(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ノズルから吐出された造形材料は、その温度の低下により凝固するとともに収縮するので、テーブル上に造形された造形物も変形する。造形物の変形は、例えば造形材料の積層位置のずれを招き、これは造形物の作製の失敗につながる。
【0006】
上記のような失敗を防ぐため、一般的には、テーブル上面(あるいはテーブル上に敷いたパッド上面)には、微細な凹凸が形成されており、この凹凸に造形物の底面が噛み合って固着するようにされている。それでも造形物の収縮による失敗を防げない場合には、例えば、ヒーテッドベッドを使って造形物を所定温度で保温することで収縮を低減したり、テーブル上面(あるいはパッド上面)に乾燥や熱により固化する糊(接着材と呼んでもよい)を予め塗布して造形物の底面をより強く固着させるようにしたりする対策が取られている。
【0007】
ここで、テーブル上面(あるいはパッド上面)に固着した(あるいは糊を介して固着した)造形物を引き剥がすには、かなりの手の力が必要である。このような引き剥がし作業を含め、三次元造形物の造形には、人手による前準備や後処理などが存在し、手間と時間がかかる。自動的に連続で複数の造形物を造形することは実現されていない。
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、少なくとも造形物をテーブルから剥がす工程を自動化し、望ましくは複数の造形物の連続造形を自動化する3Dプリンターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題の少なくとも一部を解決する本発明の一態様は、造形装置であって、その表面に三次元造形物を形成するためのテーブルと、造形材料からなる複数の材料層を積層することにより、前記テーブル上に前記三次元造形物を形成する形成部と、を備え、前記テーブルは、その表面を構成する第1のテーブル領域及び第2のテーブル領域と、前記第1のテーブル領域に対する前記第2のテーブル領域の高さを昇降する昇降機構と、を備える。
【0010】
上記の造形装置は、前記テーブルを少なくとも一方向に傾ける傾斜機構を備えてもよい。
【0011】
上記のいずれかの造形装置は、前記テーブルの下方に設けられ、傾斜した前記テーブルから滑落した前記三次元造形物を受け止めて前記造形装置の内部又は外部の所定の領域へ導くガイド部材を備えてもよい。
【0012】
上記のいずれかの造形装置は、前記テーブル内に設けられ、その出口が前記テーブルの表面に形成されている、接着材を流すための流路と、前記流路の出口からの前記接着材の吐出を制御する吐出制御部とを備えてもよい。
【0013】
上記のいずれかの造形装置は、前記テーブルの表面に接着材を吐出する接着材ヘッドと、前記接着材ヘッドからの前記接着材の吐出を制御する吐出制御部とを備えてもよい。
【0014】
上記のいずれかの造形装置は、前記造形装置を制御するコントローラーを備え、前記コントローラーは、前記形成部に前記三次元造形物を形成させる工程と、前記昇降機構に前記第2のテーブル領域を昇降させる工程と、前記傾斜機構に前記テーブルを傾けさせる工程と、を実行してもよい。
【0015】
上記のいずれかの造形装置は、前記造形装置を制御するコントローラーを備え、前記コントローラーは、前記吐出制御部に前記流路の出口から前記接着材を吐出させる工程と、前記形成部に前記三次元造形物を形成させる工程と、前記昇降機構に前記第2のテーブル領域を昇降させる工程と、前記傾斜機構に前記テーブルを傾けさせる工程と、を実行してもよい。
【0016】
上記のいずれかの造形装置は、前記造形装置を制御するコントローラーを備え、前記コントローラーは、前記吐出制御部に前記接着材ヘッドから前記接着材を吐出させる工程と、前記形成部に前記三次元造形物を形成させる工程と、前記昇降機構に前記第2のテーブル領域を昇降させる工程と、前記傾斜機構に前記テーブルを傾けさせる工程と、を実行してもよい。
【0017】
上記の課題の少なくとも一部を解決する本発明の他の態様は、造形物の製造方法であって、造形材料からなる複数の材料層を積層することにより、テーブル上に三次元造形物を形成する形成工程と、前記テーブルの表面を構成する第1のテーブル領域及び第2のテーブル領域のうち、前記第1のテーブル領域に対する前記第2のテーブル領域の高さを昇降させることにより、前記三次元造形物を前記テーブルの表面から剥離させる剥離工程とを含む。
