(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロータリーキルンは、前記キルン本体の外周に前記加熱部が設けられた加熱帯における炭化温度が、300℃未満である、請求項1に記載のバイオマス固体燃料製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法でバイオマス固体燃料を製造する場合、バイオマスの加熱には一般的に外熱式の加熱炉が用いられる。しかしながら、加熱炉に対して成型したバイオマスを投入すると、加熱炉の前段においてバイオマスから生じる水蒸気等によりバイオマスの成型が崩れ、バイオマスが加熱炉に付着する可能性がある。また、崩れたバイオマスを加熱して得られるバイオマス固体燃料は、自己発熱性が高くなる可能性がある。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、製造時の崩壊を抑制しつつ自己発熱性の上昇が防がれたバイオマス固体燃料を製造可能なバイオマス固体燃料製造方法およびバイオマス固体燃料製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るバイオマス固体燃料製造方法は、原料バイオマスを成型したバイオマス成型体を外熱式のロータリーキルンにおいて炭化する、加熱工程を有するバイオマス固体燃料製造方法であって、前記ロータリーキルンは、キルン本体のうち上流側に設けられ、かつ外周に加熱部が設けられていない非加熱帯を有し、前記非加熱帯は、内周面にスパイラルブレードを備え、前記加熱工程において、前記キルン本体の前記非加熱帯に対して前記バイオマス成型体を導入する。
【0007】
また、本発明の一形態に係るバイオマス固体燃料製造装置は、原料バイオマスを成型したバイオマス成型体を炭化する外熱式のロータリーキルンを含むバイオマス固体燃料製造装置であって、前記ロータリーキルンは、キルン本体のうち上流側に設けられ、かつ外周に加熱部が設けられていない非加熱帯を有し、前記非加熱帯は内周面にスパイラルブレードを備える。
【0008】
上記のバイオマス固体燃料製造方法およびバイオマス固体燃料製造装置によれば、バイオマス成型体を炭化するロータリーキルンにおける上流側の非加熱帯において、内周面にスパイラルブレードが設けられる。このため、ロータリーキルンに投入されたバイオマス成型体は、外周に加熱部が設けられていない非加熱帯においては、スパイラルブレードによって下流側へ速やかに移動する。したがって、バイオマス成型体が非加熱帯において崩壊することを防ぐことができるため、崩壊したバイオマス成型体が炭化して自己発熱性が上昇することを防ぐことができる。このように、上記のバイオマス固体燃料製造方法およびバイオマス固体燃料製造装置によれば、製造時の崩壊を抑制しつつ自己発熱性の上昇が防がれたバイオマス固体燃料を製造可能となる。
【0009】
ここで、前記ロータリーキルンは、前記キルン本体の外周に前記加熱部が設けられた加熱帯における炭化温度が、300℃未満である態様とすることができる。
【0010】
ロータリーキルンの加熱帯における炭化温度が300℃未満である場合、加熱帯に隣接する非加熱帯の温度上昇が抑制されるため、バイオマス成型体の加熱時に発生する水蒸気の凝縮が比較的起こりやすい。このようなロータリーキルンでは、非加熱帯においてバイオマス成型体に対して水分が付着し、崩壊が促進される可能性がある。これに対して、上流側の非加熱帯において内周面にスパイラルブレードが設けられることで、バイオマス成型体が非加熱帯において崩壊することを好適に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造時の崩壊を抑制しつつ自己発熱性が低減されたバイオマス固体燃料を製造可能なバイオマス固体燃料製造方法およびバイオマス固体燃料製造装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の一形態に係るバイオマス固体燃料の製造方法の概要を説明するフロー図である。
図1に示すように、バイオマス固体燃料の原料となるバイオマスは、粉砕工程(S01)および成型工程(S02)を経てペレット状にバイオマス成型体(White Pellet:以下、「WP」という)となる。このWPは、加熱工程(S03)において加熱されることで炭化され、バイオマス固体燃料(Pelletizing Before Torrefaction:以下、「PBT」という)となる。このPBTは、必要に応じて、分級・冷却工程(S04)を経て製品となる。
【0015】
