特許第6525314号(P6525314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525314
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】磁界検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20190527BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   G01R33/09
   H01L43/08 Z
   H01L43/08 B
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-108275(P2015-108275)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-223825(P2016-223825A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】一戸 健司
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−54413(JP,A)
【文献】 特開2005−236134(JP,A)
【文献】 特開昭61−104413(JP,A)
【文献】 国際公開第2000/58742(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R33/00−33/26
H01L43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺形状に形成された磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子と平行に配置されて前記磁気抵抗効果素子と直列に接続された通電路とを有し、
前記磁気抵抗効果素子は、固定磁性層とフリー磁性層とを有するGMR素子であり、
前記通電路と前記磁気抵抗効果素子に直流電流を与える電源部が設けられ、前記通電路に与えられる直流電流で誘導される電流磁界が前記フリー磁性層へバイアス磁界として与えられて、前記磁気抵抗効果素子の抵抗変化に基づく出力が検知される磁界検出装置において、
直列に接続された第1の抵抗変化部と第2の抵抗変化部、ならびに直列に接続された第3の抵抗変化部と第4の抵抗変化部が設けられ、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部との直列群と、前記第3の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部との直列群とが並列に接続され、前記第1の抵抗変化部、前記第2の抵抗変化部、前記第3の抵抗変化部、第4の抵抗変化部が、それぞれ前記磁気抵抗効果素子と前記通電路を有しており、
前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記通電路ならびに前記磁気抵抗効果素子が互いに平行に配置され、前記第3の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部とで、前記通電路ならびに前記磁気抵抗効果素子が互いに平行に配置され、
前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記固定磁性層の固定磁化の方向が逆向きで、前記第1の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部とで前記固定磁化の方向が同じで、前記第2の抵抗変化部と前記第3の抵抗変化部とで前記固定磁化の方向が同じであり、
前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部との中点からの前記出力と、前記第3の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部との中点からの前記出力との差が求められることを特徴とする磁界検出装置。
【請求項2】
全ての前記磁気抵抗効果素子は、前記固定磁性層の固定磁化の方向が前記通電路に流れる直流電流と平行である請求項1記載の磁界検出装置。
【請求項3】
全ての前記磁気抵抗効果素子は、前記固定磁性層の固定磁化の方向が前記通電路に流れる直流電流と平行であり、前記通電路に流れる直流電流の向きは、
前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで逆向きで、前記第1の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部が同じで、前記第2の抵抗変化部と前記第3の抵抗変化部が同じである請求項1記載の磁界検出装置。
【請求項4】
全ての前記磁気抵抗効果素子は、前記固定磁性層の固定磁化の方向が前記通電路に流れる直流電流と平行であり、
それぞれの前記抵抗変化部では、一部の前記通電路が正方向通電路で、他の前記通電路が、電流の向きが前記正方向通電路と逆である逆方向通電路であり、1つの前記抵抗変化部に、前記正方向通電路と前記逆方向通電路とが同じ数設けられている請求項1記載の磁界検出装置。
【請求項5】
長尺形状に形成された磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子と平行に配置されて前記磁気抵抗効果素子と直列に接続された通電路とを有し、
前記磁気抵抗効果素子は、固定磁性層とフリー磁性層とを有するGMR素子であり、
