(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
先ず、
図1を用いて、本実施形態における避難誘導装置の構成を説明する。
図1は、避難誘導装置の構成を示すブロック図である。
【0013】
図1において、避難誘導装置1は、災害情報取得部11、位置情報取得部12、属性情報取得部13、通路情報取得部14、避難経路情報算出部15、報知部16、救護要請部17、救護者情報取得部18、及び記憶部20を備える。避難誘導装置1は、災害報知システム2、位置情報検出システム3、ネットワーク9を介した携帯端末4、及び誘導装置5と接続されている。
【0014】
災害情報取得部11は、災害報知システム2から災害情報を取得する。災害報知システム2は、例えばビルの防災システムである。災害報知システム2は、火災、水害、地震等、避難を要する災害の発生を検知器等で検知して、災害の情報を建屋内に設置されたスピーカや表示器等に報知するシステムである。本実施形態では、災害情報取得部11は、災害報知システム2から、災害の発生地点、防火扉の動作状況等の情報を取得する場合を例示する。災害情報取得部11は、例えば図示しない、気象情報を提供するシステムからの気象情報、自治体からの災害情報、ビデオカメラからの情報、各種センサからの情報等を取得するものであってもよい。災害情報取得部11は、災害報知システム2から通知される災害情報を受信してもよいし、災害報知システム2に定期的にアクセスして災害情報を取得するようにしてもよい。なお、避難誘導装置1は、後述する通路情報を予め記憶しておき、災害報知システム2から取得した災害情報が記憶している通路情報と対応可能であるものとする。例えば、災害情報取得部11は、災害報知システム2から取得した災害発生位置が通路情報として記憶しているどの通路(又はその近傍)で発生したかを把握できるものとする。
【0015】
位置情報取得部12は、個人の位置を示す位置情報を位置情報検出システム3から取得する。個人とは、避難誘導装置を利用して避難をする個々の人である。本実施形態では、個人が救護者に救護される被救護者である場合を以下に例示する。すなわち、被救護者は、避難誘導装置1の利用者であって、災害発生時の避難に際して救護者に救護される者である。被救護者は、例えば、車イス利用者、視覚障碍者、高齢者等である。位置情報取得部12は、被救護者の位置として、例えば、フロア階数、通路の位置、部屋番号等を含んでいてもよい。通路の位置は、廊下、階段、スロープ、エレベータ、エスカレータ等の位置を含んでいてもよい。
【0016】
なお、位置情報取得部12が位置情報を取得する位置情報検出システム3は、例えば、被救護者が利用している携帯端末、無線タグ等を近距離無線、無線LAN(Local Area Network)等の通信装置によって検出するようにしてもよい。また、位置情報検出システム3は、GPS(Global Positioning System)等の測位情報を利用して被救護者の位置を特定するようにしてもよい。さらに、位置情報検出システム3は、建屋等に設置されたビデオカメラ等を用いた利用者認証システムを利用して被救護者の位置を特定するようにしてもよい。
【0017】
属性情報取得部13は、位置情報取得部12で取得された被救護者の属性を示す属性情報を取得する。属性情報は、例えば記憶部20に記憶しておくことができる。被救護者の属性とは、例えば、被救護者が車イス利用者であるか否か、視覚障碍者であるか否か、高齢者等であるか否か等、通路の通行に際して生じる可能性がある通行上の不具合に応じて分類されたものである。例えば、車イス利用者にとっては、階段や大きな段差がある通路について通行に不具合が発生する可能性がある。また、視覚障碍者にとっては、点字ブロックや点字案内が無い通路について通行に不具合が発生する可能性がある。被救護者の属性には、被救護者の体力や歩行能力、年齢等の属性を含んでいてもよい。
【0018】