【0018】
上記の造形物の製造方法は、前記テーブルを傾けることにより、剥離された前記三次元造形物を前記テーブルから滑落させる搬出工程を含んでもよい。
【0019】
上記のいずれかの造形物の製造方法は、前記形成工程の前に、前記テーブル表面に接着材を吐出して定着層を形成する工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少なくとも造形物をテーブルから剥がす工程を自動化した3Dプリンターを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置1の構成例を示す模式図である。以下の説明では、造形装置1の左右方向をX軸、上下方向をY軸、前後方向をZ軸とする。XZ面は水平であり、ZY面は垂直であるものとする。
【0024】
造形装置1は、例えばパーソナルコンピューター等のデータ出力装置から入力された造形用データ(例えばSTLデータをスライスして生成されたツールパスデータ)に従って、テーブル3上に造形材料からなる材料層を積層して三次元造形物Pを造形する(形成する)装置である。造形装置1は、3Dプリンターと呼ぶこともできる。
【0025】
具体的には、造形装置1は、筐体2、テーブル3、テーブル移動機構4、ガイド部材5、ヘッド6、ヘッド移動機構7、カートリッジ8、造形材料9、及びコントローラー10を備えている。ヘッド6及びヘッド移動機構7は、造形部(形成部)に相当する。
【0026】
筐体2は、その内部の温度低下の防止などの目的のため、例えば箱体である。筐体2の一部の領域、例えば正面には、扉が設けられていてもよい。また、筐体2の一部の領域、例えば側面には、後述するガイド部材5が挿通して配置される開口(図示せず)が設けられている。
【0027】
テーブル3は、その上で溶解した造形材料が積層されることにより造形物Pを造形するための基盤である。テーブル3は、その上面を加熱するヒーターを備え、ヒーテッドベッドとして機能してもよい。テーブル3は、ステージ、ベッド、プラットフォームなどと呼ぶこともできる。
【0028】
本実施形態では、テーブル3は、その上面の一部の領域の高さを変更する昇降機構34(
図4)を備える。この昇降機構34で一部の領域の高さを変更することにより、テーブル3に固着した造形物Pの底面を自動的に剥がすことができる。この昇降機構34については、後に詳述する。
【0029】
テーブル移動機構4は、テーブル3を下側から支持し、テーブル3を移動させる機構である。テーブル移動機構4は、テーブル3をY軸方向に移動させることができる。テーブル移動機構4の構成は特に限定されないが、例えば、モーター、ギア、レール、ベルト等の機械部品から構成することができる。
【0030】
本実施形態では、テーブル移動機構4は、テーブル3をXZ面に平行な基準面に対して少なくとも一方向に傾斜させることができる(傾斜機構)。例えば、
図2(テーブル3の傾き動作の例を示す模式図)に示すように、テーブル移動機構4は、Z軸と平行な軸回りの回転動作により、テーブル3を左下に傾けたり右下に傾けたりすることができる。これにより、テーブル3に対する固着が解除された造形物Pをテーブル3の外側へ滑らせて落下させることができる。なお、傾斜角が大きいほど造形物3を滑落させ易いため、テーブル3の最大傾斜角は、90度(基準面0度に対して)とするのが望ましい。
【0031】
ガイド部材5は、テーブル3の下方に配置された板状の部材であり、テーブル3が傾くことにより滑落して来た造形物Pを受け、造形装置1内の所定の領域あるいは造形装置1外の所定の領域まで滑らせて導く。所定の領域は、例えば、造形物Pを収納するケース、造形物Pを搬送するコンベヤなどである。
【0032】
図2の例では、左右2箇所のガイド部材5が設けられており、それぞれ筐体2に形成された開口(図示せず)を挿通して外部に延出している。各ガイド部材5は、外側へ向かって低くなる傾斜面を形成している。左に傾いたテーブル3から滑落した造形物Pは、左側のガイド部材5で受けられその上を滑り落ち筐体2の左側の外へ導かれる。右に傾いたテーブル3から滑落した造形物Pは、右側のガイド部材5で受けられその上を滑り落ち筐体2の右側の外へ導かれる。
