(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6524863
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】制御回路およびスイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20190527BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-169597(P2015-169597)
(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公開番号】特開2017-46549(P2017-46549A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 旻
(72)【発明者】
【氏名】松浦 研
【審査官】
遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−053833(JP,A)
【文献】
特開2014−113011(JP,A)
【文献】
特開2003−125585(JP,A)
【文献】
特開2015−128345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング電源装置のスイッチング素子を制御する制御回路であって、
前記スイッチング素子に接続される制御部と、
前記制御部の入力部に接続される信号発生回路と、
前記信号発生回路に接続される参照電圧源と、
前記スイッチング電源装置の出力電圧が入力される第1入力端子と、前記信号発生回路からの比較信号が入力される第2入力端子と、前記制御部の入力部と前記信号発生回路に接続された出力端子とを有する比較器と、を備え、
前記参照電圧源は、前記スイッチング電源装置の出力電圧と基準電圧との差を積分した積分回路を含み、
前記比較信号は、前記比較器の出力信号と前記参照電圧源の参照電圧に基づいて生成され、前記比較器の出力信号が第2レベルから第1レベルに切り替わる時に上昇し、前記比較器の出力信号が前記第1レベルの期間は第1の傾きで下降し、前記比較器の出力信号が前記第1レベルから前記第2レベルに切り替わる時に降下し、前記比較器の出力信号が前記第2レベルの期間は第2の傾きで上昇することを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記比較信号の時間平均値は、前記参照電圧と等しいことを特徴とする請求項1記載の制御回路。
【請求項3】
前記スイッチング電源装置の出力電圧は、定電圧源を介して前記比較器の第1入力端子に入力されることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の制御回路。
【請求項4】
前記信号発生回路は、比例要素と積分要素と減算器と第1容量素子と第1抵抗を含み、
前記比較器の前記出力端子に接続される前記比例要素の入力部と、
前記比較器の前記出力端子に接続される前記積分要素の入力部と、
前記減算器の第1入力部に接続される前記比例要素の出力部と、
前記減算器の第2入力部に接続される前記積分要素の出力部と、
前記第1容量素子の一端に接続される前記減算器の出力部と、
前記第1容量素子の他端は、前記第1抵抗の一端と、前記比較器の前記第2入力端子に接続され、
前記第1抵抗の他端は、前記参照電圧源の一端と接続され、
前記参照電圧源の他端は、共通グランドと接続されることを特徴とする
請求項1〜3に記載の制御回路。
【請求項5】
前記比例要素は、第2抵抗と、第3抵抗を備え、
前記第2抵抗は、前記比較器の出力部と前記減算器の第1入力部との間に備えられ、
前記第3抵抗は、前記減算器の第1入力部と前記共通グランドとの間に備えられることを特徴とする請求項4に記載の制御回路。
【請求項6】
前記積分要素は、第4抵抗と、第2容量素子を備え、
前記第4抵抗は、前記比較器の出力部と前記減算器の第2入力部との間に備えられ、
前記第2容量素子は、前記減算器の第2入力部と前記共通グランドとの間に備えられることを特徴とする請求項4に記載の制御回路。
【請求項7】
前記減算器は、オペアンプと、キャパシタと、第5抵抗を含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の制御回路。
【請求項8】