通路情報取得部14は、被救護者が自力で通行する場合と被救護者が救護を受けて通行する場合の通行適否の情報が通路毎に設定された通路情報を取得する。通路情報は、例えば記憶部20に記憶しておくことができる。本実施形態では、被救護者が自力で通行する場合の通行適否の情報を第1の通路情報とする。また、被救護者が救護を受けて通行する場合の通行適否の情報を第2の通路情報とする。例えば、被救護者の属性が車イス利用であった場合、所定の階段について、被救護者が自力では通行できないが、救護者の救護を受けることにより通行できる場合がある。通路情報は、被救護者が自力で通行する場合の通行適否を示す第1の通路情報と、被救護者が救護を受けて通行する場合の通行適否を示す第2の通路情報を含む。第2の通路情報には、救護者の人数や救護者の体力等に応じた通行適否の情報を含んでいてもよい。通路情報(第1の通路情報及び第2の通路情報)は、廊下、階段、スロープ等の通路について、通路毎に設定される。例えば、1階と2階の間にある階段と、2階から3階の間にある階段は、別通路としてそれぞれ通路情報が設定される。通路には、例えば通路の幅が狭く、または通路の傾斜が強く、通行は可能であるが避難には適さない場合がある。通路情報は、通行が可能であるか不可能であるかの2段階の適否の評価以外に、通路の幅や傾斜に応じて通行の適否を数段階で評価するものであってもよい。適否の評価については、
図2を用いて後述する。
【0019】
避難経路情報算出部15は、災害情報取得部11が取得した災害情報、位置情報取得部12が取得した位置情報、属性情報取得部13が取得した属性情報、及び通路情報取得部14が取得した通路情報に基づき、避難経路を示す避難経路情報を算出する。避難経路情報算出部15は、第1の通路情報に基づく第1の避難経路情報と、第2の通路情報に基づく第2の避難経路情報とを算出する。
避難経路情報(第1の避難経路情報及び第2の避難経路情報)は、位置情報に示された被救護者の現在位置から出口(非常口)までの通路をつないだ避難経路の情報である。避難経路情報算出部15は、取得された災害情報が示す災害発生位置を避けるように避難経路情報を算出する。例えば災害が発生した位置が防火扉等によって遮断されている場合、避難経路情報算出部15は、防火扉等によって遮断されて通行不可能なエリアを避けるように避難経路情報を算出する。避難経路情報算出部15は、防火扉等によって通行不可能なエリアを避けるとともに、属性情報と通路情報を基に、被救護者が通行可能な経路の中で、最短ルート(距離的に最短であるルート又は時間的に最短であるルート)等、最適なルートを算出する。例えば、通路情報にそれぞれの通路の距離又はそれぞれの通路を通過するときに必要な時間を設定することにより、避難経路情報算出部15は、通路情報に基づき最短ルートを算出することができる。なお、通路情報に通行の適否が数段階の評価で設定されている場合、それぞれの段階を数値で換算して避難経路情報を算出してもよい。
【0020】
報知部16は、避難経路情報算出部15で算出された避難経路情報を報知する。報知部16は、ネットワーク9を介して、利用者が所持する携帯端末4に避難経路情報を通知する。報知部16は、上記第1の避難経路情報を被救護者が所持する携帯端末4に通知することができる。被救護者が自力で避難するときには、避難経路情報を被救護者が所持する携帯端末4に通知することにより、被救護者の避難を支援することが可能となる。
また、報知部16は、上記第2の避難経路情報を救護者が所持する携帯端末4に通知することができる。被救護者が救護者の救護によって避難するときには、救護者が避難経路を選択して移動する可能性が高い。第2の避難経路情報を救護者が所持する携帯端末4に通知することにより、救護者被救護者の避難を支援することが可能となる。なお、報知部16は、第2の避難経路情報を被救護者が所持する携帯端末4に通知してもよい。
本実施形態では、避難経路情報算出部15が算出した、第1の通路情報に基づく第1の避難経路情報と第2の通路情報に基づく第2の避難経路情報のいずれか1つ又は両方を報知する。但し、少なくとも第1の通路情報に基づく第1の避難経路情報を報知することによって、救護者がいない場合であっても救護者がいる場合であっても最適な避難経路を報知することが可能となる。
