(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525240
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】光電気混載基板およびその製法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/122 20060101AFI20190527BHJP
G02B 6/13 20060101ALI20190527BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
G02B6/122
G02B6/13
H05K1/02 T
H05K1/02 R
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-217133(P2014-217133)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-85315(P2016-85315A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】辻田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田中 直幸
【審査官】
奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−294857(JP,A)
【文献】
特開2008−158221(JP,A)
【文献】
特開2012−163649(JP,A)
【文献】
特開2010−128200(JP,A)
【文献】
特開2009−031582(JP,A)
【文献】
特開2007−241190(JP,A)
【文献】
特開2015−087475(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0034497(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12− 6/14
H05K 1/00− 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の表面に電気配線が形成された電気回路基板と、上記電気回路基板の裏面側に設けられる光導波路とを備えた、長手方向に延びる光電気混載基板であって、上記光電気混載基板の、長手方向片端面が、この光電気混載基板を他部材と光結合させるための接続用端面になっており、上記絶縁層表面の接続用端面の近傍に、絶縁層表面の電気配線と同一基準で位置決めされた接続用端面形成用のアライメントマークが、上記接続用端面の端縁部に沿った配置で設けられているとともに、上記絶縁層の、電気配線およびアライメントマークが形成された絶縁層表面が、外側から直接視認できる配置になっており、上記接続用端面形成用のアライメントマークを基準として、このアライメントマークから所定距離だけ離れた位置に形成された切断面によって、上記接続用端面が形成されていることを特徴とする光電気混載基板。
【請求項2】
上記接続用端面形成用のアライメントマークが、上記電気配線の形成材料と同一材料によって形成されている請求項1記載の光電気混載基板。
【請求項3】
上記絶縁層が、ポリイミド系樹脂によって形成されている請求項1または2記載の光電気混載基板。
【請求項4】
絶縁層の表面に電気配線が形成された長手方向に延びる、予定寸法より長めの電気回路基板を準備する工程と、この電気回路基板の裏面側に光導波路を形成し、予定寸法より長めの、長手方向に延びる光電気混載基板中間品を得る工程と、上記光電気混載基板中間品の長手方向片端部の、予定寸法より長い部分を切断し、その切断面を、この光電気混載基板を他部材と光結合させるための接続用端面とすることにより、光電気混載基板を得る工程とを備えた光電気混載基板の製法であって、上記電気回路基板を準備する工程において、上記絶縁層表面の切断予定部の近傍に、上記絶縁層表面の電気配線と同一基準で位置決めされた接続用端面形成用のアライメントマークを、上記切断予定部に沿った配置で形成するとともに、上記電気配線および接続用端面形成用のアライメントマークが形成された絶縁層表面を、外側から直接視認できるよう配置し、上記光電気混載基板を切断して接続用端面を形成する際、上記接続用端面形成用のアライメントマークを基準として、このアライメントマークから所定距離だけ離れた位置を切断することにより、上記接続用端面を形成するようにしたことを特徴とする光電気混載基板の製法。
【請求項5】