前記通電路と前記磁気抵抗効果素子に直流電流を与える電源部が設けられ、前記通電路に与えられる直流電流で誘導される電流磁界が前記フリー磁性層へバイアス磁界として与えられて、前記磁気抵抗効果素子の抵抗変化に基づく出力が検知される磁界検出装置において、
直列に接続された第1の抵抗変化部と第2の抵抗変化部とが設けられ、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部が、それぞれ前記磁気抵抗効果素子と前記通電路を有しており、
前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記通電路ならびに前記磁気抵抗効果素子が互いに平行に配置されて、
前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記固定磁性層の固定磁化の方向が逆向きであり、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部との中点から前記出力が得られ、
全ての前記磁気抵抗効果素子は、前記固定磁性層の固定磁化の方向が前記通電路に流れる直流電流と平行であり、
それぞれの前記抵抗変化部では、一部の前記通電路が正方向通電路で、他の前記通電路が、電流の向きが前記正方向通電路と逆である逆方向通電路であり、1つの前記抵抗変化部に、前記正方向通電路と前記逆方向通電路とが同じ数設けられていることを特徴とする磁界検出装置。
【請求項6】
それぞれの前記磁気抵抗効果素子が第1の磁気抵抗効果素子で、それぞれの前記通電路が第2の磁気抵抗効果素子であり、
前記第1の磁気抵抗効果素子に流れる直流電流で誘導される電流磁界が、前記第2の磁気抵抗効果素子のフリー磁性層に対するバイアス磁界となり、前記第2の磁気抵抗効果素子に流れる直流電流で誘導される電流磁界が、前記第1の磁気抵抗効果素子のフリー磁性層に対するバイアス磁界となる請求項1ないし5のいずれかに記載の磁界検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流磁界によってGMR素子のフリー磁性層にバイアス磁界が印加される構造の磁界検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電流センサや地磁気センサその他各種のセンサに使用される磁界検出装置には、磁気抵抗効果素子としてGMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)が使用される。
【0003】
GMR素子は、固定磁性層と非磁性層とフリー磁性層とが積層されている。固定磁性層は磁化方向が固定されており、フリー磁性層の磁化の方向が外部磁界によって変化させられる。GMR素子は、フリー磁性層の磁化の向きと、固定磁性層の固定磁化の向きとの相対関係で抵抗値が変化し、この抵抗値の変化を検知することで外部磁界の向きと強さを検知することが可能になる。
【0004】
フリー磁性層は、軟磁性材料で形成されるが、その内部で磁壁が移動するとバルクハイゼンノイズが発生し、検知すべき出力が変動する課題がある。
【0005】
そこで、従来は永久磁石を使用したハードバイアス磁界や、反強磁性膜との交換結合磁界を使用したエクスチェンジバイアス磁界をフリー磁性層に与えて、フリー磁性層を形成する軟磁性材料を単磁区化し、軟磁性材料の磁化を揃えることで、出力を安定させている。
【0006】
しかしながら、ハードバイアス磁界を使用した方式は、強い外部磁界が印加されると永久磁石の磁化状態が変化し、ハードバイアス磁界が変化する課題や、同じチップ内でバイアス磁界方向が同一であるため、測定すべき外部磁界の向きが感度軸に対して斜めになると出力の線形性が低下する課題、さらには永久磁石に貴金属類を使用しているため製造コストが高くなる課題などがある。
【0007】
また、エクスチェンジバイアス磁界を使用した方法は、バイアス磁界を強めてしまうとフリー磁性層の磁化方向が動きにくくなって検知感度が低下する課題や、比較的大きなヒステリシスを発生する課題、ならびに高温環境下に保存すると交換結合磁界が劣化してバイアス磁界が変化する課題、さらにはフリー層が幅寸法が短く長さ寸法の大きいものである場合に、強い外部磁界が与えられてフリー層の磁化方向が反転すると、磁化の反転が戻らなくなってオフセットが変化する課題などがある。
【0008】
以下の特許文献1には、電流磁界を利用してフリー磁性層にバイアス磁界を与える磁気抵抗効果素子に関する発明が記載されている。
【0009】
この磁気抵抗効果素子は、複数の長尺形状の磁気抵抗効果膜が平行に配置され、隣り合う磁気抵抗効果膜の隣り合う端部どうしが素子配線で接続されて、磁気抵抗効果膜がいわゆるミアンダ形状に接続されている。
【0010】
前記磁気抵抗効果膜に接続されている配線の一部がバイアス配線とされており、このバイアス配線が、磁気抵抗効果膜の端部から長手方向へ間隔を空けた位置で、磁気抵抗効果膜の長尺方向と交差する方向に延びている。磁気抵抗効果膜に与えられる電流がバイアス配線を流れるときに、バイアス配線で電流磁界が誘導され、この電流磁界がバイアス磁界となって磁気抵抗効果膜に対して長尺方向へ与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014−89088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献1に記載された磁気抵抗効果素子は、バイアス配線を流れる電流で誘導されるバイアス磁界が、長尺形状の磁気抵抗効果膜に対して長手方向に与えられるため、磁気抵抗効果膜は長尺方向の両端部に対して中央部に作用するバイアス磁界が弱くなる。そのため、中央部分が外乱磁界に反応しやすくなり、出力ノイズが大きくなる。逆に、バイアス配線に大電流を与えてバイアス磁界を強くすると、磁気抵抗効果膜の両端部でフリー磁性層の磁化が固定されてしまい検知感度が低下することになる。