【0033】
ヘッド6は、カートリッジ8から供給される造形材料9を加熱し、溶解した流動状態の造形材料を先端のノズルから吐出する。フィラメント状の造形材料9をヘッド6に供給するための送り機構(図示せず)は、ヘッド6内部あるいはヘッド6外部に設けられる。この送り機構の構成は特に限定されないが、例えば、モーター、ギア、ローラ等の機械部品から構成することができる。
【0034】
ヘッド移動機構7は、ヘッド6を保持し、ヘッド6を移動させる機構である。ヘッド移動機構7は、ヘッド6をX軸方向及びZ軸方向に移動させることができる。ヘッド移動機構7は、ヘッド6をY軸方向に移動させることができてもよい。ヘッド移動機構7の構成は特に限定されないが、例えば、モーター、ギア、レール、ベルト等の機械部品から構成することができる。
【0035】
カートリッジ8は、フィラメント状のABS樹脂やPLA樹脂などの造形材料9が巻き回されており、造形材料9を引き出すことができるように構成されている。造形材料9の先端は、カートリッジ8から引き出され、上述の送り機構に装填されている。
【0036】
コントローラー10は、造形装置1の全体の動作を統合的に制御する。例えば、コントローラー10は、データ出力装置(パーソナルコンピューター、スマートフォン、サーバコンピュータ、クラウド上のコンピュータ等)から送信された、あるいは、記録媒体から読み込まれた造形用データに基づいて、ヘッド移動機構7及びテーブル移動機構4を制御して、ヘッド6のテーブル3上方の造形位置(ヘッド6及びテーブル3の相対位置)を移動させる。また、コントローラー10は、ヘッド6を制御して、当該造形位置で造形材料を溶融積層させる。このような処理の繰り返しにより、造形材料が積層され、造形物Pが造形される。
【0037】
また、コントローラー10は、造形物Pの造形が完了した後、後述する昇降機構34を制御してテーブル3から造形物Pの底面を剥がす。そして、コントローラー10は、テーブル移動機構4を制御してテーブル3を傾け、造形物Pを滑落させる。このような処理により、作製した造形物Pがテーブル3から搬出されるので、次の造形物Pの造形を開始することができる。
【0038】
コントローラー10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、通信インターフェイス、ディスプレイ、入力装置、記録媒体の読取装置等を有するコンピュータで実現できる。コントローラー10は、CPU以外に専用の画像処理回路などの回路を搭載してもよい。コントローラー10の機能及び処理は、例えばCPUが所定のプログラムを実行することで実現できる。
【0039】
図3は、テーブル3の外観の一例を示す斜視図である。テーブル3は、フレーム体31、複数の第1のテーブル領域32、及び複数の第2のテーブル領域33から構成されている。図の例では、複数の第2のテーブル領域33の周囲の領域は、連続した一体の領域である。しかし、この領域は、便宜上区切って、複数の第1のテーブル領域32として理解することができる。複数の第1のテーブル領域32及び複数の第2のテーブル領域33は、フレーム体31の内側に設けられ、テーブル3の上面を構成している。複数の第1のテーブル領域32及び複数の第2のテーブル領域33は、幾何学形状であり、2次元方向(X軸方向及びZ軸方向)に交互に配列されている。
【0040】
なお、第1のテーブル領域32と第2のテーブル領域33の面積の比率は、後述する昇降動作により剥離される面積が同程度となるように、同程度とするのが望ましい。
【0041】
第1のテーブル領域32と第2のテーブル領域33の幾何学形状は、
図3及び
図10(A)に示すような四角形に限らず、
図10(B)に示すような三角形であってもよいし、それ以上の多角形であってもよいし、多角形の角を丸めた形状であってもよい。また、第1のテーブル領域32と第2のテーブル領域33のそれぞれの数は、図示した例に限られないし、それらの配置は、ランダムであってもよい。
【0042】
図10(C)に示すように、四角形である複数の第2のテーブル領域33を、X軸方向及びZ軸方向に対して斜め方向に配列してもよい。また、
図11(A)に示すように、多角形(長方形の対角に切り欠き形成して成る多角形)である複数の第2のテーブル領域33を、X軸方向及びZ軸方向に対して斜め方向に配列してもよい。また、
