【文献】
松崎千秋, 外5名,生野菜および漬け物より単離された乳酸菌の諸性状解析,日本農芸化学会2 0 1 3 年度大会講演要旨集 (オンライン),公益社団法人日本農芸化学会,2013年 3月 5日,講演番号:3A25a08,URL,https://jsbba.bioweb.ne.jp/cgi-bin/jsbba2013/jsbba_user.cgi
【文献】
松崎千秋, 外5名,エンドウマメより単離したLeuconostoc mesenteroidesのIgA産生誘導能,日本生物工学会大会講演要旨集,2013年 8月,Vol.65,p.207,3P−078
【文献】
MONTERSINO, S. et al.,Evaluation of Exopolysaccharide Production by Leuconostoc mesenteroides Strains Isolated from Wine,J. Food Sci.,2008年,73 (4),p.M196-M199
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
受託番号NITE BP-1519で寄託されている、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)NTM048株又はその変異株であって、IgA産生促進作用を有する変異株から産生されるエキソポリサッカライド。
受託番号NITE BP-1519で寄託されている、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)NTM048株又はその変異株であって、IgA産生促進作用を有する変異株を培養する工程を含む、エキソポリサッカライドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の詳細を説明する。本発明は、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)の菌株、より好ましくは、NTM048株又はその変異株が産生するエキソポリサッカライド、該エキソポリサッカライドの製造方法および該エキソポリサッカライド含む組成物等を提供する。
【0015】
(NTM048株)
本発明では以下の方法で、えんどう豆から新たな乳酸菌(NTM048株)を単離した。スクリーニング方法及びNTM048株の菌学的性質は以下のとおりである。
1.スクリーニング
(1)起源
えんどう豆
(2)スクリーニング方法
マウスパイエル板細胞を用いて、IgA産生促進を指標としてスクリーニングを実施した。
2.乳酸菌の同定
(1)ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides) NTM048株
(2)肉眼的特徴
(2−1)MRS寒天培地上において、円形で白色の集落。
(2−2)顕微鏡的特徴:球菌で運動性はなし、芽胞は形成しない。
【0016】
(3)生育温度
30〜37℃で良好に発育する。
(4)生理学的、生化学的特徴
グラム染色性:陽性
糖資化性を表1に示す。
【0018】
さらに、化学分類学的性質として、16S rRNAの約1.5kbを配列番号1に示す。
【0019】
以上の諸性質から、バージィーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology)に照らし、本菌株をロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)に属する菌株と同定し、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)NTM048と命名した。NTM048株は、2013年1月25日に、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8に住所を有する、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託された。受託番号は、NITE BP-1519である。
【0020】
本発明の菌株には、上記NTM048株のみならず、当該菌株の変異体であって、少なくとも哺乳動物の腸管関連リンパ組織において、NTM048株と同等以上のIgA産生促進能等を有するものも含まれる。当該変異体は、他の臓器・組織(例えば、肺、気管支肺胞、血漿等)におけるIgA産生促進作用、脾臓、骨髄、血液等におけるヘルパーT細胞の増大作用が、NTM048株における当該作用と同等以上であることがより好ましい。変異の導入法としては、ニトロソ化合物(ニトロソアミン、ニトロソグアニジン等)、アルキル化剤(EMS;ethyl methanesulfonate)のような化学物質処理による方法、紫外線照射、放射線照射等が挙げられるが、これらに限定されない。得られた変異株が腸管関連リンパ組織において、NTM048株と同等以上のIgA産生促進作用を示すか否かは、上記NTM048株のスクリーニングに用いたのと同様の方法により、当該変異株のIgA産生促進活性を測定し、これをNTM048株における活性と比較することにより検定することができる。
【0021】
ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)の菌株、より好ましくは、NTM048株又はその変異体は、上述のMRS培地等、乳酸菌培養用の培地(固形培地、又は液体培地等)を用いて培養することができる。
【0022】
