【実施例】
【0029】
[実施例1]
実施例1は実施形態1の製造方法に対応し、第1成型工程40で得られた成型体100(以降第1成型体100)を石炭成型燃料とするものである。ブリケットの製品品質として、圧壊強度および見掛密度を評価した。
【0030】
(実施例1−1)
原料となる石炭(水分46wt%の褐炭)をハンマークラッシャーを用いて平均粒子径10mm以下に破砕し(第1破砕工程10)、スチームチューブドライヤを用いて水分を13〜15wt%の範囲になるように乾燥させた(乾燥工程20)。さらにボールミルを用いて平均粒子径の異なる石炭粒子4を得た。石炭粒子4の平均粒子径は18μm、26μm、55μmの3種である(粉砕工程30)。この石炭粒子4をブリケットマシンに供給し、バインダーを添加することなく成型を行って第1成型体100を得た(第1成型工程40)。得られた第1成型体100の圧壊強度および見掛密度、水分を測定した。第1成型工程40におけるローラ支持圧は5t/cm、2つのローラ同士の間隔は1mmである。
【0031】
実施例1−1におけるロールポケットサイズは縦38×横38×深さ10mmのピロー形状(第1の形状、
図4参照)、ロールポケットの容積は8.08cm
3である。なお、実施例1−1で使用されるブリケットマシンの2つのローラにおいては、ロールポケットが片方のローラのみに設けられており、もう一方のローラは平面である。したがって、実施例1−1における第1成型体100は一方の成型面のみにロールポケットの形状が転写され、他方は平面状のままで成型されることとなる。実施例1−1においては、石炭粒子4の平均粒子径を55μm、26μm、18μmに変更した例をそれぞれ実施例1−1a、1−1b、1−1cとして表1−1に示す。また
図4ではロールポケットサイズは縦をa、横をb、深さをc、ローラ同士の間隔をdとして示す(
図5〜
図7においても同様)。
【0032】
なお、第1成型体100(実施形態2、3においては第2成型体200)の水分はJIS M 8820−2000の「石炭類の全水分測定方法」に基づき測定した。また第1成型体100の圧壊強度はJIS Z 8841−1993の「3.1 圧壊強度試験方法」に基づき測定し、見掛密度はJIS Z 8807の「8.液中ひょう量法による密度及び比重の測定方法」に基づき測定した。第1破砕工程10により破砕された石炭の平均粒子径はJISM8801−2004「5.粒度試験方法」に基づき測定し、各篩目開きの通過篩質量百分率を求め、通過篩質量百分率が50%となる粒子径を平均粒子径とした。粉砕工程30により粉砕された石炭粒子4の平均粒子径はレーザー回折・散乱法によって得られる粒度分布のメディアン径である。以下の全ての実施例、比較例ともに同様の試験方法により測定を行った。
【0033】
(実施例1−2)
実施例1−2ではロールポケットサイズを変更するとともに、ブリケットマシンにおける2つのローラそれぞれにロールポケットを設けた。それ以外は実施例1−1と同様である。
【0034】
実施例1−2におけるロールポケットサイズは縦18×横27×深さ4.15mmのアーモンド形状(第2の形状、
図5参照)、ロールポケット1つ当たりの容積は1.04cm
3である(表1−2)。2つのローラの両方にロールポケットが設けられているため、実施例1−2における第1成型体100は成型された両面にロールポケットの形状が転写される。実施例1−2においても、石炭粒子4の平均粒子径を55μm、26μm、18μmに変更し、それぞれ実施例1−2a、1−2b、1−2cとして表1−2に示す。
【0035】
(実施例1−3)
ロールポケットサイズを変更した以外は実施例1−2と同様である。実施例1−3におけるロールポケットサイズは縦10×横15×深さ2.6mmのアーモンド形状(第3の形状、
図6参照)、ロールポケット1つ当たりの容積は0.2cm
