器系疾患の患者が増える中、その治療法として最も効果的なものの1つに酸素吸入療法がある。この治療法のために使用する酸素供給源として、酸素濃縮装置、酸素ボンベ、あるいは液体酸素等が使用されている。使用時の便利さや保守管理の容易さから、在宅では酸素濃縮装置を使用し、病院、ショッピング、コンサートホール、映画館などへ外出する場合には、患者が持ち運びできる小型軽量の酸素ボンベが主流で用いられている。酸素ボンベには酸素切れに問題が有るので、小型軽量のポータブル酸素濃縮機も開発されているが、供給能力及び性能、価格面から普及には更なる技術革新を要する。
【0003】
このような酸素ボンベや酸素濃縮装置を用いて行う酸素吸入療法は、事前に患者の動脈血酸素飽和度の測定など様々な検査、および、運動負荷テストなどの結果を踏まえ、医師が使用者の酸素吸入量を処方する。酸素吸入量は0.25LPM〜7LPMで処方されることが多く、例えば、安静時の酸素吸入量は1LPM、労作時は2LPMといった具合に、患者に指示される。
【0004】
酸素ボンベは、酸素濃縮装置とは異なり、ボンベに充填された酸素を消費してしまうと新たに生成することはできないため、ボンベ交換が必要となる。その為、なるべく長く酸素を吸入するためには、無駄な酸素消費を抑える手段が必要となる。そこで、酸素ボンベの使用し得る時間を可能な限り延長するために、患者の呼吸パターンに同調して、吸気時にのみ酸素を供給する呼吸同調気体供給装置(以下、デマンドレギュレーターという)を使用して、酸素の消費を節約することが行なわれている。
【0005】
酸素ボンベの元弁に接続した減圧弁により高圧酸素の圧力を例えば1.5kg/cmに減圧したのち、流量設定器で0.5LPM〜7LPMといった所定流量に整流して使用者に供給される。デマンドレギュレーターを併用し、使用者の呼吸を検知し、吸気時にのみ酸素を供給することにより、酸素使用量を連続供給する場合の1/3〜1/6に節約することが出来、その分、外出使用時間を延長することが可能となっている。
【0006】
例えば、特開平9−24098号公報(特許文献1)に記載の装置では、酸素供給流量を流量設定器で最大値に調整し、患者の呼吸圧を検知して電磁弁を開閉することで、酸素を患者の吸気期間に投与し、呼気期間には投与しない制御を行っている。患者の吸気時間と呼気時間の比率は、一般に1:2であることから、各社のデマンドレギュレーターの酸素節約率は1/3〜1/7程度に設定されていることが多い。またこの呼吸パターンに同調して酸素を供給するモードを、同調モード、デマンドモード等と呼称することが多い。
【0007】
一方、特開2002−143306号公報(特許文献2)に記載のように、デマンドレギュレーターには、非常時に電磁弁をバイパスし、連続的に酸素を供給するために流路切換弁を備えるものも提案されている。かかる非常時とは、例えばデマンドレギュレーターを動作させるための電池が消耗した場合や、センサなどのデマンドレギュレーターの部品が故障した場合などである。患者自身が連続的に酸素を吸入したいと思った時にも対応することが出来る。
【0008】
緊急時に酸素を供給する時の流量は、流量設定器のオリフィスにて調整される。緊急時の流量は1設定で固定といったものもあるが、処方に合わせて設定できるように、径の異なる複数のオリフィスから選択して供給できるものもある(実用新案登録2502812号公報(特許文献3)に記載)。このような連続的に酸素を供給するモードを、連続モード、非常モード等と呼称する。
【0009】
特許文献2に記載のデマンドレギュレーターの構成は、非常モードの連続流路に設けられた流量設定ダイヤルで同調時の所望の流量を制御するために、設定流量値の電気的信号を、例えばロータリースイッチなどで設定・認識する必要があり、電池切れなどの場合には流路切換弁の手動変更が必要となる。
【0010】
