特許第6525344号(P6525344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6525344電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置
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  • 特許6525344-電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525344
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/48 20060101AFI20190527BHJP
   B60T 15/36 20060101ALI20190527BHJP
   B60T 13/68 20060101ALI20190527BHJP
   B60T 13/18 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   B60T8/48
   B60T15/36 Z
   B60T13/68
   B60T13/18
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-573106(P2016-573106)
(86)(22)【出願日】2015年5月6日
(65)【公表番号】特表2017-518222(P2017-518222A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2015059906
(87)【国際公開番号】WO2015193027
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2016年12月14日
(31)【優先権主張番号】102014211582.5
(32)【優先日】2014年6月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】カスパー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュナルツガー,ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ライナー,ユルゲン
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06050654(US,A)
【文献】 特開平02−169357(JP,A)
【文献】 特開平01−111558(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02224089(GB,A)
【文献】 特開平05−112229(JP,A)
【文献】 特開平02−231256(JP,A)
【文献】 米国特許第04865397(US,A)
【文献】 特開平03−200461(JP,A)
【文献】 特開平04−224452(JP,A)
【文献】 米国特許第05061017(US,A)
【文献】 特開昭64−047649(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0306871(US,A1)
【文献】 特表2003−507258(JP,A)
【文献】 特開平08−072688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12 − 8/96
B60T 13/00 −13/74
B60T 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋力によって操作可能なブレーキマスタシリンダ(12)と、外力によって駆動可能な圧力生成器(38)であって、前記ブレーキマスタシリンダ(12)および圧力生成器(38)と圧力媒体配管を介して結合する車輪ブレーキ(14)に、ブレーキ圧のもとにあるブレーキ液を供給する前記圧力生成器(38)と、電子制御可能で、前記ブレーキマスタシリンダ(12)と前記車輪ブレーキ(14)との圧力媒体結合と、前記ブレーキマスタシリンダ(12)と前記圧力生成器(38)の吸込み接続部(40)との圧力媒体結合とを制御する弁機構(50)と、
を備えた電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置において、
前記弁機構(50)が、3つの圧力媒体接続部(54,56,58)を備えた単一の3ポート3位置方向切換弁を含み、前記単一の3ポート3位置方向切換弁が、制御可能なアクチュエータ(60)を介して、3つの不連続な位置(64,66,68)へ切換え可能であり、これら不連続な位置で、前記圧力媒体接続部(54,56,58)が異なるバリエーションで互いに接続され、または互いに遮断されていることを特徴とする電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置。
【請求項2】
前記弁機構(50)の第1の圧力媒体接続部(54)が前記ブレーキマスタシリンダ(12)と圧力媒体配管を介して結合し、第2の圧力媒体接続部(56)が前記圧力生成器(38)の吐出部(52)と圧力媒体配管を介して結合し、第3の圧力媒体接続部(58)が前記圧力生成器(38)の吸込み接続部(40)と圧力媒体配管を介して結合していることを特徴とする、請求項1に記載の電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置。