3である(表1−3)。実施例1−3における第1成型体100も成型された両面にロールポケットの形状が転写される。石炭粒子4の平均粒子径を55μm、26μm、18μmに変更し、それぞれ実施例1−3a、1−3b、1−3cとして表1−3に示す。
【0036】
(実施例1−4)
実施例1−4においても、ロールポケットサイズを変更した以外は実施例1−2と同様である。実施例1−4におけるロールポケットサイズは縦6×横9×深さ1.57mmのピロー形状(
図7参照)、ロールポケット1つ当たりの容積は0.035cm
3である(第4の形状、表1−4)。実施例1−4における第1成型体100も成型された両面にロールポケットの形状が転写される。石炭粒子4の平均粒子径を55μm、26μm、18μmに変更し、それぞれ実施例1−4a、1−4b、1−4cとして表1−4に示す。
【0037】
[比較例1−1〜比較例1−4]
ケージミルを用い、石炭粒子4の平均粒子径を250μmとするとともに(粉砕工程30)、第1成型体100の水分が14.4wt%となるように調整した。それ以外は実施例1−1〜実施例1−4と同様の方法で第1成型体100を作成し、圧壊強度および見掛密度を測定した(表1−1〜表1−4)。
【0038】
【表1-1】
【0039】
【表1-2】
【0040】
【表1-3】
【0041】
【表1-4】
【0042】
表1−1〜表1−4で明らかな通り、4種類のロールポケットサイズ全てにおいて、見掛密度、圧壊強度ともに、ボールミルを用いた実施例1−1〜1−4のほうがケージミルを用いた比較例1−1〜1−4よりも良好であった。したがって、実施例1−1〜実施例1−4全てにおいて成型前の石炭粒子4の粒子径を小さくすることによって、バインダーを添加することなく第1成型体100の強度が確保され、優れた品質の石炭成型燃料(第1成型体100)が得られることが確認された。
【0043】
また、実施例1−1a〜実施例1−1dでは石炭粒子4の平均粒子径を変更しているが、いずれにおいても第1成型体100の見掛密度、圧壊強度は比較例1−1を上回り、所定の値以上となっている。これは、石炭粒子4の平均粒子径が所定の範囲内(10〜60μm)で変わっても第1成型体100の見掛密度、圧壊強度にはそれほど影響を与えないことを示している。実施例1−2a〜実施例1−2d、実施例1−3a〜実施例1−3d、実施例1−4a〜実施例1−4dでも同様の結果が得られており、石炭粒子4の平均粒子径が10〜60μm、好ましくは15〜58μm、さらに好ましくは18〜55μmの範囲であれば、第1成型体100の品質が良好となることが確認された。なお、平均径10μm未満に粉砕するには大きな粉砕動力が必要であり、工業プロセスでの製造が困難であることからボールミル粉砕後の平均径は10μm以上が妥当である。
【0044】
[実施例2]
実施例2は実施形態2の製造方法に対応し、第2成型工程60で得られた第2成型体200を石炭成型燃料とするものである。なお、実施例2における第1成型工程40および第2成型工程60におけるローラ支持圧は5t/cm、2つのローラ同士の間隔は1mmである。また、実施例1と同様に実施例2においてもバインダー等を添加せずに成型を行う。
【0045】
(実施例2−1)
実施例2−1では第1成型体100を再度粉砕、成型するものである。ただし、実施例2−1における第1成型体100の見掛密度は実施例1−2の第1成型体100の見掛密度と比べ低く、好ましくは1.00〜1.25g/cm
3である。見掛密度の低い第1成型体100を得る方法としては、ロール上部の押込スクリュの回転数低下、ロール回転数増加、ロール支持圧の低下などの方法があり、これらを複合させても良い。実施例2−1の第1成型工程40では、ロール回転数を実施例1−2の第1成型工程40の2倍とすることで、見掛密度1.00〜1.25g/cm
