特許第6524968号(P6524968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6524968ワークの反り量測定方法及び反り量測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6524968
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】ワークの反り量測定方法及び反り量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20190527BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   G01B11/24 M
   G06T1/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-108669(P2016-108669)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-215187(P2017-215187A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2018年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千々石 正樹
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−194307(JP,A)
【文献】 特開2002−188907(JP,A)
【文献】 特開2009−250723(JP,A)
【文献】 特開平8−285550(JP,A)
【文献】 特開2003−185419(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/060268(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
G01N 21/892
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークの反り量を測定する、ワークの反り量測定装置であって、
定盤と、照明光を照射する照明装置と、上記定盤の上面に置かれた上記ワークの角部を上記定盤の側面とともに側方視点から撮影するカメラと、を備え、
上記定盤の上記側面が、上記上面に連接し且つ上記ワークの上記角部の下方に位置する第1検出面と、上記上面に連接し且つ水平方向について上記第1検出面に隣り合う第2検出面と、に区画されるとともに、上記照明装置の照射状態で上記ワーク及び上記定盤の双方を上記側方視点からみたときの輝度について上記角部が上記ワークの中で最も高く且つ上記第1検出面よりも高くなり上記第2検出面が上記第1検出面よりも高くなるように構成されている、ワークの反り量測定装置。
【請求項2】
上記照明装置は、上記ワークの上記角部のR面の法線方向に照明光を照射するように構成され、上記定盤は、上記第2検出面が上記第1検出面の素材よりも上記輝度が高い素材によって構成されている、請求項1に記載の、ワークの反り量測定装置。
【請求項3】
上記カメラで撮影された撮影画像から上記ワークの反り量を演算する処理装置を備え、上記処理装置は、上記撮影画像の明暗差に基づいて、上記ワークの上記角部が位置する第1位置と、上記定盤の上記第2検出面のうち上記上面に連接する上辺が位置する第2位置と、を検出し、上記第2位置から上記第1位置までの垂直方向の距離を用いて上記反り量を演算する、請求項1または2に記載の、ワークの反り量測定装置。
【請求項4】
板状のワークの反り量を測定する、ワークの反り量測定方法であって、
定盤と、照明光を照射する照明装置と、上記定盤の上面に置かれた上記ワークの角部を上記定盤の側面とともに側方視点から撮影するカメラと、を準備し、上記定盤の上記側面を、上記上面に連接し且つ上記ワークの上記角部の下方に位置する第1検出面と、上記上面に連接し且つ水平方向について上記第1検出面に隣り合う第2検出面と、に区画するとともに、上記照明装置の照射状態で上記ワーク及び上記定盤の双方を上記側方視点からみたときの輝度について上記角部が上記ワークの中で最も高く且つ上記第1検出面よりも高くなり上記第2検出面が上記第1検出面よりも高くなるように設定する設定ステップと、
上記照明装置の上記照射状態で上記カメラによる撮影を行う撮影ステップと、
を有する、ワークの反り量測定方法。
【請求項5】