【0013】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、過大な電流を与えなくてもGMR素子のフリー磁性層に対してバイアス磁界を安定して与えることができ、低ノイズの検知出力を得ることができる磁界検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の磁界検出装置は、長尺形状に形成された磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子と平行に配置されて前記磁気抵抗効果素子と直列に接続された通電路とを有し、
前記磁気抵抗効果素子は、固定磁性層とフリー磁性層とを有するGMR素子であり、
前記通電路と前記磁気抵抗効果素子に直流電流を与える電源部が設けられ、前記通電路に与えられる直流電流で誘導される電流磁界が前記フリー磁性層へバイアス磁界として与えられて、前記磁気抵抗効果素子の抵抗変化に基づく出力が検知される磁界検出装置において、
直列に接続された第1の抵抗変化部と第2の抵抗変化部、ならびに直列に接続された第3の抵抗変化部と第4の抵抗変化部が設けられ、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部との直列群と、前記第3の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部との直列群とが並列に接続され、前記第1の抵抗変化部、前記第2の抵抗変化部、前記第3の抵抗変化部、第4の抵抗変化部が、それぞれ前記磁気抵抗効果素子と前記通電路を有しており、
前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記通電路ならびに前記磁気抵抗効果素子が互いに平行に配置され、前記第3の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部とで、前記通電路ならびに前記磁気抵抗効果素子が互いに平行に配置され、
前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記固定磁性層の固定磁化の方向が逆向きで、前記第1の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部とで前記固定磁化の方向が同じで、前記第2の抵抗変化部と前記第3の抵抗変化部とで前記固定磁化の方向が同じであり、
前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部との中点からの前記出力と、前記第3の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部との中点からの前記出力との差が求められることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の磁界検出装置では、全ての前記磁気抵抗効果素子は、前記固定磁性層の固定磁化の方向が前記通電路に流れる直流電流と平行であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の磁界検出装置では、全ての前記磁気抵抗効果素子は、前記固定磁性層の固定磁化の方向が前記通電路に流れる直流電流と平行であり、前記通電路に流れる直流電流の向きは、
前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで逆向きで、前記第1の抵抗変化部と前記第4の抵抗変化部が同じで、前記第2の抵抗変化部と前記第3の抵抗変化部が同じであることが好ましい。
【0019】
あるいは、本発明の磁界検出装置では、全ての前記磁気抵抗効果素子は、前記固定磁性層の固定磁化の方向が前記通電路に流れる直流電流と平行であり、
それぞれの前記抵抗変化部では、一部の前記通電路が正方向通電路で、他の前記通電路が、電流の向きが前記正方向通電路と逆である逆方向通電路であり、1つの前記抵抗変化部に、前記正方向通電路と前記逆方向通電路とが同じ数設けられているものが好ましい。
【0020】
あるいは、本発明の磁界検出装置は、長尺形状に形成された磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子と平行に配置されて前記磁気抵抗効果素子と直列に接続された通電路とを有し、
前記磁気抵抗効果素子は、固定磁性層とフリー磁性層とを有するGMR素子であり、
前記通電路と前記磁気抵抗効果素子に直流電流を与える電源部が設けられ、前記通電路に与えられる直流電流で誘導される電流磁界が前記フリー磁性層へバイアス磁界として与えられて、前記磁気抵抗効果素子の抵抗変化に基づく出力が検知される磁界検出装置において、
直列に接続された第1の抵抗変化部と第2の抵抗変化部とが設けられ、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部が、それぞれ前記磁気抵抗効果素子と前記通電路を有しており、
前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記通電路ならびに前記磁気抵抗効果素子が互いに平行に配置されて、
前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部とで、前記固定磁性層の固定磁化の方向が逆向きであり、前記第1の抵抗変化部と前記第2の抵抗変化部との中点から前記出力が得られ、
全ての前記磁気抵抗効果素子は、前記固定磁性層の固定磁化の方向が前記通電路に流れる直流電流と平行であり、