上記電気回路基板を準備する工程において、上記絶縁層表面に電気配線を形成する際、その電気配線の形成と同時に、上記切断予定部の近傍に、上記電気配線の形成材料と同一材料を用いて上記接続用端面形成用のアライメントマークを形成するようにした請求項4記載の光電気混載基板の製法。
【請求項6】
上記絶縁層がポリイミド系樹脂によって形成されたものを用いる請求項4または5記載の光電気混載基板の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路基板と光導波路とが積層された光電気混載基板およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器等では、伝送情報量の増加に伴い、電気配線に加えて光配線が採用されており、電気信号と光信号を同時に伝送することのできる光電気混載基板が多く用いられている。このような光電気混載基板としては、例えば、
図7に示すように、ポリイミド等からなる絶縁層1を基板とし、その表面に、導電パターンからなる電気配線2を設けて電気回路基板Eとし、その裏面側に、上記電気配線2の所定位置に実装される光素子と光結合される光導波路Wを設けた構造のものが知られている。なお、上記電気回路基板Eの表面はカバーレイ3によって絶縁保護されている。また、光導波路Wは、アンダークラッド層6と、光の行路となるコア7と、オーバークラッド層8の三層によって構成されている。
【0003】
上記光電気混載基板10は、それ自体が電子機器に搭載される他、その先端に光電気接続用のフェルールを取り付けたものが、複数のボード間やボード上のチップ間を接続する接続用コネクタとして賞用されている。
【0004】
上記光電気混載基板10をフェルール等の他の部材に取り付ける場合、光損失が生じないよう相手に対して正しく位置決めすることが重要となる。そのためには、相手部材に接合される光電気混載基板10の外形と光の行路となるコア7の位置とを正確に設定する必要があることから、光電気混載基板10の外形加工、とりわけ相手部材と接合される端面の加工には、高い寸法精度が要求される。
【0005】
ところで、光電気混載基板10に限らず、光導波路W単体においても、これを光コネクタ等として用いる場合には、上記と同様の理由から、その外形加工には高い精度が要求される。この要求に応えるため、例えば、
図8に示すように、アンダークラッド層6を形成した後、そのアンダークラッド層6の表面(図では下側)にコア7を形成する際、そのコア材料を用いて、外形加工用のアライメントマーク11を同時に形成し、そのアライメントマーク11を残して、その上(図では下側)をオーバークラッド層8で被覆するようにした光導波路Wの製法が提案されている(特許文献1を参照)。
【0006】
上記の製法によれば、光の行路となるコア7を形成する際の基準と同一基準でアライメントマーク11が形成されるため、コア7に対しアライメントマーク11を正確に位置決めすることができる。そして、そのアライメントマーク11を、
図8において矢印で示すように、透明なアンダークラッド層6を透かして視認することができるため、これを基準として、光導波路Wの外形加工を高い精度で行うことができるという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−155215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、コア7の形成と同時に、外形加工用のアライメントマーク11を形成する方法を、光電気混載基板10の製法においても採用することが検討されている。しかしながら、光電気混載基板10において、電気回路基板Eの絶縁層1(
図7を参照)は、通常、黄色や褐色の色を有するポリイミドによって形成されているため、その色の付いた絶縁層1を通して、裏面側のアライメントマーク11を視認することは容易でなく、これを基準にして正確な外形加工を行うことは難しいことが判明した。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、外形加工用のアライメントマークが、正確かつ視認しやすい配置で形成された光電気混載基板およびその製法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、絶縁層の表面に電気配線が形成された電気回路基板と、上記電気回路基板の裏面側に設けられる光導波路とを備え、外形加工によって所定形状が付与された光電気混載基板であって、上記絶縁層表面の外形加工部の近傍に、絶縁層表面の電気配線と同一基準で位置決めされた外形加工用のアライメントマークが設けられており、上記外形加工用のアライメントマークを基準とした外形加工によって所定形状が付与されている光電気混載基板を第1の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記外形加工用のアライメントマークが、上記電気配線の形成材料と同一材料によって形成されている光電気混載基板を第2の要旨とし、それらのなかでも特に、上記絶縁層が、ポリイミド系樹脂によって形成されている光電気混載基板を第3の要旨とする。