一態様として、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)の菌株、より好ましくは、NTM048株又はその変異体は、EPSが形成される条件下で、適した培地中で培養することができる。適した培地の組成としては、EPSを生成すれば特に限定はなく、炭素源として、例えば、スクロース、ガラクトース、キシロース、グルコース、ソルビトール、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、又はこれらの混合物を使用することができる。一例として、スクロース、バクトペプトン、酵母抽出物、K
2HPO
4、MnCl
2・H
2O、NaCl、CaCl
2などを組成として含む培地を用いて培養することができる。
【0023】
当該培地には、必要に応じて、各種ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等、又はこれらの誘導体も含む)、各種アミノ酸(天然アミノ酸又は合成アミノ酸も含む)、核酸塩基(プリン、ピリミジン)、無機塩類(MgSO
4、MnSO
4、FeSO
4、NaCl等)等を添加することができる。エキソポリサッカライドを産生すれば特に限定はなく、これらを組み合わせて培地に添加してもよい。
【0024】
ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)の菌株、より好ましくは、NTM048株又はその変異体は、培養温度として、30〜37℃、より好ましくは35〜37℃、培養期間は、16時間〜3日間、より好ましくは1〜2日間、pHは3〜8、より好ましくはpH4〜7で培養し、調製することができる。
【0025】
本発明の菌株の菌体処理物としては、上述の方法で得られる培養液、及び/又は、当該培養液を、自体公知の方法、例えば、遠心分離、ろ過、磁性分離等の方法により処理した湿菌体又はその洗浄物(滅菌水、PBS等により洗浄することができる)、これらの凍結乾燥粉末、加熱死菌体、乾燥死菌体、薬品処理による死菌体、菌体壁等の菌体破砕物、抽出物等が含まれる。
【0026】
あるいは、本発明の菌株の菌体処理物としては、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)の菌株、より好ましくは、NTM048株又はその変異体自体を使用し、乳製品、穀物、又は加工食品等に当該菌株を接種して発酵させて得られる菌体処理物も含まれる。
【0027】
(エキソポリサッカライド(菌体外多糖))
エキソポリサッカライドは、菌株が産生する多糖類であり、ホモ多糖類及びヘテロ多糖類に分類することができる。ホモ多糖類は、単一の型の単糖から構成される。例えば、α-グルカン、β-グルカン、ガラクタン等が挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロ多糖類は、2種以上の異なる単糖の反復単位から構成される。反復単位を構成する単糖の種類としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラムノース、アセチルグルコサミン、アセチルガラクトサミン、フコース、グルクロン酸、非糖置換基(例えば、アセチル基、グリセロール等)などが挙げられるが、これらに限定されない。
エキソポリサッカライドの構造は、NMR分析、メチル化分析などの手法により解析することができる。
【0028】
本発明のエキソポリサッカライドは、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)の菌株、より好ましくは、NTM048株又はその変異体を培養して製造することができる。
【0029】
培養液からのエキソポリサッカライドの分離法は、エキソポリサッカライドが得られれば特に限定はないが、培養液を遠心分離等により、上清と細胞とに分離し、該上清に酸(例えば、トリクロロ酢酸、過塩素酸等)又は有機溶媒(例えば、アセトン、メタノール、エタノール等)を添加してタンパク質を除去し、さらにアルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール等)を添加してエキソポリサッカライドを沈殿させて回収することができる。該沈殿はさらに精製(例えば、透析等)を行ってよい。前記分離法は、培養液、培養条件等に応じて、適宜調整することができる。
【0030】
本発明のNTM048株を培養し、分離することによって得られるエキソポリサッカライドの平均分子量は、公知の方法により求めることができる。例えば、GPC液体クロマトグラフィーやGFC液体クロマトグラフィーによる相対分子量測定法等を使用することができる。後述する実施例の通り、本発明のエキソポリサッカライドの分子量は、30,000〜50,000である。
【0031】
(組成物)
本発明は、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)の菌株、より好ましくは、NTM048株又はその変異体が産生するエキソポリサッカライドを含む組成物を提供する。該組成物は、さらに、医薬上許容される担体を含んでもよい。
【0032】
医薬上許容される担体は、対象に投与したときに対象にアレルギー反応など、望ましくない反応を引き起こすことがない担体をいう。例えば、賦形剤、安定剤、キレート剤、希釈剤、ゲル化剤、溶媒、乳化剤、懸濁剤、分解剤、結合剤、保存剤、潤滑剤、及びこれらの類似物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明はまた、医薬品、食品、化粧料、飼料として前記組成物を提供する。