前記制御部は、前記比較器の出力信号が前記第1レベルの期間に前記スイッチング素子を複数回スイッチングさせ、前記比較器の出力信号が前記第2レベルの期間に前記スイッチング素子のスイッチング動作を休止させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の制御回路。
【請求項9】
前記スイッチング電源装置は、共振コンバータであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の制御回路。
【請求項10】
スイッチング電源装置のスイッチング素子を制御する制御回路であって、
前記スイッチング素子に接続される制御部と、
前記スイッチング電源装置の出力電圧が入力される第1入力端子と、信号発生回路からの比較信号が入力される第2入力端子と、前記制御部の入力部に接続された出力端子とを有する比較器と、
前記信号発生回路は、前記比較器の出力端子から出力される出力信号と同位相となった信号が入力される第1入力端子と、参照電圧源からの参照電圧が入力される第2入力端子と、を備え、
前記参照電圧源は、前記スイッチング電源装置の出力電圧と基準電圧との差を積分した積分回路を含み、
前記比較信号は、前記比較器の出力端子から出力される出力信号と同位相となった信号と前記参照電圧源の参照電圧に基づいて生成され、前記比較器の出力端子から出力される出力信号と同位相となった信号が第2レベルから第1レベルに切り替わる時に上昇し、前記比較器の出力端子から出力される出力信号と同位相となった信号が前記第1レベルの期間は第1の傾きで下降し、前記比較器の出力端子から出力される出力信号と同位相となった信号が前記第1レベルから前記第2レベルに切り替わる時に降下し、前記比較器の出力端子から出力される出力信号と同位相となった信号が前記第2レベルの期間は第2の傾きで上昇することを特徴とする制御回路。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の制御回路を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御回路およびスイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源の制御方法として、コンパレータを利用したリップル注入非線形制御が知られている。(下記特許文献1、2参照)
【0003】
図9に示す特許文献1に記載のリップル注入ヒステリシス制御では、コンパレータ106の非反転入力端子に入力される基準電圧Vfbは、コンパレータ106の出力Spがハイレベルのときに第1の高い電圧となり、コンパレータ106の出力Spがローレベルのときに第2の低い電圧となる。第1の電圧と第2の電圧の差がヒステリシス幅である。出力電圧V2を抵抗分圧した直流分電圧にコンパレータ106の出力電圧またはこれと同位相となった電圧を積分した交流成分が重畳されて、コンパレータ106の反転入力端子に入力される。入力された電圧が第2の電圧の基準電圧よりも低くなると、コンパレータ106の出力Spがハイレベルとなり、駆動期間を開始し、基準電圧は第1の電圧となる。駆動期間にコンパレータ106の反転入力端子に入力された交流分電圧が上昇して、出力電圧を抵抗分圧した直流分電圧に重畳されて、第1の電圧の基準電圧よりも高くなると、コンパレータ106の出力Spがローレベルとなり、駆動期間を終了し、休止期間となる。このとき基準電圧は第2の電圧となる。休止期間はコンパレータの反転入力端子に入力された交流分電圧が降下する。
【0004】
また、コンパレータを利用したリップル注入非線形制御では、コンパレータの反転入力端子に注入するだけではなく、コンパレータの非反転入力端子に入力する制御方法も知られている。例えば、
図10に示す特許文献2に記載の非線形制御では、基準電圧に三角波交流成分電圧が重畳され、コンパレータ106の非反転入力端子に入力される。非反転入力端子に入力された電圧は、反転入力端子に入力された出力電圧の直流分電圧と比較される。非反転入力電圧が出力電圧から帰還した電圧より高くなると、コンパレータの出力はハイレベルとなり、すぐ、ローレベルとなる。駆動期間がコンパレータ106の出力Spのハイレベルのトリガ信号をもらって、一定期間を経てから停止するような固定ON時間またはその反対の固定OFF時間をもつ非線形制御がある。
【0005】
