(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レンズ面が平坦面であって、前記窪みが、当該レンズ面端部における前記周方向の一部に局在形成された面取り部であることを特徴とする請求項1に記載の対物レンズユニット。
前記レンズ面を開口から露出させて前記最も観察対象側のレンズを収容するカバーにおける前記開口の内壁面と、前記窪みと、で区画された空間が、前記2つの開口の収容部となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の対物レンズユニット。
前記最も観察対象側のレンズは、前記第1液路と前記第2液路を収めるための溝が形成されたカバーに収容されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の対物レンズユニット。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる液浸顕微鏡を示す模式図である。この
図1に示されている液浸顕微鏡1は、いわゆる倒立型の液浸顕微鏡で、観察対象としての細胞の蛍光観察に用いられる。
【0014】
液浸顕微鏡1では、観察対象の細胞が内部で培養される、底壁が透明となったトレイ12の下方に対物レンズユニット11が配置されている。観察対象の細胞は、トレイ12における透明な底壁越しに対物レンズユニット11によって観察される。詳細については後述するが、この対物レンズユニット11の対物レンズ部110における、最も観察対象側のレンズ面111a−1が浸漬用液体に浸漬される。ここでは特定しないが、浸漬用液体としては、水や油等、屈折率の高い液体が利用される。
【0015】
また、液浸顕微鏡1は、供給ポンプ13aと、排出ポンプ13bと、これらのポンプ13a,13bの動作を制御する制御部14と、を備えている。供給ポンプ13aは、対物レンズユニット11へと浸漬用液体を供給するポンプであり、排出ポンプ13bは、対物レンズユニット11から浸漬用液体を排出するポンプである。
【0016】
供給ポンプ13aの送出口13a−1は、対物レンズユニット11における浸漬用液体の流入口11aに供給用ホース13cで繋がれている。また、排出ポンプ13bにおける浸漬用液体の流入口13b−1は、対物レンズユニット11における浸漬用液体の排出口11bに排出用ホース13dで繋がれている。更に、液浸顕微鏡1は、モータ駆動により対物レンズユニット11をトレイ12に対して上下方向D1に接離させるレンズ移動機構15を備えている。
【0017】
ここで、本実施形態では、液浸顕微鏡1として、観察対象の細胞からの蛍光のうち対物レンズ部110の焦点面からの光だけを選択して顕微鏡像をつくる共焦点顕微鏡が採用されている。液浸顕微鏡1は、共焦点顕微鏡としての光学系や、観察対象の細胞を照らして蛍光を生じさせる励起光源や、蛍光を受光して画像信号を生成する撮像素子等も備えているが、ここでは図示及び説明を割愛する。
【0018】
図2は、
図1に示されている液浸顕微鏡の対物レンズユニットを示す斜視図である。また、
図3は、
図2に示されている対物レンズユニットの上面図及び断面図である。
図3(A)には、対物レンズユニット11を
図2中のV1方向から見た上面図が示されており、
図3(B)には、
図3(A)中のA1−A1断面の模式的な断面図が示されている。
【0019】
対物レンズユニット11は、対物レンズ部110を備えている。対物レンズ部110は、内部にレンズ群111を収容する円筒状で金属製のカバー112を備えている。尚、
図3(B)では、レンズ群111のうち最も観察対象側のレンズ(以下、トップレンズと呼ぶ)111a以外のレンズについては図示を割愛している。カバー112は、観察対象側が円錐状のキャップになっており、その先端に開口112aが設けられている。
【0020】
また、対物レンズユニット11は、液体供給路120と、液体排出路130と、リング型ベース140と、を備えている。液体供給路120は、トップレンズ111aのレンズ面111a−1に浸漬用液体を供給するための流路である。また、液体排出路130は、液体供給路120の供給口121から流出する浸漬用液体を、流出開始時にレンズ面111a−1における次のような光学範囲111a−2に至る前に同時に吸引して排出するための流路である。
【0021】
即ち、ここにいう光学範囲111a−2は、レンズ面111a−1の中央部にあって、顕微鏡象として結象する観察対象の細胞からの観察光が通過する光学上の範囲である。トップレンズ111aと、レンズ面111a−1における光学範囲111a−2と、については後でもう一度説明する。
【0022】
液体排出路130は、液体供給路120の供給口121から流出する浸漬用液体を、流出開始時に光学範囲111a−2に至る前に同時に吸引して排出するために、供給口121に隣接して吸引口131が配置されるように設けられている。液体供給路120と液体排出路130とのそれぞれが、内部に浸漬用液体を通すパイプとなっている。