それぞれの前記抵抗変化部では、一部の前記通電路が正方向通電路で、他の前記通電路が、電流の向きが前記正方向通電路と逆である逆方向通電路であり、1つの前記抵抗変化部に、前記正方向通電路と前記逆方向通電路とが同じ数設けられていることを特徴とするものである。
本発明の磁界検出装置は、それぞれの前記磁気抵抗効果素子が第1の磁気抵抗効果素子で、それぞれの前記通電路が第2の磁気抵抗効果素子であり、
前記第1の磁気抵抗効果素子に流れる直流電流で誘導される電流磁界が、前記第2の磁気抵抗効果素子のフリー磁性層に対するバイアス磁界となり、前記第2の磁気抵抗効果素子に流れる直流電流で誘導される電流磁界が、前記第1の磁気抵抗効果素子のフリー磁性層に対するバイアス磁界となるものとすることも可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の磁界検出装置は、長尺状の磁気抵抗効果素子と通電路とが直列に接続されていると共に互いに平行に配置されており、通電路を通過する直流電流で誘導される電流磁界が磁気抵抗効果素子に対して短幅方向へのバイアス磁界として与えられる。
【0022】
そのため、通電路に流れる電流を過大にしなくても、磁気抵抗効果素子の長手方向の全域において短幅方向へ均一なバイアス磁界が与えることができるようになる。よって、磁気抵抗効果素子によって低ノイズで磁界を検知できるようになり、省電力で高感度の検知動作を行うことが可能になる。
【0023】
また、従来のハードバイアス方式やエクスチェンジバイアス方式の課題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施の形態の磁界検出装置を示す平面図、
図2図1に示す磁界検出装置の回路図、
図3】第1の抵抗変化部を構成する通電路と磁気抵抗効果素子を示す断面図、
図4】(A)は、第1の抵抗変化部を構成する通電路と磁気抵抗効果素子の構造と動作を示す説明図、(B)は、第2の抵抗変化部を構成する通電路と磁気抵抗効果素子の構造と動作を示す説明図、
図5】本発明の第2の実施の形態の磁界検出装置を示すものであり、(A)は、第1の抵抗変化部を構成する通電路(第2の磁気抵抗効果素子)と第1の磁気抵抗効果素子の構造と動作を示す説明図、(B)は、第2の抵抗変化部を構成する通電路(第2の磁気抵抗効果素子)と第1の磁気抵抗効果素子の構造と動作を示す説明図、
図6】本発明の第3の実施の形態の磁界検出装置を示す平面図、
図7】本発明の第4の実施の形態の磁界検出装置を示す平面図、
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図2に示す第1の実施の形態の磁界検出装置1は、基板の表面であるX−Y平面に沿って形成された薄膜の積層体で構成されている。
【0026】
磁界検出装置1は、第1の抵抗変化部R1、第2の抵抗変化部R2、第3の抵抗変化部R3および第4の抵抗変化部R4を有している。
【0027】
第1の抵抗変化部R1と第2の抵抗変化部R2は直列に接続され、第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4は直列に接続されている。第1の抵抗変化部R1と第2の抵抗変化部R2との直列群と、第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4との直列群とが並列に接続されている。図2に示すように、磁界検出装置1には直流電流(直流電力)を与える電源部2が接続されており、第1の抵抗変化部R1と第3の抵抗変化部のY1側の端部に直流電圧(駆動電圧)Vddが印加され、第2の抵抗変化部R2のY2側の端部と、第4の抵抗変化部R4のY2側の端部とが、接地電位Gndに設定されている。
【0028】
第1の抵抗変化部R1と第2の抵抗変化部R2との中点から第1の中点出力Out1が得られ、第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4との中点から第2の中点出力Out2が得られる。図2に示すように、第1の中点出力Out1と第2の中点出力Out2は、差動増幅器3に与えられて、第1の中点出力Out1と第2の中点出力Out2との差が求められる。この差の出力が磁界検知出力である。
【0029】
図1に示すように、第1の抵抗変化部R1、第2の抵抗変化部R2、第3の抵抗変化部R3、第4の抵抗変化部R4には、それぞれ磁気抵抗効果素子10が複数設けられている。全ての磁気抵抗効果素子10は、左右方向(X方向)に長手方向が向けられた長尺形状であり、且つ互いに平行に形成されている。
【0030】
本明細書における長尺形状の磁気抵抗効果素子10とは、X方向に一体に連続しているものであってもよいし、X方向に複数個に途切れており、個々の素子が導電層で接続されてX方向に連結されているものであってもよい。
【0031】
第1の抵抗変化部R1には、複数の通電路21が形成されている。個々の通電路21は左右方向(X方向)に長手方向が向けられた長尺形状である。同様に、第2の抵抗変化部R2、第3の抵抗変化部R3および第4の抵抗変化部R4にも、長手方向がX方向に向けられた長尺形状の通電路22,23,24が形成されている。
【0032】
図4(A)には、第1の抵抗変化部R1に配列している磁気抵抗効果素子10と通電路21の一部が示されている。図1図4(A)に示すように、第1の抵抗変化部R1では、それぞれの通電路21のX1側の端部が接続部26aを介してその下側に位置する磁気抵抗効果素子10のX1側の端部に接続されている。図1に示すように、それぞれの通電路21のX2側の端部は、接続部26bを介してY1側に隣接する磁気抵抗効果素子10のX2側の端部に接続されている。よって、第1の抵抗変化部R1はいわゆるミアンダパターンとなっており、ミアンダパターンの各行では、通電路21と磁気抵抗効果素子10とが、直列に接続され、且つ接続部26aで折り返されて互いに平行に対向している。
