(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グリース組成物の用途の一つとして、自動車用の軸受等の摺動部の潤滑用途があるが、このときの課題としてグリース音が挙げられる。
グリース音は、ボールと内輪または外輪とが接触する転がり軸受の接触部に増ちょう剤が入り込むことで発生する一種の異音である。この異音は、ボールの増ちょう剤への乗り上げによる振動音や、増ちょう剤とボールの接触音に起因するものであり、いずれも増ちょう剤とボール等との接触によって発生するものである。したがって、粒子径や機械的物性を指標にして増ちょう剤を選定してグリース組成物を調製すれば、グリース音を低減できるかもしれない。
【0005】
しかしながら、グリース組成物中の増ちょう剤はごく微小であるため、現在まで増ちょう剤の機械的物性を測定する方法は確立されていない。むろん、グリース音のような異音を低減するための具体的な機械的物性の目標値も提供されていない。
そこで、本発明の目的は、静音性に優れたグリース組成物、および当該グリース組成物に含有された増ちょう剤のヤング率を測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、基油と、ジウレア系の増ちょう剤とを少なくとも含有するグリース組成物であって、前記増ちょう剤は、
ジウレア化合物であり、前記増ちょう剤を構成するアミンが、炭素鎖長が22
の脂肪族アミンであり、下記条件(A)、(B)および(C)を含む条件によって得られた前記増ちょう剤のヤング率が、900MPa以下である、グリース組成物である。
(A)前記グリース組成物から前記増ちょう剤(21)を抽出した後、前記抽出した増ちょう剤を型枠(20)内に載置してから、前記型枠内に樹脂(22)を載置して成形し、前記樹脂の表面(24)に前記増ちょう剤を固定する。
【0007】
(B)前記樹脂の表面を観察して、前記増ちょう剤が分布する平坦な領域(R1)を特定する。
(C)負荷を5000μN以下とする条件でナノインデンター測定法を用いて前記平坦な領域内において前記増ちょう剤が分布する複数の箇所(26)のそれぞれで前記増ちょう剤のヤング率を測定し、前記測定したヤング率の平均値を求める。
【0008】
請求項2に記載の発明は、基油と、ジウレア系の増ちょう剤とを少なくとも含有するグリース組成物であって、前記増ちょう剤は、
ジウレア化合物であり、前記増ちょう剤を構成するアミンが、炭素鎖長が22
の脂肪族アミンであり、下記条件(A)、(B)および(C)を含む条件によって得られた前記増ちょう剤のヤング率が、2000MPa以下である、グリース組成物である。
(A)前記グリース組成物から前記増ちょう剤(31)を抽出した後、前記抽出した増ちょう剤を圧縮することによって固める。
【0009】
(B)前記固めた増ちょう剤の表面(34)を観察して、平坦な領域(R2)を特定する。
(C)負荷を5000μN以下とする条件でナノインデンター測定法を用いて前記平坦な領域内の複数の箇所(36)のそれぞれで前記増ちょう剤のヤング率を測定し、前記測定したヤング率の平均値を求める。
【0010】
請求項3
に記載の発明は、前記基油は、合成炭化水素基油であり、前
記増ちょう剤が5質量%〜30質量%の割合を占める、請求項1または2に記載のグリース組成物である
。
【0011】
請求項
4に記載の発明は、グリース組成物に含有されたジウレア系の増ちょう剤のヤング率を測定する方法であって、前記グリース組成物から前記増ちょう剤(21)を抽出した後、前記増ちょう剤を型枠(20)内に載置してから、前記型枠内に樹脂(22)を載置して成形し、前記樹脂の表面(24)に前記増ちょう剤を固定する工程と、前記樹脂の表面を観察して、前記増ちょう剤が分布する平坦な領域(R1)を特定する工程と、負荷を5000μN以下とする条件でナノインデンター測定法を用いて前記平坦な領域内において前記増ちょう剤が分布する複数の箇所(26)のそれぞれで前記増ちょう剤のヤング率を測定し、前記測定したヤング率の平均値を求める工程とを含む、方法である。
【0012】
請求項
5に記載の発明は、グリース組成物に含有されたジウレア系の増ちょう剤のヤング率を測定する方法であって、前記グリース組成物から前記増ちょう剤(31)を抽出した後、前記抽出した増ちょう剤を圧縮することによって固める工程と、前記固めた増ちょう剤の表面(34)を観察して、平坦な領域(R2)を特定する工程と、負荷を5000μN以下とする条件でナノインデンター測定法を用いて前記平坦な領域内の複数の箇所(36)のそれぞれで前記増ちょう剤のヤング率を測定し、前記測定したヤング率の平均値を求める工程とを含む、方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のグリース組成物によれば、上記(A)、(B)および(C)の条件で増ちょう剤のヤング率を測定することで、増ちょう剤のヤング率の値を確認することができる。そのため、増ちょう剤のヤング率をグリース音の抑制に適した値(例えば900MPa以下または2000MPa以下)にしたグリース組成物を調製することができる。これにより、静音性に優れたグリース組成物を提供することができる。