特表平1−501999号公報(特許文献4)のFig.19には、高流量、低流量の2つの流量同時制御が可能なデュアル流量設定器を備え、BCDエンコーダーにより設定値を出力する端子を備えたデマンドレギュレーターが記載され、同調モードと連続モードの流量を1つの設定器で同時に制御する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−24098号公報
【特許文献2】特開2002−143306号公報
【特許文献3】実用新案登録2502812号公報
【特許文献4】特表平1−501999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
連続流と同調流を同一の流量設定器で制御する場合には、特許文献4の同調流及び連続流用のオリフィスを各々同軸円周上に配置した回転バルブを採用することが出来る。
【0013】
呼吸に同調にして呼吸用気体を供給する場合、特許文献1の記載の装置のように、装置の最大流量で供給し、同調弁の開閉時間のみで供給量を制御しようとした場合、弁開時間を制御するためにすべての流量設定を検知する必要がある。設定流量ポイントが多くなると設定値の誤検知のリスクが増え、また検知装置もロータリーエンコーダー、ポテンショメーターなどを使用することになり、高コストになる。
【0014】
一方、同調弁の弁開時間を一定とし呼吸同調制御を行う場合には、流量設定値および弁開時間に応じた呼吸用気体を供給できるように、同調流側のガス供給量および流量切替用のオリフィス径を制御する必要がある。装置の最大設定流量のガスを供給できるように設計されるため、低流量側での供給量の誤差が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる問題の解決方法として、以下の発明を見出した。
1)呼吸用気体を使用者の呼吸に同調して供給する呼吸同調気体供給装置において、使用者が所望の流量に調整する流量調整手段、使用者の呼吸を検知する圧力検出手段、該圧力検出手段の呼吸検知結果に基づいて呼吸に同調して呼吸用気体を供給する自動開放弁、及び、使用者の呼吸には同調せず連続して供給するための流路切換弁を備え、該流量調整手段が、設定流量値毎に一定角度で位置決め可能な回転軸を有し、該回転軸に取り付けられたディスク上の同心円上に、該流量設定手段の流量設定値に応じた口径のオリフィスを備えたディスクを備えた回転バルブであり、該流量設定手段の設定流量値に対応する同調流側のオリフィスを流れる呼吸用気体の流量が設定流量に対して一定比率となる複数群の流量に区分され、同一区分内では同一の開時間で該自動開閉弁の開閉を制御する制御手段を備えた、呼吸同調気体供給装置。
2)該流量調整手段が、設定流量値毎に一定角度で位置決め可能な回転軸を有し、該回転軸に取り付けられたディスク上の複数径の同心円上に、該流量設定手段の流量設定値に応じた口径のオリフィスを備えたディスクを備えた回転バルブであり、一方の同心円上に配置されたオリフィスの流路が連続流を供給する流量切換弁に、他方の同心円上に配置されたオリフィスの流路が同調流を供給する自動開閉弁に流路接続する導管を備えたことを特徴とする上記1)記載の呼吸同調気体供給装置。
3)1呼吸当りに同調流で供給される呼吸用気体の流量が連続流の1/3〜1/5の流量であり、吸気時間の前半3/4以内に供給される、上記1)記載の呼吸同調気体供給装置。
4)1呼吸当りに同調流で供給される呼吸用気体の流量が連続流の1/3〜1/5の流量であり、吸気時間の前半1/2以内に供給される、上記1)記載の呼吸同調気体供給装置。
5)該一定比率となる複数群の区分が4区分であり、該流量調整手段の流量設定値の検出手段として、流量調整手段の回転軸上に取り付けられた2つのリミットスイッチを備える、上記1)記載の呼吸同調気体供給装置。
6)該一定比率が設定流量に対して2〜10倍の範囲である上記1)〜5)に記載の呼吸同調気体供給装置。
【0016】
また、本願発明者は、以下に示すように、流量設定器の流量設定つまみと一体のカム、あるいは連動したカムを介して、円周上、あるいは回転軸線と並行に2個以上配置されたスイッチを作動させ、接点信号を2進数化し、簡便な構成で流量設定の位置認識させる機構を見出した。
