(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525283
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】生体分子抽出器及び生体分子抽出方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/28 20060101AFI20190527BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20190527BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20190527BHJP
C12M 3/08 20060101ALI20190527BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20190527BHJP
F04B 9/14 20060101ALN20190527BHJP
F04B 13/00 20060101ALN20190527BHJP
【FI】
C12M1/28
G01N1/00 101B
C12Q1/02
C12M3/08
!C12N15/09 Z
!F04B9/14 B
!F04B13/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-527936(P2016-527936)
(86)(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公表番号】特表2016-526893(P2016-526893A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】KR2014006515
(87)【国際公開番号】WO2015009085
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年5月10日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0084110
(32)【優先日】2013年7月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シム、ウ − ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユー − レ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ − ジョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウン − ジ
【審査官】
坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−150830(JP,A)
【文献】
特開平09−145710(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/024042(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0193926(US,A1)
【文献】
特表2013−519884(JP,A)
【文献】
特開2010−271259(JP,A)
【文献】
特開2004−051170(JP,A)
【文献】
特表2011−505011(JP,A)
【文献】
特表2002−532059(JP,A)
【文献】
特表2004−504330(JP,A)
【文献】
特表2010−534324(JP,A)
【文献】
特許第3914970(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/28
C12M 3/08
C12Q 1/02
G01N 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを採取したサンプルが固定される挿入部、
内部に溶解剤を収容し、前記挿入部が挿入されて前記採取したバイオマスから生体分子を抽出する本体部、及び、
前記挿入部または本体部に備える少なくとも1つの吐出部を備え、
前記挿入部は、サンプルが固定される少なくとも1つの固定部を備え、
前記固定部は、サンプルがテープで固定され、
前記固定部の接着性結合は、前記採取したサンプルに存在する接着性を利用して結合するか、または接着性物質が前記固定部に塗布されてサンプルの結合が行われることを特徴とする、生体分子抽出器。
【請求項2】
前記固定部は、少なくとも一部が曲がった曲線状になることを特徴とする、請求項1に記載の生体分子抽出器。
【請求項3】
前記本体部は、内部に所定の空間が形成されて前記溶解剤が収容され、前記挿入部が挿入されて前記溶解剤に沈潜するチャンバを含む、請求項1に記載の生体分子抽出器。
【請求項4】
前記チャンバの入口を密封する遮蔽膜をさらに備え、前記溶解剤は前記チャンバ内に収容され、密封した状態で提供されることを特徴とする、請求項3に記載の生体分子抽出器。
【請求項5】
前記本体部は、前記挿入部を前記チャンバへ案内する導入部をさらに含む、請求項3に記載の生体分子抽出器。
【請求項6】
前記挿入部は、前記導入部と対応する形態に形成され、前記導入部の内壁と密着して前記チャンバを密閉する密閉部を含む、請求項5に記載の生体分子抽出器。
【請求項7】
前記密閉部は、強度補強のための補強リブを含む、請求項6に記載の生体分子抽出器。
【請求項8】
前記吐出部は、サンプルを定量吐出させるための吐出流路と拡張吐出口を含む、請求項1に記載の生体分子抽出器。
【請求項9】
前記吐出流路は、死空間を最小化するために吐出口の内径よりも小さな内径を有することを特徴とする、請求項8に記載の生体分子抽出器。
【請求項10】
前記吐出部を脱着可能に密封するシーリングキャップをさらに含む、請求項8に記載の生体分子抽出器。
【請求項11】
前記チャンバの外壁に形成され、前記サンプルを定量吐出させることができるように押圧する押え部をさらに含む、請求項3に記載の生体分子抽出器。
【請求項12】