【0023】
本実施形態の液浸顕微鏡1では、このような対物レンズユニット11を備えているため、浸漬用液体の流出開始時において、供給口121からの流出と同時に隣接する吸引口131で吸引することができる。このため、流出開始時に気泡が混入していても、気泡混入浸漬用液体が拡散する前に即座に除去することができる。その後、吸引を停止すれば、気泡の混入していない浸漬用液体でレンズ面111a−aを覆うことができる。このとき、無駄に消費される浸漬用液体は、気泡混入の可能性がある流出開始時の浸漬用液体のみであるため、混入した気泡を取り除く際の浸漬用液体の消費量を削減することができる。
【0024】
リング型ベース140は、対物レンズ部110の外周に取り付けられており、このリング型ベース140の内周近傍に、浸漬用液体の流入口11aと排出口11bとが設けられている。液体供給路120における供給口121とは反対側、及び、液体排出路130における吸引口131とは反対側が、リング型ベース140の内部を通って各々流入口11a及び排出口11bに接続されている。供給ポンプ13aによって供給用ホース13cを介して流入口11aに送り込まれる浸漬用液体が、液体供給路120の内部を通って供給口121から対物レンズ部110のレンズ面110a−1に供給されるようになっている。
【0025】
また、リング型ベース140には、不図示のヒータ等の加熱装置が組み込まれている。トレイ12では細胞が約37℃の培養環境で培養される。リング型ベース140の加熱装置により、対物レンズ部110や浸漬用液体の温度が、培養環境に適する約37℃に保たれる。これにより、細胞観察時の温度変化に起因する観察画像の揺らぎを最小限に抑えることができる。ただし、加熱装置は省いてもよい。
【0026】
図4は、
図1〜
図3に示されている対物レンズを示す斜視図である。尚、この
図4には、対物レンズ部110を構成するトップレンズ111aが、対物レンズ部110とともに示されている。
【0027】
本実施形態では、トップレンズ111aは、観察対象側の面の中央部が凹んだメニスカスレンズ111bのその中央部の凹みに小型の平凸レンズである小レンズ111cが嵌合された接合レンズとなっている。そして、小レンズ111cの観察対象側の円形状の平面が、トップレンズ111aのレンズ面111a−1において顕微鏡象として結象する観察対象からの観察光が通過する光学範囲111a−2となっている。このような接合レンズとしてのトップレンズ111aのレンズ面111a−1は、以下に説明する面取り部111a−3を除いて平面状に形成されている。
【0028】
本実施形態では、このようなトップレンズ111aを含む対物レンズ部110のレンズ群111の各レンズが、何れもガラスで形成されている。なお、トップレンズ111aが単レンズで形成されている場合も、顕微鏡象として結象する観察対象からの観察光が通過する範囲を光学範囲と称するものとする。
【0029】
トップレンズ111aでは、レンズ面111a−1の外周の一部に窪みである面取り部111a−3が形成されている。この面取り部111a−3は、レンズ面111a−1の光学範囲111a−2をなす小レンズ111cに掛からないように形成されている。
【0030】
対物レンズ部110のカバー112の外表面には、液体供給路120と液体排出路130とをまとめて内側に収容する1本の溝112bが、観察対象側の円錐状のキャップの部分における裾から先端の開口112aまで直線状に延びている。先端の開口112aの縁112a−1は、トップレンズ111aのレンズ面111a−1を囲む円環状の平面となっている。カバー112の外表面の溝112bは、観察対象側の端部が、開口112aの内側へと連通しており、円環状の縁112a−1は溝112bと繋がる部分で切り欠かれている。
【0031】
対物レンズ部110では、トップレンズ111aは、上記の面取り部111a−3が、円環状の縁112a−1において溝112bと繋がって切り欠かれた部分と対向するようにカバー112に収容されている。また、トップレンズ111aのレンズ面111a−1と開口112aの縁112a−1とは面一となっている。
【0032】
このような対物レンズに、液体供給路120と液体排出路130とが次のように取り付けられている。
【0033】
図5は、対物レンズに、液体供給路と液体排出路とが取り付けられた様子を、トップレンズの周辺に注目して示す図である。
図5(A)には、トップレンズ111aのレンズ面111a−1を見た平面図が示され、
図5(B)には、
図5(A)中のA2−A2断面を示す図が示されている。
【0034】
