(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525152
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】車体および外装パネルの穿孔方法
(51)【国際特許分類】
B60R 11/04 20060101AFI20190527BHJP
【FI】
B60R11/04
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-183698(P2015-183698)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2017-56848(P2017-56848A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴
【審査官】
高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−080081(JP,A)
【文献】
特開2001−039243(JP,A)
【文献】
特開2007−261503(JP,A)
【文献】
特開2000−318397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00
11/02
11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準となる仮想矩形の対角線よりも短く、前記仮想矩形の最長の辺よりも大きい直径を有する大円と、前記大円の外側にはみ出る前記仮想矩形の4つの頂点領域を個別に内部に包含する4つの小円とで輪郭がかたどられた開口を有する外装パネルと、
前記外装パネルの外表面を含む仮想面内に前記仮想矩形で規定される断面を有し、前記開口内に配置されるカメラユニットと
を備えることを特徴とする車体。
【請求項2】
請求項1に記載の車体において、前記小円の中心は前記仮想矩形の内角の二等分線上に配置されることを特徴とする車体。
【請求項3】
請求項1に記載の車体において、前記小円の中心は前記仮想矩形の対角線上に配置されることを特徴とする車体。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車体において、前記小円の中心は前記大円の中心から等距離に配置されることを特徴とする車体。
【請求項5】
外装パネルの外表面を含む仮想面内でカメラユニットの断面に相当する仮想矩形の対角線よりも短く、前記仮想矩形の最長の辺よりも大きい径を有する大径ドリルビットで前記外装パネルに穿孔加工を施し、前記外装パネルに大円の開口を形成する工程と、
前記大円の外側にはみ出る前記仮想矩形の4つの頂点領域を個別に内部に包含する4つの小円の直径に相当する径を有する小径ドリルビットで前記外装パネルに穿孔加工を施し、前記外装パネルに前記小円の開口を形成する工程と、
を備えることを特徴とする外装パネルの穿孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車といった移動体の車体および車体を構成する外装パネルの穿孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の販売にあたって完成車の車体に後付けで車載カメラユニットが取り付けられることがある。車載カメラユニットの取り付けにあたって車体を形成する外装パネルはドリルで穿孔される。形成された開口内に車載カメラユニットは配置される。こうして車載カメラユニットは車体に取り付けられる。車載カメラユニットは、外装パネルの外表面に取り付けられるカバーで覆われる。カバーには、車載カメラユニットのレンズを露出させる窓孔が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−6481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外装パネルには車載カメラユニットの断面よりも大きい直径の大円で開口が形成される。車載カメラユニットの断面はほぼ矩形であることから、矩形の各辺と円形の開口の内縁との間には大きな隙間が形成されてしまう。車載カメラユニットおよび開口はカバーで覆われるとはいえ、降雨や洗車などにあたって強い水流が窓孔に向かって噴きつけられると、大きな隙間から外装パネルの内側に水が浸入してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、従来に比べて車載カメラユニット取付用の開口の開口面積を縮小することができる車体および外装パネルの穿孔方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一形態は、基準となる仮想矩形の対角線よりも短く、前記仮想矩形の最長の辺よりも大きい直径を有する大円と、前記大円の外側にはみ出る前記仮想矩形の4つの頂点領域を個別に内部に包含する4つの小円とで輪郭がかたどられる開口を有する外装パネルと、前記開口内に配置されるカメラユニットとを備える車体に関する。