前記サンプルが前記溶解剤と接触する表面積と前記溶解剤の容積との比は、0.4乃至9.15であることを特徴とする、請求項1に記載の生体分子抽出器。
【請求項13】
バイオマスを採取したサンプルを挿入部に固定させるステップ、
内部に溶解剤が収容された本体部に前記挿入部を挿入するステップ、及び
前記挿入部または本体部のうちいずれか1つに備えられた吐出部を介して前記バイオマスから抽出した生体分子を吐出するステップを備え、
前記サンプルは、テープにより前記挿入部に固定され、
前記サンプルが前記溶解剤と接触する表面積と前記溶解剤の容積との比は、0.4乃至9.15であることを特徴とする、生体分子抽出方法。
【請求項14】
前記導入部と密閉部は、断面が楕円または円状に形成されることを特徴とする、請求項6に記載の生体分子抽出器。
【請求項15】
前記押え部は、周辺外壁よりも大きな厚さを有する陽刻形態に形成され、
前記押え部の周囲に形成され、周辺外壁よりも小さな厚さを有する陰刻部をさらに含む、請求項11に記載の生体分子抽出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子抽出器及び生体分子抽出方法に関し、より詳細には、組織、細胞のようなバイオマスからタンパク質や核酸などの生体分子抽出過程を単純化し、所要する時間を低減して使用者の便宜性を高め、死空間(dead space)を最小化して溶解剤の投入容量に対比したサンプルの表面積の比率を極大化することにより生体分子の抽出濃度を高め、バッファの使用量を最小化することができるだけでなく、抽出したサンプルを一定に定量吐出して別途の装置や付帯器具なしに効率的な検査が円滑に行えるようにした生体分子抽出器及び生体分子抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞溶解(cell lysis)とは、細胞の分解に伴って細胞膜が破裂すると同時に、細胞質(cytoplasma)が曝される現象をいう。このような細胞溶解は、細胞分析及びタンパク質の精製において1次的に経なければならない過程であって、タンパク質の抽出/分離だけでなく、分子生物学及び分子診断などに用いられるPCR(Polymerase Chain Reaction)のような増幅過程の前段階において、DNA(deoxyribonucleic acid)またはRNA(ribonucleic acid)のような核酸(nucleic acid)を分離するためによく用いられる。
【0003】
細胞破砕(cell disruption)のための細胞溶解方式としては、大きく、光学的(optical)、音響学的(acoustic)、電気的(electrical)、及び機械的(mechanical)方式があり、殆ど溶解剤(lysis buffer)ベースに多様な機械的、物理的方式の外力(external force)及び刺激(stress)を加える形態で施される。
【0004】
光学的細胞溶解は、レーザマイクロパルス(laser micropulse)をターゲット細胞に照射してキャビテーション気泡(cavitation bubble)を形成し、キャビテーション気泡が膨張することによって細胞を破壊する方式である。光学的細胞溶解は、特定の細胞の内部または隣接した位置にレーザを加えるようになることによって瞬間的に発生する熱に起因して細胞及びタンパク質を変性させる可能性があり、レーザ発生のための別途の装置が付加されなければならないという短所が存在する。
【0005】
音響学的細胞溶解は、細胞溶液または懸濁液を、超音波水槽に位置したチャンバ内に置いて超音波を加え、細胞を破壊する方式である。超音波を用いた細胞破壊は、超音波のエネルギー分布を均一に形成し難いため、一貫性のある結果が得られ難く、細胞破壊に多大な時間が所要され、熱の発生に因るタンパク質の破壊または変形を誘発することがある。
【0006】
電気的細胞溶解は、細胞に電場を加えて細胞の膜電位差を発生させ、細胞を破壊する方式である。細胞壁に衝撃を加えるという点で、冷凍−解凍法、加熱法、浸透圧衝撃法などのようなその他の細胞溶解方式と類似した側面がある。しかし、このような方式は、細胞に熱的衝撃を与えることにより細胞のタンパク質損傷をもたらすことがあるという問題点がある。
【0007】
機械的細胞溶解は、圧着機、ビーズ粉砕機などを用いるものである。具体的に、圧着機(presses)は、実験室レベルでよく用いられるステンレススチールからなる中空のシリンダ状胴体内に細胞の塊り(cell paste)を満たした後、細胞を高圧下でシリンダの床にあるニードルバルブ(needle valve)を介して大気圧状態に押し出すことにより細胞破砕を行う。
【0008】
高速ビーズ粉砕機(bead mills)は、小さなガラスまたは鉄玉(20〜50個)で満たされた粉砕室(grinding chamber)を備えており、モータにより駆動軸に取り付けられた円盤またはインペラを回転させて玉を撹拌して、高いせん断力(shearing force)と衝撃力(impact force)を用いて細胞を粉砕する。
【0009】
このような機械的細胞溶解は、少量のサンプルに適用することが難しく、高価の装備、広い空間、多段階の工程及び処理時間が必要であるという問題点がある。
【0010】
一方、ホモジナイザ(homogenizer)は、エッペンチューブ(E−tube、Eppendorf−tube)または多様な容量のファルコンチューブ(falcontube)などに溶解剤(lysis buffer)を満たした状態で、使用者がスティックを回転させて細胞溶解及び破砕を行うが、サンプル獲得用テープまたはディスクを含浸させるために相対的に多くの溶解剤が必要となり、スティックの回転時、サンプルが飛び出るか、或いはバッファが溢れ出すようになる問題が生じることがある。
【0011】
その他にも、エッペンチューブ(Eppendorf−tube)やペトリ皿(Petri dish)自体を用いる場合に、疎水性であるサンプルに溶解剤を適用するために相対的に多くのバッファを必要とし、ピペット(pipette)のような器具を用いて複数回のピペット操作(pipetting)などの更なる作業が必要であるという問題点がある。
