特許第6524881号(P6524881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6524881
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】車載記憶装置及び車載記憶システム
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20190527BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   B60C23/04 N
   G08C17/00 B
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-204040(P2015-204040)
(22)【出願日】2015年10月15日
(65)【公開番号】特開2017-74878(P2017-74878A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 彰規
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−191730(JP,A)
【文献】 特開2005−190116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/02
23/04
G01L 17/00
G08C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられ、自身の識別情報を無線送信する複数の通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信して記憶する車載記憶装置であって、
前記通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信する受信部と、
前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であるか否かを検出する検出部と、
該検出部によって他車両が存在しない状況であることを検出した場合に、前記受信部が受信した識別情報を記憶する記憶部と
を備え
前記検出部は、少なくとも1つのタイヤに対して空気の充填動作が開始又は終了したことを検出した場合に、前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であると判断する車載記憶装置。
【請求項2】
前記検出部によって他車両が存在しない状況であることを検出した場合に、前記通信装置のそれぞれに対して前記識別情報を要求する要求信号を各別に無線送信する送信部を備え、
前記受信部は、前記送信部が無線送信した要求信号に応じて前記通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信する
請求項1に記載の車載記憶装置。
【請求項3】
前記検出部は、少なくとも1つのタイヤの空気圧が所定値以上増加したことを検出した場合に、前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であると判断する
請求項1又は2に記載の車載記憶装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記車両への給油が開始又は終了したことを検出した場合に、前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であると判断する
請求項1からまでのいずれかひとつに記載の車載記憶装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記車両に設けられたタイヤの数よりも多い数の識別情報を前記受信部が受信した場合、前記受信部が受信した識別情報を記憶しない
請求項1からまでのいずれかひとつに記載の車載記憶装置。
【請求項6】
前記検出部によって他車両が存在しない状況であることを検出した後に、前記車両に設けられたタイヤの数と同数の識別情報を前記受信部が受信した場合、前記受信部が受信した識別情報を一時的に記憶する一時記憶部と、
前記車両が走行を開始したか否かを判定する判定部と
を更に備え、
前記記憶部は、前記判定部によって前記車両が走行を開始したと判定した後、前記受信部が受信した識別情報を記憶する
請求項1からまでのいずれかひとつに記載の車載記憶装置。
【請求項7】
前記受信部は、前記通信装置のそれぞれから複数回ずつ送信された前記識別情報を受信し、
前記受信部が前記通信装置のそれぞれから受信した複数個の識別情報に基づいて、各通信装置に対応する識別情報を特定する特定部を更に備え、
前記記憶部は、前記特定部が特定した各通信装置に対応する識別情報を記憶する
請求項1からまでのいずれかひとつに記載の車載記憶装置。
【請求項8】
車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられ、自身の識別情報を無線送信する複数の通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信して記憶する車載記憶装置であって、
前記通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信する受信部と、
前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であるか否かを検出する検出部と、
該検出部によって他車両が存在しない状況であることを検出した場合に、前記受信部が受信した識別情報を記憶する記憶部と
を備え
前記検出部は、少なくとも1つのタイヤの空気圧が所定値以上増加したことを検出した場合に、前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であると判断する車載記憶装置。
【請求項9】
車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられ、自身の識別情報を無線送信する複数の通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信して記憶する車載記憶装置であって、
前記通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信する受信部と、
前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であるか否かを検出する検出部と、
該検出部によって他車両が存在しない状況であることを検出した場合に、前記受信部が受信した識別情報を記憶する記憶部と
を備え
前記検出部は、前記車両への給油が開始又は終了したことを検出した場合に、前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であると判断する車載記憶装置。
【請求項10】
