(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
感圧素子、及び、前記感圧素子と電気的に接続された第一の端子部が形成された半導体基板と、前記第一の端子部と電気的に接続された第二の端子部を含み、前記半導体基板が固定される硬質基板と、を有する圧脈波センサと、
前記第二の端子部と電気的に接続された配線を有し、前記圧脈波センサの前記硬質基板が固定されたフレキシブル基板と、
絶縁材料から構成され、前記圧脈波センサの前記半導体基板を覆って保護する保護層と、を備え、
前記フレキシブル基板は、前記配線に接続されるコネクタと、前記半導体基板の電位と同電位に保持され、前記コネクタと異なる位置において外部に露出する端子と、を含み、
前記外部に露出する端子は、前記保護層と接触しており、
前記半導体基板の、前記感圧素子が形成される感圧面が前記保護層を介して生体の体表面に押圧されて使用される脈波測定装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、被測定物に押圧することによりその被測定物との間の接触圧を測定する押圧式の圧力測定装置が知られている。この押圧式の圧力測定装置を応用した装置として、脈波測定装置がある。
【0003】
脈波測定装置は、生体内の皮膚より比較的浅いところに位置する動脈に発生する圧脈波を測定するために、感圧素子を有する基板を体表に押圧して圧脈波を測定する装置である。このような脈波測定装置を用いて被験者の圧脈波を測定することは、被験者の健康状態を知るために非常に重要である。
【0004】
この押圧式の脈波測定装置においては、感圧素子として歪ゲージとダイヤフラムを利用したセンサチップが用いられるのが一般的である。この種の押圧式の脈波測定装置に関する文献として、例えば特許文献1がある。
【0005】
特許文献1には、平板状の半導体基板にダイヤフラムが形成されたセンサチップを搭載する脈波検出装置が記載されている。このセンサチップは、感圧素子表面がシリコーンゴムによって保護され、更に、シリコーンゴム表面のうち生体と接触する箇所が導電性ゴムによって覆われた構成である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態を説明するための生体情報測定装置としての血圧測定装置100の構成を示すブロック図である。血圧測定装置100は、例えば手首に装着して用いる手首装着型のものである。血圧測定装置100は、生体から脈波を
測定する脈波
測定装置として機能する。
【0014】
血圧測定装置100は、圧脈波センサ1と、圧脈波センサ1を被験者の体表面に押圧するための押圧機構2と、圧脈波センサ1から出力される信号に基づいて押圧機構を制御したり、この信号に基づいて被験者の血圧を含む生体情報を算出したりする制御部3と、を備える。
【0015】
図2は、
図1に示す圧脈波センサ1が実装されるフレキシブル基板16の平面図である。
【0016】
フレキシブル基板16は、一方向である方向Xに直交する方向Yが長手方向となる矩形状となっており、その表面には、2つの圧脈波センサ1と、コネクタ16Cとが実装されている。2つの圧脈波センサ1は、方向Yに並べて配置されている。
【0017】
フレキシブル基板16は、樹脂フィルム内に、2つの圧脈波センサ1の各々の接続端子と接続された配線が設けられている。各配線は、コネクタ16Cまで引き回されている。コネクタ16Cと、
図1の制御部3等が形成された図示しない回路基板のコネクタとが接続される。
【0018】
また、フレキシブル基板16は、2つの圧脈波センサ1の各々が実装される領域の略中央に貫通孔16A,16Bを有している。
【0019】
フレキシブル基板16は、配線を覆う樹脂フィルムの一部が除去されており、この除去された部分からは、コネクタ16Cに接続される回路基板を介して接地される配線の一部である端子G1,G2が露出している。
【0020】
端子G1と端子G2は、方向Xにおいて、2つの圧脈波センサ1の間の領域を挟んで対向する位置に配置されている。
【0021】
図3は、
図2に示すA−A線の断面模式図である。
図4は、圧脈波センサ1を皮膚と接触する側から見た要部構成を示す斜視図である。
