【実施例】
【0020】
以下に、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。
【0021】
(アルカリ蓄電池の作成)
実施例及び比較例においてアルカリ蓄電池は、従来公知の方法で作成したベント形ニッケル・カドミウム蓄電池を使用した。まず、主としてニッケル粉末を焼結させた多孔質の集電体に、正極活物質として水酸化ニッケルを充填し化成した正極板と、負極活物質として水酸化カドミウムを充填し化成した負極板とを、多孔性樹脂のセパレータを介して交互に積層し、該正極板の集電部と該負極板の集電部とをそれぞれ極柱端子に溶接して極板群を得た。次いで該極板群を樹脂製の電槽内部に収納し、樹脂性の電槽蓋を施して前記極柱端子を挿通した状態で封止し、水酸化カリウム水溶液の電解液を該電槽蓋に穿設された注液孔から所望量注入した。続いて、蓄電池の内圧が急激に上昇した場合などに、係る内圧を安全に開放するための放圧弁を前記電槽蓋の注液孔に嵌合させ、蓄電池を気密に封止してアルカリ蓄電池を得た。
【0022】
(接着剤)
本発明の実施例及び比較例では、第一の接着剤及び第二の接着剤として、エマーソン&カミング社製のスタイキャスト(登録商標)の2850GT及び2651MMを使用した。どちらも2液混合方式のエポキシ樹脂であり、第一の接着剤7である2850GTは主剤72:硬化剤5の比率で混合して使用し、第二の接着剤8である2651MMは主剤323:硬化剤10の比率で混合して使用した。2850GTは混合時粘度が10,000mPa・s、熱伝導率が0.15W/m・Kであり、2651MMは混合時粘度が100mPa・s、熱伝導率が0.59W/m・Kである。
【0023】
(実施例1)
本発明の実施例における温度感知装置の封止構造を、
図3乃至
図7に示した下型9と上型10とからなる割型11を用いて作成した。まず接続板5の表面の貫通孔53の縁に沿って硬化前の第一の接着剤7を所定量塗布した状態で、温度感知装置1の下部円筒4を、該温度感知装置1の上部円筒2の下面から接続板5の表面までの隙間の高さが1mmとなる様に途中まで螺合した。この状態で、第一の接着剤7が前記隙間を空隙なく満たし、かつ温度感知装置1の上部円筒2の下面から2mm程度延出した状態となる様にした。
【0024】
更に、第一の接着剤7は接続板5の貫通孔53の縁丁度、もしくは該貫通孔53の側面にはみ出し付着させておくことで、温度感知装置1の下部円筒4を該貫通孔53に螺合した際に、
図2の拡大図に示した様に第一の接着剤7が接続板5の表面から貫通孔53の側面まで連続的に塗布された状態となるため、該接続板5の表面をはい上がった電解液が温度感知装置1の壁面に到達するまでの沿面距離を著しく増大させ、これにより該電解液が温度感知装置1の上部の接続端子3、3aに到達しこれを腐食させることを防ぎ、もって温度感知装置1の誤作動を防ぐ上でより望ましい効果を奏するものである。
【0025】
上記の様に接続板5及び温度感知装置1に第一の接着剤7を塗布後、硬化させた。
【0026】
続いて、第二の接着剤8の充填及び硬化の方法について説明する。
図3は外形直方体形状の下型9を示した平面図であり、
図4は該下型9のIV−IV’線断面側面図である。該下型9の載置上面には長辺に対し水平方向に接続板載置部91が形成されており、該接続板載置部91の深さは接続板5の厚みと等しく、また該接続板載置部91の長辺lの長さは接続板5の長辺の長さと等しく、つまり接続板5を載置した際に該接続板5と該接続板載置部91との間に空隙が生じない様に形成したものである。更に、該接続板載置部91に接続板5を載置した際に、該接続板5の貫通孔53と重なる位置には、該貫通孔53に嵌挿され該接続板5を固定するとともに上型10の嵌合孔101に嵌挿され、該上型10を固定するための嵌合用凸部92が突設されている。前記下型9の載置上面中央には、第二の接着剤8を充填し温度感知装置1及び接続板5を封止するための充填部93が形成されている。該充填部93の深さは、前記温度感知装置1を螺合した接続板5を接続板載置部91に載置した際に、該温度感知装置1の頂面から該充填部93の下面までの高さが、該温度感知装置1の接続端子3、3aに接続したリード線の端子部頂面から該充填部93の下面までの高さより3mm程度大きくなる様に形成した。なお符号94は充填部の壁面に貫設したリード線挿通孔である。