車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられ、自身の識別情報を無線送信する複数の通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信して記憶する車載記憶装置であって、
前記通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信する受信部と、
前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であるか否かを検出する検出部と、
前記車両が走行を開始したか否かを判定する判定部と、
前記検出部によって他車両が存在しない状況であることを検出した後に、前記車両に設けられたタイヤの数と同数の識別情報を前記受信部が受信した場合、前記受信部が受信した識別情報を一時的に記憶し、その後、前記判定部によって前記車両が走行を開始したと判定した後に、前記車両に設けられたタイヤの数と同数の識別情報を前記受信部が再度受信した場合に、一時的に記憶した識別情報に代えて、前記受信部が再度受信した識別情報を記憶する記憶部と
を備える車載記憶装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれかひとつに記載の車載記憶装置と、
車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられ、自身の識別情報を無線送信する複数の通信装置とを備える車載記憶システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、各種の情報を記憶する車載記憶装置及び車載記憶システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に取り付けられたタイヤの空気圧を検出し、検出した空気圧が異常であった場合に使用者に警告等を発するタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System )がある。タイヤ空気圧監視システムは、タイヤの空気圧を検出し、検出した空気圧に係る空気圧信号を、例えばUHF帯の電波を用いて無線送信する検出装置(通信装置)と、該検出装置から無線送信された空気圧信号を受信し、受信した空気圧信号に基づいてタイヤの空気圧を監視する監視装置とを備える。検出装置は、右前、左前、右後及び左後の各タイヤにそれぞれ設けられており、検出した空気圧の情報と、各検出装置を識別するための識別情報とを含む空気圧信号を無線送信する。監視装置は、車体に設けられており、各検出装置から送信された空気圧信号を受信する。監視装置は、車両の各タイヤの位置(右前、左前、右後及び左後)と、各タイヤに設けられた検出装置の識別情報とを関連付けてメモリに記憶している。監視装置は、各検出装置から受信した空気圧信号に含まれる識別情報を、メモリが記憶する識別情報と照合する。これにより、監視装置は、受信した空気圧信号に含まれる空気圧の情報が、どの位置に取り付けられたタイヤの空気圧の情報であるかを判断でき、各位置のタイヤの空気圧をそれぞれ把握できる。
【0003】
ところで、4つのタイヤの摩耗状態を均一にするために、車両に取り付けられたタイヤの位置を相互に交換するタイヤローテーションが一般的に行われている。特許文献1には、タイヤローテーションが行われた場合であっても、各タイヤの位置に対応する検出装置の識別情報(空気圧センサのID)が自動的に更新されてメモリに記憶されるシステムが開示されている。特許文献1に開示されたシステムでは、各タイヤの近傍に設けられたアンテナから、各タイヤに設けられた検出装置に識別情報を要求する要求信号が送信される。監視装置(受信装置)は、要求信号に応じて各検出装置から送信された識別情報を受信し、受信した識別情報が、メモリに予め登録されている4つの識別情報のいずれかであれば、受信した識別情報を対応するタイヤの位置に関連付けてメモリに記憶させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3636184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、一部のタイヤが、検出装置と共に新しいタイヤに交換された場合、監視装置は、メモリに予め登録された識別情報とは異なる識別情報を受信することになる。このような場合、特許文献1に開示されたシステムでは、識別情報の更新を行うことができないという問題が生じる。
そこで、各検出装置から受信した識別情報が、メモリに予め登録された識別情報とは異なる場合に、受信した識別情報を対応するタイヤの位置に関連付けて登録することも考えられる。しかしながら、監視装置が送信した要求信号に対して、近傍の他車両のタイヤに設けられた検出装置が応答し、識別情報を監視装置へ送信する可能性があり、この場合、他車両の検出装置の識別情報が誤って登録されるおそれがある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自車両のタイヤに設けられた通信装置(検出装置)の識別情報を正確に記憶することが可能な車載記憶装置及び車載記憶システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車載記憶装置は、車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられ、自身の識別情報を無線送信する複数の通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信して記憶する車載記憶装置であって、前記通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信する受信部と、前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であるか否かを検出する検出部と、該検出部によって他車両が存在しない状況であることを検出した場合に、前記受信部が受信した識別情報を記憶する記憶部とを備え、前記検出部は、少なくとも1つのタイヤに対して空気の充填動作が開始又は終了したことを検出した場合に、前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であると判断する。
【0008】
本発明の一態様に係る車載記憶システムは、上述の車載記憶装置と、車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられ、自身の識別情報を無線送信する複数の通信装置とを備える。
【0009】
なお、本願は、このような特徴的な処理部を備える車載記憶装置及び車載記憶システムとして実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする記憶方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現したりすることができる。また、車載記憶装置又は車載記憶システムの一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、車載記憶装置又は車載記憶システムを含むその他のシステムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0010】