報知部16は携帯端末4に対して、例えば、避難経路を示すテキストデータ又は画像データを携帯端末4の電子メールアドレス宛て等に送信することによって避難経路情報を報知してもよい。また、報知部16は携帯端末4に対して、例えば、避難経路を示すWebページのリンク先を示すデータを送信することによって避難経路情報を報知してもよい。第1の避難経路情報と第2の避難経路情報は、例えば避難経路の色等を変えて図示するようにしてもよい。
また、報知部16は携帯端末4に対して、例えば、避難経路を示す音声データを送信することによって避難経路情報を報知してもよい。避難経路情報の報知の方法は、被救護者の属性情報に基づき決定されてもよい。
【0021】
報知部16は、誘導装置5に対して避難経路情報を報知してもよい。誘導装置5は、例えば、建屋に設置された避難誘導用の表示装置や建屋内放送装置である。避難誘導用の表示装置は、例えば避難方向を矢印で表示して避難を誘導する。建屋内放送装置は、例えば音声をスピーカから流して避難を誘導する。報知部16は、位置情報取得部12で所得される被救護者の現在位置に応じて避難経路情報を報知するようにしてもよい。報知部16は、例えば、避難経路の中で被救護者が次に目標とする物を報知するようにしてもよい。
【0022】
救護要請部17は、位置情報取得部12が取得した位置情報、及び属性情報取得部13が取得した属性情報に基づき、被救護者の救護の要請をする。例えば、位置情報取得部12が取得した位置情報に含まれるフロア情報を基に、そのフロアのスピーカ等を通じて被救護者の位置を報知して、そのフロアにいる人に救護を要請するようにしてもよい。また、位置情報取得部12が救護者の位置情報を取得して、被救護者の近くにいる救護者に対して携帯端末4の電子メール等によって救護を要請するようにしてもよい。救護者の位置の情報の取得は、被救護者の位置情報の取得と同様のシステムによって実現することができる。
救護要請部17は、属性情報に応じて、救護者を特定するようにしてもよい。例えば、被救護者が車イス利用の属性であった場合、被救護者を車イスごと階段で運搬するには少なくとも2人以上の体力のある救護者がいることが望ましい。また、被救護者が視覚障碍者である場合、救護者は1名であっても問題無い場合がある。救護要請部17は、救護者の体力等の情報を取得することにより、被救護者に適した救護者を特定して救護を要請することができる。救護要請部17は、救護者の位置の情報の取得した場合は、被救護者に近い救護者の中で、属性情報を基に救護者を特定して救護を要請してもよい。救護の要請は、救護者に対する電話発呼、電子メール送信、誘導装置5等のスピーカを通じた館内放送等によって行うことができる。また、救護の要請は、所定のアプリケーションを救護者の所持する携帯端末にインストールしておき、そのアプリケーションが避難誘導装置1に定期的にアクセスして救護要請があった旨を通知することによって行うことができる。
【0023】
救護者情報取得部18は、救護要請部17が要請した要請に応じた救護者の情報を取得する。ここで「要請に応じた救護者」とは、要請を承諾して被救護者の救護を行う意思表示をした救護者である。例えば、救護者への救護の要請が電子メール送信によって行われる場合、救護者情報取得部18は、救護者からの電子メールへの返信等によって要請に応じた救護者の情報を取得するようにしてもよい。また、救護の要請が電話発呼によって行われる場合、救護者情報取得部18は、救護者がその電話の通話中にプッシュ操作等をしたことを検出することによって要請に応じた救護者の情報を取得するようにしてもよい。また、救護の要請が館内放送等によって行われる場合、救護者情報取得部18は、救護者からの電子メールの受信又は電話の着呼等によって要請に応じた救護者の情報を取得するようにしてもよい。また、救護の要請が救護者の所持する携帯端末にインストールされたアプリケーションによって行われる場合、救護者情報取得部18は、救護者によるアプリケーションの操作によって要請に応じた救護者の情報を取得するようにしてもよい。
【0024】
