【文献】
阪本清美 外3名,TV視聴時のユーザーの感情状態が生理心理計測に及ぼす影響,Panasonic Technical Journal,2013年 4月,Vo.59,No.1,pp.29-34,URL,https://www.panasonic.com/jp/corporate/technology-design/ptj/pdf/v5901/p0107.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算手段は、脈波データに基づき加速度脈波を算出し、所定期間の加速度脈波に含まれる低周波成分と高周波成分との比を、前記指標として算出するように構成されている、請求項2に記載の光計測装置。
前記脈波計測手段は、前記頭部計測チャンネルを構成する前記脳計測用送光端子からの計測光と同一波長の計測光を、前記脈波計測チャンネルを構成する前記脳計測用送光端子から照射するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光計測装置。
前記脳活動計測手段と前記脈波計測手段とは、同一のサンプリング間隔で計測データを取得するように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
まず、
図1〜
図7を参照して、本発明の一実施形態による光計測装置100の全体構成について説明する。
【0021】
[光計測装置の構成]
まず、光計測装置100による脳活動計測の概要について説明する。光計測装置100は、近赤外分光法(NIRS)を用いて被検者の脳活動を光学的に計測し、時系列の計測結果データを生成する装置である。
【0022】
具体的には、光計測装置100は、
図1に示すように、近赤外光の波長領域の計測光を被検者の頭部表面上に配置した送光プローブ1から頭部関心領域Rに照射する。そして、頭部関心領域Rに照射された計測光を頭部表面上に配置した受光プローブ2に入射させて検出することにより、計測光の強度(受光量)を取得する。送光プローブ1は、特許請求の範囲の「脳計測用送光端子」の一例である。受光プローブ2は、特許請求の範囲の「脳計測用受光端子」の一例である。
【0023】
光計測装置100は、近赤外領域(およそ700nm〜2500nm)における複数波長(たとえば、780nm、805nmおよび830nmの3波長)の計測光の強度(受光量)とヘモグロビンの吸光特性とに基づいて、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビンおよび総ヘモグロビンの変化量を計測する。すなわち、光計測装置100は、頭部関心領域Rにおけるヘモグロビン変化量を、脳活動に伴う脳中血流変化を反映した脳活動として計測する。頭部関心領域Rは、計測目的に応じて設定されるものであり、特に限定されるものではない。たとえば、認知機能に関する脳活動の計測では、主として前頭葉(前頭前野)が頭部関心領域Rとして設定される。
【0024】
また、本実施形態による光計測装置100は、脳活動計測に加えて、被験者の脈波計測を行うように構成されている。
【0025】
図1に示すように、光計測装置100は、計測部10と、本体制御部11と、主記憶部12とを備えている。計測部10は、光出力部13と、光検出部14と、計測制御部15とを含む。また、光計測装置100は、表示部16と、操作入力部17とを備える。また、光計測装置100は、被験者の頭部関心領域Rに計測光を照射可能な複数の送光プローブ1と、頭部関心領域Rに照射された計測光を受光可能な複数の受光プローブ2とを備える。計測部10は、特許請求の範囲の「脳活動計測手段」および「脈波計測手段」の一例である。本体制御部11は、特許請求の範囲の「演算手段」の一例である。
【0026】
計測部10は、送光プローブ1および受光プローブ2のペアにより計測チャンネルを構成し、計測光を用いた計測を計測チャンネル毎に行う機能を有する。具体的には、計測部10は、複数の送光プローブ1および複数の受光プローブ2により構成された頭部計測チャンネル21(
図2参照)により、頭部関心領域Rを計測する脳活動計測手段として機能するとともに、複数の送光プローブ1および複数の受光プローブ2のうち一部を利用して構成された脈波計測チャンネル22(
図4参照)により、被験者の脈波を計測する脈波計測手段として機能する。
【0027】
光出力部13は、光ファイバ3を介して送光プローブ1に計測光を出力するように構成されている。光出力部13は、半導体レーザーなどを光源として備え、近赤外光の波長領域で上記した複数波長の計測光を出力する。光検出部14は、光電子増倍管などを検出器として備え、受光プローブ2に入射した計測光を光ファイバ3を介して取得し、検出するように構成されている。