上記によれば、自車両のタイヤに設けられた通信装置の識別情報を正確に記憶することができる車載記憶装置及び車載記憶システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係るタイヤ空気圧監視システムの一構成例を示す模式図である。
図2】監視装置の一構成例を示すブロック図である。
図3】センサIDテーブルの一例を示す概念図である。
図4】検出装置の一構成例を示すブロック図である。
図5】実施形態1に係るセンサID更新処理手順を示すフローチャートである。
図6】変形例1に係るセンサID更新処理手順を示すフローチャートである。
図7】変形例2に係るセンサID更新処理手順を示すフローチャートである。
図8】変形例2に係るセンサID更新処理手順を示すフローチャートである。
図9】実施形態2に係るセンサID更新処理手順を示すフローチャートである。
図10】実施形態3に係る監視装置の一構成例を示すブロック図である。
図11】実施形態3に係るセンサID更新処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本発明の一態様に係る車載記憶装置は、車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられ、自身の識別情報を無線送信する複数の通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信して記憶する車載記憶装置であって、前記通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信する受信部と、前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であるか否かを検出する検出部と、該検出部によって他車両が存在しない状況であることを検出した場合に、前記受信部が受信した識別情報を記憶する記憶部とを備える。
【0014】
本態様にあっては、自身の識別情報を無線送信する通信装置が、車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられており、車載記憶装置は、通信装置のそれぞれから送信された識別情報を受信して記憶する。車載記憶装置は、自車両の周囲に他車両が存在しない状況であることを検出した場合に、通信装置のそれぞれから送信された識別情報を受信して記憶する。即ち、車載記憶装置は、自車両の周囲(近傍)に他車両が存在しない状況で、自車両のタイヤに設けられた通信装置の識別情報を取得する。よって、近傍の他車両の通信装置の識別情報を誤って取得(記憶)することがなく、自車両の通信装置の識別情報を正確に記憶することが可能となる。
【0015】
(2)前記検出部によって他車両が存在しない状況であることを検出した場合に、前記通信装置のそれぞれに対して前記識別情報を要求する要求信号を各別に無線送信する送信部を備え、前記受信部は、前記送信部が無線送信した要求信号に応じて前記通信装置のそれぞれから送信された前記識別情報を受信する構成が好ましい。
【0016】
本態様にあっては、車載記憶装置は、自車両の周囲に他車両が存在しない状況であることを検出した場合に、通信装置のそれぞれに対して識別情報の要求信号を無線送信する。そして、車載記憶装置は、送信した要求信号に応じてそれぞれの通信装置から送信された識別情報を受信して記憶する。よって、近傍の他車両の通信装置の識別情報を誤って取得(記憶)することがなく、自車両の通信装置の識別情報を正確に記憶することが可能となる。また、車載記憶装置が送信した要求信号に応じて通信装置から送信された識別情報が記憶されるので、識別情報を、要求信号の送信先の通信装置と対応付けて記憶することが可能となる。
【0017】
(3)前記検出部は、少なくとも1つのタイヤに対して空気の充填動作が開始又は終了したことを検出した場合に、前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であると判断する構成が好ましい。
【0018】
本態様にあっては、車載記憶装置は、少なくとも1つのタイヤに対して空気の充填動作が開始又は終了したことを検出した場合に、自車両の周囲に他車両が存在しない状況であると判断する。タイヤに対して空気の充填が行われる場合、周囲に他車両が存在しない可能性が高い。よって、この場合に、自車両の通信装置の識別情報を取得することにより、誤って他車両の通信装置の識別情報を取得(記憶)することを防止できる。
【0019】
(4)前記検出部は、少なくとも1つのタイヤの空気圧が所定値以上増加したことを検出した場合に、前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であると判断する構成が好ましい。
【0020】
本態様にあっては、車載記憶装置は、少なくとも1つのタイヤの空気圧が所定値以上増加したことを検出した場合に、自車両の周囲に他車両が存在しない状況であると判断する。タイヤの空気圧が所定値以上増加した場合、タイヤに対して空気の充填が行われた可能性が高く、この場合、周囲に他車両が存在しない可能性が高い。よって、この場合に、自車両の通信装置の識別情報を取得することにより、誤って他車両の通信装置の識別情報を取得(記憶)することを防止できる。
【0021】
(5)前記検出部は、前記車両への給油が開始又は終了したことを検出した場合に、前記車両の周囲に他車両が存在しない状況であると判断する構成が好ましい。
【0022】
本態様にあっては、車載記憶装置は、自車両への給油が開始又は終了したことを検出した場合に、自車両の周囲に他車両が存在しない状況であると判断する。給油が行われる場合、周囲に他車両が存在しない可能性が高い。よって、この場合に、自車両の通信装置の識別情報を取得することにより、誤って他車両の通信装置の識別情報を取得(記憶)することを防止できる。
【0023】
(6)前記記憶部は、前記車両に設けられたタイヤの数よりも多い数の識別情報を前記受信部が受信した場合、前記受信部が受信した識別情報を記憶しない構成が好ましい。
【0024】
本態様にあっては、車載記憶装置は、車両に設けられたタイヤの数よりも多い数の識別情報を受信した場合、受信した識別情報を記憶しない。タイヤの数よりも多い数の識別情報を受信した場合、自車両の通信装置の識別情報だけでなく、他車両の通信装置の識別情報も受信している。従って、この場合、受信した識別情報を破棄することにより、誤って他車両の通信装置の識別情報を記憶することを防止できる。
【0025】