記憶部20は、利用者属性情報、通路情報等のデータを記憶する。記憶部20は、例えばハードディスクドライブに設けられた記憶領域である。
図1では、記憶部20が避難誘導装置1の内部に設けられる場合を例示するが、記憶部20は、避難誘導装置1の外部に設けられてもよい。記憶部20は、例えば、図示しないデータサーバに設けられてもよい。
以上で、
図1を用いた、本実施形態における避難誘導装置1の構成の説明を終了する。
【0025】
次に、
図2を用いて、通路情報を説明する。
図2は、通路情報を例示する図である。通路情報は、被救護者の属性に対して通路毎に通行の適否を予め評価して、通行適否の情報を通行記憶部20に記憶しておくことができる。
図2は、通行の適否を3段階で評価する場合を例示している。なお、通路情報は、
図1で説明した通路情報取得部14によって取得される。
【0026】
図2に示す通路情報において、本実施形態では、「通路ID」(IDentification)、及び「被救護者属性」のフィールド項目を有する場合を例示している。
【0027】
「通路ID」は、通路毎に割り当てられた識別情報である。「通路ID」は通路毎に一意に割り当てられている。
図2は、「通路ID」が1a〜4cまで割り当てられている場合を例示する。「通路ID」が割り当てられる通路の数は任意である。「通路ID」は、例えば、廊下、階段、スロープ、エレベータ、エスカレータ等、利用者が通行する全ての通路に割り当てられる。「通路ID」は、通路のエリア毎に割り当てる。例えば、1階と2階の間にある階段と、2階と3階にある階段には、別エリアとして別の「通路ID」が割り当てられる。廊下等は防火扉によって遮断される場合、防火扉等で遮断されるエリアは別エリアとして別の「通路ID」が割り当てられる。なお、
図2は、階段及びスロープに「通路ID」が割り当てられている場合を例示するが、廊下に対して割り当てられる「通路ID」は省略する。なお、エレベータ及びエスカレータ等、災害時に避難経路として利用が禁止される通路には「通路ID」を割り当てないものとする。
【0028】
「被救護者属性」は、被救護者の属性を示す。
図2は、「被救護者属性」が、視覚障碍者、車イス、車イス+救護者である場合を例示している。車イス+救護者は、車イスを利用する被救護者が救護者によって救護される場合の属性を示す。なお、「被救護者属性」には、高齢者等の属性を含んでもよい。
「被救護者属性」の中で、「視覚障碍者」、「車イス」は、被救護者が自力で通行する場合の属性を示す。本実施形態においては、「視覚障碍者」、「車イス」のように被救護者が自力で通行する場合のそれぞれの通路IDの対応した通行適否の情報を「第1の通路情報」という。また、「車イス+救護者」は、被救護者が救護者の救護を受けて通行する場合の属性を示す。本実施形態においては、「車イス+救護者」のように被救護者が救護者の救護を受けて通行する場合のそれぞれの通路IDの対応した通行適否の情報を「第2の通路情報」という。本実施形態では、第1の通路情報と第2の通路情報を用いて避難経路情報を算出するため、被救護者が救護者に救護される可能性がある場合、すなわち、被救護者が実際に救護者に救護されるか否かが未定である場合においても最適な経路を算出することが可能となる。
【0029】
図2において、例えば、「通路ID」が1aの通路は、視覚障碍者と車イス+救護者は通行が可能であるため、通行に適していること○印で示している。また、車イス利用者が自力では通行ができないため、通行の不適当であることを×印で示している。通路IDが3bの場合、視覚障碍者と車イス+救護者は、通行はできるが避難にはあまり適さないことを△印で示している。例えば、視覚障碍者に対しては点字ブロックが設置されていない場合である。また車イス利用者に対しては、階段の幅が狭い又は階段の傾斜が大きい等の場合である。
図2では、通行の適否を「○」、「×」、及び「△」の3段階で評価する場合を例示しているが、通行の適否は、例えば10段階で評価するようにしてもよい。また、救護者の人数、天候等、他の要因を適否の評価に入れてもよい。
以上で、
図2を用いた、通路情報の説明を終了する。
【0030】
次に、
