特許第6524840号(P6524840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6524840
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物及びエポキシ硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/42 20060101AFI20190527BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20190527BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20190527BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20190527BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20190527BHJP
【FI】
   C08G59/42
   C08L63/00 C
   C08K5/13
   C08K5/524
   H01L33/56
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-150458(P2015-150458)
(22)【出願日】2015年7月30日
(65)【公開番号】特開2017-31270(P2017-31270A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191250
【氏名又は名称】新日本理化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉川秀幸
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−370113(JP,A)
【文献】 特開2014−129464(JP,A)
【文献】 特開2010−215924(JP,A)
【文献】 特開平09−208805(JP,A)
【文献】 特開2014−015586(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/010420(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 63/00−63/10
H01L 33/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(F)成分を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂
(B)一般式(1)
【化1】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、又は、R〜Rから選ばれる二つが結合してなる炭素数1〜4のアルキレン基を表す。また、脂環骨格の4位と5位の間の結合は、単結合又は二重結合を表す。]
で表される脂環式ジカルボン酸無水物化合物
(C)硬化促進剤
(D)フェノール系酸化防止剤
(E)9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド
(F)テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト
【請求項2】
脂環式ジカルボン酸無水物化合物が、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物及びメチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の脂環式ジカルボン酸無水物化合物である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
硬化促進剤が、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド及びテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウム−O,O−ジエチルホスホロジチオエート、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラ−n−ブチルホスホニウムアセテート、テトラ−n−ブチルホスホニウムラウリレート、トリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7 オクチル酸塩及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の硬化促進剤である、請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
フェノール系酸化防止剤が、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2−メチル−4,6−ビス−オクチルチオメチルフェノール、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5.5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコールビス{3−(3’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェノール)}プロピオネート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン)イソシアヌレート、トリス(3,5,−ジブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート及びテトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上のフェノール系酸化防止剤である、請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
脂環式ジカルボン酸無水物化合物100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド及びテトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイトの合計が0.01〜2重量部である、請求項1〜のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
フェノール系酸化防止剤の重量と9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド及びテトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイトの合計の重量との比率が、5:1〜1:5の範囲である、請求項1〜のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ硬化物。