【0007】
仮想矩形はカメラユニットの断面の投影像を反映する。大円の直径が仮想矩形の対角線よりも短ければ、矩形の各辺と、大円で規定される開口の内縁との間で隙間は大円の直径が仮想矩形の対角線より大きい場合と比較し縮小する。4つの小円は大円から外側にはみ出し、大円で規定される4つの円弧と小円で規定される4つの円弧で開口の縁が構成される。カメラユニットの角は開口の内縁に干渉することなく、カメラユニットは開口内に収まることができる。単純に1つの大円で開口が形成される場合に比べて、開口の開口面積は縮小されることができる。
【0008】
小円の中心は前記仮想矩形の内角の二等分線上に配置されればよい。こうして大円に対して小円の位置は一義的に決定されることができる。大円および小円の位置関係が明確化されることから、開口を形成するためにドリルビット等で行われる穿孔の再現性は確保される。こうして大円および小円の位置関係は予め明確に把握されることから、カメラユニットは確実に開口内に収まることができる。
【0009】
あるいは、小円の中心は前記仮想矩形の対角線上に配置されてもよい。こうして大円に対して小円の位置は一義的に決定されることができる。大円および小円の位置関係が明確化されることから、開口を形成するためにドリルビット等で行われる穿孔の再現性は確保される。こうして大円および小円の位置関係は予め明確に把握されることから、カメラユニットは確実に開口内に収まることができる。
【0010】
小円の中心は前記大円の中心から等距離に配置されればよい。
【0011】
車体は、前記開口を覆うカバーをさらに備えてもよい。開口の開口面積は縮小されるので、それに応じてカバーは小型化される。こうして車体の見栄えは向上する。
【0012】
本発明の他の形態は、基準となる仮想矩形の対角線よりも短く、前記仮想矩形の最長の辺よりも大きい径を有する大径ドリルビットで外装パネルに穿孔加工を施し、前記外装パネルに大円の開口を形成する工程と、前記大円の外側にはみ出る前記仮想矩形の4つの頂点領域を個別に内部に包含する4つの小円の直径に相当する径を有する小径ドリルビットで前記外装パネルに穿孔加工を施し、前記外装パネルに前記小円の開口を形成する工程とを備える外装パネルの穿孔方法に関する。
【0013】
仮想矩形にはカメラユニットその他の断面が投影される。大円の直径が仮想矩形の対角線よりも短ければ、矩形の各辺と、大円で規定される開口の内縁との間で隙間は縮小する。4つの小円は大円から外側にはみ出ることから、カメラユニットの角は開口の内縁に干渉することなく、カメラユニットは開口内に収まることができる。単純に1つの大径ドリルビットで開口が穿孔される場合に比べて、開口の開口面積は縮小されることができる。
【0014】
外装パネルの穿孔方法では、前記大円の開口に先立って前記小円の開口が穿たれればよい。小円の開口は仮想矩形の頂点領域に形成されることから、小円の開口が形成されても仮想矩形の大部分で外装パネルは残存する。これにより大円の中心が残存するため大円の穿孔加工が容易となる。こうして大径ドリルビットは確実に決められた位置で大円の開口を穿つことができる。仮に大円の開口が小円の開口に先立って形成されてしまうと、大円の開口内の空中で規定位置に小径ドリルビットの先端は保持されなければならず、付加的な案内具がなければ作業の困難性が著しく増大してしまう。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、従来に比べて車載カメラユニット用の開口の開口面積を縮小することができる車体および外装パネルの穿孔方法は提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】移動体としての自動車の全体像を概略的に示す斜視図である。
【
図2】車体に支持されるカメラユニットの拡大斜視図である。
【
図3】カバーが取り外された状態で観察されるカメラユニットの拡大斜視図である。
【
図6】開口面積の相違を概略的に示す平面図である。
【
図7】
図5に対応し、他の実施形態に係る小円の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0018】
図1は移動体としての自動車11を概略的に示す。自動車11は車体12を備える。車体12には2つの前輪13および2つの後輪14が回転自在に支持される。車体12は前輪13および後輪14で地面に支持される。前輪13および後輪14の回転に応じて車体12は地面に沿って移動することができる。
【0019】
車体12は外装パネル15を備える。外装パネル15は車体12の外観を構成する。外装パネル15は例えば鉄板で形成される。鉄板の表面には塗装が施される。
【0020】