【0012】
また、本発明は、絶縁層の表面に電気配線が形成された電気回路基板を準備する工程と、この電気回路基板の裏面側に光導波路を形成して光電気混載基板を得る工程と、上記光電気混載基板に外形加工を施して所定形状に仕上げる工程とを備えた光電気混載基板の製法であって、上記電気回路基板を準備する工程において、絶縁層表面の外形加工予定部の近傍に、絶縁層表面の電気配線と同一基準で位置決めされた外形加工用のアライメントマークを形成しておき、上記光電気混載基板に外形加工を施す際、上記外形加工用のアライメントマークを基準として外形加工を行うようにした光電気混載基板の製法を第4の要旨とする。
【0013】
そして、本発明は、そのなかでも、特に、上記電気回路基板を準備する工程において、絶縁層表面に電気配線を形成する際、その電気配線の形成と同時に、外形加工予定部の近傍に、上記電気配線の形成材料と同一材料を用いて外形加工用のアライメントマークを形成するようにした光電気混載基板の製法を第5の要旨とし、それらのなかでも、特に、上記絶縁層がポリイミド系樹脂によって形成されたものを用いる光電気混載基板の製法を第6の要旨とする。
【0014】
なお、本発明において、「外形加工」とは、光電気混載基板を所定形状に仕上げるための加工であって、レーザ等による切断加工の他、研磨や切削による各種の外形加工を含む趣旨である。
【発明の効果】
【0015】
すなわち、本発明者らは、光電気混載基板の外形加工の加工精度を向上させるには、色のついた絶縁層の裏面側ではなく、その表面側にアライメントマークを設けて視認性を高める方がよい、との着想を得て鋭意研究を重ねた。その結果、従来のように、絶縁層(基板)裏面側に、コアパターンと同時にアライメントマークを形成するのではなく、絶縁層表面側に、光導波路との位置合わせのために高い精度で配置される電気配線パタートと同一基準でアライメントマークを形成すれば、アライメントマークとしての位置精度に優れたものが得られ、しかもこのアライメントマークは絶縁層の表面側にあるため、直接見ることができ、良好な視認性を有することを見いだし、本発明に到達した。
【0016】
本発明の光電気混載基板によれば、電気配線と同一基準で位置決めされた、視認性の良好なアライメントマークを基準として、外形加工がなされており、上記電気配線は、光導波路のコアパターンに対し高い精度で位置決めされているため、この外形加工によって付与された形状も、光導波路のコアパターンに対し高い精度で位置決めされた正確な形状となる。したがって、この光電気混載基板をフェルール等と嵌合して用いる場合や、特定の部位に取り付ける場合等に、嵌合不良や接続不良といった不具合を生じることがなく、良好に使用することができる。
【0017】
また、この光電気混載基板は、その表面の、外形加工部の近傍、すなわち基板の端の方にアライメントマークを有することから、このアライメントマークを基準として、さらなる加工を行ったり、製品の品質検査を行ったりすることができるという利点を有している。
【0018】
そして、本発明の光電気混載基板のなかでも、特に、上記外形加工用のアライメントマークが、上記電気配線の形成材料とともに同一材料によって形成されているものは、電気配線と同時にアライメントマークを形成して得ることができるため、外形の加工精度をより一層高めることができ、好適である。
【0019】
さらに、本発明の光電気混載基板のなかでも、特に、上記絶縁層が、ポリイミド系樹脂によって形成されているものは、黄色や褐色の色のついた絶縁層を通してアライメントマークを見ることなく得ることができるため、とりわけ実用的効果の大きいものとなる。
【0020】
また、本発明の光電気混載基板の製法によれば、絶縁層の表面に、電気配線と同一基準でアライメントマークを正確に配置することができるため、この電気配線に対し高い精度で配置される光導波路のコアパターンに対しても、正確な位置関係をとることができる。そして、このアライメントマークを基準として、外形加工を施せば、コアパターンに対して高い精度で外形加工を行うことができる。しかも、上記アライメントマークが光電気混載基板の表面側に配置されるため、これを直接カメラ等で視認ことができ、鮮明な画像として加工時の基準とすることができる。