【請求項8】
請求項に記載のエポキシ硬化物を使用した発光素子用封止材。
【請求項9】
請求項に記載の封止材で封止された発光ダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物及びエポキシ硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
光を発光する発光ダイオード(Light−emitting diode:以下LEDと略す)が実用化され、様々な用途で使用されている。
【0003】
LEDを封止するための樹脂(封止材)として、エポキシ化合物と酸無水物から得られるエポキシ樹脂硬化物が、安価で、透明性、電気絶縁性、耐薬品性、耐湿性、接着性等に優れていることから用いられてきたが、近年になって短波長の光を発する光源と蛍光体とを組み合わせた白色LEDが普及するにつれ、封止材の劣化が問題視されるようになってきた。
【0004】
すなわち、発光素子の改良によって小型化及び大電流化が進むにつれ、LEDを長時間点灯させた場合に発生する熱も大きくなり、これによって封止材の劣化が引き起こされる要因となっている。
【0005】
このような熱による劣化を抑制することが、エポキシ樹脂のさらなる普及において重要な課題となっている。近年、硬化物の耐熱着色性を向上させる方法として、種々の酸化防止剤を用いる手法が開示されている(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−141934号公報
【特許文献2】特開平4−370113号公報
【特許文献3】特開2003−221490号公報
【特許文献4】特開2014−129464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者が、上記特許文献をもとに検討したところ、上記特許文献の方法ではエポキシ硬化物の耐熱着色性は十分ではないことが明らかとなった。本発明は、初期透明性が優れているとともに耐熱着色性に優れる、LEDに好適に使用されるエポキシ樹脂組成物及びエポキシ硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を達成すべく鋭意検討の結果、エポキシ樹脂、脂環式ジカルボン酸無水物化合物、硬化促進剤、フェノール系酸化防止剤、固体状有機リン系酸化防止剤及び液状有機リン系酸化防止剤を含有するエポキシ樹脂組成物及びそのエポキシ硬化物が、初期透明性が優れているとともに、耐熱着色性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下のものである。
【0010】
[項1]
下記(A)〜(F)成分を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ化合物
(B)一般式(1)
【化1】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、又は、R〜Rから選ばれる二つが結合してなる炭素数1〜4のアルキレン基を表す。また、脂環骨格の4位と5位の間の結合は、単結合又は二重結合を表す。]
で表される脂環式ジカルボン酸無水物化合物
(C)硬化促進剤
(D)フェノール系酸化防止剤
(E)固体状有機リン系酸化防止剤
(F)液状有機リン系酸化防止剤
【0011】
[項2]
脂環式ジカルボン酸無水物化合物が、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物及びメチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の脂環式ジカルボン酸無水物化合物である、[項1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0012】
[項3]
硬化促進剤が、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド及びテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウム−O,O−ジエチルホスホロジチオエート、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラ−n−ブチルホスホニウムアセテート、テトラ−n−ブチルホスホニウムラウリレート、トリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7 オクチル酸塩及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の硬化促進剤である、[項1]又は[項2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0013】
[項4]
フェノール系酸化防止剤が、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2−メチル−4,6−ビス−オクチルチオメチルフェノール、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5.5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコールビス{3−(3’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェノール)}プロピオネート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン)イソシアヌレート、トリス(3,5,−ジブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート及びテトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上のフェノール系酸化防止剤である、[項1]〜[項3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0014】
[項5]
固体状有機リン系酸化防止剤が、ジデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジトリデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド、3,9−ビス(2,6−ジーt−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジーt−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマー及び水添ビスフェノールAホスファイトポリマーからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の固体状有機リン系酸化防止剤である、[項1]〜[項4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0015】