図3を用いて、利用者情報を説明する。
図3は、利用者情報を例示する図である。
【0031】
図3に示す利用者情報において、本実施形態では、「利用者」、「属性」、「端末ID」、及び「メールアドレス」のフィールド項目を有する場合を例示している。なお、利用者情報には、例えば、緊急連絡先、血液型、常用している薬等の情報を含んでいてもよい。
【0032】
「利用者」は、例えば、利用者の社員番号等、利用者を一意に特定するための情報である。
図3は、A〜Dの4名が利用者として登録されていることを示している。なお、利用者の人数は任意である。
【0033】
「属性」は、利用者の属性である。
図3に示す利用者には、被救護者及び救護者を含むものとする。利用者が被救護者である場合、車イス利用、視覚障碍等の属性が設定される。また、利用者が救護者である場合、属性は「救護者」に設定される。被救護者の属性には、車イスを含む利用者の重量、病歴等、救護者を選択するための他の情報を含んでいてもよい。また、救護者の属性には、例えば、年齢、性別、体力、医師又は看護師の資格の有無等、被救護者の属性に対応して救護者として選択されるための情報を含んでいてもよい。
【0034】
「端末ID」は、利用者が所持する端末のIDである。「端末ID」は、位置情報検出システム3が利用者の位置情報を検出するために利用される。例えば、位置情報検出システム3が無線LANを利用して、無線LAN端末の位置情報を検出する場合、「端末ID」は無線LAN子機のIDである。また、位置情報検出システム3がRF(Radio Frequency)タグを利用して利用者の位置情報を検出する場合、端末IDは、RFタグを特定するIDである。また、位置情報検出システム3が携帯電話(携帯端末)キャリアの基地局の情報を利用して携帯端末の位置情報を検出する場合、「端末ID」は携帯端末のIDである。さらに、位置情報検出システム3がGPS(Global Positioning System)受信機の情報を利用してGPS受信機の位置情報を検出する場合、「端末ID」はGPS受信機のIDである。「端末ID」は、例えば、利用者が複数の携帯端末を所有している場合は、複数の携帯端末のIDを登録するようにしてもよい。
なお、位置情報検出システム3は、位置情報を検出する方法によって検出誤差を生じる。利用者情報には、検出誤差の情報を登録してもよい。検出誤差の情報を登録しておくことにより、救護者に対して被救護者の発見に有用な情報を提供することができる。
【0035】
「メールアドレス」は、報知部16が救護者または被救護者に対して電子メールによって避難経路情報を報知するときに利用される。また、「メールアドレス」は、救護要請部17が救護者に対して電子メールによって救護の要請をするときに利用される。「メールアドレス」には、複数のメールアドレスを登録してもよい。なお、メールアドレスには、ショートメッセージや音声メッセージを送付する電話番号を登録してもよい。また、
図3は、報知部16が電子メールを用いて報知を行う場合の利用者情報としてメールアドレスを登録する場合を例示したが、報知部16が電子メール以外の方法によって報知を行う場合には、その方法に対応した情報が登録される。例えば、報知部16が近距離無線を用いて報知を行う場合、近距離無線で用いられるIDを登録してもよい。
以上で、
図3を用いた、利用者情報の説明を終了する。
【0036】
次に、
図4〜
図6を用いて、避難経路情報に基づく避難経路について説明する。
図4は、第1の避難経路を例示する図である。
図5は、第1の避難経路を例示する他の図である。
図6は、第2の避難経路を例示する図である。
図4〜
図6は、避難経路情報に基いて作成される避難経路を略図で表したものである。図示する略図は、例えば画像データとして所定のアドレスにリンクされたWebページに表示されてもよい。また、
図3で説明した利用者のメールアドレスに画像データとして添付されて送信されるものであってもよい。
【0037】
図4〜
図6において図示する略図は、5階建ての建屋の2階部分で火災が発生したことを示している。
図4〜
図6に示す建屋には、