図4では、一部の構成要素の図示を省略している。
図3において、フレキシブル基板16以外の構成要素は、圧脈波センサ1を構成する。
【0022】
図4に示すように、圧脈波センサ1は、センサチップ10と、センサチップ10が固定される平板状の硬質基板11と、を備える。
【0023】
センサチップ10は、シリコン単結晶や、ガリウム−砒素などの化合物半導体の単結晶等の半導体基板10Aを備える。半導体基板10Aは、方向Xが長手方向となる矩形状となっている。
【0024】
硬質基板11は、セラミック基板やガラス基板等の半導体基板10Aよりも十分に剛性の高い材料により構成されている。硬質基板11は、方向Xが長手方向となる矩形状となっている。
【0025】
図4に示すように、半導体基板10Aの表面(生体の皮膚と接触する側の面)には、4つのピエゾ抵抗部(歪ゲージ、ストレインゲージ)を有するブリッジから成り、接触圧を検知するための感圧素子Sが複数個、方向Xに沿って配列されている。方向Xに並ぶこの複数の感圧素子Sにより、感圧素子列10Dが構成される。なお、
図3では感圧素子Sの図示は省略している。
【0026】
図3に示すように、半導体基板10Aにおいて、感圧素子列10Dが形成される面(以下、感圧面という)の反対面には、感圧面に垂直な方向(以下、センサ押し当て方向という)に凹む凹部10aが形成されている。
【0027】
半導体基板10Aは、この凹部10aによって、センサ押し当て方向における厚みが他の部分よりも薄い薄肉部(ダイヤフラム)を有する構成となっている。そして、この凹部10aの底面の反対側にある感圧面の領域に感圧素子列10Dが形成されている。
【0028】
半導体基板10Aの感圧面の反対面のうち凹部10aを除く部分(言い換えると凹部10aが形成された面)は、接着材12によって硬質基板11の表面に固定されている。接着材12は、例えば紫外線硬化樹脂の樹脂系材料が用いられる。
【0029】
半導体基板10Aの凹部10aが、硬質基板11に形成された貫通孔11Dのみによって大気と連通するように、半導体基板10Aは硬質基板11の表面に固定されている。
【0030】
血圧測定装置100の2つの圧脈波センサ1のうちの一方の圧脈波センサ1は、感圧面側からみた平面視において貫通孔11Dと貫通孔16Aとが重なるように、フレキシブル基板16に実装される。また、血圧測定装置100の2つの圧脈波センサ1のうちの他方の圧脈波センサ1は、同平面視において貫通孔11Dと貫通孔16Bとが重なるように、フレキシブル基板16に実装される。
【0031】
この構成により、圧脈波センサ1において、半導体基板10Aと接着材12と硬質基板11とで区画される空間が、硬質基板11の貫通孔11Dとフレキシブル基板16の貫通孔16A(又は貫通孔16B)とによって大気圧(基準圧)に保たれる。
【0032】
半導体基板10Aの感圧面の方向Xにおける両端部には、感圧素子列10Dと電気的に接続された第一の端子部10B及び第一の端子部10Cが配置されている。第一の端子部10Bと第一の端子部10Cは、それぞれ、方向Xに直交する方向Yに並ぶ複数の接続端子により構成される。
【0033】
硬質基板11の半導体基板10Aが接着固定された表面には、第一の端子部10Bと電気的に接続するための第二の端子部11Bと、第一の端子部10Cと電気的に接続するための第二の端子部11Cとが設けられている。
【0034】
半導体基板10Aの感圧面に垂直な方向から見た平面視において、第二の端子部11B、第一の端子部10B、第一の端子部10C、及び第二の端子部11Cはこの順で方向Xに並んで配置されている。
【0035】
第二の端子部11Bと第二の端子部11Cは、それぞれ、方向Xに直交する方向Yに並ぶ複数の接続端子により構成される。第二の端子部11Bの各接続端子は、第一の端子部10Bのいずれかの接続端子に対応している。第二の端子部11Cの各接続端子は、第一の端子部10Cのいずれかの接続端子に対応している。
【0036】
図3に示すように、第一の端子部10Bの各接続端子と、これに対応する第二の端子部11Bの接続端子とは、第一の導電部材であるワイヤW1によって電気的に接続されている。また、第一の端子部10Cの各接続端子と、これに対応する第二の端子部11Cの接続端子とは、第二の導電部材であるワイヤW2によって電気的に接続されている。