【0012】
一方、細胞溶解による細胞溶解物(cell lysates)は、特殊なタンパク質の検出検査(western blotting)または免疫沈澱法(immune precipitation)などに頻繁に用いられており、核酸(DNA、RNA)を抽出する場合、PCRまたはシークエンシング(sequencing)を用いた分子診断(molecular diagnostics)及び遺伝子分析などに応用される。上記過程は、特定のタンパク質自体を検出するか、或いは分子間の相互作用を検査することにより行われる。
【0013】
そこで、細胞溶解は、バイオマスから抽出する生体分子(タンパク質または核酸など)の産出物の量が十分であり、精製濃度が高く、抽出物の損失または変形が起こらないようにすることが好適であるが、このために、通常、高価のタンパク質分解酵素阻害剤(proteases inhibitor)などを用いる。したがって、良質の細胞溶解は、バイオマスサンプルに対して速く行われ、即刻に分析されなければならないので、生体分子の抽出過程を単純化して、所要する費用と時間を低減する必要性がある。
【0014】
しかし、上述したように、既存の細胞溶解及び破砕を通じた生体分子抽出装置と方法は、各手順を行う過程中に遠心分離機(centrifugal seperator)やピペット(pipette)などの付帯装置及び器具が必須的であり、システムと関連した複雑な手順を行わなければならないので、多大な空間、費用と時間を必要とする。
【0015】
さらに、サンプル獲得用テープやディスクを用いる場合、サンプルの接触面を極大化するためにサンプルが浸かる程度の溶解剤を必要とし、多量の溶解剤を適用することによって抽出濃度が減少するようになるので、多量のサンプル、すなわち、バイオマスを採取しなければならず、サンプルを細かく切るか(chopping)、剥離/解離(dissociating)させる更なる作業を必要とするという問題点がある。
【0016】
また、サンプルからタンパク質または核酸のような生体分子を抽出した後、環境汚染及び人体安全性に影響を及ぼす可能性のある残渣の処理という問題が残る。
【0017】
したがって、バイオマス内の生体分子抽出過程を単純化して所要する空間と時間を低減することにより、使用者の便宜性を高め、少量のサンプルのみを適用しながらも抽出した生体分子の損傷を最小化し、相対的に高い濃度を抽出して、一貫性のある結果を期待することができる生体分子抽出器(biomolecule extraction device)の必要性が台頭している。
【0018】
ひいては、このような生体分子抽出器は、死空間(dead space)を最小化して、投入する溶解剤(lysis buffer)の容量に対比したサンプルの面積比率を極大化することにより生体分子の抽出濃度を高め、バッファの使用量を低減することができるだけでなく、抽出したサンプルを一定に定量吐出して、検査を効率的でかつ円滑に行うことができなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の実施例は、組織、細胞のようなバイオマスからタンパク質または核酸などの生体分子抽出過程を単純化して所要する時間と空間を低減することにより、使用者の便宜性を高めようとするものである。
【0020】
また、死空間(dead space)を最小化して、投入する溶解剤(lysis buffer)の容量に対比したサンプルの面積比率を最大化することにより生体分子抽出濃度を高め、バッファの使用量を低減することができるだけでなく、抽出したサンプルを一定に定量吐出して各種の検査を効率的に行うことを図るものである。
【0021】
また、別途の装置や付帯器具を適用する必要がなく、抽出した生体分子の損傷を最小化し、少量のサンプルのみを適用しながらも一貫性のある検査結果を期待することができる、独立した使用が可能な生体分子抽出器及び生体分子抽出方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の多様な応用における一例の一側面によると、バイオマスを採取したサンプルが固定される挿入部と、内部に溶解剤を収容し、前記挿入部が挿入されて前記採取したバイオマスから生体分子を抽出する本体部と、前記挿入部または本体部に備える少なくとも1つの吐出部とを含む生体分子抽出器を提供することができる。
【0023】
前記挿入部は、サンプルを固定する少なくとも1つの固定部を含んでなることができる。
【0024】
さらに、前記固定部は、サンプルが接着性結合または物理的結合で固定することができる。
【0025】
前記固定部の接着性結合は、採取したサンプルに存在する接着性を利用して結合するか、または接着性物質が固定部に塗布されてサンプルの結合を行うことができる。
【0026】
ここで、前記固定部は、少なくとも一部が曲がった曲線状になっていてよい。
【0027】
前記固定部の物理的結合は、サンプルを嵌め込み結合で固定するように構成することができる。
【0028】
前記固定部は、前記サンプルの少なくとも一部が固定されていてよい。
【0029】
前記本体部は、内部に所定の空間が形成されて前記溶解剤が収容され、前記挿入部が挿入されて溶解剤に沈潜するチャンバを含んでなることができる。
【0030】
この時、前記溶解剤は、抽出しようとする生体分子の種類によってその組成及び成分が変わってもよい。
【0031】
本発明の実施例による生体分子抽出器は、前記チャンバの入口を密封する遮蔽膜をさらに含み、前記溶解剤は、チャンバ内に収容され、密封した状態で提供されることができる。場合によっては、別途の使い捨て容器に必要な定量の溶解剤が密封された形態で提供されることができる。
【0032】
一方、前記本体部は、前記挿入部をチャンバへ案内する導入部をさらに含んでなることができる。
【0033】
ここで、前記挿入部は、前記導入部と対応する形態で形成され、前記導入部の内壁と密着して前記チャンバを密閉する密閉部を含んでなることができる。
【0034】
さらに、前記導入部と密閉部は、断面が楕円または円状に形成されていてよい。
【0035】
また、前記密閉部は、強度補強のための補強リブを含んでなることができる。