【0033】
第1の抵抗変化部R1において、最もY1側に位置する通電路21のX2側の端部は、電源部2に接続されている。したがって、第1の抵抗変化部R1のそれぞれの通電路21に流れる直流電流I1は、常にX1方向に向けられている。また、それぞれの磁気抵抗効果素子10に流れる直流電流Ia(図4(A)参照)は、X2方向へ向けられている。直流電流I1と直流電流Iaは同じ電流であるが、説明の都合上異なる符号で示している。
【0034】
図4(B)には、第2の抵抗変化部R2に配列している磁気抵抗効果素子10と通電路22の一部が示されている。図1図4(B)に示すように、通電路22のX2側の端部は接続部27bを介して、その下に位置する磁気抵抗効果素子10のX2側の端部に接続され、通電路22のX1側の端部は接続部27aを介して、Y2側に隣接する磁気抵抗効果素子10のX1側の端部に接続されている。第2の抵抗変化部R2でも、通電路22と磁気抵抗効果素子10とが、直列に接続されており、且つ接続部27bで折り返されて、互いに平行に対向している。
【0035】
第2の抵抗変化部R2において、最もY2側に位置する通電路22のX1側の端部は、接地電位Gndに接続されている。また、第1の抵抗変化部R1において最もY2側に位置する磁気抵抗効果素子10のX2側の端部と、第2の抵抗変化部R2において最もY1側に位置する磁気抵抗効果素子10のX1側の端部とが、導電性の連結層28で連結されている。第1の中点出力Out1は、連結層28から得られる。
【0036】
第2の抵抗変化部R2においても、ミアンダパターンで配列しているそれぞれの通電路22に直流電流I2がX1方向へ流れ、磁気抵抗効果素子10に、直流電流Ib(図4(B)参照)がX2方向へ流れる。直流電流I2とIbは同じ電流である。
【0037】
図1に示すように、第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4における、磁気抵抗効果素子10と通電路23または24との接続構造は、第2の抵抗変化部R2とほぼ同じである。
【0038】
第3の抵抗変化部R3の最もY2側に位置する通電路23のX1側の端部と、第4の抵抗変化部R4の最もY1側に位置する磁気抵抗効果素子10のX1側の端部とが、導電性の連結層29で連結されている。第2の中点出力Out2は、連結層29から得られる。
【0039】
第3の抵抗変化部R3でも、それぞれの通電路23に直流電流I3がX1方向へ流れ、磁気抵抗効果素子10に直流電流がX2方向へ流れる。第4の抵抗変化部R4でも、それぞれの通電路24に直流電流I4がX1方向へ流れ、磁気抵抗効果素子10には直流電流がX2方向へ流れる。
【0040】
図3には、第1の抵抗変化部R1に配列する磁気抵抗効果素子10と通電路21との積層構造が断面図で示されている。
【0041】
磁気抵抗効果素子10は、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)であり、基板7の上に絶縁下地層8とシード層9が形成されており、その上に、固定磁性層11と非磁性層12とフリー磁性層13が順に積層され、フリー磁性層13が保護層および絶縁層14で覆われている。
【0042】
固定磁性層11は、第1の固定層11aと第2の固定層11b、ならびに第1の固定層11aと第2の固定層11bとの間に位置する非磁性中間層11cを有する積層フェリ構造である。第1の固定層11aと第2の固定層11bは、CoFe合金(コバルト−鉄合金)などの軟磁性材料で形成されている。非磁性中間層11cはRu(ルテニウム)などで形成されている。
【0043】
積層フェリ構造の固定磁性層11は、第1の固定層11aと第2の固定層11bの磁化が反平行に固定されたいわゆるセルフピン構造である。積層フェリ構造の固定磁性層11は、磁化中で熱処理を行うことなく、第1の固定層11aと第2の固定層11bの反強磁性結合により、磁化の向きが固定される。固定磁性層11の固定磁化Pinの方向は、第2の固定層11bの磁化方向を意味している。第1の抵抗変化部R1では、全ての磁気抵抗効果素子10の固定磁性層11の固定磁化Pinの方向が図1において黒塗りの矢印で示すX1方向である。
【0044】
非磁性層12はCu(銅)などの非磁性導電材料で形成されている。フリー磁性層13は、NiFe合金(ニッケル−鉄合金)などの軟磁性材料で形成されている。フリー磁性層13は、左右方向(X方向)の長さ寸法が前後方向(Y方向)の幅寸法よりも十分に大きい長尺形状である。
【0045】
磁気抵抗効果素子10の上に、保護層および絶縁層14が形成されており、その上に通電路21が形成されている。保護層および絶縁層14は一部が除去されており、この除去部分に通電路21と同じ導電材料が充填されて、磁気抵抗効果素子10と導通する接続部26a,26bが形成される。
【0046】
通電路21は、Al(アルミニウム)、Cu、Ti(チタン)、Cr(クロム)などの非磁性の導電性材料で形成されており、例えばCuとAlとの積層構造である。通電路21はスパッタ工程などで形成されている。
【0047】
磁気抵抗効果素子10は、固定磁性層11の固定磁化Pinと平行な方向であるX方向が感度軸方向である。フリー磁性層13の磁化のベクトルが固定磁化Pinと平行となるX1方向へ向けられると、磁気抵抗効果素子10の抵抗値が極小となり、磁化が固定磁化Pinと反平行であるX21方向へ向けられると、磁気抵抗効果素子10の抵抗値が極大になる。