【0034】
本発明の医薬品は、腸管免疫活性剤、抗アレルギー剤、抗ウイルス剤等として使用することができる。
【0035】
腸管免疫活性とは、腸管関連リンパ組織におけるIgA産生を促進する作用をいう。場合によっては、IgA産生の制御作用も含まれる。
【0036】
本発明の医薬品は、ヒト、又はヒト以外の動物(例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ブタ、ウシ、ニワトリ、インコ、九官鳥、ヤギ、ウマ、ヒツジ、サル等)に投与し、腸管免疫、アレルギー、ウイルス感染等に関連する疾患を予防又は治療するために、使用することができる。
【0037】
腸管免疫活性剤は、腸管免疫に関連する疾患に適用することができる。腸管免疫に関連する疾患とは、例えば、食物(そば、米、小麦、卵、牛乳、落花生、オレンジ、りんご、キウイフルーツ等の果物、えび、カニ等の甲殻類、魚介類等)アレルギー、花粉(スギ、イネ、ブタクサ、セイタカアワダチソウ、ヨモギ、シラカンバ、オオアワガエリ、カモガヤ等)アレルギー、ハウスダスト、化学物質、金属等のアレルギー、感染症(黄色ブドウ球菌、サルモネラ、コレラ菌、病原性大腸菌、ストレプトコッカス・ミュータンス、クロストリジウム、赤痢菌等の細菌感染、インフルエンザウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、ヘルペスウイルス等のウイルス感染、寄生虫、原虫感染等)、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎等)、自己免疫疾患(臓器特異性自己免疫疾患及び全身性自己免疫疾患)、ストレスによる腸管免疫の機能低下等、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
アレルギーは、特定の抗原に対して過剰に免疫反応が起きることをいう。抗アレルギー剤として、I型アレルギー(食物アレルギー、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎等)、II型アレルギー(悪性貧血、リウマチ熱、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、橋本病等)、III型アレルギー(血清病、全身性エリテマトーデス(ループス腎炎)、急性糸球体腎炎、関節リウマチ、過敏性肺臓炎、リウマチ性肺炎等)等への適用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
抗ウイルス剤としては、インフルエンザウイルス、エイズウイルス等の感染への適用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
当該医薬品の剤型としては、散剤、顆粒剤、丸剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル錠、速崩錠、シロップ、液剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、粘付剤、吸入剤、注射剤等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製される。
【0041】
注射剤の形で投与する場合には、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経皮、関節内、滑液嚢内、胞膜内、骨膜内、舌下、口腔内等に投与することが好ましく、特に静脈内投与又は腹腔内投与が好ましい。静脈内投与は、点滴投与、ボーラス投与のいずれであってもよい。
【0042】
本発明の医薬品の投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、本発明のエキソポリサッカライドを1日投与量として、通常、0.5μg〜10g、好ましくは、5μg〜5g、より好ましくは、50μg〜1gを、経口的または非経口的に投与することができる。投与は1日に複数回に分けてもよい。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
【0043】
また、本発明の医薬品の別の態様として、本発明はまた、有効成分としてのロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)の菌株、より好ましくは、NTM048菌株(変異体も含む)又はその菌体処理物、および医薬上許容される担体(賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等)を含む、乳酸菌剤、腸管免疫活性剤、抗アレルギー剤、抗ウイルス剤等を提供する。
【0044】
前記乳酸菌剤、腸管免疫活性剤、抗アレルギー剤、抗ウイルス剤等は、単独で使用することができる。あるいは、他の乳酸菌、乳酸菌製剤、その他の微生物、微生物製剤と併用して使用することもできる。
【0045】
他の乳酸菌としては、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属等に属する種が挙げられ、乳酸菌製剤としては、上記菌を含む製剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
その他の微生物としては、酵母、バチルス(Bacillus)属、酪酸菌(Clostridium butyricum)、麹菌等の真菌等が挙げられ、微生物製剤としては、上記微生物を含む製剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