粉砕工程(S01)は、原料となるバイオマス(原料バイオマス)を破砕後粉砕する工程である。原料となるバイオマスの種類は特に限定されず、木質系および草木系から選択することができる。原料となるバイオマスの樹種および部位等は特に限定されないが、例えば、一態様として、ゴムの木、アカシア、フタバガキ科の樹種、ラジアータパイン、ならびに、カラマツ、スプルース、およびカバノキの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む原料とすることができる。カラマツ、スプルース、およびカバノキはそれぞれ単独で原料のバイオマスとして用いてもよいが、これらのうちの2種以上、好ましくは3種の混合物として用いることができる。また、スプルース,マツ,モミの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種(2種または3種の混合物でもよい)を含む原料とすることができる。
【0016】
また、原料として、上記以外のその他の樹種をさらに含んでもよい。本発明の一態様においては、原料のバイオマスの総重量に対する、ゴムの木、アカシア、フタバガキ科の樹種、ラジアータパイン、ならびに、カラマツ、スプルース、およびカバノキの混合物からなる群から選ばれる1種以上の含有量が、50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、100重量%であってもよい。
【0017】
なお、原料として、米松、米栂、杉、桧、欧州アカマツ、アーモンド古木、アーモンド殻、胡桃殻、サゴヤシ、EFB(パーム油加工残渣の空果房)、メランティ等を用いてもよい。
【0018】
粉砕後のバイオマスの粒径は、特に限定されないが、平均で約100μm〜3000μm、好ましくは平均で400μm〜1000μmとすることができる。なお、バイオマス粉の粒径の測定方法は公知の測定方法を用いてよい。
【0019】
成型工程(S02)は、公知の成型技術を用いて、粉砕されたバイオマスを塊状に成型する工程である。成型後のバイオマスの塊状物であるバイオマス成型体(WP)は、ペレットまたはブリケットとすることができる。WPの大きさは適宜変更することができる。なお、成型工程では、バインダ等の結合剤は添加されず、粉砕されたバイオマスを圧縮・加圧することで成型される。
【0020】
加熱工程(S03)は、バイオマス成型体(WP)を150℃〜400℃で加熱(低温炭化)することで、成型体としての形状を保持しつつ、強度および耐水性を有するバイオマス固体燃料(PBT)とする工程である。加熱工程は、後述のバイオマス固体燃料製造装置100を用いて行われる。
【0021】
なお、加熱温度(キルン本体20内におけるPBTの加熱温度:炭化温度ともいう)は、原料となるバイオマスおよび塊状物の形状、大きさによって適宜決定されるが、300℃未満とされる。200℃以上300℃未満がより好ましい。より好ましくは230℃以上300℃未満である。さらに、230℃〜280℃であれば好ましい。また、加熱工程における加熱時間は、特に限定されないが、0.2時間〜3時間とすることができる。
【0022】
分級・冷却工程(S04)は、加熱工程により得られたPBTを製品化するため、分級および冷却を行う工程である。分級および冷却は省略してもよいし、いずれかの工程のみを実施してもよい。必要に応じて分級・冷却されたPBTが固体燃料製品となる。
【0023】
加熱工程(S03)の後に得られたバイオマス固体燃料は、水中に浸漬した際の浸漬水のCOD(化学的酸素要求量)が、3000ppm以下であることが好ましい。ここで、バイオマス固体燃料を水中に浸漬した際の浸漬水のCOD(化学的酸素要求量)(単に、「COD」とも記載する)とは、COD測定用浸漬水試料の調製を昭和48年環境庁告示第13号(イ)産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法にしたがって行い、JIS K0102(2016)−17によって分析したCOD値のことをいう。
【0024】
また、加熱工程後に得られたバイオマス固体燃料は、JIS M 8801に基づく粉砕性指数(HGI)が、15以上60以下であることが好ましく、より好ましくは20以上60以下である。また、バイオマス固体燃料は、BET比表面積が0.15m
2/g〜0.8m
2/gであることが好ましく、0.15m
2/g〜0.7m
2/gであることがより好ましい。また、バイオマス固体燃料は、水中浸漬後の平衡水分が15wt%〜65wt%であることが好ましく、15wt%〜60wt%であることがより好ましい。
【0025】