【0036】
前記吐出部は、サンプルを定量吐出させるための吐出流路と拡張吐出口を含んでなることができる。
【0037】
前記吐出流路は、死空間を最小化するために吐出口の内径よりも小さな内径を有するように構成することができる。
【0038】
本発明の実施例による生体分子抽出器は、前記吐出部を脱着可能に密封するシーリングキャップをさらに含んでなることができる。
【0039】
本発明の実施例による生体分子抽出器は、前記チャンバの外壁に形成され、前記サンプルを定量吐出させることができるように押圧する押え部をさらに含んでなることができる。
【0040】
ここで、前記押え部は、周辺外壁よりも大きな厚さを有する陽刻形態に形成することができる。
【0041】
さらに、本発明の実施例による生体分子抽出器は、前記押え部の周囲に形成され、周辺外壁よりも小さな厚さを有する陰刻部をさらに含んでなることができる。
【0042】
この時、前記サンプルが前記溶解剤と接触する表面積と前記溶解剤の容積との比(SA:V ratio=sample surface area/buffer volume)は、0.4乃至9.15であり得る。
【0043】
本発明の他の側面によると、バイオマスを採取したサンプルを挿入部に固定させるステップ、内部に溶解剤が収容された本体部に前記挿入部を挿入するステップ、及び、前記挿入部または本体部のうちいずれか1つに備えられた吐出部を介して前記バイオマスから抽出した生体分子を吐出するステップを含む生体分子抽出方法を提供することができる。
【0044】
本発明の他の側面によると、内部に溶解剤を収容するチャンバ、及び、バイオマスを採取した2つのサンプル獲得用テープが互いに離隔して対向するように付着された後、前記チャンバの内部に挿入される挿入部を含み、前記2つのサンプル獲得用テープの非接着面は、前記チャンバの両側内壁にそれぞれ密着され、前記溶解剤は、前記2つのサンプル獲得用テープの接着面の間の空間に満たすことができる。
【0045】
本発明のさらに他の側面によると、バイオマスを採取したサンプル獲得用テープがチャンバの内部に収容された溶解剤中に挿入されて採取したバイオマスが溶解され、前記サンプル獲得用テープが前記溶解剤と接触する表面積と前記チャンバの内部に収容された溶解剤の容積との比は、0.4乃至9.15であり得る。
【発明の効果】
【0046】
本発明の実施例は、組織、細胞のようなバイオマスから生体分子(タンパク質、核酸など)抽出過程を単純化して所要する時間と空間を低減することにより、使用者の便宜性を高めることができる。
【0047】
また、死空間(dead space)を最小化して、投入する溶解剤(lysis buffer)の容量に対比したサンプルの面積比率を最大化することにより生体分子抽出濃度を高め、バッファの使用量を低減することができるだけでなく、抽出したサンプルを一定に定量吐出して、各種の検査を効率的に行うことができる。
【0048】
また、別途の装置や付帯器具を適用する必要がなく、抽出した生体分子の損傷を最小化し、少量のサンプルのみを適用しながらも一貫性のある検査結果を期待することができる、独立した使用が可能な生体分子抽出器及び生体分子抽出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例による生体分子抽出器の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例による生体分子抽出器の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例による生体分子抽出器を長軸方向に切開した切開斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例による生体分子抽出器の挿入部を短軸方向に切開した切開斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例による生体分子抽出器の挿入部が本体部に挿入された後、バイオマス溶解物を定量吐出する状態を示した断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例による生体分子抽出器のSA:V ratioを既存の方式と比較したグラフである。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例による生体分子抽出器の抽出濃度を既存の方式と比較したグラフである。
【
図9】
図9は、サンプル処理後の定量吐出のための拡張吐出口設計用変数を示した構成図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施例による生体分子抽出器の押え部の変形例を示した斜視図と部分断面図及びチャンバ内壁の押圧時の変形図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施例によって提案された生体分子抽出器を用いたタンパク質抽出過程を示した工程図である。
【
図12】
図12は、本発明の他の実施例による生体分子抽出器の斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の他の実施例による生体分子抽出器の断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の他の実施例による生体分子抽出器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されるものではなく、他の形態に具体化することもできる。却って、ここで紹介される実施例は、開示された内容が徹底的かつ完全になるように、また、当業者に本発明の思想が十分伝達されるようにするために提供されたものである。明細書の全体にかけて同一の参照番号は、同一の構成要素を示す。
【0051】
図1は、本発明の一実施例による生体分子抽出器の斜視図であり、
図2は、本発明の一実施例による生体分子抽出器の分解斜視図であり、
図3は、本発明の一実施例による生体分子抽出器を長軸方向に切開した切開斜視図である。