添加剤としては、例えば大豆油、サフラー油、オリーブ油、胚芽油、ひまわり油、牛脂、いわし油等の動植物性油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤、精製水、乳糖、デンプン、結晶セルロース、D−マンニトール、レシチン、アラビアガム、ソルビトール液、糖液等が挙げられる。結合剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。崩壊剤としては、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン等が挙げられる。滑沢剤としては、タルク、水素添加植物油、ロウ類、軽質無水ケイ酸等の天然物由来及びその誘導体等、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0048】
上記医薬品は、さらに、甘味料、着色料、pH調整剤、香料、各種アミノ酸等を添加することもできる。また、錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしても良い。液体製剤であれば、服用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよい。
【0049】
上記医薬品に含まれるNTM048株又はその変異株の菌数としては、1日あたりの摂取量が10
4コロニー形成ユニット(以下、cfuという)以上10
12cfu以下、好ましくは10
6cfu以上10
9cfu以下である。
【0050】
本発明の食品は、溶液、懸濁物、粉末、固体成形物等、経口摂取可能な形態であればよく、特に限定するものではない。具体例としては、サプリメント(散剤、顆粒剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル錠、速崩錠、シロップ、液剤等)、飲料(炭酸飲料、乳酸飲料、スポーツ飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料等)、乳製品(ヨーグルト、バター、チーズ、アイスクリーム等)、菓子(グミ、ゼリー、ガム、チョコレート、クッキー、キャンデー、キャラメル、和菓子、スナック菓子等)、即席食品類(即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品等)、油、油脂食品(マヨネーズ、ドレッシング、クリーム、マーガリン等)、小麦粉製品(パン、パスタ、麺、ケーキミックス、パン粉等)、調味料(ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、つゆ類等)、畜産加工品(畜肉ハム・ソーセージ等)が挙げられる。
【0051】
上記食品には、必要に応じて各種栄養素、各種ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等)、各種ミネラル類(マグネシウム、亜鉛、鉄、ナトリウム、カリウム、セレン等)、食物繊維、分散剤、乳化剤等の安定剤、甘味料、呈味成分(クエン酸、リンゴ酸等)、フレーバー、ローヤルゼリー、プロポリス、アガリクス等を配合することができる。
【0052】
本発明の食品の1日摂取量としては、摂取する対象、対象疾患、症状などによっても異なるが、例えば、本発明のポリサッカライドを1日摂取量として、通常、0.1mg〜10g、好ましくは、1mg〜5g、より好ましくは、10mg〜1gを、経口的に摂取することができる。摂取は1日に複数回に分けてもよい。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
【0053】
本発明の化粧料としては、クリーム、ゲル、乳液、美容液、ローション、マイクロエマルジョンエッセンス、パック、ファンデーション、口紅、アイシャドー、シャンプー、コンディショナー、入浴剤等が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、香料等を混合してもよい。
【0054】
本発明の化粧料の1日使用量としては、使用対象、対象疾患、症状などによっても異なるが、例えば、本発明のポリサッカライドを1日使用量として、通常、1μg〜30g、好ましくは、10μg〜10g、より好ましくは、100μg〜1gを、使用することができる。使用は1日に複数回に分けてもよい。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
【0055】
本発明の飼料としては、ペットフード、動物又は水産養殖飼料添加物等が挙げられる。
【0056】
本発明の飼料の1日摂取量としては、摂取させる動物、対象疾患、症状などによっても異なるが、例えば、本発明のポリサッカライドを1日摂取量として、通常、1μg/kg体重〜0.2g/kg体重、好ましくは、10μg/kg体重〜0.02g/kg体重、より好ましくは、0.1mg/kg体重〜2mg/kg体重を、経口的に摂取させることができる。摂取は1日に複数回に分けてもよい。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
【0057】
(IgA産生)