7)呼吸用気体を所定流量で使用者に供給する装置であり、流量設定つまみ、および、流量設定つまみによって切り替え可能な流量調整手段、流量設定つまみの回転軸と一体あるいは連動したカム、カムの円周上あるいは回転軸線と平行に2個以上配置されたスイッチを備え、流量設定つまみの回転に伴う位置をカム機構によるスイッチのON/OFFにより流量設定値の判断手段を備えた流量設定器である、呼吸用気体供給装置。
8)該判断手段が該スイッチの接点信号を2進数化し、信号の組み合わせに流量設定値を判断する手段である、上記7)記載の呼吸用気体供給装置。
9)該流量調整手段が、一定角度毎に位置決め可能な回転軸を有し、該回転軸と同軸上に取り付けられる円盤状の板であるオリフィスプレート、該オリフィスプレートには流量を整流するための穿孔(オリフィス)を備えると共に、該回転軸が該流量設定つまみの回転軸と一体あるいは連動している、上記7)記載の呼吸用気体供給装置。
10)流量設定つまみ、流量設定つまみの回転軸と一体あるいは連動したカム、カムの円周上あるいは回転軸線と平行に2個以上配置されたスイッチを備え、流量設定つまみの回転に伴う位置をカム機構によるスイッチのON/OFFにより流量設定値を判断する判断手段を備えた流量設定器。
11)該判断手段が該スイッチの接点信号を2進数化し、信号の組み合わせに流量設定値を判断する手段である、上記10)記載の流量設定器。
【発明の効果】
【0017】
本発明の呼吸同調気体供給装置によると、全ての流量設定ポイントの位置検出は必要が無く、設定ポイントが多くてもリミットスイッチを用いた簡易検出手段により安価で誤検知が少なく、同一区分内での同一開時間の制御で流量制御が可能となる。
【0018】
また、本発明の呼吸同調気体供給装置において流量設定つまみと一体、あるいは連動したカムを介して円周上、あるいは回転軸線と並行にスイッチを2個以上配置することで、例えばスイッチ2個の場合4ポジション、スイッチ3個の場合は8ポジションの位置認識が可能である。これにより流量設定に対し適切な電磁弁開閉時間の設定が可能となり、より適切な酸素供給を行うことで一層の酸素ボンベの節約が可能となる。また安価で少ないスイッチ配置で機能を得られることから、よりコストの安い小型の呼吸同調気体供給装置が構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施態様例である呼吸同調気体供給装置の模式図を示す。
図2図2は、本発明の実施態様例に搭載される流量調整手段の断面模式図を示す。
図3図3は、本発明の実施態様例に搭載される流量調整手段の流量設定検出機構を示す模式図を示す。
図4図4はその流量検出手段における流量設定つまみの回転に伴うカム機構の回転、リミットスイッチのON/OFFの状態を模式的に示す。
図5図5は、本発明の実施態様例に搭載される切替手段の同調モードの状態の模式図を示す。
図6図6は電源OFFの状態の模式図を示す。
図7図7は連続モードの状態の模式図を示す。
図8図8は、本発明の実施態様例に搭載される警報フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の呼吸同調気体供給装置の実施態様例を、図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態である呼吸同調気体供給装置を例示した概略装置構成図である。本発明の呼吸同調気体供給装置は、酸素ボンベ1に高圧に充填された呼吸用気体を一定の低圧力に調圧する圧力調整手段である調圧弁3により調圧された気体を流量設定つまみ5によって患者所望の流量に整流する流量調整手段である同軸可変オリフィス4、患者の呼吸を検知する圧力検出手段である圧力センサ8、圧力の検知結果に基づいて呼吸に同調して整流された気体を供給する自動開放弁である電磁弁6、緊急時には使用者の呼吸には同調せず連続して供給するための流路切換弁である手動弁7、カニューラ9などの気体供給手段から構成されている。