【0014】
また、本発明の増ちょう剤のヤング率を測定する方法によれば、グリース組成物に含有された増ちょう剤のヤング率を容易に測定する手法を確立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る転がり軸受1を示す断面図である。
転がり軸受1は、互いの間に環状の領域2を区画する一対の軌道部材としての内輪3および外輪4と、領域2に配置され内輪3および外輪4に対して転動する複数の転動体としてのボール5と、領域2に配置され、各ボール5を保持する保持器6と、領域2に充填されたグリースGと、外輪4に固定されて内輪3と摺接する一対の環状のシール部材7,8とを備えている。
【0017】
各シール部材7,8は、環状の芯金9,9と、この芯金9,9に焼き付けられた環状のゴム体10,10とを有している。各シール部材7,8は、その外周部が外輪4の両端面に形成した溝部11,11に嵌められて固定されており、内周部が内輪3の両端面に形成した溝部12,12に嵌められて固定されている。
グリースGは、両輪3,4間に一対のシール部材7,8で区画された領域2内に略一杯となるように封入されている。
【0018】
本実施形態に使用されるグリースGを構成するグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを少なくとも含有する。
使用される基油としては、例えば、合成油、鉱油が使用されるが、好ましくは、合成油が使用される。合成油であれば、不純物が混入していないか、混入していても少ないため、グリース組成物の潤滑性能を向上させることができる。また、分子量や分子構造に応じて、基油の動粘度や流動点を広い範囲で選択することができる。
【0019】
合成油としては、例えば、合成炭化水素油、エステル油、シリコーン油、フッ素油、フェニルエーテル油、ポリグリコール油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油、ビフェニル油、ジフェニルアルカン油、ジ(アルキルフェニル)アルカン油、ポリグリコール油、ポリフェニルエーテル油、パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等のフッ素化合物等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、合成炭化水素油が使用される。
【0020】
合成炭化水素油として、さらに具体的には、エチレン、プロピレン、ブテンおよびこれらの誘導体などを原料として製造されたα−オレフィンを、単独または2種以上混合して重合したものが挙げられる。好ましくは、1−デセンや1−ドデセンのオリゴマーであるポリ−α−オレフィン(PAO)が使用される。ポリ−α−オレフィンとしては、PAO2、PAO6、PAO10等が挙げられ、特に好ましくは、PAO6が使用される。
【0021】
鉱油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、中間基系鉱油等が挙げられる。
次に、このようなグリース組成物に含有された増ちょう剤のヤング率を測定する一の方法Aについて説明する。
図2は、増ちょう剤のヤング率を測定する一の方法Aの概略図である。
図2(a)は、この方法の一工程を示した図であり、
図2(b)は、
図2(a)の次の工程を示した図であり、
図2(c)は、
図2(b)の次の工程を示した図である。
【0022】
まず、図示しないが、グリース組成物をろ過して増ちょう剤を抽出する。
次に、グリース組成物から抽出した増ちょう剤からなる複数の粒子群21を、一端に開口が設けられた型枠20内に載置する。
次に、
図2(a)に示すように、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性を有する樹脂22を型枠20に載置し、加熱して成形する。これにより、樹脂22が型枠20内で成形されるので、樹脂22の表面24に複数の粒子群21が固定される。
【0023】
次に、
図2(b)に示すように、型枠20内から取り出した樹脂22の表面24を拡大鏡25で観察して、増ちょう剤が分布する平坦な領域R1を特定する。なお、領域R1の算術平均粗さ(Ra)は、Ra=100nm以下が好ましい。
次に、
図2(c)に示すように、負荷を5000μN以下とする条件で、ナノインデンター測定法を行う。ナノインデンター測定法は、負荷を制御して圧子27の押し込み深さを測定する方法であり、負荷と押し込み深さとの関係から増ちょう剤のヤング率を算出する方法である。
【0024】
ナノインデンター測定法を用いて平坦な領域R1内において増ちょう剤が分布する複数の箇所26のそれぞれで増ちょう剤のヤング率を測定し、複数の箇所26で測定したヤング率の平均値を求める。
ここで、
図2(b)に示した平坦な領域R1の拡大図を参照して、複数の箇所26は、例えば4箇所である。複数の箇所26は、4〜6箇所設定されることが好ましい。複数の箇所26は、増ちょう剤が分布する部分に設定されていればよく、同一の粒子群21内に設定されていてもよいし、異なる粒子群21に設定されていてもよい。