本発明において、IgA産生は自体公知の方法で、測定することができる。例えば、パイエル板細胞を後述の実施例に示すコラゲナーゼを使用する方法等により調製して、当該パイエル板細胞を乳酸菌存在下で培養し、培養上清を回収する。当該培養上清中に含まれるIgAの量をELISA法(市販のIgA測定キット等)等、自体公知の方法により測定する。そして、対照群(例えば、陰性対照であれば生理食塩水、陽性対照であればLPS等)と比較して、IgA量の変化を確認する。
【0058】
パイエル板細胞は、マウス、ラット、ヒト等の種を問わず、調製法も上記方法に限定されず、当業者は必要に応じて適宜選択することができる。あるいは、in vivoでのIgA産生誘導活性を測定するためには、個体(マウス、ラット、ヒト等の種を問わず)から生物学的試料(血液、糞等)を採取し、当該試料中のIgA量の変化を確認することができる。
【0059】
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示にすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0060】
培地、試薬及び菌株
培地:RPMI-10培地[RPMI 1640培地(Gibco社製)に10%牛胎児血清を追加]、MRS培地(Difco社製)
試薬:コラゲナーゼ(Sigma社製)、DNase(Takara社製)、B512F株(Leuconostoc mesenteroides)産生デキストラン(Sigma社製)
菌株:NTM048株[えんどう豆から単離した(受託番号:NITE BP-1519、寄託日:2013年1月25日)]、JCM16943株(Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris)、JCM6124株(Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides)[独立行政法人 理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室(JCM)より購入した。]
【0061】
参考試験例1 コラゲナーゼ調製法によるパイエル板細胞の調製
7週齢のBALB/cA マウスより小腸パイエル板を摘出した。当該パイエル板をRPMI-10培地で洗浄し、5 mL のIEC-dissociating solution(25 mM HEPES, 5 mM EDTA, 1 mM DTT in RPMI-10)の入った滅菌ディッシュに移し、CO
2インキュベーター内で、37℃で45分インキュベートした。よくピペッティングした後、5 mL のEDTA solution (5 mM EDTA in RPMI-10)の入った滅菌ディッシュ に移し、CO
2インキュベーター内で、37℃で5分インキュベートした。さらによくピペッティングした後、パイエル板を、5 mLのdigestion solution (400 U/mL コラゲナーゼ, 30 U/mL DNase in RPMI-10)とスターラーバーを入れた50 mL チューブに移し、37℃で30分攪拌しながらインキュベートした。酵素分解終了後、パイエル板細胞は培地中に懸濁されているため濁っており、遠心(1400 rpm, 7分, 4℃)後、4 mLの上清を吸引除去した。当該パイエル板細胞の懸濁液(1 mL)を40μmのセルストレーナーに通し、遠心(1400 rpm, 7分, 4℃)後、上清を吸引除去し 1 mLのRPMI-10培地に懸濁した。細胞数をカウントした後、免疫機能活性の測定に用いた。
【0062】
参考試験例2 IgA産生量の測定
様々な生野菜及び漬物から単離した約200株の乳酸菌について、マウス小腸パイエル板細胞を用いたIgA産生促進能を検討した。
【0063】
上述のコラゲナーゼ調製法により得られたパイエル板細胞の濃度を2.5 ×10
5 cells/mLになるよう、CD3抗体コート96穴プレート(BD Biosciences社製)に調整した。当該パイエル板細胞懸濁液に、MRS培地にて液体培養後、生理食塩水にて10 μg/mLに菌体濃度を調整した乳酸菌を等量加え、37℃、5% CO
2嫌気条件下で5日間反応後、パイエル板細胞から産生した総IgA量をMouse IgA ELISA Quantitation Set (BETHYL社製)を用いて測定した。乳酸菌NTM048株についての結果を
図1に示す。
【0064】
有意に高いIgA産生促進能を有する乳酸菌2株(NTM047、NTM048)を選出した。両株について70℃、30分熱処理し、得られた死菌体について同様にパイエル板細胞を用いたIgA産生促進能を調べたところ、両株ともに生菌体と同様のIgA産生促進能が確認された。当該結果からNTM047株およびNTM048株によるIgA産生誘導物質は菌体壁または菌体外成分であることが示唆された。さらに16S rDNA配列解析により菌種同定を試みたところ、これら2株は同一菌株であることが明らかになった。
【0065】
参考試験例3 Type strainとの比較
参考試験例2と同様の方法で、パイエル板細胞を用いたin vitroにおけるIgA産生誘導活性について、NTM048株と、JCM16943株及びJCM6124株とで比較を行った。結果を
図2に示す。
【0066】
NTM048株は、Leuconostoc mesenteroides の他の菌株に比べて、IgA産生を高く誘導することが確認された。
【0067】
参考試験例4 in vivo でのIgA産生誘導活性の確認