上記設定ステップにおいて、上記照明装置によって上記ワークの上記角部のR面の法線方向に照明光が照射されるように設定するとともに、上記第2検出面が上記第1検出面の素材よりも上記輝度が高い素材で構成された上記定盤を準備する、請求項4に記載の、ワークの反り量測定方法。
【請求項6】
上記撮影ステップにおいて上記カメラで撮影された撮影画像の明暗差に基づいて、上記ワークの上記角部が位置する第1位置と、上記定盤の上記第2検出面のうち上記上面に連接する上辺が位置する第2位置と、を検出し、上記第2位置から上記第1位置までの垂直方向の距離を用いて上記反り量を演算する処理ステップを有する、請求項4または5に記載の、ワークの反り量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの反り量を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車やその他の工業製品の製造過程において、板状の部材(以下、「ワーク」という。)の品質管理のために、ワークの板厚方向の反り量が測定される。下記の特許文献1には、この種のワークの反り量を測定するための具体例な測定方法が開示されている。この測定方法(以下、「第1の測定方法」という。)は、モアレ干渉法やレーザフォーカス法を用いてワーク表面の三次元形状を検出し、検出した三次元形状に基づいてワークの板厚方向の反り量を演算するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−129703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の第1の測定方法は、以下のような問題を抱えている。
即ち、この第1の測定方法は、ワーク上面の三次元形状を上方から検出するものであって、反り量に直接的に関与するワーク下面の位置を検出するものではないため、ワークの反り量を精度良く測定することができない。また、ワーク上面に別の要素が積層された構造において、下側に位置するワークの反り量を測定したい場合には、別の要素が邪魔になってワーク上面の三次元形状を計測すること自体が難しい。更に、レーザフォーカス法において使用するレーザ測定器は高価である。
【0005】
そこで、この第1の測定方法に代えて、定盤の上面に置かれたワークの側面に照明光を当てた状態で、このワークを側方からカメラで撮影する測定方法(以下、「第2の測定方法」という。)を用いることができる。この第2の測定方法の場合、定盤の上面からワーク端部までの垂直距離を測定することによって反り量が求められる。この第2の測定方法は、ワークの反り量の測定のためにレーザ測定器のような高価な機器を使用することなく、ワーク端部の位置を直接的に検出することができるという利点がある。
【0006】
ところが、上記の第2の測定方法において、ワーク端面全体やワーク下面が照明光によって白く光って認識されると、撮影画像においてワーク端部を他の部位と区別することができず、ワーク端部の位置を誤認識することが想定され得る。また、定盤の側面が照明光によって白く光って認識されると、ワークの実際の反り量が微小或いはゼロのときには、撮影画像において定盤とワークとの明暗差が無くなって境界が判りづらく、ワーク端部の位置を正しく検出するのが難しい。そして、ワーク端部の位置を正しく検出できないと、ワークの反り量を精度良く測定することができない。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、板状のワークの反り量を精度良く測定するのに有効な技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
板状のワークの反り量を測定する、ワークの反り量測定装置であって、
定盤と、照明光を照射する照明装置と、上記定盤の上面に置かれた上記ワークの角部を上記定盤の側面とともに側方視点から撮影するカメラと、を備え、
上記定盤の上記側面が、上記上面に連接し且つ上記ワークの上記角部の下方に位置する第1検出面と、上記上面に連接し且つ水平方向について上記第1検出面に隣り合う第2検出面と、に区画されるとともに、上記照明装置の照射状態で上記ワーク及び上記定盤の双方を上記側方視点からみたときの輝度について上記角部が上記ワークの中で最も高く且つ上記第1検出面よりも高くなり上記第2検出面が上記第1検出面よりも高くなるように構成されている、ワークの反り量測定装置にある。
【0009】
また、本発明の他の態様は、
板状のワークの反り量を測定する、ワークの反り量測定方法であって、