(7)前記検出部によって他車両が存在しない状況であることを検出した後に、前記車両に設けられたタイヤの数と同数の識別情報を前記受信部が受信した場合、前記受信部が受信した識別情報を一時的に記憶する一時記憶部と、前記車両が走行を開始したか否かを判定する判定部とを更に備え、前記記憶部は、前記判定部によって前記車両が走行を開始したと判定した後、前記受信部が受信した識別情報を記憶する構成が好ましい。
【0026】
本態様にあっては、車載記憶装置は、自車両の周囲に他車両が存在しない状況であることを検出した後に、タイヤの数と同数の識別情報を受信した場合、受信した識別情報を一時的に記憶しておく。タイヤの数と同数の識別情報が受信された場合、受信された識別情報は自車両の通信装置の識別情報である可能性が高いので、一旦記憶される。また車載記憶装置は、車両が走行を開始した後、受信した識別情報を記憶する。よって、一時的に記憶した識別情報が誤っていたとしても、車両の走行開始後に取得した識別情報を登録しなおすことで、正確な識別情報を登録することができる。
【0027】
(8)前記受信部は、前記通信装置のそれぞれから複数回ずつ送信された前記識別情報を受信し、前記受信部が前記通信装置のそれぞれから受信した複数個の識別情報に基づいて、各通信装置に対応する識別情報を特定する特定部を更に備え、前記記憶部は、前記特定部が特定した各通信装置に対応する識別情報を記憶する構成が好ましい。
【0028】
本態様にあっては、車載記憶装置は、各通信装置から複数回ずつ送信された識別情報に基づいて、各通信装置に対応する識別情報を特定し、特定した識別情報を記憶する。車載記憶装置は、1つの通信装置から受信した複数個の識別情報に基づいて、例えば出現頻度の最も高い識別情報を特定し、この識別情報を、前記通信装置の識別情報として記憶する。出現頻度の最も高い識別情報は、自車両の通信装置の識別情報である可能性が高い。よって、この識別情報を自車両の通信装置の識別情報として記憶することにより、他車両の通信装置の識別情報を誤って受信した場合であっても、他車両の通信装置の識別情報を記憶することを防止できる。
【0029】
(9)本発明の一態様に係る車載記憶システムは、上述のいずれかの車載記憶装置と、車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられ、自身の識別情報を無線送信する複数の通信装置とを備える。
【0030】
本態様にあっては、車載記憶装置が、近傍の他車両の通信装置の識別情報を誤って記憶することがなく、自車両の通信装置の識別情報を正確に記憶することが可能となる。
【0031】
[本発明の実施形態の詳細]
以下に、本発明の一態様に係る車載記憶装置及び車載記憶システムについて、タイヤ空気圧監視システムに適用した実施形態に基づいて詳述する。本発明の実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0032】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るタイヤ空気圧監視システムの一構成例を示す模式図である。本実施形態1に係るタイヤ空気圧監視システムは、車両Cの適宜箇所に設けられた監視装置(車載記憶装置)1と、車両Cに取り付けられたタイヤ3のホイール夫々に設けられた検出装置(通信装置)2と、報知装置4とを備える。本実施形態1のタイヤ空気圧監視システムでは、監視装置1が各検出装置2と無線通信を行うことにより、各タイヤ3の空気圧を取得する。監視装置1は、取得した空気圧に応じた報知又は警告を報知装置4にて行う。監視装置1には、各タイヤ3に対応するLF(Low Frequency)送信アンテナ14aが接続されている。例えば、LF送信アンテナ14aは車両Cの右前、左前、右後及び左後の部分に設けられている。監視装置1は、各LF送信アンテナ14aからLF帯の電波により空気圧の情報を要求する要求信号、検出装置2を識別するためのセンサID(識別情報)を要求する要求信号等を検出装置2のそれぞれへ各別に送信する。検出装置2は、監視装置1から空気圧の要求信号を受信した場合、タイヤ3の空気圧を検出し、検出した空気圧に係る空気圧信号をUHF(Ultra High Frequency)帯の電波により監視装置1へ送信する。また、検出装置2は、監視装置1からセンサIDの要求信号を受信した場合、自装置2のセンサIDをUHF帯の電波により監視装置1へ送信する。また、検出装置2は、定期的にタイヤ3の空気圧を検出し、自発的に空気圧信号を監視装置1へ送信する機能を有する。
【0033】
また、監視装置1は、UHF受信アンテナ13aを備え、各検出装置2から送信された空気圧信号をUHF受信アンテナ13aにて受信し、該空気圧信号から各タイヤ3の空気圧の情報を取得する。また、監視装置1は、各検出装置2から送信されたセンサIDをUHF受信アンテナ13aにて受信する。なおLF帯及びUHF帯は無線通信を行う際に用いる電波帯域の一例であり、必ずしもこれに限定されない。監視装置1には通信線を介して報知装置4が接続されている。監視装置1は、取得した各タイヤ3の空気圧の情報に基づいて、いずれかのタイヤ3の空気圧が所定の閾値未満であることを検出した場合、報知装置4に対して警告処理の実行を指示する。また監視装置1は、全タイヤ3の空気圧が所定範囲内であることを検出した場合、全タイヤ3の空気圧が正常であることを報知する報知処理の実行を報知装置4に対して指示する。報知装置4は、監視装置1からの指示に従って警告処理又は報知処理を行う。
【0034】
図2は、監視装置1の一構成例を示すブロック図である。監視装置1は、該監視装置1の各構成部の動作を制御する制御部11を備える。制御部11には、記憶部12、車載受信部13、車載送信部14、計時部15及び車内通信部16が接続されている。
制御部11は、例えば一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース等を有するマイコンである。制御部11のCPUは入出力インタフェースを介して記憶部12、車載受信部13、車載送信部14、計時部15及び車内通信部16に接続している。制御部11は記憶部12に記憶されている制御プログラムを実行することにより、各構成部の動作を制御し、本実施形態に係る通信処理及びタイヤ空気圧監視処理を実行する。
【0035】
記憶部12は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部12は、制御部11が監視装置1の各構成部の動作を制御することにより、通信処理及びタイヤ空気圧監視処理を実行するための制御プログラムを記憶している。また、記憶部12は、4つのタイヤ位置と、各タイヤ位置に取り付けられたタイヤ3の検出装置2のセンサIDとの関係を格納したセンサIDテーブルを記憶している。
【0036】
図3は、センサIDテーブルの一例を示す概念図である。センサIDテーブルは、タイヤ位置と、各LF送信アンテナ14aを識別するためのアンテナIDと、各タイヤ位置のタイヤ3に設けられた検出装置2のセンサIDと、各検出装置2によって検出された各タイヤ3の現在の空気圧とを対応付けて格納している。空気圧は、例えばkPa単位の数値である。