図11(B)に示すように、線対称の2つの三角形をZ軸方向にずらして配置したセットである第2のテーブル領域33を、X軸方向及びZ軸方向に対して斜め方向に配列してもよい。また、
図11(C)に示すように、2つの三角形を線対称に配置したセットである第2のテーブル領域33を、X軸方向及びZ軸方向に対して斜め方向に配列してもよい。これらの配列パターンでは、複数の第2のテーブル領域33の間に、X軸方向及びZ軸方向に直線状に連続する領域が存在しない。そのため、例えば細長い造形物PをX軸方向又はZ軸方向に沿って配置すれば、その底面は複数の第1のテーブル領域32及び複数の第2のテーブル領域33の両方に接する。
【0043】
図4は、テーブル3の昇降機構34の構成例を示す模式図であり、(A)は第2のテーブル領域33が基準高さに位置した状態、(B)は第2のテーブル領域33が下降した状態、(C)は第2のテーブル領域33が上昇した状態を示す。
図4は、
図3のテーブル3のXY断面を示している。
【0044】
複数の第1のテーブル領域32は、
図4(A)〜(C)に示すように、その上面がテーブル3の上面の基準高さ位置Hに一致するように、フレーム体31に対して固定されている。
【0045】
一方、複数の第2のテーブル領域33は、
図4(A)〜(C)に示すように、その上面の高さを昇降することができる。例えば、複数の第2のテーブル領域33は、それらの下側に配置された昇降機構34により保持されており、昇降機構34の昇降動作により上下方向に移動することができる。昇降機構34の構成は特に限定されないが、例えば、モーター、ギア、レール、シリンダなどの機械部品から構成することができる。
【0046】
図4(A)では、複数の第2のテーブル領域33は、その上面がテーブル3の上面の基準高さ位置Hに一致するように、位置決めされている。第2のテーブル領域33の上面と第1のテーブル領域32の上面には段差が生じず、テーブル3上面が平坦になる。
図4(B)では、複数の第2のテーブル領域33は、その上面がテーブル3の上面の基準高さ位置Hよりも低くなるように、位置決めされている。第2のテーブル領域33の上面と第1のテーブル領域32の上面には、段差G1が生じている。
図4(C)では、複数の第2のテーブル領域33は、その上面がテーブル3の上面の基準高さ位置Hよりも高くなるように、位置決めされている。第2のテーブル領域33の上面と第1のテーブル領域32の上面には、段差G2が生じている。
【0047】
図5は、テーブル3の昇降機構34の動作例を示す模式図であり、(A)は第2のテーブル領域33が基準高さに位置した状態、(B)は第2のテーブル領域33が下降した状態、(C)は第2のテーブル領域33が上昇した状態を示す。
【0048】
まず、
図5(A)に示す状態では、造形物Pの底面は、複数の第1のテーブル領域32の上面及び複数の第2のテーブル領域33の上面に、固着している。乾燥や熱により固化する糊(接着材と呼んでもよい)がテーブル3の上面に予め塗布されていた場合は、その定着層を介してさらに強く固着することになる。
【0049】
次に、
図5(B)に示すように、複数の第2のテーブル領域33を基準高さ位置Hよりも低く下降させると、段差G1が生じるため、造形物Pの底面から複数の第2のテーブル領域33の上面が引き剥がされる。この状態では、造形物Pの底面は、複数の第1のテーブル領域32の上面に未だ固着している。
【0050】
次に、
図5(C)に示すように、複数の第2のテーブル領域33を基準高さ位置Hよりも高く上昇させると、段差G2が生じるため、造形物Pの底面から複数の第1のテーブル領域32の上面が引き剥がされる。このようにして、造形物Pの底面は、複数の第1のテーブル領域32の上面及び複数の第2のテーブル領域33の上面に対する固着が解除される。
【0051】
図6は、造形装置1の動作の一例を示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、造形装置1の電源がオンされた後に開始される。
【0052】