[項6]
液状有機リン系酸化防止剤が、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(クレジル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニル(デシル)ホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、フェニル(ジイソデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニル(テトラトリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラアルキル(炭素数12〜15のアルキル基)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト及びジフェニルハイドロゲンホスファイトからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の液状有機リン系酸化防止剤である、[項1]〜[項5]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0016】
[項7]
脂環式ジカルボン酸無水物化合物100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤、固体状有機リン系酸化防止剤及び液状有機リン系酸化防止剤の合計が0.01〜2重量部である、[項1]〜[項6]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0017】
[項8]
フェノール系酸化防止剤の重量と固体状有機リン系酸化防止剤及び液状有機リン系酸化防止剤の重要の合計との比率が、5:1〜1:5の範囲である、[項1]〜[項7]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0018】
[項9]
下記(B)成分及び(D)〜(F)成分を含有することを特徴とする酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物。
(B)一般式(1)
【化2】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、又は、R〜Rから選ばれる二つが結合してなる炭素数1〜4のアルキレン基を表す。また、脂環骨格の4位と5位の間の結合は、単結合又は二重結合を表す。]
で表される脂環式ジカルボン酸無水物化合物
(D)フェノール系酸化防止剤
(E)固体状有機リン系酸化防止剤
(F)液状有機リン系酸化防止剤
【0019】
[項10]
脂環式ジカルボン酸無水物化合物が、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物及びメチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の脂環式ジカルボン酸無水物化合物である、[項9]に記載の酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物。
【0020】
[項11]
フェノール系酸化防止剤が、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2−メチル−4,6−ビス−オクチルチオメチルフェノール、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5.5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコールビス{3−(3’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェノール)}プロピオネート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン)イソシアヌレート、トリス(3,5,−ジブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート及びテトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の系酸化防止剤である、[項9]又は[項10]に記載の酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物。
【0021】
[項12]
固体状有機リン系酸化防止剤が、ジデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジトリデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド、3,9−ビス(2,6−ジーt−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジーt−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマー及び水添ビスフェノールAホスファイトポリマーからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の固体状有機リン系酸化防止剤である、[項9]〜[項11]のいずれかに記載の酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物。
【0022】
[項13]
液状有機リン系酸化防止剤が、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(クレジル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニル(デシル)ホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、フェニル(ジイソデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニル(テトラトリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラアルキル(炭素数12〜15のアルキル基)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト及びジフェニルハイドロゲンホスファイトからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の液状有機リン系酸化防止剤である、[項9]〜[項12]のいずれかに記載の酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物。