【0022】
まず、圧力調整手段は酸素ボンベ1から元弁2を介して供給される高圧(1次圧力)の呼吸用気体の圧力を患者へ供給するのに適した低圧力(2次圧力)まで調圧する減圧弁と、酸素ボンベ内に充填された気体の残量を確認するための圧力計など(図示せず)を少なくとも含んで構成される。
【0023】
低圧に調整された気体は流量調整手段、自動開放弁、流路切換弁によって患者所望の流量に調整される。自動開放弁は呼吸同調弁として使用者の呼吸に同調して開閉し、例えば、直動型の2ポート2位置切替電磁弁が用いられる。一方流路切換弁は、患者自身の呼吸異常などの緊急事態や、機器の圧力センサ異常や電池切れなどに連続流を供給するために流路を切り替える弁であり、例としては、メカニカルバルブを用いるのが好ましい。
【0024】
圧力センサ8は、使用者の呼吸圧を検知するために、自動開閉弁や流路切換弁の下流に設置され、呼吸に伴うカニューラ口の圧力変動を検知するものであり、例えば、レンジ±50Pa、−0.5〜1Pa/10ms程度の圧力を測定可能な微差圧センサや、微圧によって作動する圧力スイッチなどを用いることが出来る。
【0025】
流量調整手段としては回転バルブが採用され、設定流量に応じた穿孔が同心円上に配置された同軸可変オリフィスを用い、流量設定つまみを回転させることで所定流量に調整する。流量設定つまみを用いて回転軸を動作すると円盤状の板に設けられた2つのオリフィスが選択される。圧力調整手段から供給された気体はこの2つのオリフィスを通過することで2つの流量に整流される。それぞれ別の流路を通過し同調用、連続用として、自動開放弁、流路切換弁に接続される。
【0026】
呼吸同調流、すなわち使用者の呼吸を検知し、吸気時にのみ自動開閉弁を開いて酸素を供給し、呼気時には酸素供給をストップする制御は、装置下流に設けられた呼吸センサである圧力センサ8により、使用者の吸気および呼気の圧力変動を検知し、制御部10により電磁弁6の開閉制御を行う。呼吸センサには、かかる圧力センサの他、温度センサ、流量センサなども使用可能である。
【0027】
自動開放弁、流路切換弁の下流側で2つの流路は合流し、圧力検出手段であることの圧力センサ、カニューラなどの気体供給手段を経て患者へ気体を供給する。
【0028】
連続、同調の切替えは、下流に設けた手動の切換弁で行い、同調流を供給する自動開閉弁である電磁弁の電源をOFFにすることで閉じ、連続流の供給流路である手動弁を開くことで連続流の供給が可能となる。患者の健康状態の悪化による供給量アップ、装置の異常、同調器の電池消耗などが生じたとしても、手動で酸素の連続供給が可能となる。
【0029】
図2に更に詳しく流量調整手段の断面模式図を用いて説明する。流量調整手段は、流量設定つまみ5に接続し一定角度毎に位置決め可能な回転軸21を有し、該回転軸と同軸上に取り付けられる円盤状の板であるオリフィスプレート22、流量目盛を具備した流量設定つまみを有し、オリフィスプレート22には流量を整流するための穿孔(オリフィス)を備える。例えば45度の角度でプレートを回転させオリフィスを介した流路を切り替えた場合は8ポイント、30度の回転角度で切り替えた場合、12ポイントの流量値を設定できる。
【0030】
オリフィスプレート22は、緊急用に連続流を供給する流量と同調用の流量に整流するため2枚備えることができる。図2に示すように、1枚のディスクを用い、回転軸を中心に異なる円の直径上に緊急用のオリフィス23と同調用のオリフィス24を備えることが好ましい。装置内に残圧が残る流路容積を出来るだけ少なくするため、流量調整手段は調圧弁3と一体化することが好ましい。
【0031】
流路筐体20に設けられ、調圧弁に接続するノズル25から供給された酸素は、オリフィスプレート22に設けられ、回転軸21を中心に各々異なる同心円状に設けられた同調用のオリフィス24および連続用(緊急用)のオリフィス23の選択により流量制御される。更に、同調用の流路は同調流側ノズル出口27を介して電磁弁7に接続され、連続用の流路は連続流側ノズル出口26を介して手動弁6に接続される。