図3で説明した、1a〜4aの通路IDが割り振られた階段、1b〜4bの通路IDが割り振られた階段、および1c〜4cの通路IDが割り振られたスロープが設置されているものとする。例えば、1aは、建屋の1階と2階の間にある階段である。4cは、建屋の4階と5階の間にあるスロープである。
火災は、2階の通路IDが2bの階段付近の位置で発生し、火災発生位置は、2階の廊下に設置された防火扉2Xと防火扉2Yが動作して他の通路と遮断されているものとする。火災発生位置と動作した防火扉の位置の情報は、災害情報取得部11が災害報知システム2から取得している。
【0038】
図4において、利用者Aは、
図3で説明した視覚障碍の属性の被救護者であるものとする。位置情報取得部12は、利用者Aの現在の位置情報を収集する。利用者Aの現在位置から非常口までの火災発生位置を避けた最短ルートは、通路IDが2a〜1aの階段を通過する経路である。
図2で説明した通路情報において、通路IDが1aと2aの階段は、視覚障碍者が自力で通行できる通路である。避難経路情報算出部15は、位置情報に基づき被救護者が自力で避難するときの避難経路を示す第1の避難経路情報を、
図2で説明した第1の通路情報に基づき算出する。報知部16は、第1の避難経路情報に基づく第1の避難経路(1)の情報を、例えば利用者Aが所持する携帯端末に避難経路を音声で案内する音声データとして送信する。利用者Aは、送信された音声データに基づき、通路IDが2aおよび1aの階段を通過して非常口まで自力で避難することができる。
【0039】
図5において、利用者Bは、
図3で説明した車イス利用の属性の被救護者であるものとする。位置情報取得部12は、利用者Bの現在の位置情報を収集する。利用者Bの現在位置から非常口までの火災発生位置を避けた最短ルートは、通路IDが3a〜1aの階段を通過する経路である。しかし、
図2で説明した通路情報において、通路IDが1a〜3aの階段は、車イス利用者が自力では通行できない通路である。避難経路情報算出部15は、位置情報に基づき被救護者が自力で避難するときの避難経路を示す第1の避難経路情報(2)として、通路IDが3c〜1cのスロープを利用する避難経路情報を第1の通路情報に基づき算出する。報知部16は、例えば、第1の避難経路情報(2)に基づく第1の避難経路(2)の画像情報を、利用者Bが所持する携帯端末に画像データとして送信する。利用者Bは、送信された第1の避難経路(2)に基づき、通路IDが3c〜1cのスロープを通過して非常口まで自力で避難することができる。
【0040】
図6において、利用者Bは、
図3で説明した車イス利用の属性の被救護者であるものとする。位置情報取得部12は、利用者Bの現在の位置情報を収集する。利用者C及びDは、
図3で説明した救護者である。救護要請部17は、利用者Bの位置情報に基づき、救護の要請を行う。利用者C及びDは、救護要請部17からの救護の要請に応じて被救護者の救護に来た救護者である。利用者Aの現在位置から非常口までの火災発生位置を避けた最短ルートは、通路IDが4a〜1aの階段を通過する経路である。
図2で説明した通路情報において、通路IDが1a〜4aの階段は、車イス利用者が自力では通行できないが、救護者の救護があれば通行できる通路である。避難経路情報算出部15は、位置情報に基づき被救護者が救護を受けて通行する場合の避難経路を示す第2の避難経路情報として、通路IDが4c〜1cの階段を利用する避難経路情報を第2の通路情報に基づき算出する。報知部16は、例えば、第2の避難経路情報に基づく第2の避難経路の画像情報を、利用者B、利用者C、及び利用者Dが所持する携帯端末に画像データとして送信する。利用者Bは、送信された第2の避難経路に基づき、通路IDが4c〜1cの階段を通過して非常口まで、利用者C及び利用者Dの救護を受けて避難することができる。
以上で、
図4〜
図6を用いた、避難経路情報に基づく避難経路についての説明を終了する。
【0041】
次に、
図7を用いて、避難誘導装置1の動作を説明する。
図7は、避難誘導装置1の動作を例示するフローチャートである。
【0042】