【0023】
[項14]
脂環式ジカルボン酸無水物化合物100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤、固体状有機リン系酸化防止剤及び液状有機リン系酸化防止剤の合計が0.01〜2重量部である、[項9]〜[項13]のいずれかに記載の酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物。
【0024】
[項15]
フェノール系酸化防止剤の重量と固体状有機リン系酸化防止剤及び液状有機リン系酸化防止剤の合計の重量との比率が、5:1〜1:5の範囲である、[項9]〜[項14]に記載の酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物。
【0025】
[項16]
下記(A)成分、(C)成分及び(G)成分を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂
(C)硬化促進剤
(G)[項9]〜[項15]のいずれかに記載の酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物
【0026】
[項17]
硬化促進剤が、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド及びテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウム−O,O−ジエチルホスホロジチオエート、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラ−n−ブチルホスホニウムアセテート、テトラ−n−ブチルホスホニウムラウリレート、トリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7 オクチル酸塩及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の硬化促進剤である、[項16]に記載の酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物。
【0027】
[項18]
[項1]〜[項8]、[項16]〜[項17]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ硬化物。
【0028】
[項19]
[項18]に記載のエポキシ硬化物を使用した発光素子用封止材。
【0029】
[項20]
[項19]に記載の封止材で封止された発光ダイオード。
【0030】
[項21]
(B)一般式(1)
【化3】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、又は、R〜Rから選ばれる二つが結合してなる炭素数1〜4のアルキレン基を表す。また、脂環骨格の4位と5位の間の結合は、単結合又は二重結合を表す。]
で表される脂環式ジカルボン酸無水物化合物、
(D)フェノール系酸化防止剤、
(E)固体状有機リン系酸化防止剤、及び
(F)液状有機リン系酸化防止剤
を混合して得られる酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物と
(A)エポキシ樹脂と
(C)硬化促進剤と
を混合することを特徴とするエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、初期透明性が優れているとともに、耐熱着色性に優れるエポキシ樹脂組成物及びエポキシ硬化物を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<エポキシ樹脂組成物>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、下記(A)〜(F)成分を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
(A)エポキシ樹脂
(B)一般式(1)
【化4】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、又は、R〜Rから選ばれる二つが結合してなる炭素数1〜4のアルキレン基を表す。また、脂環骨格の4位と5位の間の結合は、単結合又は二重結合を表す。]
で表される脂環式ジカルボン酸無水物化合物
(C)硬化促進剤
(D)フェノール系酸化防止剤
(E)固体状有機リン系酸化防止剤
(F)液状有機リン系酸化防止剤
【0033】
(エポキシ樹脂):(A)成分
本発明に係るエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF等のビスフェノール類とエピクロロヒドリンとの反応により得られるビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラックとエピクロロヒドリンとの反応により得られるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価カルボン酸とエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0034】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0035】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0036】
グリシジルエステル型エポキシ樹脂の具体例としては、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0037】
アルコール型エポキシ樹脂の具体例としては、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加アルコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール類のジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0038】
アミン型エポキシ樹脂の具体例としては、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0039】
脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
【0040】
上記のエポキシ樹脂は、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせることができる。
【0041】
(脂環式ジカルボン酸無水物化合物):(B)成分