【0021】
そして、本発明のなかでも、特に、上記電気回路基板を準備する工程において、絶縁層表面に電気配線を形成する際、その電気配線の形成と同時に、外形加工予定部の近傍に、上記電気配線の形成材料と同一材料を用いて外形加工用のアライメントマークを形成するようにしたものは、共通する単一の基準で、電気配線とアライメントマークとを形成することができるため、より正確にアライメントマークの位置決めを行うことができ、一層高い精度で外形加工を行うことができるという利点を有する。そして、アライメントマークを単独で形成する必要がないため、時間的にもコスト的にも有利である。
【0022】
また、本発明のなかでも、特に、上記絶縁層がポリイミド系樹脂によって形成されたものを用いるようにしたものは、絶縁層が着色していても、それに関係なく、外形加工用のアライメントマークを視認することができるため、従来の製法に比べて優位性が大きいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(a)は本発明の光電気混載基板の一実施の形態を模式的に示す縦断面図、(b)はその部分的な平面図である。
【
図2】(a)〜(d)は、いずれも上記光電気混載基板の製法における電気回路基板の作製工程を示す説明図である。
【
図3】(a)〜(d)は、いずれも上記光電気混載基板の製法における光導波路の作製工程を示す説明図である。
【
図4】上記光電気混載基板の製法における外形加工工程を示す説明図である。
【
図5】本発明の他の例における外形加工工程の説明図である。
【
図6】(a)〜(e)は、いずれも本発明に用いられるアライメントマークの変形例の説明図である。
【
図8】従来の光導波路におけるアライメントマークの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限るものではない。
【0025】
図1(a)は、本発明の一実施の形態によって得られる光電気混載基板の一例を模式的に示す縦断面図であり、
図1(b)は、その部分的な平面図である。すなわち、この光電気混載基板10は、絶縁層1の表面に電気配線2が設けられた電気回路基板Eと、上記絶縁層1の裏面側に設けられた光導波路Wとを備えている。
【0026】
上記電気回路基板Eは、ポリイミド等からなる絶縁層1の表面に、光素子実装用のパッド2aや、アース用電極2b、その他各種の素子実装用のパッド、コネクタ実装用のパッド等(図示せず)を含む電気配線2が形成されている。また、同じく上記絶縁層1の表面に、上記電気配線2の形成材料と同一材料からなるアライメントマーク20が形成されている。このアライメントマーク20は、
図1(b)に示すように、光電気混載基板10の長手方向片側の縁部近傍に、長手方向を横切るように帯状に設けられている。
【0027】
上記アライメントマーク20は、後述するように、この光電気混載基板10を製造する過程において、この光電気混載基板10を、要求される所定形状に仕上げるための外形加工を行う際、その加工位置を決めるための基準として用いられるものであり、アライメントマーク20をこの配置で設けることが、本発明の大きな特徴である。
【0028】
そして、上記アライメントマーク20と、パッド2a等を除く電気配線2が、ポリイミド等からなるカバーレイ3によって絶縁保護された構成になっている。なお、カバーレイ3から露呈した、アライメントマーク20やパッド2a等の表面は、金やニッケル等からなる電解めっき層4で被覆保護されている。
【0029】
一方、上記絶縁層1の裏面側に設けられた光導波路Wは、アンダークラッド層6と、その表面(
図1においては下面)に所定パターンで形成されたコア7と、このコア7を被覆した状態で上記アンダークラッド層6の表面と一体化するオーバークラッド層8とで構成されている。なお、9は、この光電気混載基板10を補強するために、絶縁層1の裏面に設けられる金属層で、フレキシブル性が要求される部分を除くところに、パターン形成されている。そして、この金属層9には、コア7と光素子との間の光路を確保するための貫通孔5が形成されており、この貫通孔5内にも、上記アンダークラッド層6が入り込んでいる。ただし、上記金属層9は、必要に応じて形成されるものであって、必ずしも必要ではない。
【0030】
また、上記電気回路基板Eの光素子実装用のパッド2aに対応するコア7の部分が、コア7の延びる方向に対して45°の傾斜面に形成されている。この傾斜面は、光の反射面7aになっており、コア7内を伝播されてきた光の向きを90°変えて光素子の受光部に入射させたり、逆に光素子の発光部から出射された光の向きを90°変えてコア7内に入射させたりする役割を果たす。