また、加熱工程後に得られたバイオマス固体燃料は、燃料比(固定炭素/揮発分)が0.2〜0.8、無水ベース高位発熱量が4800kcal/kg〜7000kcal/kg、酸素Oと炭素Cのモル比O/Cが0.1〜0.7、水素Hと炭素Cのモル比H/Cが0.8〜1.3となる。加熱工程後のバイオマス固体燃料の物性値が該範囲内にあることにより、貯蔵時の排水中のCODを低減しつつ粉化を低減し、貯蔵時のハンドリング性を向上させることができる。なお、バイオマス固体燃料の物性値は、例えば、原料として用いるバイオマスの樹種、その部位、加熱工程における加熱温度等を調整することにより、上記の範囲とすることができる。なお本明細書における工業分析値、元素分析値、高位発熱量はJIS M 8812、8813、8814に基づく。
【0026】
また、加熱工程後に得られたバイオマス固体燃料は、自己発熱性試験の最高到達温度が200℃未満となる。なお、自己発熱性試験は、「国際連合:危険物輸送に関する勧告:試験方法および判定基準のマニュアル:第5版:自己発熱性試験」に規定されている試験である。
【0027】
ここで、加熱工程(S03)で使用するバイオマス固体燃料製造装置100について
図2〜
図4を参照しながら説明する。
図2は、加熱工程で使用されるバイオマス固体燃料製造装置を説明する概略構成図である。
図2に示すように、バイオマス固体燃料製造装置100は、ホッパ1およびロータリーキルン2(加熱炉)を有する。ホッパ1およびロータリーキルン2に係る制御は、制御部(図示せず)により制御される。
【0028】
ホッパ1は、バイオマス成型体(WP)を貯蔵する機能を有する。ホッパ1に貯蔵されたWPは、ロータリーキルン2に順次供給され、ロータリーキルン2において加熱される。WPを加熱することにより、バイオマス固体燃料(PBT)が製造される。ロータリーキルン2により製造されたPBTは、コンベア3により搬送される。
【0029】
ロータリーキルン2は、所謂外熱式である。ロータリーキルン2は、被加熱物であるWPを内部に導入して加熱(低温炭化)させるキルン本体20と、キルン本体20を加熱する加熱部とを有する。加熱部とは、外部熱源4からの熱ガスをキルン本体20の外周側に設けられたガス入口21から供給し、熱ガス経路23を経て、ガス出口22から排出する。キルン本体20の周囲に熱ガス経路23が設けられているため、キルン本体20の内部は、間接的に加熱される。すなわち、熱ガス経路23が、ロータリーキルン2においてキルン本体20を加熱する加熱部として機能する。制御部(図示せず)により外部熱源4を制御することで、熱ガス経路23のガス入口21における温度を適宜変更し、ロータリーキルン2のキルン本体20の温度を制御する。なお、
図2のロータリーキルン2は被加熱物(WP)の移動方向(ホッパ1側からコンベア3側へ向かう方向)と、熱ガスの移動方向とが対向する向流式であるが、並流式であってもよい。なおロータリーキルン2内の酸素濃度は10%以下となるよう設定される。
【0030】
キルン本体20は略円筒形状であり、一方側の端部から内部に被加熱物であるバイオマス成型体(WP)が導入されて、加熱(低温炭化)後のバイオマス固体燃料(PBT)が他方側の端部から排出される。キルン本体20は、上流側のローラ25および下流側のローラ26により、WPの移動方向に延びる軸線を中心として回動可能に支持されている。すなわち、キルン本体20の中心軸がキルン本体20の回動軸となる。キルン本体20の外周に配置される熱ガス経路23は、ローラ25,26とは重ならない位置、すなわち、ローラ25,26間に設けられる。そのため、熱ガス経路23よりも上流側(ローラ25と干渉する領域)および熱ガス経路23よりも下流側(ローラ26と干渉する領域)は、熱ガスによる加熱が困難な領域となる。そこで、キルン本体20では、熱ガス経路23よりも上流側の内部のブレードを、熱ガス経路23が設けられている領域およびその下流側に設けられるブレードとは異なる形状としている。
【0031】
なお、キルン本体20は、上流側(ホッパ1側)が上方となり、下流側(コンベア3側)が下方となるように傾斜した状態で設置される。キルン本体20の設置角度は、キルン本体20の大きさ、キルン本体20内でのWPの移動速度等に応じて適宜変更することができる。
【0032】
図3は、ロータリーキルン2のキルン本体20の内部構造を説明する模式図である。また、
図4は、キルン本体20の内部に設けられるブレードの形状の説明図である。
【0033】
図3に示すように、キルン本体20の内部は、第1領域R1、第2領域R2、および、第3領域R3により構成される。第1領域R1および第3領域R3は、キルン本体20の外周に熱ガス経路23が設けられていない領域であり、非加熱帯となる。一方、第2領域R2は、キルン本体20の外周に熱ガス経路23が設けられている領域であり、加熱帯となる。加熱帯では、熱ガス経路23により、キルン本体20内が所定の温度に加熱される。