本発明に係る脂環式ジカルボン酸無水物化合物は、一般式(1)
【化5】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、又は、R〜Rから選ばれる二つが結合してなる炭素数1〜4のアルキレン基を表す。また、脂環骨格の4位と5位の間の結合は、単結合又は二重結合を表す。]
で表される脂環式ジカルボン酸無水物化合物であり、その脂環式ジカルボン酸無水物化合物から選ばれる少なくとも一種が使用される。
【0042】
上記一般式(1)におけるR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基、又は、R〜Rから選ばれる二つが結合してなる炭素数1〜4のアルキレン基であり、好ましくは、水素原子、メチル基又は、RとRが結合してなるメチレン基が好ましい。
【0043】
また、本発明に係る脂環式ジカルボン酸無水物化合物の化学構造の一部を構成する一般式(1)の脂環骨格の4位と5位の間の結合は、単結合又は二重結合である。
【0044】
脂環式ジカルボン酸無水物化合物の具体例としては、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0045】
上記の脂環式ジカルボン酸無水物化合物は、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせることができる。
【0046】
(硬化促進剤):(C)成分
本発明に係る硬化促進剤としては、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド及びテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウム−O,O−ジエチルホスホロジチオエート、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラ−n−ブチルホスホニウムアセテート、テトラ−n−ブチルホスホニウムラウリレート、トリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7 オクチル酸塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7などが挙げられる。
【0047】
上記の硬化促進剤は、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせることができる。
【0048】
(フェノール系酸化防止剤):(D)成分
本発明に係るフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2−メチル−4,6−ビス−オクチルチオメチルフェノール、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5.5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコールビス{3−(3’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェノール)}プロピオネート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン)イソシアヌレート、トリス(3,5,−ジブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタンなどが挙げられる。
【0049】
上記のフェノール系酸化防止剤は、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせることができる。
【0050】
(固体状有機リン系酸化防止剤):(E)成分
本発明に係る固体状有機リン系酸化防止剤としては、ジデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジトリデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド、3,9−ビス(2,6−ジーt−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジーt−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマー、水添ビスフェノールAホスファイトポリマーなどが挙げられる。
【0051】
上記の固体状有機リン系酸化防止剤は、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせることができる。
【0052】
(液状有機リン系酸化防止剤):(F)成分
本発明に係る液状有機リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(クレジル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニル(デシル)ホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、フェニル(ジイソデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニル(テトラトリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラアルキル(炭素数12〜15のアルキル基)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイトなどが挙げられる。
【0053】
上記の液状有機リン系酸化防止剤は、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせることができる。
【0054】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、(B)脂環式ジカルボン酸無水物化合物は、(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してジカルボン酸無水物基が0.8〜1.2当量になるよう配合することが好ましく、特に0.9〜1.1当量になるよう配合することが好ましい。ジカルボン酸無水物基が0.8当量より少ないと、硬化が不十分となり、硬化物の耐熱性や機械的特性が著しく低下し硬化物に黄着色が生じるおそれがある。また、ジカルボン酸無水物基が1.2当量を超えると、同様に硬化物の耐熱性や機械的特性が低下するおそれがある。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、(C)硬化促進剤の量は、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、特に0.5〜5重量部が好ましい。0.1重量部よりも少ないと硬化促進硬化が得られず硬化不十分となり、10重量部を超えると硬化物に黄着色が生じる傾向がある。