【請求項3】
前記弁機構(50)がさらにバイパス(70)を有し、前記バイパスが、前記弁機構(50)の前記ブレーキマスタシリンダ(12)への前記第1の圧力媒体接続部(54)を、前記弁機構(50)の前記圧力生成器(38)の前記吐出部(52)への前記第2の圧力媒体接続部(56)と結合させ、前記バイパス(70)内に、前記バイパス(70)を前記第2の圧力媒体接続部(56)から前記第1の圧力媒体接続部(54)への流動方向において遮断する逆止弁(72)が配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置。
【請求項4】
前記逆止弁(72)が、前記ブレーキ液の圧力だけで弁座に対し押圧されている閉鎖体を有していることを特徴とする、請求項3に記載の電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置。
【請求項5】
前記車両ブレーキ装置が、前記車輪ブレーキ(14)内の圧力を調整するために、それぞれ電子制御可能な第2の弁機構(16)を有し、前記第2の弁機構が3つの圧力媒体接続部(18,20,22)を備えた単一の弁によって形成され、前記単一の弁が電子制御可能なアクチュエータ(24)によって3つの不連続な位置へ切換え可能であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置。
【請求項6】
電子制御可能な前記弁機構(16;50)のそれぞれが、前記車両ブレーキ装置を制御するため、3つの接続部を備え、且つ3つの切換え位置へ切換え可能であることを特徴とする、請求項5に記載の電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置。
【請求項7】
全部で3つの位置の2つの位置で、前記弁機構(16;50)を前記ブレーキ液が貫流していること、前記位置のうちの1つの位置で、前記弁機構(16;50)の前記接続部が互いに遮断されていること、遮断位置は、前記弁機構(16;50)が貫流を受けている前記2つの位置の間に配置されていることを特徴とする、請求項5または6に記載の電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の類概念の構成要件による電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のスリップ制御可能な車両ブレーキ装置は、たとえば特許文献1から知られている。この公知の車両ブレーキ装置は、ロックアッププロテクションコントロールと、トラクションスリップコントロールと、走行動的コントロールとを含んでいる。ロックアッププロテクションコントロールの場合には、ドライバーは車輪ブレーキ内のブレーキ圧を筋力でブレーキマスタシリンダを操作することによって発生させるが、このブレーキ圧は、トラクションスリップコントロールおよび走行動的コントロールの場合には、少なくとも部分的に外力によって発生せしめられる。このため、車両ブレーキ装置は、電子制御可能な電動機によって駆動される圧力生成器を備えている。
【0003】
この公知の車両ブレーキ装置のブレーキマスタシリンダと車輪ブレーキとの間には、切換え弁によって制御可能な第1の圧力媒体結合部がある。切換え弁は、その基本位置で開口し、貫流位置から遮断位置へ切換えることのできる、2つの圧力媒体接続部を備えた方向制御弁である。切換え弁の遮断位置でドライバーと車輪ブレーキとの間の液圧結合は中断され、その結果ドライバーによるブレーキ圧の変更はもはや不可能である。
【0004】
第2の圧力媒体結合部は、ブレーキマスタシリンダと圧力生成器の吸込み側との間にある。この圧力媒体結合部は、いわゆる吸込み弁を用いて制御可能である。この吸込み弁は、その基本位置において閉じ、必要な場合にブレーキマスタシリンダから圧力生成器への圧力媒体の供給を可能にするために遮断位置から貫流位置へ切換えることのできる、2つの圧力媒体接続部を備えた方向制御弁である。
【0005】
吸込み弁と切換え弁とは、構造的に互いに切り離されてそれぞれ付設の電子制御可能なアクチュエータによって切換え可能な2つの2ポート2位置方向制御弁として構成されている。この構造方式は比較的複雑であり、両弁を車両ブレーキ装置の液圧アッセンブリのハウジングブロックに固定するために二重の組み立てコストを必要とし、このハウジングブロックのために比較的大きな構成空間を要求し、さらに、高価である。
【0006】
前記特許文献1に対する上記説明は、2つの単一の2ポート2位置方向制御弁の代わりに、1つの共通の3ポート3位置方向制御弁をも使用できるという示唆を含んでいる。ただし、この示唆は圧力生成弁または減圧弁に関わるものであり、すなわち車輪ブレーキ内のブレーキ圧を調整するための機構に関わるものであり、走行安定性コントロール型車両ブレーキ装置(ESPブレーキ装置)において切換え弁を吸込み弁と組み合わせることに関わるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第19940263A1号明細書
【発明の概要】
【0008】
請求項1の構成要件による、電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ装置は、部材の相乗効果を利用することにより、必要なアッセンブリの数量の低減が行われ、結局部品コストおよび組み立てコストと構成空間とを節減できるという利点を有している。
【0009】