【0031】
上記光電気混載基板10は、本発明の製法によって、例えば以下のようにして得ることができる(
図2〜
図4を参照)。
【0032】
まず、
図2(a)に示すように、平板状の金属層9を準備し、その表面に、ポリイミド等からなる感光性絶縁樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法により、所定パターンの絶縁層1を形成する。なお、この例では、金属層9に接触するアース用電極2b[
図1(a)を参照]を形成するために、上記金属層9の表面を露呈させる孔部1aを形成する。上記絶縁層1の厚みは、例えば3〜50μmの範囲内に設定される。また、上記金属層9の形成材料としては、ステンレス、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、白金、金等があげられ、なかでも、剛性等の観点から、ステンレスが好ましい。また、上記金属層9の厚みは、その材質にもよるが、ステンレスを用いた場合、例えば10〜70μmの範囲内に設定される。
【0033】
つぎに、
図2(b)に示すように、上記絶縁層1の表面に、電気配線2(光素子実装用のパッド2aやアース用電極2b、他のパッド等を含む、以下同じ)と、外形加工用のアライメントマーク20とを、例えばセミアディティブ法により、同時に形成する。この方法は、まず、上記絶縁層1の表面に、スパッタリングまたは無電解めっき等により、銅やクロム等からなる金属膜(図示せず)を形成する。この金属膜は、後の電解めっきを行う際のシード層(電解めっき層形成の素地となる層)となる。そして、上記金属層9、絶縁層1およびシード層からなる積層体の両面に、感光性レジスト(図示せず)をラミネートした後、上記シード層が形成されている側の感光性レジストに、フォトリソグラフィ法により、上記電気配線2のパターンの孔部を形成し、その孔部の底に上記シード層の表面部分を露呈させる。つぎに、電解めっきにより、上記孔部の底に露呈した上記シード層の表面部分に、銅等からなる電解めっき層を積層形成する。そして、上記感光性レジストを水酸化ナトリウム水溶液等により剥離する。その後、上記電解めっき層が形成されていないシード層の部分をソフトエッチングにより除去する。残存したシード層と電解めっき層とからなる積層部分が、上記電気配線2とアライメントマーク20になる。
【0034】
つぎに、
図2(c)に示すように、光素子実装用のパッド2aや他のパッドと、アライメントマーク20とを除く電気配線2の部分に、ポリイミド等からなる感光性絶縁樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法により、カバーレイ3を形成する。
【0035】
そして、
図2(d)に示すように、光素子実装用のパッド2aや他のパッドと、アライメントマーク20の表面に電解めっき層4を形成する。このようにして、電気回路基板Eが形成される。
【0036】
つぎに、上記金属層9と電気回路基板Eとからなる積層体の両面に、感光性レジストをラミネートした後、上記金属層9の裏面側(電気回路基板Eと反対側の面側)の感光性レジストのうち、金属層9が不要な部分と光路用の貫通孔形成予定部に対応する部分に、フォトリソグラフィ法により、孔部を形成し、上記金属層9の裏面を部分的に露呈させる。
【0037】
そして、上記金属層9の露呈部分を、その金属層9の金属材料に応じたエッチング用水溶液(例えば、ステンレス層の場合は、塩化第2鉄水溶液)を用いてエッチングすることにより除去し、その除去跡から絶縁層1を露呈させた後、上記感光性レジストを水酸化ナトリウム水溶液等により剥離する。これにより、
図3(a)に示すように、補強が必要な領域のみに金属層9が形成され、光路用の貫通孔5も同時に形成される。
【0038】
つぎに、上記絶縁層1の裏面(金属層9が形成されている部分にあっては金属層9の裏面)に光導波路W〔
図1(a)を参照〕を形成するために、まず、
図3(b)に示すように、上記絶縁層1および金属層9の裏面(図において下面)に、アンダークラッド層6の形成材料である感光性樹脂を塗布した後、その塗布層を照射線により露光して硬化させて、アンダークラッド層6に形成する。このとき、上記アンダークラッド層6は、フォトリソグラフィ法によって、所定パターン状に形成することができる。そして、このアンダークラッド層6は、上記金属層9の光路用の貫通孔5に入り込んでこれを埋めた状態で形成される。上記アンダークラッド層6の厚み(絶縁層1の裏面からの厚み)は、通常、金属層9の厚みよりも厚く設定される。なお、光導波路Wを形成するための一連の作業は、上記金属層9が形成された絶縁層1の裏面を上に向けた状態で行われるが、図面では、そのままの状態で示している。