【0056】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、(D)フェノール系酸化防止剤、(E)固体状有機リン系酸化防止剤及び(F)液状有機リン系酸化防止剤の合計量は、(B)脂環式ジカルボン酸無水物化合物100重量部に対して、0.01〜2重量部が好ましく、特に0.05〜1重量部が好ましい。0.01重量部よりも少ないと耐熱黄変性に対する効果が不十分となり、2重量部を超えると硬化物に黄着色が生じる傾向がある。
【0057】
また、フェノール系酸化防止剤の重量と固体状有機リン系酸化防止剤及び液状有機リン系酸化防止剤の重量との合計の比率は、5:1〜1:5の範囲が好ましく、特に3:1〜1:3の範囲が好ましい。フェノール系酸化防止剤の比率が5:1よりも多くなる又は1:5よりも少なくなると、耐熱黄変性に対する効果が不十分となる傾向がある。
【0058】
本発明のエポキシ樹脂組成物の製造方法には特に制限は無く、公知の方法を適用することができる。例えば、(A)エポキシ樹脂、(B)脂環式ジカルボン酸無水物化合物、(C)硬化促進剤、(D)フェノール系酸化防止剤、(E)固体状有機リン系酸化防止剤、(F)液状有機リン系酸化防止剤の各成分を1度に(同時に)混合することにより、又は複数回に分けて少しずつ混合することにより目的とするエポキシ樹脂組成物を得ることができる。混合時の温度としては、室温(25℃)〜80℃が好ましく、より好ましくは60℃以下、特に40℃以下が好ましい。
【0059】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物には、得られる硬化物の初期透明性及び耐熱着色性の効果を奏する範囲で各種添加剤を目的に応じてさらに添加することができる。添加剤としては、可撓化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、チキソトロピー性付与剤、離型剤等が挙げられる。更に、例えば、硬化における重合反応を制御するための連鎖移動剤や、硬化物の機械的物性、接着性、取扱い性を改良するための充填剤、可塑剤、低応力化剤、(シラン)カップリング剤、染料、光散乱剤などが挙げられる。
【0060】
<酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物>
本発明の酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物は、下記(B)成分及び(D)〜(F)成分を含有することを特徴とする酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物である。
(B)一般式(1)
【化6】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、又は、R〜Rから選ばれる二つが結合してなる炭素数1〜4のアルキレン基を表す。また、脂環骨格の4位と5位の間の結合は、単結合又は二重結合を表す。]
で表される脂環式ジカルボン酸無水物化合物
(D)フェノール系酸化防止剤
(E)固体状有機リン系酸化防止剤
(F)液状有機リン系酸化防止剤
【0061】
(B)脂環式ジカルボン酸無水物化合物、(D)フェノール系酸化防止剤、(E)固体状有機リン系酸化防止剤及び(F)液状有機リン系酸化防止剤は、上記<エポキシ樹脂組成物>の説明と同義のものである。
【0062】
本発明の酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物において、(D)フェノール系酸化防止剤、(E)固体状有機リン系酸化防止剤及び(F)液状有機リン系酸化防止剤の合計量は、(B)脂環式ジカルボン酸無水物化合物100重量部に対して、0.01〜2重量部が好ましく、特に0.05〜1重量部の重量割合が好ましい。0.01重量部よりも少ないと硬化促進硬化が得られず硬化不十分となり、2重量部を超えると硬化物に黄着色が生じる傾向がある。
【0063】
また、フェノール系酸化防止剤の重量と固体状有機リン系酸化防止剤及び液状有機リン系酸化防止剤の重量の合計との比率は、5:1〜1:5の範囲が好ましく、特に3:1〜1:3の範囲が好ましい。フェノール系酸化防止剤の比率が5:1よりも多くなる又は1:5よりも少なくなると、耐熱黄変性に対する効果が不十分となる傾向がある。
【0064】
本発明の(G)酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物は、(B)脂環式ジカルボン酸無水物化合物、(D)フェノール系酸化防止剤、(E)固体状有機リン系酸化防止剤及び(F)液状有機リン系酸化防止剤を混合することにより目的とする酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物を得ることができる。該酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物としては、保存安定性の観点から均質(各成分が溶解して外観が透明)であることが好ましい。
【0065】
酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物の製造方法には特に制限は無く、公知の方法を適用することができる。なお前記「混合する」とは、脂環式ジカルボン酸無水物化合物と酸化防止剤が溶融できる温度で混合を行うこと、或いは溶剤を加えて溶解ないし分散混合することで達成できる。混合時の温度は、室温(25℃)〜150℃が好ましく、より好ましくは100℃以下、特に80℃以下が好ましい。
【0066】
また、上記の(G)酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物と(A)エポキシ樹脂及び(C)硬化促進剤を混合することによって、本発明のエポキシ樹脂組成物を得ることができる。なお、(A)エポキシ樹脂及び(C)硬化促進剤は、上記<エポキシ樹脂組成物>の説明と同義のものである。
【0067】
<エポキシ硬化物>
本発明のエポキシ硬化物は、本発明におけるエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させることにより、透明性及び耐熱着色性に優れる硬化物を得ることができる。硬化物の製造方法には特に制限は無く、公知の方法を適用することができる。例えば、硬化方法としては、空気循環式オーブン、密閉式硬化炉、連続硬化が可能なトンネル炉などの従来公知の硬化装置を使用することが挙げられる。加熱方法としては、熱風循環、赤外線加熱、高周波加熱などの従来公知の方法が挙げられる。
【0068】