【0032】
酸素ボンベを使用する場合、如何に消費量を節約するかがボンベの使用時間を決定する上で重要な因子となり、デマンドレギュレーターを用いて使用者の呼吸に同調して吸気時にのみ酸素を供給している。一般に、1呼吸における吸気時間と呼気時間の割合は1:2と言われており、吸気時間のみの酸素供給することで1/3に節約が可能となる。一方、吸気時間に酸素を供給する場合であっても、吸気の後半は、投与された酸素は酸素吸収部位である肺胞には届かず、実質的に肺胞から吸入されるのは吸気前半に投与された酸素のみである。従って、吸気前半の投与酸素量を換算すると、連続流に対して更に1/2の節約を行い、連続流の1/6の投与も可能とされている。
【0033】
一方、連続流で酸素を供給する場合には、呼気中も酸素が供給され、投与された酸素は呼気と共に排気されてしまう。しかし呼気終末の気流が弱まった時に投与された酸素は鼻腔内にとどまり、次の吸気開始時に吸入されることから、呼気終末部に投与された酸素も、肺胞から吸収、血液の酸素化に有効に働いている。また、酸素化に寄与する吸気時間の前半(1/2)以内に酸素投与が完了するのが望ましいが、短時間に高流量の酸素を投与した場合には、使用者の鼻腔への刺激、違和感を考慮する必要がある。従って、本願発明の装置では、連続流に対して1/3〜1/5の流量の酸素を吸気時間の前半3/4以内の時間に投与を完了し、好ましくは吸気時間の前半1/2以内の時間に投与を完了する。
【0034】
酸素吸入療法では、事前に患者の動脈血酸素飽和度の測定など様々な検査、および、運動負荷テストなどの結果を踏まえ、医師が使用者の酸素吸入量を処方する。酸素吸入量は0.25LPM〜7LPMで処方されることが多く、酸素ボンベを用いる場合は、デマンドレギュレーターもかかる低流量から高流量までの広域の投与領域をカバーする必要がある。
【0035】
高流量に関しては、吸気前半投与が出来るようにベース流量を高めに設定し、低流量側は、ベース流量を低めにして、弁開時間を少なくとも30msec以上を確保するなど、流量制御可能な範囲に収める必要がある。更に、最も多くの人が使用する3LPMなど中流量域では、酸素投与時の刺激を抑え、できるだけ不快にならないようにする必要もある。
【0036】
さらに本願発明では、同調流のベース流量に関して、流量設定手段の設定流量値に対応する同調流側のオリフィスを流れる呼吸用気体の流量が設定流量に対して一定比率となる複数群の流量に区分され、同一区分内では同一の開時間で該自動開閉弁の開閉を制御する制御手段を備える。
【0037】
例えば一般に酸素吸入療法に使用される0.25〜7LPMの領域では1LPM以下、1〜3LPM、3LPM以上といった3区分、1LPM以下、1〜2LPM、2〜4LPM、4LPM以上といった4区分に分類し、同一区分内では自動開閉弁の開時間が同じになるように区分内での設定流量値に対応する同調流側のオリフィスを流れる呼吸用気体の流量が一定比率となるようにオリフィス口径を設定する。
【0038】
本願発明の流量区分での同調制御では、設定流量に対して一定比率となる複数群の流量に区分しているため、どの設定流量域かを検知すればよく、全ての流量設定値を検知する必要はなく、ロータリーエンコーダーやポテンショメーターなどの高価な検知手段が必要なくなると共に、誤検知リスクの低減を図ることが出来る。
【0039】
本願発明の流量調整手段の流量設定値の検出手段として、図3に示すような、流量調整手段の回転軸21上に取り付けられたカム30および2つのリミットスイッチSW1,SW2を備える装置を採用することが出来る。
【0040】
使用者が流量設定つまみを操作すると回転バルブが回転して所望の流量が流れるオリフィスが選択される。同時に回転バルブと同期するカムによってリミットスイッチが操作され、流量区分を電気信号で認識することが出来る。カムは流量設定つまみないし回転バルブに備えることができる。
【0041】