液体供給路120と液体排出路130とは、カバー112に設けられた溝112bの内側に収められる。そして、液体供給路120の供給口121は、カバー112の開口112aの縁112a−1の切欠き部分から、トップレンズ111aの面取り部111a−3の上部に若干掛かる位置まで突出している。つまり、液体供給路120の供給口121は、トップレンズ111aのレンズ面111a−1の外周よりも、観察光が通る光学範囲111a−2寄りに位置している。そして、液体排出路130の吸引口131は、この液体供給路120の供給口121の近傍に配置され、トップレンズ111aの面取り部111a−3の上部に若干掛かる位置まで供給口121と一緒に突出している。液体排出路130の吸引口131も、トップレンズ111aのレンズ面111a−1の外周よりも光学範囲111a−2寄りに位置している。
【0035】
また、トップレンズ111aの面取り部111a−3は、その上部に掛かる供給口121や吸引口131を、光学範囲111a−2を含むレンズ面111a−1よりも観察対象側に突出させないように形成されている。即ち、トップレンズ111aの面取り部111a−3と、カバー112の開口112aの内壁面とで区画されてレンズ面111a−1から凹んだ空間が、供給口121や吸引口131の収容部となっている。
【0036】
液体供給路120における供給口121とは反対側、及び液体排出路130における吸引口131とは反対側は、カバー112の溝112bから出て、
図2や
図3に示されているように二股に分かれてリング型ベース140へと向かい、その内部を通って流入口11a及び排出口11bに接続されている。
【0037】
ここで、本実施形態では、
図1に示されている制御部14の制御下での供給ポンプ13aと排出ポンプ13bとの動作により、トップレンズ111aのレンズ面111a−1に対する浸漬用液体の供給が次のように行われる。
【0038】
図6は、トップレンズのレンズ面に対して浸漬用液体の供給が行われる様子を示す模式図である。
図6(A)には、レンズ面111a−1に対する浸漬用液体の供給の初期段階の様子が模式的に示され、
図6(B)には、浸漬用液体によってレンズ面111a−1の略全域が浸漬された様子が模式的に示されている。
【0039】
図6(A)に示されているように、前回の液浸顕微鏡1の使用終了からある程度の時間が経過した後の浸漬用液体の供給では、その初期段階に液体供給路120の供給口121から気泡Boが混入した浸漬用液体が流出する場合がある。これは、不使用時における液体供給路120の内部の乾燥等に起因する。このように気泡Boが混入した浸漬用液体にレンズ面111a−1で観察光が通過する光学範囲111a−2が浸漬されると、その混入した気泡Boが観察の妨げになる恐れがある。
【0040】
そこで、本実施形態では、
図1に示されている制御部14が、浸漬用液体の供給開始から次のような時間に亘って、浸漬用液体の供給と排出とが同時に行われるように供給ポンプ13aと排出ポンプ13bとの動作を制御する。これにより、初期段階では、液体供給路120の供給口121を流出した浸漬用液体が、トップレンズ111aの面取り部113a−1を超える前に、矢印D2が示すように液体排出路130の吸引口131で吸引されて排出される。即ち、この段階では、液体供給路120の供給口121を流出した浸漬用液体が、トップレンズ111aのレンズ面111a−1における光学範囲111a−2に至る前に排出される。これにより、供給口121を流出した浸漬用液体に気泡Boが混入していたとしても、そのような浸漬用液体による光学範囲111a−2の浸漬が回避される。また、本実施形態では、このように浸漬用液体の供給と排出とが同時に行われる期間として、余裕をみて、浸漬用液体の供給開始から、液体供給路120の略全長分の浸漬用液体の排出に要する時間が採用されている。
【0041】
このような時間に亘って浸漬用液体の供給と排出とが同時に行われた後、制御部14の制御の下、排出ポンプ13bが止められて供給ポンプ13aの動作による浸漬用液体の供給が行われる。これにより、
図6(B)に矢印D3で示されているように、気泡のない浸漬用液体150によって光学範囲111a−2を含むレンズ面111a−1の略全域が浸漬されることとなる。
【0042】
ここで、レンズ面111a−1を囲むカバー112の円環状の平面をなす開口112aの縁112a−1は、平面状のレンズ面111a−1と略面一となっている。このとき、金属製のカバー112における開口112aの縁112a−1は、ガラス製のトップレンズ111aのレンズ面111a−1に比べて浸漬用液体150の接触角が大きく、即ち、浸漬用液体150に対する親和性が小さい。このため、
図6(B)に矢印D3で示されているように広がる浸漬用液体150は、カバー112における開口112aの縁112a−1に達するとそこで弾かれて縁112a−1へとこぼれ出ることがない。このようにしてレンズ面111a−1に留められた状態で浸漬用液体150がレンズ面111a−1の全域に行き渡ると制御部14が供給ポンプ13aを停止させる。
【0043】
図1に示されているように、対物レンズ部110の上方には、観察対象の細胞が内部で培養されるトレイ12が配置される。
【0044】
図7は、
図1に示されている対物レンズユニットを、観察対象の細胞が内部で培養されるトレイとともに示す図である。
図7(A)には、対物レンズユニット11及びトレイ12を、トレイ12側から見た上面図が示されており、