まず、コントローラー10は、次の造形対象である造形物Pの造形指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS1)。例えば、コントローラー10は、造形用データを含む造形指示を、通信インターフェイスを介してデータ出力装置から受信したか否かを判定する。造形指示を受け付けたと判定するまで、コントローラー10は、ステップS1の処理を繰り返す(ステップS1でNO)。
【0053】
次の造形指示を受け付けたと判定した場合(ステップS1でYES)、コントローラー10は、造形処理を実行する(ステップS2)。例えば、コントローラー10は、ステップS1で受け付けた造形用データに基づいて、ヘッド移動機構7及びテーブル移動機構4を制御して、ヘッド6のテーブル3上方の造形位置(ヘッド6及びテーブル3の相対位置)を移動させる。また、コントローラー10は、ヘッド6を制御して、当該造形位置で造形材料を溶融積層させる。このような処理の繰り返しにより、造形材料が積層され、ステップS1で指示された造形物Pが造形される。
【0054】
次に、コントローラー10は、造形物Pの剥離処理を実行する(ステップS3)。例えば、コントローラー10は、昇降機構34を制御して、第2のテーブル領域33の昇降動作(
図5(B)(C))を1回以上繰り返す。これにより、造形物Pの底面はテーブル3の上面から剥離する。その後、コントローラー10は、第2のテーブル領域33を基準高さ位置Hに戻す(
図5(A))。
【0055】
次に、コントローラー10は、造形物Pの搬出処理を実行する(ステップS4)。例えば、コントローラー10は、テーブル移動機構4を制御して、テーブル3を傾ける。これにより、造形物Pはテーブル3から滑ってガイド部材5上に滑落し、ガイド部材5により所定の領域まで搬送される。その後、コントローラー10は、テーブル3の傾きを初期姿勢(水平)に戻し、処理をステップS1に戻す。
【0056】
なお、剥離処理及び搬送処理は上述のフローチャートに示す例に限定されない。例えば、コントローラー10は、テーブル3を傾けた後、その状態で剥離処理を行い、その後テーブル3を初期姿勢に戻してもよい。このようにしても、造形物Pを滑落させることができる。
【0057】
また、ステップS4では、コントローラー10は、造形物Pを複数のガイド部材5のいずれかから搬出されるように仕分けてもよい。具体例としては、コントローラー10は、前回の造形物Pを滑落させたガイド部材5とは異なるガイド部材5を選択し、当該選択したガイド部材5の方にテーブル3を傾ける。他の具体例としては、造形指示にいずれかのガイド部材5の識別子を含めておき、コントローラー10は、造形指示で指定されたガイド部材5の方にテーブル3を傾ける。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明した。本実施形態の造形装置1によれば、造形物Pをテーブル3から剥がす工程を自動化することができる。また、複数の造形物Pの連続造形を自動化することができる。
【0059】
ところで、上述の実施形態では、接着材のテーブル3の上面への塗布は、ユーザーが行う必要がある。この作業を自動化するため、造形装置1のテーブル3は、接着材の吐出機構を備えていてもよい。以下、具体的に説明する。
【0060】
図7は、接着材の吐出機構の構成例を示す模式図である。テーブル3の内部には、液状又はゲル状の接着材を流すための流路35が設けられている。流路35の入口36は、テーブル3の外部に設けられた、接着材が充填された接着材カートリッジ(図示せず)に接続されている。流路35は複数に分岐され、各分岐の出口37は、第2のテーブル領域33の上面に形成されている。接着材カートリッジと流路35の間には、例えばポンプ(図示せず)が設けられており、このポンプの力によって接着材が流路35を流れ、各出口37から吐出される。このポンプの動作は、コントローラー10によって制御される。
【0061】
もちろん、接着材の吐出は、ポンプ機構に限られず、インクを使用するプリンターの技術を応用して、例えば出口37近傍に設けたピエゾ素子やヒーターにより制御されてもよい。従って、これらの接着材を吐出させるための機構は、例えば吐出制御部と呼ぶことができる。なお、接着材がその形状を保つことができない液体又はゲル状である場合は、接着材カートリッジは、接着材タンクとして機能する。一方、接着材がその形体を保つことができるゲル状である場合は、接着材カートリッジは、例えば、フィラメント状の接着材が巻き回されており、接着材を引き出すことができるように構成されている。引き出された接着材は、流路35の入口36に供給される。