【0039】
つぎに、
図3(c)に示すように、上記アンダークラッド層6の表面(図では下面)に、フォトリソグラフィ法により、所定パターンのコア7を形成する。コア7の厚みは、例えば3〜100μmの範囲内に設定され、幅は、例えば3〜100μmの範囲内に設定される。上記コア7の形成材料としては、例えば、上記アンダークラッド層6と同様の感光性樹脂があげられ、上記アンダークラッド層6および後述するオーバークラッド層8の形成材料よりも屈折率が大きい材料が用いられる。この屈折率の調整は、例えば、アンダークラッド層6、コア7、オーバークラッド層8の各形成材料の種類の選択や組成比率を調整して行うことができる。
【0040】
つぎに、
図3(d)に示すように、上記コア7を被覆するように、アンダークラッド層6の表面(図では下面)に重ねて、フォトリソグラフィ法により、オーバークラッド層8を形成する。このようにして、光導波路Wが形成される。なお、上記オーバークラッド層8の厚み(アンダークラッド層6の表面からの厚み)は、例えば、上記コア7の厚み以上で、300μm以下に設定される。上記オーバークラッド層8の形成材料としては、例えば、上記アンダークラッド層6と同様の感光性樹脂があげられる。
【0041】
ちなみに、上記光導波路Wの形成材料の具体的な組成例を以下に示す。
<アンダークラッド層6、オーバークラッド層8の形成材料>
脂環骨格を含むエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、EHPE3150) 20重量部
液状長鎖二官能半脂肪族エポキシ樹脂(DIC社製、EXA−4816) 80重量部
光酸発生剤(ADEKA社製、SP170) 2重量部
乳酸エチル(武蔵野化学研究所社製) 40重量部
<コア7の形成材料>
o−クレゾールノボラックグリシジルエーテル(新日鐵住金化学社製、YDCN−700−10) 50重量部
ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(大阪ガスケミカル社製、オグゾールEG) 50重量部
光酸発生剤(ADEKA社製、SP170) 1重量部
乳酸エチル(武蔵野化学研究所社製) 50重量部
【0042】
そして、上記光導波路Wの所定部分に、レーザ加工や切削加工等により、コア7の延びる方向に対して45°傾斜した傾斜面を形成し、電気回路基板Eの表面側に実装される光素子との光結合のための反射面7a[
図1(a)を参照]とする。そして、電気回路基板Eの表面側に設けられた電気配線2のパッド2aに光素子を実装する等、必要な部材の取り付けを行う。
【0043】
このようにして、電気混載基板10(ただし、外形加工がなされていないもの)を得ることができる。そして、
図4に示すように、上記アライメントマーク20をアライメントカメラ等によって視認しながら、このアライメントマーク20から所定距離だけ離れた位置を切断位置として特定し、レーザ照射(例えはYAGレーザ)によってこの部分を切断する。このようにして、片方の端面にコア7が露出した所定長の光電気混載基板10を得ることができる。
【0044】
なお、光電気混載基板10の切り出しには、レーザ照射の他、ダイシングソー等、各種の切断手段を用いることができる。
【0045】
このようにして得られた光電気混載基板10(外形加工を施したもの)は、この光電気混載基板10の長手方向片端部の近傍に設けられた、電気配線2と同一基準で形成されたアライメントマーク20を基準として、その端面が高い寸法精度で切断加工されているため、全体の外形寸法も正確で、寸法のばらつきがない。したがって、これをフェルール等と嵌合して用いる場合や、特定の部位に取り付ける場合等に、嵌合不良や接続不良といった不具合を生じることがなく、良好に使用することができる。また、このアライメントマーク20を基準として、さらなる加工を行ったり、製品の品質検査を行ったりすることができる。
【0046】