図7(B)には、
図7(A)中のA3−A3断面の模式的な断面図が示されている。また、
図8は、
図7(B)中の領域Ar1の拡大図である。
【0045】
図7に示されているように、本実施形態では、トレイ12として、複数のウェル121が二次元的に配列されたマルチウェルプレートが採用されている。各ウェル121の内部で観察対象の細胞が培養され、透明な底壁122越しに、対物レンズユニット11の対物レンズ部110による観察が行われる。また、トレイ12における対物レンズユニット11側(裏面側)には、トレイ12の外周を囲う段差壁123が立設されている。この段差壁123で囲うことでトレイ12の裏面側での温度や湿度等といった培養環境の変動が抑えられている。
【0046】
このようなトレイ12に対して、対物レンズユニット11は、レンズ移動機構15によって光軸方向に相対移動され、また、不図示の移動機構によって光軸方向と交差する方向に相対移動される。光軸方向に相対移動では、対物レンズ部110におけるトップレンズ111aのレンズ面111a−1と、トレイ12の底壁との間隔d1が略0.2〜0.3mmに制御される。上記のように供給される浸漬用液体150は、この微小な隙間に、毛管現象によって行き渡る。そして、この浸漬用液体150を介してトレイ12内の観察対象の細胞の観察が行われる。
【0047】
次に、対物レンズ部110におけるトップレンズの別例について、2例挙げて説明する。
【0048】
図9は、対物レンズにおけるトップレンズの第1の別例を示す図である。尚、この
図9では、トップレンズ211以外の構成要素については、
図4に示されている構成要素と同等である。
図9では、これら同等な構成要素に、
図4と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。この点は、トップレンズの第1の別例を示す後述の
図10についても同様である。
【0049】
図9に示されている別例のトップレンズ211も、
図4に示されているトップレンズ111aと同様にメニスカスレンズと小レンズとからなる接合レンズである。ただし、この別例のトップレンズ211では、レンズ面211aの外周の全周に亘って面取り部211−1が形成されている。この別例では、全周に亘る面取り部211−1と、カバー112の開口112aの内壁面とで区画されてレンズ面211aから凹んだ空間が、カバー122の溝112bから突出した供給口121や吸引口131の収容部となる。
【0050】
図10は、対物レンズにおけるトップレンズの第2の別例を示す図である。
【0051】
図10に示されている別例のトップレンズ311も、
図4に示されているトップレンズ111aと同様にメニスカスレンズと小レンズとからなる接合レンズである。ただし、この別例のトップレンズ311では、レンズ面311aの外周のうち、カバー122の溝112bの、開口112a側の端部に対応する位置に次のような窪み部311−1が形成されている。この窪み部311−1は、カバー122の溝112bと同幅で、溝112bの開口112a側の端部へと向かって、レンズ面311aからの深さが漸増した形状を有している。この別例では、窪み部311−1の内側の空間そのものが、カバー122の溝112bから突出した供給口121や吸引口131の収容部となる。
【0052】
これら2つの別例も含めて、本実施形態の液浸顕微鏡1及び対物レンズユニット11では、液体供給路120の供給口121の近傍に吸引口131が配置された液体排出路130が設けられている。この液体排出路130は、液体供給路120の供給口121から流出する浸漬用液体を、トップレンズ111aのレンズ面111a−1において顕微鏡象として結象する観察光が通過する光学範囲111a−2に至る前に吸引して排出するための流路である。本実施形態では、制御部14での制御の下、液体供給路120から気泡Boが混入した浸漬用液体が流出し切るまで、その浸漬用液体が上記の光学範囲111a−2に至る前に吸引されて排出される。これにより、気泡Boの混入を抑えてトップレンズ111aのレンズ面111a−1を浸漬用液体に浸漬させることができる。
【0053】
ここで、本実施形態では、液体供給路120の供給口121から流出した浸漬用液体は、ガラス製のレンズ面111a−1よりも浸漬用液体に対する親和性が小さい金属製のカバー112の縁112a−1によって弾かれる。これにより、浸漬用液体は、外側に漏れることなくレンズ面111a−1を浸漬する。このように、本実施形態によれば、浸漬用液体がレンズ面111a−1に直に供給されるので、その供給量を必要最小限に抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態では、液体供給路120の供給口121と液体排出路130の吸引口131とがトップレンズ111aのレンズ面111a−1における光学範囲111a−2よりも観察対象側に突出しない。このため、トレイ12との干渉を抑えて光学範囲111a−2を観察対象へと上述した微小な間隔にまで近づけることができる。これにより、光軸方向について深い観察深度、つまり光軸方向について広い観察範囲での観察を行うことができる。