【0025】
以上により、方法Aによってグリース組成物に含有された増ちょう剤のヤング率を得ることができる。
次に、このようなグリース組成物に含有された増ちょう剤のヤング率を測定する他の方法Bについて説明する。
図3は、増ちょう剤のヤング率を測定する別の方法Bの概略図である。
図3(a)は、この方法の一工程を示した図であり、
図3(b)は、
図3(a)の次の工程を示した図であり、
図3(c)は、
図3(b)の次の工程を示した図である。
【0026】
まず、図示しないが、グリース組成物をろ過して増ちょう剤を抽出する。
次に、
図3(a)に示すように、グリース組成物から抽出した増ちょう剤からなる複数の粒子群31を、アルミ製のケース等の一端に開口が設けられた型枠30内に配置する。
次に、型枠30内に配置した増ちょう剤の粒子群31を型枠30内で圧縮することによって固める。これにより、増ちょう剤の塊33(
図3(b)参照)が形成される。
【0027】
次に、
図3(b)に示すように、型枠30内で増ちょう剤の塊33の表面34を拡大鏡25で観察して、平坦な領域R2を特定する。なお、領域R2の算術平均粗さ(Ra)は、Ra=100nm以下が好ましい。図示しないが、増ちょう剤の塊33を型枠30から外してから表面34を観察してもよい。
次に、
図3(c)に示すように、負荷を5000μN以下とする条件で、ナノインデンター測定法を用いて平坦な領域R2内の複数の箇所36のそれぞれで増ちょう剤のヤング率を測定し、複数の箇所36において測定したヤング率の平均値を求める。ここで、
図3(b)に示した平坦な領域R2の拡大図を参照して、複数の箇所36は、例えば4箇所である。複数の箇所36は、4〜6箇所設定されることが好ましい。
【0028】
以上により、方法Aと同様に、方法Bによってもグリース組成物に含有された増ちょう剤のヤング率を得ることができる。
方法Aまたは方法Bによって得られた増ちょう剤のヤング率について説明する。方法Aによって得られた増ちょう剤のヤング率は、例えば900MPa以下である。方法Bによって得られた増ちょう剤のヤング率は、例えば2000MPa以下である。これらの条件を満たす増ちょう剤として、好ましくは、ウレア系化合物が使用される。ウレア系増ちょう剤としては、例えば、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物(ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物を除く)等のウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン等のウレタン化合物またはこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、ジウレア化合物が使用される。
【0029】
ウレア系増ちょう剤を構成するアミンとしては、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン等が使用される。これらのうち、好ましくは、脂肪族アミンが使用される。脂肪族アミンとしては、炭素鎖長が8〜22のものが使用され、好ましくは、炭素鎖長が18〜22のものが使用される。これらのうち、さらに好ましくは、炭素鎖長が22のものが使用される。
【0030】
ジウレア系の増ちょう剤としては、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン等とジイソシアネート化合物とを反応させて得られるジウレア化合物が使用される。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、飽和および/または不飽和の直鎖状、または分岐鎖の炭化水素基を有するジイソシアネートが挙げられ、具体的には、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。
【0031】
また、脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
また、芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。ジウレア系の増ちょう剤としては、これらのジイソシアネート化合物の混合物を使用してもよい。
【0032】
そして、アミンとジイソシアネート化合物とは、種々の方法と条件下で反応させることができる。増ちょう剤の均一分散性が高いジウレア化合物が得られることから、基油中で反応させることが好ましい。また、反応は、アミンを溶解した基油中に、ジイソシアネート化合物を溶解した基油を添加して行ってもよいし、ジイソシアネート化合物を溶解した基油中に、アミンを溶解した基油を添加して行ってもよい。これらの反応における温度および時間は、特に制限されず、通常のこの種の反応と同様でよい。
【0033】
反応温度は、アミンおよびジイソシアネートの溶解性、揮発性の点から、60℃〜170℃が好ましい。反応時間は、アミンとジイソシアネートの反応を完結させるという点と製造時間短縮による効率化の点とから0.5時間〜2.0時間が好ましい。