また、特許文献3は、コンパレータを使用する非線形制御方法として、コンパレータがハイレベルの期間に複数回のスイッチングを行う、バースト制御について開示されている。特許文献3では、出力電圧と基準電圧を比較するヒステリシス比較器と、スイッチ素子の電流を一定値に達したときに一定期間ゲート電圧をオフする回路を備えている。ヒステリシス比較器がハイレベルの期間にゲート電圧がオンとなって電流が一定値に達してゲート電圧をオフ、ヒステリシス比較器がハイレベルの期間が継続しているために再びゲート電圧がオンとなり、再び電流が一定値に達してゲート電圧をオフすることを繰り返すために、ヒステリシス比較器がハイレベルの期間に複数回のスイッチングが行われる。ヒステリシス比較器がローレベルの期間は、ゲート電圧がオンとならないのでスイッチングは休止する。
ヒステリシス比較器がハイレベルの期間は、スイッチングを繰り返しているのでスイッチング電源から出力コンデンサに負荷電流よりも大きな電流が供給されることで出力電圧が上昇する。ヒステリシス比較器がローレベルの期間はスイッチングが休止しているので、スイッチング電源から電流が供給されず、出力コンデンサから負荷電流が供給されるので、出力電圧が下がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6147478号明細書
【特許文献2】米国特許第7202642号明細書
【特許文献3】特開2007−181389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、特許文献1の出力電圧帰還回路ループにおいて、抵抗107h、107gとキャパシタ107iによるローパスフィルタ特性があるので、出力の負荷急変に対する応答性が悪いという問題がある。その応答性を改善するためにVfbのヒステリシス幅を小さくしなければならない。したがって、スイッチングノイズによる誤動作を引き起こしてしまう可能性がある。また、制御の安定性に関わっている重要な指標である位相余裕の確保が困難である。更に、コンバータの出力電圧リップルに依存してしまうという問題がある。
【0008】
また、特許文献2では、スイッチングノイズに対して、パワースイッチのON時に生じたノイズによる誤動作は低減できるが、パワースイッチのOFF時に生じたスイッチングノイズによる誤動作は解決できないという問題点がある。また、ON時間が固定の固定時間トリガを利用するため、固定時間内に応答ができないので、出力の負荷急変に対する応答性が悪いという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、高周波駆動であっても優れた応答性を維持し、スイッチングノイズに対する耐性が強く、コンバータの出力電圧リップルに依存してしまうことなく、十分な位相余裕を確保することが可能な制御回路およびスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る制御回路は、スイッチング電源装置のスイッチング素子を制御する制御回路であって、スイッチング素子に接続される制御部と、制御部の入力部に接続される信号発生回路と、信号発生回路に接続される参照電圧源と、スイッチング電源装置の出力電圧が入力される第1入力端子と、信号発生回路からの比較信号が入力される第2入力端子と、制御部の入力部と信号発生回路に接続された出力端子とを有する比較器と、を備え、比較信号は、比較器の出力信号と参照電圧源の参照電圧に基づいて生成され、比較器の出力信号が第2レベルから第1レベルに切り替わる時に上昇し、比較器の出力信号が第1レベルの期間は第1の傾きで下降し、比較器の出力信号が第1レベルから第2レベルに切り替わる時に降下し、比較器の出力信号が第2レベルの期間は第2の傾きで上昇する。
【0011】
これにより、優れた応答性を維持し、スイッチングノイズに対する耐性が強く、コンバータの出力電圧リップルに依存してしまうことなく、十分な位相余裕を確保することが可能となる。
【0012】
好ましくは、本発明に係るスイッチング電源装置は、比較信号の時間平均値は、参照電圧と等しくてもよい。
これにより、制御回路が正確に動作するので、優れた応答性を維持し、スイッチングノイズに対する耐性が強く、コンバータの出力電圧リップルに依存してしまうことなく、十分な位相余裕を確保することが可能となる。
【0013】
また、参照電圧源は、スイッチング電源装置の出力電圧と基準電圧との差を積分した積分回路を含んでいてもよい。これにより、出力電圧と基準電圧の間の定常偏差を改善することができる。
【0014】