【0037】
車載受信部13には、UHF受信アンテナ13aが接続されている。車載受信部13は、検出装置2からUHF帯の電波を用いて送信された信号を、UHF受信アンテナ13aにて受信する。車載受信部13は、受信した信号を復調し、復調された信号を制御部11へ出力する回路である。搬送波としては300MHz〜3GHzのUHF帯を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
車載送信部14は、制御部11から出力された信号をLF帯の信号に変調し、変調された信号を複数のLF送信アンテナ14aからそれぞれ各別に検出装置2へ送信する回路である。搬送波としては30kHz〜300kHzのLF帯を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0038】
計時部15は、例えばタイマ、リアルタイムクロック等により構成され、制御部11の制御に従って計時を開始し、計時結果を制御部11に与える。
車内通信部16は、CAN(Controller Area Network)又はLIN(Local Interconnect Network)等の通信プロトコルに従って通信を行う通信回路であり、報知装置4に接続されている。車内通信部16は、制御部11の制御に従って、警告処理又は報知処理の実行を指示する信号を報知装置4へ送信する。
【0039】
報知装置4は、例えば、車両C内に設けられたランプ、ブザー、スピーカ又は表示部である。報知装置4は、車内通信部16から受信した信号に応じて、ランプの点灯又は点滅、ブザーの鳴動、スピーカによる音声出力、表示部へのメッセージの表示等を行うことにより、運転者等に対して警告又は報知を行う。
【0040】
図4は、検出装置2の一構成例を示すブロック図である。検出装置2は、該検出装置2の各構成部の動作を制御するセンサ制御部21を備える。センサ制御部21には、センサ用記憶部22、センサ送信部23、センサ受信部24、空気圧検出部25及び計時部26が接続されている。
【0041】
センサ制御部21は、例えば一又は複数のCPU、マルチコアCPU、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するマイコンである。センサ制御部21のCPUは入出力インタフェースを介してセンサ用記憶部22、センサ送信部23、センサ受信部24、空気圧検出部25及び計時部26に接続している。センサ制御部21はセンサ用記憶部22に記憶されている制御プログラムを読み出し、各部を制御する。検出装置2は、図示しない電池を備え、当該電池からの電力により動作する。
【0042】
センサ用記憶部22は不揮発性メモリである。センサ用記憶部22には、センサ制御部21のCPUがタイヤ3の空気圧の検出及び送信に係る処理を行うための制御プログラムが記憶されている。またセンサ用記憶部22には、検出装置2に固有のセンサIDが予め記憶されている。
【0043】
空気圧検出部25は、例えばダイヤフラムを備え、圧力の大きさによって変化するダイヤフラムの変形量に基づき、タイヤ3の空気圧を検出する。空気圧検出部25は検出したタイヤ3の空気圧を示す信号をセンサ制御部21へ出力する。センサ制御部21は、制御プログラムを実行することにより、空気圧検出部25からタイヤ3の空気圧を取得し、該空気圧、検出装置2のセンサID等の情報を含む空気圧信号を生成し、センサ送信部23へ出力する。
また、センサ制御部21は、空気圧検出部25から取得するタイヤ3の空気圧に基づいて、タイヤ3への空気の充填が開始されたこと、タイヤ3への空気の充填が完了したこと等を検出する機能を有する。具体的には、タイヤ3の空気圧が増加した場合、センサ制御部21は、タイヤ3への空気の充填が開始されたと判断する。また、タイヤ3への空気の充填が開始された後、タイヤ3の空気圧が所定の閾値以上となった場合、センサ制御部21は、タイヤ3への空気の充填が完了したと判断する。センサ制御部21は、タイヤ3に対する空気の充填の開始又は完了を検出した場合、充填の開始又は完了を示す情報、センサID等の情報を含む充填動作信号(充填開始信号又は充填完了信号)を生成し、センサ送信部23へ出力する。
【0044】
センサ送信部23には、UHF送信アンテナ23aが接続されている。センサ送信部23は、センサ制御部21が生成した空気圧信号及び充填動作信号をUHF帯の信号に変調し、変調した空気圧信号及び充填動作信号を、UHF送信アンテナ23aを用いて送信する。
センサ受信部24には、LF受信アンテナ24aが接続されている。センサ受信部24は、監視装置1からLF帯の電波を用いて送信された要求信号を、LF受信アンテナ24aにて受信し、受信した信号をセンサ制御部21へ出力する。
計時部26は、例えばタイマ、リアルタイムクロック等により構成され、センサ制御部21の制御に従って計時を開始し、計時結果をセンサ制御部21に与える。
【0045】
上述した構成のタイヤ空気圧監視システムにおいて、各検出装置2は、定期的に空気圧検出部25によってタイヤ3の空気圧を検出し、検出したタイヤ3の空気圧及び自装置2のセンサID等を含む空気圧信号を自発的にセンサ送信部23から監視装置1へ送信する。監視装置1は、各検出装置2から送信されてくる空気圧信号を受信した場合、受信した空気圧信号からタイヤ3の空気圧及びセンサIDを抽出する。そして、監視装置1は、記憶部12に記憶してあるセンサIDテーブルにおいて、抽出したセンサIDに対応する空気圧の欄を、抽出した空気圧に更新する。このような処理により、監視装置1は、各タイヤ3の空気圧をリアルタイムで監視できる。なお、監視装置1は、逐次更新する各タイヤ3の空気圧が正常でない場合、例えば所定の閾値未満であった場合、報知装置4によって警告を発する。
【0046】
次に、センサIDテーブルに登録してあるセンサIDの更新処理について説明する。図5は、実施形態1に係るセンサID更新処理手順を示すフローチャートである。なお、LF送信アンテナ14aは車両Cに固定されているので、センサIDテーブルにおけるタイヤ位置とLF送信アンテナ14aのアンテナIDとの対応関係は、LF送信アンテナ14aが車両Cに取り付けられた時から変わらない。これに対して、検出装置2はタイヤ3と共に交換されるので、タイヤ位置と検出装置2のセンサIDとの対応関係は、タイヤ3の交換が行われる都度、変化する。よって、監視装置1は、以下の処理を行うことにより、タイヤ3の交換が行われた場合であっても、センサIDテーブルにおけるタイヤ位置と検出装置2のセンサIDとの対応関係を適切に更新できる。
【0047】
監視装置1の制御部11は、車載受信部13にて、いずれかの検出装置2から送信された充填動作信号を受信したか否かを判断しており(S11)、受信していないと判断した場合(S11:NO)、受信するまで待機する。
充填動作信号を受信したと判断した場合(S11:YES)、制御部11は、車載送信部(送信部)14にて各LF送信アンテナ14aから、各検出装置2のセンサIDを要求する要求信号を各別に送信する(S12)。なお、ここでは、監視装置1は、各検出装置2のセンサIDを取得できればよいので、センサIDの要求信号のほかに、空気圧信号の要求信号を各LF送信アンテナ14aから送信してもよい。
