【実施例】
【0061】
実施例1:竹チップ漆喰
代表的な竹チップ漆喰の作製要領を示す。表1に示す生石灰(中山石灰工業株式会社製;粒度0.15mm以下)100重量部と、長さ8mm以下の繊維状の竹チップ120重量部と、水80重量部とを十分に混合し、竹チップ漆喰を得た。この竹チップ漆喰の竹チップ含有率は120%、水石灰比は80%である。竹チップは、目開き8mmの篩を通し、篩上を除去し使用した。同じ要領で竹チップ含有率20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%の竹チップ漆喰を得た。また同じ要領で竹チップの入っていない漆喰(竹チップ含有率0%)を得た。
【0062】
【表1】
【0063】
竹チップ漆喰の試験体は、以下の要領で作製した。上記手順で得られた竹チップ漆喰を3連型枠に半分程度まで流し込み、型枠の隅々まで竹チップ漆喰が行き渡るように突き棒で万遍なく突いた後、型枠一杯まで竹チップ漆喰を流し込み、突き棒の底が前回の1/3の深さとなるまで万遍なく突いた。さらに型枠の表面が隠れるまで、竹チップ漆喰を流し込み、5時間放置した。その後、型枠の上部を平行棒でカットし、24時間気中養生後に型枠から取り出し、養生ケースに入れ、気中養生室で40日間気中養生し、試験体を得た。試験体は、40×40×160mmの角柱状である。気中養生中は、毎日、試験体の重量及び試験体の長さと幅と高さをディジタルノギスを用いて測定した。
【0064】
図3〜
図5に気中養生40日後の竹チップ漆喰の試験体の乾燥重量率(重量増減率)、体積増減率、密度の測定結果を示した。重量増減率は、脱型時の試験体の重量に対する気中養生40日後の重量割合とした。体積増減率は、気中養生40日後の試験体の長さと幅と高さをディジタルノギスを用いて測定し、これらを下に試験体の体積を求め、脱型時の体積を基準として、式(1)を用いて求めた。
体積増減率(%)=(脱型時の体積−気中養生40日後の体積)/脱型時の体積
×100 ・・・(1)
密度は、気中養生40日後の試験体の重量を測定し、上記要領で算出した体積で重量を除算し求めた。
【0065】
図3に示すように乾燥重量率は、竹チップ含有率20〜50%にかけて増加傾向を示し、竹チップ含有率50〜120%の範囲では、ほぼ一定であった。竹チップ含有率80%の乾燥重量が一番小さかった。
【0066】
図4に示すように体積増減率は、竹チップ含有率によらず−4%〜−2.8%で推移した。竹チップ漆喰の試験体の気中養生期間中の日々の寸法測定結果から、全試験体ともほぼ7日間で乾燥収縮が落ち着くことが分かった。
【0067】
図5に示すように密度は、竹チップ含有率の増加に対してほぼ直線的に低下した。竹チップ含有率20%の密度は約0.98g/cm
3、竹チップ含有率120%の密度は約0.82g/cm
3であり、竹チップ含有率20〜120%の全範囲において密度は、1.0g/cm
3以下であった。特に竹チップ含有率80%以上では、密度は0.8〜0.9g/cm
3であり、普通漆喰の50%以下である。
【0068】
強度試験の結果を
図6及び
図7に示した。試験体の養生期間は40日間である。強度試験は、JISA1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)に準じた方法で行った。
【0069】
図6に示すように曲げ強度は、竹チップ含有率に比例して増加した。特に竹チップ含有率80〜120%にかけて曲げ強度が急激に増加している。これらのことから竹チップ含有率が増加すると竹繊維が曲げ抵抗し、強度増加につながったと考えられる。普通漆喰を40日間気中養生し得られる試験体の曲げ強度は、約0.2N/mm
2であるから竹チップ漆喰の曲げ強度は、普通漆喰の曲げ強度の1〜2.5倍となり、竹チップ含有率が80〜110重量%では、普通漆喰の1.4〜2.5倍となる。
【0070】
圧縮強度も曲げ強度と同様の傾向を示した。普通漆喰を40日間気中養生し得られる試験体の圧縮強度は、約0.7N/mm
2であるから竹チップ漆喰の圧縮強度は、普通漆喰の曲げ強度の1〜4倍となり、竹チップ含有率が80〜110重量%では、普通漆喰の2〜4倍となる。曲げ強度及び圧縮強度とも竹チップ含有率110%に比較して竹チップ含有率120%では低下しているが、これは竹チップと石灰との混ざりが不十分なことによるものと考えられる。このことから強度から見た竹チップ含有率の上限値は110%程度と思われる。