【0028】
計測制御部15は、光出力部13および光検出部14の動作制御を行い、光出力部13の点灯および消灯のタイミングを制御するとともに、光検出部14から受光量信号を取得する。
【0029】
本体制御部11は、CPUやメモリなどから構成されるコンピュータであり、主記憶部12に格納された各種プログラムを実行することにより、光計測装置100の計測動作を制御するように構成されている。
【0030】
また、本体制御部11は、データ解析用ソフトウェア(プログラム)を実行することにより、得られた計測データを表示部16へ出力する。計測データは、時間情報と計測値情報とを含む時系列データであり、計測チャンネル毎に主記憶部12に記録される。
【0031】
主記憶部12は、たとえばHDD(ハードディスクドライブ)からなり、本体制御部11が実行する各種プログラムを格納するととともに、計測の結果得られた計測データを記憶することが可能である。表示部16は、たとえば液晶モニタなどの表示装置であり、操作入力部17は、たとえばキーボードおよびマウスなどからなる入力機器である。
【0032】
送光プローブ1および受光プローブ2は、それぞれ複数設けられている。本実施形態では、光計測装置100は、送光プローブ1および受光プローブ2を頭部関心領域Rに対応する頭部計測位置に保持する頭部計測用ホルダ4と、送光プローブ1および受光プローブ2を被験者の脈波計測位置に保持する脈波計測用ホルダ5とを備える。送光プローブ1および受光プローブ2は、それぞれ、頭部計測用ホルダ4と脈波計測用ホルダ5とに着脱可能に構成されている。
【0033】
図2に示すように、頭部計測用ホルダ4は、被験者の頭部に装着可能に構成され、プローブを固定するための複数の取付穴4aを備えている。送光プローブ1および受光プローブ2は、頭部計測用ホルダ4に取り付けられることにより、頭部表面上の所定位置に固定される。隣接する送光プローブ1と受光プローブ2との間に頭部計測チャンネル(計測点)21が構成される。頭部計測チャンネル21は、被検者の頭部に所定の第1間隔D1を隔てて配置された送光プローブ1および受光プローブ2により構成され、脳活動データ23(
図1参照)を取得する計測チャンネルである。第1間隔D1は、一般に約3cmの一定間隔とされる。
【0034】
図3に示すように、頭部計測用ホルダ4において、送光プローブ1と受光プローブ2とは、たとえば行および列の各方向に交互に並ぶように配置される。この場合、行方向および列方向に隣接するそれぞれの送光プローブ1と受光プローブ2とで頭部計測チャンネル21を構成することができ、プローブ数当たりの計測チャンネル数を最大化することが可能である。
図3では、14本の送光プローブ1と、13本の受光プローブ2とにより、42点の頭部計測チャンネル21を構成した例を示している。
【0035】
また、本実施形態では、複数の送光プローブ1および複数の受光プローブ2のうち一部を利用して、脈波計測チャンネル22が構成されている。すなわち、
送光プローブ1および受光プローブ2は、
図4に示す脈波計測用ホルダ5に取り付けられることにより、被験者の脈波計測位置に配置される。隣接する送光プローブ1と受光プローブ2との間に脈波計測チャンネル(計測点)22が構成される。脈波計測チャンネル22は、被験者の脈波データ24(
図6参照)を取得する計測チャンネルである。
【0036】
脈波計測用ホルダ5は、被験者の脈波計測部位によって異なる構造が採用される。脈波計測部位としては、たとえば被験者の手指や、被験者の耳朶とすることができる。
図4では、被験者の手指を脈波計測部位とし、いわゆる指尖脈波を計測する例を示している。
【0037】
この場合、脈波計測用ホルダ5は、被験者の手指(人差し指など)を挿入可能な筒状形状の筒状部5aを有する。脈波計測用ホルダ5には、筒状部5aを外周部から内周部まで貫通するように、被験者の脈波計測位置にプローブを固定するための取付穴5bが形成されている。脈波計測用ホルダ5は、2つの取付穴5bを備え、送光プローブ1および受光プローブ2が1つずつ取り付けられる。したがって、本実施形態では、脈波計測チャンネル22は、一対の送光プローブ1および受光プローブ2により1つ(1チャンネル)構成されている。
【0038】
送光プローブ1および受光プローブ2(すなわち、2つの取付穴5b)は、所定の第2間隔D2を隔てて配置される。第2間隔D2は、たとえば10mm程度である。これにより、送光プローブ1から指先の組織内に計測光が照射され、組織内を通過した計測光が受光プローブ2により受光される。計測光は、組織内の血流に応じて吸収されることから、脈波計測チャンネル22の計測信号は、拍動に伴う血流の変化を反映した脈波データ24(指尖容積脈波)として取得される。