【0048】
制御部11は、ステップS12で送信した要求信号に応じて各検出装置2から送信されたセンサIDを車載受信部(受信部)13にて受信する(S13)。なお、制御部11は、受信したセンサIDを各タイヤ位置に対応付けて記憶しておく。例えば、制御部11は、車両Cの右前部分に設けられたLF送信アンテナ14aから要求信号を送信した場合、該要求信号に応じて検出装置2から受信したセンサIDを、右前のタイヤ位置に対応するセンサIDとして記憶しておく。他のタイヤ位置についても同様にしてセンサIDを記憶しておく。
【0049】
制御部11は、ステップS12,S13の処理後、4つのセンサIDを受信したか否かを判断する(S14)。4つのセンサIDを受信したと判断した場合(S14:YES)、制御部11は、ステップS13で受信し、各タイヤ位置に対応付けておいた各センサIDを、センサIDテーブルにおける各タイヤ位置に対応するセンサIDに記憶(更新)し(S15)、処理を終了する。
【0050】
4つのセンサIDを受信していないと判断した場合(S14:NO)、例えば、3つ以下のセンサIDしか受信できなかった場合、又は5つ以上のセンサIDを受信した場合、制御部11は、所定時間待機する。具体的には、制御部11は、計時部15による計時処理によって所定時間が経過したか否かを判断し(S16)、経過していないと判断した場合(S16:NO)、待機する。所定時間が経過したと判断した場合(S16:YES)、制御部11は、ステップS12の処理に戻り、ステップS12〜S14の処理を再度行う。
4つのセンサIDを受信できない場合とは、自車両Cの検出装置2からのセンサIDを受信できない場合、又は近傍の他車両の検出装置からのセンサIDを受信した場合が考えられる。このような場合には、制御部11は、受信したセンサIDを記憶せずに破棄し、ステップS12〜S14の処理を再度行う。これにより、自車両Cの検出装置2のセンサIDを確実に取得し、他車両の検出装置のセンサIDが誤ってセンサIDテーブルに登録されることを防止する。
【0051】
制御部11は、いずれかの検出装置2から充填動作信号を受信する都度、上述した処理を行うことにより、センサIDテーブルにおけるタイヤ位置とセンサIDとの対応関係を逐次更新する。よって、運転者、整備士等が意識することなく、センサIDテーブルにおけるタイヤ位置とセンサIDとの対応関係が適切に更新される。
タイヤ3に空気の充填が行われる場合、車両Cの近傍に他車両が存在する可能性が低い。よって、このような状況で、監視装置1が自車両Cの検出装置2のセンサIDを取得することにより、誤って他車両の検出装置のセンサIDを取得することを抑制できる。本実施形態1の制御部11は、検出装置2から充填動作信号を受信するか否かを判断することによって、自車両Cの周囲に他車両が存在しない状況であるか否か、即ち、各検出装置2から取得したセンサIDをセンサIDテーブルに記憶(登録)してよい状況であるか否かを検出する検出部として機能する。なお、制御部11は、自車両Cのタイヤ3への空気の充填が行われていることを検知できればよいので、検出装置2から受信する充填動作信号は充填開始信号又は充填終了信号のいずれでもよい。
【0052】
(変形例1)
以下に、センサIDテーブルに登録してあるセンサIDの更新処理の変形例について説明する。図6は、変形例1に係るセンサID更新処理手順を示すフローチャートである。変形例1に係る処理手順では、監視装置1の制御部11は、図5に示した処理手順(ステップS11〜S16)と同様の処理を実行する。なお、ステップS15において、制御部11は、ステップS13で受信し、各タイヤ位置に対応付けておいた各センサIDを、センサIDテーブルにおける各タイヤ位置に対応するセンサIDに一時的に記憶する。このとき、センサIDテーブルを記憶する記憶部12は一時記憶部として機能する。
【0053】
ステップS15の処理後、制御部(判定部)11は、車両Cが走行を開始したか否かを判断する(S17)。監視装置1には、例えば、車両Cの走行速度を検出する車速センサ又はイグニッションスイッチが接続されている。監視装置1の制御部11は、車速センサから入力された車速、又はイグニッションスイッチのオンオフ状態に基づいて、車両Cが走行を開始したか否かを判断する。
車両Cが走行を開始していないと判断した場合(S17:NO)、制御部11は、車両Cが走行を開始するまで待機する。
【0054】
車両Cが走行を開始したと判断した場合(S17:YES)、制御部11は、ステップS12〜S14の処理を再度行う。具体的には、制御部11は、車載送信部14にて各検出装置2のセンサIDを要求する要求信号を送信し(S18)、送信した要求信号に応じて各検出装置2から送信されたセンサIDを車載受信部13にて受信する(S19)。なお、ここでも、制御部11は、受信したセンサIDを各タイヤ位置に対応付けて記憶しておく。制御部11は、4つのセンサIDを受信したか否かを判断する(S20)。4つのセンサIDを受信したと判断した場合(S20:YES)、制御部11は、ステップS19で受信し、各タイヤ位置に対応付けておいた各センサIDを、センサIDテーブルにおける各タイヤ位置に対応するセンサIDに記憶(更新)し(S21)、処理を終了する。
【0055】
4つのセンサIDを受信していないと判断した場合(S20:NO)、制御部11は、所定時間待機する。具体的には、制御部11は、計時部15による計時処理によって所定時間が経過したか否かを判断し(S22)、経過していないと判断した場合(S22:NO)、待機する。所定時間が経過したと判断した場合(S22:YES)、制御部11は、ステップS18の処理に戻り、ステップS18〜S20の処理を再度行う。
【0056】
上述した処理により、制御部11は、タイヤ3に空気の充填が行われた際に各検出装置2からセンサIDを取得し、センサIDテーブルに一時的に記憶することができる。よって、車両Cの走行開始前においても自車両Cの検出装置2のセンサIDをセンサIDテーブルに登録することができる。また、制御部11は、車両Cが走行を開始した後に各検出装置2からセンサIDを取得し、センサIDテーブルに記憶することができる。よって、タイヤ3に空気の充填が行われた際に取得したセンサIDが誤っていた場合であっても、車両Cの走行開始後に、自車両Cの検出装置2のセンサIDを取得し、他車両の検出装置のセンサIDが誤ってセンサIDテーブルに登録されることを防止できる。
【0057】
(変形例2)
以下に、センサIDテーブルに登録してあるセンサIDの更新処理の更なる変形例について説明する。図7及び図8は、変形例2に係るセンサID更新処理手順を示すフローチャートである。変形例2に係る処理手順では、監視装置1の制御部11は、図5に示した処理手順中のステップS11と同様の処理を実行する。