【0071】
図7に示すように曲げ強度と圧縮強度との関係は、2次関数で示された。
【0072】
実施例2:竹チップ高Ca漆喰
竹チップ高Ca漆喰の作製要領を示す。実施例1で使用した生石灰(中山石灰工業株式会社製;粒度0.15mm以下)100重量部と、実施例1で使用した竹チップ120重量部と、高Caイオン含有水溶液110重量部とを混合し、竹チップ高Ca漆喰を得た。竹チップ含有率は120%、水石灰比は110%である。竹チップは、目開き8mmの篩を通し、篩上を除去し使用した。高Caイオン含有水溶液のCaイオン濃度は、0、5、15及び20g/Lとした。なおCaイオン濃度0は、竹チップ含有率120%の竹チップ漆喰である。同じ要領で竹チップ含有率40%、80%の竹チップ高Ca漆喰を作製した。
【0073】
高Caイオン含有水溶液は、以下の要領で作製した。酢酸(和光純薬工業株式会社製一級、コードNo.014-00266)100gを900gの純水に加えた酢酸水溶液(10重量%濃度)に、カキ殻を1200℃で焼成して得られた白色の粉末30gを数回に分けて加え完全に溶解させた。この溶液を半日放置した後に上澄み液を採取し、これを高Caイオン含有水溶液(原液)とした。上記原液に水を加え、高Caイオン含有水溶液を得た。カキ殻の焼成温度は、900〜1200℃とすることができる。カキ殻を1200℃で焼成して得られた白色の粉末の成分分析結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
竹チップ高Ca漆喰の試験体は、実施例1に記載の竹チップ漆喰と同じ要領で作製した。各試験体を得るまでの養生期間は、竹チップ含有率40%の竹チップ高Ca漆喰で48日間、竹チップ含有率80%の竹チップ高Ca漆喰で46日間、竹チップ含有率120%の竹チップ高Ca漆喰で35日間とした。
【0076】
竹チップ高Ca漆喰の重量増減率、体積増減率、密度の測定結果を
図8〜
図10に示した。重量増減率、体積増減率、密度の定義、測定要領は、実施例1に記載の竹チップ漆喰と同じである。
【0077】
図8に示すように重量増減率は、全試験体ともCaイオン濃度が高くなると重量減少率は小さくなる傾向を示した。また竹チップ含有率40%及び80%の竹チップ高Ca漆喰は、Caイオン濃度にかかわらず重量減少率はおおよそ30%〜25%でほぼ同じであった。それに対して竹チップ含有率120%の竹チップ高Ca漆喰は、重量減少率が小さく20%前後であった。以上のことから竹チップ含有率が高くなると、またCaイオン濃度が高くなると乾燥重量率は小さくなることが分かる。
【0078】
図9に示すように体積増減率は、竹チップ含有率40%及び120%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度が高くなると体積増減率は小さくなる傾向を示した。竹チップ含有率80%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度0〜15g/Lにかけて体積増減率が若干小さくなり、Caイオン濃度20g/Lで落ちる傾向を示した。また、竹チップ含有率による体積増減率は、竹チップ含有率が低い程高くなることがわかった。すなわち竹チップ含有率が高く、Caイオン濃度が低い程、体積増減率は小さくなる。全体的には、竹チップ含有率にかかわらず体積収縮率の小さい素材であるといえる。
【0079】
図10に示すように密度は、Caイオン濃度にかかわらず竹チップ含有率が高くなると小さくなる傾向を示した。また各試験体ともCaイオン濃度が高くなると密度は高くなっている。これはCaイオン濃度が高くなると炭酸化反応が進み、炭酸カルシウムCaCO
3が増えるためである。
【0080】
竹チップ高Ca漆喰の密度は、竹チップ含有率40%、Caイオン濃度5〜20g/Lにおいて0.93〜1.05g/cm
3であり、普通漆喰に比較して58%以下である。また竹チップ含有率120%、Caイオン濃度5〜20g/Lにおいて0.76〜0.82g/cm
3であり、普通漆喰に比較して46%以下である。
【0081】
図11は、竹チップ高Ca漆喰の気中養生後の試験体の中性化進行状態を示す図である。この図は、竹チップ高Ca漆喰の試験体の強度試験による各試験体の曲げ破断面にフェノールフタレイン液を吹きかけて得た図である。白色の部分が中性化部分であり炭酸カルシウムである。赤色の部分はまだ中性化されていない部分であり、水酸化カルシウムである。図中のBTRは、竹チップ含有率を表す。