【0039】
このような構成により、
図3および
図4に示した構成例では、14本の送光プローブ1と、13本の受光プローブ2とにより構成された42点の頭部計測チャンネル21から脳活動データ23が取得され、各1本の送光プローブ1および受光プローブ2により構成された43番目の脈波計測チャンネル22から脈波データ24が取得される。
【0040】
(計測の概要)
次に、頭部計測チャンネル21および脈波計測チャンネル22での計測の概要について説明する。
【0041】
本実施形態では、光計測装置100は、頭部計測チャンネル21からの脳活動データ23の計測と、脈波計測チャンネル22からの脈波データ24の計測とを、共通の計測条件で、並行して実施するように構成されている。計測条件は、計測に用いる計測光の波長、計測データのサンプリング間隔を含む。
【0042】
すなわち、計測部10は、頭部計測チャンネル21を構成する送光プローブ1からの計測光と同一波長の計測光を、脈波計測チャンネル22を構成する送光プローブ1から照射するように構成されている。上記のように、脳活動データ23は、複数波長(たとえば、780nm、805nmおよび830nmの3波長)の計測光を用いて取得される。計測部10は、脈波計測チャンネル22の送光プローブ1についても、光出力部13から同じ複数波長の計測光を照射させるように制御する。言い換えると、光計測装置100は、脈波計測のための専用光源を備えることなく、脳活動計測に用いる共通の光源(光出力部13)を用いて、脈波データ24を取得する。
【0043】
なお、たとえば
図3のプローブ配置において、1つの受光プローブ2を挟む両側の送光プローブ1(たとえば、1番と4番の送光プローブ)から計測光が同時に照射されると、両方の計測光が受光されてしまい、計測チャンネル間の混信が生じることになる。そのため、計測部10は、それぞれの送光プローブ1の点灯(計測光の照射)を、予め設定されたプロトコルに従って、点灯サイクル単位で点灯タイミングをずらして順次行う。
【0044】
図5は、点灯プロトコルの構成例を示しており、横軸が点灯サイクル番号を表し、縦軸が送光プローブ番号を表す。
図5では、
図3に示した頭部計測チャンネル21の送光プローブ1を1番〜14番とし、脈波計測チャンネル22の送光プローブ1を15番に設定している。
図5の構成例では、点灯サイクル数は、14である。すなわち、点灯サイクル毎に、頭部計測チャンネル21の送光プローブ1が1番から14番まで1つずつ順次点灯される。
【0045】
ここで、脈波計測チャンネル22の送光プローブ1は、14番目の点灯サイクルにおいて、頭部計測チャンネル21の14番の送光プローブ1と同時に(同じ点灯サイクルで)点灯される。すなわち、本実施形態では、計測部10は、頭部計測チャンネル21を構成する送光プローブ1からの計測光の照射タイミングと同じタイミングで、脈波計測チャンネル22を構成する送光プローブ1から計測光を照射するように構成されている。
【0046】
これは、被験者の頭部に構成された頭部計測チャンネル21と、指先に構成された脈波計測チャンネル22との間では、同時点灯しても計測チャンネル間の混信が生じることがないためである。そのため、脈波計測チャンネル22の点灯は、14番以外のどの点灯サイクルで行ってもよい。
【0047】
また、本実施形態では、計測部10は、頭部計測チャンネル21からの脳活動データ23の取得と、脈波計測チャンネル22からの脈波データ24の取得との両方について、同一のサンプリング間隔で計測データを取得するように構成されている。
【0048】
サンプリング間隔は、たとえば75μ秒や、125μ秒などの所定時間間隔であり、計測条件の1つとして使用者により予め設定される。光計測装置100は、これらのサンプリング間隔を選択(変更)可能に構成されている。このため、脳活動データ23と脈波データ24とは、時系列の揃った計測データとして一括で取得される。
【0049】
得られた脳活動データ23と脈波データ24とは、主記憶部12に記録される。また、本実施形態では、本体制御部11は、脈波計測チャンネル22から計測された脈波データ24に基づき、自律神経機能のバランスを評価するための指標25(
図1参照)を算出するように構成されている。
【0050】
具体的には、
図6に示すように、本体制御部11は、脈波データ24に基づき加速度脈波24aを算出し、所定期間の加速度脈波に含まれる低周波成分と高周波成分との比を、指標25として算出するように構成されている。加速度脈波24aとは、指先の脈波(指尖容積脈波)の二次微分波(2回微分した脈波)である。ここでいう「加速度」は物体の運動ではなく、2階微分の意味で慣用されている。