図4は、本発明の一実施例による生体分子抽出器の挿入部を短軸方向に切開した切開斜視図であり、
図5は本発明の一実施例による生体分子抽出器の挿入部が本体部に挿入された後、バイオマス溶解物を定量吐出する状態を示した断面図であり、
図6は、
図4のA−A'の断面図である。
図7は、本発明の一実施例による生体分子抽出器のSA:V ratioを既存の方式と比較したグラフであり、
図8は、本発明の一実施例による生体分子抽出器の抽出濃度を既存の方式と比較したグラフであり、
図9は、サンプル処理後の定量吐出のための拡張吐出口設計用変数を示した構成図である。
【0052】
図1乃至
図9を参照すると、本発明の一実施例による生体分子抽出器(1000)は、大きく、バイオマスを採取したサンプルが固定される挿入部(100)と、内部に溶解剤を収容し、前記挿入部(100)が挿入されて前記採取したバイオマスから生体分子を抽出する本体部(200)と、前記挿入部(100)または本体部(200)に備える少なくとも1つの吐出部(300)とを含んでなることができる。
【0053】
前記挿入部(100)は、サンプルを固定する少なくとも1つの固定部(110、120)を備えることができるが、前記固定部(110、120)は、サンプルが接着性結合または物理的結合で固定することができ、バイオマスを採取したサンプルは、採取方式によって、例えば接着面のあるテープまたはメンブレンなどを適切に適用することができる。
【0054】
前記固定部(110、120)が接着性結合でサンプルを固定する場合は、接着面のあるテープ、すなわち、例えば接着性物質が塗布された接着面を有するサンプル獲得用テープ(10)などが用いられ、サンプルの採取後、テープに残っている接着性を利用して固定部に結合される。また、他の方式としては、固定部(110、120)に接着性物質を塗布して、非接着性のサンプルを固定するように構成することができる。
【0055】
前記固定部(110、120)が物理的結合でサンプルを固定する場合は、嵌め込み結合で固定することができるが、これは、他の実施例において説明する。
【0056】
本実施例の場合、サンプル獲得用テープ(10)が用いられ、前記挿入部(100)は、前記サンプル獲得用テープ(10)の少なくとも一部が接触して付着される固定部(110、120)を備えることができる。
【0057】
ここで、前記固定部(110、120)は、内側に形成された第1固定部(110)と、前記第1固定部(110)の外側に形成された第2固定部(120)とを含んでなることができる。前記第1固定部(110)と第2固定部(120)は、同一平面上で垂直下方に延長した形態で、それぞれ2個ずつ備えられていてもよい。
【0058】
さらに、前記サンプル獲得用テープ(10)は、前記第1固定部(110)と第2固定部(120)を中心として互いに対向するように2つが付着されることができる。前記サンプル獲得用テープ(10)は、ディスク(disk)状になっていてもよいが、実際に、米国のCuderm社で製造したD−Squame diskのような製品を用いることが可能である。
【0059】
このようなサンプル獲得用テープ(10)は、一面は接着面(12)からなり、他面は非接着面(14)からなることができるが、前記サンプル獲得用テープ(10)の接着面(12)を被験者の肌に貼ってから引き剥がすと、角質からなる肌の組織が前記接着面(12)に付いて採取され、これを用いてタンパク質の抽出を行うことができる。
【0060】
このように肌の組織を採取した2つの前記サンプル獲得用テープ(10)は、前記第1固定部(110)と第2固定部(120)を中心に互いに一定間隔離した状態で、それぞれの接着面(12)が対向した状態で付着され、固定することができる。この時、前記サンプル獲得用テープ(10)は、前記第1固定部(110)と第2固定部(120)を中心に一定間隔離隔して付着されるので、前記サンプル獲得用テープ(10)同士で互いに接着することが防止できる。
【0061】
前記2つのサンプル獲得用テープ(10)は、前記第1固定部(110)と第2固定部(120)の厚さ分だけ互いに離隔するが、前記挿入部(100)が前記本体部(200)に挿入された時、前記サンプル獲得用テープ(10)の間の空間に溶解剤(20)が満たされるようになる。
【0062】
したがって、前記固定部(110、120)の厚さは、前記2つのサンプル獲得用テープ(10)の離隔距離となるとともに、投入される溶解剤(20)の容積を決める要素となる。
【0063】
ここで、前記第1固定部(110)と第2固定部(120)は、同一の厚さに形成するか、或いは内側に位置した第1固定部(110)が第2固定部(120)よりも薄肉に形成することができる。また、テープ(10)の剛性により互いに接着しない十分な間隔が維持される場合には、第1固定部(110)は最小厚さとするか、或いは除去しても差し支えない。この場合、外側に位置した第2固定部(120)の厚さ分だけ、前記2つのサンプル獲得用テープ(10)が離隔される。第2固定部(120)においてテープ(10)が固定される部分は、テープ(10)の外径よりも若干大きなサイズと厚さ分だけ陰刻形態になっており、テープ(10)が固定された後、挿入部(100)がチャンバ(210)に挿入される時、テープ(10)の突出により引っかかるか、若しくは死領域の発生を防止することができる。そして、内側に位置した第1固定部(110)は、前記サンプル獲得用テープ(10)の中心部分が互いに接着することを防止する役目をする。
【0064】
前記第1固定部(110)と第2固定部(120)は、所定の厚さを有する直線状のバー(bar)形態になっていてよいが、本実施例では、少なくとも一部が曲がった曲線状になる。このように、前記第1固定部(110)と第2固定部(120)の一部が曲線状となることにより、後述する押え部(212、
図10参照)を使用者が押圧する時、第1固定部(110)や第2固定部(120)により干渉されずに押圧することができる。前記第1固定部(110)には、必要に応じて凹凸状の構造が追加されて、サンプル獲得用テープ(10)の付着面を最小化し、サンプル獲得用テープ(10)と溶解剤(20)の露出面積を最大化することができ、溶解剤(20)の自由な移動を可能とする。