本発明の更なる利点または好適な更なる構成は、従属項および以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の1実施例が図面に図示されており、以下の説明で詳細に説明する。
図1】本発明により構成された、電子式にスリップ制御可能な走行安定性コントロール型車両ブレーキ装置の、主要構成要素の切換え記号を備える液圧回路図を用いたブレーキ回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図には、ロックアッププロテクションコントロール、トラクションスリップコントロール、走行安定性コントロール(ABS/ESPブレーキ装置)を備えた車両ブレーキ装置のブレーキ回路10が図示されている。このブレーキ回路10は、当該ブレーキ回路10の2つの車輪ブレーキ14にブレーキ液をブレーキ圧で供給するために、ドライバーによって筋力により操作可能なブレーキマスタシリンダ12に接続され、たとえばブレーキペダルを介して接続されている。車輪ブレーキ14内のブレーキ圧は、その都度圧力調整弁16を用いて調整されて、それぞれの車輪ブレーキ14に付設されている車輪に支配的なスリップ比率に整合せしめられる。それぞれの圧力調整弁16は3つの圧力媒体接続部18,20,22を備えた方向制御弁として形成され、当該方向制御弁は、電子制御可能なアクチュエータ24によって、復帰要素26の力に抗して3つの不連続な位置28,30,32へ切換え可能である。
【0012】
圧力調整弁16は、図示した基本位置28では開いており(貫流位置)、すなわち圧力調整弁の16のマスタブレーキシリンダ接続部または供給接続部18と車輪接続部20とは互いに結合しており、その結果ブレーキ液は付設の車輪ブレーキ14内へ流入することができる。このときの液圧結合は、ブレーキ圧を状況に依存して整合させるために両流動方向に貫流可能である。圧力調整弁16の還路接続部22は、この基本位置28では、車輪ブレーキ14内での圧力生成をおよそ初めて可能にするために、遮断されている。
【0013】
圧力調整弁の中央位置では、3つの接続部18,20,22はすべて相互に遮断されている。この遮断位置30は、一度生成させたブレーキ圧を維持するために用いる。
【0014】
圧力媒体調整弁16の第3の位置では、車輪接続部20と還路接続部22とが互いに結合され、且つブレーキマスタシリンダ接続部18は遮断されている。この減圧位置32では、ブレーキ液は車輪ブレーキ14から流出し、これによってブレーキ圧の降下が生じる。
【0015】
流出したブレーキ液は、ブレーキ回路10の他の車輪ブレーキ14の圧力調整弁16の還路接続部32と結合されている還路部34内へ到達する。還路部34内には、流出したブレーキ液を当初緩衝させる蓄圧器36が設けられている。還路部34には、さらに、圧力生成器38がそのポンプ吸込み接続部40でもって接続されている。圧力生成器38は、ブレーキ液を、圧力調整弁16の減圧位置32で接続されるブレーキマスタシリンダ接続部18へ戻し搬送するとともに、これと同時にブレーキ圧を高めるために、電子制御可能な駆動モータ42によって操作可能である。還路接続部22に比較可能に、ブレーキ回路10の圧力調整弁16のブレーキマスタシリンダ接続部18も供給管44を介して互いに連結されている。
【0016】
逆止弁48を内設したバイパス46によって各圧力調整弁16を迂回させることができ、その際この逆止弁48は、車輪ブレーキ14からブレーキマスタシリンダ12の方向に開き、逆方向で遮断する。バイパス46または逆止弁48は、ドライバーがブレーキマスタシリンダ12での操作力を減少させ、その結果ブレーキマスタシリンダ接続部18での圧力レベルが圧力調整弁16の車輪ブレーキ接続部20での圧力レベルよりも低くなるとすぐに、車輪ブレーキ14においてブレーキ圧をより迅速に且つ可能な限り絞らずに降下できるために設けられている。
【0017】
ブレーキ回路10は、さらに、ブレーキマスタシリンダ12と圧力生成器40のポンプ圧接続部52との間に配置されている作動モード切換え弁50を備えている。この作動モード切換え弁50は、本発明によれば、3つの圧力媒体接続部54,56,58を備えた方向制御弁の形態で実施され、当該方向制御弁は、電子制御可能なアクチュエータ60によって、復帰要素62の力に抗して3つの不連続な位置64,66,68に切換えることができる。前記3つの圧力媒体接続部とはブレーキマスタシリンダ接続部54、ポンプ圧接続部56、ポンプ吸込み接続部58である。作動モード切換え弁50の図示した基本位置64では、ブレーキマスタシリンダ接続部54とポンプ圧接続部56との間に、両流動方向に貫流可能な圧力媒体結合があり、この圧力媒体結合によりブレーキ液はブレーキマスタシリンダ12から圧力生成器38の加圧側へ、それぞれ圧力調整弁16の供給接続部18へ流動する。その際作動モード切換え弁50のポンプ吸込み接続部58は遮断されており、その結果圧力生成器38は、必要な場合には、圧力媒体を還路部34から吸い込むことができる。
【0018】
作動モード切換え弁50の中央位置または第2の位置では、3つの接続部すべてが互いに遮断されており、それ故この位置は遮断位置66とも呼ばれる。
【0019】
これに対し、作動モード切換え弁50の第3の位置では、ブレーキマスタシリンダ接続部54はポンプ吸込み接続部58と結合しており、他方ポンプ圧接続部56は遮断されている。したがって、ブレーキ液はこの吸込み位置68でブレーキマスタシリンダ12からポンプ吸込み接続部40へ流れ、その結果圧力生成器38にはブレーキマスタシリンダ12からも還路部34からもブレーキ液が供給される。
【0020】