そして、制御部11は、充填動作信号を受信したと判断した場合(S11:YES)、各検出装置2から送信されたセンサIDを車載受信部13にて4つ受信したか否かを判断する(S31)。なお、各検出装置2は、定期的にタイヤ3の空気圧を検出し、自発的に空気圧信号を監視装置1へ送信しており、制御部11は、各検出装置2が自発的に送信した空気圧信号を受信することにより、各検出装置2のセンサIDを受信する。
【0058】
制御部11は、4つのセンサIDを受信していないと判断した場合(S31:NO)、受信するまで待機する。4つのセンサIDを受信したと判断した場合(S31:YES)、制御部11は、各LF送信アンテナ14aから、各検出装置2のセンサIDの要求信号を送信し(S32)、送信した要求信号に応じて各検出装置2から送信されたセンサIDを受信し(S33)、受信したセンサIDを各タイヤ位置に対応付けて一時的に記憶する(S34)。ここでは、制御部11は、受信したセンサIDを自身のRAMに記憶してもよいし、記憶部12に記憶してもよい。
【0059】
制御部11は、LF送信アンテナ14a毎に、ステップS32〜S34の処理(要求信号の送信、センサIDの受信及び一時記憶)を所定回数ずつ実行する構成であり、LF送信アンテナ14a毎に所定回数ずつ実行したか否かを判断する(S35)。所定回数ずつ実行していないと判断した場合(S35:NO)、制御部11は、ステップS32の処理に戻る。LF送信アンテナ14a毎に所定回数ずつ実行したと判断した場合(S35:YES)、制御部(特定部)11は、ステップS34で一時的に記憶したセンサIDに基づいて、一のタイヤ位置に対応する最頻のセンサIDを特定する(S36)。例えば、ステップS32〜ステップS35の処理によって、制御部11は、車両Cの右前にあるLF送信アンテナ14aから要求信号を所定回数送信し、各要求信号に応じて受信した所定個数のセンサIDを右前のタイヤ位置に対応付けて一時記憶している。そして、制御部11は、右前のタイヤ位置に対応付けて一時記憶した所定個数のセンサIDの内、最も多いセンサIDを特定する。
【0060】
また制御部11は、最頻のセンサIDを特定した際に、特定したセンサIDの割合(出現頻度)を算出しており、最頻のセンサIDの割合が所定割合以上であるか否かを判断する(S37)。最頻のセンサIDの割合が所定割合以上であると判断した場合(S37:YES)、制御部11は、特定したセンサIDを、センサIDテーブルにおける前記一のタイヤ位置に対応するセンサIDに記憶(更新)する(S38)。
最頻のセンサIDの割合が所定割合未満であると判断した場合(S37:NO)、制御部11は、このタイヤ位置(前記一のタイヤ位置)について、ステップS32〜S36の処理を再度行う。
【0061】
具体的には、制御部11は、このタイヤ位置に対応するLF送信アンテナ14aからセンサIDの要求信号を送信し(S39)、送信した要求信号に応じて検出装置2から送信されたセンサIDを受信し(S40)、受信したセンサIDを一時的に記憶する(S41)。また制御部11は、ステップS39〜S41の処理(要求信号の送信、センサIDの受信及び一時記憶)を所定回数実行したか否かを判断し(S42)、実行していないと判断した場合(S42:NO)、ステップS39の処理に戻る。所定回数実行したと判断した場合(S42:YES)、制御部11は、ステップS41で一時的に記憶したセンサIDに基づいて、このタイヤ位置に対応する最頻のセンサIDを特定する(S43)。その後、制御部11は、ステップS37の処理に移行する。
【0062】
ステップS38の処理後、制御部11は、センサIDテーブルにおける全てのタイヤ位置に対応するセンサIDの更新を行ったか否かを判断する(S44)。センサIDが更新されていないタイヤ位置があると判断した場合(S44:NO)、制御部11は、ステップS36の処理に戻り、未処理のタイヤ位置について、ステップS36〜S43の処理を行う。全てのセンサIDが更新されたと判断した場合(S44:YES)、制御部11は処理を終了する。
【0063】
上述した処理により、制御部11は、各検出装置2からそれぞれ所定回数ずつ取得したセンサIDのうちで、最頻であって、かつ頻度が所定割合以上であるセンサIDを、各タイヤ位置に対応するセンサIDに特定できる。よって、他車両の検出装置のセンサIDが誤ってセンサIDテーブルに登録されず、自車両Cの検出装置2のセンサIDを確実にセンサIDテーブルに登録できる。
【0064】
(実施形態2)
実施形態2に係るタイヤ空気圧監視システムの構成は実施形態1と同様である。なお、実施形態1では、各検出装置2のセンサ制御部21は、タイヤ3への空気の充填が開始されたこと、タイヤ3への空気の充填が完了したこと等を検出する機能を有していたが、実施形態2の検出装置2は、この機能を有さない。従って、実施形態2では、監視装置1は各検出装置2から充填動作信号を受信しない。
実施形態2のタイヤ空気圧監視システムは、監視装置1がセンサIDテーブルに登録してあるセンサIDを更新するタイミングが、実施形態1とは異なり、以下では、かかる相違点についてのみ説明する。
【0065】
図9は、実施形態2に係るセンサID更新処理手順を示すフローチャートである。監視装置1の制御部11は、車載受信部13にて、いずれかの検出装置2から送信された空気圧信号を受信したか否かを判断している(S51)。なお、各検出装置2は、定期的にタイヤ3の空気圧を検出し、自発的に空気圧信号を監視装置1へ送信しており、制御部11は、各検出装置2が自発的に送信した空気圧信号を逐次受信する。
空気圧信号を受信したと判断した場合(S51:YES)、制御部11は、受信した空気圧信号からタイヤ3の空気圧及びセンサIDを抽出する。制御部11は、空気圧信号を受信した場合、センサIDテーブルにおいて、空気圧信号から抽出したセンサIDに対応する空気圧の欄を、空気圧信号から抽出した空気圧に更新する。このとき、制御部11は、更新前の空気圧(センサIDテーブルに記憶してあった空気圧)と、更新後の空気圧(受信した空気圧信号から抽出した空気圧)とを比較し、空気圧が所定値以上増加したか否かを判断する(S52)。
【0066】
空気圧が所定値以上増加したと判断した場合(S52:YES)、制御部11は、図5に示した処理手順中のステップS12〜S16と同様の処理を実行する。なお、空気圧信号を受信していないと判断した場合(S51:NO)、又は、空気圧が所定値以上増加していないと判断した場合(S52:NO)、制御部11は、ステップS51の処理に戻り、ステップS51,S52の処理を繰り返す。
上述した処理により、実施形態2では、制御部11は、いずれかのタイヤ3の空気圧が所定値以上増加した場合に、センサIDテーブルにおけるタイヤ位置とセンサIDとの対応関係を更新する。よって、運転者、整備士等が意識することなく、センサIDテーブルにおけるタイヤ位置とセンサIDとの対応関係が適切に更新される。
【0067】