しかも、上記光電気混載基板10では、外形加工用のアライメントマーク20が、外形加工のための加工線(この例では切断線)上ではなく、その加工線から離れた、加工線近傍に設けられているため、レーザ加工やダイシング加工において、このアライメントマーク20が加工に影響を及ぼすことがなく、良好な仕上がりが得られるという利点を有する。すなわち、加工線上に金属材料からなるアライメントマーク20を設けた場合、レーザ加工等では、アライメントマーク20がある部分とない部分とで加工速度が異なるため、その境界部分でがたつきが生じるおそれがある。また、ダイシング加工においても、アライメントマーク20がある部分とない部分とで硬さが異なるため、同様にがたつきが生じるおそれがある。さらに、研磨加工では、研磨によって生じる金属粉が端面を傷つけるおそれがある。そして、高い加工精度が要求される仕上がり面にこのようながたつきや傷があると、光損失の原因となる。したがって、上記の例のように、アライメントマーク20が、加工線上になく、その近傍のみに設けられていると、その位置精度が高いことと相俟って、優れた仕上がり品が得られるのである。
【0047】
なお、上記の例は、長手方向に長めに作製された光電気混載基板10の片端縁を切断して、適正な長さの光電気混載基板10に仕上げるようにしたものであるが、例えば、
図5に示すように、ロール トゥ ロール方式によって長尺状に作製された光電気混載基板の中間品10′から、所定長の光電気混載基板10を連続的に切り出す際、一点鎖線Pで示される切断位置を特定するための基準として、アライメントマーク20を用いることができる。上記アライメントマーク20を順次、アライメントカメラ等で確認しながら、適正な位置に位置決めして切断を行うことにより、ばらつきのない、適正な長さの光電気混載基板10を連続的に得ることができる。
【0048】
もちろん、端面の切断以外に、この光電気混載基板10を嵌合させたり取り付けたりする相手部材の形状に合わせて、光電気混載基板10の外形を所望の形状に加工する各種の外形加工(切削加工や研磨加工等を含む)を行う際に、その加工のための寸法基準として、上記アライメントマーク20を用いることが有効である。
【0049】
そして、上記アライメントマーク20の平面視形状は、
図1(b)に示すような1本の帯状に限るものではなく、例えば
図6(a)〜(d)に示すように、各種形状の複数のアライメントマーク20を、一点鎖線Pで示す切断位置の近傍に沿って並べるようにしてもよい。また、
図6(e)に示すように、切断位置を挟んで、抜き十字形状となる2個一組のアライメントマーク20を設けるようにしてもよい。同様に、一定領域を電気配線材料でベタに形成し、その内側を、円形や多角形の抜き形状にしてアライメントマーク20としてもよい。このように、いずれの場合も、前述の理由から、アライメントマーク20は、その切断位置P上にはなく、その近傍のみに配置されていることが望ましい。
【0050】
また、上記の例では、アライメントマーク20の視認性を高めるために、アライメントマーク20の上にカバーレイ3を設けずそのまま露呈させて、その表面を電解メッキ層4で被覆保護しているが、アライメントマーク20の色や形状、カバーレイ3の透明性によっては、アライメントマーク20を、カバーレイ3を通しても充分に視認できる場合がある。その場合は、他の電気配線2の部分と同様、アライメントマーク20の上もカバーレイ3で被覆するようにしても差し支えない。
【0051】
なお、光電気混載基板10において、電気配線2を形成する際に、電気配線2の形成材料を用いて、コア7に光の反射面7a(
図1を参照)を形成する際の位置決め用アライメントマークと、光素子の位置決め用アライメントマークとを同時に形成するか、両者を兼ねた単一のアライメントマークを同時に形成することができる(特願2013−224450を参照)。そこで、これらのアライメントマークとともに、上記外形加工用のアライメントマーク20を同時に形成すれば、電気配線2の形成と、各種アライメントマーク20等との形成を、単一の工程で、共通する単一の基準で行うことができるため、より互いの位置関係の精度の高い、高品質の光電気混載基板10を得ることができ、好適である。
【0052】
また、上記一連の例では、外形加工用のアライメントマーク20を、電気配線2と同時に形成しているが、本発明において、上記アライメントマーク20と電気配線2とは、必ずしも同時に形成する必要はない。場合によっては、同一の基準にもとづいて、まず、どちらか一方を形成し、つぎに他方を形成するようにしても差し支えない。ただし、先の例に示すように、両者を同時に形成する方が、互いの位置関係がより正確になり、好適である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、外形形状の寸法精度に優れ、他の部材との嵌合や所定位置への取り付け等において、不都合を生じることのない、安定した品質の光電気混載基板の提供に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
E 電気回路基板
W 光導波路
1 絶縁層
2 電気配線
10 光電気混載基板
20 アライメントマーク