【0065】
前記本体部(200)は、内部に所定の空間が形成されて前記溶解剤(20)が収容され、前記サンプル獲得用テープ(10)が挿入されて溶解剤(20)に沈潜するチャンバ(210)を備えることができる。
【0066】
さらに、前記チャンバ(210)の下部にはベース(220)が備えられ、前記チャンバ(210)を支持して立てることができるように構成される。この時、前記ベース(220)は、本体部(200)が安定して立っていることができるように、下方へ行くほど断面積が大きくなるように傾斜を持つ形態に形成することができる。
【0067】
前記チャンバ(210)の内部空間の厚さは、前記2つのサンプル獲得用テープ(10)が挿入された時、それぞれの非接着面(14)が前記チャンバ(210)の内壁に密着することができる程度に構成することが好ましく、これにより、前記チャンバ(210)に収容された溶解剤(20)は、殆どが前記2つのサンプル獲得用テープ(10)の間の空間に満たされるようになる。
【0068】
このように構成することで死空間(dead space)を最小化し、最小限の溶解剤(20)を適用するにもかかわらず、前記サンプル獲得用テープ(10)との接触面が最大化されて、生体分子の抽出濃度を少量のサンプルでも測定可能な水準に上げることができるようになる。
【0069】
特に、従来には、サンプル獲得用テープ(10)に付いている肌組織のサンプルは疎水性(hydrophobic)からなり、溶解剤(20)が自然に行き渡らないので、強制的に外力を加えるか、或いは装置を介して更なる作業を行わなければならなかった。また、含浸時、テープ(10)が上に浮び上がる問題のため、これを防止するために持続的にテープ(10)に外力を加えなければならないという問題があった。
【0070】
また、本発明の一実施例による生体分子抽出器(1000)は、上記説明したように、溶解剤(20)の容積に対比したサンプル獲得用テープ(10)との接触面を相対的に非常に大きくすることにより、1〜2回振って静置しておくことのみで細胞溶解を行うことができる。これは、挿入部(100)と本体部(200)の挿入結合の際に強い固定力を維持させることができ、別途の強制的な外力や更なる作業なしに溶解剤(20)がテープの間の空いた空間を満たし、その接触状態を効果的に維持することができるため、タンパク質の抽出効率を飛躍的に高めることができる。
【0071】
このような事実は、
図7と
図8のグラフを通じても確認することができる。
図7は、本発明の一実施例による生体分子抽出器(PED、Protein Extraction Device、1000)のサンプル獲得用テープ(10)が溶解剤(20)と接触する表面積(Surface Area)と、チャンバ(210)の内部に収容された溶解剤(20)の容積(Buffer Volume)との比(SA:V ratio)を既存の方式と比較したものである。
【0072】
既存のペトリ皿とエッペンチューブを適用した場合は、いずれもSA:V ratioが0.4を超えていなかった。しかしながら、本発明を適用した場合には、Cuderm社で製造したD−Squame diskのような製品を使用する時、テープ(10)の断面積が380mm
2であり、投入される溶解剤(20)の量がテープ当たり200Lであるので、計算上0.4を超えて1.9に当たるが、抽出器の射出成形作製時における公差及び金型の余裕空間確保などによって、実際には1.4を上回ることを確認することができる。
【0073】
このようなSA:V ratioは、理論的にサンプル獲得用テープ(10)の離隔距離を低減することによりさらに増加させることができるが、2つのテープ(10)同士の付着を防止しながら、1回の目標吐出量である35〜40μlと、吐出の際に押圧可能である実質的な最小間隔が100μm程度であることを考慮する時、約9.15まで増加させることができる。
【0074】
このように、本発明は、SA:V ratioを相対的に大きくして最適化することにより、最小サンプル量で以ってタンパク質の抽出を行うことができ、抽出濃度もまた高めることができるという長所がある。
【0075】
実際、
図8のグラフから確認できるように、既存のペトリ皿とエッペンチューブを適用するとともに同一の容量(250μl/disk)の溶解剤を投入した場合に抽出された総タンパク質(total protein)濃度は、いずれも40μg/mlの内外の値を有するが、本発明の場合は63.4μg/mlを記録し、既存よりも遥かに高いタンパク質の抽出効率を示すことを確認することができる。
【0076】
一方、前記チャンバ(210)の入口は、開放した状態で構成されるか、或いは遮蔽膜(218)を備えていてもよい。開放した状態で提供される場合は、使用者が挿入部(100)を挿入する前にチャンバ(210)の内部に溶解剤(20)を投入するようになり、遮蔽膜(218)が備えられた場合には、一定量の溶解剤(20)が予めチャンバ(210)の内部に収容された状態で提供されることができる。
【0077】
前記遮蔽膜(218)は、例えばアルミニウム箔やビニル膜などからなり、チャンバ(210)の入口を密封するように構成することができ、使用者は、遮蔽膜(218)を除去した後に挿入部(100)を挿入するか、或いは挿入部(100)を押し込んで遮蔽膜(218)を破ることによりチャンバ(210)の内部に挿入することができる。前記遮蔽膜(218)の位置は、チャンバ(210)の入口に固定されたものではなく、必要に応じて導入部(230)にも設けることができる。
【0078】
前記チャンバ(210)の上部には、導入部(230)を備えていてよい。前記導入部(230)は、前記チャンバ(210)の入口から上方に一定の高さで延長するように構成することができる。そして、前記導入部(230)と対応するように、前記挿入部(100)の一側に前記導入部(230)の内壁と密着して前記チャンバ(210)を密閉する密閉部(130)を備えることができる。
【0079】
すなわち、前記導入部(230)は、上方に開放した形態に形成され、前記第1固定部(110)と第2固定部(120)に付着されたサンプル獲得用テープ(10)がチャンバ(210)内部に挿入されると、前記密閉部(130)は、前記導入部(230)内に嵌め込まれてチャンバ(210)を密閉するようになる。