【0055】
ここで、一般的に、液浸顕微鏡用の対物レンズは開口数が大きく、大きな発散角(回折角)を持った観察光を最も観察対象側のレンズへと観察対象から入射させることができる。本実施形態では、トップレンズ111aとして上述した接合レンズが採用されている。このため、観察対象から入射する発散角の大きな観察光が、小レンズ111cとメニスカスレンズ111bとで段階的に曲げられる。これにより、対物レンズ部110での収差が抑えられる。そして、液体供給路120の供給口121及び液体排出路130の吸引口131を収容する収容部をなす面取り部111a−3が、接合レンズの中央の小レンズ111cに掛からないように設けられている。その結果、接合レンズの採用による収差の抑制を妨げないように、供給口121や吸引口131が収容されている。
【0056】
また、本実施形態では、液体供給路120及び液体排出路130についても対物レンズ部110におけるカバー112の外表面に設けられた溝112bの内側に収められる。これにより、対物レンズ120自体について、
図7や
図8に示されているトレイ12の裏面側で培養環境を安定させるために立設されている段差壁123等といった周辺物との干渉を抑えて、光軸と交差する水平方向への移動範囲を広くとってこの方向について広い観察範囲での観察を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態では、浸漬用液体の供給開始の段階で、液体供給路120の略全長分の浸漬用液体の排出が行われる。これにより、供給開始の段階で液体供給路120の内部における気泡Boの量に関わらず、液体供給路120から気泡Boが混入した浸漬用液体が流出し切るまで排出させることができる。
【0058】
尚、以上に説明した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明のケーブル接合体や超音波接合装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0059】
例えば、上述した実施形態では、本発明にいう液浸顕微鏡の一例として、倒立型の共焦点顕微鏡としての液浸顕微鏡1が例示されている。しかしながら、本発明にいう液浸顕微鏡はこれに限るものではなく、液浸顕微鏡であればその具体的な態様を問うものではない。
【0060】
また、上述した実施形態では、本発明にいう対物レンズユニットの一例として、加熱装置が組み込まれたリング状ベース140が設けられた対物レンズユニット11が例示されている。しかしながら、本発明にいう対物レンズユニットは、液浸顕微鏡用の対物レンズを備えたものであれば、その具体的な態様を問うものではない。
【0061】
また、上述した実施形態では、本発明にいう第1液路や第2液路の一例として、1本の液体供給路120と1本の液体排出路130とが例示されている。しかしながら本発明にいう第1液路や第2液路はこれに限るものではない。例えば複数本の液体供給路で浸漬用液体を供給し、1本の液体排出路で浸漬用液体を吸引、排出するもの等であってもよい。あるいは、複数本の液体供給路で浸漬用液体を供給し、複数本の液体排出路で浸漬用液体を吸引、排出するもの等であってもよい。本発明にいう第1液路や第2液路は、各液路の開口部が隣接して配置されるのであれば、その具体的な態様を問うものではない。
【0062】
また、上述した実施形態では、本発明にいう「最も観察対象側のレンズ面」の一例として、接合レンズとしてのトップレンズ111a,211,311のレンズ面111a−1,211a,311aが例示されている。しかしながら、本発明にいう「最も観察対象側のレンズ面」は、これに限るものではなく、単レンズのレンズ面等であってもよく、その具体的な態様を問うものではない。
【0063】
また、上述した実施形態では、本発明にいう開口部が配置される窪みの一例として、次のような3例が例示されている。まず、
図4に示されているように、レンズ面111a−1の外周の一部に設けられた面取り部111a−3が例示されている。また、
図9に示されているように、レンズ面211aの外周の全周に亘って設けられた面取り部211−1が例示されている。
図10に示されているように、レンズ面111a−1の外周の一部に設けられた窪み部311−1が例示されている。しかしながら、本発明にいう開口部が配置される窪みは、これらに限るものではなく、窪み自体、あるいはその一部をなすレンズの部分形状について、その具体的な態様を問うものではない。
【0064】
また、上述した実施形態では、本発明にいう溝の一例として、液体供給路120と液体排出路130とをまとめて内側に収容する1本の溝112bが例示されている。しかしながら、本発明にいう溝はこれに限るものではなく、例えばカバーの開口近傍に合流する2本の溝等であってもよく、その本数や形状等について具体的な態様を問うものではない。