車体12の後部には車載用のカメラユニット16が取り付けられる。カメラユニット16は車体12に支持される。
図2に示されるように、カメラユニット16はカバー17で覆われる。カバー17にはカメラユニット16のレンズを露出させる窓孔18が形成される。カバー17は例えば両面テープで外装パネル15の外表面に取り付けられる。カバー17は例えば樹脂成形体で構成されればよい。
【0021】
図3に示されるように、外装パネル15には開口19が形成される。開口19内にカメラユニット16は配置される。レンズ21の光軸22は車体12の後方に向けられる。レンズ21の光軸22は車体12から地面に向かって傾斜している。
【0022】
ここでは、光軸22に直交する仮想平面に投影されるカメラユニット16の輪郭はほぼ正方形を描く。したがって、輪郭の4辺の長さは等しい。カメラユニット16は撮像素子の水平軸回りで傾斜することから、
図4に示されるように、外装パネル15の外表面を含む仮想面で横切られるカメラユニット16の断面23は鉛直方向に長い矩形となる。断面23の短辺は、地面に平行な水平面に平行に延び、前述の仮想平面に描き出される正方形の1辺の長さPを有する。仮想平面に描き出される短辺はカメラユニット16の短辺と同じ長さとなる。断面23の長辺は、地面に直交する鉛直面に平行に延び、前述の仮想平面に描き出される正方形の1辺よりも大きい長さQを有する。長辺の長さQは後傾の角度に応じて三角関数に基づき一義的に算出されることができる。
【0023】
図5に示されるように、外装パネル15の開口19は、1つの大円25と、4つの小円26a、26b、26c、26dとの組み合わせに基づき形成される。大円25に4つの小円26a、26b、26c、26dは重ねられる。個々の小円26a、26b、26c、26dは大円25から部分的に外側にはみ出す。大円25および小円26a、26b、26c、26dで形成される開口19の大きさはカメラユニット16の断面23より大きく設定される。
図5では、カメラユニット16の断面23は仮想矩形27として大円25に重ねて投影される。大円25の直径は、仮想矩形27の対角線28よりも短く、仮想矩形27の最長の辺すなわち長辺29aよりも大きい。大円25と長辺29aとの間に形成される隙間36は大円25と短辺29bとの間に形成される隙間37よりも大きい。
【0024】
仮想矩形27の4つの頂点31は大円25から外側にはみ出る。頂点31と大円25との間に頂点領域32が規定される。頂点31ごとに小円26a、26b、26c、26dは配置される。個々の頂点領域32は対応する小円26a、26b、26c、26dの内部に包含される。小円26a、26b、26c、26dよりも外側に頂点領域32は広がらない。ここでは、小円26a、26b、26c、26dの中心は仮想矩形27の内角31の二等分線上に配置される。しかも、4つの小円26a、26b、26c、26dの中心Cdは大円25の中心Ccから等距離に配置される。大円25の中心Ccは仮想矩形27の対角線28の交点に重なる。こうして大円25と小円26a、26b、26c、26dとで開口19の輪郭はかたどられる。開口19の外側で外装パネル15の外表面にカバー17の固着面は配置される。
【0025】
前述のように、仮想矩形27はカメラユニット16の断面23の投影像となる。大円25の直径が仮想矩形27の対角線28よりも短ければ、大円25の直径が仮想矩形27の対角線28より長い場合と比較し、大円25の矩形の各辺29a、29bと、大円25で規定される開口19の内縁との間での隙間は縮小する。4つの小円26a、26b、26c、26dは大円25から外側にはみ出ることから、カメラユニット16の角は開口19の内縁に干渉することなく、カメラユニット16は開口19内に収まることができる。単純に仮想矩形27の対角線28より大きな直径を持つ1つの大円の開口が穿孔される場合に比べて、開口19の開口面積は縮小されることができる。開口19は縮小されるので、それに応じてカバー17は小型化される。こうして車体12の見栄えは向上する。
【0026】
車体12では小円26a、26b、26c、26dの中心Cdは仮想矩形27の内角31の二等分線上に配置される。こうして大円25に対して小円26a、26b、26c、26dの位置は一義的に決定される。大円25および小円26a、26b、26c、26dの位置関係が明確化されることから、穿孔の再現性は確保される。こうして大円25および小円26a、26b、26c、26dの位置関係は予め明確に把握されることから、カメラユニット16は確実に開口19内に収まることができる。
【0027】
小円26a、26b、26c、26dの中心Cdは大円25の中心Ccから等距離に配置される。
【0028】