【0048】
第2の抵抗変化部R2,第3の抵抗変化部R3および第4の抵抗変化部R4における磁気抵抗効果素子10の構造、および通電路22,23または24の積層構造は、第1の抵抗変化部R1と実質的に同じである。ただし、固定磁性層11の磁化の方向は抵抗変化部R1,R2,R3,R4で相違している。図1において黒塗りの矢印で示すように、第1の抵抗変化部R1と第4の抵抗変化部R4は、固定磁化PinがX1方向であり、第2の抵抗変化部R2と第3の抵抗変化部R3は、固定磁化Pinの向きがX2方向である。
【0049】
次に、第1の実施の形態の磁界検出装置1の動作を説明する。
図2に示す電源部2から、第1の抵抗変化部R1と第2の抵抗変化部R2との直列群と、第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4との直列群に、直流電流が与えられる。
【0050】
図4(A)に示すように、第1の抵抗変化部R1では、通電路21においてX1方向に流れる直流電流I1によって電流磁界H1が誘導される。この電流磁界H1によって、その下の磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13に対してY2方向のバイアス磁界が与えられる。このバイアス磁界によって、第1の抵抗変化部R1に設けられた磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13が単磁区化され、その磁化HaがY2方向に揃えられる。図1では、磁化Haの向きがハッチング付きの矢印で示されている。
【0051】
図4(B)に示すように、第2の抵抗変化部R2でも、通電路22に直流電流I2がX1方向へ流れ、その電流磁界H1がバイアス磁界として、磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13にY2方向へ与えられる。よって、第2の抵抗変化部R2においても、磁気抵抗効果素子10に設けられたフリー磁性層13が単磁区化され、その磁化HbがY2方向へ揃えられる。
【0052】
第3の抵抗変化部R3においても、通電路23の直流電流I3で誘導される電流磁界が、磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13にバイアス磁界としてY2方向へ与えられ、フリー磁性層13が単磁区化され磁化HcがY2方向へ揃えられる。第4の抵抗変化部R4の磁気抵抗効果素子10も同様であり、直流電流I4で誘導される電流磁界がバイアス磁界となり、磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13が単磁区化され、磁化HdがY2方向へ揃えられる。
【0053】
図1に示す磁界検出装置1は、それぞれの抵抗変化部R1,R2,R3,R4に設けられた磁気抵抗効果素子10の固定磁性層11の固定磁化Pinの向きがX方向であり、感度軸方向はX方向である。
【0054】
図1に示すように、外部磁界BがX2方向に与えられると、第1の抵抗変化部R1に設けられた磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13の磁化Haは、破線の矢印で示すように、X2方向へ向けられる。同様に、第2の抵抗変化部R2でのフリー磁性層13の磁化Hbと、第3の抵抗変化部R3でのフリー磁性層13の磁化Hcおよび第4の抵抗変化部R4でのフリー磁性層13の磁化Hdも破線の矢印で示すようにX2方向へ向けられる。
【0055】
その結果、第1の抵抗変化部R1の全体の抵抗値と第4の抵抗変化部R4の全体の抵抗値が大きくなり、第2の抵抗変化部R2の全体の抵抗値と第3の抵抗変化部R3の全体の抵抗値が小さくなる。よって、第1の中点出力Out1の電圧値が低下し、第2の中点出力Out2の電圧値が高くなり、図2に示す差動増幅部3からの電圧出力が高くなる。
【0056】
図1とは逆に、外部磁界BがX1方向へ向けて与えられると、第1の中点出力Out1の電圧値が増大し、第2の中点出力Out2の電圧値が低下し、図2に示す差動増幅部3からの電圧出力が低くなる。
【0057】
前記磁界検出装置1では、図4(A)(B)に示すように、第1の抵抗変化部R1の通電路21と第2の抵抗変化部R2の通電路22が、X方向に細長く形成されて、長尺形状の磁気抵抗効果素子10に接近して平行に設けられている。そのため、通電路21,22に流れる直流電流I1,I2で誘導される電流磁界が、磁気抵抗効果素子10の長尺形状の全長において、Y方向へ均等に作用し、フリー磁性層13の磁化Ha,Hbが、長手方向の全長にわたって、均一にY2方向へ揃えられる。したがって、磁気抵抗効果素子10は全長において均一な動作を行うことができ、外乱によるノイズを低減でき、全長にわたって感度を均一にし、感度を高くすることが可能である。これは第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4においても同じである。
【0058】
また、図1に示す磁界検知装置1では、それぞれの抵抗変化部R1,R2,R3,R4で、磁気抵抗効果素子10の固定磁性層11の固定磁化Pinの向きがX1方向またはX2方向である。また、全ての磁気抵抗効果素子10においてフリー磁性層13の磁化がY2方向へ揃えられている。
【0059】
よって、X方向への外部磁界が作用していないときには、第1の中点出力Out1と第2の中点出力Out2の電圧値が理論上一致し、差動増幅器3の出力値が中間値(ゼロ出力)となる。そして、外部磁界Bの向きがX1方向のときに出力が増大し(プラス出力となり)、外部磁界Bの向きがX2方向のときに出力が低下する(マイナス出力となる)。