図3に示すような2つのリミットスイッチを用いる場合、そのON/OFF信号により、00,01,10,11の4信号を得ることができ、表1のように4つの領域の流量設定信号の検知に利用することが出来る。尚、リミットスイッチ1(SW1)はB接点仕様、スイッチ2(SW2)はA接点仕様としている。
【0042】
【表1】
【0043】
リミットスイッチを3つ用いた場合には、同様の原理で、”000”から”111”の組み合わせの8ポジションの流量設定信号を検知することが出来る。
【0044】
本発明の呼吸同調器の流量設定つまみの位置検出機構は、図3に示す配置図で明らかなように、流量設定つまみの中心を基準に検出スイッチが流量設定つまみのカム部分に沿うように配置されている。このとき個々の検出スイッチの配置をずらすことにより、設定流量に対する検出範囲を限定することが可能となる。
【0045】
図4に流量設定つまみの回転に伴うカム機構の回転、リミットスイッチのON/OFFの状態を模式的に示す。カムが回転し、リミットスイッチを順次、ON/OFFすることで、4ポジションの設定流量の信号を得ることが出来る。このように流量設定つまみに連動するカムおよびリミットスイッチという簡便かつ安価な手段により流量設定値を検知することが出来る。
【0046】
上記実施態様例で説明した流量調整手段を備えた呼吸同調気体供給装置を用い、4流量区分による同調制御について、表2を用いて説明する。
【0047】
流量設定値としては6ポイントとし、連続流の最小設定流量0.5LPM、最大設定流量7LPMの間で、0.5、1、2、3、5、7LPMの6ポイントの流量設定が可能な装置とする。低流量域の領域1として0.5LPM、中流量域の領域2として1〜2LPM、領域3として3LPM、高流量域の領域4として5〜7LPMの設定流量に区分する。
【0048】
同調流のベース流量は、連続流の定数倍とし、領域1では連続流の10倍、領域2では連続流の5倍、領域3では連続流の3倍、領域4では連続流の2倍となるように、同調流のオリフィス径を設定した。ベース流量比率は呼吸の吸気時の前半3/4の時間内、特に1/2の時間内に酸素投与が完了可能なように流量比率を決定する。低流量域では高倍率、高流量域では鼻孔への風圧刺激を抑えるために2〜3倍程度に抑えるのが好ましい。
【0049】
図3のカム機構およびリミットスイッチを備えた流量調整手段の設定検出機構により領域1、領域2、領域3、領域4の各領域区分を検出し、自動開閉弁の弁開時間を制御する。これにより節約率が4倍(連続流量の1/4)の酸素を、領域1〜3では吸気時間の前半1/2以内、領域4は前半3/4以内に投与することが可能となる。
【0050】
【表2】
【0051】
前述のように、非常モードの連続流路に設けられた流量設定ダイヤルで同調時の所望の流量を制御するために、設定流量値の電気的信号を、例えばロータリースイッチなどで設定・認識する必要があり、電池切れなどの非常モードの場合には電磁弁が作動しない事から流路切替弁の手動変更が必要となる。
【0052】
酸素が非常に高い支燃性を持ったガスであることから、安全に配慮し、デマンドレギュレーターを使い終わった際には、酸素ボンベの元栓を閉じて、さらにデマンドレギュレーター内に残留した高圧ガス酸素を開放することが望ましい。そこで、デンマンドレギュレーターの電源をOFFした場合に、電磁弁を開放することで残留した高圧ガス酸素を開放し、該電磁弁の下流に設置された圧力センサで酸素ボンベの元栓が開放状態であること検知した場合には警報を発することのできるデマンドレギュレーターも提案されている(特開2000−262620号公報に記載)。非常時に電磁弁をバイパスし、同調モードから連続モードに切り替える場合には、流路切替弁を切り替える方法があるが、切替手段が電源ON/OFFスイッチと独立して設けられる場合が一般的である(特許文献2)。連続モードが選択された場合には、同調モードの制御(電磁弁の開閉等)が必要無くなるため、電源をOFFすることが好ましいが、切替手段が電源ON/OFFスイッチと独立している場合には、其々にリミットスイッチ等、電気的な検出手段を使用する必要があり、かつ、スイッチの操作部(レバー等)をそれぞれに設ける必要があるため、高コストであり、機器に求められる小型・軽量化の障害にもなる。特に非常時に連続モードに切替える場合には、使用者の分かり易い位置に切替手段があることが好ましく、さらには電源ON/OFFスイッチと一体化されることが好ましい。