定盤と、照明光を照射する照明装置と、上記定盤の上面に置かれた上記ワークの角部を上記定盤の側面とともに側方視点から撮影するカメラと、を準備し、上記定盤の上記側面を、上記上面に連接し且つ上記ワークの上記角部の下方に位置する第1検出面と、上記上面に連接し且つ水平方向について上記第1検出面に隣り合う第2検出面と、に区画するとともに、上記照明装置の照射状態で上記ワーク及び上記定盤の双方を上記側方視点からみたときの輝度について上記角部が上記ワークの中で最も高く且つ上記第1検出面よりも高くなり上記第2検出面が上記第1検出面よりも高くなるように設定する設定ステップと、
上記照明装置の上記照射状態で上記カメラによる撮影を行う撮影ステップと、
を有する、ワークの反り量測定方法にある。
【発明の効果】
【0010】
上記の、ワークの反り量測定装置及び反り量測定方法によれば、定盤の上面に置かれた板状のワークは、照明装置によって照明光が当てられた状態でカメラによって側方視点から撮影される。このとき、ワークの角部はワークの他の部位や定盤の第1検出面に対して相対的に輝度が高い状態で検出される。このため、カメラによって撮影された撮影画像において、ワークの反り量を求めるのに用いる角部の位置を他の部位との輝度の違い(明暗差)によって正しく検出できる。一方で、ワークの角部の検出のために定盤の第1検出面の輝度を相対的に低くすると、ワークの実際の反り量が微小或いはゼロのときに、ワークの角部の位置が誤認識されるおそれがある。
【0011】
そこで、定盤の第2検出面は、その輝度が第1検出面の輝度よりも高い状態でカメラによって撮影されるように設定されている。このため、カメラによって撮影された撮影画像において、第2検出面を第1検出面との輝度の違い(明暗差)によって容易に検出できる。このとき、第2検出面の上辺の位置が定盤の上面の位置に一致するため、この上辺の位置を正しく検出することによって、ワークの反り量を求めるのに用いる定盤の上面の位置も正しく検出できる。そして、いずれも正しく検出されたワークの角部の位置と定盤の上面の位置との双方の位置情報を用いることによって、ワークの反り量が精度良く求められる。また、ワークの反り量の測定に、レーザ測定器のような高価な機器を使用する必要がない。
【0012】
以上のごとく、上記の各態様によれば、板状のワークの反り量を精度良く測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の反り量測定装置を示す図。
図2】ワークの角部を側方視点からカメラで撮影する様子を示す平面図。
図3】定盤の側面を側方視点からカメラで撮影する様子を示す平面図。
図4】ワーク反り量測定のフローチャート。
図5図1中のワークの撮影画像を模式的に示す図。
図6】反り量がゼロのワークの撮影画像を模式的に示す図。
図7】ワーク上面に別部材が積層されたワークの撮影画像を模式的に示す図。
図8】定盤の側面を区画する形態の第1変更例を示す図。
図9】定盤の側面を区画する形態の第2変更例を示す図。
図10】定盤の側面を区画する形態の第3変更例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記の反り量測定装置において、上記照明装置は、上記ワークの上記角部のR面の法線方向に照明光を照射するように構成され、上記定盤は、上記第2検出面が上記第1検出面の素材よりも上記輝度が高い素材によって構成されているのが好ましい。この場合、ワークの角部は、照明装置の照射方向の設定によって、ワークの他の部位や定盤の第1検出面よりも輝度が高くなるように構成される。また、第2検出面は、素材の選定によって、第1検出面よりも輝度が高くなるように構成される。これにより、ワーク及び定盤のそれぞれにおいて認識したい部位の輝度の設定を簡単に行うことができる。特に、ワークの角部の輝度については、照明装置の向きを調整するのみで輝度の設定を行うことができ、輝度の設定についてワーク自体に手を加える必要がない。
【0015】
また、上記の反り量測定装置は、上記カメラで撮影された撮影画像から上記ワークの反り量を演算する処理装置を備え、上記処理装置は、上記撮影画像の明暗差に基づいて、上記ワークの上記角部が位置する第1位置と、上記定盤の上記第2検出面のうち上記上面に連接する上辺が位置する第2位置と、を検出し、上記第2位置から上記第1位置までの垂直方向の距離を用いて上記反り量を演算するのが好ましい。この処理装置によれば、カメラで撮影された撮影画像からワークの反り量を自動で演算することができる。
【0016】