3の第1成型体100を得た。得られた第1成型体100をハンマークラッシャーで平均粒子径0.1〜1.0mmかつ最大粒子径18mm以下に再度粉砕(第2破砕工程50)し、得られた第1成型体破砕物110をブリケットマシンで再度成型した(第2成型工程60)。得られた第2成型体200につき、圧壊強度および見掛密度、水分を測定した。なお実施例1−2と同様、第2成型工程60におけるロールポケットのサイズは縦18×横27×深さ4.15mmのアーモンド形状(第2の形状)であり、石炭粒子4の平均粒子径55μm、26μm、18μmの例をそれぞれ実施例2−1a、2−1b、2−1cとして表2−1に示す。併せて、実施例2−1における第1成型体100の品質と第1成型体破砕物110の通過篩質量百分率と平均径を示す。
【0046】
また、石炭粒子径ごとに成型回数の影響を評価するため、3種の石炭粒子径における1回成型の実施例1−2a、実施例1−2bおよび実施例1−2cを併記した。なお、実施形態1では第1成型体100を石炭成型燃料とし、実施形態2では第2成型体200を石炭成型燃料とするものであり、表中にもその旨示す(以下、表2−2、表2−3においても同様)。
【0047】
(実施例2−2)
実施例2−2では第1成型体100を再度粉砕、成型する。第1成型工程40では、ロール回転数を実施例1−3の第1成型工程60の2倍とすることで、見掛密度1.00〜1.25g/cm
3の第1成型体100を得た。第1成型体100をハンマークラッシャーで平均粒子径0.1〜1.0mmかつ最大粒子径10mm以下に再度粉砕、成型して得られた第2成型体200につき、圧壊強度および見掛密度、水分を測定した。第2成型工程60におけるロールポケットのサイズは実施例1−3と同様に縦10×横15×深さ2.6mmのアーモンド形状(第3の形状)であり、石炭粒子4の平均粒子径55μm、26μm、18μmの例をそれぞれ実施例2−2a、2−2b、2−2cとして表2−2に示す。併せて、実施例2−2における第1成型体100の品質と第1成型体破砕物110の通過篩質量百分率と平均径を示す。また、石炭粒子径ごとに成型回数の影響を評価するため、3種の石炭粒子径における1回成型の実施例1−3a、実施例1−3bおよび実施例1−3cを併記した。
【0048】
(実施例2−3)
実施例2−3では第1成型体100を再度粉砕、成型する。第1成型工程40では、ロール回転数を実施例1−4の第1成型工程60の2倍とすることで、見掛密度1.00〜1.25g/cm
3の第1成型体100を得た。得られた第1成型体100をハンマークラッシャーで平均粒子径0.1〜1.0mmかつ6mm以下に再度粉砕、成型して得られた第2成型体200につき、圧壊強度および見掛密度、水分を測定した。第2成型工程60におけるロールポケットのサイズは実施例1−4と同様に縦6×横9×深さ1.57mmのピロー形状(第4の形状)であり、石炭粒子4の平均粒子径55μm、26μm、18μmの例をそれぞれ実施例2−3a、2−3b、2−3cとして表2−3に示す。併せて、実施例2−3における第1成型体100の品質と第1成型体破砕物110の通過篩質量百分率と平均径を示す。また、石炭粒子径ごとに成型回数の影響を評価するため、3種の石炭粒子径における1回成型の実施例1−3a、実施例1−3bおよび実施例1−3cを併記した。
【0049】
【表2-1】
【0050】
【表2-2】
【0051】
【表2-3】
【0052】
表2−1〜表2−3より、全ての石炭粒子4の平均粒子径において見掛密度、圧壊強度は、2度の成型工程(第1、第2成型工程40,60)を経た実施例2−1、2−2、2−3のほうが、1度の成型工程(第1成型工程40)しか経ていない実施例1―2、1−3、1−4よりも品質が良好であった。したがって石炭成型燃料としては、1度の成型のみで得られる第1成型体100よりも、2度の成型を行う第2成型体200のほうが優れた品質を示すことが確認された。
【0053】