【0053】
多くのデンマンドレギュレーターには、装置電源をOFFにした時に酸素ボンベの元弁の閉め忘れを防止するために、電磁弁の下流に設置された圧力センサで酸素ボンベの元栓が開放状態であること検知し、警報を発する機能を備えており、かかる装置においては以下の問題も発生する。すなわち、連続モードを選択する場合には同調モードで使用する呼吸検知や電磁弁の開閉などの制御が不要であり、電池の消耗を防ぐために、あるいはデマンドレギュレーターに一般的に備えられている無呼吸警報(同調モードで呼吸が検知しない場合に発する警報。連続的な酸素の流れがあるときには呼吸の検知が出来ないために発報される。)を止めるために、デマンドレギュレーターの電源をOFFにするが、その場合には、該圧力センサで酸素ボンベの元栓が開放状態であることが検知され、不要にもかかわらず、警報が発報され使用者に混乱を招く。
【0054】
かかる問題は、以下の12)〜18)に記載の解決方法で解消可能である。
12)呼吸用気体を使用者の呼吸に同調して供給する呼吸同調気体供給装置において、使用者の呼吸を検知する手段、呼吸検知結果に基づき、呼吸に同調して呼吸用気体を供給する自動開放弁、緊急時には使用者の呼吸には同調せず連続して供給するための流路切替弁を備え、使用者の呼吸に同調して呼吸用気体を供給する同調モードと緊急時に連続して供給する連続モード及び電源ON/OFFの切替えを一体で行う一つの切替手段を備えたことを特徴とする呼吸同調気体供給装置。
13)該切替手段がカム機構、同調モード選択を検出するリミットスイッチを備え、電源ON動作と同調モードへの切替え電源ON、電源OFFへの切替え、及び、流路切替弁の作動である連続モードへの切替弁の切替えを行うことを特徴とした、上記12)に記載の呼吸同調気体供給装置。
14)使用者の呼吸を検知する手段が圧力センサであり、該自動開閉弁が圧力センサの検知結果に基づいて呼吸に同調して開閉する電磁弁であり、該流路切替弁が該切替手段で作動するメカニカル弁である上記13)に記載の呼吸同調気体供給装置。
15)該切替手段で電源OFFが選択された場合に、該自動開放弁を開放し、圧力センサで圧力が検知された場合には警報を出すことを特徴とした、上記14)に記載の呼吸同調気体供給装置。
16)切替手段が連続モード選択を検出するリミットスイッチを備え、電源OFFの選択に続けて連続モードを選択された場合には、上記15)記載の警報を止めることを特徴とした呼吸同調気体供給装置。
17)呼吸用気体を使用者の呼吸に同調して供給する呼吸同調気体供給装置において、使用者の呼吸を検知する圧力センサ、使用者の呼吸に同調して呼吸用気体を供給する自動開放弁、緊急時には使用者の呼吸には同調せず連続して供給するための流路切替弁、電源ON/OFFを行うためのスイッチ、使用者の呼吸に同調して呼吸用気体を供給する同調モードと緊急時に連続して供給する連続モードの切替えを行う切替手段を備え、電源OFFにされた場合に、該自動開放弁を開放し、圧力センサで圧力が検知された場合には警報を出し、電源OFFの選択に続けて連続モードを選択された場合には該警報を止める制御手段を備えることを特徴とする呼吸同調気体供給装置。
18)該切替手段が、カム機構および連続モード選択を検出するリミットスイッチを備えることを特徴とする上記17)に記載の呼吸同調気体供給装置。
【0055】
かかる呼吸同調気体供給装置によると、同調モードと緊急時に連続して供給する連続モード及び電源ON/OFFの切替えが一つの切替手段で行うことが可能となり、また、連続モード切替時の不要な警報の発報も防ぐことが可能となり、安価で小型・軽量、非常時にも使いやすく、分かり易い警報を搭載した呼吸同調気体供給装置が可能となる。