【0082】
図11から分かるように竹チップ含有率40%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度が高くなるに従って断面上下の白い部分の幅が太くなっている。竹チップ含有率80%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度5g/L及び15g/Lで白い部分が見られるが、Caイオン濃度0g/L及び20g/Lの試験体については見られなかった。竹チップ含有率120%の竹チップ高Ca漆喰では、全てのCaイオン濃度について白い部分が見られたが、その幅はCaイオン濃度が高い方が広いことが分かった。すなわち、全体的な傾向としてCaイオン濃度が高くなるに従って炭酸化領域は厚くなることが分かる。これは高Caイオン含有水溶液による炭酸化促進効果の影響であると考えられる。
【0083】
強度試験の結果を
図12及び
図13に示した。強度試験は、JISA1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)に準じた方法で行った。図中のCaイオン濃度10g/Lのデータは、別途実施したデータを使用した。
【0084】
図12に示すように曲げ強度は、竹チップ含有率に関係なくCaイオン濃度が高くなるに従って増加した。また竹チップ含有率が高くなるに従って曲げ強度も高くなる傾向を示した。これは、中性化進行から分かるように竹チップ含有率が高い程、中性化進行が速く炭酸カルシウム層が厚くなるためと考えられる。
【0085】
竹チップ含有率40%及び80%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度0g/Lに対してCaイオン濃度5g/Lで1.5〜1.9倍、Caイオン濃度10g/Lで2.2〜2.8倍、Caイオン濃度15g/Lで2.8〜5.9倍、Caイオン濃度20g/Lで3〜4倍に曲げ強度が増加している。それに対して竹チップ含有率120%の竹チップ高Ca漆喰の曲げ強度は、Caイオン濃度0g/Lにおいて竹チップ含有率40%及び80%の竹チップ高Ca漆喰の2倍になり、竹チップによる竹繊維の効果が得られることが分かる。竹チップ含有率120%の竹チップ高Ca漆喰においても、Caイオン濃度0g/Lに対してCaイオン濃度が5g/Lで2.2倍、Caイオン濃度が10g/Lで2.6倍、Caイオン濃度が15g/Lで2.9倍、Caイオン濃度が20g/Lで3.4倍の強度増加を示しており、Caイオン濃度の効果が非常に高いことがわかった。
【0086】
また
図13に示すように圧縮強度も全体的にCaイオン濃度の増加に伴って増加する傾向を示した。より詳細には、竹チップ含有率40%及び80%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度が0g/L〜15g/Lと高くなるに従って、圧縮強度はほぼ直線的に増加している。Caイオン濃度20g/LはCaイオン濃度15g/Lとほぼ同程度で強度上昇は見られなかった。それに対して、竹チップ含有率120%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度0g/L〜5g/Lにおいて1.4倍上昇し、Caイオン濃度5g/L〜20g/Lにおいて、Caイオン濃度の上昇に伴ってほぼ直線的に増加し、Caイオン濃度20g/LにおいてCaイオン濃度0g/Lの約1.75倍であった。
【0087】
上述のように圧縮強度は、曲げ強度に比較して強度上昇倍率は低いが、圧縮強度は曲げ強度に対して低いものでも5〜8倍の強度があるため、Caイオン濃度で強度上昇を計っても3倍弱でかなりの高強度になっていると言える。以上の曲げ強度、圧縮強度の比較により、竹チップ高Ca漆喰は、竹チップ漆喰と比較して曲げ強度、圧縮強度ともに増加し、Caイオン濃度20g/Lでは、水のほぼ3倍の高強度が得られることが分かった。
【0088】
竹チップ高Ca漆喰の曲げ強度及び圧縮強度を普通漆喰と比較すると、普通漆喰を40日間気中養生し得られる試験体の曲げ強度及び圧縮強度が約0.2N/mm
2及び約0.7N/mm