タイヤ3の空気圧が所定値以上増加した場合、タイヤ3に空気の充填が行われている可能性が高く、この場合、車両Cの近傍に他車両が存在する可能性が低い。よって、このような状況で、監視装置1が自車両Cの検出装置2のセンサIDを取得することにより、誤って他車両の検出装置のセンサIDを取得することを抑制できる。本実施形態2の制御部11は、いずれかのタイヤ3の空気圧が所定値以上増加するか否かを判断することによって、自車両Cの周囲に他車両が存在しない状況であるか否かを検出する検出部として機能する。
【0068】
本実施形態2のタイヤ空気圧監視システムにおいても、実施形態1で説明した変形例1,2の適用が可能である。具体的には、実施形態2に変形例1を適用した場合、監視装置1の制御部11は、図9に示した処理手順(ステップS51,S52,S12〜S16)を行った後に、図6に示した処理手順(ステップS17〜S22)を行う。また、実施形態2に変形例2を適用した場合、監視装置1の制御部11は、図9に示した処理手順中のステップS51,52の処理を行った後、図7及び図8に示した処理手順中のステップS31〜S44の処理を行う。これらの場合でも、自車両Cの検出装置2のセンサIDを確実に取得してセンサIDテーブルに登録することができる。
【0069】
(実施形態3)
図10は、実施形態3に係る監視装置1の一構成例を示すブロック図である。実施形態3の監視装置1は、図2に示す各構成部のほかに入力部17を有し、入力部17は制御部11に接続されている。入力部17には、給油口開閉検知部5が接続されており、給油口開閉検知部5は、車両Cに設けられた給油口の開閉状態(開状態又は閉状態)を示す信号を入力部17へ出力する。給油口開閉検知部5は、例えば、給油口を開けるためのスイッチであり、この場合、スイッチに対する操作に基づく給油口の開状態/閉状態を示す信号を入力部17へ出力する。また、給油口開閉検知部5は、給油口の開閉状態を検知するセンサでもよく、この場合、センサの検知結果(開状態又は閉状態)を示す信号を入力部17へ出力する。制御部11は、入力部17を介して給油口開閉検知部5から取得した信号に基づいて、給油口の開状態/閉状態を判断する。
【0070】
実施形態3のタイヤ空気圧監視システムは、監視装置1がセンサIDテーブルに登録してあるセンサIDを更新するタイミングが、実施形態1,2とは異なり、以下では、かかる相違点についてのみ説明する。
【0071】
図11は、実施形態3に係るセンサID更新処理手順を示すフローチャートである。監視装置1の制御部11は、入力部17を介して給油口開閉検知部5から取得する信号に基づいて、自車両Cに対して給油が行われたか否かを判断する(S61)。例えば、制御部11は、給油口開閉検知部5から取得した信号に基づいて、給油口が開けられたことを検知した場合、車両Cへの給油が開始されたと判断する。また、制御部11は、給油口が開けられた後に閉められたことを検知した場合に、車両Cへの給油が終了したと判断してもよい。
【0072】
給油が行われていないと判断した場合(S61:NO)、制御部11は、給油が行われたと判断するまで待機する。給油が行われたと判断した場合(S61:YES)、制御部11は、図5に示した処理手順中のステップS12〜S16と同様の処理を実行する。
上述した処理により、実施形態3では、制御部11は、車両Cへの給油が行われた場合に、センサIDテーブルにおけるタイヤ位置とセンサIDとの対応関係を更新する。よって、運転者、整備士等が意識することなく、センサIDテーブルにおけるタイヤ位置とセンサIDとの対応関係が適切に更新される。
【0073】
車両Cへの給油が行われる場合、車両Cの近傍に他車両が存在する可能性が低い。よって、このような状況で、監視装置1が自車両Cの検出装置2のセンサIDを取得することにより、誤って他車両の検出装置のセンサIDを取得することを抑制できる。本実施形態3の制御部11は、車両Cへの給油が行われるか否かを判断することによって、自車両Cの周囲に他車両が存在しない状況であるか否かを検出する検出部として機能する。なお、給油口開閉検知部5が検知する給油口の開閉状態に基づいて、車両Cへの給油が行われるか否かを判断する構成のほかに、例えば、車両C内のガソリンの残量を検出し、ガソリンの残量が増加した場合に、給油が行われたと判断する構成でもよい。
【0074】
本実施形態3のタイヤ空気圧監視システムにおいても、実施形態1で説明した変形例1,2の適用が可能である。具体的には、実施形態3に変形例1を適用した場合、監視装置1の制御部11は、図11に示した処理手順(ステップS61,S12〜S16)を行った後に、図6に示した処理手順(ステップS17〜S22)を行う。また、実施形態3に変形例2を適用した場合、監視装置1の制御部11は、図11に示した処理手順中のステップS61の処理を行った後、図7及び図8に示した処理手順中のステップS31〜S44の処理を行う。これらの場合でも、自車両Cの検出装置2のセンサIDを確実に取得してセンサIDテーブルに登録することができる。
【0075】
実施形態1の監視装置1は、いずれかの検出装置2から充填動作信号を受信するか否かに応じて、自車両Cの周囲に他車両が存在しない状況であるか否か、即ち、各検出装置2から取得したセンサIDをセンサIDテーブルに記憶(登録)してよい状況であるか否かを検出していた。また、実施形態2の監視装置1は、いずれかのタイヤ3の空気圧が所定値以上増加するか否かに応じて、自車両Cの周囲に他車両が存在しない状況であるか否かを検出していた。また、実施形態3の監視装置1は、車両Cへの給油が行われるか否かに応じて、自車両Cの周囲に他車両が存在しない状況であるか否かを検出していた。このほかに、車両Cの周囲における他車両の有無を検出する装置を車両Cに設けてもよい。例えば、車両Cの周囲を撮像するカメラを車両Cに設け、カメラにて取得した画像に対して所定の画像処理を行うことにより、車両Cの周囲に他車両が存在するか否かを検出してもよい。
【0076】
上述の実施形態1〜3では、監視装置1は、自装置1が送信した要求信号に応じて各検出装置2から送信されたセンサIDを受信し、センサIDテーブルに記憶していた。これにより、監視装置1は、各検出装置2から受信したセンサIDを各タイヤ位置に対応付けて記憶できる構成であった。このほかに、監視装置1は、各タイヤ位置に対応付けることなく、単に自車両Cの検出装置2のセンサIDを記憶する構成でもよい。例えば、監視装置1は、実施形態1〜3におけるセンサID更新処理手順において、センサIDの要求信号を送信せずに、各検出装置2が定期的に送信してくる空気圧信号を受信し、受信した空気圧信号に含まれるセンサIDによってセンサIDテーブルを更新する構成でもよい。この場合にも、監視装置1は、自車両Cの検出装置2のセンサIDを確実にセンサIDテーブルに記憶(登録)できる。
【符号の説明】
【0077】
1 監視装置(車載記憶装置)
2 検出装置(通信装置)
3 タイヤ
4 報知装置
5 給油口開閉検知部
11 制御部(検出部、判定部、特定部)
12 記憶部(一時記憶部)
13 車載受信部(受信部)
14 車載送信部(送信部)
17 入力部
C 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11