【0027】
図5は外形直方体形状の上型10を示した下面図であり、
図6は該上型10のVI−VI’線断面側面図である。該上型10には、前記下型9に設けた嵌合用凸部92を挿通するための嵌合孔101が2箇所設けられており、中央には下型9と上型10を突き合わせて割型11を形成した後に第二の接着剤を注入し、温度感知装置1の下部を被覆するための凹部を形成する平面矩形形状の注入孔102が穿設されている。該注入孔102は、
図6の断面側面図に示した様に、載置下面と載置上面とで開孔面積を異ならせ、該開孔の内部の下部の垂直な側面と上部の垂直な側面とが中央付近で傾斜した側面で互いに接続される様にした。
【0028】
該注入孔102をこの様な形状に形成したことで、本発明の温度感知装置1の封止構造に面取り加工を施す必要がなく、係る加工の際に加わる負荷等によって、前記封止構造が変形するなどして気密性を損なう心配もない。
【0029】
図7の様に、前記下型9の接続板載置部91に、温度感知装置1を螺合し第一の接着剤7を充填して硬化させた状態の接続板5を上部円筒2が下方に位置する様に裏返して載置し、更に前記上型10を該下型9に冠着して割型11を結合し、該上型10の注入孔102から硬化前の第二の接着剤8を注入し充填した。もし、充填した接着剤8に気泡が混じる場合は、真空状態にして脱気すれば良い。
【0030】
前記割型11に第二の接着剤8を充填し、これを硬化させて本発明の実施例1の温度感知装置の封止構造を得た。
【0031】
(比較例1)
図8に示した様に、温度感知装置1を接続板5に当接させた状態で、該温度感知装置1の頂面のみを第二の接着剤8で被覆したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の温度感知装置の封止構造を得た。
【0032】
(比較例2)
図9に示した様に、温度感知装置1の上部円筒2の下面から接続板5の表面までの隙間の高さが1mmとなる様に途中まで螺合した。この状態で、第二の接着剤8が前記隙間を空隙なく満たし、かつ温度感知装置1の上部円筒2の下面から2mm程度延出した状態となる様にしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の温度感知装置の封止構造を得た。
【0033】
(実施例、比較例の結果)
実施例1、比較例1、比較例2のそれぞれの温度感知装置の封止構造について、劣化を加速させるため電解液として用いた水酸化カリウム水溶液を霧吹きで満遍なく塗布した状態で、50℃に設定した恒温槽で30日間放置した後、温度感知装置の封止構造を解体し、該温度感知装置の端子部の腐食等から電解液の漏出による温度感知装置への影響について評価し、表1の結果を得た。ここで、該端子部の腐食が無い、もしくは電気的特性において有意な変化が見られない場合は、保護できたもの(○印)と判定した。一方、該端子部に腐食が見られた場合は、電解液や湿気等に対する気密性及び液密性が不十分である(×印)と判定した。
【0034】
該表1の通り、実施例1は温度感知装置の端子部には腐食が確認されず、本発明の温度感知装置の封止構造が良好な効果を奏することが確認された。一方、比較例1は、温度感知装置の端子部に腐食の痕跡が見られ、電解液の浸透耐性が不十分であったために、内部に侵入したものと考えられる。他方、比較例2は温度感知装置の端子部には腐食が確認されなかったものの、温度感知装置の側面の一部にわずかに電解液の進入によるものと推定される変色が見られ、実施例ほどの封止効果が得られなかったため、△印と判定した。
【0035】
(表1)