【0080】
さらに、前記導入部(230)と密閉部(130)は、横に切断した時、断面が楕円状になっていてもよい。もし、四角状になると、密着力が満遍なく分布されず、角部分へとサンプルが流出することがあり、円状で構成すると、密着力は満遍なく分布するものの、体積が大きくなる短所がある。したがって、本実施例では、前記導入部(230)と密閉部(130)の断面が楕円状になる場合を提示した。この時、前記密閉部(130)は、強度補強のための多数の補強リブ(132)を備えることができる。前記補強リブ(132)は、前記密閉部(130)の形態が、本体部(200)との結合時に変形しないように強度を補強しながら、前記導入部(230)の内壁への密着力と固定力を高める役目をする。
【0081】
一方、本発明の一実施例による生体分子抽出器(1000)は、前記挿入部(100)または本体部(200)に備えられる少なくとも1つの吐出部(300)を有するが、本実施例では、前記吐出部(300)が前記挿入部に設けられる場合を例に挙げている。
【0082】
ここで、前記吐出部(300)は、前記密閉部(130)を貫通し、前記チャンバ(210)と外部とを連通してサンプルを排出する吐出流路(310)と、前記吐出流路(310)の終端に備えられ、サンプルを定量吐出させることができるように、前記吐出流路(310)の内径よりも大きな内径を有した拡張吐出口(320)を含んでなることができる。
【0083】
前記吐出流路(310)は、一端が前記チャンバ(210)と連通され、他端は前記拡張吐出口(320)と連結され、これを介してタンパク質抽出が済んだサンプルが外部に吐出され得る。吐出流路(310)は、死空間を最小化し、全体の吐出総量を増加させるために、拡張吐出口(320)の前までは最小限の内径を有するように設計しなければならず、本実施例では、吐出流路(310)は、拡張吐出口(320)の半分の大きさである、直径850μmの流路径を有する。
【0084】
この時、前記拡張吐出口(320)の内径の大きさを調節して排出されるサンプルの量を定量に調節することができるが、吐出量は、
図9を参照して下記のような算式により計算することができる。具体的に、拡張吐出口(320)から出て形成された抽出サンプルの単一液滴(droplet)の重さによる重力(gravity force)と、吐出口に吊られていようとする表面張力(surface tension)との平衡状態を通じて設計することができる。
【0085】
<数式>
Surface tension:Fγ=πdγ
Gravity force:Fg=Fγsinα
mg=πdγsinα
mg=πdγ
W=2πrγ
W:weight of droplet、r:radius of outlet、γ:surface tension
【0086】
本実施例において、前記吐出流路(310)の内径は約850μmからなり、前記拡張吐出口(320)の内径は1.7mmからなるが、拡張吐出口(320)の内径を1.7mmにした場合、理論的なサンプルの単位吐出量は、約37.7μlとなる。
【0087】
そして、これを実際に製品を製造した後、超純水(Deionized Water)と溶解剤(20)を加えて、10個の生体分子抽出器(10)をそれぞれの条件で2回ずつ測定及び実験を行った。その結果、下記表1に示したとおり、実際の単位吐出量が35.5±2μlと測定され、本発明による生体分子抽出器(1000)を介して、サンプルが実質的に定量吐出されることを確認することができる。
【0089】
このように本発明の一実施例による生体分子抽出器(1000)は、別途の定量装置のない単純な器具であって、一定量のサンプルを精密に吐出することが可能であるので、抽出後、検査キットに吐出して行う後続作業において正確な実験結果を導き出すことができるという長所がある。
【0090】
前記拡張吐出口(320)には、脱着可能なシーリングキャップ(140)がさらに設けられ、サンプルが任意に吐出されることを防止して使用者の安全を図ることができる。
【0091】
一方、使用者がサンプルを吐出する時、外力を加えることができるように前記チャンバ(210)の外壁に形成され、前記サンプルを押圧する押え部(212)を備えることができる。基本的に、前記チャンバ(210)の外壁中で、上述した前記第1固定部(110)の曲線状が成す中空部分に対応する領域が、押え部(212)を形成するようになる。
【0092】
具体的に、使用者が前記押え部(212)を押圧することにより抽出したサンプルを吐出させるが、圧力を印加する時、チャンバ(210)の内壁が放物線状に撓みながら、抽出したサンプルが出口を介して押し出されるようになる。
【0093】
図10は、本発明の一実施例による生体分子抽出器の押え部の変形例を示した斜視図と部分断面図及びチャンバ内壁の押圧時の変形図である。
【0094】
図10に示されたように、均一な圧力の印加を通じて回収率を増加させるために、変形された形態の押え部(212a、212b、212c)を提示する。
【0095】
先ず、本実施例における前記押え部(212a、212b、212c)は、周辺外壁よりも大きな厚さを有する陽刻形態に形成することができる。
図10(B)と
図10(C)に示されたように、前記押え部(212a、212b)は、円状の陽刻を形成するように構成されるか、または
図10(D)に示されたようにホイール(wheel)状に形成することができる。射出成形時、厚さまたは高さが2mm以上になる形態の構造物の場合、溶融されたプラスチックが金型内の構造物を完全に満たすことができずに空洞ができるか、或いは射出後の冷却時、残留応力(residual stress)が集中して構造物が変形したり、ひび割れが容易に発生するという問題点がある。これにより、ホイール(wheel)状の押え部の場合、このような射出成形時における問題点を最小化することができる。このように押え部(212a、212b、212c)を構成することにより、均一に圧力を印加してサンプルを吐出することができる。
【0096】