【0060】
そのため、例えば、平衡式の電流センサでの使用に適している。平衡式の電流センサは、被測定電流で誘導される測定磁界が磁界検知装置1に与えられるとともにフィードバックコイルに流れる電流から誘導されるキャンセル磁界も磁界検知装置1に与えられる。測定磁界とコイル磁界は磁界検知装置1に対して逆向きに与えられる。
【0061】
磁界検出装置1から、測定磁界とキャンセル磁界との差に相当する検知出力が得られ、制御部では、フィードバックコイルに対し前記検知出力がゼロに近づくためのコイル電流が与えられる。そして、測定磁界とキャンセル磁界とが相殺されて、コイル電流が安定状態となったときに、このコイル電流の電流値から測定磁界の大きさが測定される。
【0062】
図1に示す磁界検出装置1は、差動増幅器3からの出力が中間値(ゼロ出力)を中心として増減するため、その検知出力でフィードバックコイルへ与えられるコイル電流を制御するのに適している。
【0063】
図5は、本発明の第2の実施の形態の磁界検出装置1Aを示している。
図5(A)には、第1の抵抗変化部R1を構成する磁気抵抗効果素子10と通電路21Aが示されている。通電路21Aは、磁気抵抗効果素子10と同じ積層構造のGMR素子で構成されている。すなわち、図5(A)に示すものは、図1図4に示す第1の抵抗変化部R1の通電路21がGMR素子の通電路21Aに置換されたものである。
【0064】
この構成では、磁気抵抗効果素子10が第1の磁気抵抗効果素子として機能し、通電路21Aが第2の磁気抵抗効果素子として機能する。磁気抵抗効果素子10と、第2の磁気抵抗効果素子である通電路21Aの固定磁性層の固定磁化Pinの向きは、共にX1方向である。通電路21Aと磁気抵抗効果素子10は接続部26aによって直列に接続されているとともに、180度折り返されて互いに平行に対向する構造である。なお、接続部26aは、GMR素子を構成しない導電性材料で形成される。
【0065】
直流電流I1が通電路21Aを流れると、この電流で誘導される電流磁界H1が、磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13にY2方向のバイアス磁界として作用し、磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13が単磁区化され磁化Ha1がY2方向へ揃えられる。また、磁気抵抗効果素子10を流れる直流電流Iaで誘導される電流磁界H3は、通電路21Aである第2の磁気抵抗効果素子のフリー磁性層にY2方向のバイアス磁界として作用し、通電路21Aのフリー磁性層の磁化Ha2がY2方向へ揃えられる。
【0066】
磁気抵抗効果素子10と通電路21Aを構成しているGMR素子とで、外部磁界による抵抗値の変化が同じである。
【0067】
図5(B)に示すように、第2の抵抗変化部R2においても、通電路22AがGMR素子で構成されており、磁気抵抗効果素子10が第1の磁気抵抗効果素子として機能し、通電路22Aが第2の磁気抵抗効果素子として機能する。通電路22Aと磁気抵抗効果素子10は接続部27bを介して直列に接続され、且つ互いに平行に対向している。第2の磁気抵抗効果素子である通電路22Aと磁気抵抗効果素子10は、共に固定磁性層の固定磁化Pinの向きがX2方向である。
【0068】
図5(B)では、通電路22Aに流れる直流電流I2で誘導される電流磁界H1が、磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13にY2方向のバイアス磁界を与え、フリー磁性層13の磁化Hb1がY2方向へ揃えられる。また、磁気抵抗効果素子10に流れる直流電流Ibで誘導される電流磁界H4が、第2の磁気抵抗効果素子である通電路22Aに対してY2方向へバイアス磁界を与え、通電路22Aのフリー磁性層の磁化Hb2もY2方向へ向けられる。
【0069】
同様にして、第3の抵抗変化部R3でも、第2の磁気抵抗効果素子である通電路23Aが設けられ、通電路23Aと磁気抵抗効果素子10の双方のフリー磁性層13の磁化がY2方向へ向けられる。第4の抵抗変化部R4でも、第2の磁気抵抗効果素子である通電路24Aが設けられ、通電路24Aと磁気抵抗効果素子10の双方のフリー磁性層13の磁化がY2方向へ向けられる。
【0070】
第2の抵抗変化部R2と第3の抵抗変化部R3および第4の抵抗変化部R4においても、X方向の外部磁界に対して、第2の磁気抵抗効果素子である通電路と、第1の磁気抵抗効果素子である磁気抵抗効果素子10が同じ抵抗値の変化を示す。
【0071】
この磁界検出装置1Aでは、各抵抗変化部R1,R2,R3,R4において、磁気抵抗効果素子の長さを第1の実施の形態の2倍にできるため、S/N比を向上できる。また、第1の実施の形態と同じ性能とするならば、大きさを第1の実施の形態よりも小さくできる。
【0072】
図6に示す第3の実施の形態の磁界検出装置1Bは、第1の抵抗変化部R1と第4の抵抗変化部R4の構造が、図1に示す第1の実施の形態のR1,R4と同じである。第1の抵抗変化部R1と第4の抵抗変化部R4では、磁気抵抗効果素子10の固定磁性層11の固定磁化Pinの向きがX1方向であり、フリー磁性層13の磁化Ha,Hdの向きが共にY2方向である。
【0073】
図6に示す第3の実施の形態では、第2の抵抗変化部R2の通電路22と磁気抵抗効果素子10との接続構造が図1に示す第1の実施の形態と相違している。図6に示す通電路22では、直流電流I2がX2方向に流れている。したがって、直流電流I2で誘導される電流磁界が磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13に対してY1方向に作用し、フリー磁性層13の磁化HbがY1方向へ揃えられている。なお、第2の抵抗変化部R2では、磁気抵抗効果素子10の固定磁性層11の固定磁化Pinの向きが、第1の実施の形態と同じX2方向である。