また、スイッチング電源装置の出力電圧は、定電圧源を介して比較器の第1入力端子に入力されていてもよい。これにより、負荷急変の応答特性を改善することができる。
【0015】
また、信号発生回路は、比例要素と積分要素と減算器と第1容量素子と第1抵抗を含んでいてもよい。これにより、簡単な回路構成で信号発生回路を実現することができる。
【0016】
また、比較器の出力端子に接続される比例要素の入力部と、比較器の前記出力端子に接続される積分要素の入力部と、減算器の第1入力部に接続される比例要素の出力部と、減算器の第2入力部に接続される積分要素の出力部と、第1容量素子の一端に接続される減算器の出力部と、第1容量素子の他端は、第1抵抗の一端と、比較器の第2入力端子に接続され、第1抵抗の他端は、参照電圧源の一端と接続され、参照電圧源の他端は、共通グランドと接続されていてもよい。これにより、比較的簡単な回路構成で信号発生回路を含む制御回路を実現することができる。
【0017】
また、比例要素は、第2抵抗と、第3抵抗を備え、第2抵抗は、比較器の出力部と減算器の第1入力部との間に備えられ、第3抵抗は、減算器の第1入力部と共通グランドとの間に備えていてもよい。これにより、簡単な回路構成で比例要素を実現することができる。
【0018】
また、積分要素は、第4抵抗と、第2容量素子を備え、第4抵抗は、比較器の出力部と減算器の第2入力部との間に備えられ、第2容量素子は、減算器の第2入力部と共通グランドとの間に備えていてもよい。これにより、簡単な回路構成で積分要素を実現することができる。
【0019】
また、減算器は、オペアンプと、キャパシタと、第5抵抗を含んでいてもよい。これにより、簡単な回路構成で減算器を実現することができる。
【0020】
また、制御部は、比較器の出力信号が第1レベルの期間にスイッチング素子を複数回スイッチングさせ、比較器の出力信号が第2レベルの期間にスイッチング素子のスイッチング動作を休止させてもよい。これにより、スイッチング素子のオン・オフ周期が比較器出力のオン・オフの周期であるバースト周期よりも十分に短くなる。そのため、比較器の出力端子の電圧値が第1のレベルになると直ちに出力電圧が上昇し、比較器の出力端子の電圧値が第2のレベルになると直ちに出力電圧が下降するので、所謂バースト制御のような制御方式を適用することができる。
【0021】
また、スイッチング電源装置は、共振コンバータであってもよい。これにより、損失を抑えながらスイッチング周波数を上げることができるので、共振コンバータに使用されるインダクタやキャパシタに蓄積するエネルギーを小さくすることができる。そのため、高周波共振コンバータの出力電圧リップルに依存しなくなり、バースト制御方式にも適用できる。
【0022】
また、本発明に係る制御回路は、スイッチング電源装置のスイッチング素子を制御する制御回路であって、スイッチング素子に接続される制御部と、スイッチング電源装置の出力電圧が入力される第1入力端子と、信号発生回路からの比較信号が入力される第2入力端子と、制御部の入力部に接続された出力端子とを有する比較器と、信号発生回路は、比較器の出力端子から出力される出力信号に基づいた信号が入力される第1入力端子と、参照電圧源からの参照電圧が入力される第2入力端子と、を備え、比較信号は、比較器の出力端子から出力される出力信号に基づいた信号と参照電圧源の参照電圧に基づいて生成され、比較器の出力端子から出力される出力信号に基づいた信号が第2レベルから第1レベルに切り替わる時に上昇し、比較器の出力端子から出力される出力信号に基づいた信号が第1レベルの期間は第1の傾きで下降し、比較器の出力端子から出力される出力信号に基づいた信号が第1レベルから第2レベルに切り替わる時に降下し、比較器の出力端子から出力される出力信号に基づいた信号が第2レベルの期間は第2の傾きで上昇する。
【0023】
これにより、優れた応答性を維持し、スイッチングノイズに対する耐性が強く、コンバータの出力電圧リップルに依存してしまうことなく、十分な位相余裕を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高周波駆動であっても優れた応答性を維持し、スイッチングノイズに対する耐性が強く、コンバータの出力電圧リップルに依存してしまうことなく、十分な位相余裕を確保することが可能な制御回路およびスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置の回路構成を模式的に示した図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源装置の回路構成を模式的に示した図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係るスイッチング電源装置の回路構成を模式的に示した図である。