次に開口19の形成方法を説明する。開口19の形成にあたってドリルが利用される。大径ドリルビットで大円25の穿孔加工が施され、小径ドリルビットで小円26a、26b、26c、26dの穿孔加工が施される。大径ドリルビットは大円25の穿孔に適した外径を有する。すなわち、大径ドリルビットの径は、仮想矩形27の対角線28よりも短く、仮想矩形27の長辺29aよりも大きい径に相当する。小径ドリルビットは小円26a、26b、26c、26dの穿孔に適した外径を有する。すなわち、小径ドリルビットの径は、個別に頂点領域32を包含する小円26a、26b、26c、26dの直径に相当する径を有する。
【0029】
外装パネル15の外表面に指示書が貼り付けられる。指示書には、大円25の中心Ccと4つの小円26a、26b、26c、26dの中心Cdとが記述される。作業者は大円25の開口に先立って小円26a、26b、26c、26dの中心Cdにセンターポンチ等で窪みを付け、そこに小径ドリルビットの先端を当てて開口を穿つ。外装パネル15には、指示書で決められた規定の位置に、4つの小円26a、26b、26c、26dの開口が形成される。
【0030】
続いて指示書の指図に従ってドリルビットの軸心は大円25の中心Ccに位置決めされる。大円25の中心Ccにセンターポンチ等で窪みを付け、そこに大径ドリルビットの先端を当てて開口を穿つ。4つの小円26a、26b、26c、26dに部分的に重なって大円25の開口が形成される。小円26a、26b、26c、26dの開口は仮想矩形27の頂点領域32に形成されることから、小円26a、26b、26c、26dの開口が形成されても仮想矩形27の大部分で外装パネル15は残存する。これにより大円の中心が残存するため大円の穿孔加工が容易となる。こうして大径ドリルビットは確実に決められた位置で大円25の開口を穿つことができる。仮に大円25の開口が小円26a、26b、26c、26dの開口に先立って形成されてしまうと、大円25の開口内の空中で規定位置に小径ドリルビットの先端は保持されなければならず、付加的な案内具がなければ作業の困難性が著しく増大してしまう。
【0031】
本発明者は開口19の開口面積を検証した。検証にあたって24mm角の正方形断面を有するカメラユニット16が想定された。外装パネル15の垂線に対して25度の傾きが設定されたことから、
図6(a)に示されるように、カメラユニット16の断面23では24mmの短辺と25.7mmの長辺と33.0mmの対角線とが特定された。大径ドリルビットで直径36mmの大円34が描かれた。大円34内にカメラユニット16の断面23は包含された。すなわち、カメラユニット16の角と大円34の開口の縁との間で干渉は回避された。円34の面積から仮想矩形27の面積を差し引いて算出された点描部で示される隙間の面積は407mm
2であった。
【0032】
図6(b)に示されるように、本実施形態の大径ドリルビットに対応して直径30.0mmの大円25が描かれた。大径ドリルビットの径は対角線33.0mmよりも短く長辺(=25.7mm)よりも大きく設定された。大円25に重ねて4つの直径10mmの小円26a、26b、26c、26dが描かれた。小円26a、26b、26c、26dは、大円25の外側にはみ出る断面23の頂点領域32を個別に包含した。小円26a、26b、26c、26dの中心Cdは断面23の対角線28上で大円25の中心から等距離に配置された。こうしてカメラユニット16の角と開口19の縁との間で干渉は回避された。大円25と小円26a、26b、26c、26dで形成された開口19の面積から仮想矩形27の面積を差し引いて算出される点描部で示される隙間の面積は202mm
2であった。開口面積は2分の1以下に減少したことが確認された。
【0033】
図6(c)に示されるように、前述の大径ドリルビットより直径が小さく、小経ドリルビットより直径が大きい中経ドリルビットで4つの中円35が描かれた。中円35の直径は20.0mmに設定された。中円35は相互に部分的に重なりながら、カメラユニット16の断面23を包含した。4つの中円35で形成された開口19の面積から仮想矩形27の面積を差し引いて算出された点描部で示される隙間の面積は409mm
2であった。本実施形態に係る開口19の有効性が裏付けられた。
【0034】
図7に示されるように、開口19の形成にあたって小円26a、26b、26c、26dの中心Cdは仮想矩形27の対角線28上に配置されてもよい。こうして大円25に対して小円26a、26b、26c、26dの位置は一義的に決定されることができる。大円25および小円26a、26b、26c、26dの位置関係が明確化されることから、穿孔の再現性は確保される。こうして大円25および小円26a、26b、26c、26dの位置関係は予め明確に把握されることから、カメラユニット16は確実に開口19内に収まることができる。
【符号の説明】
【0035】
12 車体、15 外装パネル、16 カメラユニット、17 カバー、19 開口、25 大円、26a 小円、26b 小円、26c 小円、26d 小円、27 仮想矩形、28 対角線、29a 長辺、32 頂点領域、Cc 大円の中心、Cd 小円の中心。