図7において、避難誘導装置1は災害情報取得部11を通じて、災害報知システム2からの災害情報が有るか否かを判断する(ステップS11)。災害報知システム2からの災害情報が無いと判断した場合(ステップS11;NO)、避難誘導装置1は、ステップS11の処理を繰り返す。
【0043】
一方、災害報知システム2からの災害情報が有ると判断した場合(ステップS11;YES)、避難誘導装置1は、位置情報取得部12を通じて、位置情報検出システムから被救護者の位置情報を取得する(ステップS12)。被救護者の位置情報は、
図3で説明した利用者情報に登録されている被救護者にについて取得する。なお、
図7に示すフローチャートでは、ステップS12において被救護者の位置情報が取得できる場合を例示したが、被救護者の位置情報が取得できないときは、避難誘導装置1は、ステップS11の処理を繰り返してもよい。すなわち、被救護者が避難を誘導する範囲で発見できない場合は、災害情報がある限り被救護者の位置情報を取得するようにしてもよい。
【0044】
ステップS12の処理を実行した後、避難誘導装置1は、属性情報取得部13を通じて、位置情報を取得した被救護者の属性情報を取得する。例えば、位置情報取得部12が、
図3に示す利用者Bの端末IDの位置情報を取得した場合、属性情報取得部13は、利用者Bの属性情報(車イス利用)を取得する。
【0045】
ステップS13の処理を実行した後、避難誘導装置1は、位置情報取得部12を通じて、
図3の利用者情報に登録された救護者の位置の情報を取得する(ステップS14)。救護者の位置の情報は、例えば、利用者Bの位置情報に基づき、利用者Bまでの到着時間が所定の時間内である範囲で取得するようにしてもよい。
【0046】
ステップS14の処理を実行した後、避難誘導装置1は、救護要請部7を通じて位置情報取得部12で取得された救護者に対して救護の要請を行う(ステップS15)。救護要請は、位置情報が取得された被救護者の属性状況に基づき、救護を要請する救護者を特定してもよい。例えば、利用者Bは属性情報に車イス利用が登録されている。救護要請部17は、利用者情報に登録された救護者の中から車イスを利用した救護者を運搬できる救護者を特定し、特定した救護者に対して救護要請を行うようにしてもよい。また、救護要請部17は、被救護者の位置情報から所定の範囲内にいる救護者に対して救護要請をしてもよい。さらに、救護要請部17は、次に説明する救護者情報取得部18を通じて救護者からの応答が無い又は少ない場合、又は位置情報取得部12で取得された被救護者が多数の場合、救護の要請の対象をより広範囲にしたり、集団避難をサポートする要請を行うようにしたりしてもよい。
【0047】
ステップS15の処理を実行後、避難誘導装置1は、救護者情報取得部18を通じて、救護者から応答があったか否かを判断する(ステップS16)。救護者情報取得部18は、救護要請部17が救護を要請した救護者からの応答があるか否かを判断する。例えば、利用者Bの救護に2名の救護者が必要である場合、救護者から応答があったとの判断は、2名以上からの応答が有った場合に行うようにしてもよい。なお、救護者情報取得部18は、救護を要請していない救護者からの応答を取得するものであってもよい。また、救護者情報取得部18は、救護者からの応答が多数あった場合、救護の要請をキャンセルする旨の連絡を、応答が有った救護者が所持する端末に対して救護要請部17を通じて送信するようにしてもよい。また、救護者情報取得部18は、救護者からの応答が無い場合(救護に必要な人数より少ない場合を含む)、救護要請部17を通じて救護の再要請を行うようにしてもよい。
【0048】
ステップS16の処理において、救護者から応答がなかったと判断した場合(ステップS16;NO)、避難誘導装置1は、所定の時間が経過したか否かを判断する(ステップS17)。救護者の救護によって避難をする場合に、被救護者が自力で避難する場合に比べて短時間に避難を行うことができることが望ましい。また、救護者による救護が可能な場合であっても、被救護者がそのまま自力で避難した方が早く避難できる可能性がある。所定の時間は、例えば被救護者が第1の避難経路情報に基づいて自力で避難したときの所要時間と、被救護者が第2の避難経路情報に基づいて救護者の救護によって避難したときの所要時間の時間差等から決めるようにしてもよい。