【
図4】本発明の第1、第2、第3実施形態に係るスイッチング電源装置の動作を説明するための定常動作波形図である。
【
図5】本発明の第4実施形態に係るスイッチング電源装置の回路構成を模式的に示した図である。
【
図6】本発明の第5実施形態に係るスイッチング電源装置の回路構成を模式的に示した図である。
【
図7】本発明の第6実施形態に係るスイッチング電源装置の回路構成を模式的に示した図である。
【
図8】本発明に係るスイッチング電源装置の出力電圧リップルを説明する波形図である。
【
図9】従来のスイッチング電源装置の回路構成を説明する図である。
【
図10】従来のスイッチング電源装置の回路構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明の対象は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれると共に、その構成要素は、適宜組み合わせることが可能である。
【0027】
発明の実施の形態が図面を参照し、詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
まず、
図1を参照して、本発明の好適な実施形態に係るスイッチング電源装置1の全体構成について説明する。
図1は、本発明の好適な実施形態に係るスイッチング電源装置を示す回路構成図である。
図1に示すスイッチング電源装置1aは、主回路4および制御回路9aを備えている。
【0029】
また、スイッチング電源装置1aは、一対の入力端子2a、2b(以下、特に区別しないときには「入力端子2」ともいう)、及び一対の出力端子3a、3b(以下、特に区別しないときには「出力端子3」ともいう)を備えている。
【0030】
具体的には一対の入力端子2a、2bの間には基準電位(本例では共通グランドG)に接続された入力端子2bを低電位側として、入力電圧(直流電圧)V1が入力される。一対の出力端子3a、3bの間には基準電位(本例では共通グランドG)に接続された出力端子3bを低電位側として、出力電圧(直流成分電圧+出力電圧リップル)V2が出力される。
【0031】
主回路4は、電圧変換回路であり、例えば入力コンデンサ、制御部5により制御されるスイッチング素子を含むスイッチング部、ダイオードやFETを含む整流部、チョークコイルやコンデンサを含む平滑部等から構成されている。主回路4は、入力端子2から入力される入力電圧V1を出力電圧V2に変換して出力端子3に出力する。
【0032】
制御回路9aは、制御部5、比較器6、信号発生回路7、参照電圧源8を備え、主回路4のスイッチ素子の動作を制御する。比較器6は、第1入力端子と第2入力端子を備えている。この比較器6の第1入力端子は出力端子3aと接続され、第2入力端子は信号発生回路7の出力端子73と接続されている。比較器6の出力端子からは、比較器6の出力電圧である出力信号Spを出力し、制御部5の入力部と信号発生回路7の第1入力端子71に接続されている。参照電圧源8は、信号発生回路7の第2入力端子72に参照電圧Vsを送信する。
【0033】
制御回路9aによるスイッチ素子の制御の一例として、制御部5の出力ScがHレベル(第1レベル)のとき、出力電圧V2が上昇し、制御部5の出力ScがLレベル(第2レベル)のとき、出力電圧V2が降下する制御を行う。以下、制御回路9aの動作を
図1と
図4を参照して詳細に説明する。
【0034】
比較器6の第1入力端子に入力された電圧Voは、出力電圧の交流リップル成分が無視できるほど十分に小さいほぼ直流の出力電圧Voである。一方、比較器6の第2入力端子に入力される信号は、信号発生回路7の出力端子73から出力される比較信号Vfbである。この比較信号Vfbは、比較器6の出力信号Spと参照電圧Vsの電圧レベルに基づいて生成される。
【0035】
比較器6の出力信号Sp、参照電圧Vs、出力電圧Voと信号発生回路7の比較信号Vfbの定常動作は、