【0074】
図6に示す実施の形態では、第3の抵抗変化部R3でも、通電路23に直流電流I3がX2方向に流れている。直流電流I3で誘導される電流磁界が磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13に対してY1方向に作用し、フリー磁性層13の磁化HcがY1方向へ揃えられている。なお、磁気抵抗効果素子10の固定磁性層11の固定磁化Pinの向きは、第1の実施の形態の第3の抵抗変化部R3と同じX2方向である。
【0075】
図6に示す第3の実施の形態の磁界検出装置1Bは、感度軸方向であるX方向以外の向きの磁界に対して反応しにくくなる。
【0076】
図6に示すように、X2方向に向く外部磁界Bが与えられているときは、各抵抗変化部R1,R2,R3,R4に設けられた磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13の磁化Ha,Hb,Hc,Hdが破線矢印で示す向きに傾いている。このとき、第1の抵抗変化部R1と第4の抵抗変化部R4で抵抗値が増大し、第2の抵抗変化部R2と第3の抵抗変化部R3で抵抗値が低下し、差動増幅部3からの出力値は中間値よりも高くなっている。
【0077】
ここで、Y1方向への外乱磁界が作用すると、各抵抗変化部R1,R2,R3,R4に設けられた全ての磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13の磁化Ha,Hb,Hc,Hdが破線矢印の向きからさらに反時計方向へ変化する。このとき、第1の抵抗変化部R1と第4の抵抗変化部R4で抵抗値が上がるが、第2の抵抗変化部R2と第3の抵抗変化部R3でも抵抗値が上がるため、差動増幅部3からの出力は変動しない。
【0078】
第3の実施の形態の磁界検出装置1Bでは、感度軸方向以外の向きの磁界成分については、検知出力が変動しなくなり、感度軸方向に向く外部磁界Bを検知する検知出力にオフセットが発生しなくなる。よって、感度軸方向に向く外部磁界Bを検知する検知出力の線形性を向上させることができる。
【0079】
図7に示す第4の実施の形態の磁界検出装置1Cでは、第1の抵抗変化部R1に、直流電流I1がX1方向に流れる正方向通電路21aと、直流電流I1がX2方向に流れる逆方向通電路21bとが設けられている。正方向通電路21aと逆方向通電路21bは同数設けられている。
【0080】
正方向通電路21aと重ねて設けられている磁気抵抗効果素子10では、正方向通電路21aに流れる直流電流I1の電流磁界が、Y2方向へのバイアス磁界として作用し、フリー磁性層13の磁化HaがY2方向に向けられる。逆方向通電路21bと重ねて設けられている磁気抵抗効果素子10では、逆方向通電路21bに流れる直流電流I1の電流磁界がY1方向へのバイアス磁界として作用し、フリー磁性層13の磁化HaがY1方向に向けられる。
【0081】
第1の抵抗変化部R1では、正方向通電路21aからバイアス磁界が与えられる磁気抵抗効果素子10と、逆方向通電路21bからバイアス磁界が与えられる磁気抵抗効果素子10とで、感度軸方向(X方向)に向く外部磁界Bが与えられたときに、抵抗値が同じ極性で変化する。
【0082】
また、感度軸方向以外のY方向に向く外乱磁界が与えられたときは、第1の抵抗変化部R1内で、全ての磁気抵抗効果素子10のフリー磁性層13の磁化Haが同じ方向へ回転するため、外乱磁界による抵抗変化が相殺される。例えばY1方向に向く磁界が作用すると、磁化Haが反時計方向へ動いて正方向通電路21aからバイアス磁界が与えられる磁気抵抗効果素子10の抵抗値が増大するが、逆方向通電路21bからバイアス磁界が与えられる磁気抵抗効果素子10では磁化Haが反時計方向へ動くために抵抗値が低下する。これにより、Y方向の磁界成分による抵抗値の変動が相殺される。
【0083】
これは第2の抵抗変化部R2と第3の抵抗変化部R3および第4の抵抗変化部R4で同じである。第2の抵抗変化部R2でも、正方向通電路22aと逆方向通電路22bが同数設けられている。第3の抵抗変化部R3と第4の抵抗変化部R4でも、正方向通電路23a,24aと逆方向通電路23b,24bがそれぞれ同数設けられている。
【0084】
なお、図6図7の実施の形態においても、図5に示す第2の実施の形態のように、それぞれの通電路21,22,23,24,21a,21b,22a,22b,23a,23b,23a,23bが第2の磁気抵抗効果素子で構成されていてもよい。
【0085】
なお、前記各実施の形態では、抵抗変化部R1,R2,R3,R4によってフルブリッジ回路が構成されているが、第1の抵抗変化部R1と第2の抵抗変化部R2とで直列回路を構成してもよいし、抵抗変化部R3,R4を固定抵抗としてブリッジ回路を構成してもよい。
【符号の説明】
【0086】
B 外部磁界
H1,H2,H3,H4 電流磁界
Ha,Hb,Hc,Hd フリー磁性層の磁化
I1,I2,I3,I4 直流電流
Ia,Ib 直流電流
Out1 第1の中点出力
Out2 第2の中点出力
Pin 固定磁化
R1 第1の抵抗変化部
R2 第2の抵抗変化部
R3 第3の抵抗変化部
R4 第4の抵抗変化部
1,1A,1B,1C 磁界検出装置
2 電源部
3 差動増幅部
10 磁気抵抗効果素子
11 固定磁性層
12 非磁性層
13 フリー磁性層
21,22,23,24 通電路
21A,22A 第2の磁気抵抗効果素子である通電路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7