【0051】
加速度脈波24aは、a波、b波、c波、d波およびe波の5つの特徴的な成分を含む。本体制御部11は、脈波データ24から算出した加速度脈波24aについて、a波から次のa波までの所定期間Dt(a−a間隔)を、加速度脈波24aの1周期分の時間間隔として取得する。そして、本体制御部11は、この所定期間Dtの範囲に設定した時間窓内の加速度脈波24aに対して周波数解析を行うことにより、加速度脈波24aを周波数成分ごとに分解する。そして、本体制御部11は、加速度脈波24aに含まれる低周波成分のパワーと高周波成分のパワーとの比(LF/HF)を算出する。
【0052】
ここで、加速度脈波24aの低周波成分(LF:Low Frequency)は、たとえば0.15Hz未満の周波数成分とし、加速度脈波24aの高周波成分(HF:High Frequency)は、0.15Hz以上の周波数成分とする。低周波成分LFは、主に交感神経機能を反映し、高周波成分HFは、主に副交感神経機能を反映する。そのため、低周波成分と高周波成分との比LF/HFは、交感神経と副交感神経とのバランス(自律神経機能のバランス)を表す指標25として利用することができる。
【0053】
得られた指標(LF/HF)25は、主記憶部12に記憶されると共に、表示部16に表示される。
図7に示すように、本実施形態では、表示部16は、頭部計測チャンネル21から計測された脳活動データ23と、算出された指標(LF/HF)25とを同一画面上に表示する。指標25は、脈波計測チャンネル22に対応する43chの計測データとして、1ch〜42chの脳活動データ23とともに表示される。
【0054】
(自律神経機能のバランスを評価するための指標)
得られた指標(LF/HF)25の値からは、たとえば被験者の疲労度合いを評価することができる。
図8に示すように、交感神経と副交感神経とのバランスのとれた通常時には、LF/HFの値は約1.3〜約1.4程度となるのに対して、疲労負荷後には、疲労の増大に伴ってHFが低下し、LF/HFの値が上昇する(自律神経機能のバランスが崩れる)。
【0055】
疲労度合いに見られるような自律神経機能のアンバランスは、脳活動計測にも影響する。具体的には、
図7に示すように、脳活動計測では一般に、設定された課題を行わないレスト期間(安静期間)PRと、課題を行うタスク期間(課題期間)PTとが設けられる。脳活動は、レスト期間PRの計測値とタスク期間PTの計測値との差異(相対値)として評価される。そこで、通常、レスト期間PRの計測値が安定してベースラインまで低下するように計測を行うのに対して、被験者の疲労度合いが高い場合には、レスト期間PRに計測値がベースライン近傍まで十分に下がりきらずに、タスク期間PTとの差異が不明瞭になるケースがある。
【0056】
そのため、脳活動データ23の解析の際には、自律神経機能のバランスが適正な状態にあるか否かを考慮することにより、脳活動データ23の変動が自律神経系の影響によるものであるか否かを評価して、自律神経系の影響と評価される成分を脳活動データ23のノイズとして除去したり、あるいは自律神経系の影響自体を解析したりすることが可能である。
【0057】
また、脳活動データ23の計測の実施中には、指標(LF/HF)25の値が脳活動データ23と共にリアルタイムで表示されるので、指標25の値が増大しているか否か(自律神経機能のバランスが崩れてきているか否か)を計測中に把握可能である。そのため、脳活動データ23への自律神経系の悪影響が懸念される場合には、タスク期間PTにおける課題の難易度やレスト期間PRの長さを調整するなどの計測条件の見直しや、必要な場合には休憩を挟むといった措置を講じることにより、より適正な脳活動データ23の取得が可能となる。
【0058】
(光計測装置の計測処理)
次に、
図9を参照して、光計測装置100の計測処理について説明する。以下の処理は、光計測装置100の本体制御部11が計測制御部15(計測部10)などの各部を制御することにより行われる。
【0059】
計測に先だって、頭部計測用ホルダ4を介して複数の送光プローブ1および受光プローブ2が被験者の頭部関心領域Rに対応する計測位置に配置される。また、被験者の手指が脈波計測用ホルダ5の内部に配置されることにより、送光プローブ1および受光プローブ2が脈波計測部位(手指)に配置される。この状態で、計測が実施される。
【0060】
まず、