6週齢のオスBALB/cマウスに、2週間予備飼育(乳酸菌フリーの餌;AIN-76)を行った後、各試験区5匹ずつに、0、0.05、0.5、5%の乳酸菌NTM048株を含むAIN-76を2週間投与し、0、7、14日目の糞を採取してIgA量を確認した。糞を採取後、6時間凍結乾燥し、糞重量10 mg/200 μLの割合でProtease Inhibitor Cocktail(Roche社製)を含む抽出用緩衝液(PBS)に懸濁した。当該懸濁液を、ボルテックスにて撹拌して30分氷冷した後、遠心(15000 rpm, 10分, 4℃)し、上清中に抽出された総IgA量を上述のとおりELISA法で測定した。
【0068】
表2に餌の組成を、IgA産生誘導の結果を
図3に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
14日目にすべての菌体投与区においてIgA量の増加がみられ、0.5%及び5%NTM048株投与マウスにおいて有意差(P<0.01、P<0.05)が認められた。
【0071】
実施例1 菌体外多糖(EPS)の産生と精製方法
EPSの抽出はthe production and purification method for EPS of L. mesenteroides strain(Sarwat,Ul Qader,Aman,&Ahmed,2008)に従い行った。
一晩培養したNTM048菌株培養液500μLをEPS産生用培地50mL(組成:15% sucrose、0.5% bacto-peptone、0.5% yeast extract、1.5% K
2HPO
4、0.001% MnCl
2・H
2O、0.001% NaCl、 0.005% CaCl
2)に添加し、30℃で24時間培養した後、遠心分離して菌体を取り除いた。上清と同量の冷エタノールを添加して沈殿させ、激しく振とうした後、10,000rpmで15分間遠心分離し上清を取り除いた。この工程を2回繰り返した。沈殿したEPSは12時間、塩化カルシウム上で乾燥させた。不純物を取り除くために、蒸留水にEPSの沈殿物を溶かし、再びその懸濁液と同量の冷エタノールを添加して沈殿させた。この工程を2回繰り返し、沈殿したEPSは12時間、塩化カルシウム上で乾燥させた。このEPSは生理食塩水に溶かし、IgA産生誘導活性の測定に使用した。
【0072】
実施例2 IgA測定
参考試験例1と同様の方法により調製したパイエル板細胞を用いて、NTM048株から産生・精製した菌体外多糖(EPS)について、IgA産生促進能を検討した。
参考試験例1のコラゲナーゼ調製法により得られたパイエル板細胞の濃度を2.5 ×10
5 cells/mLになるよう、CD3抗体コート96穴プレート(BD Biosciences社製)に調整した。当該パイエル板細胞懸濁液に、生理食塩水にて20 μg/mL、100 μg/mL、250 μg/mLの濃度に調整したEPSを等量加え、37℃、5% CO
2嫌気条件下で5日間反応後、パイエル板細胞から産生した総IgA量をMouse IgA ELISA Quantitation Set (BETHYL社製)を用いて測定した。NTM048菌株産生の菌体外多糖(EPS)についての結果を
図4に示す。
【0073】
実施例3 Type strain産生EPSとの比較
参考試験例1と同様の方法により調製したパイエル板細胞を用いて、NTM048株から産生・精製した菌体外多糖(EPS)、B512F株産生デキストラン、およびJCM6124株から産生・精製した菌体外多糖(EPS)についてIgA産生促進能を検討した。B512F株産生デキストランはSigma社製の試薬(製品番号31398)を使用し、菌体外多糖(EPS)として使用した。JCM6124株から産生・精製したEPSについては、実施例1と同様の方法で産生・精製した。
参考試験例1のコラゲナーゼ調製法により得られたパイエル板細胞の濃度を2.5×10
5cells/mLになるよう、CD3抗体コート96穴プレート(BD Biosciences社製)に調整した。当該パイエル板細胞懸濁液に、生理食塩水にて各100μg/mLの濃度に調整したEPSを等量加え、37℃、5%CO
2嫌気条件下で5日間反応後、産生した総IgA量をMouse IgA ELISA Quantitation Set(BETHYL社製)を用いて測定した。NTM048菌株、B512F株産生デキストラン、JCM6124株から産生したEPSの結果を
図5に示す。ネガティブコントロールとして生理食塩水を、ポジティブコントロールとしてリポポリサッカライド(LPS)(Sigma社製)10 μg/mLを等量加えてEPSと同様にIgA産生量を測定した。NTM048株産生のEPSは、他の菌株が産生したEPSと比べて、IgA産生を高く誘導することが確認された。
【0074】
実施例4 菌体外多糖(EPS)の分子サイズ
20mLの超純水に実施例1で産生・精製したNTM048株のEPS 20mgを懸濁し、24時間超音波により溶解させた。溶解液をSepharose CL6B(Sigma社製)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーにより、流速35mL/hの超純水にて溶出させた。結果を
図6に示す。各分画の多糖濃度はフェノール硫酸法にて測定した。
分子量35,000〜45,000のデキストランD1662(Sigma社製)を対照として抽出ピークを確認したところ、NTM048株産生のEPSの分子量は30,000〜50,000と推定された。
【0075】
本発明を好ましい態様を強調して説明してきたが、好ましい態様が変更され得ることは当業者にとって自明である。
【0076】
ここで述べられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。