2であるから、竹チップ高Ca漆喰の曲げ強度及び圧縮強度は、普通漆喰の曲げ強度のおおよそ1.0〜3.4倍、普通漆喰の圧縮強度のおおよそ1.4〜4倍となり、竹チップ含有率が80〜120重量%、Caイオン濃度が15〜20g/Lの竹チップ高Ca漆喰では、曲げ強度は普通漆喰の2〜3.4倍、圧縮強度は普通漆喰の2.3〜4倍となる。
【0089】
実施例3:炭酸ガス養生に先立ち行う乾燥操作を伴う竹チップ高Ca漆喰の試験体の作製
竹チップ高Ca漆喰の試験体の作製要領を示す。実施例1で使用した生石灰(中山石灰工業株式会社製;粒度0.15mm以下)100重量部と、長さ3mmの竹チップ40重量部と、高Caイオン含有水溶液85重量部とを電動ミキサーで十分に混合し、竹チップ高Ca漆喰を得た。竹チップ含有率は40%、水石灰比は85%である。高Caイオン含有水溶液には、Caイオン濃度10g/Lのものを使用した。竹チップは、目開き3mmの篩を通し、篩上を除去し使用した。
【0090】
上記手順で得られた竹チップ高Ca漆喰を3連型枠に半分程度まで流し込み、型枠の隅々まで竹チップ高Ca漆喰が行き渡るように突き棒で万遍なく突いた後、型枠一杯まで竹チップ高Ca漆喰を流し込み、突き棒の底が前回の1/3の深さとなるまで万遍なく突いた。さらに型枠の表面が隠れるまで、竹チップ高Ca漆喰を流し込み、5時間放置した。その後、型枠の上部を平行棒でカットし、24時間気中養生後に型枠から取り出した。
【0091】
脱型した竹チップ高Ca漆喰を養生ケースに入れ、気中養生室で所定日数気中養生した。その後、竹チップ高Ca漆喰を炭酸ガスを充填した炭酸ガス吸収袋内に入れ、10日間炭酸ガス養生を行った。炭酸ガス養生後、再度、所定期間気中養生を行い試験体を得た。炭酸ガス養生前の気中養生期間は、0、1、2、3、4、5、6、7及び8日とした。試験体は、40×40×160mmの角柱状である。養生中は、毎日、試験体の重量及び試験体の長さと幅と高さをディジタルノギスを用いて測定した。
【0092】
図14(a)は、竹チップ高Ca漆喰の試験体の養生日数(経過日数)と乾燥重量との関係、
図14(b)は、脱型後の39日目の各試験体の重量率と脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間との関係を示す図である。
図14中の符号の説明は、脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間を表し、例えば気中−3は、脱型後炭酸ガス養生前に3日間気中養生を行ったことを示す。脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間は、炭酸ガス養生前の乾燥期間でもある。
【0093】
図14(a)に示すように、炭酸ガス養生前の気中養生期間が長い方が炭酸ガス吸収量が大きく、その後の乾燥重量は小さくなる傾向を示した。そのリバウンド量及びリバウンド率を
図15に示した。ここでリバンド量は、炭酸ガス養生前の重量と炭酸ガス養生1日経過後の重量との差、リバウンド率は、試験体の初期重量から炭酸ガス養生前の減少した重量に対する炭酸ガス養生後の重量変化量の割合である。
【0094】
図15から脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間が0日又は1日では、殆ど炭酸ガスを吸収しないが、気中養生期間が1日〜6日では、ほぼ比例的に炭酸ガスの吸収量が増加しており、それ以上では横ばいで推移する傾向を示した。これらのことから炭酸ガスを効率的に吸収させるには、脱型後炭酸ガス養生前に気中養生を5日以上行い、その後炭酸ガス養生を1〜2日間程度行うとよいことが分かった。
【0095】
図16(a)は、竹チップ高Ca漆喰の試験体の養生日数(経過日数)と体積増減率との関係、
図16(b)は、脱型後の39日目の各試験体の体積増減率と脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間との関係を示す図である。図中の符号の説明は、
図14と同じである。
【0096】
養生日数(経過日数)と体積増減率との関係は、脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間中においては、体積減少が進行しているが、炭酸ガス養生中は、安定的に推移している。炭酸ガス養生後の気中養生期間においては、脱型後炭酸ガス養生前に気中養生を実施しなかった気中−0の試験体を除き、他の試験体はほぼ横ばいで推移した。このことから乾燥によって生じる空隙は、炭酸ガス吸収で埋まり、それが体積減少を小さくしている要因の1つと考えられる。