【0034】
このうち、上流側の第1領域R1には、スパイラルブレード31が設けられている。第1領域R1よりも下流側の第2領域R2および第3領域R3には、リフターブレード32が設けられている。なお、スパイラルブレード31が設けられている領域とリフターブレード32が設けられている領域との境界は、第1領域R1と第2領域R2との境界と一致していなくてもよい。したがって、例えば、スパイラルブレード31が設けられている領域とリフターブレード32が設けられている領域との境界が第1領域R1内に設けられていてもよい。なお、加熱帯となる第2領域R2では、キルン本体20の内部にリフターブレード32が設けられている構成とすることで、第2領域R2でのPBTの加熱を好適に行うことができる。
【0035】
第1領域R1のスパイラルブレード31は、キルン本体20の回動軸方向に沿ってみたときに螺旋状に形成されている。したがって、
図4(a)に示すように、回動軸に対して直交する断面において、スパイラルブレード31は、キルン本体20の内周面20aに沿って延びている。キルン入口側から見ると、スパイラルブレード31の巻回方向(スパイラルブレード31の螺旋の方向)とキルン回転方向は互いに異なった方向に形成されている。また、スパイラルブレード31の傾斜角(回動軸方向に対して直交する断面に対するスパイラルブレード31が延在する角度)、および、ピッチ(内周面20aにおいて、軸線方向で隣接するスパイラルブレード31間のピッチ)は、キルン本体20の大きさ、第1領域R1の長さ、キルン本体20の傾斜角度等に応じて適宜変更することができる。また、スパイラルブレード31の傾斜角およびスパイラルブレード31が設けられる領域の長さ(本実施形態の場合、第1領域R1の長さ)に応じて、ブレードの巻数を適宜変更してもよい。
【0036】
第2領域R2および第3領域R3のリフターブレード32は、キルン本体20の回動軸と平行な方向に沿って延び、キルン本体20の内周面に沿って所定の間隔で複数設けられている。
図4(b)に示すように、複数のリフターブレード32それぞれは、回動軸に対して直交する断面においてキルン本体20の内周面20aから回動軸方向へ向けて突出する。リフターブレード32の数および間隔は適宜変更される。
【0037】
上記の第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3を有するキルン本体20は、加熱工程を行う際には、ローラ25,26により、所定の回転数で回動軸を中心に回転する。また、熱ガス経路23に対して外部熱源4から熱ガスが供給されるため、キルン本体20内部のうち熱ガス経路23が周囲に設けられている第2領域R2は、熱ガスにより加熱される。
【0038】
このようなキルン本体20内にWPが上流側から投入されると、まず、WPは、キルン本体20の回転に伴って、キルン本体20内の第1領域R1を移動する。このとき、第1領域R1には内周面20aにスパイラルブレード31が設けられているので、WPは、スパイラルブレード31により下流側へ押し出されながら第2領域R2方向へ移動する。
【0039】
次に、WPは第2領域R2に到達すると、内周面20aのリフターブレード32により上方に押し上げられながら、キルン本体20内を移動する。キルン本体20の回転に伴って、リフターブレード32はWPを持ち上げ、重力により落下する。このように、第2領域R2では、WPは、リフターブレード32により混合されながら下流側へ移動する。また、熱ガス経路23が外周に設けられている領域では、熱ガス経路23を流れる熱ガスによりキルン本体20内の空間が高温になっているため、WPはキルン本体20内でリフターブレード32により混合されながら、加熱(低温炭化)される。これにより、WPはPBTとなる。
【0040】
その後、PBTは、第2領域R2と同じく内周面20aにリフターブレード32が形成された第3領域R3を移動して、キルン本体20の下流側からキルン本体20外へ排出される。
【0041】
このように、本実施形態に係るバイオマス固体燃料製造装置100およびバイオマス固体燃料製造装置100を利用したバイオマス固体燃料製造方法では、バイオマス成型体(WP)を炭化するロータリーキルン2におけるキルン本体20の上流側の非加熱帯となる第1領域R1において、内周面20aにスパイラルブレード31が設けられる。このため、ロータリーキルン2のキルン本体20に投入されたバイオマス成型体は、外周に加熱部としての熱ガス経路23が設けられていない非加熱帯においては、スパイラルブレード31によって下流側へ速やかに移動する。したがって、バイオマス成型体が非加熱帯において崩壊することを防ぐことができるため、崩壊したバイオマス成型体が炭化して自己発熱性が上昇することを防ぐことができる。