上記の反り量測定方法の設定ステップにおいて、上記照明装置によって上記ワークの上記角部のR面の法線方向に照明光が照射されるように設定するとともに、上記第2検出面が上記第1検出面の素材よりも上記輝度が高い素材で構成された上記定盤を準備するのが好ましい。これにより、ワーク及び定盤のそれぞれにおいて認識したい部位の輝度の設定を簡単に行うことができる。
【0017】
また、上記の反り量測定方法は、上記撮影ステップにおいて上記カメラで撮影された撮影画像の明暗差に基づいて、上記ワークの上記角部が位置する第1位置と、上記定盤の上記第2検出面のうち上記上面に連接する上辺が位置する第2位置と、を検出し、上記第2位置から上記第1位置までの垂直方向の距離を用いて上記反り量を演算する処理ステップを有するのが好ましい。この処理ステップによれば、カメラで撮影された撮影画像からワークの反り量を簡単に演算することができる。
【0018】
以下、板状のワークの反り量を測定する技術の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
なお、本実施形態の説明のための図面において、ワークを置くための定盤の側面に沿った第1方向(水平方向)を矢印Xで示し、定盤の側面に垂直な第2方向を矢印Yで示し、第1方向及び第2方向の双方に垂直な第3方向(定盤の高さ方向)を矢印Zで示している。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態の反り量測定装置1は、板状のワークWの板厚方向(第3方向Z)の反り量を測定する装置である。この反り量測定装置1は、定盤10と、照明装置20と、カメラ30と、処理装置40と、を備えている。
【0021】
ワークWの平面形状は、4つの角部を有する矩形である。このワークWの1つの角部WaにはR面加工が施されている。
【0022】
定盤10は、ワークWを置くための上面11を有する水平な台として構成されている。上面11は第1方向X及び第2方向Yの双方によって規定される平面(基準面)である。ここでいう「反り量」は、定盤10の上面11に置かれたワークWについて、基準面である上面11に対するワーク端部の垂直方向(第3方向Z)の浮き量として定義される。定盤10の側面12は、第1方向X及び第3方向Zの双方によって規定される平面であり、照明装置20及びカメラ30に対向する対向面として構成されている。
【0023】
照明装置20は、照明光を照射する機能を有する。本実施形態では、この照明装置20の光源としてLEDが使用されている。この照明装置20は、カメラ30の撮像面に対して斜め方向から、対象物であるワークW及び定盤10の双方に照明光を当てるように配置された斜光照明である。即ち、ワークWに照明光を当てる照明装置と、定盤10に照明光を当てる照明装置と、が1つの照明装置20によって兼務されている。これにより、照明装置の数を少なく抑えることができる。
【0024】
なお、ワークWに照明光を当てる照明装置と、定盤10に照明光を当てる照明装置と、が別個に設けられてもよい。また、照明装置20の光源として、LED以外に、ハロゲンランプ、蛍光灯、タングステンランプ、メタルハライド、キセノンランプなどを使用することもできる。
【0025】
カメラ30は、定盤10の側方の所定の設定位置Pに配置された撮影部である。このカメラ30は、定盤10の上面11に置かれたワークWの角部Waを定盤10の側面12とともに所定の側方視点31から撮影する機能を有する。このカメラ30の撮影によって、視野32に含まれる対象物の画像がCCD素子(図示省略)によって検出される。カメラ30の視野32には、ワークWについては少なくとも角部Waが、定盤10については少なくとも側面12が含まれている。これにより、ワークWの角部Waと定盤10の側面12とのそれぞれの撮影画像を、カメラ30による1回の撮影で同時に得ることができる。
【0026】
処理装置40は、カメラ30で撮影された撮影画像からワークWの反り量を演算する装置であり、画像処理部41、演算部42、出力部43及びメモリ44を備えている。この処理装置40として、カメラ30に常時に或いは一時的に接続されるパーソナルコンピュータ(PC)が使用されるのが好ましい。
【0027】
画像処理部41は、カメラ30で撮影された撮影画像から、ワークWの4つの角部のうちの1つの角部Waを検出し、且つ定盤10の第2検出面14を検出する機能を有する。具体的には後述するが、演算部42は、画像処理部41で得られた情報に基づいて、ワークWの反り量を演算する機能を有する。出力部43は、演算部42による演算結果を出力する機能を有する。メモリ44は、画像処理部41で処理された処理情報、及び演算部42で演算された演算情報のそれぞれを記憶し、記憶した情報を必要に応じて読み出す機能を有する。