【0062】
各出口37から吐出された接着材は、テーブル3に近付けたヘッド6の熱により溶融し、その重みによってテーブル3上面に広がり、その後放熱されて固化し、これにより定着層が形成される。ここで使用される接着材は、所定温度以上の熱により溶融し、放熱により固化する性質を持つ、固形状のものとすることができる。定着層を介してテーブル3上面に造形物Pを形成することで、より強固に固着することができる。
【0063】
複数の出口37の配置は、
図7に示す例に限られない。例えば、複数の第1のテーブル領域32に設けられてもよいし、複数の第1のテーブル領域32と複数の第2のテーブル領域33の両方に設けられてもよい。
【0064】
図8は、接着材の吐出機構の他の構成例を示す模式図である。造形装置1は、
図1と比較して、さらに、接着材ヘッド11、及び接着材カートリッジ12を備える。接着材ヘッド11は、接着材カートリッジ12から供給される接着材を先端のノズルから吐出する。接着材カートリッジ12と接着材ヘッド11の間には、例えばポンプ(図示せず)が設けられており、このポンプの力によって接着材が接着材ヘッド11に供給される。このポンプの動作及び接着材ヘッド11の動作は、コントローラー10によって制御される。ヘッド移動機構7は、接着材ヘッド11を保持し、接着材ヘッド11をX軸方向及びZ軸方向に移動させることができる。
【0065】
もちろん、接着材の吐出は、ポンプ機構に限られず、インクを使用するプリンターの技術を応用して、例えば接着材ヘッド11のノズルに設けたピエゾ素子やヒーターにより制御されてもよい。従って、これらの接着材を吐出させるための機構は、例えば吐出制御部と呼ぶことができる。
【0066】
接着材ヘッド11のノズルから吐出された接着材は、近接配置されたヘッド6の熱により溶融し、テーブル3上面に塗布される。そして、その重みによってテーブル3上面に広がり、その後放熱されて固化し、これにより定着層が形成される。ここで使用される接着材は、所定温度以上の熱により溶融し、放熱により固化する性質を持つ、固形状のものとすることができる。定着層を介してテーブル3上面に造形物Pを形成することで、より強固に固着することができる。
【0067】
図9は、造形装置1の動作の他の例を示すフローチャートである。
図9のフローチャートには、
図6と異なる点として、ステップS1とステップS2の間にステップS5が挿入されている。
【0068】
造形指示を受け付けたと判定した場合(ステップS1でYES)、コントローラー10は、定着層の形成処理を実行する(ステップS5)。
【0069】
例えば、造形装置1が
図7に示す吐出機構を備える場合について説明する。コントローラー10は、吐出制御部を制御して、接着材を流路35に流し、各出口37から所定量吐出させる。また、コントローラー10は、ヘッド6のテーブル3上方の位置(ヘッド6及びテーブル3の相対位置)を移動させ、出口37の近傍でヘッド6を加熱することで、吐出された接着材を溶融させ、ヘッド6の加熱を停止するとともに当該出口37から離れるように移動させることで、溶融した接着材を固化させる。このような処理を各出口37に対して実行することで、定着層が形成される。
【0070】
例えば、造形装置1が
図8に示す吐出機構を備える場合について説明する。コントローラー10は、ヘッド移動機構7及びテーブル移動機構4を制御して、接着材ヘッド11のテーブル3上方の位置(接着材ヘッド11及びテーブル3の相対位置)を移動させる。また、コントローラー10は、吐出制御部及び接着材ヘッド11を制御して、当該位置で接着材を所定量吐出させる。また、コントローラー10は、接着材ヘッド11に近接配置されたヘッド6を加熱することで、吐出された接着材を溶融させ、ヘッド6の加熱を停止するとともに当該位置から離れるように移動することで、溶融した接着材を固化させる。このような処理を各位置に対して実行することで、定着層が形成される。接着材を吐出する複数の位置は、造形物Pの底面と同じか広い一定の領域内に間隔を空けて配置すればよい。
【0071】
上述の吐出機構を用いることにより、定着層を生成する工程も自動化することができる。
【0072】