実施例1−1a〜実施例1−1dで石炭粒子4の平均粒子径を変更した場合と同様に、実施例2−1において石炭粒子4の平均粒子径を変更した場合であっても、第2成型体200の見掛密度、圧壊強度にはそれほど影響を与えないことが示される(表2−1 実施例2−1a〜実施例2−1c参照)。実施例2−2a〜実施例2−2c、実施例2−3a〜実施例2−3cにおいても同様であり、石炭粒子4の平均粒子径が10〜60μm、好ましくは15〜58μm、さらに好ましくは18〜55μmの範囲であれば、第2成型体200の品質が良好となることが確認された。
【0054】
(実施例2−4〜実施例2−8)
第2成型体200の水分を変更した以外は、実施例2−1bと同様の方法で第2成型体200を製造し、圧壊強度および見掛密度を測定した(表3)。
【0055】
(比較例2−1,2−2)
同様に、第2成型体200の水分を変更した以外は実施例2−1bと同様の方法で第2成型体200を製造した(表3)。
【0056】
【表3】
【0057】
図3は表3における第2成型体200の水分−圧壊強度−見掛密度の相関を示す図である。表3および
図3に示されるとおり、実施例2−4〜実施例2−8は第2成型体200の水分が5〜20wt%の範囲内であり、第2成型体200の水分がこの範囲外となる比較例2−1、2−2と比べ、製品の圧壊強度と見掛密度が高くなる。
【0058】
[実施例3]
図8は実施例3において水分調整済製品300を作製するプロセスフローである。実施例3では発塵及び発熱抑制のために第2成型体200に水分を加え、石炭成型燃料とするものである。また実施例3においてもバインダーを用いることなく成型を行う。基本的には実施例2−3bと同様であるが、水分38wt%の褐炭(実施例1−1で用いたものとは異なる)を原料として第2成型体200を作製した。さらに、実施例3では第2成型体200に水分を加える水分調整工程70を追加し、水分調整済製品300を作製している。水分調整は、ベルトコンベア上部に給水ポンプおよびスプレーノズルで構成される散水設備を配し、ベルトコンベアによって搬送される第2成型体200に対し、散水する方法で実施した。用いた褐炭および得られた水分調整済製品300の性状を表4に示す。表4中、ARは到着ベース、ADは気乾ベースである(JIS M8810)。またDBは無水ベースを示し、GAR、GAD、DAFはそれぞれ到着ベース高位発熱量、気乾ベース高位発熱量、無水無灰ベース高位発熱量を示す(JIS M8810)。
【0059】
【表4】
【0060】
なお
図8の各工程10〜70上の数値は、各工程10〜70における入口水分、出口水分を示す。さらに、各工程10〜70の工程間に示されるC1〜C7は、各工程間での石炭の性状及び量を示す(表5参照)。すなわち、C1では乾燥前の原料褐炭1(全水分38.0%)が215t/h供給され、C7では水分調整工程70で加水された水分調整済製品300(全水分18.0%)が163t/h得られることを示す。水分調整済製品300の圧壊強度および見掛密度を、水分調整前の実施例2−3bの結果とともに表6に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
実施例3においては第2成型体200に水分を添加して水分調整済製品300を得、この水分調整済製品300を石炭成型燃料としている。この水分調整済製品300においては、水分添加により発塵、発熱を抑制しつつ実施例1,2と同等の圧壊強度及び発熱量が得られることが確認された(表6参照)。なお実施例3では実施例2−3bの第2成型体200に水分を添加したが、実施例2の他の第2成型体200に水分を添加してもよいし、実施例1の第1成型体100に水分を添加してもよい。
【0064】
以上のとおり、本発明においてはバインダー等を添加することなく所望の強度を有する第1成型体100、第2成型体200が得られることが確認された。よって、コストアップ要因となるバインダー等の添加物を使用することなく、強度が確保されハンドリング性に優れた石炭成型燃料を低コストで得ることが出来る。