また、増ちょう剤の配合量は、グリース組成物全量に対して、好ましくは、5質量%〜30質量%である。さらに好ましくは、増ちょう剤の配合量は、グリース組成物全量に対して、10質量%〜20質量%である。
【0034】
また、グリース組成物には、基油および増ちょう剤の他、添加剤を混合してもよい。添加剤としては、例えば、極圧剤、油性剤、防錆剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、染料、色相安定剤、増粘剤、構造安定剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤等の各種添加剤が挙げられる。
本発明のグリース組成物によれば、方法Aまたは方法Bで増ちょう剤のヤング率を測定することで、増ちょう剤のヤング率の値を確認することができる。そのため、増ちょう剤のヤング率をグリース音の抑制に適した値(例えば900MPa以下または2000MPa以下)にしたグリース組成物を調製することができる。これにより、静音性に優れたグリース組成物を提供することができる。
【0035】
また、本発明の増ちょう剤のヤング率を測定する方法によれば、グリース組成物に含有された増ちょう剤のヤング率を容易に測定する手法を確立することができる。
なお、本発明は、上記の実施形態に制限されることなく、他の形態で実施することもできる。
例えば、上記の実施形態では、(複列)玉軸受によって構成された転がり軸受1にグリースGが封入された例を説明したが、本発明のグリース組成物からなるグリースが封入される軸受は、転動体として玉以外のものが使用された針軸受、ころ軸受等、他の転がり軸受であってもよい。
【0036】
また、方法Aおよび方法Bによりヤング率が測定された増ちょう剤を含有するグリース組成物は、自動車用以外の転がり軸受や、転がり軸受以外の互いに摺動する部分を有する機器等に用いることができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって制限されるものではない。
(実施例1および実施例2)
実施例1は、本発明の方法Aに係る実施例であり、実施例2は、本発明の方法Bに係る実施例である。
【0038】
<試料の準備>
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示すように、異なる3種類のアミンと同一のイソシアネートとから異なる3種類の増ちょう剤を含有するグリース組成物を準備した。脂肪族アミンを用いた増ちょう剤に関しては、炭素鎖長が18の脂肪族アミンと炭素鎖長が22の脂肪族アミンとを準備した。また、増ちょう剤の粒子の径の大きさによる影響を抑えるため、各増ちょう剤の粒子の径を同程度にした。
【0041】
また、実施例1では、リファインテック(株)製のマイクロプレスを用い、130℃、1.5MPaの条件で15分間圧縮することでフェノール樹脂に増ちょう剤を固定した。一方、実施例2では、日本分光(株)製ミニプレスMP−1を用いて荷重2kgで増ちょう剤を1分間圧縮し、この圧縮を2回行うことで増ちょう剤を固めた。
<増ちょう剤のヤング率の測定>
【0042】
【表2】
【0043】
準備した試料について、表2に示す条件で軸受の異音の測定と増ちょう剤のヤング率の測定とを行った。軸受としては、冠型樹脂保持器を有する非接触シール付の深溝玉軸受6202を用いた。軸受の異音を表す指標として、(株)菅原研究所製ADM−1−11237を用いて振動の際の重力加速度を測定した。増ちょう剤のヤング率は、ヒストロン社製TI−750インデンテーションシステムを用いてナノインデンター測定を行うことによって得た。
【0044】
図4は、実施例1における増ちょう剤のヤング率と、軸受の振動の重力加速度との関係を示したグラフである。
図5は、実施例2における増ちょう剤のヤング率と、軸受の振動の重力加速度との関係を示したグラフである。
図4および
図5を参照して、実施例1および2のいずれにおいても、増ちょう剤のヤング率と、軸受の振動の際の重力加速度、すなわち軸受の異音との間に相関関係が得られた。詳しくは、増ちょう剤のヤング率が高くなれば軸受の異音が大きくなり、増ちょう剤のヤング率が低くなれば軸受の異音が小さくなる。
【0045】
以上の結果、ヤング率が低い、すなわち変形しやすい増ちょう剤を用いることで異音の発生を抑制できることがわかった。
また、脂環式アミンを含む増ちょう剤の方が芳香族アミンを含む増ちょう剤よりもヤング率が低く、脂肪族アミンを含む増ちょう剤の方が脂環式アミンを含む増ちょう剤よりもヤング率が低いという結果が得られた。また、炭素鎖長が22の脂肪族アミンを含む増ちょう剤の方が、炭素鎖長が18の脂肪族アミンを含む増ちょう剤よりもヤング率が低いという結果が得られた。
【0046】
以上により、本発明の方法によって増ちょう剤のヤング率が得られることが認められ、本発明のグリース組成物が、静音性に優れていることが認められた。
また、実施例1の結果は、実施例2の結果よりも測定毎のヤング率の変動が低いため、実施例1に係る方法Aは、実施例2に係る方法Bよりも増ちょう剤のヤング率を精度良く測定できることがわかった。