硬化温度及び硬化時間は、80〜250℃の範囲で30秒〜15時間の範囲が好ましい。硬化物の内部応力を低減したい場合は、80℃〜130℃の範囲で0.5時間〜5時間の範囲の条件で前硬化した後、130℃〜180℃の範囲で0.1時間〜15時間の範囲の条件で後硬化する2段階の硬化方法が好ましい。短時間硬化を目的とする場合は、150〜250℃の範囲で30秒〜30分間の範囲の条件で硬化することが好ましい。
【0069】
本発明のエポキシ硬化物の初期透明性及び耐熱着色性は、測定波長500nm、400nmの光線透過率とイエローインデックスで評価することができる。
【0070】
エポキシ硬化物の初期透明性は、エポキシ樹脂組成物を硬化した後に光線透過率を測定し、測定波長500nmの光線透過率においては、好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上のものが初期透明性に優れていると評価される。また、測定波長400nmの光線透過率においては、好ましくは87%以上、特に89%以上のものが初期透明性に優れていると評価される。なお、上記光線透過率は、後記実施例に記載した方法にて得られた値である。
【0071】
また、エポキシ硬化物の初期透明性は、エポキシ樹脂組成物を硬化した後にイエローインデックスを測定し、イエローインデックスが好ましくは−0.20〜0.20の範囲が好ましく、特に好ましくは−0.15〜0.15の範囲のものが初期透明性に優れていると評価される。なお、上記イエローインデックスは、後記実施例に記載した方法にて得られた値である。
【0072】
本発明のエポキシ硬化物の耐熱着色性は、熱処理試験後の測定波長500nm、400nmの光線透過率とイエローインデックスで評価することができる。なお、熱処理試験は、後記実施例に記載した方法である。
【0073】
エポキシ硬化物の熱処理試験後の測定波長500nmの光線透過率としては、好ましくは88%以上、特に好ましくは90%以上のものが耐熱着色性に優れていると評価される。また、熱処理試験後の測定波長400nmの光線透過率としては、好ましくは78%以上、特に80%以上のものが耐熱着色性に優れていると評価される。なお、上記熱処理試験後の光線透過率は、後記実施例に記載した方法にて得られた値である。
【0074】
また、エポキシ硬化物の熱処理試験後のイエローインデックスとしては、好ましくは−3.00〜3.00の範囲が好ましく、特に好ましくは−2.50〜2.50の範囲のものが耐熱着色性に優れていると評価される。なお、上記熱処理試験後のイエローインデックスは、後記実施例に記載した方法にて得られた値である。
【0075】
本発明のエポキシ硬化物は、初期透明性及び耐熱着色性に優れていることから、発光素子用封止材として使用できる。
【0076】
本発明の発光ダイオードは、発光ダイオード素子を本発明に記載された発光素子用封止材により封止したものである。発光ダイオードの製造方法としては、例えば、発光ダイオード素子、および、必要に応じてリード線などの電極を取り付け、続いて、本発明の樹脂組成物にてトランスファー成形、注型などのモールド方法によって封止、硬化する方法;発光ダイオード素子等を基板に実装し、そこに本発明の樹脂組成物にて封止する方法などが挙げられる。また、本発明の発光ダイオードには、蛍光体など発光ダイオード素子とは異なる発光体が封止されていてもよい。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を掲げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例におけるエポキシ硬化物の各特性の測定方法は以下の方法の通りである。また、特に言及していない化合物は試薬を使用した。
【0078】
実施例及び比較例中の化合物の略称は以下のとおりである。
<(A)エポキシ樹脂>
(a1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製 製品名「jER828」) エポキシ当量:189
(a2)3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート (株式会社 ダイセル製 製品名「セロキサイド 2021P」) エポキシ当量:130
<(B)脂環式ジカルボン酸無水物化合物>
(b1)4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物とシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物の混合物(重量比 7:3)(新日本理化株式会社製 製品名「リカシッド MH−700」)
(b2)4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物(新日本理化株式会社製 製品名「リカシッド MH−T」)
<(C)硬化促進剤>
(c1)テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業株式会社製 製品名「TPP−PB」)
(c2)ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド(サンアプロ株式会社製 製品名「U−CAT5003」)
(c3)テトラ−n−ブチルホスホニウム−O,O−ジエチルホスホロジチオエート(日本化学工業株式会社製 製品名「ヒシコーリン PX−4ET」)
<(D)フェノール系酸化防止剤>
(d1)テトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン(BASF社製 製品名「Irganox 1010」)
(d2)n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(BASF社製 製品名「Irganox 1076」)
(d3)3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5.5]ウンデカン(住友化学株式会社製 製品名「スミライザー GA−80」)
(d4)2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(本州化学工業株式会社製 製品名「H−BHT」)
<(E)固体状有機リン系酸化防止剤>
(e1)9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製 製品名「HCA」)
(e2)水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマー(城北化学工業株式会社製 製品名「JPH−3800」)
(e3)6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(住友化学株式会社製 製品名「スミライザー GP」)
(e4)2,2’−メチレンビス(4,6−ジーt−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト(株式会社ADEKA製 製品名「アデカスタブ HP−10」)