図4に示すように、信号発生回路7の出力端子73からの比較信号Vfbは、比較器6の出力信号が第2レベル(Lレベル)から第1レベル(Hレベル)に切り替わる時に上昇し、出力端子電圧が第1レベルの期間は第1の傾きで下降し、出力端子電圧が第1レベルから第2レベルに切り替わる時に下降し、出力端子電圧が第2レベルの期間は第2の傾きで上昇する。この動作を繰り返し行う。なお、
図4の定常動作波形についての説明は、別途詳述する。信号発生回路7の出力端子73からの比較信号Vfbの平均値は、参照電圧源8の電圧値である参照電圧Vsに等しい。なお、言うまでもなく、比較器6の出力信号である第1のレベルと第2のレベルは、異なるレベルである。
【0036】
次に、
図1に示した制御回路9aの一実施形態として、
図2を参照して説明する。
図1と
図2との違いは、
図1に示した信号発生回路7を比例要素7a、積分要素7bと減算器7cを含む具体的な回路構成要素で示した点である。その他の構成は、
図1と同様である。
【0037】
具体的には、制御回路9bは、制御部5と、比較器6と、比例要素7aと、積分要素7bと、減算器7cと、第1容量素子の一実施例である第1キャパシタ7dと、第1抵抗7eと、参照電圧8を含んで構成される。比例要素7aとの入力部である入力端子71aと、積分要素7bの入力部である入力端子71bは、比較器6の出力端子に接続される。比例要素7aの出力部である出力端子75は、減算器7cの第1入力部である第1入力端子に接続され、積分要素7bの出力部である出力端子76は、減算器7cの第2入力部である第2入力端子に接続されている。減算器7cの出力部である出力端子74は、第1キャパシタ7dの一端と接続されており、第1キャパシタ7dの他端73は比較器6の第2入力端子と第1抵抗7eの一端と接続されている。第1抵抗7eの他端72は参照電圧8の一端と接続し、参照電圧8の他端は共通グランドG電位である。
【0038】
比例要素7a、積分要素7bと減算器7cの構成は、オペアンプ、抵抗、キャパシタ等によって構成することができる。制御特性と積分動作の線形性をよくするには一定の利得を持って、比例要素7a、積分要素7bと減算器7cを構成することも可能である。
【0039】
また、比例要素7a、積分要素7bと減算器7cの構成はオペアンプ、抵抗、キャパシタ以外にディジタル素子で構成することもできる。
【0040】
次に、
図2に示した制御回路9bの一実施形態として、
図3を参照して説明する。
図2と
図3との違いは、
図2に示した比例要素7aを第2抵抗7a1、第3抵抗7a2で構成し、積分要素7bを第4抵抗7b1、第2容量素子の一実施例である第2キャパシタ7b2を含む具体的な回路構成で示した点である。その他の構成は、
図2と同様である。これにより、簡単な回路構成で比例要素7aと積分要素7bを構成することができる。
【0041】
第2抵抗7a1の入力端子71aは、比較器6の出力端子と接続し、第2抵抗7a1の他端は減算器7cの第1入力端子と第3抵抗7a2の一端と接続される。第3抵抗7a2の他端は、共通グランド電位である。これによって比例要素7aを構成することができる。第2抵抗7a1の抵抗値をR1、第3抵抗7a2の抵抗値をR2とすると、比例要素7aの比率nは、n=R2/(R1+R2)で定義することができる。
【0042】
第4抵抗7b1の入力端子71bは、比較器6の出力端子と接続し、第4抵抗7b1の他端は減算器7cの第2入力端子と第2キャパシタ7b2の一端と接続される。第2キャパシタ7b2の他端は、共通グランド電位である。第4抵抗7b1の抵抗値をR3、第2キャパシタ7b2の容量値をC2とすると、積分要素の時定数Tは、T=R3C2で定義することができる。
【0043】
上述のように構成することで、比較器6の第1入力端子から比較器6の出力端子までは、微分特性を持つことになり、制御ループにおける即応性と安定性に貢献することができる。
【0044】
次に、
図4の定常動作波形図に基づいて、各タイミングにおける動作波形について説明する。比較器6の第1入力端子に入力された出力電圧Voは、交流リップル成分が無視できるほど十分小さいほぼ直流の出力電圧Voである。比較器6の第2入力端子に入力された比較信号Vfbは、比較器6の出力信号Spの電圧レベルと参照電圧Vsのレベルによって生成された電圧である。一方、比例要素7aと減算器7c間の電圧Vaは、比例要素7aの第2抵抗7a1と第3抵抗7a2を用いて、比較器6の出力信号Spを分圧することによって生成された電圧である。同様に積分要素7bと減算器7c間の電圧Vbは、積分要素7bの第4抵抗7b1と第2キャパシタ7b2を用いて、比較器6の出力信号Spを積分することによって生成された電圧である。減算器7cは、比例要素7aからの電圧Vaと積分要素7bからの電圧Vbの差分の電圧を減算器7cの出力部である出力端子74から第1キャパシタ7dに伝送する。