【0049】
ステップS17の処理において、所定の時間が経過していないと判断した場合(ステップS17;NO)、避難誘導装置1は、ステップS16の処理に戻り、所定の時間が経過するまで救護者からの応答を待機する。
【0050】
一方、ステップS17の処理において、所定の時間が経過したと判断した場合(ステップS17;YES)、避難誘導装置1は、避難経路情報算出部15を通じて、被救護者が自力で避難する第1の避難経路情報を算出する(ステップS18)。ステップS18の処理を実行した後、避難誘導装置1は、報知部16を通じて、利用者Bに対して避難経路情報算出部15で算出された第1の避難経路情報を報知して(ステップS19)、避難誘導装置1の動作を終了する。本実施形態では、救護者の救護が結果的に無かった場合であっても、被救護者に対して自力で避難ができる避難経路情報を提供することができる。
【0051】
ステップS16の処理において、救護者から応答がなかったと判断した場合(ステップS16;NO)、避難誘導装置1は、避難経路情報算出部15を通じて、被救護者が救護者の救護によって避難する第2の避難経路情報を算出する(ステップS20)。ステップS20の処理を実行した後、避難誘導装置1は、報知部16を通じて、利用者B、利用者C、及び利用者Dに対して避難経路情報算出部15で算出された第2の避難経路情報を報知して(ステップS19)、避難誘導装置1の動作を終了する。本実施形態では、救護者の救護によって避難をする場合、自力で避難するより避難に適した避難経路情報を提供することができる。なお、救護者による救護がある場合であって、第2の避難経路情報を第1の避難経路情報とともに算出して報知するようにしてもよい。災害時の避難においては、複数の避難経路が確保されていることが望ましく、例えば、何らかのトラブルで被救護者を階段等で移動させることが困難になった場合でも、第1の避難経路情報に基づく避難が可能となる。
本実施形態では、上述の通り、被救護者が救護される可能性がある場合に、救護者による救護を得たか否かにかかわらず最適な避難経路を報知することが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態では、被救護者の位置情報の取得、救護者への救護の要請、避難経路情報の算出及びその報知等の処理は、それぞれ1回ずつ実行する場合を例示した。しかし、それぞれの処理は複数回を実行するようにしてもよい。例えば、被救護者が自力で避難している最中においても被救護者の位置情報を適宜取得するようにしてもよい。また、救護者への救護の要請も複数回実行するようにしてもよい。例えば、被救護者が自力で又は救護者の救護を得て避難している途中に何らかのトラブルが発生した場合、被救護者または救護者からの明示的な要求によって他の救護者に救護の要請をするようにしてもよい。また、避難経路情報の算出を複数回実行するようにしてもよい。例えば、災害の発生状況に変化が有った場合、災害報知システム2からの取得した災害情報の変化、若しくは被救護者または救護者からの明示的な要求によって、避難経路情報を再度算出するようにしてもよい。
【0053】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0054】
なお、実施形態における避難誘導装置1はコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウエアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0055】
また、避難誘導装置1の各機能は、上記説明した機能を有する限り、図示した複数の機能ブロックを1の機能ブロックにまとめて実装してもよいし、図示した一の機能ブロックを複数の機能ブロックとして分割して実装してもよい。また、それぞれの機能ブロックの一部又は全部をハードウエアによって構成するようにしてもよい。