【0056】
図5図7に更に詳しく切替手段を例示する。切替手段は回転式の操作レバー50を備え、操作レバー回転軸に連動したカム51、同調モードに対応したリミットスイッチ52、連続モードに対応したリミットスイッチ53を有し、手動弁である流路切替弁54を操作可能である範囲に設置される。
【0057】
図5は、回転式の操作レバーで同調モードを選択した場合の図であり、操作レバー50に連動したカム機構51が同調モード側のリミットスイッチ52をONにする。このリミットスイッチのONを制御部10(図1)が検出して、電源11をONにし、圧力センサ8によって使用者の呼吸を検知し、呼吸に同調して吸気時に酸素を供給するように自動開閉弁である電磁弁7の開閉する同調モードの制御を行う。
【0058】
図7は回転式の操作レバーで連続モードが選択され場合の図であり、カム機構51が連続モード側のリミットスイッチ53をONするとともに、メカニカル弁である流路量切替弁54を連続側に切替える。
【0059】
このように、図5図7に図示したようなカム機構を備えることで、同調モードと緊急時に連続して供給する連続モード及び電源ON/OFFの切替えが一つの切替手段で行うことが可能となる。このことにより、安価で小型・軽量、非常時にも使いやすいデマンドレギュレーターを構成することが可能となる。
リミットスイッチのON/OFFと警報動作の関係を図8にフローチャートで示す。
【0060】
電源OFFが選択された際に(図6)、同調モード側のリミットスイッチがOFFとなり、制御部にその信号が到達すると、自動開閉弁(電磁弁)を一時的に開放し圧抜き動作を行う。その際に圧力センサが圧力を検知し続けた場合には、酸素ボンベの元栓が開いていると判断して警報を発することができる。警報発報の後、一定時間経過後は警報を停止し電磁弁を閉じた状態で電源をOFFとする。これにより使用者に対して酸素ボンベの元栓を閉じるように促すともに、酸素放出を強制的にストップし酸素ボンベが空になるのを防ぐことが出来る。
【0061】
また、連続モードに対応したリミットスイッチを備えることで(図7、ただし、図7の通り、電源スイッチと一体化されている必要は無い)、酸素ボンベの元栓が開いていると判断して警報を発報した状態においても、続けて連続モードが選択された場合は、連続側のリミットスイッチがカム機構によりONされていることを制御部にて検出して、警報の発報を停止することができる。このことにより、連続モード切替え時の不要な警報の発報が無い、分かり易い警報を搭載した呼吸同調気体供給装置が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本願発明の呼吸同調気体供給装置は、喘息、肺気腫症、慢性気管支炎等の呼吸器系器官疾患に苦しむ患者に対する酸素吸入療法において使用される酸素ボンベの使用し得る時間を可能な限り延長するために患者の呼吸パターンに同調して供給する呼吸同調気体供給装置(デマンドレギュレーター)として使用される。
【符号の説明】
【0063】
1. 酸素ボンベ、 2. 元弁、 3. 調圧弁、 4. 同軸可変オリフィス、 5. 流量設定つまみ、 6. 電磁弁、 7. 手動弁、 8. 圧力センサ、 9. カニューラ、 10. 制御部、 11. 運転スイッチ、 20. 流路筐体、 21. 回転軸(流量設定つまみに接続)、 22. オリフィスプレート、 23. オリフィス(連続流)、 24. オリフィス(同調流)、 25. ノズル(調圧弁に接続)、 26. ノズル(連続流側出口、手動弁に接続)、 27. ノズル(同調流側出口、電磁弁に接続)、 30. カム、 SW1. リミットスイッチ1、 SW2. リミットスイッチ2、 50. 操作レバー、 51. カム機構、 52. リミットスイッチ(同調モード側)、 53. リミットスイッチ(連続モード側)、 54. 流路切替弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8