【0045】
各タイミングにおける動作波形について、まずは、t0からt1までの動作について説明する。t=t0の時、電圧Vaは、比例要素7aで設定した比率電圧レベルまで電圧が上昇する。一方、t=t0の時、電圧Vbは、定常動作電圧の最低値になる。t=t0の時の比較信号Vfbは、出力電圧Voより高いレベルに上昇する。そのあと、比較信号Vfbは、t0からt1までの間、第1の傾きをもって線形的に降下する。この期間の比較器6の出力信号Spの電圧レベルは、近似的に比較器6の動作電源の電圧レベルであって、第1のレベル(Hレベル)として出力する。この期間の制御部5の出力は、比較器6の出力信号Spに基づいて、スイッチング電源装置1のスイッチング素子をオンする駆動信号を制御部5から制御信号Scとして出力する。または、この期間の制御部5の出力は、比較器6の出力信号Spに基づいて、主回路4のスイッチング素子を複数回ON/OFFする駆動信号を制御部5から制御信号Scとして出力する。
【0046】
次に、
図4のt1からt2までの動作について説明する。比較信号Vfbがt0からt1まで第1の傾きをもって線形的に降下し、t=t1で、出力電圧Voに達すると、出力信号Spの電圧レベルが近似的に共通グランドGのレベルに切り替わり、第2レベル(Lレベル)になる。t1の時の電圧Vaは、共通グランドGのレベルまで電圧が下降する。一方、電圧Vbは、定常動作電圧の最高値になる。t1の時の比較信号Vfbは、出力電圧Voより低いレベルへ降下する。そのあと、比較信号Vfbは、t1からt2まで、第2の傾きをもって線形的に上昇する。t1からt2までの出力信号Spの電圧レベルは、第2レベル(Lレベル)を維持する。この期間の制御部5の出力は、比較器6の出力信号Spに基づいて、主回路4のスイッチング素子をオフする制御信号を制御部5から制御信号Scとして出力する。その後のt2〜t3のタイミングは、前述したt0〜t1のタイミングの動作と同様であり、t3〜t4のタイミングは、前述したt0〜t1のタイミングの動作と同様である。つまり、t0〜t2のタイミングの動作が、それ以降のタイミングのおいても繰り返し実行される。
【0047】
このように、比較器6の出力信号Spの電圧レベルと参照電圧Vsのレベルによって生成された比較器6の第2入力端子へ入力される比較信号Vfbは、t0からt1まで、又はt2からt3までの間に第1の傾きをもって降下して、t1で出力電圧Voに達すると、出力電圧Voより低い電圧レベルまで降下する。その後、t1からt2まで、又はt3からt4までの間に第2の傾きを持って上昇して、出力電圧Voに達すると、再び、出力電圧Voより高い電圧レベルまで上昇する。このt0〜t2の動作を繰り返し実行する。
【0048】
比較器6の第2入力端子に入力された比較信号Vfbは、信号発生回路7の出力端子73からの出力信号であるが、比較器6の出力信号Spと同位相となった信号を用いても構わない。例えば
図5に示すように、スイッチング素子42とチョークコイル43の間のノードからの信号を、比較器6の出力信号Spの代わりに用いて信号発生回路71の第1入力端子71に入力してもよい。スイッチング素子42とチョークコイル43の間のノードからの信号は、比較器6の出力信号と同位相のため、代用することができる。
【0049】
具体的には、スイッチング素子41、42に接続される制御部5と、前記スイッチング電源装置1dの出力電圧Voが入力される第1入力端子と、信号発生回路7からの比較信号Vfbが入力される第2入力端子と、制御部5の入力部に接続された出力端子とを有する比較器6と、信号発生回路7は、比較器6の出力端子から出力される出力信号に基づいた信号が入力される第1入力端子71と、参照電圧源8からの参照電圧が入力される第2入力端子72と、を備え、比較信号Vfbは、比較器6の出力端子から出力される出力信号に基づいた信号と参照電圧源8の参照電圧Vsに基づいて生成され、比較器6の出力端子から出力される出力信号に基づいた信号が第2レベルから第1レベルに切り替わる時に上昇し、比較器6の出力端子から出力される出力信号に基づいた信号が第1レベルの期間は第1の傾きで下降し、比較器6の出力端子から出力される出力信号に基づいた信号が第1レベルから第2レベルに切り替わる時に降下し、比較器6の出力端子から出力される出力信号に基づいた信号が第2レベルの期間は第2の傾きで上昇する制御回路である。このスイッチング素子42とチョークコイル43の間のノードからの信号を代用した構成においても、入力電圧に対して応答性がよくなるという効果を奏する。