【0097】
脱型後の39日目の各試験体の体積増減率は、脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間が長い程、体積減少は大きくなっている。しかしその差はわずかである。
【0098】
図17(a)は、竹チップ高Ca漆喰の試験体の養生日数(経過日数)と密度との関係、
図17(b)は、脱型後の39日目の各試験体の密度と脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間との関係を示す図である。図中の符号の説明は、
図14と同じである。
【0099】
養生日数(経過日数)と密度との関係は、炭酸ガス養生前の気中養生期間が長いほど、密度が高くなる傾向を示した。これは気中養生による乾燥によって各試験体中の水膜や水泡の水が蒸発し、その中にCaイオンが残るため炭酸ガス養生を行うと即、炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムが生成しそれが水膜や水泡を埋め、また漆喰中の水酸化カルシウムと炭酸ガスが反応し、炭酸カルシウムと水が生成し、水が蒸発して炭酸カルシウムが残るためである。
【0100】
これを顕著に表しているのが
図17(b)であり、脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間が0日又は1日の密度が0.95g/cm
3前後であるのに対して、気中養生期間が2日〜8日においては、密度が1.08〜1.125g/cm
3であり、かなりの差があることからも推察される。
【0101】
強度試験の結果を
図18に示した。試験体は、脱型後の39日目の試験体である。強度試験は、JISA1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)に準じた方法で行った。
【0102】
図18に示すように曲げ強度は、脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間が0日又は1日の試験体においては殆ど差が見られないが、気中養生期間が2日〜8日の試験体においては、気中養生期間に比例して増加する傾向を示した。脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間が3日以上で曲げ強度は、ほぼ2N/mm
2以上であった。これは普通漆喰の硬化体の曲げ強度の約10倍である。
【0103】
図18に示す脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間に対する曲げ強度は、
図14(b)に示す脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間に対する試験体の乾燥重量率と同じ傾向を示し、曲げ強度と乾燥重量との間に密接な関係があることが分かる。乾燥重量が大きいことは炭酸化が進行し、これにより重量増加さらには曲げ強度増加につながったことを示している。
【0104】
図18に示すように圧縮強度も、脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間が0日又は1日の試験体においては殆ど差が見られないが、気中養生期間が2日〜8日の試験体においては、気中養生期間に比例して増加する傾向を示した。脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間が2日以上で圧縮強度はほぼ3N/mm
2以上、気中養生期間が4日以上で圧縮強度はほぼ4N/mm
2以上であり、気中養生期間4日以上で普通漆喰の硬化体の圧縮強度の約6倍以上となる。
【0105】
図19は、本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の曲げ強度と圧縮強度との関係を示す図である。実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の試験体の曲げ強度と圧縮強度は直線関係にあり、曲げ強度が増加するに従って圧縮強度も直線的に増加した。