【0037】
また、硬質基板11には、第二の端子部11Bの各接続端子に配線16aを介して接続された接続端子からなる第三の端子部16bと、第二の端子部11Cの各接続端子に配線16cを介して接続された接続端子からなる第三の端子部16dとが、半導体基板10Aの固定される面の反対面に露出して設けられている。そして、第三の端子部16b,16dが、フレキシブル基板16の樹脂フィルムから露出する配線端子と接続されている。
【0038】
フレキシブル基板16の配線端子は、コネクタ16Cを介して接続される回路基板の接地端子と接続される端子を含む。つまり、フレキシブル基板16には、接地電位に保持される配線が含まれており、この配線の一部の露出した部分が、
図2の端子G1,G2となっている。
【0039】
ワイヤW1とワイヤW2は、それぞれ個別に、保護部材13によって周囲を覆われて保護されている。保護部材13としては、例えばエポキシ系やシリコーン系等の樹脂が用いられる。
【0040】
半導体基板10AとワイヤW1の保護部材13とワイヤW2の保護部材13と硬質基板11とは、圧脈波センサ1の表面を保護するための保護層である表面コーティング層15によって覆われている。表面コーティング層15は、例えばシリコーン系樹脂等の絶縁材料により構成される。
【0041】
表面コーティング層15は、フレキシブル基板16から露出する端子G1と端子G2の各々の少なくとも一部と接触するように、フレキシブル基板16における圧脈波センサ1の実装面上にも形成されている。なお、表面コーティング層15は、端子G1と端子G2の各々を完全に覆って形成されていることが好ましい。
【0042】
以上のように構成された圧脈波センサ1は、感圧素子列10Dが動脈の真上に位置しかつ方向Xが動脈の走行方向に交差(好ましくは直交)する状態で、感圧素子列10Dの形成される半導体基板10Aの感圧面が表面コーティング層15を介して、生体の体表面に押圧されて使用される。これにより、各感圧素子Sからは、半導体基板10Aの薄肉部に加えられた歪みに対応した電気信号、すなわち感圧素子Sに作用する圧力変動を表す信号が出力される。
【0043】
血圧測定装置100では、制御部3が、押圧機構2による圧脈波センサ1の体表面への押圧状態を調整しながら、圧脈波センサ1から出力される信号に基づいて、最適感圧素子および最適押圧力を決定した後、その最適押圧力において最適感圧素子から出力された信号に基づいて圧脈波を測定し、この圧脈波に基づいて血圧値や脈拍数等の生体情報を算出する。
【0044】
このようにして、血圧測定装置100が継続的に使用されると、表面コーティング層15と体表面との摩擦によって、表面コーティング層15内に負電荷が生じ、この負電荷が表面コーティング層15と感圧面との界面に保持される。
【0045】
図5は、センサチップ10と表面コーティング層15との界面付近の拡大断面模式図である。
【0046】
図5の例では、センサチップ10の半導体基板10AはN型としており、半導体基板10Aに形成されたP型半導体層によりピエゾ抵抗部が構成されている。
【0047】
表面コーティング層15と体表面との摩擦によって、表面コーティング層15内に負電荷51が生じ、負電荷51が表面コーティング層15と感圧面との界面に保持される。この界面に負電荷51が保持されると、半導体基板10Aにおけるピエゾ抵抗部(P+領域)同士の間の領域に生じた正電荷50によって反転チャネルが形成される。この反転チャネルによってピエゾ抵抗部のオフセット電圧が徐々に上昇することになる。
【0048】
図1の血圧測定装置100では、表面コーティング層15が、フレキシブル基板16から露出し、接地電位に保持される端子G1,G2に接触している。このため、表面コーティング層15に発生する負電荷は端子G1,G2を介して放電される。
【0049】
したがって、摩擦によって負電荷が発生しても、界面での負電荷の保持は抑制され、オフセット電圧を一定に維持することができる。この結果、圧脈波の検出精度を向上させることができる。
【0050】
また、血圧測定装置100によれば、摩擦による静電気の発生を抑制する必要がなくなることから、感圧面の上には表面コーティング層15のみを設けておく構成を採用することができる。このため、感圧面と生体の皮膚との距離を最小化することができ、圧脈波の検出精度を向上させることができる。