【0050】
図6は、
図1の参照電圧源8の構成を他の実施形態である参照電圧源8aに変更したものである。その他の構成は、
図1と同様である。
図6に示す参照電圧源8aは、積分回路81と基準電圧源82を含んで構成されている。積分回路81の第1入力端子には出力電圧Voが入力され、積分回路81の第2入力端子には、基準電圧源82の基準電圧が入力される。この出力電圧Voと基準電圧の差分を積分回路81で積分した参照電圧を信号発生回路7の第2入力端子72に入力する。
【0051】
これにより、信号発生回路7に入力された参照電圧は、基準電圧源82の基準電圧と出力電圧Voの差を積分した電圧レベルとすることができるので、出力電圧Voと基準電圧の間の定常偏差を改善することができる。
【0052】
なお、積分回路81は、オペアンプ、キャパシタ、抵抗によって構成することもできる。また、ディジタル素子によって構成しても構わない。
【0053】
図7は、
図1の構成に定電圧源84を加えたものである。その他の構成は、
図1と同様である。スイッチング電源装置1fの出力端子3aは、定電圧源84のプラス端子と接続され、定電圧源84のマイナス端子は比較器6の第1入力端子と接続されている。このように、スイッチング電源装置1fの出力電圧V2は、定電圧源84を介して比較器6の第1入力端子に入力されることで、出力電圧V2が高い場合に制御ループのゲインを高くすることができるので、負荷急変の応答特性を改善することができる。
【0054】
以上のように、本実施形態に係るスイッチング電源装置1は、比例要素、積分要素と減算器を備えている信号発生回路に比較器6の出力パルス信号Spと参照電圧源が入力されて、生成された比較器6の第2入力端子の信号Vfbを有するためこれにより、優れた応答性を維持し、スイッチングノイズに対する耐性が強く、コンバータの出力電圧リップルに依存してしまうことなく、十分な位相余裕を確保することが可能となる。
【0055】
図8は、本発明に係るスイッチング電源装置の出力電圧リップルを説明する波形図である。
図4や
図8(a)に示したように比較器6の第1入力端子に入力された電圧Voは、出力電圧の交流リップル成分が無視できるほど十分に小さいほぼ直流の出力電圧Voであることを説明した。しかしながら、主回路4に含まれる出力キャパシタや、出力キャパシタ44の影響、またはこの出力キャパシタのESR(Equivalent Series Resistance)の影響等により、出力電圧Voが直流ではない場合がある。例えば、
図8(b)は、出力電圧Voに脈流のリップル成分が重畳された場合を示し、
図8(c)は、出力電圧Voに三角波状のリップル成分が重畳された場合を示す。これらのように出力電圧Voにリップル成分が重畳された場合においても、出力電圧Voが直流の場合と同じ動作が可能である。
【0056】
以上、本発明の一実施形態の制御回路およびスイッチング電源装置について説明したが、上記実施の形態の説明に限定されず種々の変形実施が可能である。
【0057】
例えば、定電圧源84は、ツェナーダイオードまたは三端子可変シャント・レギュレーターと、抵抗と、コンデンサを含んで構成してもよい。また、定電圧源84は、絶縁トランスから構成したり、コンデンサと、リニアレギュレータから構成したりすることもできる。あるいは、コンデンサと、スイッチングレギュレータから構成したり、コンデンサと、チャージポンプ回路から構成したりする等、各種定電圧源の構成を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1a、1b、1c、1e、1f スイッチング電源装置
1d、 降圧形DC−DCコンバータ
2 入力端子
3 出力端子
4 主回路
41 スイッチ素子
42 スイッチ素子
43 チョークコイル
44 出力キャパシタ
45 NOT回路
5 制御部
6 比較器
7 信号発生回路
7a1 第2抵抗
7a2 第3抵抗
7b1 第4抵抗
7b2 第2キャパシタ
7c 減算器
7d 第1キャパシタ
7e 第1抵抗
8 参照電圧源
81 積分回路
82 基準電圧源
84 定電圧源
9a、9b、9c、9d、9e 制御回路
Sp 制御パルス信号
Sc 制御信号
G 共通グランド