【0028】
上記の定盤10の側面12は、第1検出面13と2つの第2検出面14,14とに区画されている。第1検出面13及び第2検出面14のいずれも、第3方向Zの高さが側面12と同じである。第1検出面13は、側面12のうち上面11に連接し且つワークWの角部Waの下方に位置する面として構成されている。第1検出面13は、水平方向である第1方向Xの長さがワークWの第1方向Xの長さを上回り、且つ第1方向Xの両端位置がワークWの両端位置よりも外側に配置されるように構成されている。本構成の場合、ワークWの角部Waの位置から定盤10の側面12に向けて垂直方向下向きに仮想線Hを引くと、この仮想線Hが必ず第1検出面13の領域内を通る。また、各第2検出面14は、側面12のうち上面11に連接し且つ水平方向(第1方向X)について第1検出面13に隣り合う面として構成されている。
【0029】
そして、反り量測定装置1は、照明装置20の照射状態でワークW及び定盤10の双方を側方視点31からみたときの輝度について、角部WaがワークWの中で最も高く且つ第1検出面13よりも高くなり、第2検出面14が第1検出面13よりも高くなるように設定された構造(以下、「輝度設定構造」という。)を有する。
【0030】
ここでいう「輝度」は、照明装置20から照明が当てられた状態の対象物を側方視点31からみたときの相対的な明るさをいう。従って、側方視点31からみた対象物が周囲よりも明るい場合にこの対象物の輝度が高いといい、側方視点31からみた対象物が周囲よりも暗い場合にこの対象物の輝度が低いということができる。
【0031】
上記の輝度設定構造を実現するために、本実施形態の反り量測定装置1は、以下の2つの特徴を有する。
【0032】
この反り量測定装置1の1つ目の特徴として、図2に示されるように、照明装置20は、ワークWの角部Waに向かう照射方向Dに照明光を照射するように構成されている。この照射方向Dは、ワークWに対しては、角部WaのR面の法線方向(R面に接する接平面に対して垂直な方向)に一致する。従って、本構成によれば、照明装置20の照射状態において、ワークWの角部Waは、ワークWの他の部位よりも輝度が高い状態でカメラ30によって撮影される。その結果、カメラ30によって得られた撮影画像において、ワークWの角部Waが最も明るい部分(白い部分)として強調されて認識されることになる。
【0033】
この反り量測定装置1の2つ目の特徴として、定盤10の側面12の表面構造が第1検出面13と第2検出面14とで相異するように構成されている。具体的には、第1検出面13が反射素材によって構成される一方で、第2検出面14が拡散素材(「拡散反射素材」ともいう。)によって構成されている。
【0034】
第1検出面13の反射素材は、照明装置20の照明光に対して正反射率が高く且つ拡散反射率が低い素材である。この反射素材の全反射率の殆どを正反射率が占める。即ち、この反射素材において照明光の殆どが正反射する。本実施形態では、定盤10の側面12のうち第1検出面13に対応した領域に、表面が研磨された金属材料(反射素材)からなる板材が接合されている。
【0035】
これに対して、第2検出面14の拡散素材は、照明装置20の照明光に対して拡散反射率が高く且つ正反射率が低い素材である。この拡散素材の全反射率の殆どを拡散反射率が占める。即ち、この拡散素材において照明光の殆どが拡散反射する。本実施形態では、定盤10の側面12のうち第2検出面14に対応した領域に、樹脂材料(拡散素材)からなる板材が接合されている。
【0036】
従って、定盤10は、照明装置20の照射状態で側面12を側方視点31からみたときの輝度について、第2検出面14が第1検出面13の素材よりも上記輝度が高い素材によって構成されている。
【0037】
図3に示されるように、照明装置20の照射方向Dは、定盤10の側面12に対しては、第2方向Yとの間に傾斜角度θをなす斜め方向である。この場合、第1検出面13で反射した反射光がカメラ30から外れた方向に進む一方で、第2検出面14で拡散した拡散光の一部がカメラ30に向けて進む。
【0038】
このため、照明装置20の照射状態において、定盤10の側面12は、第2検出面14が第1検出面13よりも輝度が高い状態でカメラ30によって撮影される。その結果、カメラ30によって得られた撮影画像において、定盤10の側面12は、第1検出面13が相対的に暗い部分(黒い部分)として認識され、第2検出面14が相対的に明るい部分(白い部分)として強調されて認識されることになる。