図9のステップS1において、本体制御部11が計測条件および計測に関する各種パラメータを設定する。計測条件やパラメータは、たとえば操作入力部17を介した入力操作の受け付けや、主記憶部12に事前に記録された設定情報の読み出しによって、取得される。これにより、本体制御部11は、計測に用いる各計測チャンネルの構成(プローブの配置)、点灯サイクルのプロトコルや、サンプリング間隔などの設定を行う。
【0061】
ステップS2において、本体制御部11が、計測を開始するか否かを判断する。たとえば操作入力部17を介して計測開始の指示が入力されると、本体制御部11が計測を開始すると判断して、次のステップに処理を進める。計測を開始しない場合、本体制御部11はステップS2の判断を繰り返し、待機する。
【0062】
計測を開始する場合、本実施形態では、本体制御部11が計測部10を制御することにより、ステップS3による脳活動計測と、ステップS4における脈波計測とが並行して実施される。すなわち、ステップS1において設定された点灯プロトコル(
図5参照)に従って計測光が送光プローブ1から順次照射され、それぞれの受光プローブ2により受光されることにより、各頭部計測チャンネル21と脈波計測チャンネル22とから計測データが取得される。この際、脳活動データ23と脈波データ24とが共通のサンプリング間隔で取得される。
【0063】
これにより、ステップS3において、計測部10は、各頭部計測チャンネル21により、頭部関心領域Rの脳活動データ23(1ch〜42ch)を取得する。また、ステップS4において、計測部10は、脈波計測チャンネル22により、被験者の脈波データ24(43ch)を取得する。得られた脳活動データ23および脈波データ24は、主記憶部12に記録される。
【0064】
ステップS5〜S7は、脈波データ24に基づいて自律神経機能のバランスを評価するための指標25(LF/HF)を算出する処理である。上記の通り、指標25は、加速度脈波24aの所定期間Dt分のデータに基づいて算出するので、厳密には、指標25の算出は所定期間Dt分のデータが蓄積された時点から開始される。所定期間Dt分のデータが蓄積された後は、脈波データ24の取得に伴って所定期間Dtに対応する時間窓をスライドさせることにより、脈波データ24が取得される度に指標25が算出される。
【0065】
具体的には、ステップS5において、本体制御部11が、取得された脈波データ24を2回微分することにより、加速度脈波24aを算出する。次に、ステップS6において、本体制御部11が、所定期間Dtに含まれる加速度脈波24aの周波数解析により、加速度脈波24aの低周波成分(LF)および高周波成分(HF)を抽出する。そして、ステップS7において、本体制御部11が、低周波成分および高周波成分の比(LF/HF)を指標25として算出する。
【0066】
次に、ステップS8において、本体制御部11が、得られた脳活動データ23と指標25とを表示部16に表示する。すなわち、
図7に示したように、表示部16の表示画面において、1chから42chの脳活動データ23と、脈波データ24の計測結果としての43chの指標25(LF/HF)とが、同時に表示される。
【0067】
ステップS9において、本体制御部11が、計測を終了するか否かを判断する。計測を終了しない場合、本体制御部11は、処理をステップS3およびS4に戻し、計測を継続する。本体制御部11は、操作入力部17を介して計測終了の指示が入力された場合や、予め設定された計測時間が経過した場合に、計測を終了すると判断する。その場合、本体制御部11は、ステップS10において所定の計測終了処理を実行した後、計測処理を終了する。
【0068】
以上により、光計測装置100の計測処理が実行される。
【0069】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0070】
本実施形態では、上記のように、複数の送光プローブ1および複数の受光プローブ2のうち一部を利用して構成された脈波計測チャンネル22により、被験者の脈波を計測する計測部10を設け、脳活動計測と脈波計測とを並行して行うように計測部10を構成する。これにより、被験者の自律神経の状態を把握するための脈波計測を、脳活動計測と並行して行うことができる。また、送光プローブ1および受光プローブ2の一部を流用して脈波計測を行うことができるので、専用のハードウェア(計測装置)を別途追加する必要がない。以上により、本実施形態の光計測装置100によれば、専用のハードウェアを別途追加することなく、被験者の自律神経の状態を把握することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、脈波計測チャンネル22から計測された脈波データ24に基づき、自律神経機能のバランスを評価するための指標25を算出する本体制御部11と、頭部計測チャンネル21から計測された脳活動データ23と、算出された指標25とを同一画面上に表示する表示部16とを設ける。