【0106】
図20は、本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の炭酸ガス養生前の気中養生日数と強度比との関係を示す図であり、脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間0日の試験体の強度に対する各試験体の強度比を示した図である。
【0107】
図20から分かるように脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間1日の強度比は、曲げ強度と圧縮強度ともほぼ1.0である。これに対して脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間2日〜8日の試験体の強度比は、曲げ強度で2.0〜4.2倍、圧縮強度で2.0〜3.5倍と大きく増加している。
【0108】
図21は、本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の試験体の中性化進行状態を示す図である。
図21(b)は、
図21(a)の各試験体を積み重ねた写真であり、左下が気中養生−0日、右下が気中養生−2日、右上が気中養生−8日である。ここで気中養生−2日とは、脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間が2日であることを示す。この図は、各試験体の曲げ試験による各試験体の曲げ破断面にフェノールフタレイン液を吹きかけて得た図である。白色の部分が中性化部分であり炭酸カルシウムである。赤色の部分はまだ中性化されていない部分であり、水酸化カルシウムである。
【0109】
図21より、脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間が0日及び1日の試験体は、殆ど中性化が進んでいないが、気中養生期間が2日の試験体は表面から1〜2mm程度中性化が進んでいる。一方、気中養生期間が3日〜8日の試験体に至っては、表面から5〜15mmの範囲で大きく中性化が進んでいることが分かる。この結果は、気中養生期間が長い程、炭酸ガス吸収量が大きくなることとも一致する。なお、
図21において中性化は表面(上面)や側面よりも下側からが進行する傾向があるが、これは表面は鏝仕上げをしているため、表面に薄い仕上げ膜が形成されることによるものと考えられる。
【0110】
参考例:炭酸ガス養生による竹チップ高Ca漆喰の試験体の作製
実施例3と同じ要領で、竹チップ高Ca漆喰を得た。竹チップ含有率は40%、水石灰比は85%である。高Caイオン含有水溶液には、Caイオン濃度10g/Lのものを使用した。竹チップは、目開き3mmの篩を通し、篩上を除去し使用した。
【0111】
上記手順で得られた竹チップ高Ca漆喰を実施例3と同じ要領で型に充填し、24時間気中養生後に型枠から取り出した。脱型した竹チップ高Ca漆喰を炭酸ガスを充填した炭酸ガス吸収袋内に入れ、所定期間炭酸ガス養生を行い、その後気中養生を行い試験体を得た。炭酸ガス養生期間は、0、1、2、3、4、5、6、7及び28日とした。強度試験までの養生期間は、脱型後34日とした。
【0112】
強度試験結果を
図22に示した。また
図23に試験体の中性化進行状態を示した。
図22と
図18との比較から分かるように脱型後直ちに炭酸ガス養生を行った試験体は、脱型後炭酸ガス養生前に気中養生を行った試験体と比較して曲げ強度、圧縮強度がかなり小さいことが分かる。これは脱型後直ちに炭酸ガス養生を行った試験体の場合、
図23に示すように炭酸化反応が殆ど進行していないことによる。
【0113】
実施例4:漆喰パネル
実施例1と同じ要領で作製した竹チップ含有率120%の竹チップ漆喰を用いて、厚さ9mmの漆喰パネルを製作した。当該漆喰パネルを電動ノコギリで切断し、また釘を打ち込み、さらに漆喰パネルをボイラーに投入し、建材としての可能性を評価した。
【0114】
図24(a)に示すように漆喰パネルを電動ノコギリで切断しても、割れ・ひびは発生しなかった。また
図24(b)に示すように釘打ちも問題なく行えた。さらに漆喰パネルをボイラーに投入すると
図24(c)に示すように表面は黒くなったが、竹チップが燃えて粉々になることはなかった。以上により漆喰パネルを建材として使用可能なことが確認できた。