【0039】
ここで、上記の反り量測定装置1を用いた反り量測定方法について具体定に説明する。この反り量測定方法は、板状のワークWの板厚方向(第3方向Z)の反り量を測定する方法であり、図4に示されるフローチャートのステップS101からS103までの処理を順次実行することによって達成される。なお、必要に応じてこのフローチャートに別のステップが追加されてもよいし、1つのステップが複数のステップに分割されてもよい。
【0040】
ステップS101は、前記の定盤10と、照明装置20と、カメラ30と、を準備し、前述のように照明装置20に対するワークW及び定盤10の輝度を設定する設定ステップである。このステップS101において、定盤10の側面12が第1検出面13と第2検出面14とに区画される。また、このステップS101において、照明装置20の照射状態でワークW及び定盤10の双方を側方視点31からみたときの輝度について角部WaがワークWの中で最も高く且つ第1検出面13よりも高くなり第2検出面14が第1検出面13よりも高くなるような輝度設定が行われる。
【0041】
このステップS101において、作業者は、上記の輝度設定のために、第1検出面13が反射素材によって構成され第2検出面14が拡散素材によって構成された定盤10を準備する。また、作業者は、定盤10の上面11にワークWを置くとともに、定盤10の上面11に置かれたワークWの角部WaのR面の法線方向(照射方向D)に照明光が照射されるように照明装置20の向きを調整する。このとき、ワークWの角部Waが定盤10の上面11のうち側面12の第2検出面14に対応した領域内に入るように、ワークWの位置が調整される。なお、カメラ30による撮影時に定盤10とワークWのピントが合うようにするために、ワークWが定盤10の上面11に置かれた状態で、ワークWの側面が定盤10の側面12と面一になるように位置設定されるのが好ましい。
【0042】
このステップS101によれば、ワークWの角部Waは、照明装置20の照射方向Dの設定によって、ワークWの他の部位や定盤10の第1検出面13よりも輝度が高くなるように設定される。また、第2検出面14は、素材の選定によって、第1検出面13よりも輝度が高くなるように設定される。このため、ワークW及び定盤10のそれぞれにおいて認識したい部位の輝度の設定を簡単に行うことができる。特に、ワークWの角部Waの輝度については、照明装置20の向きを調整するのみで輝度の設定を行うことができ、輝度の設定についてワークW自体に手を加える必要がない。
【0043】
ステップS102は、ステップS101の実行後に実行される。このステップS102は、照明装置20の照射状態でカメラ30による撮影を行う撮影ステップである。このステップS102において、定盤10の上面11に置かれたワークWの角部Waが定盤10の側面12とともに側方視点31からカメラ30で撮影される。このステップS102は、作業者によって実行される。
【0044】
このステップ102によれば、上述の輝度設定がなされたワークW及び定盤10をカメラ30によって撮影した撮影画像が得られる。
【0045】
ステップS103は、ステップS102の実行後に実行される。このステップS103は、ステップS102においてカメラ30で撮影された撮影画像の明暗差に基づいてワークWの反り量を演算する処理ステップである。このステップS103は、処理装置40の画像処理部41及び演算部42によって実行される。
【0046】
このステップS103において、先ず、画像処理部41によって、カメラ30よって得られた撮影画像であるカラー画像を白黒2値化(「2階調化」ともいう。)する処理が実行される。この処理によれば、予め設定された閾値よりも明るいピクセルは全て白色に変換され、当該閾値よりも暗いピクセルは全て黒色に変換された白黒画像が得られる。これにより、ワークWは、角部Waのみが白色に変換され、その他の部位が黒色に変換される。一方で、定盤10の側面12は、第2検出面14のみが白色に変換され、第1検出面13が黒色に変換される。
【0047】
このとき、ステップS101における輝度設定の効果によって、白黒画像における白黒2値化について所望の結果が得られる。即ち、ワークWの角部Waが白い部分として強調され、且つ定盤10の側面12において第2検出面14が白い部分として強調された白黒画像が得られる。
なお、ここでいう白黒2値化は公知の処理であり、この処理についての更なる詳細な説明は省略する。
【0048】