これにより、自律神経機能のバランスを評価するための指標25により、被験者の自律神経の状態を容易に把握することができる。また、脳活動データ23と同時に表示部16の画面上で自律神経の指標25を把握することができるので、脳活動の計測中に自律神経の影響を評価することができる。その結果、たとえば自律神経機能がアンバランスとなっており脳活動データ23への影響が大きい場合には、計測条件の調整や、被験者への適切な処置(休息をとるなど)などの各種の対応ができるようになる。これにより、データ解析のみならず、脳活動計測を実施する際の光計測装置100の利便性を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、脈波データ24に基づき加速度脈波24aを算出し、所定期間Dtの加速度脈波24aに含まれる低周波成分と高周波成分との比(LF/HF)を指標25として算出するように、本体制御部11を構成する。これにより、主として交感神経機能を反映する加速度脈波24aの低周波成分と、主として副交感神経機能を反映する加速度脈波24aの高周波成分との比に基づいて、より容易かつ直接的に、被験者の自律神経の状態を把握することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、頭部計測チャンネル21を構成する送光プローブ1からの計測光と同一波長の計測光を、脈波計測チャンネル22を構成する送光プローブ1から照射するように、計測部10を構成する。これにより、共通の計測光により、脳活動データ23と脈波データ24との両方を取得することができる。すなわち、専用のハードウェア(計測装置)を別途追加する必要がないだけでなく、脈波計測専用の光源を設けることなく、脳活動計測用の光源(光出力部13)を利用して脳活動データ23と脈波データ24との両方を取得することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、計測部10を、同一のサンプリング間隔で脳活動データ23と脈波データ24とを取得するように構成する。これにより、同一のサンプリング間隔で取得された計測データ(脳活動データ23および脈波データ24)に基づいて統一的な解析処理が可能となる。また、専用のハードウェア(計測装置)を別途追加する場合、ハードウェアの仕様上の制限によっては脳活動データ23と脈波データ24とを同一のサンプリング間隔で取得することが困難となる場合があるのに対して、本実施形態では、同一の光計測装置100が脳活動計測と脈波計測とを行うように構成することによって、容易に、脳活動データ23と脈波データ24とを同一のサンプリング間隔で取得することができるので、光計測装置100の利便性を向上させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、頭部計測チャンネル21を構成する送光プローブ1からの計測光の照射タイミングと同じタイミングで、脈波計測チャンネル22を構成する送光プローブ1から計測光を照射するように、計測部10を構成する。これにより、頭部計測チャンネル21の計測に加えて脈波計測チャンネル22の計測を行う場合にも、計測光の照射サイクルの総サイクル時間(
図5の総サイクル数)を長くすることなく、計測を行うことができる。すなわち、脈波計測チャンネル22は、計測光が別チャンネルに混入することがないので、計測光の照射タイミングを一致させることにより、総サイクル時間が長くなることを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、頭部計測チャンネル21を複数構成するとともに、脈波計測チャンネル22を、一対の送光プローブ1および受光プローブ2により1つ構成する。これにより、送光プローブ1および受光プローブ2を流用して脈波計測チャンネル22を構成する場合でも、計測可能な頭部計測チャンネル21の数を必要以上に減少させることがない。その結果、脈波データ24を取得しつつ、十分な数の脳活動データ23を取得することができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、送光プローブ1および受光プローブ2を頭部関心領域Rに対応する頭部計測位置に保持する頭部計測用ホルダ4と、送光プローブ1および受光プローブ2を被験者の脈波計測位置に保持する脈波計測用ホルダ5とを設ける。そして、送光プローブ1および受光プローブ2を、それぞれ、頭部計測用ホルダ4と脈波計測用ホルダ5とに着脱可能に構成する。これにより、特定の送光プローブ1および受光プローブ2を脈波計測用の専用の端子(プローブ)にすることなく、任意かつ汎用のプローブをそれぞれのホルダに着脱して使用することができる。その結果、脳活動計測の際に送光プローブ1および受光プローブ2を自由に選択できるようになるので、光計測装置100の利便性をさらに向上させることができる。