【0051】
なお、硬質基板11において、第二の端子部11Bと第二の端子部11Cとは別に端子G1,G2を形成し、硬質基板11上において表面コーティング層15と端子G1,G2とを接触させる構成も考えられる。
【0052】
しかし、圧脈波センサ1の小型化を進めると、硬質基板11には端子G1,G2を形成するスペースが十分に確保できなくなる。また、硬質基板11に端子G1,G2を形成すると、この端子G1,G2を接地電位に保持するための配線及び端子を硬質基板11に追加したり、この端子と接続する端子をフレキシブル基板16に追加したりする必要があり、製造コストが上昇したり設計レイアウトが複雑になったりする。特に、圧脈波センサ1を2つ有する構成では、2つの圧脈波センサ1の各々の硬質基板11に端子を追加形成する必要があり、コスト高が顕著となる。
【0053】
これに対し、本実施形態の血圧測定装置100は、フレキシブル基板16に一般的に含まれるグランド配線を露出させて端子G1,G2とし、この端子G1,G2を表面コーティング層15によって覆うだけの単純な構成である。このため、製造コストが上昇したり設計レイアウトが複雑になったりすることはない。また、圧脈波センサ1の小型化も容易となる。
【0054】
また、血圧測定装置100では、2つの圧脈波センサ1の間の領域を挟んで方向Xに端子G1,G2が並んでいる。このため、2つの圧脈波センサ1の各々の感圧面からほぼ等距離で表面コーティング層15を接地することができ、2つの圧脈波センサ1のオフセット電圧をほぼ同様に制御することができる。
【0055】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0056】
例えば、ここまでは、手首の橈骨動脈の圧脈波を検出する手首装着型の血圧測定装置について説明されているが、頚動脈や足背動脈に対して適用されるものであってもよい。
【0057】
また、血圧測定装置100は、圧脈波センサ1を2つ有するものとしているが、圧脈波センサ1は少なくとも1つあれば、圧脈波を検出して生体情報を測定することが可能である。
【0058】
また、血圧測定装置100では、半導体基板10Aを接地電位に保持し、端子G1,G2を接地電位に保持する構成としたが、半導体基板10Aと表面コーティング層15とが同電位にできれば、半導体基板10Aと表面コーティング層15の界面に負電荷が保持されるのを防ぐことができる。このため、半導体基板10Aの保持電位は接地電位でなくてもよい。半導体基板10Aを接地以外の所定電位に保持する構成では、端子G1,G2がこの所定電位に保持される構成とすればよい。
【0059】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0060】
開示された脈波測定装置は、感圧素子、及び、前記感圧素子と電気的に接続された第一の端子部が形成された半導体基板と、前記第一の端子部と電気的に接続された第二の端子部を含み、前記半導体基板が固定される硬質基板と、を有し、前記感圧素子の形成される感圧面が生体の体表面に押圧されて使用される圧脈波センサと、前記第二の端子部と電気的に接続された配線を有し、前記硬質基板が固定されたフレキシブル基板と、絶縁材料から構成され、前記圧脈波センサの前記半導体基板を覆って保護する保護層と、を備え、前記フレキシブル基板は、前記半導体基板の電位と同電位に保持された外部に露出する端子を含み、前記端子は、前記保護層と接触しているものである。
【0061】
開示された脈波測定装置は、前記圧脈波センサの前記半導体基板には、一方向に配列された複数の感圧素子により構成される感圧素子列と、前記感圧素子列と電気的に接続された前記第一の端子部とが形成され、前記圧脈波センサは、前記一方向が生体の動脈の走行方向に交差する状態で、前記感圧素子列の形成される感圧面が前記生体の体表面に押圧されて使用されるものであり、前記フレキシブル基板には、前記一方向と直交する方向に2つの前記圧脈波センサが並べて固定され、かつ、前記端子を2つ有し、前記2つの端子は、前記一方向において、前記2つの圧脈波センサの間の領域を挟んで対向する位置に配置されているものである。