次いで、画像処理部41によって、撮影画像の明暗差に基づいてワークWの角部Wa及び定盤10の第2検出面14をそれぞれ検出する処理が実行される。この処理については図5が参照される。
【0049】
図5に示されるように、白黒画像においてワークWの角部Waは白色部であり、ワークWのその他の部位(黒色部)に対して強調されて表示される。このため、角部Waが位置する第1位置Q1(XZ座標(x1,z1))を正しく検出することができる。図5では、ワークWの角部Waの白色部(白点群)を「○」で示している。
【0050】
このとき、白色部(白点群)の第3方向Zの最下点を第1位置Q1とし、ワークWの角部Waのうちワーク下面との境界点をこの第1位置Q1として検出するのが好ましい。これに対して、白色部(白点群)の第3方向Zの最上点を第1位置Q1としてもよい。この場合は、ワークWの角部Waのうちワーク上面との境界点がこの第1位置Q1として検出される。
【0051】
また、白黒画像において第2検出面14は白色部であり、黒色部である第1検出面13に対して強調されて表示される。ここで、図5中の基準線L上にある、第1位置Q1の直下の位置を第2位置Q2(XZ座標(x1,z2))として正しく検出することができる。第2位置Q2は、第1検出面13と上面11との境界にあり、第1位置Q1を通る第3方向Zの直線と基準線Lとの交点として定められる。この場合、第2検出面14のうち上面11に連接する上辺14aの少なくとも2点P1,P2から、この上辺14aを通る水平方向(第1方向X)の直線を求め、この直線を基準線Lとすることができる。或いは、(図5中左側の)一方の第2検出面14の上辺14a上の点と、(図5中右側の)他方の第2検出面14の上辺14a上の点とを結ぶ直線を基準線Lとしてもよい。
【0052】
その後、演算部42は、第2位置Q2から第1位置Q1までの垂直方向の距離を用いて、ワークWの反り量d(即ち、ワークWの角部Waの第3方向Zの浮き量)を演算する。このとき、ワークWの角部Waのうちワーク下面との境界点を第1位置Q1として検出している場合には、上記の垂直方向の距離がワークWの板厚方向(第3方向Z)の反り量となる。これに対して、ワークWの角部Waのうちワーク上面との境界点を第1位置Q1として検出している場合には、上記の垂直方向の距離からワークWの板厚を差し引いた値がワークWの板厚方向(第3方向Z)の反り量となる。この演算部42による演算結果は、出力部43によって画面に表示出力され、必要に応じてメモリ44に記憶される。
【0053】
従って、処理装置40を用いたステップS103の処理によれば、カメラ30で撮影された撮影画像からワークWの反り量を自動で簡単に演算することができる。
【0054】
なお、ワークWの反り量を測定する上述の処理は、ワークWの品質管理のためには、1つの角部Waについてのみならず4つの角部の全てについて実施されるのが好ましい。
【0055】
上述の反り量測定装置1及び反り量測定方法によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0056】
定盤10の上面11に置かれた板状のワークWは、照明装置20によって照明光が当てられた状態でカメラ30によって側方視点31から撮影される。このとき、ワークWの角部Waは、ワークWの他の部位や定盤10の第1検出面13に対して相対的に輝度が高い状態で検出される。このため、カメラ30によって撮影された撮影画像において、ワークWの反り量を求めるのに用いる角部Waの位置(図5中の第1位置Q1)を、ワークWの他の部位及び第1検出面13との輝度の違い(明暗差)によって正しく検出できる。
【0057】
一方で、ワークWの角部Waの検出のために定盤10の第1検出面13の輝度を相対的に低くすると、ワークWの実際の反り量が微小或いはゼロのとき(例えば、図6に示される状態の場合)に、ワークWの角部Waの位置が誤認識されるおそれがある。
【0058】
そこで、本実施形態において、定盤10の第2検出面14は、その輝度が第1検出面13の輝度よりも高い状態でカメラ30によって撮影されるように設定されている。このため、カメラ30によって撮影された撮影画像において、第2検出面14を第1検出面13との輝度の違い(明暗差)によって容易に検出できる。
【0059】
このとき、第2検出面14の上辺14aの位置が定盤10の上面11の位置に一致するため、この上辺14aの位置を正しく検出することによって、ワークWの反り量を求めるのに用いる定盤10の上面11の位置も正しく検出できる。そして、いずれも正しく検出されたワークWの角部Waの位置と定盤10の上面11の位置との双方の位置情報を用いることによって、ワークWの反り量が精度良く求められる。