なお、上述の吐出機構では、固形状の接着材を使用し、ヘッド6の熱により溶融させ、放熱により固化させている。吐出機構の変形例では、熱や乾燥により固化する性質を持つ接着材を用いてもよい。具体的には、例えばゲル状又は液状の接着材を使用し、テーブル3上面に吐出し、その重みで広がった接着材をヘッド6の熱で加熱することにより固化させる。
【0073】
また、上述の吐出機構では、ヘッド6の熱を使って接着材を加熱している。吐出機構の変形例では、テーブル3にその上面を加熱するヒーターを設け(テーブル3がヒーテッドベッドの機能を有する)、その熱を使って接着材を加熱してもよい。
【0074】
また、上述の吐出機構では、ヘッド6の熱を使って接着材を加熱している。吐出機構の変形例では、接着材ヘッド11にヒーターを設け、その熱を使って接着材を加熱してもよい。
【0075】
本発明は、上記の各実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能であり、それらの態様を含むものである。ある実施形態の一部の構成要素を、他の実施形態に加えたり、他の実施形態の一部の構成要素と置換したりしてもよい。ある実施形態の構成要素のうち、一部の構成要素を省略することもできる。
【0076】
例えば、造形装置1は、1つのガイド部材5を備えてもよいし、3つ以上のガイド部材5を備えてもよい。この場合、テーブル移動機構4は、1つ又は3つ以上のガイド部材5の方へテーブル3を傾けるための機械構造を備えればよい。
【0077】
また例えば、造形装置1は、単色に限らず複数色で造形を行うための機械構造を備えてもよい。
【0078】
また、上述の実施形態に係る造形装置1では、テーブル移動機構4がテーブル3をY軸方向に移動させることができ、ヘッド移動機構7がヘッド6をX軸方向及びZ軸方向に移動させることができる。しかし、三次元方向に造形位置を移動させることができれば、このような構成に限定されない。例えば、テーブル移動機構4がテーブル3をXYZ軸方向に移動させることができ、ヘッド移動機構7は固定されていてもよい。また例えば、テーブル移動機構4が固定されており、ヘッド移動機構7がヘッド6をXYZ方向に移動させることができてもよい。また、テーブル移動機構4は、Y軸と平行な軸回りにテーブル3を回転させることができてもよい。
【0079】
また、
図6,9で示したフローチャートのステップ単位は、造形装置1の処理動作を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。ステップ単位の分割の仕方や名称によって、本発明が制限されることはない。造形装置1の処理動作は、内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割することもできる。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理動作を含むように分割することもできる。
【0080】
また、造形装置1の各構成要素の配置、寸法、形状等の構成は、本発明の目的を達成できれば、上記に説明あるいは図示した例に限られない。また例えば、「水平」などの構成要素の関係や形状を表す言葉は、本発明の目的及び効果を達成できるのであれば、言葉どおりの厳密な意味に限られず、その意味と実質的に同一な場合も含むことができる。
【0081】
なお、本発明は、上述したような造形材料を溶融積層させる方式の造形装置に限らず適用できる。例えば光造形や粉体造形などの他の方式の造形装置にも適用できる。従って、造形材料を積層する方向、造形装置の各構成要素の配置などは、3Dプリンターの方式に応じて適宜決定することができ、本発明は、同様の課題が起こり得る様々な方式の造形装置も含むものと理解できる。
【0082】
本発明は、造形装置、造形物の製造方法に限られず、コンピュータ読み取り可能な造形装置の制御プログラム、テーブル装置などの様々な態様で提供することができる。
【解決手段】造形装置は、その表面に三次元造形物を形成するためのテーブルと、造形材料からなる複数の材料層を積層することにより、前記テーブル上に前記三次元造形物を形成する形成部と、を備える。前記テーブルは、その表面を構成する第1のテーブル領域及び第2のテーブル領域と、前記第1のテーブル領域に対する前記第2のテーブル領域の高さを昇降する昇降機構と、を備える。