オプションで設けられる、作動モード切換え弁50に対するバイパス70は、ブレーキマスタシリンダ接続部54をポンプ圧接続部56と結合させる。このバイパス70は逆止弁72によって制御可能であり、当該逆止弁は、ブレーキマスタシリンダ接続部54からポンプ圧接続部56への流動方向を解放し、逆方向を遮断する。逆止弁72はたとえばばねなしで実施され、これによりその閉弁部材は有効液圧だけで弁座に対し押圧されてこれを閉鎖させる。
【0021】
このバイパス70は機能的に次のような場合に設けることができ、すなわち作動モード切換え弁50がそのコンパクトなサイズのためにブレーキマスタシリンダ12から車輪ブレーキ14への圧力媒体流を強く絞りすぎ、したがってブレーキ回路10の車輪ブレーキ14において筋力によって生じるブレーキ圧生成を阻止するような場合に、設けることができる。
【0022】
このように、本発明によるブレーキ回路10は、もっぱら電子制御可能なアクチュエータ24;60だけで制御されて圧力媒体流を制御する、或いは、ブレーキ圧を車輪ブレーキ14に付設されている車輪でのスリップ比率に整合させる3ポート3位置方向切換弁を有している。したがって本発明によるブレーキ回路は、2ポート2位置方向制御弁を備えた従来のブレーキ回路に比べて、より少ない個々の弁またはアッセンブリから成っており、これに対応してこれら弁またはアッセンブリを液圧アッセンブリに取り付けるための作業ステップがより少なくて済み、この液圧アッセンブリの特にコンパクトな、すなわち省スペースの構成を可能にさせる。
【0023】
作動モード切換え弁50と圧力調整弁16とは、特にそのそれぞれの第3の位置32;68の点で異なっており、異なる液圧接続部を互いに結合または遮断させるので、構造的に異なるように形成されている。さらに、作動モード切換え弁と圧力調整弁とは、圧力比率が発生するので、異なるサイズの弁座と閉鎖体とを有し、それぞれを操作するには異なるパワーのアクチュエータを必要とする。付設のバイパス46;70の点でも作動モード切換え弁50は圧力調整弁16とは異なっており、このことは逆止弁48;72の遮断方向が異なることから明らかになる。
【0024】
逆止弁72を備えたバイパス70と作動モード切換え弁50とを1つの構成ユニットに統合すること、或いはこれとは択一的に、バイパス70と逆止弁72とを作動モード切換え弁50から切り離して具現化することが考えられる。
【0025】
上述したブレーキ回路10の機能は原理的には公知であり、それ故以下ではわかりやすくするために端的に説明するにとどめる。
【0026】
ロックアッププロテクション作動では、ドライバーがブレーキマスタシリンダ12の筋力操作によってブレーキ圧を生成させる。その際作動モータ切換え弁50は、ブレーキ回路10の異なる車輪ブレーキ14に付設されている圧力調整弁16と同様に、その基本位置64を占める。その結果、ブレーキマスタシリンダ12から車輪ブレーキ14への連続した圧力媒体結合が存在し、当該圧力媒体結合を介してブレーキ圧の生成が起こる。必要なブレーキ圧に達すると、圧力調整弁16はその遮断位置30(中央位置)へ切換えられ、ブレーキ圧が保持される。ブレーキ圧を減少させる必要がある場合には、圧力調整弁16のその第3の位置32へ切換え、この第3の位置で車輪ブレーキ14が還路34と結合され、供給部18が遮断される。その際ブレーキ液は車輪ブレーキ14から還路34内へ流れ、さらにポンプ吸込み接続部40へ流れる。外力によって駆動される圧力生成器38は、入ってくるブレーキ液を作動モード切換え弁50を通じてブレーキマスタシリンダ12へ戻す。作動モード切換え弁50のバイパス70にはブレーキ液は流れない。なぜなら、逆止弁72は作動モード切換え弁50のポンプ圧接続部56でのより高い圧力によってその弁座へ押圧されてこの流動方向を遮断するからである。
【0027】
ドライバーによるブレーキマスタシリンダ12の操作が制動状況に整合しないように行われる、トラクションスリップコントロールまたは走行安定性コントロールを行う場合には、作動モード切換え弁50はその吸込み位置68を占め、よってブレーキマスタシリンダ12を圧力生成器38の吸込み接続部40と結合させる。駆動モータ42による圧力生成器の駆動により、ブレーキ液がブレーキマスタシリンダ12から吸い込まれ、ブレーキ液の圧力が増大しながら、その基本位置28で開いている圧力調整弁16へ搬送される。そこからブレーキ液はさらに車輪ブレーキ14内へ流入し、そこでブレーキ圧の生成が行われる。
【0028】
圧力を保持するため、圧力調整弁16は再びその中央位置または遮断位置30へ切換えられ、すでに述べたように圧力を降下させるためにそのそれぞれの減圧位置32へ切換えられる。
【0029】
本発明の基本思想から逸脱することなく、上述した実施例の変更または補足が考えられることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
12 ブレーキマスタシリンダ
14 車輪ブレーキ
16 圧力調整弁(弁機構)
18 ブレーキマスタシリンダ接続部
20 車輪接続部
24 アクチュエータ
22 還路接続部
38 圧力生成器
40 ポンプ吸込み接続部
50 作動モード切換え弁(弁機構)
52 圧力生成器のポンプ圧接続部
54 ブレーキマスタシリンダ接続部(圧力媒体接続部)
56 ポンプ圧接続部(圧力媒体接続部)
58 ポンプ吸込み接続部(圧力媒体接続部)
60 アクチュエータ
64 作動モード切換え弁の基本位置
66 作動モード切換え弁の遮断位置
68 作動モード切換え弁の吸込み位置
70 バイパス
72 逆止弁
図1