さらに、本発明の実施例による生体分子抽出器は、前記押え部(212b、212c)の周囲に形成され、周辺外壁よりも小さな厚さを有する陰刻部(214)をさらに含んでなることができる。前記陰刻部(214)は、押え部(212)周辺の厚さを減らして撓みが容易に起こるようにする。
【0097】
上述した変形例を適用すると、押圧されるチャンバ(210)の内壁が放物線状から直線状に均一に押されるようになり、使用者の指の形や加える力の大きさに関係なく、均一な圧力の印加が可能であり、これを通じてサンプルの回収率を増加させることができる。
【0098】
図11は、本発明の一実施例による生体分子抽出器を用いて生体分子(タンパク質)を抽出する過程を示した工程図である。
【0099】
図1乃至
図11を参照して、本発明の一実施例による生体分子抽出器(1000)を介した生体分子(タンパク質)抽出方法を説明すると、次のとおりである。
【0100】
先ず、2つのサンプル獲得用テープ(10)を被験者の肌に貼ってから引き剥がして肌の組織を採取する。そして、これを挿入部(100)に備えられた第1固定部(110)と第2固定部(120)を中心として対向するように接着する。
【0101】
その後、本体部(200)のチャンバ(210)内に溶解剤(20)を注入し、前記挿入部(100)を本体部(200)内に挿入する。この時、前記溶解剤(20)は、チャンバ(210)内にあらかじめ収容され、遮蔽膜(218)により密封した状態で提供することができる。
【0102】
さらに、前記サンプル獲得用テープ(10)がチャンバ(210)内に位置した状態で生体分子抽出器(1000)を1〜2回振って、1分または必要に応じて数分間静置しておく。この過程において細胞が溶解剤(20)に溶解され、タンパク質が抽出される。
【0103】
そして、シーリングキャップ(140)を外した後、押え部を押圧してタンパク質が抽出されたサンプルを検査用キット(kit)の流入口に吐出させた後、抗体反応を通じた検査を進める。
【0104】
図12は、本発明の他の実施例による生体分子抽出器の斜視図であり、
図13は、本発明の他の実施例による生体分子抽出器の断面図であり、
図14は、本発明の他の実施例による生体分子抽出器の平面図である。
【0105】
図12乃至
図14を参照すると、本発明の他の実施例による生体分子抽出器(2000)は、同様に大きく、挿入部(400)と、本体部(500)と、吐出部(600)とを含んでなることができる。
【0106】
ここで、前記吐出部(600)は、前述した実施例とは異なり、挿入部(400)ではなく本体部(500)に備えられていてもよい。前記挿入部(400)は固定部(410)を備えるが、サンプル獲得用テープ(10)が嵌め込み結合により物理的に結合するか、或いは固定部(410)に接着剤を塗布して接着固定することができる。
【0107】
本実施例において、前記固定部(410)は、2つのサンプル獲得用テープ(10)が固定される場合を提示したが、必要に応じて単一または3つやそれ以上のサンプル獲得用テープ(10)を固定して適用することも可能である。
【0108】
前記挿入部(400)と本体部(500)は、連結部(550)により連結することができる。前記本体部(500)は、導入部(530)を備えており、前記挿入部(400)には、それに対応するように密閉部(430)を備えることができる。
【0109】
一方、前記本体部(500)には、溶解剤が収容されるチャンバ(510)が備えられていてよく、前記挿入部(400)が本体部(500)に挿入されることにより、前記固定部(410)に固定されたサンプル獲得用テープ(10)は前記チャンバ(510)の内部に挿入され得、チャンバ(510)内にある溶解剤により生体分子の抽出が進められ得る。
【0110】
生体分子抽出が完了すると、使用者は、チャンバ(510)の外壁に形成された押え部(512)を押圧して、抽出したサンプルを吐出部(600)を介して排出させることができる。この時、前記押え部(512)は、前述した実施例で説明した多様な変形例が同様に適用され得る。
【0111】
これまで説明した本発明の実施例による生体分子抽出器は、次のような効果がある。
【0112】
第一、殆どの既存のタンパク質または核酸の抽出方法は、細胞間結合または細胞膜を破壊するために機械的または物理的衝撃の印加、繰り返しの遠心分離及びフィルタリング、さらにその他の工程など合計20〜30分以上が所要されたが、本発明の生体分子抽出器は、サンプルの固定及びバッファの注入、挿入部の結合及び混合、静置及び抽出などの全ての過程を5分以内に行って、所要する時間を画期的に低減することができる。
【0113】
第二、無衝撃、無動力方式であるので、複雑なシステムや広い実験空間を必要とせず、使用者の安全性を確保することができ、極少量のバッファを適用して使い捨て用として用いるため、廃棄物による弊害を防止することができる。
【0114】
第三、死空間(dead space)を最小化し、SA:V ratioを非常に大きくして、外力なしにタンパク質の抽出が可能であるだけでなく、高濃度での抽出が可能であり、抽出後の定量吐出が可能であるので、検査キットを通じた正確な検査が可能である。
【0115】
第四、細胞内タンパク質の抽出過程を単純化し、遠心分離機やピペットなどの付帯機器を必要とせずに1つのデバイス(device)として独立した使用が可能であり、熟練度に関係なく使用することができるので、使用者の便宜性を高めることができる。
【0116】
以上では、本発明の一実施例(肌の組織に対する応用例)を参照して説明したが、当該技術分野の当業者は、以下に述べる特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更して実施することができる。本発明において提示された抽出器は、多様なバイオマスから各種の分析及び診断に使用可能な多様な生体分子を抽出することに用いることができる。その応用範囲は、生命工学、分子生物学、医学、薬学、美容、遺伝工学、診断、保健など多様であり、制限されるものではない。したがって、変形された実施が基本的に本発明の特許請求の範囲の構成要素を含んでいれば、いずれも本発明の技術的範疇に含まれると見なすべきである。