【0060】
その結果、板状のワークWの反り量を精度良く測定することが可能になる。特に、ワークWの実際の反り量が微小或いはゼロのときでもワークWの角部Waの位置を正しく検出できる。また、ワークWの反り量の測定のために、レーザ測定器のような高価な機器を使用する必要がなく、安価な測定システムを構築できる。
【0061】
また、図7が参照されるように、ワーク上面Wbに別の要素Aが積層された構造において、下側に位置するワークWの反り量を測定したい場合、別の要素Aが邪魔になってワーク上面Wbの三次元形状からワークWの反り量を測定するのは難しい。これに対して、本実施形態は、ワークWの角部Waの位置を直接的に検出する方法を採用しており、別の要素Aが邪魔になることなくワークWの反り量を精度良く検出するのに効果がある。
【0062】
定盤10の側面12を第1検出面13と第2検出面14とに区画する形態として、図1に示される形態以外に、例えば図8図10に示される各変更例を採用することもできる。
【0063】
(第1変更例)
図8に示される第1変更例において、定盤10は、第1検出面13及び2つの第2検出面14,14がいずれも、上面11に連接し且つ第3方向Zの高さが側面12を下回るように構成されている。
【0064】
(第2変更例)
図9に示される第2変更例において、定盤10は、第1検出面13及び第2検出面14のそれぞれの数が1つであり、第1検出面13及び第2検出面14のいずれも、上面11に連接し且つ第3方向Zの高さが側面12と一致するように構成されている。
【0065】
(第3変更例)
図10に示される第3変更例において、定盤10は、第1検出面13及び第2検出面14のいずれも、上面11に連接し且つ第3方向Zの高さが側面12を下回るように構成されている。
【0066】
即ち、ワークWの角部Waの下方に第1検出面13が配置され、且つ第1検出面13及び第2検出面14がいずれも定盤10の上面11に連接した構成であれば、各検出面の大きさや数は定義に変更可能である。
【0067】
本発明は、上記の本実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、本実施形態を応用した次の各形
態を実施することもできる。
【0068】
上記の実施形態では、照明装置20の向きを調整することによってワークWの角部Waの輝度の設定を行う場合について例示したが、これに代えて、ワークWの角部Waに輝度を高めるための部材を接着してもよい。
【0069】
上記の実施形態では、定盤10の側面12の第1検出面13及び第2検出面14のそれぞれを構成する素材を選択することによって2つの検出面13,14における輝度の設定を行う場合について例示したが、別の構造によって当該輝度の設定を行うようにしてもよい。別の構造として、例えば第1検出面13が黒色に塗色され且つ第2検出面14が白色に塗色された構成や、照明装置20の向きや設置数などが変更された構成などが挙げられる。
【0070】
上記の実施形態では、第1検出面13を構成する反射素材として金属材料を使用する場合について例示したが、所望の正反射率を得ることができればこの反射素材として金属材料以外の材料を使用してもよい。同様に、第2検出面14を構成する拡散素材として樹脂材料を使用する場合について例示したが、所望の拡散反射率を得ることができればこの拡散素材として樹脂材料以外の材料を使用してもよい。
【0071】
上記の実施形態では、反り量測定装置1が処理装置40を備える場合について例示したが、必要に応じて処理装置40を省略し、処理装置40が実行する処理、即ちカメラ30による撮影画像からワークWの反り量を求める処理を作業者が行うようにしてもよい。
【0072】
上記の実施形態では、測定対象であるワークWが4つの角部を有する場合について例示したが、少なくとも1つの角部を有する板状のワークを測定対象とすることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 反り量測定装置
10 定盤
11 上面
12 側面
13 第1検出面
14 第2検出面
14a 上辺
20 照明装置
30 カメラ
31 側方視点
40 処理装置
d 反り量
Q1 第1位置
Q2 第2位置
W ワーク
Wa 角部
S101 設定ステップ
S102 撮影ステップ
S103 処理ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10