【0042】
従来から、バイオマス成型体をロータリーキルン2において加熱(低温炭化)させてバイオマス固体燃料を製造することは知られている。しかしながら、ロータリーキルン2の構造上、バイオマス成型体(WP)のキルン本体20には、外熱による加熱を行う加熱帯と、外熱による加熱ができない非加熱帯と、が存在する。加熱帯ではWPが炭化される際に水蒸気が発生する。この水蒸気は、加熱帯と比べて温度が上昇しない非加熱帯(特に、キルン本体20の外周に近い側)で凝縮する。凝縮した水蒸気は非加熱帯を移動するWPに対して付着する可能性がある。
【0043】
特に、炭化前のWPに水蒸気(水分)が付着すると、WPは耐水性が低いため崩壊・粉化する可能性がある。この場合、炭化後のバイオマス固体燃料についても形状が崩壊しているため、所定の形状を有するバイオマス固体燃料の回収率が低下する可能性がある。また、崩壊・粉化したWPはキルン本体20内の内周面やブレード等に付着する可能性があるため、ロータリーキルン2としての機能が低下する可能性がある。さらに、崩壊・粉化したWPがそのまま炭化して得られるバイオマス固体燃料は、成型されたWPと比べて熱が伝わりやすく高温での炭化が進行するため、自己発熱性が高くなる可能性があった。
【0044】
これに対して、本実施形態に係るバイオマス固体燃料製造装置100およびバイオマス固体燃料製造装置100を利用したバイオマス固体燃料製造方法では、キルン本体20のうち上流側の非加熱帯、すなわち、炭化前のバイオマス成型体が移動する領域の内周面20aにスパイラルブレード31が設けられる。スパイラルブレード31が設けられる場合、従来のリフターブレードと比較して、キルン本体20内でのバイオマス成型体の移動速度が速くなる。そのため、加熱前のバイオマス成型体に対して水蒸気が付着するリスクを減らすことができ、製造時の崩壊を抑制しつつ自己発熱性が低減されたバイオマス固体燃料を製造可能となる。
【0045】
ここで、ロータリーキルン2は、キルン本体20の外周に加熱部が設けられた加熱帯における炭化温度が300℃未満とすることができる。このように、ロータリーキルン2のキルン本体20のうち加熱帯(第2領域R2)における炭化温度が300℃未満である場合、加熱帯に隣接する非加熱帯での温度上昇が抑制されるため、バイオマス成型体の加熱時に発生する水蒸気の凝縮が比較的起こりやすい。一般的なバイオマス固体燃料の製造工程では、500℃以上の炭化温度で加熱を行うため、加熱帯の周囲の非加熱帯も比較的高温になり、水蒸気の凝縮が起こりにくい環境であった。一方、本実施形態のバイオマス固体燃料製造装置100のように、炭化温度が300℃未満である場合、加熱帯の近隣の非加熱帯での温度上昇が少なくなる(例えば、100℃未満程度)。そのため、水蒸気の凝縮が起こりやすくなり、その結果、バイオマス成型体の崩壊・粉化が促進されやすい状況であった。このようなロータリーキルン2において、本実施形態で説明したように、上流側の非加熱帯において内周面にスパイラルブレード31を設ける構成とした場合、従来のロータリーキルンと比較して、バイオマス成型体の崩壊・粉化を防ぐ効果が顕著となり、より効果的に、製造時の崩壊を抑制しつつ自己発熱性が低減されたバイオマス固体燃料を製造可能となる。
【0046】
ただし、キルン本体20での炭化温度が300℃以上であっても、上記実施形態で説明した構成を適用することができる。また、キルン本体20での炭化温度が300℃以上である場合も、上記実施形態で説明した構成を適用することで、製造時の崩壊を抑制しつつ自己発熱性が低減されたバイオマス固体燃料を製造可能となるという効果が得られる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0048】
例えば、ロータリーキルン2を含むバイオマス固体燃料製造装置100の各部の構成および配置等は適宜変更することができる。例えば、バイオマス成型体の投入口、バイオマス固体燃料の排出口等の形状や配置についても適宜変更することができる。
【解決手段】バイオマス固体燃料製造方補は、原料バイオマスを成型したバイオマス成型体を外熱式のロータリーキルンにおいて炭化する、加熱工程を有するバイオマス固体燃料製造方法であって、ロータリーキルンは、キルン本体のうち上流側に設けられ、かつ外周に加熱部が設けられていない非加熱帯を有し、非加熱帯は、内周面にスパイラルブレードを備え、加熱工程において、キルン本体の非加熱帯に対してバイオマス成型体を導入する。