<(F)液状有機リン系酸化防止剤>
(f1)テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト(城北化学工業株式会社製 製品名「JPP−100」)
(f2)ジフェニルハイドロゲンホスファイト(城北化学工業株式会社製 製品名「JP−260」)
(f3)トリフェニルホスファイト(城北化学工業株式会社製 製品名「JP−360」)
(f4)トリイソデシルホスファイト(株式会社ADEKA製 製品名「アデカスタブ 3010」)
【0079】
<光線透過率>
厚み5mmの直方体のエポキシ硬化物を、可視・紫外線分光光度計UV−2550((株)島津製作所製)の積分球に取り付け、波長400nm及び500nmの光線透過率を測定した。光線透過率はエポキシ硬化物の無色透明性を示し、この値が大きい(最大100%)ほど無色透明性に優れ、値が小さくなるにつれ硬化物の黄褐色の度合いが増すことを示す。
【0080】
<イエローインデックス(YI)>
厚み5mmの直方体のエポキシ硬化物を、厚み方向の片面にアルミ箔を貼り付けた状態で、分光測色計(SPECTROPHOTOMETER CM−5(コニカミノルタ(株)製)を用いて反射率を測定した。反射率からのYIの算出はASTM D1925−70(Reapproved 1988)の規定に準じて行った。YIはエポキシ硬化物の黄色度を示す。この値が大きくなるにつれ黄色度が増すことを示し、測定対象が無色透明に近いときは、この値は0に近い値を示す。
【0081】
<熱処理試験>
エポキシ硬化物を、150℃に設定した空気循環式ギアオーブン((株)東洋精機製作所製)内に金属製クリップを用いて吊り下げ、120時間エージングを行った。
【0082】
(初期透明性)
エポキシ樹脂組成物を硬化させた直後のエポキシ硬化物の光線透過率(400nm、500nm)及びイエローインデックスで初期透明性を評価した。
【0083】
(耐熱着色性)
熱処理試験後のエポキシ硬化物の光線透過率(400nm、500nm)及びイエローインデックスで耐熱着色性を評価した。
【0084】
[実施例1]
脂環式ジカルボン酸無水物化合物として(b1)87重量部(エポキシ樹脂中のエポキシ基に対して酸無水物基の当量比が1.0となる量)、フェノール系酸化防止剤として(d1)0.087重量部、固体状有機リン系酸化防止剤として(e1)0.087重量部及び液状有機リン系酸化防止剤として(f1)0.087重量部を添加し、60℃で1時間加熱・攪拌し溶解した後、室温まで冷却し常温で透明液状の酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物を得た。これに硬化促進剤として(c1)1重量部を加え80℃で1時間加熱・撹拌し溶解した後、エポキシ樹脂として(a1)100重量部を加え、更に室温(25℃)にて充分混合して真空脱泡後、常温で液状のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0085】
続いて、表面を硬質クロムメッキ処理した2枚の鉄板に離型剤(信越化学工業株式会社製「SEPA−COAT SP」)を塗布した後、厚さ5mmの櫛型テフロンスペーサーを2枚の鉄板の間に挟み、シャコ型万力で固定した。スペーサーの窪み部分に上記エポキシ樹脂組成物を流し込み、熱風オーブンを用いて100℃で2時間その後150℃で2時間の温度条件にて硬化した。得られたエポキシ硬化物(厚さ5mmの板状の硬化物)の初期透明性を評価するため、光線透過率(測定波長500nm及び400nm)、イエローインデックス(YI)の測定を行った。更に、耐熱着色性を評価するために、同エポキシ硬化物を熱処理試験した後の光線透過率(測定波長500nm及び400nm)、イエローインデックス(YI)を測定した。結果を表1に示した。
【0086】
[実施例2〜11、14〜18]
表1に記載の配合比率で、実施例1と同様に、先に酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物を得た後、エポキシ樹脂組成物とし、続いてエポキシ硬化物を作製した。エポキシ硬化物の初期透明性、耐熱着色性を評価するために光線透過率及びイエローインデックス(YI)の測定を行った。結果を表1に示した。
【0087】
[実施例12]
エポキシ樹脂として(a1)100重量部、脂環式ジカルボン酸無水物化合物として(b1)87重量部(エポキシ樹脂中のエポキシ基に対して酸無水物基の当量比が1.0となる量)、硬化促進剤として(c1)1重量部、フェノール系酸化防止剤として(d3)0.087重量部、固体状有機リン系酸化防止剤として(e1)0.174重量部及び液状有機リン系酸化防止剤として(f3)0.087重量部を添加し、40℃で1時間加熱・攪拌し溶解した後、真空脱泡し、常温で液状のエポキシ樹脂組成物を得た。続いて、実施例1と同様にエポキシ硬化物を作製し、初期透明性、耐熱着色性を評価するために光線透過率及びイエローインデックス(YI)の測定を行った。結果を表1に示した。
【0088】
[実施例13]
固体状有機リン系酸化防止剤として(e1)0.174重量部の代わりに(e2)0.087重量部に、液状有機リン系酸化防止剤として(f3)の代わりに(f4)を使用した以外は、実施例12と同様の方法により常温で液状のエポキシ樹脂組成物を得た。続いて、実施例1と同様にエポキシ硬化物を作製し、初期透明性、耐熱着色性を評価するために光線透過率及びイエローインデックス(YI)の測定を行った。結果を表1に示した。
【0089】
[比較例1〜11、14〜17]
表2に記載の配合比率で、実施例1と同様に、先に本発明外の酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤組成物を得た後、本発明外のエポキシ樹脂組成物とし、続いて本発明外のエポキシ硬化物を作製した。エポキシ硬化物の初期透明性、耐熱着色性を評価するために光線透過率及びイエローインデックス(YI)の測定を行った。結果を表2に示した。
【0090】
[比較例12〜13]
表2に記載の配合比率で、実施例12と同様の方法により本発明外のエポキシ樹脂組成物を得た後、本発明外のエポキシ硬化物を作製し、初期透明性、耐熱着色性を評価するために光線透過率及びイエローインデックス(YI)の測定を行った。結果を表2に示した。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表1及び表2から、本発明のエポキシ樹脂組成物から得られるエポキシ硬化物は初期透明性が優れ、且つ、耐熱着色性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のエポキシ樹脂組成物及びエポキシ硬化物は、初期透明性に優れているとともに、耐熱着色性に優れることから、LED用封止材に使用することができる。