【0078】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0079】
たとえば、上記実施形態では、被験者の手指を脈波計測部位として脈波データ24を取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、被験者の耳朶を脈波計測部位としてもよい。図示しないが、この場合、たとえば耳朶を両側から挟み込むクリップ形状の脈波計測用ホルダを用いることができる。脈波計測用ホルダにおいて、耳朶の一方側に送光プローブ1を保持させ、耳朶の他方側に受光プローブ2を保持させる。これにより、送光プローブ1から照射され耳朶を通過した計測光を受光プローブ2から取得することにより、脈波データを取得することが可能である。
【0080】
また、上記実施形態では、14本の送光プローブ1と、13本の受光プローブ2とにより、42点の頭部計測チャンネル21を構成した例(
図3参照)を示したが、本発明はこれに限られない。頭部計測チャンネル21の数や、送光プローブ1および受光プローブ2の配置は任意であり、計測目的に応じて設定すればよい。
【0081】
また、上記実施形態では、頭部計測チャンネル21を構成する各送光プローブ1を順次点灯する点灯プロトコル(
図5参照)の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図5に示したパターン以外の点灯プロトコルで各送光プローブ1を点灯させてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、一対の送光プローブ1および受光プローブ2により1点の脈波計測チャンネル22を構成した例(
図4参照)を示したが、本発明はこれに限られない。脈波計測チャンネル22を2点以上構成してもよい。ただし、脈波計測チャンネル22の数を増やすと、その分、頭部計測チャンネル21に利用できるプローブ数が減少することになる。脳活動計測に際して自律神経機能のバランスを評価するための計測データを取得する目的上は、脈波計測チャンネル22が1点あれば足りるが、計測目的に応じて設定すればよい。
【0083】
また、上記実施形態では、脈波データ24に基づいて指標25(LF/HF)を算出し、脳活動データ23と指標25とを表示部16に同時に表示する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、脳活動データ23と脈波データ24とを表示してもよいし、脈波データ24や指標25を表示させずに脳活動データ23のみを表示させてもよい。指標25を表示させない場合、
図9に示した計測動作中に指標25を算出しなくてもよい。すなわち、脈波データ24のみを主記憶部12に記憶させておき、計測終了後、データ解析を行う際に指標25を算出するようにしてもよい。
【0084】
なお、
図7では、脳活動データ23と指標25とを単純に並べた表示態様の例を示したが、本発明はこれに限られない。表示部16の表示画面での表示態様は、
図7に示したものに限られず、任意に変更してよい。
【0085】
また、上記実施形態では、自律神経機能のバランスを評価するための指標25として、加速度脈波24aに含まれる低周波成分と高周波成分との比(LF/HF)を算出する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、自律神経機能のバランスを評価するための指標となるデータであれば、脈波データ24から得られるLF/HF以外のデータを算出してもよい。たとえば、疲労度が上昇しても、LFの値はあまり変化せずにHFの値が有意に低下するという報告があるため、HFの値を指標として算出してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、計測部10が脳活動計測手段および脈波計測手段の両方として機能する構成例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、脳活動計測手段として機能する計測部と、脈波計測手段として機能する計測部とを、光計測装置が個別に備えていてもよい。